天皇の退位等に関する皇室典範特例法

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天皇の退位等に関する皇室典範特例法
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 譲位特例法[1]、退位特例法[2]、皇室典範特例法[3]
法令番号 平成29年6月16日法律第63号[4]
効力 平成31年4月30日施行予定[5][6][7](一部は施行済)
種類 憲法皇位継承
所管 内閣官房宮内庁
主な内容 今上天皇の退位等に関して皇室典範の特例を定める
関連法令 日本国憲法皇室典範
条文リンク 総務省法令データ提供システム
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天皇の退位等に関する皇室典範特例法(てんのうのたいいとうにかんするこうしつてんぱんとくれいほう)は、今上天皇退位等に関して皇室典範の特例を定めた法律。通称は譲位特例法[1]退位特例法[2]皇室典範特例法[3]

概要[編集]

2016年7月13日放送のNHKニュース7NHK総合テレビ)冒頭で「天皇陛下が数年内に生前退位する意向を示していることが宮内庁関係者への取材で分かった」と報じられた。宮内庁は当初、「(報道されたようなことは)あり得ない」「事実とは異なる」等といったように否定していたが[8][9]、今上天皇は8月8日に「『天皇は国政に関する権能を有さない』旨を規定した憲法上の制約により、具体的な制度についての言及は避ける」と前置きした上で、「生前退位の意向をにじませる内容」[10][11][12][注釈 1]お気持ち[13]を表明した。これを受けて、内閣官房天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議が設置され、有識者へのヒアリングなどの議論が行われた。

今上天皇の退位を可能とする特例法を整備するとした国会の考えを前提に同会議は2017年4月21日に退位後の天皇を「上皇」、退位した天皇の后を「上皇后」とし、いずれも敬称は「陛下」とし、宮内庁に新たな組織として、「上皇職」と「皇嗣職」を新設することなどを適当とする最終報告を行った[14][15][16]

特例法の制定に当たっては、「天皇の地位は主権者である国民の総意に基づく」という憲法第1条の規定との兼ね合いから[17][18]、国会に議席を有する政党の代表者による会議での事前協議の結果も反映させた法律として制定される運びとなった。国会による事前協議や有識者会議の報告を受けて政府は法案を作成して国会に上程し、2017年6月2日に衆議院を通過、同月9日に参議院で可決され本法が成立した。全会一致となったが、自由党のみ皇室典範改正によって対応すべきとして採決を退席した[19][20]

なお、法案の採決にあたっては、政府は女性宮家創設など安定的な皇位継承のための諸課題について、皇族の事情も踏まえて検討を行い、速やかに国会に報告するとした附帯決議がなされた[21][22][23]

2017年12月1日に開催された皇室会議では、「2019年4月30日天皇陛下が退位し、5月1日皇太子徳仁親王殿下が即位し、新元号[注釈 2]への改元を行う」とする意見集約が行われ[5][6][7]、12月8日開催の定例閣議で施行期日を規定する政令案が閣議決定された。当初は「3月31日退位・4月1日即位」の日程も提案されていたが、4月に第19回統一地方選挙が実施される為、選挙後の静かな環境で皇位継承を行うべきとの意見から回避された[24]。この政令[注釈 3]は12月13日に公布され、同日付の官報に掲載された[25]

主な内容[編集]

本文[編集]

第1条(趣旨)
この法律は、天皇陛下が、昭和64年1月7日の御即位以来28年を超える長期にわたり、国事行為のほか、全国各地への御訪問、被災地のお見舞いをはじめとする象徴としての公的な御活動を精励してこられた中、83歳と御高齢になられ、今後これらの御活動を天皇として自ら続けられることが困難となることを深く案じておられること、これに対し、国民は、御高齢に至るまでこれらの御活動に精励されている天皇陛下を深く敬愛し、この天皇陛下のお気持ちを理解し、これに共感していること、さらに、皇嗣である皇太子殿下は、57歳となられ、これまで国事行為の臨時代行等の御公務に長期にわたり精勤されておられることという現下の状況に鑑み、皇室典範(昭和22年法律第3号)第4条の規定の特例として、天皇陛下の退位及び皇嗣の即位を実現するとともに、天皇陛下の退位後の地位その他の退位に伴い必要となる事項を定めるものとする。
第2条(天皇の退位及び皇嗣の即位)
天皇はこの法律の施行日限り、退位し、皇嗣が、直ちに即位する。
第3条(上皇)
前条の規定により退位した天皇は、上皇とする。
上皇の敬称は、陛下とする。
上皇の身分に関する事項の登録、喪儀及び陵墓については、天皇の例による。
上皇に関しては、前二項に規定する事項を除き、皇室典範(第2条、第28条第2項及び第3項並びに第30条第2項を除く。)に定める事項については、皇族の例による[注釈 4]
第4条(上皇后)
上皇の后は、上皇后とする。
上皇后に関しては、皇室典範に定める事項については、皇太后の例による。
第5条(皇位継承後の皇嗣)
第2条の規定による皇位の継承に伴い皇嗣となった皇族[注釈 5]に関しては、皇室典範に定める事項については、皇太子の例による。

附則[編集]

附則第1条(施行期日)
この法律は公布の日[注釈 6]から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する[注釈 7]。ただし、第1条並びに附則第1条第2項、附則第2条、附則第8条及び附則第9条の規定は公布の日から、附則第10条及び第11条の規定はこの法律の施行の日の翌日から施行する。
施行の日を決める政令を定めるに当たっては、内閣総理大臣は、あらかじめ、皇室会議の意見を聴かなければならない[注釈 8]
附則第2条(この法律の失効)
この法律の施行の日以前に皇室典範第4条の規定による皇位の継承[注釈 9]があったときには、法律の効力を失う。
附則第3条(皇室典範の一部改正)
皇室典範を一部改正し、この法律が皇室典範と一体をなすものである旨の規定[注釈 10]を皇室典範の附則に追加する。
附則第4条(上皇に関する他の法令の適用)
上皇に関しては、次に掲げる事項については、天皇の例による。
刑法(明治40年法律第45号)第2編第34章の罪に係る告訴及び検察審査会法(昭和23年法律第147号)の規定による検察審査員の職務
前号に掲げる事項のほか、皇室経済法(昭和22年法律第4号)その他の政令で定める法令に定める事項
上皇に関しては、前項に規定する事項のほか、警察法(昭和29年法律第162号)その他の政令で定める法令に定める事項については、皇族の例による。
上皇の御所は、国会議事堂、内閣総理大臣官邸その他の国の重要な施設等、外国公館等及び原子力事業所の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(平成28年法律第9号)[注釈 11]の規定の適用については、同法第2条第1項第1号ホに掲げる施設とみなす。
附則第5条(上皇后に関する他の法令の適用)
上皇后に関しては、次に掲げる事項については、皇太后の例による。
刑法第2編第34章の罪に係る告訴及び検察審査会法の規定による検察審査員の職務
前号に掲げる事項のほか、皇室経済法その他の政令で定める法令に定める事項
附則第6条(皇位継承後の皇嗣に関する皇室経済法等の適用)
第2条の規定による皇位の継承に伴い皇嗣となった皇族に対しては、皇室経済法第6条第3項第1号の規定にかかわらず、同条第1項の皇族費のうち年額によるものとして、同項の定額の3倍に相当する額[注釈 12]とする。
 附則第4条第3項の規定は、第2条の規定による皇位の継承に伴い皇嗣となった皇族の御在所について準用する。
附則第7条(贈与税の非課税等)
第2条の規定により皇位の継承があった場合において皇室経済法第7条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物[注釈 13]には贈与税を課さない。
前項の規定により贈与税を課さないこととされた物については、相続税法(昭和25年法律第73号)第19条第1項の規定は、適用しない。
附則第8条(意見公募手続等の適用除外)
次に掲げる政令を定める行為については、行政手続法(平成5年法律第88号)第6章の規定は、適用しない。
 第2条の規定による皇位の継承に伴う元号法(昭和54年法律第43号)第1項の規定に基づく政令
 附則第4条第1項第2号及び第2項、附則第5条第2号並びに次条の規定に基づく政令
附則第9条(政令への委任)
この法律に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
附則第10条(国民の祝日に関する法律の一部改正)
天皇誕生日12月23日[注釈 14]から2月23日[注釈 15]に変更する。
附則第11条(宮内庁法の一部改正)
上皇職」および「皇嗣職」を新設する。皇嗣職が置かれている間は、東宮職皇太子)を置かない。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 退位という言葉を直接的には用いなかった。
  2. ^ 新元号は皇室会議開催時点では未発表。2018年中に発表される見通し。
  3. ^ 政令の題名は『天皇の退位等に関する皇室典範特例法の施行期日を定める政令』
  4. ^ なお、摂政・国事行為臨時代行の就任資格も有しないこととなる。退位法成立(その1) 皇室、次代へ託す 立場や待遇で新規定”. 毎日新聞 (2017年6月10日). 2017年8月9日閲覧。
  5. ^ 秋篠宮文仁親王を想定する。
  6. ^ 2017年6月16日にあたる[26]
  7. ^ 施行期限は2020年6月16日となる。
  8. ^ 2017年12月1日に開催。
  9. ^ 今上天皇の崩御による皇位の継承を指す。
  10. ^ 『この法律の特例として天皇の退位について定める天皇の退位等に関する皇室典範特例法(平成29年法律第63号)は、この法律と一体を成すものである。』
  11. ^ 通称「小型無人機等飛行禁止法」もしくは「ドローン等規制法」。
  12. ^ 摂政と同等。
  13. ^ 三種の神器等。
  14. ^ 今上天皇の誕生日
  15. ^ 皇太子徳仁親王の誕生日

出典[編集]

  1. ^ a b “【譲位特例法成立】天皇の退位等に関する皇室典範特例法(全文)、付帯決議(全文)”. 産経新聞. (2017年6月9日). http://www.sankei.com/life/news/170609/lif1706090058-n1.html 2017年6月10日閲覧。 
  2. ^ a b “退位特例法成立 18年末にも皇太子さまが新天皇に即位”. 毎日新聞. (2017年6月9日). https://mainichi.jp/articles/20170610/k00/00m/010/041000c 2017年6月10日閲覧。 
  3. ^ a b 平成29年12月1日 内閣総理大臣の談話 - 2017年12月1日配信、首相官邸公式ホームページ
  4. ^ 官報』 平成29年6月16日付(号外第128号) (pp.35-pp.36
  5. ^ a b 皇室会議資料 (PDF)”. 首相官邸公式ホームページ (2017年12月1日). 2017年12月1日閲覧。
  6. ^ a b “皇室会議についての会見”. 首相官邸ホームページ. 首相官邸. (2017年12月1日). https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201712/01kaiken.html 2017年12月1日閲覧。 
  7. ^ a b “天皇陛下退位日、19年4月30日決定 翌日から新元号”. 朝日新聞デジタル. 朝日新聞社. (2017年12月1日). http://www.asahi.com/sp/articles/ASKCZ6TBXKCZUTFK015.html 2017年12月1日閲覧。 
  8. ^ 宮内庁次長は全面否定「報道の事実一切ない」 生前退位 2016年7月13日 朝日新聞DIGITAL
  9. ^ 天皇陛下、ビデオで「お気持ち」…生前退位巡り 2016年8月4日 YOMIURI ONLINE
  10. ^ 天皇陛下 お気持ち表明 象徴の務め「難しくなる」 2016年8月8日 毎日新聞
  11. ^ 【産経新聞号外】天皇陛下が「生前退位」に強いご意向(1) (PDF)”. 産経新聞社 (2016年8月8日). 2017年2月2日閲覧。
  12. ^ 【産経新聞号外】天皇陛下が「生前退位」に強いご意向(2) (PDF)”. 産経新聞社 (2016年8月8日). 2017年5月17日閲覧。
  13. ^ 天皇陛下きょう「お気持ち」表明、テレ東・MX含む地上波全局放送の異例体制”. 株式会社マイナビ (2016年8月8日). 2017年1月31日閲覧。
  14. ^ 天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議 (2017年4月21日). “最終報告 (PDF)”. 首相官邸. 2017年5月23日閲覧。
  15. ^ “天皇退位 有識者会議の最終報告全文”. 読売新聞東京本社版朝刊 (読売新聞社): pp. 12-13. (2017年4月22日) 
  16. ^ “有識者会議 最終報告を提出”. NHK. (2017年4月21日). オリジナル2017年4月21日時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20170421/https://www3.nhk.or.jp/news/special/japans-emperor3/ 2017年11月30日閲覧。 
  17. ^ “【譲位特例法案】 民進は「女性宮家」議論の時期などに最後まで固執 維新は「合意優先」の与党に不快感”. 産経新聞. (2017年6月1日). http://www.sankei.com/politics/news/170601/plt1706010055-n2.html 2017年6月14日閲覧。 
  18. ^ “<退位特例法成立>大島衆院議長「立法府の責任果たした」”. 毎日新聞. (2017年6月9日). https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170609-00000127-mai-pol 2017年6月14日閲覧。 
  19. ^ “天皇退位、特例法が成立 一代限り退位容認”. 日本経済新聞. (2017年6月9日). https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS08H5T_Y7A600C1MM0000/ 2017年10月6日閲覧。 
  20. ^ “自由党、採決を棄権へ 退位特例法案”. 日本経済新聞. (2017年5月30日). https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS30H5S_Q7A530C1PP8000/ 2017年10月6日閲覧。 
  21. ^ 衆院議運委で特例法案可決 2日に衆院通過へ 「女性宮家」検討の付帯決議も採択”. 産経新聞 (2017年6月1日). 2017年6月18日閲覧。
  22. ^ 退位特例法案を参院委可決 「女性宮家」付帯決議も”. 日本経済新聞 (2017年6月7日). 2017年6月18日閲覧。
  23. ^ 天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議”. 参議院天皇の退位等に関する皇室典範特例法案特別委員会 (2017年6月7日). 2017年6月18日閲覧。
  24. ^ 天皇退位:統一地方選を考慮 19年4月30日有力 - 毎日新聞 2017年11月22日
  25. ^ “退位は再来年4月30日 即位は5月1日の日程が確定”. NHK. (2017年12月13日). オリジナル2017年12月13日時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20171213/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20171213/k10011256801000.html 2017年12月15日閲覧。 
  26. ^ “「退位」特例法 今月16日にも正式公布”. NHK. (2017年6月13日). オリジナル2017年6月13日時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20170613/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170613/k10011015721000.html 2017年11月30日閲覧。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]