風立ちぬ (2013年の映画)

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風立ちぬ
The Wind Rises
監督 宮崎駿
脚本 宮崎駿
原作 宮崎駿
製作 奥田誠治[註釈 1]
福山亮一[註釈 1]
藤巻直哉[註釈 1]
出演者 庵野秀明
瀧本美織
西島秀俊
西村雅彦
スティーブン・アルパート[註釈 2]
風間杜夫
竹下景子
志田未来
國村隼
大竹しのぶ
野村萬斎
音楽 久石譲
主題歌 荒井由実
ひこうき雲
撮影 奥井敦[註釈 3]
編集 瀬山武司
製作会社 スタジオジブリ
配給 東宝
公開 日本の旗 2013年7月20日
フランスの旗 2014年1月22日
上映時間 126分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
興行収入 120.2億円(2014年1月現在)[1]
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風立ちぬ』(かぜたちぬ)は、宮崎駿の漫画『風立ちぬ』を原作とした長編アニメーション映画である。

実在の人物である堀越二郎モデルに、その半生を描いた作品であるが[2][3][4]堀辰雄小説風立ちぬ』からの着想も盛り込まれている[2][4]。そのため映画のポスターには両名の名を挙げており、2012年に公表された版では「堀越二郎と堀辰雄に敬意を表して」[4]、翌年公表された版では「堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて」と記されている。

2013年9月、宮崎は本作を最後に長編アニメ製作からの引退を発表した[5]

漫画からのビジュアル面での大きな変更点としては、登場人物の多くが擬人化された動物の姿で描かれていたのを、全てリアルな人間の姿で描かれている点が挙げられる。

映画公開までの流れ[編集]

製作の経緯[編集]

宮崎駿が『モデルグラフィックス』に漫画版を連載し始めた当初は、本作を映画化することは全く考えていなかった。その後、鈴木敏夫が映画化を提案したが、宮崎は本作の内容が子供向けでないことを理由に反対していた[6]。宮崎は「アニメーション映画は子どものためにつくるもの。大人のための映画はつくっちゃいけない」[6]と主張していたが、鈴木は戦闘機や戦艦を好む一方で戦争反対を主張する宮崎の矛盾を指摘し「矛盾に対する自分の答えを、宮崎駿はそろそろ出すべき」[6]と述べて映画化を促した。映画版の企画書の中で、宮崎は製作意図について「この映画は戦争を糾弾しようというものではない。ゼロ戦の優秀さで日本の若者を鼓舞しようというものでもない。本当は民間機を作りたかったなどとかばう心算もない。自分の夢に忠実にまっすぐ進んだ人物を描きたいのである」[7]と述べている。

同日公開の目論見[編集]

2012年12月の記者会見においては、高畑勲が監督したスタジオジブリの『かぐや姫の物語』も、同日公開の予定と発表されていた[2][3][4]。宮崎と高畑の映画が同時期に公開されるのは、1988年に『となりのトトロ』と『火垂るの墓』が2本立て同時上映されて以来だが、今回は同時上映ではなく個別に上映される予定となっていた[3][4]。しかし、『かぐや姫の物語』は2013年に入っても絵コンテが完成しなかったことから、同作は公開時期を延期し、同年秋に公開されることとなった[8][9][10][11]

庵野秀明の起用[編集]

スタジオジブリの鈴木敏夫に対して、アニメーション監督庵野秀明が「零戦が飛ぶシーンがあるなら描かせてほしい」[12]と申し入れている。仮に庵野の参加が正式決定していれば、1984年公開の『風の谷のナウシカ』以来の宮崎作品への参加となるはずだった[12]。しかし、宮崎は、作画スタッフとしてではなく本作の主人公として出演するよう、庵野に要請した[13]。庵野は困惑しつつもオーディションを受けたが、その直後に宮崎から改めて出演を依頼されたため、庵野も出演を受諾した[13]。宮崎は主人公のイメージとして「早口である」[13]「滑舌がよい」[13]「凛としている」[13]の3つを挙げており、庵野を選んだ理由として「いい声だからでなく、存在感で選んだ」[13]としている。なお、庵野にとって声優参加作品としては『フリクリ』のミユミユ役以来、主演映画作品としては『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』以来となる。

映画公開後の反応[編集]

遺族からの反応[編集]

堀越二郎の長男は、映画版を観た感想として、実際には本庄より二郎は年下なので「さん付け」で呼んでいたはず、といった史実と異なる点が気になったものの、関東大震災のシーンあたりから引き込まれ、別れのシーンでは涙が止まらなかったと高く評価している[14]。主人公については「いちずさ、気性、生きざまが美しく、その子供としてすごくうれしかった」[14]と語っている。さらに「父は必ずしも零戦は好きではなかった」[14]と指摘し「宮崎監督がすごいのは『九試』完成までで、零戦を描いていないこと」[14]だと評している。なお、「零戦は好きではなかった」[14]という理由について、堀越の長男は、設計時の要求水準の高さ、テストパイロットの殉職、特別攻撃隊での使用など、二郎にとって零式艦上戦闘機には辛い思い出が多かったことを挙げている。

喫煙シーンへの賛否[編集]

日本禁煙学会による批判[編集]

禁煙推進NPO団体である「NPO法人日本禁煙学会」は、2013年平成25年8月12日に、スタジオジブリに対する『要望書』を提出。映画はたばこ規制枠組み条約13条違反だと批判。教室での喫煙場面、職場で上司を含め職員の多くが喫煙している場面、高級リゾートホテルのレストラン内での喫煙場面などの登場を批判、特に、肺結核で療養中の妻の手を握りながらの喫煙描写は問題であり、この場面でタバコが使われなくてはならなかったのか?他の方法でも十分表現できた筈だ、と批判。また、大学生が「タバコくれ」とは、未成年者の喫煙を助長し、日本の法律である「未成年者喫煙禁止法」にも抵触するおそれがある、と批判した。しかし、これはスタジオジブリを誹謗中傷するものではなく、法令遵守した映画制作を願う、と云うステートメントを発表した[15]

喫煙文化研究会による擁護[編集]

それに対して、愛煙家の団体である「喫煙文化研究会」(すぎやまこういち代表)は、2013年平成25年)8月15日に、映画に対するプレスリリースを発表し、昭和10年代の喫煙率についての公式データが無いが、昭和25年のデータでは、男性の84.5%は喫煙者であり、映画の描写は極自然な事で一般的な描写であると指摘。国際条約との優位性に於いては、現在「憲法優位説」が通説となっており、たばこ規制枠組み条約より、表現の自由を定めた日本国憲法が上位であると指摘し、表現の自由に対する要望は意味を成さない、と指摘し、喫煙者と非喫煙者が、共生出来る『分煙社会を実現すべき』だ、と云うステートメントを発表した[16]

封切り[編集]

キャッチコピーは「生きねば。」である。英語版のタイトルは「The Wind Rises」[17]。制作発表時に、「2013年夏に劇場公開予定[2][3][4]」とされ、当初の予定通り2013年7月に公開された。宮崎が長編アニメーション映画の監督を務めるのは、2008年の『崖の上のポニョ』以来となる[2][4]。また、宮崎が『モデルグラフィックス』に連載した漫画がアニメ化されるのは、1992年の『紅の豚』以来2作目となる[18]

日本公開では全国454スクリーンで公開され、2013年7月20日・21日の2日間で興行収入9億6088万円、観客動員74万7451人となり、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第1位となった[19]。2014年1月28日時点で興行収入は120.2億円を突破している[1][20]

2014年1月22日よりフランスで公開された。公開1か月後時点でのフランスにおける動員数は43万6000人で、『崖の上のポニョ』公開時91万7000人の約半分の勢いという結果になった。内容が大人向けであることや、作品内のモラルがフランスの観客に対しては曖昧と感じさせるものであるためという分析がされている。[21]

スタッフ[編集]

声の出演[編集]

キャラクター 日本語版 英語版
堀越二郎 庵野秀明 ジョゼフ・ゴードン=レヴィット
里見菜穂子 瀧本美織 エミリー・ブラント
本庄 西島秀俊 ジョン・クラシンスキー
黒川 西村雅彦 マーティン・ショート
カストルプ スティーブン・アルパート[註釈 2] ヴェルナー・ヘルツォーク
里見 風間杜夫 ウィリアム・H・メイシー
二郎の母 竹下景子
堀越加代 志田未来 メイ・ホイットマン
服部 國村隼 マンディ・パティンキン
黒川夫人 大竹しのぶ ジェニファー・グレイ
カプローニ 野村萬斎 スタンリー・トゥッチ
曽根 イライジャ・ウッド
片山 ダレン・クリス
三菱の従業員 ローナン・ファロー

主題歌[編集]

ひこうき雲
作詞・作曲・歌 - 荒井由実EMI Records Japan
プロデューサーの鈴木敏夫が主題歌として使用したい意向を打診し、本人から了承を得た[3]

挿入曲[編集]

「Das gibt's nur einmal」(邦題「唯一度だけ」)
作詞 - Robert Gilbert / 作曲 - Werner Richard Heymann
1931年のドイツ映画『会議は踊る』の主題歌として使われている。

朗読詩[編集]

「風」
原詩 - Christina Rossetti / 訳詩 - 西條八十日本コロムビア
この訳詩に草川信が作曲したは、2007年日本の歌百選の1曲に選定されている。

評価[編集]

受賞[編集]

アニメーション映画部門
個人部門
  • 第41回アニー賞脚本賞(宮崎駿)
  • 第37回日本アカデミー賞最優秀音楽賞(久石譲)
その他
  • 第68回毎日映画コンクールTSUTAYA映画ファン賞(日本映画部門)[24]
  • 第87回キネマ旬報ベスト・テン 日本映画ベスト・テン 第7位
  • 第87回キネマ旬報読者選出 日本映画ベスト・テン 第5位
  • 2013年度日本映画ペンクラブ 選定ベスト5 第3位 
  • 映画芸術 2013年日本映画ベストテン&ワーストテン・ワースト2位[25]
    • 『映画芸術』では、No.445(2013年秋号)において「国民的映画『風立ちぬ』大批判!」と題した批判的な巻頭特集が組まれている[26]

ノミネート[編集]

脚註[編集]

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註釈[編集]

  1. ^ a b c クレジットでは「製作担当」と表記されている。
  2. ^ a b スティーブン・アルパートはかつてスタジオジブリ海外事業部の取締役部長を務めた人物。一身上の都合で2011年に退社したが、スタジオジブリの海外展開に尽力し、宮崎駿が彼への敬意を込めてカストルプというキャラクターに起こした。カストルプの容貌は彼をモデルに描かれたため、適役として来日している。 - 『風立ちぬ』謎のドイツ人・カストルプに隠された宮崎駿と元ジブリ取締役の友情とは?(シネマトゥデイ)
  3. ^ クレジットでは「撮影監督」と表記されている。

出典[編集]

  1. ^ a b 2014年記者発表資料(2013年度統計) (PDF)”. 日本映画製作者連盟 (2013年1月28日). 2013年1月28日閲覧。
  2. ^ a b c d e スタジオジブリ:新作は「ポニョ」以来5年ぶり宮崎駿作品 14年ぶり高畑作品と2本同時公開 - MANTANWEB(まんたんウェブ)”. スタジオジブリ : 新作は「ポニョ」以来5年ぶり宮崎駿作品 14年ぶり高畑作品と2本同時公開. 毎日新聞デジタル (2012年12月13日). 2012年12月13日閲覧。
  3. ^ a b c d e 島村幸恵 (2012年12月13日). “ジブリ新作、2作一挙公開!宮崎駿&高畑勲作品でジブリ史上初! - シネマトゥデイ”. ジブリ新作、2作一挙公開!宮崎駿&高畑勲作品でジブリ史上初!. シネマトゥデイ. 2012年12月13日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g 東宝 映画トピックス”. 「かぐや姫の物語」「風立ちぬ」スタジオジブリ新作発表会見. 東宝 (2012年12月13日). 2012年12月13日閲覧。
  5. ^ “宮崎駿:長編映画製作から引退へ 「風立ちぬ」が最後の作品に”. 毎日jp(毎日新聞). (2013年9月1日). http://mainichi.jp/mantan/news/20130901dyo00m200036000c.html 2013年9月2日閲覧。 
  6. ^ a b c 東京新聞:9条 世界にアピールを スタジオジブリプロデューサー・鈴木敏夫さん:憲法と、:特集・連載(TOKYO Web)”. 9条 世界にアピールを スタジオジブリプロデューサー・鈴木敏夫さん. 中日新聞社 (2013年5月9日). 2013年5月9日閲覧。
  7. ^ 宮崎駿 (2011年1月10日). “風立ちぬ メッセージ”. 企画書. スタジオジブリ. 2013年6月6日閲覧。
  8. ^ 東宝映画営業部・宣伝部 (2013年2月4日). “かぐや姫の物語 公開延期のお知らせ”. 『かぐや姫の物語』公開延期のお知らせ. 東宝. 2013年2月4日閲覧。
  9. ^ 共同通信 (2013年2月5日). “高畑監督の新作アニメ、公開延期 「かぐや姫の物語」 - 47NEWS(よんななニュース)”. 高畑監督の新作アニメ、公開延期 「かぐや姫の物語」. 全国新聞ネット. 2013年2月5日閲覧。
  10. ^ 朝日新聞デジタル:高畑勲監督「かぐや姫」公開延期 「絵コンテ完成まだ」 - カルチャー”. 高畑勲監督「かぐや姫」公開延期 「絵コンテ完成まだ」. 朝日新聞社 (2013年2月5日). 2013年2月5日閲覧。
  11. ^ かぐや姫の物語:高畑勲の新作公開延期 宮崎駿との同日公開ならず - MANTANWEB(まんたんウェブ)”. かぐや姫の物語 : 高畑勲の新作公開延期 宮崎駿との同日公開ならず. 毎日新聞社 (2013年2月5日). 2013年2月5日閲覧。
  12. ^ a b 鈴木敏夫「宮崎駿とヱヴァンゲリヲン――庵野秀明のナウシカ愛」、『文藝春秋』第91巻第2号、文藝春秋2013年2月1日、 353頁。
  13. ^ a b c d e f ジブリ新作『風立ちぬ』主役声優にエヴァ監督 庵野氏 - 役者にはない存在感 | ホビー | マイナビニュース”. ジブリ新作『風立ちぬ』主役声優にエヴァ監督 庵野氏 - 役者にはない存在感. マイナビ (2013年5月10日). 2013年5月10日閲覧。
  14. ^ a b c d e “主人公・堀越二郎長男堀越雅郎さん――仕事にも恋にもいちず見事な男だな――父が生きていたら「俺が立派な人間に描かれているだろ?」とうれしそうに言ったと思います”. 報知新聞 風立ちぬ特別号 (報知新聞社): p. 11。 
  15. ^ 作田学、映画「風立ちぬ」でのタバコの扱いについて(要望) (PDF) 、2013年8月12日、日本禁煙学会。
  16. ^ “インフォメーション 映画「風立ちぬ」に対する日本禁煙学会のご要望についての見解” (プレスリリース), 喫煙文化研究会, (2012年8月15日), http://aienka.jp/info/プレスリリース全文公開/ 2013年1月14日閲覧。 
  17. ^ 『風立ちぬ』、東宝出版・商品事業室2013年7月20日、 裏表紙。
  18. ^ ヤンヤン (2012年12月14日). “スタジオ・ジブリ高畑勳作品と宮崎駿作品を同時公開!主役はかぐや姫と堀越二郎・堀辰雄 (2/2) : J-CASTテレビウォッチ”. スタジオ・ジブリ高畑勳作品と宮崎駿作品を同時公開!主役はかぐや姫と堀越二郎・堀辰雄. ジェイ・キャスト. 2012年12月14日閲覧。
  19. ^ 宮崎駿監督『風立ちぬ』が今年最高のオープニング!順風満帆の1位スタート!【映画週末興行成績】シネマトゥデイ 2013年7月23日
  20. ^ 2013年映画興行アニメが牽引 『風立ちぬ』3年ぶり100億円超え ORICON STYLE 2014年1月28日
  21. ^ 佐藤久理子 (2014年3月1日). “「風立ちぬ」がフランスで公開 興行成績は「ポニョ」の半分の勢い”. 映画.com. 2014年3月1日閲覧。
  22. ^ 『風立ちぬ』3冠!アカデミー賞本命へ”. 2013年12月9日閲覧。
  23. ^ 第37回日本アカデミー賞優秀作品発表!”. 日本アカデミー賞公式サイト. 2014年3月7日閲覧。
  24. ^ 第68回毎日映画コンクール発表!『舟を編む』が日本映画大賞 シネマトゥデイ 2014年1月21日
  25. ^ 「映画芸術」2013年日本映画ベストテン&ワーストテン決定!!(2014年1月17日)、映画芸術、2014年1月28日閲覧。
  26. ^ 映芸編集部 (2013年10月29日). “「映画芸術」最新号(445号)、10月30日発売!!”. 映画芸術. 2014年3月1日閲覧。
  27. ^ 「風立ちぬ」ゴールデングローブ賞ならず”. 2014年1月13日閲覧。
  28. ^ 【速報】宮崎駿監督『風立ちぬ』ゴールデン・グローブ賞受賞ならず”. 2014年1月13日閲覧。

関連事項[編集]

外部リンク[編集]