喫煙
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喫煙(きつえん)とは、植物を乾燥・発酵などの工程を経て加工した物に火をつけて、その煙を吸引する行為である。タバコ・覚醒剤・麻薬・大麻などの喫煙がなされるが、ここでは主にタバコの喫煙について記述する。
[編集] 概要
たばこ喫煙の起源はB.C.1,000年頃のマヤ文明とされ、古くからアメリカ先住民の間に喫煙の習慣が広まっていた。大航海時代の到来と共にヨーロッパに伝播し、様々な薬効があると信じられたことと強力な依存形成作用があいまって、数々の排斥を受けながらも100年間という15~16世紀当時としては異例な速度で全世界に広まり、定着した。そのため、世界で「tobacco」「tabaco」などとほぼ同じ名前がついている。ヨーロッパ・アジア地域においても、大麻などのハーブの喫煙習慣があったとされるが、起源は明らかでない。 葉巻、パイプなど様々な喫煙方法が考案され普及しており、今日世界的にもっともポピュラーな喫煙方法は安価で手軽な紙巻きたばこ(シガレット)である。 21世紀初頭の世界の喫煙人口は約13億人でやや増加傾向にあるが、そのほとんどは発展途上国による需要であり、主要先進国を始めとした主な地域では急速に減少している(ただし日本は除く。後述喫煙と社会を参照)。
喫煙は"喫煙病(依存症+喫煙関連疾患)"という全身疾患であり、喫煙者は"患者"という認識を日本循環器学会等の国内9学会が示している。[1] 喫煙や受動喫煙による人体への健康影響については、世界保健機関を含む幅広い機関において多数の研究がなされ、膨大な知見が蓄積しており、世界保健機関は、喫煙を原因とする病気による死亡者数は世界で年間推定約500万人以上と発表している。 一方、タバコ会社、またタバコ会社から多額の援助を受けているジャーナリストや研究者は、こうした世界保健機関等の専門家による疫学的調査・研究に懐疑的な主張を繰り返しており(後述平山論文に対する批判キャンペーン以降を参照)、喫煙は個人の趣味・嗜好と主張している。このため、喫煙や受動喫煙の害について否認傾向にあるニコチン依存症患者が7割を占める喫煙者には、必ずしも十分に認識されていない。 (健康への影響に詳述)
喫煙習慣の有害性が明らかになった近年では、学会や行政の啓発活動によって、欧米での喫煙率は概ね低下しており、社会的に分煙または受動喫煙防止の運動も見られる。しかし世界的には、いまだに病気の原因のうち予防できる最大の単一原因の座を占めるとされ、現在140ヶ国以上が、煙草消費の削減を目的とした煙草広告・販売への規制を実施している。
タバコの煙には、ニコチン以外にも活性酸素や数千種の有害化学物質が含まれ、その長期的な影響が医学分野で広く研究されている。各種疾病との因果関係が疫学的な調査や動物実験によって指摘されており、喫煙が多くの疾病リスクを高めることは、学界の定説となっている(詳細は健康への影響参照)。さらに喫煙は、社会にも様々な不都合を生じさせている(詳細は健康への影響参照)。このため、WHOや世界中の多くの行政府は、市民の健康を守り社会への弊害を減らすなどの目的で、タバコ規制策を講じている。
一般人が簡単に購買できるにもかかわらずタバコの毒性は高く、誤飲や大量摂取により急性ニコチン中毒を起こし、場合によっては死亡することもある。詳しくは灰皿・タバコの誤食によるニコチン中毒を参照。
タバコは中枢神経作動薬であるニコチンを含むが、ニコチンには明らかな依存性があることが知られている。例えば動物実験において、レバーを押すことでニコチンを静脈内投与するような仕組みを作ると強化行動が起こる[2]。喫煙の依存性は、喫煙者のうち5割以上の者が禁煙の失敗を経験しており[3]、禁煙の成功率は5~10%程度である[4]というデータからも示されている。また、ニコチンの中断により離脱症状を生じるが、これはニコチンの投与によって軽減する。
[編集] 歴史
[編集] アメリカ大陸から全世界への伝播
パイプや葉巻きタバコによるタバコの喫煙は、ヨーロッパの探検家が到達する前から、多くのアメリカ先住民の間では一般的なものであった。およそ1500年前のマヤ文明における美術作品にも喫煙の習慣が描かれている。マヤ人たちはタバコを万能の解毒剤として用い[要出典]、また、その効用が魔法的な力を持つと信じ、生贄を捧げる儀式、占い、魔除けに使っていたことでも知られる。北米のインディアンたちは、現在も宗教儀式に必ず清めの聖物としてタバコの葉を用い、パイプの回し喫みを行う。
白人のアメリカ上陸初期のもので報告されているものでは、インディアンたちの喫煙法は、地面に浅い穴を掘り、枝や土でドームを作り、中でタバコの葉を燻した煙を、何箇所か開けた穴から跪いて吸うというものだった。また、粘土で作ったパイプも使われており、あまり首の曲がっていない、直管型のものだった。このクレイパイプは、数千年前のインディアンの遺跡からも出土している。
1492年10月12日、クリストファー・コロンブスは乾燥したタバコの葉をアラワク族から与えられたが、興味を示さずうち捨ててしまった。その後ロドリゴ・デ・ヘレス (Rodrigo de Jerez) とルイス・デ・トレス (Luis de Torres) が喫煙を目撃した最初のヨーロッパ人となり、ヘレスがアメリカ州の外で喫煙した最初の人物として記録されている。16世紀には喫煙の習慣は主に船乗りの間で一般的なものであった。1560年代にジョン・ホーキンス (John Hawkins) の船員によってイングランドにもたらされたが、1580年代に至るまで大きな影響を与えることはなかった。イングランドでは1820年代後期から広く浸透し始めた。1828年、スペインで紙巻きタバコ(シガレット)が登場し、一定の商業的な拡張をもたらしたが、20世紀初頭に安価な機械製造法が普遍化されると、その依存性により爆発的に喫煙人口が増加した。
第一次世界大戦の間、タバコ製品は典型的な軍事補給物資の一つであった。戦後紙巻きタバコを用いた喫煙は、魅力的で気楽な生活様式の一部としてタバコ会社により宣伝され、女性の喫煙も社会の中に浸透し始めた。
[編集] 健康被害とタバコ規制
早くもスペイン・イングランドにタバコの広まり始めた16世紀初頭に、タバコの有害性に関する議論が始まった。喫煙は病気の治療や愉しみとして賞賛される一方、脳や肺を害すると批判もされた。喫煙の害益についての議論は喫煙習慣が広まるにつれ過熱する中、タバコに関する科学研究も増えてさまざまなデータが蓄積されていった。
1900年、生命統計学者らが肺癌の増加を指摘(喫煙と疾患の関連を示唆した最初とされる)。その後さまざまな研究が行われ、たばこやたばこ煙の成分が分析され始めた。やがて臨床的・病理学的・疫学的に、タバコの人体への影響が明らかにされていき、1930年には肺や循環器疾患の発症率や死亡率の上昇が指摘された。その後もさまざまな国・研究機関でタバコの研究は増えていき、ドイツではナチス統治下で、またアメリカ合衆国では1938年ごろ生物学者レイモンド・パール (Raymond Pearl) が、タバコは健康に悪影響を及ぼすことを証明するなどした。
1939年から1963年の間に、肺癌に関してだけで29の逆向き研究が行われ、1952-1956の疫学研究の発表以降、喫煙と肺癌の関係が特に注目されるようになり、1950年代から1960年代の間に医学界や各国政府(ブリティッシュ・メディカル・リサーチ・カウンシル、デンマーク・ノルウェー・スウェーデン・オランダのがん学会、米国癌学会米国心臓学会、カナダ保健福祉省など)のコンセンサス「喫煙は、特に肺癌や心臓血管疾患に関して健康を脅かす」が発表された。リーダーズ・ダイジェスト誌も、喫煙がいかに公衆衛生に害を及ぼすかを示すことによって喫煙率を減らすキャンペーンを始めた。
このような動きに対し、1954年初頭に、たばこ産業の代表者らは、喫煙と健康の問題研究を後押しする目的で、「たばこ産業研究会」(Tobacco lndustrv Research Committee/TIRC)を設立し、研究に積極的に資金提供・情報収集を行い、喫煙が健康を害するするとの科学的な証拠はないとの報告を発表したりした。 近年、先進国では喫煙量が劇的に減少しているが、全世界でのタバコの製造はいまだ増加しており、アジア諸国の喫煙率は比較的高いままである。
また、かつては喫煙についての制限はかなり緩く、職場、家庭、旅客機や列車・バスなど公共の場などにおける喫煙が許容されていたため、当時は非喫煙者は通常の生活を営むだけで受動喫煙を避けられない状況であった。しかし1970年代より世界的に喫煙に関する健康への悪影響が知られるようになり、禁煙活動や嫌煙(分煙とも)活動が推進され、公共の場などにおける分煙の動きも進んでいる。また、都市部では防災上の理由から1980年代より喫煙可能なスペースが制限され、さらに公共交通機関での喫煙行為を全面的に制限するなどの動きも見られている。
しかし未だに規制が遅れており、世界保健機構(WHO)は「世界各国で喫煙による死の予防が不十分」と警告をしている。[5]
[編集] 日本における歴史
日本では室町時代末期から安土桃山時代にポルトガルの宣教師たちによって持ち込まれた。煙管(キセル)による喫煙が主であり、江戸時代初期には全国に普及したが、非常に高価な薬品として普及しており、喫煙できるのは裕福な武士か商人のみであった。
江戸幕府は、しばしば煙草禁止令を出しているが、幕府や藩の専売とすることで次第に許可されていく。江戸中期には煙草の値下がりと共に、100人中で煙草を吸わない人がわずかに2、3人と言われるほど、庶民への喫煙習慣も広まって行くことになる。宝暦年間には、庶民用の煙草10匁(約38グラム)が8文ていどであった記録が残されている。煙草は単なる嗜好品としてではなく、煙管、煙草盆、煙草入れなどの道具への装飾や、喫煙のマナーやスタイルなど、江戸文化の重要な要素を占めるようになっている。
明治時代になってから、それまでのキセルによる喫煙に代わり紙巻タバコが庶民の間に普及した。当初日本には2社のタバコ会社が存在していたが、日清戦争開始後に財政難に陥った国により 葉たばこ専売法が1898年に制定され、タバコは専売化された。当時、タバコによる税収は国税において大きな割合を占めており(1945年には、タバコによる税収は国税の20%をも占めていたという)、日清・日露戦争などの戦費調達のための重要な財源であった[6]。
第二次大戦後も、1985年まで日本専売公社によるたばこの専売が続いた。1980年時点では、輸入たばこには90%の関税がかけられ、国内市場における輸入たばこのシェアは1.5%未満に過ぎず、海外たばこ企業が日本国内でテレビ・雑誌・看板などの宣伝活動や市場調査を行ったり販売網を築くことはできなかった。しかし、1980年の米国 フィリップ・モリス社の5ヵ年計画において、日本に対し市場を開放するよう圧力をかけることが計画され[7]、1982年、米国通商代表部(USTR)は日本政府に対し、関税の90%から20%への引き下げ、海外企業の宣伝活動や市場調査の許可を求め交渉した(経済制裁の脅しも持ち出されたという[8])。1985年、日本専売公社は日本たばこ産業に民営化され、1987年には米国タバコへの関税は撤廃された。結果として、米国からのたばこ輸入本数は1986年に99億本、2002年には780億本へと増加し、米国のたばこ輸出の61%を占めるまでになった[9]。また、日本たばこ産業は民営化されたとは言え、日本たばこ産業株式会社法により財務省が過半数の株を保有しており、財務省の天下り先の一つになっている。
日本でも、受動喫煙被害防止の流れを受けて、健康増進法第25条が制定され、さらに世界的には公衆衛生分野における初めての多数国間条約として2005年2月27日に「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(たばこ規制枠組み条約)」が発効された。[10]それ以前には防災上のものによる以外では余り明確な分煙・禁煙といった動きも少なかった。特にオフィスの禁煙は、健康上の理由というよりもOA化による機材保護の理由付けの方が強く、職場環境での分煙が始められたのは1990年代に入ってからのことで、一般オフィスで明確な分煙化が進められるようになったのは2000年代に入ってからである(嫌煙権、 喫煙規制や禁煙に関する動き参照)。
[編集] 原材料と煙の成分
詳細はタバコを参照。
タバコはナス科 Nicotiana 属の一年草で、亜熱帯性の植物である。強健性、葉の産出力、病気に対する抵抗性、加工した場合の香りなどの違いにより、約100の品種が栽培されている。キューバのハバナタバコや、アメリカのホワイトバーレーといった品種が代表的である。
タバコの種子は25℃の気温、適切な湿度と太陽光によって発芽する。生育条件が適切である場合、種によって異なるが茎の高さ50cmから250cmまで成長する。茎は太く最大5cmに達する。葉は30枚から40枚が着生し、このうち、葉タバコとして採取するのは約6割である。葉の長さは20cmから60cm、幅は30cm程度で、特有の臭気を帯びる。タバコの花は茎の先端部分に群生し、形状は漏斗ににており、色は白や黄色のものが多い。
タバコの生産は、FAOの統計によれば、首位の中国が239万トンで世界の約38%を占める。2位はブラジルで65万トン (10%)、3位はインドで58万トン (9%)、4位にアメリカ、5位にジンバブエと続く。タバコの生産量は世界的に減少しており、2002年の生産量は全世界で635万トンと、10年前に比べて約100万トン減少している。
[編集] タバコ煙の成分
タバコの煙に含まれる化学物質は4,000種ほどで、そのうち約200種は致死性有害化学物質とされ、動物に癌を作るものはベンゾピレン(ベンツピレン)をはじめとする60種類(数値は2003年現在)。天然のタバコ葉由来の成分の他、紙巻タバコ工場では600種類の有害化学物質を添加しているとされるが、その主目的はニコチンの吸収を高める目的であり、より依存性を高めることである[要出典](但しクマリンは甘味づけのため)。また、悪臭の原因ともなっている。
主なタバコ煙の成分:
主な発癌物質:
- アクロレイン
- カドミウム化合物
- クマリン
- シアン化水素
- ダイオキシン
- ビニールクロライド
- ベンゾピレン
- ホルムアルデヒド
- ジメチルニトロソアミン、メチルエチルニトロソアミン、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソノルニコチン、ニトロソピロリジン
- 4-(N-メチル-N-ニトロソアミン)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン
- キノリン、メチルキノリン類
- ヒドラジン、2-ナフチルアミン、4-アミノビフェニル、o-トルイジン
- ポロニウム310
[編集] 方法と種類
「葉巻きタバコ」と「刻みタバコ」の2種に大別される。葉巻きタバコはタバコの葉を刻まずに丸めて吸うもので、刻みタバコをタバコの葉で巻いたものも存在する。刻みタバコはその形態によって、さらにいくつかに分類される。
[編集] 葉巻タバコ
詳細は葉巻きタバコを参照
葉巻きタバコはもっとも原始的なタバコの形態であり、乾燥し発酵したタバコの葉を巻いて作られている、発祥はメソ・アメリカ文明からと言われており古くから貿易品として利用されてきた。
種類は大きく分けて湿度管理の必要なプレミアムシガーと管理の必要のないドライシガーに別れている。主な産地はキューバ・ドミニカ共和国・ホンジュラス等喫煙時間はプレミアムシガーで30分から1時間前後。ドライシガーは15分から30分前後である。ただしシガレットとは違って、一度に吸いきらずに途中で火が自然に消えるに任せ、後で吸い直すこともしばしば行われる。
日本においては、喫煙時間の長さから一部の裕福層や文化人が嗜むイメージがあるものの、その趣味性や文化性が見直され1990年代のシガー(葉巻)ブームからシガーバーの普及が進み接する機会が増えている[要出典]。
[編集] 刻みタバコ
刻んだタバコを、
- 紙に巻いて吸うもの
- 器具に詰めて吸うもの
に分かれる。
[編集] 紙巻きタバコ
詳細は紙巻きタバコを参照
一般にタバコという場合、これを指す。シガレットとも呼ばれる。パイプ等の喫煙用具を必要とせずそのまま吸えるので、喫煙者に広く普及している。
1本あたりの平均的な燃焼時間は3–5分程度で、概ね半分から2/3程度吸ったら火を消して、吸殻として捨てる。火のついた先端は非常に高温で800度近くにもなるので、扱いには注意を要する。
紙巻き煙草の税率が高いEUでは、あらかじめ長い煙草を作り、自分で切ってさや紙に詰める製品もある。(ドイツのStax Trio Zigaretten等)
[編集] 手巻きタバコ
紙巻きタバコに対し高額な税金が課されている国々(主にヨーロッパ)では、刻みたばこ(いわゆるシャグタバコ)とシガレットペーパーを別々に購入し、自分で手巻きして喫煙する方法も行われる。街のタバコ屋では一般に見られる20本詰めの紙巻きタバコパッケージのほか、刻みタバコとシガレットペーパーが販売されているケースがほとんどである(日本でも多くの喫煙具専門店では同様のものが販売されている)。自分で手巻きした場合と既製品の紙巻きタバコを購入した場合、自分で手巻きしなくてはならない手間はあるものの、より「安価に」に喫煙することができるため、喫煙者に広く普及している。
手巻き方法は、シガレットペーパーを一枚取りだし、折り目に刻みタバコを摘んで並べる。舌でシガレットペーパーの糊付け部分を湿らせて筒状に丸める。人によってはフィルターを吸引口に装着したり、添加物を加えることもある。あとは紙巻きタバコと同様、点火して喫煙する。
なお、後述の「喫煙のリスク」に関する警告文は、刻みタバコのパッケージにも同様に記載がある。
[編集] パイプ
詳細はパイプ (タバコ)を参照
主にアメリカやヨーロッパ等で使われる喫煙具。刻みタバコと香料を加えたものを詰めて吸う。欧州では19世紀ごろまでは、労働者等の大衆の喫煙方法とされていた。
フィルタが存在せず煙路が長いため煙温も低く、紙巻きに比べタバコを味わうのに向いている。落ち着いて吸わないと途中で火が消えてしまうので、喫煙を時間を掛けて行う喫煙具と言える。
葉の分量は概ね、紙巻きタバコ3–4本程度。ただし紙巻きタバコと違って、吸った煙は飲み込まず、口腔内でふかすようにして喫煙する。このため、口腔粘膜からニコチンを摂取することになり、紙巻きタバコよりも効率良く、多くのニコチンを吸収することになる。結果として、パイプを1時間程度掛けて一服することにより、紙巻きタバコ10本程度をチェーンスモーキングする程の充足感が得られ、場合によっては非常に経済的な喫煙方法であると言える。途中で吸うのを止めるとパイプの中の火は酸欠で勝手に消えてしまうため、時間を空けて後で再点火して吸うことも可能である。
銘柄によってタバコ本来の葉の味から、菓子のような甘い風味をつけた物まであり、その喫煙スタイルは他の喫煙方法にはない幅広い選択肢を持つ。
[編集] 水タバコ
詳細は水タバコを参照
水パイプ、水キセル、シーシャとも呼ばれ、タバコ煙を水にくぐらせた後、極めて長い煙路を経て吸引する。タール分や一酸化炭素を主に、多くの煙に含まれる成分が水に溶けて省かれ、また煙温も低下するので、煙に一定の成分変化があるとされている。
トルコなどの中東方面で用いられる大型のもの(複数人数で吸うタイプのものもある)から、中国などアジアで見られる小型のものまでさまざまあり、日本でも吹きガラス製の水パイプなどが存在している。当然ながら、この喫煙に使った後の廃水は非常に有害で、うっかり口にすると大変不味い。喫煙本数は増える。
また、吸い口が直接本体に付いているものは梵具(ぼんぐ)と呼ばれる。こちらは煙路は短い。どちらも実験器具の洗気瓶と同じ構造である。サイズによって燃焼時間はまちまちである。
[編集] 煙管
詳細は煙管を参照
煙管(キセル)は日本、朝鮮、中国で見られる喫煙具。パイプをまねて作られた。雁首、羅宇(らお)、吸口から構成され、雁首の火皿に刻みタバコを詰め、着火する。
本来、一息で吸いつくすもので、燻らせるものではない。日本では江戸時代の喫煙は大半がキセルによるものだった。一般的に紙巻きやパイプタバコよりも、葉の刻み方が細かい。
一服あたりの平均燃焼時間は2–3分程度だが、使うタバコの葉の量は紙巻タバコの1/4程度に相当で、人によっては(本来の喫煙法ではないが)、紙巻きタバコの吸殻(俗にシケモクと呼ばれる)をこれに詰めて吸う人もいる。
[編集] その他
喫煙の他に、タバコを原材料とする製品によるニコチンの摂取方法として、噛みタバコ、嗅ぎタバコなどの方法が知られている。詳細はタバコに詳しい。
[編集] 健康への影響
タバコ会社は、喫煙を個人的趣味・嗜好の問題と弁明するが、喫煙は“喫煙病(依存症+喫煙関連疾患)”という全身疾患であり,喫煙者は“患者”という認識がなされている[11](日本口腔衛生学会,日本口腔外科学会,日本公衆衛生学会,日本呼吸器学会,日本産科婦人科学会,日本循環器学会,日本小児科学会,日本心臓病学会,日本肺癌学会の9学会による)。喫煙の人体への健康影響に関しては世界保健機関を含む幅広い機関において多数の研究がなされ、膨大な知見が蓄積している。近年は受動喫煙と喫煙リスクに対する研究活動も活発に行われている。
[編集] 薬物依存症
動物実験などの知見から、ニコチンは明らかな依存性を持つことが知られている。ニコチンは、神経伝達物質であるアセチルコリンに分子構造が類似し、ニコチン性アセチルコリン受容体(レセプターとも)に作用することで、中枢神経のドパミン神経系、特に脳内報酬系を活性化する。そのため、摂取後に一時的に快の感覚や覚醒作用を得られる。このような報酬系を介した薬理作用は、覚醒剤など依存性を有する他の薬物と共通である。
ニコチン摂取を続けると、ニコチン受容体がダウンレギュレーション(受容体の数が減ること)を起こし、ニコチンを外部から摂取しないと神経伝達が低下した状態となる。これがニコチン離脱症状であり、自覚的にはニコチンへの渇望が生じる。喫煙に対して依存性を示す者は「喫煙でリラックスできる」と表現するが、実際は離脱症状を喫煙によって一時的に緩和しているに過ぎない。依存症の項を参照。
また、ニコチンを過剰摂取した場合、嘔吐、下痢、縮瞳などの末梢神経症状や、妄想、幻覚および錯乱などの中枢神経症状を呈することもあり、場合によっては死亡することもある。
喫煙依存症は、精神医学において物質依存(依存症)の一種であると認められており、WHOによる疾病の分類基準である国際疾病分類第10版(ICD-10)にも「F17.2 タバコ使用<喫煙>による精神および行動の障害 依存症候群」として分類されている。日本においても、中央社会保険医療協議会により正式な疾患と認められ、2006年4月からニコチン依存症患者の病院での禁煙治療が健康保険制度の適用となった。これにより禁煙治療における患者負担額が大幅に軽減されることとなり、禁煙外来などが新設されるケースもある。
喫煙開始年齢が低いほど依存を形成しやすい傾向があると言われている。また、喫煙開始年齢が低いほど健康に与える影響や後年の発癌率も高いことが知られており、未成年の喫煙防止が大変重要である。
近年、国内外の幾つかの研究グループによって、たばこ依存症に陥りやすくし、その結果、肺がんになりやすくする遺伝子の存在が明らかになっている。米国M.D.アンダーソンがんセンターによると両親共にたばこ依存症を招く遺伝子を持つ喫煙者はそうでない喫煙者と比べて80%も肺がんになる可能性が高いとの調査報告がある。
[編集] がん
タバコの煙には、発癌性を有する化学物質が含まれており、一方でニコチンには依存性が認められている。そのため、喫煙者は長期間にわたり繰り返し発癌性物質に曝露される行為を繰り返してしまう傾向が高い。
喫煙によって罹患率が増加することが示されている癌として、肺がん、喉頭がん、咽頭がん、食道がん、膀胱がんなどがある。
ヒトの身体を構成する細胞は、分裂・増殖を繰り返している。がんは、細胞分裂の際、特定の遺伝子のコピーにミスが起こることで生じる。喫煙の際には、煙によって気道や肺の炎症・破壊が生じ、修復のために細胞の増殖が促進される。また、タバコの煙に含まれる物質は遺伝子毒性を持つことが実験的に示されている。このように、細胞分裂が活発に行われ、しかも遺伝子のコピーミスが生じやすい環境におかれることで癌が発生しやすくなると考えられている。
日本における2003年の癌の統計によれば、20~24歳の男性が喫煙を開始して肺がんを発症して死亡する数は人口10万人あたり114.0人であり、非喫煙者は24.1人との統計が出されており、約5倍となる。全癌においては、10万人中喫煙者で571.5人非喫煙者で347人と、喫煙者において有意に癌罹患率が高いことが示されている[12]。
カナダの保健省が学術誌「Cancer Research」(2007年6月発行)で発表した研究によれば、喫煙により遺伝子が傷つけられることで精子が改変され子孫にも癌や奇形などの遺伝的リスクが高くなるため喫煙時の子供の有無に関わらず子孫への悪影響があるとしている。 また、これらの遺伝子の変異が遺伝すれば子孫の遺伝的構成物の中に不可逆的に存続し当然変異した遺伝子を元に戻すことはできない。 [13]。
[編集] 呼吸器疾患
喫煙により慢性気管支炎、肺気腫などが生じる。これらの2つの疾患のことを纏めて慢性閉塞性肺疾患(COPD)とも言う。 軽度のものを含めると、習慣的喫煙者のほぼ100%に気腫性変化が生じている一方、非喫煙者にはほとんど見られない。
ヒトの肺は、数億個の直径約0.1mmの肺胞で構成され、その総面積は約50~60m2であり、この肺胞を介して血液と空気中の二酸化炭素、酸素などのガス交換を行っている。肺胞がタバコの煙に曝露されることで肺胞壁の炎症、破壊が生じ、結果的にガス交換可能な面積が減少してしまう。これが肺気腫の状態である。通常の空気を呼吸するだけでは充分なガス交換を行えず、また肺胞の破壊によって生じた肺の空洞によって胸郭の動きが制限され、呼吸困難となる。重症になると運動制限や酸素吸入を要する状態になる。
WHOによれば全世界の死亡率第4位とされ、日本でも患者数は生活習慣病のほぼ倍と言われている。
喫煙は気管支喘息も悪化させることが知られている。
[編集] 循環器疾患
タバコの煙に含まれる活性酸素は、血管内皮細胞を障害することが知られている。そのため、動脈硬化が促進され、狭心症、心筋梗塞、脳血栓 、脳塞栓、動脈硬化、動脈瘤、閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)などのリスクが増加することが統計的に示されている。高血圧症治療に用いられる、β遮断薬の降圧効果を減じる作用がある[14]。
[編集] 妊娠中の喫煙による影響
喫煙は、妊娠を脅かす最大の防ぎうる危険因子である[15]。周産期死亡の10%・低出生体重児の35%・早産の15%が喫煙に起因するという研究[16]がある。
妊娠中に能動喫煙あるいは受動喫煙すると、流産、早産の危険性が上昇し、出生後の乳幼児突然死症候群(SIDS)、中耳炎、呼吸器感染症や行動障害などの罹患率が増加する。また、口蓋裂、口唇裂[17]などの先天異常の危険性も高まる。
妊娠中に喫煙していた母親から出生した子供は知能指数(IQ)が低いという報告もいくつか見られる。たとえば3044人の男性を対象にしたデンマークの大規模な調査では、平均18.7歳時点でのIQと妊娠中の母親の喫煙状態が負の相関を示したという[18]。
また、妊娠中に母親が喫煙していた場合、子供も喫煙者になりやすい傾向がある。
禁煙などによる精神的ストレスは喫煙ほど児に多大な影響を及ぼさないことを、英国の疫学研究[19]が示している。これは、妊婦が直ちに禁煙すべき根拠の一つとなっており、日本では母子手帳に「喫煙を直ちにやめる」よう、記載が行われている。
[編集] 免疫低下・感染症
喫煙は、免疫力を低下させ[20]、呼吸器を傷害するなどのメカニズムにより、感染症のリスクを増加させる。感染症は、癌などとならび現代でも死因の大きな割合を占める疾患である。
喫煙者は非喫煙者と比べて、肺炎球菌感染症のリスクが2~4倍高い。インフルエンザへの感染リスクも数倍高く、罹患した場合にも重症化しやすい。喫煙者はまた、肺結核の危険も高い[21]。また小児において、受動喫煙は中耳炎の危険因子である。
ヒトの気道粘膜の細胞は、粘液を分泌し線毛を運動させることで異物を排出する役割を果たしている。喫煙はこれらの細胞を破壊、あるいは機能を低下させるため、ウイルスなどの排出機能が低下する。
喫煙による免疫機能低下にニコチンが関与しているという説がある。[要出典]ニコチンで処置した白血球は、抗原に対して正常な反応を示さなくなることが実験的に示されている。また、ニコチンが脳に働き交感神経を興奮させノルアドレナリンの分泌を亢進させることで、間接的にT細胞の活性を低下させている可能性もある。
免疫低下は、感染症のみならず発癌にも関与する。これは免疫系が、遺伝子が変異した細胞を攻撃することで癌の発生を予防する働きを持っているためである。このことは、代表的な免疫低下疾患であるAIDS患者において子宮頸がんなどの発生が多いことからも窺える。喫煙者における発癌に、免疫低下も関与している可能性が指摘されている。
[編集] 歯科疾患
喫煙者では歯周病有病割合が高く、歯の喪失本数も多いことが統計的に示されている。これは、タバコが歯肉の血管を収縮させることや、歯肉の炎症後の血管新生を遅らせること、炎症自体を起こしにくくさせることなどによると考えられている。海外では、たばこの容器には、進行した歯周病の写真と「タバコは歯周病を起こす」というメッセージが表示されている国がある。
歯周病は、口腔のみならず全身の動脈硬化を促進し、心筋梗塞や早産のリスクを高めることが知られており、喫煙による動脈硬化のリスクを相乗的に高める可能性がある。
[編集] 精神・脳・神経疾患
- 認知症:前向きコホート研究で、喫煙によって脳血管性痴呆やアルツハイマー病が増加することが示されている。また、認知症ではない高齢者17,610人を対象とした調査において、喫煙者の方が認知機能低下のペースが速いことが示されている[22]。その一方、日本のアルツハイマー患者を対象とした研究ではアルツハイマー患者に非喫煙者が多いと言う報告もあり[23]、オランダにおける研究では危険因子となる遺伝子型をもつ場合は喫煙がアルツハイマーの危険因子となるが、そうでない場合は危険因子と見なされないという報告もある[24]。
- パーキンソン病 : 1960年から2004年の研究を調べたメタ・アナリシスによって性別・年齢に関わらずニコチンがパーキンソン病の防御因子になるとの説が報告されているが[25]、喫煙自体は脳血流を低下させるため、パーキンソン病を含む神経疾患の危険因子とされている。[26]
- 睡眠障害:ニコチンは覚醒作用を持つため、就寝前の喫煙は睡眠障害をきたす可能性がある。
[編集] その他の疾患
- 糖尿病:2007年に発表されたメタ分析[27](対象論文25、調査人数1200万人)によれば、喫煙者は非喫煙者よりも2型糖尿病の罹患率が1.6倍高いという。さらに、喫煙量と罹患率には正の相関があり、特にヘビースモーカーでは罹患率がさらに高いと報告されている。[要出典]
- 勃起不全(ED):喫煙者は非喫煙者よりも2倍以上勃起不全の罹患率が高いという[28]。喫煙がEDを起こす仕組みは完全には明らかでないものの、血管内皮の傷害による陰茎海綿体の血管拡張障害によると推測されている。[要出典]
- クローン病
- 関節リウマチ
- 創傷治癒の遅れ:喫煙者では、創傷部位の皮膚の回復が遅いことが知られており、手術後の回復日数も長いことが示されている。
- 美容上の問題:喫煙は皮膚のシワを増やすことが知られており、長期喫煙者はスモーカーズフェイスと呼ばれる独特な顔貌を呈するといわれている。また、煙に含まれるヤニが歯に付着したり、歯周病を増やす(前述)ことにより、美容上の問題が生じやすい。
- スポーツなどへの影響:ニコチンは血管を収縮させ血流を減少させる。またタバコの煙に含まれる一酸化炭素は、酸素よりもヘモグロビンと結合しやすく、末梢への酸素供給能力を低下させる。そのため、スポーツ選手や楽器奏者、ダンサーなどには職業上有害である。多くのプロスポーツ選手は非喫煙者だが、以下のような例外もある
[編集] 喫煙と文化
喫煙行為は、ヨーロッパ人によるアメリカ大陸発見後に急速に世界中に広まったため、様々な地域で並列進化的に多様な喫煙方法が発達している。また、煙草の銘柄は相当数に上る。多様な喫煙方法や銘柄などの「喫煙文化」に関心を抱く人もおり、趣味性の高いとみなされる喫煙方法には少なからぬ思い入れを持つ愛好者も存在し、喫煙具や煙草の銘柄のコレクターも存在する。この他、喫煙具関連のノベルティも少なからず存在しており、企業文化との接点も存在する[29]。このように、喫煙には文化的な側面もみられる。[要出典]
また、喫煙の害が取り沙汰される以前には、モータースポーツなどの世界において、煙草産業は重要なスポンサーの1つであった。
[編集] 喫煙と社会
タバコは健康に有害であるほか、喫煙によって直接的ないし波及的に発生する社会的な問題もある。例えば、日本におけるタバコによる税収は年間2兆円を超えるが、一方で医療費増加や労働力損失、火災による損失などはそれを上回るという試算もある[30]。米国を例にとれば、喫煙は毎年1670億ドル(喫煙者一人当たり約3650ドル)の経済損失を生む[31](米国の喫煙者がたばこ購買に使う810億ドル[32]の倍以上)との試算がある。また、タバコの出費による貧困層の家計の悪化なども問題となっている。
[編集] 喫煙率
- 国別にみると、全人口および男性の喫煙率は、東アジアで高く北米やヨーロッパで低い。逆に、女性の喫煙率は東アジア諸国の方が低い傾向がある。WHOの資料(2002年)によると、中国 35.6(男66.9、女4.2)%、韓国 35.0(男65.1、女4.8)%に対し、スウェーデン 19.0(男19.0、女19.0)%、米国 23.6(男25.7、女21.5)%であった[33]。
- 日本での成人の喫煙率は1966年頃(男性83.7%、女性18.0%)をピークに、2006年では全体で26.3%(男性41.3%、女性12.4%)と減少傾向にある(JTの資料による)。特に60歳以上の男性の喫煙率は、ピーク時の約5分の2に低下している。しかし先進国と比較すると、日本の全人口の喫煙率はまだ高く、特に男性に関してはトップレベルである。一方、女性の喫煙率は欧米諸国の方が高い。
- 日本においては男性の喫煙率がかなり高いが、2004年以降、男性の喫煙率は低下し、逆に女性の喫煙率は緩やかに上昇する傾向が見られている。女性全体での喫煙率は、ここ30年来15%前後を保持しているが、近年20代女性の伸びが顕著である(2003年度調査では23.1%となっている)。
- 年齢層別にみると、30代の喫煙率が性別や時代に関わりなく高い傾向にある。
- 世界的に、学歴が低く、低所得、失業中などの人において喫煙率が高いことが多数の統計的研究によって裏付けられている。(#喫煙と貧困にて後述)
- 統合失調症などの精神疾患患者において喫煙率が高いことが知られている。米国の研究によると、統合失調症患者の喫煙率は、入院中81.5%、外来通院中68.4%であり、米国全体の平均喫煙率23%を大きく上回っていた[34]。背景として、健康管理能力の低さ、喫煙のリスクの理解力低下や精神症状によるストレスなどの要因のほか、ドパミン受容体やアセチルコリン受容体の異常といった生物学的メカニズムが関与しているという説もある。
- 国内たばこ販売数量は、1996年度の3483億本をピークに少しずつ減少しており、2007年度には2700億本(国産1749億本・外国産950億本)となっている(日本たばこ協会の資料による)。
- 日本における喫煙率低下の要因としては、煙害の啓蒙や、健康志向の普及、鉄道駅などの公共空間における禁煙区域の明確化(後述喫煙規制や禁煙に関する動きの節参照)と並んで、たばこ税の増税に伴う値上げの影響が挙げられる。
- 海外では一般的に、頻繁なたばこ税増税や、法律による(国によってはカフェやバー、レストランなど飲食店を含む)禁煙区域の設定、たばこパッケージに貼付する健康警告表示(国によっては実写の肺がん患者の肺を表示)など、喫煙率低下のための施策が行われている。
[編集] 紙巻タバコの生産量
国際連合の統計資料 (United Nations Industrial Commodity Statistical Yearbook 2001) によると、2001年の全世界の紙巻タバコの生産本数は5兆4710億本である。葉タバコの最大生産国である中国が、紙巻タバコにおいてもシェア3割を超える最大の生産国となっている。
葉タバコの生産量と比較すると、アメリカ、ロシア、日本、北ヨーロッパ諸国が原料の輸入国であること、インドネシア、ギリシャ、トルコは農業生産と国内の加工業までが一貫していることが分かる。
- 中国 - 1兆7000億本 (31.1%)
- アメリカ - 5800億本 (10.6%)
- ロシア - 3740億本 (6.8%)
- 日本 - 2372億本 (4.3%)
- インドネシア - 2300億本 (4.2%)
- ドイツ
- トルコ
- イギリス
- オランダ
- ブラジル
主要生産国の国民一人当たりの生産量でみると順位は下記の通りに変わる。オランダが特に多いのは、多くが輸出に向けられるためである。(2004年)
[編集] 喫煙による経済的損失
世界銀行は喫煙の全経済効果を分析している[35]。それによると、タバコを経済活動から締め出せば、喫煙者がタバコに費やす金銭は他の商品・サービスに用いられ、新たに雇用と経済活動が生まれ、たばこ産業で失われた雇用を穴埋めできるという。この場合、米国内なら13万人以上の雇用を生み出すという試算[36]がある。
経営上、企業は従業員に禁煙を勧めるほうがよいという意見がある。というのは、非喫煙者のほうが生産性が高く、ミスが少なく[37]、また禁煙を進めることで企業は健康保険費用を大きく効果的に節減できるからである[38]。
[編集] 米国の試算
米国では、喫煙は毎年1670億ドル(喫煙者一人当たり約3650ドル)の経済損失を生む[39](米国の喫煙者がたばこ購買に使う810億ドル[40]の倍以上)との試算がある。
[編集] 日本の試算
厚生労働省は「健康日本21」の中で、喫煙によって国民医療費の5%が超過医療費としてかさむことや、煙草関連疾患による労働力損失を含め、「社会全体では少なくとも4兆円以上の損失がある」としている。通常、喫煙による経済的損失とは以下の事項を含む。
たばこ税自体は、個人から国庫への金銭の移動なので、国全体で見れば利益でも損失でもない。
[編集] 喫煙と貧困
喫煙は、世界の貧困問題と不可分である。世界的に、学歴が低く、低所得、失業中などの人において喫煙率が高いことが多数の統計的研究によって裏付けられている[41]。複数の研究では、貧しい国の中には家計の約10%が喫煙のために費やされていることもあると指摘されている。そのため、少ない所得から食費・健康管理費・教育費などがさらに削られ、栄養不良・医療費増大・早死・識字率低下をもたらし、社会階層の固定化に寄与している(WHOによる)。世界銀行の出版物[35]は、2020年までには、喫煙で死亡する10人のうち7人は低 - 中所得諸国が占めるようになる、と予測している。
[編集] 喫煙による死亡数
タバコは、世界で2番目に多い死因であり、10人に1人がタバコが原因で死亡(毎年540万人)している。現在喫煙している者のおよそ半数(約6億5千万人)が最終的にはタバコが原因で死亡するといわれている(以上、WHOによる)。世界銀行からの出版物[35]では、2030年までには、6人に1人(年間約1000万人)が喫煙によって死亡すると予測されている。喫煙は、世界で最大の予防可能な死因であるとされる。 しかし、これには異論もあり、煙草による健康被害は疫学上の推測であり、科学的に証明されたものではないため、死亡に至る他の因子があっても、それが喫煙者である場合、喫煙を原因としてカウントする場合があるなど、必ずしも煙草が死亡原因とは言い切れない。
日本では厚生労働省は、「健康日本21」の中で、「最新の疫学データに基づく推計では、たばこによる超過死亡数は、1995年には日本では9万5000人であり、全死亡数の12%を占めている」としている。
日本政府の喫煙対策予算はゼロである。これを「東洋経済」2007年3/24号は、年間6千人しか死者を出さない交通事故対策に1兆7351億円もの予算が計上され、死者のないBSE対策予算にも132億円が計上されていることと比較している。
[編集] 日本の特徴
日本のたばこ行政の特徴として、タバコ事業を管轄しているのが 厚生労働省 ではなく、財務省であるということが挙げられる。他の先進国においては、タバコは人体に影響を与える「薬品」であるとして衛生や医薬品を管理する厚生労働省にあたる省庁が管理している。また財務省は、日本唯一のタバコ製造メーカーである日本たばこ産業(JT)の筆頭株主たることが義務付けられている。すなわち、筆頭株主が行政も担当しているということになる。また、財務省官僚が退職後に日本たばこ産業に再就職(いわゆる天下り)することが過去にみられている。同様に、酒類関連の製造・販売事業も、日本では財務省(国税庁)の所轄である。これはタバコや酒類が課税物資と捉えられているためである。このようなタバコ産業と行政の密接な係わり合いがあるため、日本では禁煙に関する立法および行政活動が大いに遅れたと指摘されている。
欧米の先進国の多くでは国家政策として禁煙を奨励したため、喫煙関連の疾患がへり国民の健康の向上および医療費の削減に多いに成功した。また喫煙者がタバコを吸い始め、タバコ依存症になるのは未成年の間であるので未成年の喫煙に関しての立法(タバコ購買における身分証明書の要請およびタバコ広告の禁止)が徹底している。
タバコの容器に表示が義務付けられている、健康に関する警告表示(後述各国の警告表示)といった、公衆衛生的な管理にあたっているのも財務省である。諸外国と比べ、日本の警告表示には写真等が含まれず、文面も穏やかであることから、警告表示として不十分との批判がある。また日本の特徴として、自動販売機によるタバコ販売が活発であることが挙げられる。これによって未成年に対するタバコ販売の禁止が日本では無意味なものとなっている。2004年現在、全国に約62万台の自動販売機が設置されており、実質的に未成年でもタバコが購入できる状況である。そのため1996年頃から、タバコ自動販売機を23時~翌朝5時まで停止させる自主規制が行われている。だが、自販機における深夜帯の売り上げは10%程度しかなく、たばこ業界が批判をかわすためのカムフラージュであるという指摘がある。また、たばこ業界は、2008年中に全てのたばこ自動販売機をICカード「タスポ」による年齢認証を行った上で販売する方式に切り替えると発表した。 2008年7月までに、全国でタスポによる年齢認証が導入された。
[編集] その他の社会的弊害
- ごみとしてのタバコ
- 世界中で海岸ゴミを拾っている国際海岸クリーンアップキャンペーンによれば、海岸ゴミの中では製品タバコ関係が最も多く、約三分の一を占める。
- 東京都千代田区では2002年11月から生活環境条例が施行され、区内路上禁煙地区での喫煙及びポイ捨てが禁止された。違反すると2万円以下の過料を徴収される。[42]同様の条例は横浜市などでも制定されている。[43]
- 札幌市では、吸い殻の投げ捨てに対して罰金1000円を課す『ポイ捨て防止条例』を導入したところ、歩き煙草をする人が9割近く減ったことが市の追跡調査でわかり、罰金が煙草のポイ捨て防止に効果のあることが明らかになった。[44]
- 悪臭源としてのタバコ
- たばこの煙にはアセトアルデヒドやアンモニアをはじめとする臭いの元となる成分が200種類以上含まれており、消臭剤・芳香剤市場では主な悪臭源のひとつに「たばこの臭い」が挙げられている。
- 煙にはタールが含まれているため、頭髪や衣服、エアコンのフィルターなどに吸着した臭いは取れにくく、タール分を媒介に雑菌が繁殖し、さらなる悪臭の源となる。
- 消臭対策を行っている喫煙者も存在するが、(嗅覚疲労によって)たばこの臭いに無頓着なヘビースモーカーも少なくない。
- 火災とタバコ
- 平成15年版消防白