伊吹山

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伊吹山
Mount Ibuki and N700 Series Shinkansen.jpg
伊吹山と、麓を通過する東海道新幹線
標高 1,377.31[1] m
所在地 滋賀県米原市
岐阜県揖斐郡揖斐川町
位置 北緯35度25分04秒
東経136度24分23秒
[2]
山系 伊吹山地[2]
種類 堆積岩(石灰岩
伊吹山の位置
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伊吹山(いぶきやま、いぶきさん)は、滋賀県岐阜県県境にある伊吹山地の主峰で、標高1,377mである。日本百名山[3]新・花の百名山[4]、および関西百名山[5]に選定されている。

概要[編集]

一等三角点が置かれている頂上は滋賀県米原市に属し[1]滋賀県最高峰の山である。周辺は琵琶湖国定公園に指定されている[6]

古くから霊峰とされ、日本書紀においてはヤマトタケルが東征の帰途に伊吹山の神を倒そうとして返り討ちにあったとする神話が残されている[7]日本書紀では「五十葺山」あるいは「膽吹山」などのように記され[7]古事記では「伊服阜能山」[8]と記述される。藤原実方が「かくとだに えやは伊吹の さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを」と和歌に詠み、後拾遺和歌集および小倉百人一首に収録された[7]。この和歌を元に「伊吹山」は古来より歌枕として用いられ、「伊吹百草(もぐさ)」が育つ薬草の山として知られていた[3]

濃尾平野では、冬季に北西の方角から吹く季節風を「伊吹おろし」と呼ぶほか[9]校歌に「伊吹山」に関する語句が歌詞に使われていることが多い[10]

「伊吹山」の読み方について、国土地理院の登録された山名をはじめ、地図や道路標識などの振り仮名は「いぶきやま」となっており、伊吹山の山麓地域では「いぶきやま」と呼ばれる。一方、「いぶきさん」という呼び方も存在し[11]、滋賀県の伊吹町では「いぶきやま」、美濃尾張方面では「いぶきさん」とする名鑑がある[12]ほか、滋賀県内の伊吹山に近い地域では「いぶきやま」、遠い地域になるほど「いぶきさん」と呼ぶ傾向があるとも言われている[13]岐阜県でも滋賀県と同様の傾向がある[要出典]

歴史[編集]

山頂の日本武尊
2010年まで山頂にあった伊吹山観測所

地質[編集]

伊吹山空撮

伊吹山は約3億年前に噴火した海底火山であったとされており[23]ウミユリフズリナの化石が発見されたことから、地層には約2億5千年前の古生代に海底に堆積した層が含まれていると考えられている[24]。その時期にサンゴ礁が形成されたことで石灰質の地層が堆積し、現在は良質の石灰岩が採掘される山として知られ、山頂付近は平らで広いカルスト台地となっている。

伊吹山の石灰岩は、古くは漆塗りの原材料に用いる消石灰として1961年ごろには開発されていたが[25]近代コンクリートセメント需要の急増により大量に採掘されてきた。1949年に近江鉱業が伊吹山に弥高採鉱場を開き[26]、1951年に住友大阪セメント伊吹工場が開発工事に着手する[27]など、大規模に採掘が進められ、南西の稜線は山容が変貌するまでに大きく削り取られた[25](写真参照)。1971年からは住友大阪セメント伊吹工場によって南西斜面の緑化活動が始められ、2003年に同社が滋賀興産株式会社に事業を引き継いだ現在も続けられている[28]

湧水[編集]

石灰岩層は山肌に降った雨などを浸透させ、伊吹山の山麓には石灰岩層から抽出されたカルシウム分などミネラルを多く含む湧水が豊富である。このうち、米原市(旧伊吹町)にある泉神社の湧水は名水百選に選ばれ、醒ヶ井宿にある居醒の水が平成の名水百選に選ばれたほか、「春照の泉(臼谷の湧水)」が知られている。

植生[編集]

山麓から山頂にかけて様々な野草の群生地があり、伊吹山頂草原植物群落が植物天然記念物に指定されている[18]。約1,300種類の植物が生育して、コイブキアザミ Cirsium confertissimum などの9種の固有種がある[16][29]。景観は高山の高茎草原そのものの様相をみせる。おもなものとしてオオバギボウシカノコソウキバナノレンリソウクガイソウ、シシウド、シモツケ、シモツケソウ、ニッコウキスゲハクサンフウロメタカラコウ、ユウスゲ、ルリトラノオなどがある[30]。山麓では約280種の薬草が生え、揖斐川町の旧春日村古谷地区では昔から薬草を生活の糧にして生きてきた[31]。滋賀県米原市の山麓には、薬草を利用した温泉施設がある[32]。また、イブキカモジグサキバナノレンリソウイブキノエンドウのように、ヨーロッパを原産とする雑草が生育しているが、これらは、織田信長ポルトガル人宣教師の希望を聞き入れ、伊吹山に土地を与えてハーブガーデンを作ったときに、ヨーロッパから持ち込まれたハーブに紛れて入ってきたと推測されている[33]

オオバギボウシ Hosta montana.JPG Valeriana fauriei Kanokosou in Ibukiyama 2010-7-10.jpg Lathyrus pratensis Ibukiyama.jpg Spiraea japonica in Mount Ibuki 2010-07-10.jpg Hemerocallis citrina Baroni Ibukiyama.jpg
オオバギボウシ カノコソウ キバナノレンリソウ シモツケ ユウスゲ

「イブキ」を冠する和名の種[編集]

イブキアザミ、コイブキアザミ、イブキジャコウソウイブキトラノオイブキフウロ、イブキトリカブト、イブキレイジンソウといった20種以上のイブキを冠する種の植物が自生している[30][34][35]