八甲田山

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八甲田山(はっこうださん)


八甲田山
Hakkoda Mountains 01.jpg
田代牧場方面から見た八甲田山
中央手前が雛岳、中央奥が高田大岳、右奥が赤倉山
標高 1584 m
所在地 日本の旗 日本
青森県青森市、青森県十和田市
位置 北緯40度39分31秒
東経140度52分38秒
座標: 北緯40度39分31秒 東経140度52分38秒(八甲田大岳)
山系 奥羽山脈
種類 成層火山
八甲田山の位置
Project.svg プロジェクト 山
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八甲田山(はっこうださん)は、青森市の南側にそびえる複数火山の総称で日本百名山の一つ。「八甲田山」と名がついた単独峰は存在せず、18の成層火山や溶岩円頂丘で構成される火山群である。命名の由来について「新撰陸奥国志」によれば、八の(たくさんの)甲(たて)状の峰と山上に多くの田代(湿原)があるからという。現在[いつ?]の火山活動は穏やか。周辺は世界でも有数の豪雪地帯である。

明治35年に青森の歩兵第五連隊が雪中行軍の演習中に記録的な寒波に由来する吹雪に遭遇し、210名中199名が遭難した事件(八甲田雪中行軍遭難事件)が発生、それを基に新田次郎の小説「八甲田山死の彷徨」が書かれている。なお、陸上自衛隊青森駐屯地に駐屯する第5普通科連隊も、毎年厳冬期に八甲田山系での冬季雪中戦技演習を行なっている。

八甲田山系[編集]

八甲田山系は八甲田大岳を盟主として南北2群の火山よりなり、その中間に睡蓮沼を含む湿原地帯がある。
山系を構成する山々国道103号国道394号の重複道路を境に、北部八甲田山系と南部八甲田山系に分かれて、後者の方が地層が古い。

北部八甲田山系
北部より前嶽・田茂萢岳 (1,324m) ・赤倉岳 (1,548m) ・井戸岳 (1,550m) ・大岳 (1,584m) ・小岳 (1,478m) ・高田大岳 (1,552m) ・雛岳 (1,240m) ・硫黄岳(八甲田) (1,360m) ・石倉岳(1,202m)
南部八甲田山系
北部より逆川岳 (1,183m)・横岳(1,339m) ・猿倉岳 (1,354m) ・駒ヶ峯 (1,416m) ・櫛ヶ峯 (1,517m) ・乗鞍岳(八甲田)(1,450m) ・南部赤倉岳(1,290m)

地形と噴火史[編集]

ロープウェイ山頂付近から見た冬の八甲田山
奥の山が大岳、その左が井戸岳、右は田茂萢岳

八甲田山は近くにある十和田湖と同じく、カルデラを有する火山群である。広い湿原のある田代平近辺の窪地がカルデラの北半分に相当し、南半分はカルデラ形成後に噴火した八甲田大岳などの火山群が盛り上がっている。櫛ケ峯(1,517m)のある南八甲田は古い先カルデラ火山に相当する。カルデラを形成した巨大噴火は、調査されているだけで過去2回(65万年前と40万年前)発生した。南八甲田は2回目のカルデラ噴火の前に火山活動を終えている。北八甲田はカルデラ南半分を埋める形で16万年前から活動を始め、繰り返し噴火しながら多数の(余り大きくない)成層火山を形成した。歴史時代の記録では溶岩を流出するような大きな噴火は無いが、山群の所々から火山ガスが噴気している。

観測体制[編集]

2012年時点では気象庁が24時間体制で監視する全国47の活火山[1]には入っていない。しかし、周辺にある気象庁や防災科学技術研究所等の地震観測施設により地震の観測が行われている [2]東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)以降、八甲田山周辺を震源とする地震が増加している。また、2013年2月以降、山頂直下を震源とする地震が散発的に発生している[2]。一方、GPS観測により山体が膨張してるように見える[3]として2013年6月18日に気象庁が観測機器を新たに設置し、監視を強化した事が報道された[4]。2013年9月からは、東京大学地震研究所と東北大学噴火予知研究観測センターらによる12箇所の観測点による重力観測が実施されている[5]

火山活動に伴う死亡事故[編集]

1997年には訓練中の自衛隊員3名が、窪地から噴出し、そこに滞留していた高濃度の炭酸ガスにより窒息死する事故が発生している。また2010年6月には、酸ヶ湯温泉上方の登山道を外れた沢に於いて、山菜採りに訪れていた女子中学生1名が、現場に滞留していたと考えられる火山ガスによって、中毒死する事故が発生している。

レジャー[編集]

標高1,584mの大岳のほかに、田茂萢岳(たもやちだけ)、赤倉岳小岳高田大岳などの山々がほとんど同じ高さで並んでいる。ロープウェイは田茂萢岳に設置されており、冬はスキー、積雪期以外ならハイキング気分で山歩きが楽しめる。秋には全山紅葉し見事な錦秋模様となる上、登山道沿いにはコケモモガンコウランがたくさん実をつけており、目と舌の両方を楽しませてくれる。また、冬季には東北地方でも有数の豪雪と強い季節風によりアオモリトドマツに見事な樹氷を楽しむことができる。加えて、山麓に散在する温泉群は、多様の泉質で味わい深い。

酸ヶ湯方面から見た八甲田山大岳

北八甲田山系は比較的登山道が整備されている山が多いものの、南八甲田山系の登山道は意図的にぎりぎり人が利用できる程度の整備しか行われていない。そのため、南八甲田山系の山に無雪期に登るためには長時間の藪こぎや荒れた登山道の移動を強いられる。南八甲田山系の登山は夏期の登山よりも、山スキーを利用した積雪期の登山を行う人の方が多い。

モデルコース[編集]

  • 酸ヶ湯温泉バス停→仙人岱→八甲田大岳→毛無岱→酸ヶ湯温泉バス停・所要時間5時間(標高差700m)

山岳スキー[編集]

日本有数の山岳スキー場としても有名で、6km前後の各コースを約半年に渡り楽しむことが出来る。

湿地[編集]

毛無岱の木道 左に横岳

八甲田山には、名前の由来の通りにたくさんの高地湿地があるので有名である[6] [7]。八甲田山が他の高山に対して景観上の特異性を持っているのは、この湿原群に負うところが大きい。

  • 仙人岱
    仙人岱(せんにんたい)は酸ヶ湯温泉(@八甲田ビジターセンター)から大岳へ登る途中の比較的頂上近くにあり、「辰五郎」水飲み場がある。またここはヒメワタスゲの分布南限地となっていて、ヒナザクラアオノツガザクラモウセンゴケコバイケイソウなども生育している。木道もあるが、以前の登山者による過度の踏みつけにより、荒廃が激しく裸地化している場所が多く、現在植生の復活が図られている。モリアオガエルヤマアオガエルイモリなどの両生類も多く見られる。
  • 毛無岱
    毛無岱(けなしたい)は大岳から大岳鞍部避難小屋から別ルートで酸ヶ湯温泉に下る途中にあり、上毛無岱・中毛無岱・下毛無岱の広大な湿地である。中毛無岱からの階段から望む下毛無岱の全景は多くの登山者が足をとめ写真を撮る絶好のポイントとなっている。テラスがあり、そこで風景を見ながら休憩することもできる。
  • 田茂萢
    田茂萢(たもやち、東北地方で萢=谷地=谷戸)は八甲田スキー場の八甲田ロープウェイで登る田茂萢岳(標高1324m)頂上に広がる湿原で、木道がヒョウタン(英語でgourd=ゴード)のように8の字になっているゴードラインを歩くことができる。晴れていれば赤倉岳・井戸岳・大岳が眼前に見えて、そこへ縦走する山道もあり、毛無岱へ抜ける道もある。ミツガシワチングルマヒナザクラエゾシオガマなどが見られる。特に7月下旬から8月中旬のキンコウカの群生と、10月上旬の草紅葉は見事である。山頂公園駅には売店やトイレ、食堂などが完備されている。
紅葉の頃の睡蓮沼
右が硫黄岳、左が石倉岳
  • 睡蓮沼
    睡蓮沼(すいれんぬま)は国道103号国道394号の睡蓮沼バス停から階段を登ったところにある沼で、アクセスはよい。入り口に小さな木道があるが、沼をめぐる木道はない。睡蓮沼の名前は、沼に生えるヒツジグサに由来する。睡蓮沼を含んだ付近一帯の湿地は高田谷地といい、高田大岳の西南部にある。観望デッキやトイレが完備されている。
  • 田代平湿原(田代萢)
    田代平(たしろだいら)湿原は八甲田温泉近くにある湿原。青森市の天然記念物に選ばれている。他の湿原と比較して標高が低いので趣が異なっている。ここに生育するのは、他の沼地に生育するヒツジグサと違い、開拓民が持ち込んだものがそのまま定着した温帯性のスイレンである。八甲田温泉から湿原に入ることができ、湿原の端には青い鳥居が立つ龍神沼がある。湿原内の道路は1周およそ1時間程度である。6月中旬にはワタスゲの穂が満開となり一面の海のようになる。同じ頃レンゲツツジヒメシャクナゲツルコケモモも見ることができる。6月下旬にはニッコウキスゲ、7月にはキンコウカカキランモウセンゴケムラサキミミカキグサタヌキモタチギボウシネジバナなどを見ることができる。8月下旬にはウメバチソウサワギキョウナガボノシロワレモコウタチアザミが咲く頃には秋の気配が漂ってくる。
  • 地獄萢
    酸ヶ湯温泉付近の地獄沼の東部にある湿原。
  • 赤水萢
    酸ヶ湯温泉付近の赤水沢の上流部で地獄萢の南部にある湿原。
  • 谷地湿原
    谷地温泉の東部にある湿原。谷地湿原そのものには立ち入りはできないが、谷地温泉手前の展望台付近や国道の傍らから湿原植物を見ることができる。
  • 横沼萢
    逆川岳南側の横沼の西に続く湿原。
  • 逆川萢
    駒ヶ峰、櫛ヶ峯の北側、逆川上流一帯の湿原の総称。
  • 矢櫃萢(矢櫃湿原)
    猿倉温泉から通称旧道をたどり、矢櫃橋手前にある小湿原。ワタスゲやチングルマ、キンコウカなどが目立つ。
  • 一ノ沢分岐の湿地帯
    旧道と乗鞍岳への登山道との分岐地点にある湿地帯。シナノキンバイハクサンチドリコバイケイソウイワイチョウなどが咲く。
  • 黄瀬沼分岐の湿原(地獄峠)
    旧道の黄瀬沼分岐地点にある湿原。旧道から南に分岐すると直ぐに池塘が点在する湿原がある。このほか、一ノ沢分岐から地獄峠の間にも多くの小湿原が点在する。
ヒナザクラが群生する黄瀬萢
  • 黄瀬萢(黄瀬田形萢)
    旧道の櫛ヶ峯登山道との分岐地点付近にある湿原。年によってはヒナザクラが群生する。チングルマ、ヒツジグサ、ニッコウキスゲも見られる。
  • 黄瀬沼萢
    乗鞍岳南腹の黄瀬沼付近の湿原。ウサギギク、ワタスゲの群生が見られる。コバイケイソウトウゲブキツルコケモモなども咲く。黄瀬沼の湖畔は湿原となっており、木道で南端まで移動することができる。
  • 袖ヶ谷地(ソデカ萢)
    御鼻部山山頂近くにある御鼻部口から入山し、北に2時間ほど旧道を歩いた所にある湿原。道の左右に湿原が広がっており、ミズギクやタチギボウシ、サワギキョウなどが咲く。標高は860m程度である。袖ヶ谷地の西側湿原を突っ切って踏み跡をたどり、藪を漕いで西へ行くこと5分ぐらいのところにソデカの杉がある。神社の杉木立を思わせるような太い杉の群落がある。通常この地区の杉が育成できる限界は標高700m程度なので、各種の研究所で調査研究が行われている。
  • 前谷地
    袖ヶ谷地からさらに北に30分ほど歩いた所にある湿原。ここまでは、明瞭な道が続いている。植生は袖ヶ谷地と似ている。
  • 大谷地(大田代)
    前谷地から北に50分程度歩いた所にある広大な湿原。滝ノ又沢と黄瀬川との中間にあり、黄瀬萢の南に広がっている。キンコウカの群生が見られるほか、チングルマ、モウセンゴケ、タチギボウシなどが生育している。大谷地を過ぎて北に行くと、枯木沼がある。

高山植物[編集]

八甲田山には湿原が多く、イワイチョウモウセンゴケミズバショウが見られる。山にはアオモリトドマツ(オオシラビソ)の林があり、稜線にはハイマツが茂っている。

大正時代、酸ヶ湯温泉を経営していた郡場直世の妻・フミは、近辺の高山植物を採集してその標本を各地の研究機関に寄贈した。彼女の功績によって早くから八甲田山の植生が研究されており、そのため酸ヶ湯温泉の付近に東北帝国大学の研究施設(東北帝国大学八甲田山植物実験所、現在[いつ?]東北大学植物園八甲田分園)が作られた。また彼女の息子・郡場寛は植物学者でもあり、京都大学名誉教授・弘前大学学長である。

温泉[編集]

麓には千人風呂が有名な酸ヶ湯がある。その他にも城ヶ倉温泉谷地温泉猿倉温泉蔦温泉八甲田温泉田代平温泉、など山のいで湯があちこちに湧出している。

脚注[編集]

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  1. ^ 火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山 (PDF) 気象庁
  2. ^ a b 八甲田山の火山活動解説資料(平成25年5月) 気象庁 平成25年(2013年) 月間火山概況 (PDF)
  3. ^ 第126回火山噴火予知連絡会 全国の火山活動の評価 (PDF) 山噴火予知連絡会
  4. ^ 八甲田山の監視強化へ「山が膨らんでるように見える」 朝日新聞デジタル記事:2013年6月18日
  5. ^ 第127回火山噴火予知連絡会資料 その8 (PDF) 山噴火予知連絡会
  6. ^ 八甲田の湿地
  7. ^ いちのへ義孝『青森県の山』(2010年)

参考文献[編集]

遭難した後藤房之助伍長の像

関連項目[編集]

外部リンク[編集]