御蔵島

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御蔵島
南西からの御蔵島 (かめりあ丸船上より)
所在地 日本の旗 日本 東京都御蔵島村
所在海域 太平洋フィリピン海
所属諸島 伊豆諸島
座標 北緯33度52分27秒 東経139度36分7秒 / 北緯33.87417度 東経139.60194度 / 33.87417; 139.60194座標: 北緯33度52分27秒 東経139度36分7秒 / 北緯33.87417度 東経139.60194度 / 33.87417; 139.60194
面積 20.55 km²
海岸線長 16.4 km
最高標高 851 m
最高峰 御山
伊豆諸島
プロジェクト 地形
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御蔵島(みくらじま)は、伊豆諸島に属する日本の伊豆七島の一島。行政区画東京都御蔵島村

概要

東京都心の南約190キロメートル[1]三宅島の南南東19キロメートルの太平洋上に位置する。島はほぼ円形をしており、面積20.55平方キロメートル、周囲16.4キロメートルで、中央に標高851メートルの御山(おやま)を擁する[1]。島全体が豊かな原生林で覆われているため、島としては珍しく水に恵まれている。

火山としては、伊豆諸島の中では比較的古い時代に活動を停止しており、御蔵島火山の本体部分の活動は7,000年前よりも古い時代、そして島南東部に噴出した溶岩ドームは約5,000年前に活動を終了していると考えられている。そのため海食崖が発達し、最大500メートルにもなる絶壁もある。

御蔵島村には本島の南西部にある藺灘波島も含まれる。周辺海域に野生のミナミハンドウイルカが生息していることでエコツーリズムの拠点として発展し、全国に名前が知れ渡った。ほかに全国有数の巨樹の森として知られ[2]オオミズナギドリの繁殖地としても有名である[3]。また、富士箱根伊豆国立公園に指定されているほか、日本の気象庁によって火山活動度ランクCの活火山に指定されている。島北部には、唯一のである御蔵島港と空の玄関である御蔵島ヘリポートの他に、小中学校、郵便局駐在所警視庁三宅島警察署)、産業センターなどがそれぞれ1か所ずつある。 南東部にはかつて南郷と呼ばれる集落が存在し、小中学校の分校があったが、今は衰退し集落としての姿は留めていない。島に1つしかない港は防波堤すらなく、外海の波が直接港まで打ち寄せる。従って、船の接岸が難しく、就航率が悪い。暮らしは定期船の入港に左右され、悪天候が続けば食料やその他物資などが不足することもある。そうした場合、東京から八丈島経由でヘリコミューターを使った輸送を行うこともある。

2013年5月1日時点の人口は341人。

産業

主な産業は、林業、漁業、農業、観光。ツゲ材は鹿児島県薩摩半島に並ぶ産地である。両地で生産されるツゲ材は高級材として知られ、印鑑や櫛、将棋駒などに加工される。

御蔵島黄楊(ツゲ)の印鑑

観光業では、伊豆諸島の中では特にドルフィンウォッチングが盛んで遭遇率も高いと人気である。

豊富な水資源を生かした水力発電ミネラルウォーターの採取も行われている。また、南郷地区には山階鳥類研究所南郷分室が設置されている。

交通

陸運

村内に公共交通機関やタクシー、レンタカーなどはない。旅行者は徒歩、もしくは宿泊施設の車両を利用することになる。また、島内の道路は急な坂やカーブが多いことから、事故防止のため自転車の使用は禁止されている(原付バイクは可)。

集落のある島北部を起点に、島の東部に都道、西部を村道がそれぞれ南に向かって走っている。どちらも人家に辿り着くことを目的とするものではなく、主に観光や住民の仕事(発電や林業など)のために利用されている。

海運

島外とは、東海汽船貨客船によって運航される定期船によって東京港竹芝桟橋)、三宅島八丈島と結ばれているが、島には入江がなく、港湾施設も防波堤がないなど貧弱なため欠航も少なくない。海況の安定する夏場を除けばほとんどの場合「条件付き出港(接岸できない場合を承知の上での乗船)」となり、御蔵島港に接岸できなかった場合は、(八丈島で下船しなければ)復路での寄港時に下船することができる。復路も接岸に失敗した場合は、そのまま東京港まで戻れば運賃は全額払い戻される。 接岸できる確率としては、概ね夏に高く冬に低くなる傾向[4]があり、冬は50%を割り込むこともある。

なお、かつては東京からの直行便が限られ、三宅島から伊豆諸島開発の「えびね丸」(または黒潮丸)に乗り継ぐ形が主流であったが、三宅島の噴火以降東京からの直行便が毎日就航するように変更された(ただし上記の通り就航率は低い)。

空運

ヘリコプターによる路線。運航率は航路と比べて圧倒的に高いが、旅客定員9名と少なく、運賃も高い。小学校の向かい側にあるヘリポートに発着する。

八丈島において羽田空港発着のANA便、三宅島において調布飛行場発着の新中央航空便との乗継が可能。

御蔵島を舞台とした作品

  • Toshiba Web Street「Dolphin swims」(インターネットドラマ・映画)
イルカを中心に、島の生活を家族ドラマにして描いた作品。余貴美子小川範子が出演。
射爆場問題に揺れた昭和の御蔵島が舞台。1人の老婆を中心に、島の生活が細かく描写されている。
御蔵島をモデルにした架空の島で、イルカと人間が織り成す物語。
主人公の学校の担任教師が御蔵島出身で、荒天の中で島に渡ろうとするエピソードがある(アニメ版第8話『近くて遠いふるさと』)。
御蔵島で戦時中に隠されたガソリンを探す、という話が登場する(単行本第1巻の第8話『とざされた記憶』)。
御蔵島をモデルにした架空の島で若者が嫁探しに奔走する話。御蔵島の風景が随所に登場する。
 必殺シリーズの中で御蔵島が舞台になった作品。高樹蓉子が島娘で出演した。
御蔵島をモデルにした架空の島にあるホテルが舞台となっている。御蔵島との表記は劇中に出てこないが、オープニング映像で御蔵島の全景が映る。
主人公の女性パイロット「御蔵みくら」は中学生の頃に御蔵島に住んでいたことがあり、成長した後に出身校である御蔵島小中学校を訪れるシーンがある。
主人公が御蔵島固有種のミクラミヤマクワガタに興味を持ち、御蔵島に訪れるシーンが有る。

その他

  • 古来より伊豆諸島は島流しの流刑地であり、御蔵島もその対象になっていたが、あまりにも過酷な環境のため中止された。
  • 御蔵島は地形上の問題で宅地や農地に使用できる土地が限られ、自給自足で生活する上で人口増加は大きな脅威であったため、寛政8年(1796年)ごろに「二十八軒衆」という制度が創設される。これは、当時居住していた28戸以外の人の転入を厳しく制限し、土地の相続に関しても長男以外には認めないという制度で、現在でも島外からの転入者は戸建てを持てず、村営住宅へ入居するという形で残っている。
  • 御蔵島の正式な読みは「御蔵島村」の場合を含め「みくら‐じま(むら)」であるが、島民が自らの島のことを単純に「みくら(じま、まで言わない)」「しま」と呼ぶなどしていたことから、観光協会の名前や、村のホームページアドレスなどで「みくら‐しま」と読むパターンも増えている。観光ガイド本などでも濁らず紹介されるケースが増えているが、気象庁や東京都など公的機関の書類等では、これまでと変わらず正式名称の「みくらじま」として扱われている。
  • 御蔵島への観光目的の来島は事前に宿泊施設(もしくは村営バンガロー)の予約が必要であり、村の観光協会は、予約がない場合上陸できない旨を通知している。元々宿泊施設が少ないことに加え、近年のイルカウォッチング人気により、夏場を中心に満室となるケースが多い。なお、島の全域が国立公園であるため、野宿やキャンプは禁止されている。
  • 島内には自然保護の観点から「ガイド同伴でなければ立ち入れないエリア」および「ガイドがいても立ち入れないエリア」が設けられている(多くの宿泊施設でガイドを斡旋してくれる)。
  • この島と神津島のみに生息する生物としてミクラミヤマクワガタがいる。
  • NHK和田光太郎アナウンサーが、高校時代の2001年に応募した国税庁主催の「税の作文」で、「離島に住む親戚がいる」と記している。東京からの船が週1便、ヘリコミューターが就航など、内容が当時の島の状況と合致し、他に同様の島は見当たらないことから、御蔵島であると推察される(当該作品は東京国税局長賞、東京都租税教育推進協議会会長賞を受賞し、東京都のホームページに全文掲載されている)。

脚注

  1. ^ a b 加藤庸二『島の博物事典』成山堂書店、2015年、577-578頁。ISBN 978-4-425-91151-6 
  2. ^ 平岡忠夫『巨樹探検』講談社、1999年、100-122頁。ISBN 4-06-207471-0 
  3. ^ 加藤庸二『原色 日本島図鑑』(改訂第2版)新星出版社、2013年、33頁。ISBN 978-4-405-07166-7 
  4. ^ 東京都御蔵島村公式ホームページ-広報誌「広報みくら」バックナンバー公開

関連項目

外部リンク