政令指定都市

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政令指定都市の位置。2012年4月に熊本市が政令指定都市に移行し、全国20市になった。

政令指定都市(せいれいしていとし)とは、政令[1]で指定する人口法定人口)50万以上ののこと。地方自治法[2]第252条の19以下に定められた日本の大都市制度の一つ。法令上は「指定都市」(同法など)または「指定市」(警察法道路法など)と表記される。略称政令市2012年平成24年)4月1日現在、全国に20市ある。

概要

札幌市函館市旭川市青森市八戸市盛岡市仙台市秋田市山形市福島市郡山市いわき市水戸市つくば市宇都宮市前橋市高崎市伊勢崎市太田市さいたま市川越市熊谷市川口市所沢市春日部市草加市越谷市千葉市船橋市柏市八王子市横浜市川崎市横須賀市平塚市小田原市茅ヶ崎市相模原市厚木市大和市新潟市長岡市上越市富山市金沢市福井市甲府市長野市松本市岐阜市静岡市浜松市沼津市富士市名古屋市豊橋市岡崎市一宮市春日井市豊田市四日市市大津市京都市大阪市堺市岸和田市豊中市吹田市高槻市枚方市茨木市八尾市寝屋川市東大阪市神戸市姫路市尼崎市明石市西宮市加古川市宝塚市奈良市和歌山市鳥取市松江市岡山市倉敷市広島市呉市福山市下関市高松市松山市高知市北九州市福岡市久留米市佐賀市長崎市佐世保市熊本市大分市宮崎市鹿児島市那覇市
:政令指定都市       :中核市       :施行時特例市

指定都市の制度(政令市制度)は、日本の大都市等に関する3つの特例制度のひとつであり、1956年昭和31年)に運用が開始された[3]。これに先立つ1947年昭和22年)、国は大都市から独立する制度を設けたが、権限を奪われることになる府県が猛反発、これに代えて権限の一部だけを府県から移す制度として設けられたのが政令市制度であった[4]。地方自治法[2]第2編第12章第1節「大都市に関する特例」に、指定都市に関する、特例を中心とした規定がある。指定都市は「人口50万以上の市」とされている(第252条の19第1項)。特例制度の他の2つは、第2節に規定がある中核市の制度(人口30万以上、1995年開始)、第3節に規定がある特例市の制度(人口20万以上、2000年開始)である[2][3]。→#指定都市の権能#人口要件も参照。

指定都市は、条例で区を設けるものとされている(第252条の20第1項[2])。この区は、東京都の特別区などと区別して、「行政区」と通称される。→#組織も参照。

指定都市の制度は、地方自治法の1956年(昭和31年)の一部改正(昭和31年法律第147号)に含まれる形で、同年9月1日から実施された。同日から、指定都市を指定する政令[1]が施行されて5市が指定都市に移行。以後、この政令の一部改正で新たに市が指定され、その施行日から指定都市に移行している[1][5]

なお、指定都市の制度により、大都市に関する2つの旧制度が置き換えられた[3]。一つは、五大都市行政監督ニ関スル法律[6]を根拠とした制度で、対象は京都市、大阪市、名古屋市、神戸市、横浜市であった(この5市は最初の指定都市)。もう一つは、地方自治法を根拠に1947年(昭和22年)以降、法令上、存在していた特別市の制度で、人口50万以上の市を法律で指定するものだったが、実際には一市も指定されなかった。→#沿革も参照。

2012年4月1日現在、全20指定都市の人口は約2,693万4千人であり、国民の5人に1人は、指定都市に在住していることになる。また、四国地方には政令指定都市は1つもない。

指定都市及び行政区の一覧

全ての座標を示した地図 - OSM
全座標を出力 - KML
指定都市 都道府県 位置 指定日 行政区
1 さつほろ 札幌市 ほつかいとう北海道

北緯43度3分43.67秒 東経141度21分15.88秒

1972年(昭和47年)4月1日

全10区: 中央区北区東区白石区豊平区南区西区厚別区手稲区清田区
2 せんたい 仙台市 みやき宮城県 北緯38度16分5.41秒 東経140度52分9.73秒 1989年(平成元年)4月1日 05区: 青葉区宮城野区若林区太白区泉区
3 さいたま

さいたま市

さいたま埼玉県 北緯35度51分42.15秒 東経139度38分43.88秒 2003年(平成15年)4月1日 全10区: 西区北区大宮区見沼区中央区桜区浦和区南区緑区岩槻区
4 ちは 千葉市 ちは千葉県 北緯35度36分26.83秒 東経140度6分23.2秒 1992年(平成4年)4月1日 06区: 中央区花見川区稲毛区若葉区緑区美浜区
5 よこはま 横浜市

かなかわ神奈川県

北緯35度26分37.85秒 東経139度38分17.13秒 1956年(昭和31年)9月1日 全18区: 鶴見区神奈川区西区中区南区港南区保土ケ谷区旭区磯子区金沢区港北区緑区青葉区都筑区戸塚区栄区泉区瀬谷区
6 かわさき 川崎市 北緯35度31分50.72秒 東経139度42分10.69秒 1972年(昭和47年)4月1日 07区: 川崎区幸区中原区高津区宮前区多摩区麻生区
7 さかみはら 相模原市 北緯35度34分17.3秒 東経139度22分23.57秒 2010年(平成22年)4月1日 03区: 緑区中央区南区
8 にいかた 新潟市 にいかた新潟県 北緯37度54分57.94秒 東経139度2分11.26秒 2007年(平成19年)4月1日 08区: 北区東区中央区江南区秋葉区南区西区西蒲区
9 しすおか 静岡市 しすおか静岡県 北緯34度58分31.91秒 東経138度22分57.78秒 2005年(平成17年)4月1日 03区: 葵区駿河区清水区
10 はままつ 浜松市 北緯34度42分38.95秒 東経137度43分33.94秒 2007年(平成19年)4月1日 07区: 中区東区西区南区北区浜北区天竜区
11 なこや 名古屋市 あいち愛知県 北緯35度10分53.27秒 東経136度54分22.72秒 1956年(昭和31年)9月1日 全16区: 千種区東区北区西区中村区中区昭和区瑞穂区熱田区中川区港区南区守山区緑区名東区天白区
12 きようと 京都市 きようと京都府 北緯35度0分41.75秒 東経135度46分5.12秒 1956年(昭和31年)9月1日 全11区: 北区上京区左京区中京区東山区下京区南区右京区伏見区山科区西京区
13 おおさか 大阪市 おおさか大阪府 北緯34度41分37.48秒 東経135度30分7.75秒 1956年(昭和31年)9月1日 全24区: 都島区福島区此花区西区港区大正区天王寺区浪速区西淀川区東淀川区東成区生野区旭区城東区阿倍野区住吉区東住吉区西成区淀川区鶴見区住之江区平野区北区中央区
14 さかい 堺市 北緯34度34分24.32秒 東経135度28分58.92秒 2006年(平成18年)4月1日 07区: 堺区中区東区西区南区北区美原区
15 こうへ 神戸市 ひようこ兵庫県 北緯34度41分23.6秒 東経135度11分44.19秒 1956年(昭和31年)9月1日 09区: 東灘区灘区兵庫区長田区須磨区垂水区北区中央区西区
16 おかやま 岡山市 おかやま岡山県 北緯34度39分18.65秒 東経133度55分10.97秒 2009年(平成21年)4月1日 04区: 北区中区東区南区
17 ひろしま 広島市 ひろしま広島県 北緯34度23分7.08秒 東経132度27分18.55秒 1980年(昭和55年)4月1日 08区: 中区東区南区西区安佐南区安佐北区安芸区佐伯区
18 きたきゆうしゆう 北九州市 ふくおか福岡県 北緯33度53分0.17秒 東経130度52分30.4秒 1963年(昭和38年)4月1日 07区: 門司区若松区戸畑区小倉北区小倉南区八幡東区八幡西区
19 ふくおか 福岡市 北緯33度35分24.42秒 東経130度24分5.8秒 1972年(昭和47年)4月1日 07区: 東区博多区中央区南区西区城南区早良区
20 くまもと 熊本市 くまもと熊本県 北緯32度48分12秒 東経130度42分29秒 2012年(平成24年)4月1日 05区: 中央区東区西区南区北区

かつて存在した行政区

政令指定都市制度以前のものを除く。

指定都市の権能

特例と政令

地方自治法[2]第2編「普通地方公共団体」第12章「大都市等に関する特例」では、指定都市、中核市特例市それぞれに関する特例制度が規定されている。特例により持ちうる権能は、指定都市が最も広い。三者いずれに関しても、権能の範囲など特例の具体的な定めは、ほぼ政令に委ねられており、対応する規定が地方自治法施行令[7]第2編第8章にある。

事務

指定都市が特例で処理できる事務は、第252条の19第1項(後に抜粋)で掲げる19の事務のうち、都道府県が法令に従って処理するとされているものから、政令で定められる(同条同項)[8]

また、事務処理への都道府県の関与については、都道府県知事や都道府県の委員会の

a.処分(許可、認可、承認等)を要すると法令で定めている事項のうちから、政令により、その処分を不要とするか、代わりに各大臣の処分を要するものとする、
b.命令を受けると法令で定めている事項のうちから、政令により、その命令に関する法令の規定を適用外とするか、代わりに各大臣の命令を受けるものとする、

ことになっている(同条第2項)。

中核市や特例市に関しては、処分についてa.に相当する特例規定は無い。命令についてb.に類似する特例規定はあるが、委員会の命令は対象とならない(第252条の22第2項、第252条の26の3第2項)。 なお、地方自治法以外の、個別法令(例えば道路法河川法地方教育行政法など)の規定や都道府県の条例によっても権限が移譲されうる。

参考: 地方自治法から抜粋

第252条の19の第1項までを抜粋。出典条文リンク: 法令データ提供システム, 総務省. 2008年9月5日現在.

(指定都市の権能)
第252条の19 政令で指定する人口50万以上の市(以下「指定都市」という。)は、次に掲げる事務のうち都道府県が法律又はこれに基づく政令の定めるところにより処理することとされているものの全部又は一部で政令で定めるものを、政令で定めるところにより、処理することができる。

1 児童福祉に関する事務
2 民生委員に関する事務
3 身体障害者の福祉に関する事務
4 生活保護に関する事務
5 行旅病人及び行旅死亡人の取扱に関する事務
5の2 社会福祉事業に関する事務
5の3 知的障害者の福祉に関する事務
6 母子家庭及び寡婦の福祉に関する事務
6の2 老人福祉に関する事務
7 母子保健に関する事務
8 障害者の自立支援に関する事務
9 食品衛生に関する事務
10 墓地、埋葬等の規制に関する事務
11 興行場、旅館及び公衆浴場の営業の規制に関する事務
11の2 精神保健及び精神障害者の福祉に関する事務
12 結核の予防に関する事務
13 都市計画に関する事務
14 土地区画整理事業に関する事務
15 屋外広告物の規制に関する事務

組織

指定都市は、“市長の権限に属する事務を分掌させるため、条例で、その区域を分けて区を設け、区の事務所又は必要があると認めるときはその出張所を置く”ものとされている(第252条の20第1項)。この区は「行政区」と通称される。区の事務所、通称「区役所」の長は、当該指定都市の職員の中から市長が任命するのが通例である(各市の行政組織によるが、一般的に局長クラスまたは部長クラスの役職)。指定都市は、必要と認めるときは、条例で、区ごとに区地域協議会を置くことができ、その場合、その区域内に地域自治区が設けられる区には、区地域協議会を設けないことができる(第252条の20第6項)。

区役所にどの程度の業務を担わせるかは、指定都市によって幅がある。戸籍、住民基本台帳、租税の賦課、国民健康保険、国民年金、福祉などの日常的・定型的な窓口業務のみを担当させる「小区役所制」(大阪市、名古屋市、京都市など)があれば、保健、土木、建築などの業務を幅広く行う「大区役所制」(川崎市、広島市、仙台市など)もある。

教育行政

地方教育行政の組織及び運営に関する法律には、指定都市に関する特例が定められている。指定都市の県費負担教職員の任免、給与の決定、休職及び懲戒に関する事務、並びに研修は、当該指定都市の教育委員会が行う。

指定都市が扱えない事務

指定都市は、基本的に都道府県が行う事務のほとんどを独自に扱え、都道府県と同格とされる。しかし都道府県に包括されており、都道府県の影響力が完全に排除されるわけではないため、一部の事務は都道府県が行っている。

以下に、都道府県と指定都市の間の役割分担の一例を示す。

事務 都道府県の事務 指定都市の事務
民生行政に関する事務
保健衛生に関する事務
都市計画に関する事務
文教行政に関する事務
  • 県費負担教職員の任免、給与の決定、研修
農林水産行政に関する事務 農林水産行政に関する授権は特にない。
警察の設置に関する事務

自ら警察を設置することはない。

ただし指定都市は、都道府県警察を管理する公安委員会の委員を、都道府県知事に推薦できる。指定都市が委員2名を推薦し、これに基づいて都道府県知事が委員を任命する。

また、指定都市の区域には、都道府県警察が「市警察部」を置く。詳細は当該項目を参照。  

このほか、後期高齢者医療制度においては、都道府県が直接事務に携わるわけではないが、指定都市も他の市町村とともに都道府県単位で広域事務組合を作り、そこで事務を取り扱う。指定都市の区役所は窓口代理業務を行うのみである。

留意すべき問題点

指定都市移行にあたっては、移譲にあたっての行財政上の問題として、概ね次のような留意事項の指摘がなされている。

財政上の問題

移行に起因する事務移譲により、指定都市に新たに発生する財政需要額は、概ね5,600億円程度とされる[9]。これに対し、税制上の措置として指定都市に図られる増収対策の半分以上は、道路の管理に関する予算(道路特定財源の一部を増額交付するもの)[10]で、それ以外の特例事務との純計で、おおむね3,000億円程度、税制上の措置が不十分であるとされる[11]。指定都市制度には、都道府県側から指定都市側に対して交付金を交付する制度があるものの、行政上の負担割合の変更に伴い、逆に減収となる項目も存在する。このため、負担事務の増加に見合った増収を十分担保する措置が、必ずしも確保されるわけではない。

こうした経緯から、新規に指定都市へ移行する市の場合、移行と行政改革がセットで語られることがある。とくに平成の大合併期に、スケールメリットを期待した合併を経て誕生した指定都市では、移行に併せて地方債の繰上償還、これまで一般市町村として担当した行政分野での職員定員削減などが行われる[12]

行政上の問題

上述のとおり、指定都市は各分野につき、完全に独立した行政を担当できるまでの事務移譲を受けるわけではなく、農林行政、防災行政については、ほとんど授権がない。一方で、都道府県と指定都市との間では、一部につき共通する行政を担当することから、両者の間での二重規制、二重行政に陥る可能性が指摘されることがある[13]。法令上、指定都市は、一部の特例措置を除いては、一般の市町村と同列の制度の適用を受けるため、都道府県が市町村の行政を審査する行政不服審査制度に関する事項など、両者の関係について法令上あいまいな部分もある[13]。新たな法令を制定することを通じ、都道府県に指定都市に対する勧告権を付与し、指定都市内の行政に関する関与権限を弱める案などが提唱される。

沿革

以下に大都市制度の沿革を記す。以下とは別に、首都圏整備法(昭和31年法律第83号)、近畿圏整備法(昭和38年法律第129号)、中部圏開発整備法(昭和41年法律第102号)が大都市圏制度として制定されている(→三大都市圏)。

明治以降

  • 1878年明治11年)7月22日郡区町村編制法(明治11年太政官布告第17号)を制定。同法第四条により、「人民輻輳ノ地」に法人格を持たないが置かれ、区会(議会)も設置された。また東京、大阪、京都の三都勅令指定都市に指定された。通常、1都市1区であったが、東京には麹町区以下15区、大阪には東区南区西区北区の4区、京都には上京区下京区の2区と、人口密集地が広い勅令指定都市には1都市に複数の区を置いた。
  • 1889年(明治22年)4月1日市制(明治21年法律第1号)を施行。「市制中東京市京都市大阪市ニ特例ヲ設クルノ件」(明治22年法律第12号、三市特例)も制定され、人口が多い東京市大阪市京都市三市では区が存置された。を代表するのは市会であるが、一般市では市会が3人の市長候補を推薦し、内務大臣天皇に上奏して1人の市長が裁可(市会推薦市長。任期6年)されたのに対し、三市では、市長を置かずにその職務は府知事が行った。
  • 1898年(明治31年)10月1日:市制中東京市京都市大阪市ニ於ケル特例廃止法律(明治31年法律第19号)を施行。三市での反対運動により、三市特例が廃止されて一般市と同じ市制を適用し、市会推薦市長が生まれた。市制中追加法律により、三市では区制が残された。
  • 1908年(明治41年)4月1日:名古屋市に区制施行(4区)。「三市」(三都)以外では初の大都市制度導入例。
  • 1911年(明治44年):市制改正法律を施行。三市の区は法人格を持つこととなった。
  • 1922年大正11年):「六大都市行政監督ニ関スル法律」を制定。「三市」に神戸市、名古屋市、横浜市を加えて六大都市とした。六大都市では、府県知事の許可等なしで市の実務実行ができるようになった。
  • 1927年昭和2年)10月1日:横浜市に区制施行(5区)。
  • 1931年(昭和6年)9月1日:神戸市に区制施行(8区)。
  • 1943年(昭和18年)7月1日東京都制(昭和18年法律第89号)の施行により、東京府東京市が廃止されて東京都が置かれた(以降、東京については特別区参照)。「六大都市」から東京市を除いた5市に「五大都市行政監督特例」を施行し、五大都市(京都市、大阪市、横浜市、神戸市、名古屋市)とした。

戦後

  • 1947年(昭和22年):地方自治法(昭和22年法律第67号)を公布。「五大都市」が指定されることを見込んで、「特別市」の規定を盛り込んだ[3]
  • 1956年(昭和31年):地方自治法を改正。特別市に関する規定を削除。「五大都市」が指定されることを念頭に「指定都市」制度を創設[14]
  • 1956年(昭和31年)9月1日:改正地方自治法を施行。地方自治法第252条の19第1項の指定都市の指定に関する政令[1](昭和31年政令第254号)を施行。同政令で指定された大阪市、名古屋市、京都市、横浜市、神戸市の「五大都市」が指定都市となる。「五大都市行政監督特例」は、同日を以って廃止された。
  • 1963年(昭和38年)4月1日:北九州市が指定都市となる。旧「五大都市」以外では初の大都市制度導入例となった(#先行指定都市と同格を参照)。また、同市の指定以降、指定都市移行日は4月1日が通例となる。
  • この間、1972年(昭和47年)4月1日に札幌市川崎市福岡市が、1980年(昭和55年)4月1日に広島市が、1989年平成元年)4月1日に仙台市が、1992年(平成4年)4月1日に千葉市が指定都市となる。
  • 2001年(平成13年)8月30日:市町村合併支援プラン[15]を決定。市町村合併を進める国の方針に従い、2005年(平成17年)3月までに大規模な合併をした自治体に限って、人口要件の運用基準を緩和する方針(#期間限定措置を参照)が打ち出された[16]
  • 2003年(平成15年)4月1日:さいたま市が指定都市となる(#先行指定都市と同格を参照)。
  • 市町村合併支援プランによる緩和措置に基いて、2005年(平成17年)4月1日には静岡市が、2006年(平成18年)4月1日には堺市が、2007年(平成19年)4月1日には新潟市および浜松市が指定都市に移行した[17]
  • 2005年(平成17年)8月31日:新市町村合併支援プラン[18]を決定。当プランにおいても、2010年(平成22年)3月まで人口要件の弾力運用が継続延長されることになった。
  • 新市町村合併支援プランによる緩和措置に基いて、2009年(平成21年)4月1日には岡山市が、2010年(平成22年)4月1日には相模原市が、2012年(平成24年)4月1日には熊本市が指定都市に移行した。

要件

地方自治法第252条の19が定める指定要件は「政令で指定する人口50万人以上の市」である。明文の要件は「人口50万人」のみであるが、総務省は「立法の経緯、特例を設けた趣旨から、人口その他の都市としての規模、行財政能力等において既存の指定都市と同等の実態を有するとみられる都市」を指定するとしており[19]、指定は国の裁量に委ねられていることから、人口50万人を越えていても指定されない市は多く、自治体からは人口50万人のみを要件とすべきとの意見も出されている[20]

以下では、国の運用基準としての指定要件について記載する。

人口要件

指定都市になるための人口[21]要件は、50万人以上。 しかし、実際の運用基準として、以下のものが並立して存在するとされる。[要出典]

  1. 五大都市を基礎にする市
  2. 先行指定都市と同格の人口を擁する市
  3. 期間限定市町村合併をした自治体に対する運用基準緩和措置

以下に記載する人口は、指定日直近の法定人口[21](合併市町村を含む国勢調査人口)。なお、比較のため、指定前年に国勢調査がなかった場合に限り、指定前年10月1日の推計人口緑字)も付記する。

五大都市

1956年(昭和31年)において、地方自治法上の有資格市(法定人口50万人以上の市)には、戦前から区制をしいている五大都市、および、区制をしいていない福岡市(54.4万人)の計6市が存在した(参照)。しかし、制度創設経緯から、五大都市のみが指定都市に移行した。

神戸市は、1939年(昭和14年)に既に100万人(神戸市発表)に達していたが、戦争の影響で30万人台にまで落ち込んだ。戦後、周辺自治体と合併したが、1955年(昭和30年)の国勢調査時には100万人を回復していなかった。ただし、指定都市となった翌月の1956年(昭和31年)10月1日に、再び100万人(推計人口)に達した[22]

先行指定都市と同格

  • 1963年(昭和38年)4月1日、北九州市(98.6万人。102.3万人)が指定都市移行。
  • 1972年(昭和47年)4月1日、札幌市(101.0万人。105.2万人)、川崎市(97.3万人。98.3万人)、福岡市(86.2万人。88.5万人)が指定都市移行。

これ以降、福岡市を先例として、「人口100万以上、または、近い将来人口100万人を超える見込みの80万人以上の人口」が運用基準とみなされた[23][24]

  • 1980年(昭和55年)4月1日に広島市(85.3万人。88.7万人)が指定都市移行。
  • 1989年(平成元年)4月1日に仙台市(85.7万人。89.8万人)が指定都市移行。
  • 1992年(平成4年)4月1日に千葉市(82.9万人。83.5万人)が指定都市移行。
  • 2003年(平成15年)4月1日にさいたま市(102.4万人。104.6万人)が指定都市移行。尚、さいたま市は期間限定措置実施中の移行だが、従来の政令指定都市の運用基準で移行している。

実際に、千葉市以外は見込み通りに人口100万人以上となった。ただし、北九州市は2005年(平成17年)1月1日推計人口から100万人を下回り続けている[25]参照)。

期間限定措置

平成の大合併に際して市町村合併を行った自治体には、期間限定で運用基準の緩和がなされることになった(沿革参照)。ただし、どの程度の緩和がなされるか具体的に明記されなかった。

2001年の市町村合併支援プランによる指定都市

  • 2005年(平成17年)4月1日に静岡市(70.7万人。70.2万人)が指定都市移行。

静岡市は、指定都市史上初めて「近い将来100万人を超える見込みがない[26]」、「80万人を下回る人口」という状況で移行した。 これ以降、静岡市を先例として、当措置の人口要件は「70万人以上の人口」のみであると見られた[27]

  • 2006年(平成18年)4月1日に堺市(83.1万人)が指定都市移行。
  • 2007年(平成19年)4月1日に新潟市(81.4万人。81.3万人)、浜松市(80.4万人。80.7万人)が指定都市移行。

2005年の新市町村合併支援プランによる指定都市

岡山市は、指定都市史上初めて「70万人を下回る法定人口」という状況で移行した。これ以降、岡山市を先例として「70万人程度の人口」があれば指定都市になれると見られた[28]

  • 2010年(平成22年)4月1日に相模原市(70.2万人。71.2万人)が指定都市移行。
  • 2012年(平成24年)4月1日に熊本市(73.4万人。73.6万人)が指定都市移行。

以上、当措置で指定都市となる7市は全て近い将来100万人を超える見込みがない[26]。また、岡山市が70万人を下回る法定人口で指定される、戦後に市制施行された相模原市が指定されるなど、様々な指定都市史上初があった。なお、新市町村合併支援プランによる移行要件の緩和は2010年3月までに合併した場合に適用されるため、同プランによる移行は熊本市が最後となる見込み[29]

行政能力要件

都市機能や行財政能力については特に法令で規定されていないが、これまで指定都市に指定された都市では主に次のような要件を満たしており、これに遜色ない条件を満たす必要があるとされる。

  1. 第1次産業就業者比率が10%以下であること
  2. 都市的形態、機能を備えていること
  3. 移譲事務処理能力を備えていること
  4. 行政区の設置、区の事務を処理する体制が整っていること
  5. 指定都市移行に関して県と市の意見が一致していること

手続き要件

指定都市移行の手続きは特に法令で規定されていないが、これまで指定都市に指定された都市では主に次のような手続きを経た上で、指定がなされている。

  1. 市議会で指定都市に関する意見書を議決
  2. 知事や県議会に対し、指定都市の実現への要望書を提出
  3. 県議会で指定都市に関する意見書を議決
  4. 総務大臣に対し、指定都市の実現への要望書を提出
  5. 関係省庁との協議
  6. 指定都市移行の閣議決定
  7. 政令の公布

統計比較

面積・人口・市内総生産

  • 北海道および札幌市のみ登録人口。それ以外は推計人口
  • 「人口比率」は、当該道府県の人口のうち、各政令指定都市の人口が占める割合。
  • 「市内総生産 (GCP)」 は、経済活動別市内総生産(生産側)の名目値。いずれも2006年度(平成18年度)の数値。発表している12市のみ記載[30]県民経済計算参照。
  • 「1人当たり市民所得 (CI/人)」は、国民所得の概念を市に当てはめた市民所得(分配、CI)を市の人口で割ったもの。いずれも2006年度(平成18年度)の数値。発表している12市のみ記載。
市名
道府県名
面積
(km²)
人口
(人)
人口比率
[31](%)
統計日 GCP
(百万円)
CI/人
(千円)
札幌市 北海道 1121.12 1,953,600 38.6 2024年3月31日 6,869,359 2,645
仙台市 宮城県 788.09 1,092,708 48.6 2024年4月1日 4,329,459 2,871
さいたま市 埼玉県 217.49 1,347,547 18.4 2024年4月1日
千葉市 千葉県 272.08 981,909 15.7 2024年4月1日 3,610,911 3,214
横浜市 神奈川県 437.38 3,767,635 40.9 2024年4月1日 12,904,832 3,185
川崎市 神奈川県 144.35 1,548,254 16.8 2024年4月1日 4,965,062 3,458
相模原市 神奈川県 328.84 723,435 7.8 2024年4月1日
新潟市 新潟県 726.10 767,713 36.4 2024年4月1日
静岡市 静岡県 1388.78 673,804 19.1 2024年4月1日
浜松市 静岡県 1511.17 776,750 22 2024年4月1日
名古屋市 愛知県 326.45 2,325,207 31.1 2024年3月1日 12,685,515 3,592
京都市 京都府 827.90 1,436,247 56.9 2024年4月1日 6,307,796 3,036
大阪市 大阪府 222.30 2,777,328 31.7 2024年4月1日 21,746,093 3,443
堺市 大阪府 149.99 808,404 9.2 2024年4月1日
神戸市 兵庫県 552.80 1,492,953 27.9 2024年4月1日 6,020,066 2,932
岡山市 岡山県 789.91 712,940 38.9 2024年4月1日
広島市 広島県 905.13 1,182,983 43.3 2024年3月1日 5,011,215 3,161
北九州市 福岡県 487.71 909,579 17.9 2024年4月1日 3,559,806 2,670
福岡市 福岡県 340.96 1,645,863 32.3 2024年4月1日 7,154,575 3,244
熊本市 熊本県 389.53 735,750 43.3 2024年4月1日 2,143,351 2,742
同一道府県にある政令指定都市
市名
道府県名
面積
(km²)
人口
(人)
人口比率
[31](%)
統計日
横浜市 + 川崎市 + 相模原市 神奈川県 910.57 6,039,324 65.5 2024年4月1日
静岡市 + 浜松市 静岡県 2899.95 1,450,554 41.1 2024年4月1日
大阪市 + 堺市 大阪府 372.29 3,585,732 40.9 2024年4月1日
北九州市 + 福岡市 福岡県 828.67 2,555,442 50.2 2024年4月1日

財政

指定都市各市の2008年(平成20年)度の財政規模は以下の通り(市債残高は年度末の値[32][33])。市民一人当たり市債現在高は、本項目の市債現在高から最新の推計人口で割って算出[34]

市名 歳入 (A)
(千円)
歳出
(千円)
地方税収入 (B)
(千円)
B/A 市債現在高
(千円)
市民一人当たり
市債現在高
(万円)
札幌市 773,708,805 771,296,216 282,150,265 36.5% 2,013,467,935 103.1
仙台市 411,022,727 407,602,445 180,961,207 44.0% 1,314,194,698 120.3
さいたま市 424,743,031 397,325,609 221,501,883 52.1% 635,206,010 47.1
千葉市 326,018,424 324,703,793 178,213,851 54.7% 1,080,888,045 110.1
川崎市 584,466,600 572,528,754 293,779,349 50.3% 1,500,166,000 96.9
横浜市 1,436,351,303 1,362,940,766 729,457,004 50.8% 4,649,916,837 123.4
相模原市 204,303,395 197,320,349 115,453,921 56.5% 314,447,073 43.5
新潟市 331,350,076 327,980,207 121,384,355 36.6% 811,940,564 105.8
静岡市 287,022,610 277,714,625 130,002,730 45.3% 591,555,368 87.8
浜松市 285,387,766 275,829,931 136,912,796 48.0% 538,576,133 69.3
名古屋市 972,058,668 968,210,417 516,306,272 53.1% 3,282,109,018 141.2
京都市 735,852,839 734,219,808 266,407,424 36.2% 2,124,001,348 147.9
大阪市 1,555,121,442 1,552,859,303 670,787,495 43.1% 5,212,169,092 187.7
堺市 298,471,347 294,891,756 132,440,557 44.4% 606,868,894 75.1
神戸市 737,730,979 724,882,257 277,911,962 37.7% 2,511,346,017 168.2
岡山市 229,990,206 225,169,028 113,410,561 49.3% 674,000,000 94.5
広島市 544,617,125 539,288,086 212,604,978 39.0% 1,683,000,034 142.3
北九州市 500,169,586 493,528,897 167,490,841 33.5% 1,365,581,082 150.1
福岡市 682,110,518 673,365,959 272,645,884 40.0% 2,550,023,595 154.9
熊本市 221,794,305 217,441,962 91,558,785 41.3% 277,040,171 37.6

指定都市に関連する事項

都道府県と同格

指定都市は権限の移譲等により都道府県の影響力が少なくなることから、実質的に都道府県と同格に扱われ、県の中に県ができると見られることもある。都道府県に準じた権限を手にする事で、自由に様々な事に取り組めるようになる一方、何かあった場合の責任は重くなると言われている。[要出典]

  • 県を通さずに直接と接触できるようになる。
  • 統一地方選挙において行われる指定都市の市長選挙や議会議員選挙は、都道府県の知事選挙や議会議員選挙と同じ、いわゆる前日程で実施される。
  • 慣例として、指定都市の住所を表記する際は都道府県名を省略することが多い(例:愛知県名古屋市中区栄 → 名古屋市中区栄)。これは慣例というよりは、昭和45年の旧自治省通達により、指定都市および、県名と同じ県庁所在地市以外は、公文書において県名を省略してはならないとされたことの裏返しである。
  • スポーツ大会の場合でも一部で特別扱いされており、全国障害者スポーツ大会全国健康福祉祭(ねんりんピック)では各都道府県の他に指定都市独自でチームを組むことが可能となっている。
  • 市のドメイン名として "city.市名.都道府県名.jp" の代わりに "city.市名.jp" を使えるようになる。ただし、堺市・浜松市と相模原市については、該当ドメイン名が他者によって登録済みであったため、"city.市名.jp" を使用できなかった。公共機関については"city.市名.lg.jp"で地方公共団体ドメイン名の代替はあるが、一般地域型ドメイン名"区名.市名.jp"は使用できないので公共機関以外は救済されない。
  • 職員採用において、大学卒業程度の採用試験が道府県と同じ日程の6月の第4日曜日(俗に「地方上級」と称される。)に行われる。短大卒業程度・高校卒業程度の採用試験が道府県と同じ日程の9月の第4日曜日(俗に「地方中級」・「地方初級」と称される。)に行われる。また、択一試験の問題は道府県と一部を除き同一のものが使用される。
  • 地方債において、都道府県と同様に市場公募債を発行出来るようになる。ただし、利回りが市場によって決められてしまうため、財政状況や信用力により資金繰りに差が出る。
  • 1970年代新設医科大学が次々設置された際、歯止めをかけるために「1県1医大」の制限が1974年(昭和49年)にかけられたが、同年時点で指定都市中唯一医科大学が無かった北九州市1978年(昭和53年)、産業医科大学が設立されており、県と同格扱いされている(参照)。
  • 都道府県と同様に当せん金付証票(いわゆる宝くじ)の発売元となることができるようになる(地方財政法32条、当せん金付証票法4条、また戦災により総務大臣が指定する市も発売元となれるが割愛)。そのため、発売元である指定都市内で販売された宝くじの収益金は直接、指定都市の収入となる(詳しくは宝くじ#収益金の取扱い)。

市警察部

指定都市自体が、独自に警察を設置・運営することはできない。ただ各道府県警察本部は、その管轄区域内に指定都市がある場合、指定都市に対応する市警察部を設置する(警察法第52条第1項)。市警察部の役割は警察本部によって異なるが、主に指定都市と警察本部の連絡や指定都市に所在する警察署の管理に関する業務を行う。実働部隊を備えているのは、北九州市警察部のみである。

自治体警察 (旧警察法)を参照のこと。

消防

指定都市においては消防の専門部隊である特別高度救助隊の設置が義務付けられている。これは総務省消防庁の「救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令(昭和61年自治省令第22号)」第6条の規定により「特別高度救助隊」を東京都及び政令指定都市に、第5条の規定により「高度救助隊」を中核市等に整備をするとされ、「高度救助隊の数のうち、特別区が連合して維持する消防及び指定都市にあつては1以上の高度救助隊を特別高度救助隊とする。」ことになっている。そのため、多くの指定都市では、高度救助隊と特別高度救助隊の両方が編成されている。 特別高度救助隊を参照のこと。

都市計画と税金

指定都市では、都市計画で区域区分(線引き)を定めるものとされている(都市計画法第7条第1項、都市計画法施行令第3条)。よって、スプロール化どころか過疎化が問題となるような地域が指定都市の一部となると、その地域が区域区分で市街化調整区域とされることにより、その地域での開発行為が法律で制限され、結果的に過疎化が深刻化するおそれがある。反対に、区域区分で新たに市街化区域とされた地域では、土地・建物について固定資産税に加えて都市計画税が課されることになる。

また、法律上の首都圏首都圏整備法所定)、近畿圏(近畿圏整備法所定)、中部圏(中部圏開発整備法所定)内に指定都市が誕生すると、その指定都市の区域内の市街化区域にある農地は、地方税法附則第29条の7の特例の対象外となるので、その農地についての固定資産税と都市計画税は「宅地並み課税」とされ、増税となる。

指定都市を目指している地域

構想段階の地域

市町村の合併によって、現在以下の地域が指定都市移行を目指している。しかし、市町村合併協議の難航などにより、実現の見通しが立っていない都市が多い。また、実現可能性の高い中核市移行へ切り替え、将来的な目標として指定都市への意向を視野に入れるとしている市も増えている。なお、指定都市への移行を見据えた合併構想が持ち上がっている地域の多くは、都市圏(都市雇用圏など)を基礎としているが、必ずしも既存の広域行政圏とは一致しない。

水戸市など(茨城県
水戸市は、水戸都市圏の市町村との合併による「50万都市構想」を持っている。指定都市はさらに将来の展望。
宇都宮市など(栃木県
宇都宮市長は、2006年(平成18年)第1回定例会(第1日目2月28日市議会)での市政運営の基本方針演説において、「政令指定都市も視野に入れ、河内町との合併協議に向けて具体的に意見交換を行ってまいります」と述べた。
なお、河内町および上河内町とは2007年(平成19年)3月31日に合併し、人口は50万人を超えた。宇都宮都市圏の人口は約110万人。
埼玉県[35]
埼玉県庁による市町村合併推進構想の枠組み[36]に、指定都市移行を想定した枠組みが見られる。県庁の構想による春日部市草加市越谷市八潮市三郷市吉川市松伏町の枠組みは人口約109万人(実際、越谷市以外と結びつきの希薄な春日部市を除いても85万人を超える)、所沢市飯能市狭山市入間市日高市の枠組みは人口約78万人、川口市蕨市戸田市鳩ヶ谷市2011年10月11日、川口市に編入)の枠組みは人口約72万人、新座市朝霞市志木市和光市三芳町富士見市ふじみ野市の枠組みは人口約69万人となっている(清瀬市を入れ70万人以上を目指す計画あり)。
東葛飾・葛南地域(千葉県)
柏市野田市流山市我孫子市松戸市鎌ケ谷市の6市で構成する「東葛広域行政連絡協議会」では、2006年(平成18年)5月8日に「政令指定都市問題研究会」を設置した[37]。この6市の人口の合計は約140万人である。一方、この6市のうち松戸市と鎌ケ谷市は2007年(平成19年)4月27日船橋市市川市とともに、将来的な指定都市移行を研究する「東葛飾・葛南地域4市政令指定都市研究会」を設置した[38]。この4市の人口の合計は約162万人である。なお、1997年(平成9年)には船橋市、鎌ケ谷市、習志野市八千代市の議長経験者の間で、4市の合併で指定都市移行を検討する動きがあった。千葉日報の1面トップに掲載され、旧自治省ホームページにも長く掲載されていたが、結局具体的な動きには至らず頓挫した。この4市の人口の合計は約102万人。
八王子市東京都
2012年1月22日に行われた八王子市長選挙で当選した石森孝志が、市民サービス向上と自立したまちづくりの展開が出来る中核市に移行した後、政令市を目指すと公約した[39]
金沢市石川県
平成の大合併と前後して、経済界を中心に合併による指定都市移行を提唱する動きがあった[40]。しかし、金沢市との合併の筆頭候補に挙げられていた野々市町は単独市制を施行し野々市市となったほか、周辺市町の同意が得られない状況にある。なお、金沢市と同じ市外局番076の地域(金沢MAかほく市白山市、野々市市、内灘町津幡町川北町)の合計人口は約72万人。また、金沢都市圏と一体性のある小松都市圏(金沢都市圏の項参照)を合わせた人口は約87万人となる(この枠組みでは、石川県の人口約117万人の4分の3)。
東三河地域(愛知県
愛知県豊橋市豊川市田原市などで構成される愛知県東三河地域の合併構想。地域人口は70万を超える。2002年、地域の企業が会員になっている東三河懇話会にて、公の場で初めて「東三河政令市構想」が提唱された[41]。その後、東三河政令市実現を公約とする佐原光一が豊橋市長に就任したものの、慎重姿勢を示している[42]。その後2011年には合併への動きは衰え、新城市長・穂積亮次が自身のブログで今の状況では合併・政令市構想への議論を進めるのではなく別の方法で地域主権を行うべきとし[43]、東三河懇話会の2011年の新春懇談会でも、東三河市合併構想は全く触れられていない[44]
岐阜市[20]岐阜県
岐阜都市圏の人口は80万人を超えているが、岐阜市で産業廃棄物の不法投棄が発見されたために合併協議が難航し、結局岐阜市と合併したのは1町のみであった。
北勢地域(三重県
四日市市を中心とする三重県北勢地方の人口は80万人を超えている。指定都市構想は将来の展望。
東大阪市大阪府
八尾市や柏原市などとの市町村合併の構想があり、指定都市への移行計画にまでは至っていないが将来の展望である。
姫路市兵庫県
2006年(平成18年)3月27日家島町夢前町香寺町安富町を編入合併、合併後の人口は53万人となった。同市では、指定都市の法定の人口要件である50万人を適用しての指定都市移行を国に要望するとともに、今後も周辺自治体との協議を進める方針を打ち出した。姫路都市圏の人口は約74万人。2011年(平成23年)4月には、石見利勝・姫路市長が「政令市を目指す」との公約を掲げて3選を果たし、当選直後に加古川市に対し合併を働きかける意向を表明した[45]。同市と合併した場合、人口約80万人になる。一方、たつの市相生市にも半年前に合併を打診したことを明らかにした[46]。両市と合併した場合は人口が約64万8000人にとどまるため、加古川市とたつの・相生両市との「二本立て」で合併を模索していく姿勢を示した[45]。また、今後太子町にも合併を打診するほか、高砂市も合併相手として想定していることを明らかにした[46]

構想が白紙になった地域

湘南地域(神奈川県
湘南市を参照。平塚市藤沢市茅ヶ崎市寒川町大磯町二宮町の6市町が合併して指定都市を目指す「湘南市構想」がかつて存在したが、2003年(平成15年)5月26日に白紙撤回された。
駿東・伊豆地域静岡県
静岡県三都の一角を構成する沼津市を中心とする地域。静岡市と浜松市が指定都市に昇格したため待望論がある。静岡県庁自体が、県内合併再編に積極的。
指定都市化の研究会参加市町は、沼津市三島市御殿場市裾野市伊豆の国市函南町小山町長泉町清水町であるが、合併への意欲について各市町で温度差がある。また、研究会参加市町だけでは現時点で70万人に満たないため、隣接する富士総合庁舎管轄地域、あるいは伊豆半島の全市町を取り込もうという意見も出ていたが、2008年(平成20年)2月8日に白紙撤回し、研究会の解散を発表した。

その他

法令で単に「政令で指定する市」と書かれている場合、各法令により指定基準が異なるため、指定都市(政令指定都市)と必ずしも一致しない。特定の市を「政令で指定する市」として定めている法令には、中小企業支援法国民健康保険法地方税法道路整備特別措置法、国際観光文化都市の整備のための財政上の措置等に関する法律などがある。

また、地域保健法第5条第1項では、都道府県のほか、指定都市、中核市その他の政令で定める市又は特別区が、保健所を設置するものと定めている。これらの保健所を設置する市を保健所政令市という。

脚注

  1. ^ a b c d 地方自治法第252条の19第1項の指定都市の指定に関する政令(昭和31年政令第254号)、法令データ提供システム、総務省。2008年10月15日閲覧。
  2. ^ a b c d e 地方自治法(昭和22年法律第67号)、法令データ提供システム、総務省。2008年10月15日閲覧。
  3. ^ a b c d 大都市に関する制度について 【PDF】、2005年1月17日、総務省。総務省第28次地方制度調査会第14回専門小委員会(参照)における総務省配付資料。
  4. ^ 県と歪み増す政令市 大都市行政現状を探る 『日本経済新聞』 平成23年11月22日 東京・首都圏経済面
  5. ^ 指定都市一覧、総務省。
  6. ^ 五大都市行政監督ニ関スル法律(大正11年法律第1号)の沿革、日本法令索引、国立国会図書館。
  7. ^ 地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)、法令データ提供システム、総務省。2008年10月15日閲覧。
  8. ^ なお、この指定都市の特例処理事務から中核市の特例処理事務を限定し、さらに特例市の特例処理事務を限定する仕組みになっている(第252条の22第1項、第252条の26の3第1項)。
  9. ^ 総務省. "平成19年度地方財政白書"「市町村の規模別財政収支」項において総務省が算定した額による。
  10. ^ 指定都市市長会「指定都市の事務配分の特例に対応した大都市特例税制についての提言」(平成17年12月22日)の指摘による。
  11. ^ 指定都市市長会「平成20年度大都市行政の実態に即応する財源の確保等に関する要望」の、「税制措置」の項において指定都市側が主張することを根拠とする。
  12. ^ たとえば堺市静岡市の例。静岡市「平成17年度一般会計決算の概要」、堺市「平成18年度当初予算の概要」など。
  13. ^ a b 第28次地方制度調査会(総務省)。 "大都市制度のあり方に関する報告" の中で指摘。
  14. ^ 分権時代における県の在り方検討委員会「指定都市制度の目的と沿革」(愛知県)
  15. ^ 市町村合併支援プラン(平成13年8月30日 市町村合併支援本部)
  16. ^ 市町村合併支援本部
  17. ^ II 政令指定都市制度の概要 (2)政令指定都市の要件(岡山市)
  18. ^ 新市町村合併支援プラン(平成17年8月31日 市町村合併支援本部)
  19. ^ 指定都市制度の概要(総務省) (PDF)
  20. ^ a b 政令指定都市構想”. 岐阜市 (2008年10月31日). 2011年10月19日閲覧。
  21. ^ a b 地方自治法第二百五十四条“この法律における人口は、官報で公示された最近の国勢調査又はこれに準ずる全国的な人口調査の結果による人口による。 ”, 法令データ提供システム. (総務省)2008年10月11日閲覧.
  22. ^ 人口及び市域面積の推移(神戸市都市計画総局)
  23. ^ 堺市指定都市推進協議会
  24. ^ 政令指定都市の概要(高崎市)
  25. ^ とうけい北九州「3 推計人口」(北九州市)
  26. ^ a b 日本の市区町村別将来推計人口(平成15年12月推計)
  27. ^ 市長講演記録「政令指定都市に関する懇談会」卓話(農業5団体)(熊本市)
  28. ^ 政令指定都市をめざして(熊本市)
  29. ^ “熊本市の「政令市」決定 来年4月1日移行”. 熊本日日新聞. (2011年10月18日). http://kumanichi.com/news/local/main/20111018003.shtml 2011年10月19日閲覧。 
  30. ^ 県民経済計算「各都道府県・政令指定都市の公表ページ」内閣府
  31. ^ a b 当該道府県の人口のうち、各政令指定都市の人口が占める割合。
  32. ^ 岡山市・相模原市以外の各市は、大都市比較統計年表(平成20年)(横浜市統計ポータルサイト)のXX 財政から、「歳入」は「6.普通会計歳入歳出決算額 (1)歳入」の「総額」、「歳出」は「6.普通会計歳入歳出決算額 (2)目的別歳出」の「総額」、「地方税収入」は「6.普通会計歳入歳出決算額 (1)歳入」の「地方税」、「市債残高」は「5.地方債現在高(1)会計別」の「総額」より。岡山市は、岡山市の財政状況〔第12版〕「資料編」より。相模原市は、「平成21年版統計書 Excel版」の「15.財政及び金融」の項目より、歳入は一般会計決算額の「歳入(150101)」(平成19年度。数字は統計表番号。以下、同じ。)、歳出は「歳出(150102)」、地方税収入は市税収納状況(1504)の「収入額」、市債現在高は市債現在高(1508)の「総額」。
  33. ^ 岡山市の市債現在高は、千万円の桁以下切り捨てによる千円単位。
  34. ^ ここで用いた市債現在高は、千万円の桁を四捨五入して計算。
  35. ^ 埼玉県の市町村合併(埼玉県)
  36. ^ 構想対象市町村の組合わせ(埼玉県)
  37. ^ 政令指定都市問題研究会(柏市)
  38. ^ 東葛飾・葛南地域4市政令指定都市研究会(船橋市)
  39. ^ “石森八王子市長に聞く”. 多摩ニュータウンタイムズ. (2012年3月22日). http://www.tamatimes.co.jp/article/11161 2011年3月22日閲覧。 
  40. ^ 「石川県 県都政令市推進経済人会議」(現在「構想いしかわ経済人会議」)など
  41. ^ 東三河懇話会が政令市構想提唱へ(2002年6月6日付 東日新聞)
  42. ^ 「東三河政令市」移行に慎重姿勢 豊橋市長(2010年3月9日付 読売新聞)
  43. ^ 山の舟歌・第2章(新城市長ブログ)2011年01月08日付
  44. ^ 合併消え、身近なテーマで(2011年1月8日付 東日新聞)
  45. ^ a b 『石見・姫路市長:加古川市と合併を 「政令市を目指す」--会見で意向』毎日新聞兵庫版 2011年4月26日付
  46. ^ a b 『石見・姫路市長:政令市実現へ合併打診 たつのと相生市長に』毎日新聞兵庫版 2011年5月3日付

関連項目

外部リンク

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