「福島県浜通り地震」の版間の差分
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| caption = 地震の震央の位置を示した地図 |
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== 概要 == |
== 概要 == |
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福島県浜通りの北緯36度56分42秒、東経140度40分18秒、深さ約6kmを震源とする地震。[[マグニチュード|規模]]は[[マグニチュード#気象庁マグニチュード Mj|気象庁マグニチュード]]はMj7.0、[[マグニチュード#モーメントマグニチュード Mw|モーメントマグニチュード]]は、[[アメリカ地質調査所]]ではMw6.6(W-phase)から6.7([[発震機構|CMT]])<ref>{{Cite web |url=http://earthquake.usgs.gov/earthquakes/eventpage/usp000hzq8|title=M6.6 - eastern Honshu, Japan|publisher=アメリカ地質調査所|accessdate=2016-02-04}}</ref>、気象庁ではMw6.6(遠地)<ref>{{PDFlink|[http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/sourceprocess/event/20110411far.pdf 4月11日 福島県浜通りの地震- 遠地実体波による震源過程解析(暫定)-]}}</ref>、6.7(CMT)<ref>[http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/mech/cmt/fig/cmt20110411171612.html セントロイド時刻とセントロイド位置およびモーメントマグニチュード](気象庁)</ref>、Mw6.8(近地)<ref>{{PDFlink|[http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/sourceprocess/event/20110411near.pdf 4月11日 福島県浜通りの地震- 近地強震波形による震源過程解析(暫定)-]}}</ref>と解析されている。<!--([[マグニチュード#モーメントマグニチュード Mw|モーメントマグニチュード]]7.1<ref group="注">当初Mw6.6としていたが、後にMw7.1に訂正された。</ref><ref>[http://earthquake.usgs.gov/earthquakes/recenteqsww/Quakes/usc0002n9v.php Magnitude 7.1 - EASTERN HONSHU, JAPAN](USGS)</ref>)-->福島県浜通り・[[中通り]]と茨城県南部で最大震度6弱を観測した。 |
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この地震の発震機構は東北東 - 西南西方向に張力軸を持つ[[断層#正断層|正断層]]型であり、[[地震#内陸地殻内地震|地殻内で発生した地震]](大陸プレート内地震)であるとされる。[[気象庁]]は[[東北地方太平洋沖地震]]の震源域で発生した[[余震]]であるとしたが、[[プレート]]境界域における[[地震#プレート間地震|海溝型地震]]であった東北地方太平洋沖地震とは、地震発生のメカニズムが異なる。東北地方太平洋沖地震の震源域における西南端部での発生ではあるが、大きな海溝型地震に誘発されて内陸部の[[断層]]がずれることで発生する[[誘発地震]]とみることもできる。 |
この地震の発震機構は東北東 - 西南西方向に張力軸を持つ[[断層#正断層|正断層]]型であり、[[地震#内陸地殻内地震|地殻内で発生した地震]](大陸プレート内地震)であるとされる。[[気象庁]]は[[東北地方太平洋沖地震]]の震源域で発生した[[余震]]であるとしたが、[[プレート]]境界域における[[地震#プレート間地震|海溝型地震]]であった東北地方太平洋沖地震とは、地震発生のメカニズムが異なる。東北地方太平洋沖地震の震源域における西南端部での発生ではあるが、大きな海溝型地震に誘発されて内陸部の[[断層]]がずれることで発生する[[誘発地震]]とみることもできる。 |
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茨城県北部や福島県浜通り地方では東北地方太平洋沖地震以前はほとんど地震活動はなかったが、 |
茨城県北部や福島県浜通り地方では東北地方太平洋沖地震以前はほとんど地震活動はなかったが、3月11日以降活動が活発化した。この地震活動は大きく南北2つの領域で発生していた。南北2つの領域の間ではこれまで地震がほとんど発生していなかったが、4月11日の地震はこの間を埋める領域で発生した<ref name="防災科研">[http://www.hinet.bosai.go.jp/topics/n-ibaraki110319/ 東北地方太平洋沖地震以降の茨城県北部・福島県東部の地震活動 (防災科学技術研究所)]</ref>。 |
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気象庁は地震発生直後、茨城県沿岸に[[津波警報]]を発表し、 |
気象庁は地震発生直後、茨城県沿岸に[[津波警報]]を発表し、宮城県・福島県と千葉県の九十九里・外房に[[津波注意報]]を出したが、震源域が主に陸域であったため、津波は観測されず<ref>{{Cite web|title=気象庁 {{!}} 津波警報・注意報評価|url=https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/tsunamihyoka/20110411fukushimakenhamadori/index.html|website=www.data.jma.go.jp|accessdate=2019-06-28}}</ref>、同日18時05分に全て解除した。 |
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なお、翌日14時07分には福島県中通りを震源とするマグニチュード6.4の地震が発生し、福島県浜通り(いわき市)・茨城県北部(北茨城市)で震度6弱の揺れを観測した。この地震は、11日のマグニチュード7.0の地震(正断層型)とは違い、逆断層型の地震であった。(後述の通り) |
なお、翌日14時07分には福島県中通りを震源とするマグニチュード6.4の地震が発生し、福島県浜通り(いわき市)・茨城県北部(北茨城市)で震度6弱の揺れを観測した。この地震は、11日のマグニチュード7.0の地震(正断層型)とは違い、逆断層型の地震であった。(後述の通り) |
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=== 震源断層 === |
=== 震源断層 === |
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推定[[断層#活断層|活断層]]とされていたが、大きな地震の発生が予想されていなかった{{仮リンク|井戸沢断層|en|Idosawa Fault}}・湯ノ岳断層の活動によるもので、井戸沢断層の西側延長線に沿って明瞭な正断層型の地震断層が出現した。さらに[[産業技術総合研究所]]の調査では井戸沢断層の他に湯ノ岳断層と未知の断層である塩ノ平断層の活動が確認された。これらの断層が数秒の間隔で動いた事による地震としている<ref>{{PDF|[ |
推定[[断層#活断層|活断層]]とされていたが、大きな地震の発生が予想されていなかった{{仮リンク|井戸沢断層|en|Idosawa Fault}}・湯ノ岳断層の活動によるもので、井戸沢断層の西側延長線に沿って明瞭な正断層型の地震断層が出現した。さらに[[産業技術総合研究所]]の調査では井戸沢断層の他に湯ノ岳断層と未知の断層である塩ノ平断層の活動が確認された。これらの断層が数秒の間隔で動いた事による地震としている<ref>吾妻崇、{{PDF|[https://unit.aist.go.jp/ievg/katsudo/ievg_news/aferc_news/no.23.pdf 海溝型巨大地震に誘発された内陸活断層地震の緊急調査]}} 産業技術総合研究所 ニュースレター No.23/2011年5月号 2011年6月発行</ref>。なお、2011年9月に井戸沢断層付近で行われたトレンチ掘削調査<ref>[http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/eqvolc/201103_tohoku/fukushimahamadoori/ 2011年4月11日の福島県浜通りの地震に伴う地表地震断層について] 東大地震研 広報アウトリーチ室</ref>の結果では、ひとつ前の活動時期が12500~17000年前で、869年の貞観地震の際に活動した痕跡は見出せなかった<ref name="堤遠田2011">堤浩之, 遠田晋次、「[https://doi.org/10.5575/geosoc.2012.0057 2011年4月11日に発生した福島県浜通りの地震の地震断層と活動履歴]」 『地質学雑誌』 2012年 118巻 9号 p.559-570, {{doi|10.5575/geosoc.2012.0057}}</ref>。 |
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== 震度 == |
== 震度 == |
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震度4以上の揺れを観測した地域は以下の通り<ref>[http://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/Event.php?ID=179770 震度データベース検索 地震別検索結果] |
震度4以上の揺れを観測した地域は以下の通り<ref>[http://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/Event.php?ID=179770 震度データベース検索 地震別検索結果] 気象庁</ref>。 |
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北は |
北は北海道[[野付郡]][[別海町]]、西は鳥取県[[境港市]]で震度1を観測するなど、北海道から中国地方にかけて震度1以上の揺れを観測した。また、防災科学技術研究所が設置した強震観測網によれば北茨城市で震度6弱相当(計測震度5.8)の揺れを観測した<ref>{{Cite web|title=強震観測網|url=http://www.kyoshin.bosai.go.jp/kyoshin/quake/|editor=[[防災科学技術研究所]]|accessdate=2014-03-16}}</ref>ほか、気象庁の推計(推計震度分布)でいわき市の一部で震度6強もしくは震度7相当の揺れがあったとみられている<ref>[http://www.data.jma.go.jp/svd/eew/data/suikei/201104111716_251/201104111716_251_206.html 2011年04月11日17時16分 福島県浜通り M7.1]</ref>。 |
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気象庁の推計(推計震度分布)でいわき市の一部で震度6強もしくは震度7相当の揺れがあったとみられている<ref>[http://www.data.jma.go.jp/svd/eew/data/suikei/201104111716_251/201104111716_251_206.html 2011年04月11日17時16分 福島県浜通り M7.1]</ref>。 |
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なお、この地震で震度6弱の揺れを観測した、茨城県鉾田市の[[当間]]にある震度計は、後の調査で、地盤が不安定な場所に設置されていることが判明したため、震度計の使用が中止されることになった。現在でも、鉾田市の当間には、震度計は設置されていない。 |
なお、この地震で震度6弱の揺れを観測した、茨城県鉾田市の[[当間]]にある震度計は、後の調査で、地盤が不安定な場所に設置されていることが判明したため、震度計の使用が中止されることになった<ref>[http://www.news24.jp/articles/2011/04/22/07181425.html 観測に不適切…6地点の震度発表を中止に] 日テレNEWS24 記事:2011年4月22日</ref>。現在でも、鉾田市の当間には、震度計は設置されていない。 |
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== 関連性が高いとされる地震 == |
== 関連性が高いとされる地震 == |
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3月11日の[[東北地方太平洋沖地震]]以降、福島県の浜通り(特にいわき市やその周辺)から茨城県の北部にかけて、大きな地震が多発し、4月11日以降も活発な地震活動が続いた。東北地方太平洋沖地震の本震の発生から6年近くが経過した2016年12月にも、茨城県高萩市で震度6弱の揺れを観測する強い地震が発生している。これらはいずれも震源の深さが比較的浅く、ほとんどが正断層型の地震である<ref name="堤遠田2011"/>。ただし、この地震の翌日である、4月12日14時7分に起きたM6.4の地震は、逆断層型の地震であった<ref name="防災科研"/>。関連性が高いとされる揺れの大きかった地震は下記のとおり<ref>[http://www.jishin.go.jp/main/chousa/11apr_fukushima/p01.htm 地震調査研究推進本部 4月11日 福島県浜通りの地震]</ref><ref>[http://www.jishin.go.jp/main/chousa/11aug/p13.htm 地震調査研究推進本部 福島県浜通りから茨城県北部の地震活動]</ref>。 |
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== 被害 == |
== 被害 == |
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震動による顕著な家屋被害は無く地表地震断層の直上の建物では最大変位80cmの変位による変形や傾斜などが発生した<ref>[https://doi.org/10.5610/jaee.12.4_104 2011 年福島県浜通り地震の地表地震断層の近傍における建物被害調査] 日本地震工学会論文集 |
震動による顕著な家屋被害は無く地表地震断層の直上の建物では最大変位80cmの変位による変形や傾斜などが発生した<ref>久田嘉章, 久保智弘, 松澤佳 ほか、[https://doi.org/10.5610/jaee.12.4_104 2011 年福島県浜通り地震の地表地震断層の近傍における建物被害調査] 『日本地震工学会論文集』 特集号「2011年東日本大震災」その1、 012年 12巻 4号 p.4_104-4_126, {{doi|10.5610/jaee.12.4_104}}</ref>ほか、土砂崩れが発生するなどして、高校生などを含む4人が死亡し、負傷者を10人出した。また、翌日14時07分に発生した地震においても、負傷者を1人出した。 |
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=== 土砂崩れ === |
=== 土砂崩れ === |
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=== 火災 === |
=== 火災 === |
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福島県[[いわき市]]で、2件の火災が発生した<ref>{{PDFlink|[http://www.fdma.go.jp/bn/data/福島県浜通りを震源とする地震(第11報).pdf 福島県浜通りを震源とする地震(第11報)]}} |
福島県[[いわき市]]で、2件の火災が発生した<ref>{{PDFlink|[http://www.fdma.go.jp/bn/data/福島県浜通りを震源とする地震(第11報).pdf 福島県浜通りを震源とする地震(第11報)]}} 消防庁</ref>。 |
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== 影響 == |
== 影響 == |
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[[ニュース系列|全国ネット]]のテレビ局では、本地震発生当時は夕方の[[報道番組|ニュース番組]]を放送していたため、すぐに[[緊急地震速報]]や地震速報、津波警報の報道に切り替わった。このうち[[NHK総合テレビジョン|NHK総合テレビ]]([[首都圏 (日本)|首都圏]]向け)では、[[NHK水戸放送局|水戸局]](当時)の[[向井一弘]][[日本のアナウンサー|アナウンサー]]が茨城県[[北茨城市]]の避難所である体育館から中継している最中に強い揺れが発生。向井が周囲へ注意を呼び掛けている最中に緊急地震速報が発表された。また、[[フジテレビジョン|フジテレビ]]でも『[[FNNスーパーニュース]]』の震災1か月の関連で[[安藤優子]]キャスターが福島県内から中継をしている最中に地震が発生し、同様に揺れの様子が放送された。 |
[[ニュース系列|全国ネット]]のテレビ局では、本地震発生当時は夕方の[[報道番組|ニュース番組]]を放送していたため、すぐに[[緊急地震速報]]や地震速報、津波警報の報道に切り替わった。このうち[[NHK総合テレビジョン|NHK総合テレビ]]([[首都圏 (日本)|首都圏]]向け)では、[[NHK水戸放送局|水戸局]](当時)の[[向井一弘]][[日本のアナウンサー|アナウンサー]]が茨城県[[北茨城市]]の避難所である体育館から中継している最中に強い揺れが発生。向井が周囲へ注意を呼び掛けている最中に緊急地震速報が発表された。また、[[フジテレビジョン|フジテレビ]]でも『[[FNNスーパーニュース]]』の震災1か月の関連で[[安藤優子]]キャスターが福島県内から中継をしている最中に地震が発生し、同様に揺れの様子が放送された。 |
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[[NHK教育テレビジョン|NHK教育テレビ]]では、地震発生数分後から6時19分まで緊急のニュース番組<ref group="注">NHK総合テレビで放送されているニュース映像を、NHK教育テレビでもそのまま放送した。</ref>を放送し、6時20分からは、東北地方太平洋沖地震の影響で放送開始が延期され、本地震発生日の |
[[NHK教育テレビジョン|NHK教育テレビ]]では、地震発生数分後から6時19分まで緊急のニュース番組<ref group="注">NHK総合テレビで放送されているニュース映像を、NHK教育テレビでもそのまま放送した。</ref>を放送し、6時20分からは、東北地方太平洋沖地震の影響で放送開始が延期され、本地震発生日の4月11日に放送開始が予定されていた新番組『[[大!天才てれびくん]]』が通常通り放送された。 |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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{{Reflist|group="注"}} |
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=== 出典 === |
=== 出典 === |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
2019年7月2日 (火) 02:43時点における版
福島県浜通り地震 | |
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地震の震央の位置を示した地図 | |
本震 | |
発生日 | 2011年4月11日 |
発生時刻 | 17時16分(JST) |
震央 |
日本 福島県 浜通り 北緯36度56分42秒 東経140度40分18秒 / 北緯36.94500度 東経140.67167度 |
震源の深さ | 6 km |
規模 | マグニチュード(M)7.0 |
最大震度 | 震度6弱:福島県いわき市、古殿町、中島村、茨城県鉾田市 |
津波 | なし |
地震の種類 |
東北地方太平洋沖地震の余震 大陸プレート内地震(正断層型) |
被害 | |
死傷者数 | 死者4人、負傷者10人注1 |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
福島県浜通り地震(ふくしまけんはまどおりじしん)は、2011年(平成23年)4月11日17時16分、福島県浜通りを震源として発生した地震。地震の規模はマグニチュード7.0で、福島県と茨城県で最大震度6弱を観測した。
概要
福島県浜通りの北緯36度56分42秒、東経140度40分18秒、深さ約6kmを震源とする地震。規模は気象庁マグニチュードはMj7.0、モーメントマグニチュードは、アメリカ地質調査所ではMw6.6(W-phase)から6.7(CMT)[1]、気象庁ではMw6.6(遠地)[2]、6.7(CMT)[3]、Mw6.8(近地)[4]と解析されている。福島県浜通り・中通りと茨城県南部で最大震度6弱を観測した。
この地震の発震機構は東北東 - 西南西方向に張力軸を持つ正断層型であり、地殻内で発生した地震(大陸プレート内地震)であるとされる。気象庁は東北地方太平洋沖地震の震源域で発生した余震であるとしたが、プレート境界域における海溝型地震であった東北地方太平洋沖地震とは、地震発生のメカニズムが異なる。東北地方太平洋沖地震の震源域における西南端部での発生ではあるが、大きな海溝型地震に誘発されて内陸部の断層がずれることで発生する誘発地震とみることもできる。
茨城県北部や福島県浜通り地方では東北地方太平洋沖地震以前はほとんど地震活動はなかったが、3月11日以降活動が活発化した。この地震活動は大きく南北2つの領域で発生していた。南北2つの領域の間ではこれまで地震がほとんど発生していなかったが、4月11日の地震はこの間を埋める領域で発生した[5]。
気象庁は地震発生直後、茨城県沿岸に津波警報を発表し、宮城県・福島県と千葉県の九十九里・外房に津波注意報を出したが、震源域が主に陸域であったため、津波は観測されず[6]、同日18時05分に全て解除した。
なお、翌日14時07分には福島県中通りを震源とするマグニチュード6.4の地震が発生し、福島県浜通り(いわき市)・茨城県北部(北茨城市)で震度6弱の揺れを観測した。この地震は、11日のマグニチュード7.0の地震(正断層型)とは違い、逆断層型の地震であった。(後述の通り)
翌年2012年4月11日には土砂崩れの現場で余震としては唯一の一周忌の合同追悼行事が行われた。
震源断層
推定活断層とされていたが、大きな地震の発生が予想されていなかった井戸沢断層・湯ノ岳断層の活動によるもので、井戸沢断層の西側延長線に沿って明瞭な正断層型の地震断層が出現した。さらに産業技術総合研究所の調査では井戸沢断層の他に湯ノ岳断層と未知の断層である塩ノ平断層の活動が確認された。これらの断層が数秒の間隔で動いた事による地震としている[7]。なお、2011年9月に井戸沢断層付近で行われたトレンチ掘削調査[8]の結果では、ひとつ前の活動時期が12500~17000年前で、869年の貞観地震の際に活動した痕跡は見出せなかった[9]。
震度
震度4以上の揺れを観測した地域は以下の通り[10]。
北は北海道野付郡別海町、西は鳥取県境港市で震度1を観測するなど、北海道から中国地方にかけて震度1以上の揺れを観測した。また、防災科学技術研究所が設置した強震観測網によれば北茨城市で震度6弱相当(計測震度5.8)の揺れを観測した[12]ほか、気象庁の推計(推計震度分布)でいわき市の一部で震度6強もしくは震度7相当の揺れがあったとみられている[13]。
なお、この地震で震度6弱の揺れを観測した、茨城県鉾田市の当間にある震度計は、後の調査で、地盤が不安定な場所に設置されていることが判明したため、震度計の使用が中止されることになった[14]。現在でも、鉾田市の当間には、震度計は設置されていない。
関連性が高いとされる地震
3月11日の東北地方太平洋沖地震以降、福島県の浜通り(特にいわき市やその周辺)から茨城県の北部にかけて、大きな地震が多発し、4月11日以降も活発な地震活動が続いた。東北地方太平洋沖地震の本震の発生から6年近くが経過した2016年12月にも、茨城県高萩市で震度6弱の揺れを観測する強い地震が発生している。これらはいずれも震源の深さが比較的浅く、ほとんどが正断層型の地震である[9]。ただし、この地震の翌日である、4月12日14時7分に起きたM6.4の地震は、逆断層型の地震であった[5]。関連性が高いとされる揺れの大きかった地震は下記のとおり[15][16]。
発生日時 | 震央 | 震源の深さ | 地震の規模 | 最大震度 | |
---|---|---|---|---|---|
2011年 | 3月11日14時54分頃 | 茨城県北部 | 約 | 9kmM5.7 | 震度5弱 |
3月19日18時56分頃 | 茨城県北部 | 約 | 5kmM6.1 | 震度5強 | |
3月23日 7時12分頃 | 福島県浜通り | 約 | 8kmM6.0 | 震度5強 | |
3月23日 7時34分頃 | 福島県浜通り | 約 | 7kmM5.5 | 震度5強 | |
3月23日 7時36分頃 | 福島県浜通り | 約 | 7kmM5.8 | 震度5弱 | |
3月23日18時55分頃 | 福島県浜通り | 約 | 9kmM4.7 | 震度5強 | |
4月11日17時16分頃 | 福島県浜通り | 約 | 6kmM7.0 | 震度6弱 | |
4月11日17時17分頃 | 福島県浜通り | 約 | 8kmM5.7 | 震度5弱 | |
4月11日17時26分頃 | 福島県中通り | 約 | 5kmM5.4 | 震度5弱 | |
4月11日20時42分頃 | 福島県浜通り | 約11km | M5.9 | 震度5弱 | |
4月12日14時 7分頃 | 福島県中通り | 約15km | M6.4 | 震度6弱 | |
4月13日10時 7分頃 | 福島県浜通り | 約 | 5kmM5.7 | 震度5弱 | |
5月 6日 2時 4分頃 | 福島県浜通り | 約 | 6kmM5.2 | 震度5弱 | |
5月25日 5時36分頃 | 福島県浜通り | 約 | 7kmM5.1 | 震度5弱 | |
9月21日22時30分頃 | 茨城県北部 | 約 | 9kmM5.2 | 震度5弱 | |
9月29日19時 5分頃 | 福島県浜通り | 約 | 9kmM5.4 | 震度5強 | |
11月20日10時23分頃 | 茨城県北部 | 約 | 9kmM5.3 | 震度5強 | |
2012年 | 2月19日14時54分頃 | 茨城県北部 | 約 | 7kmM5.2 | 震度5弱 |
3月10日 2時25分頃 | 茨城県北部 | 約 | 7kmM5.4 | 震度5弱 | |
8月12日18時56分頃 | 福島県中通り | 約 | 4kmM3.8 | 震度4[注 1][17] | |
2013年 | 1月31日23時53分頃 | 茨城県北部 | 約 | 8kmM4.7 | 震度5弱 |
9月20日 2時25分頃 | 福島県浜通り | 約17km | M5.9 | 震度5強 | |
12月31日10時 | 3分頃茨城県北部 | 約 | 7kmM5.4 | 震度5弱 | |
2016年 | 12月28日21時38分頃 | 茨城県北部 | 約11km | M6.3 | 震度6弱 |
被害
震動による顕著な家屋被害は無く地表地震断層の直上の建物では最大変位80cmの変位による変形や傾斜などが発生した[18]ほか、土砂崩れが発生するなどして、高校生などを含む4人が死亡し、負傷者を10人出した。また、翌日14時07分に発生した地震においても、負傷者を1人出した。
土砂崩れ
福島県いわき市田人町石住で土砂崩れにより住宅3棟が倒壊し、3人が死亡した。
県道いわき石川線では数か所で土砂崩れが発生し、走行中の車が巻き込まれ、1人が死亡した。
電力
- 東京電力
福島第一原子力発電所では、1号機から3号機の外部電源が途絶し一時注水が中断されたが、約50分後に再開された[19]。
- 東北電力
福島県内で204,342戸の停電が発生。また、4月12日14時07分に発生した地震により、新たに5,910戸で停電が発生した[20]。
交通
- 鉄道
JR東日本では、常磐線・東北本線・磐越東線・磐越西線・水郡線で運転を休止した[21]。 それ以外の鉄道もJRを中心に大きく乱れた。
- 高速道路
常磐自動車道では、土砂崩れが発生したことによりいわき勿来インターチェンジ〜いわき湯本インターチェンジ間が通行止めとなった[21]。
また、福島県道14号いわき石川線でも大規模な土砂崩れが発生した。
火災
影響
- 通信回線
NTTコミュニケーションズでは、企業向けデータ通信サービスが停電により一部で利用ができなくなった[23]。
メディア
全国ネットのテレビ局では、本地震発生当時は夕方のニュース番組を放送していたため、すぐに緊急地震速報や地震速報、津波警報の報道に切り替わった。このうちNHK総合テレビ(首都圏向け)では、水戸局(当時)の向井一弘アナウンサーが茨城県北茨城市の避難所である体育館から中継している最中に強い揺れが発生。向井が周囲へ注意を呼び掛けている最中に緊急地震速報が発表された。また、フジテレビでも『FNNスーパーニュース』の震災1か月の関連で安藤優子キャスターが福島県内から中継をしている最中に地震が発生し、同様に揺れの様子が放送された。
NHK教育テレビでは、地震発生数分後から6時19分まで緊急のニュース番組[注 2]を放送し、6時20分からは、東北地方太平洋沖地震の影響で放送開始が延期され、本地震発生日の4月11日に放送開始が予定されていた新番組『大!天才てれびくん』が通常通り放送された。
脚注
注釈
出典
- ^ “M6.6 - eastern Honshu, Japan”. アメリカ地質調査所. 2016年2月4日閲覧。
- ^ 4月11日 福島県浜通りの地震- 遠地実体波による震源過程解析(暫定)- (PDF)
- ^ セントロイド時刻とセントロイド位置およびモーメントマグニチュード(気象庁)
- ^ 4月11日 福島県浜通りの地震- 近地強震波形による震源過程解析(暫定)- (PDF)
- ^ a b 東北地方太平洋沖地震以降の茨城県北部・福島県東部の地震活動 (防災科学技術研究所)
- ^ “気象庁 | 津波警報・注意報評価”. www.data.jma.go.jp. 2019年6月28日閲覧。
- ^ 吾妻崇、海溝型巨大地震に誘発された内陸活断層地震の緊急調査 (PDF) 産業技術総合研究所 ニュースレター No.23/2011年5月号 2011年6月発行
- ^ 2011年4月11日の福島県浜通りの地震に伴う地表地震断層について 東大地震研 広報アウトリーチ室
- ^ a b 堤浩之, 遠田晋次、「2011年4月11日に発生した福島県浜通りの地震の地震断層と活動履歴」 『地質学雑誌』 2012年 118巻 9号 p.559-570, doi:10.5575/geosoc.2012.0057
- ^ 震度データベース検索 地震別検索結果 気象庁
- ^ 震度6弱を観測した「鉾田市当間」は4月21日に震度計の使用が停止された。
- ^ 防災科学技術研究所: “強震観測網”. 2014年3月16日閲覧。
- ^ 2011年04月11日17時16分 福島県浜通り M7.1
- ^ 観測に不適切…6地点の震度発表を中止に 日テレNEWS24 記事:2011年4月22日
- ^ 地震調査研究推進本部 4月11日 福島県浜通りの地震
- ^ 地震調査研究推進本部 福島県浜通りから茨城県北部の地震活動
- ^ 震度の訂正について(続報) (PDF) (気象庁地震火山部)
- ^ 久田嘉章, 久保智弘, 松澤佳 ほか、2011 年福島県浜通り地震の地表地震断層の近傍における建物被害調査 『日本地震工学会論文集』 特集号「2011年東日本大震災」その1、 012年 12巻 4号 p.4_104-4_126, doi:10.5610/jaee.12.4_104
- ^ 経済産業省 福島県浜通りの地震発生による状況について(第二報)
- ^ 東北電力 緊急速報(4月12日)
- ^ a b 国土交通省 大臣発言(福島県浜通りを震源とする地震の対応状況及び被害状況、応急仮設住宅の建設について)
- ^ 福島県浜通りを震源とする地震(第11報) (PDF) 消防庁
- ^ NTTコミュニケーションズ 福島県浜通りを震源とする地震による影響について(第2報:16時現在)
外部リンク
- 気象庁 4月11日17時20分発表 - 震源・震度
- 気象庁 4月11日17時20分発表 - 各地の震度
- 気象庁 4月12日14時11分発表 - 各地の震度 21時間後に起こった最大震度6弱の余震。
- 2011年4月11日福島県浜通りの地震の評価(文部科学省 地震調査研究推進本部発表)
- 防災科学技術研究所