ダウンフォール作戦

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ダウンフォール作戦の全体図

ダウンフォール作戦(ダウンフォールさくせん、英語: Operation Downfall)は、太平洋戦争時にアメリカ軍イギリス軍をはじめとする連合国軍が計画した「日本本土上陸作戦」の作戦名である。日本は原爆投下とソ連の対日参戦により降伏したために、この計画は中止された。

1945年11月に計画されたオリンピック作戦と、1946年春に計画されたコロネット作戦に分かれており、オリンピック作戦では九州を占領し、コロネット作戦では関東平野の占領を目的としていた。仮にこの作戦が実行されていたなら、史上最大の水陸両用作戦となった[1]

日本側によって予想された戦闘の全体概要については「本土決戦」(日本側の呼称)を、日本軍の防衛作戦については決号作戦を参照。

日本本土上陸作戦[編集]

作戦構想[編集]

日本本土上陸作戦が現れたのは、連合国によるカイロ会談での「日本の早期無条件降伏のためには本土上陸も必要」という認識が最初と言われている[要出典]。アメリカ統合参謀本部は上陸作戦を検討し、1945年2月のヤルタ会談直前に骨子が完成。上陸作戦を中心になり実行するアメリカとイギリスやオーストラリア軍をはじめとするイギリス連邦軍に了承されることになる。

ダウンフォール作戦は次の2つの作戦から構成されている。両作戦では、徹底的な海上封鎖を実施して資源の乏しい日本を兵糧攻めにするとともに、広島長崎に続く原爆投下、及び大規模な化学兵器の使用、農地への薬剤散布によって食料生産を不可能にする事(すなわち、NBC兵器の無差別投入や、マスタードガス、サリン攻撃[2] も検討されていた)。

オリンピック作戦[編集]

オリンピック作戦

オリンピック作戦は九州南部への上陸作戦であり、目的は関東上陸作戦であるコロネット作戦のための飛行場確保であった。作戦予定日はXデーと呼称され、1945年11月1日が予定されていた。(なお、この日程は日本軍に完全に読まれていたことが明らかとなり、後に機密漏えいを疑う騒動となった。堀栄三著作参照)海上部隊は空前の規模であり、空母42隻を始め、戦艦24隻、400隻以上の駆逐艦が投入される予定であった。陸上部隊は14個師団の参加が予定されていた。これらの部隊は占領した沖縄を経由して投入される。

事前攻撃として、アメリカ軍とイギリス軍により種子島屋久島甑列島などの島嶼を、本上陸5日前に占領することも検討された。これは、沖縄戦の時と同じく、本上陸海岸の近傍に良好な泊地を確保することが目的である。この泊地は、輸送艦やダメージを受けた艦の休息場所に使われる。また、九州主要戦略目標地域に対して、マスタードガスを主体とする毒ガス攻撃も検討されていた。さらに米統合参謀本部は、神経ガス(サリン)を使用すれば、日本に侵攻してもほとんど死者を出さずにすむと信じ、ドイツ崩壊後から米軍が太平洋で毒ガス戦を展開できるよう、マスコミと協力して世論づくりをしていたことを記録したアメリカ軍の極秘資料がアメリカで報道された。この文書では、ジュネーブ議定書で毒ガスの使用は禁止されていたが、日本軍が中華民国内で使用したという事実と、アメリカ白人による黄色人種への人種差別感情が、アメリカ側の罪悪感を軽減したとも指摘されている[2]

上陸部隊はアメリカ第6軍であり、隷下の3個軍団がそれぞれ宮崎大隅半島薩摩半島に上陸することとなっていた。これは日本軍の3倍以上の兵力になると、アメリカ軍では見積もっていた。大隅半島には日本軍の防御施設があったものの、宮崎や薩摩半島は手薄であったということも判断材料となった。

アメリカ軍の動員される兵力は25万2千人の歩兵と8万7千人の海兵隊から成る16個師団であり、ヨーロッパ戦線の部隊は予定されていない。上陸作戦を支援するため、アメリカ海軍はチェスター・ニミッツ提督に第3艦隊第5艦隊を与えたが、これは太平洋で利用できるすべての艦隊に等しかった(それまで第3艦隊と第5艦隊が同一の作戦に参加することはなかった)。

第5艦隊レイモンド・スプルーアンス提督)は、10隻の空母、16隻の支援空母で上陸作戦への近接支援を行い、上陸用舟艇や輸送船を含めた艦船の数は3,000隻に達した。またイギリス海軍も極東方面に展開していた艦隊を派遣することとなった。第3艦隊(ウイリアム・ハルゼー提督)は、17隻の空母と8隻の高速戦艦によって機動攻撃を担当した。

ドイツが1945年5月に降伏したこともあり、1945年の中期までにアメリカ軍、イギリス軍、オーストラリア軍、ニュージーランド軍を中心とした連合軍は1,200機の戦闘機が投入可能であり、その数は月を追うごとに増えていた。オリンピック作戦が開始されるまでにアメリカ海軍は22隻の空母、イギリス海軍は10隻の空母を用意する予定であり、計1,914機の戦闘機が運用可能だった。

航空基地の確保が目的のため、南部九州のみの占領で作戦は終了し、北部九州への侵攻は行わないことになっていた。この基地は、翌年3月のコロネット作戦のための前進基地であり、72万人の兵員と3,000機が収納できる巨大基地となるはずだった。この基地からは、長距離爆撃機のみならず中距離爆撃機も関東平野を爆撃することができた。

欺瞞作戦[編集]

オリンピック作戦を支援するため、兵力誘導する目的でパステル作戦 (Pastel)が計画されていた。パステル作戦は、連合国軍の作戦目標が1945年10月に日本が占領下に置いていた中華民国上海や高知県に上陸するものと見せかけ、日本軍の兵力をそちらへ誘導させるものであった。

また、直前の陽動作戦として、10月23日~30日に、アメリカ軍第9軍団(8万人)が高知県沖でもって、陽動上陸行動を行うことや、イギリス本土の爆撃機軍団から引き抜かれたイギリス空軍アブロ・ランカスターが連邦爆撃機派遣団である「タイガー・フォース」の主力爆撃機として沖縄から出撃する予定であった。

コロネット作戦[編集]

オリンピック作戦で得られた九州南部の航空基地を利用し、関東地方へ上陸する作戦である。上陸予定日はYデーと呼ばれ、1946年3月1日が予定されていた。コロネット作戦は洋上予備も含めると25個師団が参加する作戦であり、それまでで最大の上陸作戦となる予定であった。上陸地点は湘南海岸相模川沿いを中心に北進し、現相模原市町田市域辺りより進路を東京都区部へ進行する計画予定)と九十九里浜から鹿島灘沿岸にかけての砂浜海岸が設定され、首都を挟撃することが予定されていた。湘南海岸には第8軍、九十九里浜には第1軍が割り当てられていた。

Yデーの3ヶ月前からイギリス軍とアメリカ軍による艦砲射撃と空襲によって大規模な破壊を行ない、攻撃の中にはミサイルやジェット戦闘機、化学兵器の使用も含まれていた。1946年3月に関東平野の南東と南西から上陸する連合軍は、古典的な挟撃作戦によって約10日で東京を包囲する。計画では湘南海岸に30万人、九十九里海岸に24万人、予備兵力合わせて107万人の兵士と1,900機の航空機というノルマンディー上陸作戦をはるかに凌ぐ規模の兵力が投入される予定であった[3]

両軍共に当作戦に備えて数々の新兵器を準備しており、アメリカ軍側はF8Fベアキャット、ジェット戦闘機P-80シューティングスター、重戦車M26パーシングを生産し、イギリス軍は最新鋭のジェット戦闘機グロスター ミーティアを、日本側も特攻兵器を主軸としつつジェット戦闘機橘花改、戦闘機烈風、試作局地戦闘機震電、ロケット戦闘機秋水五式中戦車などの開発を急いだ。

日本側の対応[編集]

大本営の提唱する「一億玉砕」のプロパガンダ通り、男子15歳から60歳、女子17歳から40歳まで根こそぎ徴兵した国民2600万人を主力の陸海軍500万人と共に本土決戦に投入するとされていた。

1945年初期、大本営本土決戦を想定して、さまざまな体制変更を試みている。その中でもっとも大きな変更は、本土防衛を主眼にして軍の命令系統を2つに分割したことである。東日本を第一総軍、西日本を第二総軍に振り分け、それぞれの司令部を市谷広島においた。これは、それぞれ連合国軍の2つの作戦にも対応している。なお、第二総軍司令部は広島市への原子爆弾投下で壊滅したが、指揮下にある九州と四国の軍は健在で、戦闘に支障はなかった。

日本側では連合国軍の南九州・南四国侵攻の時期・規模をほぼ正確に予想していた。第二総軍第十六方面軍の予想では11月1日に上陸を開始、上陸地点は九州では宮崎海岸・志布志湾・吹上浜を挙げ、これらに基づいて宮崎・大隅半島・屋久島・種子島を担当する第五十七軍に加え、第四十軍を新設し吹上浜付近を担当させる事とした。四国では第五十五軍を新設した。

更にこれらの地域では陣地の新設が急ピッチで進められたが、九州では資材不足に加えてシラス台地の掘削が難航し、終戦時でも60〜80%程度の完成率であったといわれる[4]昭和天皇御前会議において、本土決戦を諦めポツダム宣言受諾を支持する理由として、九十九里浜の陣地構築も出来てないことを指摘し、従来の例からしても計画に則った防衛体制は望めないであろうとの見通しを示唆している。

作戦中止[編集]

ルーズベルト大統領の死去に伴い、跡を継いだトルーマン大統領は、ポツダムでの会議中に原爆実験の成功の報を聞き、ソ連の日本参戦を阻止するため、そして日本をソ連の助力なしに英米のみで屈服させることが可能になったことから作戦中止を決定する。

論争[編集]

この作戦計画については、統合参謀本部内で意見の対立があった。統合参謀本部議長のレーヒ元帥は、「すでに壊滅している日本に対し作戦を遂行する必要なし」として中止を提案。海軍作戦本部長キング元帥も、「地上兵力投入による本土侵攻より海上封鎖が有効」と主張。陸軍航空隊総司令官アーノルド元帥も「本土への戦略爆撃と海上封鎖が有効」と言う慎重論が出た。彼らがこのような主張をしたのは、日本軍との各諸島での戦闘、とりわけ硫黄島や沖縄戦でのアメリカ軍やイギリス軍の損害の大きさに、本土戦での犠牲者の数を懸念したためである。

それに対し「本土侵攻による大戦の早期終結を」と主張するアメリカ陸軍のマッカーサー元帥や、陸軍参謀総長マーシャル元帥と太平洋艦隊司令長官ニミッツ元帥がこの計画を支持した。最終的に作戦は承認され、マッカーサーに対して作戦準備指令が下っている。

被害予想[編集]

オリンピック作戦での予想される連合軍の損害は、タラワ硫黄島、沖縄の戦闘から25万人と見積もられるが、あくまで類推である。

ダウンフォール作戦全体の連合軍側の損害予測として、レーヒは死傷者約27万人、マッカーサーはフィリピン戦などの経験に基づき死傷者約5万人と見積もっていた[5]。アメリカ軍は自軍の死傷者数を50万人と推定し、同じ数のパープルハート章を製造した。この在庫は2003年時点でも総数12万個程あり、底をついたのは2010年頃である[6]

連合軍、日本共に独自に損害を予測し数値は異なるが、アメリカ軍とイギリス連邦軍は第二次大戦最大、日本側も全軍が壊滅するほどの被害が生じるという点では一致していた。

参加兵力[編集]

全て作戦開始前の予定であり、状況によっては追加・削減などもありうる。

アメリカ[編集]

  • 参加艦艇総計:戦艦24隻、空母42隻、駆逐艦400隻以上
  • 上陸部隊兵士総計:30万人(湘南海岸)、24万人(九十九里海岸)2、予備兵力合わせて総計107万人
  • 参加機:アメリカ軍、イギリス軍、オーストラリア軍、ニュージーランド軍でのべ1,200機(ただし艦上機を入れると1,914機)
  • 第3艦隊:空母17隻、戦艦8隻
  • 第5艦隊:空母10隻、支援空母10隻、上陸用舟艇や輸送船など3,000隻
  • 陸上部隊:16個師団(歩兵25万2千人、内2個は海兵隊8万7千人)
  • 第6軍(上陸部隊、隷下3個軍団)
  • 第9軍団(8万人)、神経ガスやマスタードガスなどを装備
  • 第8軍
  • 第1軍
  • 主要兵器

イギリス[編集]

  • 東洋艦隊:空母10隻
  • 連邦爆撃機派遣団「タイガー・フォース」 主力:アブロ ランカスター
  • 航空兵器:グロスター ミーティア

脚注[編集]

  1. ^ Richard B. Frank (1999). Downfall: The End of the Imperial Japanese Empire. New York: Random House. p. 340. 
  2. ^ a b SAPIO2011年12月28日号 第2次大戦末期 米軍は日本本土上陸作戦でサリン攻撃準備[リンク切れ]
  3. ^ 『相模湾上陸作戦 - 第二次大戦終結への道』大西比呂志・栗田尚弥・小風秀雄(有隣新書 ISBN 978-4896601329
  4. ^ 『太平洋戦争 日本の敗因 (6) 外交なき戦争の終末』NHK取材班編(角川文庫 ISBN 978-4041954171
  5. ^ 『決定版 太平洋戦争』第8巻、学研パブリッシング、2010年、65頁
  6. ^ Are New Purple Hearts Being Manufactured to Meet the Demand?”. History News Network (2003年12月16日). 2015年4月10日閲覧。

資料[編集]

太平洋戦争初期からダウンフォール作戦に至る米軍の作戦計画を追ったドキュメント。
  • 『幻の本土決戦 房総半島の防衛』(千葉日報社)
コロネット作戦実行―米軍上陸の場合は最前線になる事が予想された、房総半島東岸の防衛体制の跡をルポ。

関連作品[編集]

小説[編集]

日本が降伏せず、本土侵攻作戦が実行されていたらという想定で書かれた架空戦記

ボードゲーム[編集]

  • Ty Bomba, "DownFall: If the US Invaded Japan, 1945", Strategy & Tactics No.230, Decision Games, 2005
  • "Operations Olympic & Coronet", World at War No.27, Decision Games, 2012

テレビゲーム[編集]

本作は日本がポツダム宣言を受け入れず、連合国軍との本土決戦に敗れた末に分断された設定。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]