青ヶ島
青ヶ島 | |
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航空写真 | |
所在地 | 日本 東京都青ヶ島村 |
所在海域 | 太平洋(フィリピン海) |
所属諸島 | 伊豆諸島 |
座標 | 北緯32度27分28秒 東経139度45分33秒 / 北緯32.45778度 東経139.75917度 |
面積 | 5.97 km² |
海岸線長 | 9 km |
最高標高 | 423 m |
最高峰 | 大凸部 |
人口 | 170人 |
人口密度 | 35.8人/km² |
プロジェクト 地形 |
青ヶ島(あおがしま)は、伊豆諸島に属する火山島で、本諸島の有人島としては最南端にある。日本の気象庁によって火山活動度ランクCの活火山に指定されており[1]、また、常時観測火山にも選定されている[2][3]。全島が青ヶ島村に属するが、産業に乏しく本土との往来も難しいため、人口減少が続いており、2019年においては170人程度しか定住していない。
元々は知名度の低い島であったが、外輪山によって周囲の海から隔てられ、カルデラ底が陸上に露出しているという特異な地形を持つことから、アメリカの著名な組織がオンラインの記事[4][5]で取り上げたことで、世界中から注目を浴びるに至った[6]。
青ヶ島よりも南方には、ベヨネース列岩,須美寿島,鳥島,孀婦岩といった岩や無人島が順に並んでおり、漁場や自然保護区となっているが、青ヶ島以上に海が荒れやすいため一般人が訪れることは難しい。
概要
青ヶ島は本州から遥か南方の太平洋上に位置し、行政区分は東京都青ヶ島村。最も近い八丈島からは南へ約60km程度離れている。気候は温暖湿潤気候(Cfa)。本州よりは暖かい気候であるが、沖縄やハワイ等と比較して緯度が高いため、常夏の島と言えるほど暖かい訳ではない。孤島であるため、天候が変化しやすい他に、海からの強風にも常に晒され続けており、自動車が飛ばされる程の風が吹くこともある。
2019年(令和元年)7月1日現在の人口は170人で世帯数は113世帯ある[7]。いつ頃から人が本島に定住するようになったかについては不明であるが、徐福伝説によれば、男女が同じ島に住むと神の祟りがあると信じられた時代があり、女人禁制の島だったとされる。本島が歴史上に表れるのは15世紀頃からであるが、海難事故を記録したものが殆どである[8]。『保元物語』に登場する源為朝が訪れた鬼島を青ヶ島とする説がある。
連絡船のあおがしま丸[9]やゆり丸の悪天候に因る欠航が多く、八丈島 - 青ヶ島間を往来する小型ヘリコプターの『東京愛らんどシャトル』[10]は定員が少ないという往来の困難さゆえに観光目的で島を訪れる人は年間900人から多くても1800人程度である。2010年代に入って、インターネット経由で世界的に存在が認知されたことで、知る人ぞ知る秘境から世界的な名所となり、キャパシティを超える観光客が押し寄せている。特に、2014年から2016年に掛けてアメリカの著名な組織のWebサイトで記事が相次いで掲載された[11][12]ことで、世界中から取材班や観光客が集まるようになり、数少ない交通機関の予約(特に東京愛らんどシャトル)は更に困難になっている。愛らんどシャトルは島民の生活にも欠かせないヘリコプターであり、予約が取り難くなったことで島民の往来にも支障が発生している。また、青ヶ島村において外国語での電話取材や外国人観光客の対応で問題が発生している[13]。
島内に小学校と中学校は存在するが、高校以上の教育機関は存在しない。そのため、高校進学をする生徒は日本の本土に旅立つことになる。
地形
海面上の本島は北北西-南南東3.5km、西南西-東北東2.5kmであるが、これは海面下の基底15km×8km、海底からの比高は1100mの火山の頂上部である[14]。
海面上の青ヶ島火山は,北部の黒崎火山とそれを覆う南部の主成層火山の2つの火山体で構成されている[15]。主成層火山の頂部には直径約1.7×1.5kmの小カルデラ(池之沢火口)があり、その中に中央火口丘の丸山火砕丘がある。
この島における最高地点は丸山を取り囲んでいる外輪山の北西部分に当たる
火山活動史
青ヶ島は第四紀火山である。最近1万年間の活動は主成層火山で発生している。約3600年前に北西山腹で割れ目噴火があった。
- 約3000年前 大規模なマグマ水蒸気爆発が発生し、火砕サージが全島を覆った。3000年前から2400年前までの間に、本島の南東部にあった火口状の凹地を埋める溶岩流とスコリアが噴出し、東部や北部に多量のスコリアが降下する噴火も発生した。その後、岩屑雪崩が発生して、最終的には池之沢火口が形成された[16]。
- 1652年 噴煙が上がり[17]、1670年より約10年間に亘って大池より火山灰が噴出した[18]。
- 1780年7月 群発地震が発生し、8月に大池・小池の水位と水温が上昇した。
- 1781年5月3日 に地震が群発し、翌日には降灰が起こった。
- 1785年4月18日 に発生した火山活動により全家屋63戸が焼失した[19]。火口内に溶岩流とスコリアによる丸山火砕丘が形成され、翌年の噴火に掛けて成長した。この天明の大噴火は5月末まで続いたとされる。このとき、島民327人のうち八丈島への避難が間に合わなかった130人余りが死亡したと考えられており、1824年に名主の佐々木次郎太夫らが還住(全島帰還)を果たすまでの約40年間に亘って無人島になった。
18世紀の活動以降は、顕著な火山活動は無い。噴気活動も少なく、池の沢火口内壁と丸山周辺に水蒸気を主成分とする噴気が見られるだけである[15]。
地名など
本島の北部でカルデラの外側の岡部に、
- 池之沢
- カルデラ内の領域。
- この地名は天明の大噴火以前には大小2つの池が在ったことに由来する。池之沢内は「金土ヶ平」や、樹齢230年を越えるスギ「大杉」が茂る「恋ヶ奥」などに細分化される。
- 火口付近であることからひんぎゃが多く存在し、絶滅危惧種のオオタニワタリが群生している。
- 浜路ヶ平
- 天明の大噴火以前に池之沢の東南部に集落を有した狭隘な平坦地で、現在は無人である。
- 岡部
- 休戸郷と西郷の集落がある青ヶ島北部。
- 東側が休戸郷で西側が西郷である。また、それらの中間は「中原」とも言われることもあり、村営住宅の名称等に使われている。
- 住宅や公共施設等は全てここに集中している。ここは、島の大部分を占める二重式火山の池之沢に対して、岡部と呼ばれることもある。
神子ノ浦 - 岡部の東側の断崖の下の岩石海岸。
- 集落から平面距離的には近いため、20世紀半ばまで船着場として使われていた。
- 当地まで断崖絶壁を降りる道が崩落しており、現在は通行不可能。断崖の上には展望台が建設されている。
- 大凸部
- 外輪山の北西に位置する標高423mの山で、青ヶ島の最高地点でもある。
大人ヶ凸部 - 外輪山東南部に位置する標高334mの山。
- 丸山
- 1785年の天明の大噴火で形成された標高223mの内輪山(火口丘)。
- 内輪山を1周することができるように整備された丸山遊歩道の途中には、富士様と呼ばれる神社がある。
- 尾山
- 外輪山北側の展望公園として整備されている標高400mの頂。
- 大千代
- 島の南東部にある岬。
- 三宝港を補うために埠頭が建設されたが、1994年9月27日に付近の斜面が崩落し、村道18号線(大千代港線)が寸断されてしまったため、現在は埠頭に行くことは不可能。
- 東京都は「大千代港への取付道路の整備は課題であるが、崩落の改修は技術的にも相当困難な状況である。」[20]と結論しており、事実上放棄されている。
交通
島内に公共交通機関は無い。また、三宝港から集落までは離れており、その道中の勾配も急峻で、徒歩や自転車での移動は難しい。そのため、観光客はレンタカーを利用するか、民宿に車での送迎を頼む場合が多い。
道路
- 東京都道236号青ヶ島循環線[21]
- 三宝港からカルデラ外縁部の西側を通って集落へ向かう道は、2001年に港のすぐ西側の斜面が崩落して以降、通行不能になっている。
- かつては三宝港から池之沢へと稜線(残所越)を越える村道8号線があったものの、海側が1981年に崩落したため、1985年に港と池之沢を結ぶ青宝トンネル(全長505m)が開通した。また、1992年には、池之沢の東側から集落に向かう「流し坂」に平成流し坂トンネルが開通し、交通事情は改善されている。
- 島内の交通量は極めて少なく、実用上の信号機は不要だが、小学校近くに1基のみ設置されている。これは、高校のない青ヶ島の子供は、中学を卒業すると自ずと交通網が発達した本州、もしくは高校のある伊豆諸島の島に移り住む必要があり、生活に支障が出ないようにするためである。
航路
- 底土港-三宝港
- 2014年1月より、伊豆諸島開発貨客船のあおがしま丸が底土港(八丈島)または八重根漁港と三宝港の間を片道3時間で週4往復している[22]。
- 欠航が続いた場合には、日曜日に臨時運航されることもある。
- それ以前の2013年12月までは、旅客船の還住丸が八重根漁港と三宝港の間を片道2時間30分で日曜日を除いて毎日1往復していた[23]。
- また同時期まで、貨客船の黒潮丸が底土港と三宝港の間を片道4時間で毎週土曜日に1往復していた。かつては旅客も扱っていたが、運用末期には原則として貨物専用ということになっていた。
- 本島に存在する港は2箇所あり、それらのいずれも集落から遠く離れたカルデラの断崖絶壁の下に建設されている。一つは南西部に存在する三宝港で、他方は南東部に存在する大千代港である。
- 入江のない青ヶ島では、20世紀初頭まで神子ヶ浦の僅かな海岸に小舟をつける程度しかできなかった。昭和の始め頃に三宝港が造られたが、漁船程度の小型船しか着けられない船着場であり、物資や人員は船を沖合に停泊させて、そこから艀で輸送するほかなかった。また防波堤が無く、少しの高波でも作業が出来なくなるために、就航率が極端に低く、天候急変による作業途中の離脱で積み残しが多かった。戦後に151億円を投じて、防波堤を兼ねた貨物船用の波止場が建設され、500t級の船舶が接岸できるようになった[24]。それでも付近の黒潮の激しさと天候に左右され易く、現在でも漁船を港内に停泊させられず、架空索道で陸上にある船溜りに移動させている。また、定期客船の就航率は6割弱で、特に海が荒れやすい冬場は、週に1度から10日に1度程度という低い状態が続いている。このため、それを補うべく南東部の大千代に港が建設されたが、1994年に斜面が大きく崩落して道路が寸断されて以降は利用できなくなっている。青ヶ島において艀輸送が完全に終了したのは2014年になっての事であった。
空路
- 八丈島空港-青ヶ島ヘリポート
- 1993年より、東邦航空のヘリコミューター「東京愛らんどシャトル」が、八丈島空港と青ヶ島ヘリポートの間を片道約20分で毎日1往復している。
- 就航率は9割弱で、天候の影響を受けやすい海路と比較して就航率は遥かに高く、また所要時間も短いため、島民の主たる足となっている。ただし、運賃は高い上、定員も9名と圧倒的に少なく、上記の通り島民の移動手段としても重要であるため、観光客の予約は困難な場合も多い。
- 欠航が続いた場合や、村役場からの要請が有る場合は、臨時便として定期便の飛行前及び1日の飛行後(御蔵島から八丈島に戻ってきた後)に増発されることもある。
- ヘリコプターが離陸する際には、送迎の島民が手を振り、青ヶ島駐在所の警察官が敬礼する風景が見られる。
- このヘリコミューターが開設される前は、一旦海況が悪化すると一切の物資が届かず、来島者も帰れないという状態が半月以上続くことが珍しくなかった。
通信
インターネット
長年ADSL回線のみであったが、海底光ファイバーケーブルの整備事業が進められた結果、2020年3月25日よりブロードバンドサービスの提供が開始された [25]。
携帯電話網
NTTドコモはほぼ全域で使用可能。au 4G LTE・SoftBank 4G LTEは、岡部付近でのみ使用可能である。
産業
平坦な土地と大量の水を必要とする水稲栽培は行えないので、サツマイモ栽培が行われている。昔はこれが主食であり、乾燥芋にして保存食料とした。ひんぎゃの蒸気(無臭・無毒)を利用した蒸し釜が調理に使用されている。サツマイモを原料とした芋焼酎が名産品である。
作品
脚注
- ^ "火山噴火予知連絡会による活火山の選定及び火山活動度による分類(ランク分け)について" (PDF) (Press release). 気象庁. 21 January 2003.
- ^ "火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山" (PDF) (Press release). 気象庁. 30 June 2009.
- ^ "中長期的な噴火の可能性の評価について -監視・観測体制の充実等の必要な火山の選定-" (PDF) (Press release). 気象庁 火山噴火予知連絡会・火山活動評価検討会. 30 June 2009.
- ^ Src='https://Secure.gravatar.com/Avatar/1eb3e6d5a28ed0f84fdca348b8b8a9e0?s=100, <img Alt= (2014年10月30日). “13 Amazing Natural Wonders You Should See Before You Die” (英語). One Green Planet. 2019年8月25日閲覧。
- ^ Nalewicki, Jennifer. “The Sleepy Japanese Town Built Inside an Active Volcano” (英語). Smithsonian. 2019年8月25日閲覧。
- ^ “日本一小さな村「青ヶ島」が外国人観光客に大人気 人口170人の島は大混乱…”. ライブドアニュース. 2019年8月25日閲覧。
- ^ “青ヶ島について 青ヶ島の概要”. 青ヶ島村ホームページ. 青ヶ島村. 2020年8月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月16日閲覧。
- ^ “青ヶ島について”. 青ヶ島役場. 2016年7月1日閲覧。
- ^ “八丈島⇔青ヶ島”. 伊豆諸島開発. 2016年7月1日閲覧。
- ^ “東京愛らんどシャトル -予約・空席照会・運航情報-”. 東邦航空. 2016年7月1日閲覧。
- ^ Src='https://Secure.gravatar.com/Avatar/1eb3e6d5a28ed0f84fdca348b8b8a9e0?s=100, <img Alt= (2014年10月30日). “13 Amazing Natural Wonders You Should See Before You Die” (英語). One Green Planet. 2019年8月25日閲覧。
- ^ Nalewicki, Jennifer. “The Sleepy Japanese Town Built Inside an Active Volcano” (英語). Smithsonian. 2019年8月25日閲覧。
- ^ “日本一小さな村「青ヶ島」が外国人観光客に大人気 人口170人の島は大混乱…”. ライブドアニュース. 2019年12月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月25日閲覧。
- ^ 青ヶ島火山および伊豆諸島南方海底火山地質図 - 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
- ^ a b 青ヶ島火山および伊豆諸島南方海底火山地質図 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
- ^ “青ヶ島”. 気象庁. 2016年7月1日閲覧。
- ^ 『八丈島年代記』安田存政、1854年。
- ^ 『南方海島志』秋山富南、1791年。
- ^ a b “青ヶ島”. 海上保安庁 海洋情報部. 2016年7月1日閲覧。
- ^ [1]
- ^ “青ヶ島の都道”. 東京都 八丈支庁. 2016年7月1日閲覧。
- ^ “2014年1月 青ヶ島への海のアクセスが変わります。”. 八丈島観光協会. 2013年12月24日閲覧。
- ^ “ドォーモ”. KBC九州朝日放送. 2013年1月24日閲覧。
- ^ “再評価結果一覧表” (PDF). 国土交通省. 2016年7月1日閲覧。
- ^ 利島村・青ヶ島村で超高速ブロードバンドサービス提供|東京都 - 2020年5月4日閲覧。
- ^ 中川信夫(監督)・左幸子・宇野重吉・杉村春子・沼田曜一 (29 November 1955). 青ヶ島の子供たち 女教師の記録 (映画). 新東宝.
- ^ 深川栄洋(監督)・柳沢太介・仲里依紗・児島美ゆき・寺田農 (21 February 2007). アイランドタイムズ (映画). フジテレビジョン.
- ^ 『アイランドタイムズ』フジテレビ出版、2007年2月21日。ISBN 978-4-594-05324-6 。
- ^ 『鬼虫』小学館〈ビッグコミックスピリッツ〉 。
関連項目
外部リンク
- 青ヶ島 - 気象庁
- 日本活火山総覧(第4版)Web掲載版 青ヶ島 (PDF) - 気象庁
- 青ヶ島 - 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
- 青ヶ島 解説 - 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
- 海域火山データベース 青ヶ島 - 海上保安庁海洋情報部
- 青ヶ島村
- ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『青ヶ島』 - コトバンク
- [東京プラネタリウム] 4K 青ヶ島 二重カルデラの星空(語り 松岡禎丞) | Tokyo Planetarium | BS4K8K | NHK - YouTube(NHK提供、2020年5月8日公開)