オオタニワタリ

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オオタニワタリ
Ootaniwatari8687.JPG
オオタニワタリ
保全状況評価
絶滅危惧IB類

環境省レッドリスト
Status jenv EN.png

分類
: 植物界 Plantae
: シダ植物門 Pteridophyta
: チャセンシダ科 Aspleniaceae
: チャセンシダ属 Asplenium
: オオタニワタリ A. antiquum

オオタニワタリ (Asplenium antiquum Makino) はシダ植物門チャセンシダ科に属する日本南部から台湾の森林内の樹木や岩などに着生するシダ植物。単にタニワタリとも言う。本州南岸以南に分布するが、南では近似種が他にもある。

特徴[編集]

葉は細長く、先端がとがった広線形で、切れ込みなどはない。主軸はしっかりしていて、褐色に色づく。基部には少し葉柄があって、鱗片が密生する。胞子のう群は葉の裏側に並ぶ。葉の先端の方から中程まで、主軸の両側に、多数の直線状の胞子のう群が、主軸から斜め上方向へ、平行に並んでいる。

茎は短くて直立する。葉は茎の先端に集中して放射状に配列し、斜め上に伸びるので、全体としてはお猪口のような姿になる。茎の側面はたくさんの根が出て、黒褐色のふわふわしたスポンジ状の固まりとなる。着生植物で、熱帯亜熱帯では樹木の幹や枝に付着して成長する。ただし、日本本土など比較的寒冷な地域では岩の上や地上で生育するものが多くなる。

葉がお猪口型になるのは、落ち葉をここに集めて、自分が成長するための肥料とするための適応と考えられる。ここに溜まった落ち葉はやがて腐葉土になり、葉の間から出る根によって保持され、株の成長とともに株の下部に発達する根塊の一部となる。このように、大量の根が樹上に大きなクッション状の構造を作るため、ここに根を下ろして生育する植物も出現する。沖縄ではオオタニワタリやシマオオタニワタリの大株には、必ずと言ってよいほどその下の根の部分から着生性のシダ植物であるシマシシランが多数の葉を垂らしているのを見かける。同様な着生シダのひとつコブランもこのようなところに生育する。また、ここにもぐりこむ昆虫もおり、東南アジアにはこの仲間の根塊にのみ穿孔生活をするクロツヤムシの存在がよく知られている。このように、タニワタリ類の根塊は一つのまとまった生物群集を支えることとなる。

分布[編集]

日本南部の暖地から台湾にかけて分布する。

日本における生育地[編集]

紀伊半島以南から南西諸島に分布する。日本本土での生育地のように冬季に冷涼な場所では生育や繁殖の速度が遅く、山林の減少や園芸目的などの採集圧により減少を続けている。 近縁種のシマオオタニワタリとともに絶滅危惧IB類(EN)環境省レッドリスト)に指定されているほか、各県のレッドデータブックでは、高知県徳島県野生絶滅東京都(小笠原諸島)、三重県和歌山県宮崎県熊本県長崎県福岡県において絶滅危惧I類鹿児島県沖縄県絶滅危惧II類に指定されている。

三重県・紀北町(旧・紀伊長島町)の生育地
本種の最北の分布地。大島(紀北町)三重県紀北町の無人島であり、全島が暖地性の原生林となっている。大島暖地性植物群落として天然記念物に指定されている。林内の樹木や岩に着生する。かつて熊野灘沿岸部にも生育が認められたが現在は絶滅している。[1]
和歌山県・稲積島暖地性植物群落
和歌山県すさみ町沖合いにある稲積島(いなづみじま)は無人島であり、全島にわたり暖地性の原生林が残る。天然記念物に指定されている。本島の個体がかつては分布の北限であったが、現在は絶滅しており、人工的な補植活動が行われている。[2]
長崎県
長崎県の離島には本種が生育する暖地性の植物群落が多く残り、権現山原生林男女群島など各所が、天然記念物に指定されている
南西諸島
近縁種のシマオオタニワタリおよびヤエヤマオオタニワタリが多く、本種は極めて少ない。

近縁種[編集]

日本には、本州南岸以南に分布し、三種ほどを区別するが、区別は難しく、種の範囲についても疑問が多い。近年、分子生物学的手法による再分類が行われている[3]

シマオオタニワタリ (A. nidus L.)
沖縄本島奄美群島台湾東南アジアに生育する。オオタニワタリと比較し、胞子のう群が中肋から葉の縁までの中ほどにしか達しない点で判別が可能であるが、中間的な形態を持つ場合もあり、見た目だけでの判別は難しい。オオタニワタリと同様に絶滅危惧IB類(EN)環境省レッドリスト)に指定されている。
大東諸島に生育していた株は、かつてシマオオタニワタリまたはリュウキュウトリノスシダと分類されていたが、ヤエヤマオオタニワタリであると確認された。
台湾では食材として農家が栽培している。
リュウキュウトリノスシダ (A. austrasicum (J. Sm.) Hook.)
台湾、東南アジア、オーストラリアに生育。台湾では食材として農家が栽培している。かつて琉球列島にも生育すると言われていたが、DNA配列がタイプ株であるオーストラリアの本種株と比較して遺伝的な隔たりが大きく、現在はヤエヤマオオタニワタリ(A. setoi)に分類されている。
ヤエヤマオオタニワタリ(A. setoi)
先島諸島に多く、林床や林内の木の幹に着生している姿が多く見られる。繁殖力が強く、人家の庭にも多く植えられている。新芽は食用とされる。
コタニワタリ (A. scolopendrium L.)
葉柄が長く、葉身の基部がハート形になる小型種で、むしろ温帯の植物である。森林の地上に生え、分布は北半球の温帯全域にわたる。
ヒメタニワタリ (A. cardiophyllum (Hance) Baker)
さらに小型で、葉全体がハート形をなし、茎は横に這う。日本では、小笠原諸島母島大東諸島北大東島のみに生育する[4]。現在は生息個体数が減少しており、農林水産省国土交通省環境省により、保護増殖事業が行われている[4]

利用[編集]

観葉植物[編集]

大柄で、見栄えのする姿であるため、栽培されることも多い。欧米でもBird's nest fernと呼ばれて人気がある。海外で栽培されるのはシマオオタニワタリの場合が多いとのこと。ただし、それが目的で乱獲され、そのために激減している地域もある。和歌山県の南部海岸沿いには、何カ所かの自生地があるが、大抵の土地で自生株がほとんど残っていない。栽培するための乱獲が原因である。地元では栽培を続けているところもあるので、それを元の自生地に植え戻す活動も盛んに行なわれているが、盗掘も後をたたず、いたちごっこの様相を呈している。その一方で、沖縄諸島以南で多いヤエヤマオオタニワタリ(Asplenium setoi)は、生活圏から山林までの間に普通に見られ、繁殖力が旺盛で、数を減らすことはあまりない。

観葉植物としては海外の近似種も持ち込まれている。なお、コタニワタリも欧米では栽培種として人気がある。

ヤエヤマオオタニワタリの新芽とタコの炒め物

食材[編集]

近縁種のヤエヤマオオタニワタリの新芽は、特に八重山諸島で多く食用とされる。そのまま天麩羅にするとおいしい。八重山ではチャンプルーの具材に用いられることもある。 台湾では、主にシマオオタニワタリ(中国語 台灣山蘇花)やリュウキュウトリノスシダ(南洋山蘇花)の新芽を「山蘇」(シャンスー、shānsū)と称して、ニンニク梅干など好みの調味料と炒め物にして食べる事が多く、食用に広く栽培されている。

脚注[編集]

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参考文献[編集]

  • 岩槻邦男編『日本の野生植物 シダ』,(1992),平凡社
  • 光田重幸『しだの図鑑』,(1986),保育社