江ノ島電鉄

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江ノ島電鉄株式会社
Enoshima Electric Railway Company,Limited.
本社
種類 株式会社
市場情報
東証2部 9011
1949年5月12日 - 1978年6月30日
略称 江ノ電
本社所在地 日本の旗 日本
251-0035
神奈川県藤沢市片瀬海岸一丁目8番16号
本店所在地 251-0035
神奈川県藤沢市片瀬海岸一丁目4番7号(江ノ島駅
設立 1926年大正15年)7月10日
(江ノ島電気鉄道株式会社)
業種 陸運業
法人番号 7021001000294 ウィキデータを編集
事業内容 鉄道運輸事業、運行管理受託事業、観光事業、不動産事業など
代表者 深谷研二(代表取締役社長
資本金 3億円(2010年3月31日時点)
発行済株式総数 600万株(2011年3月31日時点)
売上高 連結: 119億2690万4000円
単独: 60億4941万円
(2011年3月期)
営業利益 連結: 5億3393万9000円
単独: 4億4037万9000円
(2011年3月期)
純利益 連結: 2億7390万円
単独: 2億1191万2000円
(2011年3月期)
純資産 連結: 48億8593万9000円
単独: 43億5506万円
(2011年3月31日時点)
総資産 連結: 192億398万5000円
単独: 184億3690万5000円
(2011年3月31日時点)
従業員数 連結: 701人、単独: 216人
(2011年3月31日時点)
決算期 3月末日
主要株主 小田急電鉄 55.83%
神奈川中央交通 8.50%
中央三井信託銀行 2.08%
横浜銀行 1.14%
(2011年3月31日時点)
主要子会社 江ノ電設備管理株式会社 100%
江ノ電商事株式会社 100%
江ノ電バス藤沢 100%
江ノ電バス横浜 100%
関係する人物 雨宮敬次郎(第五代目社長)
外部リンク http://www.enoden.co.jp/
特記事項:1949年8月1日に江ノ島鎌倉観光株式会社へ、1981年9月1日に現商号へ商号変更。路線開業は1902年9月1日。
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沿線風景(鎌倉高校前駅付近、2004年11月3日)

江ノ島電鉄株式会社(えのしまでんてつ)は、神奈川県藤沢市に本社を置く、民間の鉄道事業者である。一般に江ノ電(えのでん)と略称される。神奈川県内に1つの鉄道路線(江ノ島電鉄線)を有する小田急電鉄系の鉄道会社である。

鉄道事業のほか、関係会社の株式会社江ノ電バス藤沢および株式会社江ノ電バス横浜からの路線バス貸切バス特定バス運行管理受託事業、不動産業観光業も行う。かつては子会社によって百貨店業も営み、藤沢駅に「江ノ電百貨店」もあったが、1985年からは小田急百貨店藤沢店になっている。

歴史

鉄道事業

鉄道路線図

東京から一時間弱という距離ながら、単線でローカル線の雰囲気を満喫でき(日中12分間隔運転なので不便ではない)、なおかつ、沿線が若々しく明るいイメージの湘南と、かつて幕府があった古都鎌倉であり、著名な観光名所や名勝が多数存在し、さらに車両と路線が特徴的で被写体になりやすいところから、テレビドラマグラビア写真の撮影に利用されることが非常に多い(一部著作への出演については後述)。

社名の「江ノ島電鉄」で呼ばれることは、小田急江ノ島線JR東海道線JR横須賀線の乗り換え放送で「江ノ島電鉄線」と案内される以外にはほとんどなく、一般人や会社自身も専ら「江ノ電」と呼んでいる。

地下鉄・モノレール・新交通システムを除き、通常の乗降スペースすべてに上屋(屋根)が掛かっているのは、日本で唯一、江ノ島電鉄だけである。

2009年10月14日より京福電気鉄道(嵐電)と営業面での提携をすることになった。これは、京福が開業100年、江ノ電が全通100年になるのを記念し、同じ古都を走る路面区間を持つ鉄道会社同志ということで始まったもので、国内の鉄道会社同士がこの様な姉妹関係を締結するのは初めてのことである。両社は1980年代より広告宣伝では既にバーター契約を結んではいたが、今回はもっと踏み込んだ関係となり、両社ともそれぞれ相手側の車両色に塗装した記念の企画車両(江ノ電側は「嵐電号」を、嵐電側は「江ノ電号」)を当分の間運行する。なお、あくまでも営業的な提携に過ぎず、資金面や業務的な提携ではなく、姉妹提携という形をとっている。

2010年3月31日初電より鉄道係員の制服を一新した。黒に近い濃紺の上下に、上衣袖部に江ノ電カラー(緑と黄色)のラインが入り、襟部にも同様のラインが入る、最近の他社局の鉄道係員の制服に共通するスタイル。これにより、同社の鉄道係員とバス会社係員の制服が完全に分かれた。因みに、一般職はシングル、助役以上はダブルで、さらに管理職には袖部に金色線条2本が入る。女性用もほぼ同じスタイルだが、ベストが付く。

路線

鉄道路線についての詳細は以下の項目を参照のこと。

江ノ島電鉄線は、後述の併用軌道区間だけでなく、駅ビルにある高架駅(藤沢駅)、高架(藤沢駅 - 石上駅間)、近代的な鉄橋(鵠沼駅-湘南海岸公園駅間等)半径28mの急カーブ(竜口寺前・1067mm以上の軌間としては日本最急)、建築限界ギリギリに迫る人家(腰越附近)、湘南海岸沿いの走行(腰越駅 - 稲村ヶ崎駅間)、開通以来一世紀が経つレンガ積みのトンネル(極楽寺駅 - 長谷駅間)、手動による転てつ機の転換、保安要員としての車掌の乗務、本線上での増解結作業、改札窓口における改札鋏の使用、硬券(入場券)の取り扱い、ホーム長不足によるドアカット扱い(腰越駅)、首都圏では希少な構内踏切(渡線路)・単線ならではの行き違いのための信号所とわずか10kmほどの営業距離でありながら、鉄道システムや地理的要素の多くの要素が平然と頻繁に出現する。

路面電車か鉄道かについての議論

江ノ島 - 腰越間の併用軌道区間(龍口寺交差点)

開業時、江ノ電の路線は軌道条例(後に軌道法)に基づく路線(路面電車)であった。その後、軍部による政策[5]において1944年11月に地方鉄道法鉄道事業法の前身法)による普通鉄道に変更された[1]。そのため、道路上を走る列車の長さが50mを超えるが、軌道運転規則による規制(30m以下)とは無関係である。 きわめて小さい車両限界や江ノ島 - 腰越間などに道路上を走る区間があることにより、現在でも路面電車の一種として江ノ電が取り上げられることが多い。この区間について一般向けのテレビ番組や情報誌などではもちろん、鉄道ファン向けの専門誌でもしばしば「併用軌道」と書かれている。鉄道線における併用軌道は鉄道事業法第61条(前身法の地方鉄道法では第4条)で原則禁止されているが、法律施行前の既存の敷設線路のため、あくまでも「特例区間」である。この区間はあくまで「長大踏切」である、と語られることがあるが、踏切であれば名称があるはずで、資料を捜しても名称すらなく、江ノ電自身が資料や書籍などにも併用軌道と記している。なお、舗装された一般道路の中央を堂々と走る普通鉄道としては、日本で唯一の路線である(京阪電鉄京津線は軌道であり、前述の軌道運転規則の特例なので除く。また、江ノ電と同じように普通鉄道ながら道路の隅を併用軌道の形態で通るのは熊本電気鉄道藤崎線がある)。また七里ヶ浜付近や稲村ヶ崎付近に見られる、道路片側に専用のバラスト軌道を敷設した区間も実は併用軌道であり、その特徴として道路と軌道の間はフェンスなどで仕切られていない。江ノ電の公式資料でも、併用軌道部分が、980mと書かれている。

東北地方太平洋沖地震の影響による計画停電

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の影響で東京電力が実施した計画停電により、連日一時運休や終日運休が発生し、鉄道会社としては唯一、振替輸送と代行バスを出した(通常、この手の大規模な天災の場合、各鉄道会社は旅客集中を恐れ、影響が長期に渡らない限り振替輸送などを実施しない)。また、この計画停電での地方ローカル鉄道の運休等の窮地を訴えるべく、同年3月23日第177回通常国会の国土交通委員会において、社会民主党中島隆利議員が国土交通省に対しての質疑として「一例として江ノ島電鉄を…」と江ノ電の例を出し、中小私鉄への積極的な給電を訴えかけた。国土交通省の答弁は「東京電力と調整し対策する」という内容のもので、その3日後に江ノ電は計画停電の対象外となり給電を得た(質疑答弁については、衆議院TVで視聴可能である)。

車両

最新車両の500形
連節台車(長谷駅にて撮影)
日本の1,067mm軌間の鉄道線で最後の新造吊り掛け車・1201F

現存する車両の特色としては、すべての編成において2両1組の連接車であり、これを単編成もしくは2編成をつなげた4両編成(社内呼称では『重連』と呼ばれる)で運行されている。その特殊性から現有車はすべてオリジナル車両であり、東横車輛工業(現・東急テクノシステム)で製造された300形305編成を除き、すべてが東急車輛製造(現・総合車両製作所)製である。

軌道時代の名残りからか、最新車両でも中央運転台方式を選択しており、近年では東急玉川線からの転入車(旧東急デハ80形を改番した600形)が左運転台であったが、それ以外は譲受車を含め新旧問わず中央運転台方式を踏襲している。

形式間の列車組成に差別は無いが、最古参の305編成は車長が短いため繁忙期には車庫で休む傾向が多い。同編成は平行カルダン駆動に改造済で冷房も搭載しているが、板張りの床・バス窓ツーハンドル制御であり、そのレトロ感から江ノ電のイメージリーダー的車両である。

1000形1001, 1002, 1101, 1201各編成(1979年 - 1983年製)は吊り掛け式であり、特に1201編成は日本国内向けに製造された1067mmゲージの普通鉄道用の電車では最後の新造吊り掛け式車両である(東急車輛製造製)。1960年製の305編成がカルダン方式に更新されているため、年代の逆転が起きているのも興味深い。

1000形電車のうち、1001Fと1002Fは1980年度ブルーリボン賞を受賞している。同賞の中小鉄道受賞は初めてであり、その翌年81年に小田急7000形、82年に箱根登山鉄道1000形が同賞を受賞しており、小田急グループ3連覇の呼び水となった車両である。

1000形系列と305編成の室内冷気排出口に設置してある、ステンレス製の冷気調整蓋は、国鉄113系の発生品を譲り受け装備したものである。

500形はVVVFインバータ車であり、車内各ドア上部にツインモニターを備え、右側には停車駅案内、左側にはDVDによる沿線の観光ガイドを放映している。

305編成は、左力行・右制動のツーハンドル、その他の車両は右手操作のワンハンドル式であり、いずれも電気指令式制動で形式間の差別無く連結でき、総括制御が可能。そのため組成の制約が無く、運用にもよるが、最新のVVVFカルダン車と抵抗制御吊り掛け車が編成を組む日本国内唯一の路線である。ただし、4両編成を組成する場合、吊り掛け車は空制のみになるため、吊り掛け車同士の連結はフェイルセーフのため、あまり行われない。

車両の新旧に関わらず、現在ではすべての編成に自動放送装置が設置されている。

付番法則としては、3ケタ以上の系列の場合は鎌倉方が系列+50(1000形の場合は1050形)となるが、2ケタ形式(10・20形など)は鎌倉方が系列+40となる。

過去の車両


バス事業

江の島シーキャンドル(展望灯台)・江の島エスカー

遊覧船上から見た江の島シーキャンドル(展望灯台)と江の島(2009年5月2日)
江の島エスカー(2010年9月18日)

江の島シーキャンドルおよび江の島エスカーは、江ノ島電鉄が所有・経営する、江の島の島内にある展望灯台および上りのみの屋外エスカレータである。

江の島シーキャンドルは高さ59.8 m(海抜119.6 m)で、2003年に旧灯台を建て替えたものである。光到達距離は23.0海里(約46 km)で民間灯台としては日本国内最大級である。第48回神奈川建築コンクールにおいて一般建築部門奨励賞受賞を受賞した。中にはカフェショップ、グッズショップ、藤沢市郷土資料館がある。毎日、日没後にライトアップが行われており、これはアジア初の省エネ高照度LEDによるものである。周辺は江の島サムエル・コッキング苑となっている。休日などは音楽ライブなどのイベントもよく行われている。以前の展望灯台は、東京急行電鉄がかつて運営していた東急多摩川園にあった戦時中のパラシュート練習塔を移設改修したものであった。

江の島エスカーは、1959年に開業した日本国内初のもので、高低差46mを4連で結ぶ。全長は106m。1連目と2連目が「1区」、3連目が「2区」、4連目が「3区」と呼ばれ、2区もしくは3区からの利用も可能である。また、1区出口と2区入口は少し離れており、辺津宮に立ち寄ることも可能である。所要時間は4分(看板には5分とある)。有料。知らない人にはロープウェイか何かのように誤解されることも多く、エスカーを乗り場へのエスカレータだと思い込んでしまう者も多く、また有料だということを不思議がる者もいる[6]。なお、エスカーを利用せず参道を登ることも可能である。

オリジナルグッズ販売

オリジナルグッズの製作販売にも、鉄道会社としては異例なほど熱意があり、模型や文具はもちろん、ミネラルウォーターや衣料品、クッキー・パンなどの食料品にも至る品揃えがあり、さらに社外においても『江ノ電』ブランドにこだわった衣料・食品・玩具・文具など多数の品物が存在し、鎌倉宮など鎌倉市内の社寺では『江ノ電お守り』まで販売しているほどである。また、2008年7月から9月までの期間限定で江ノ電史上初となる駅弁も販売された[7]

オリジナルグッズの専門店「江ノ電グッズショップ」が鎌倉駅・江ノ島駅にあり、藤沢駅の売店でも相当数扱っているほか、ネットショップも立ち上げている。また、各地の鉄道展などで客寄せの一番候補としてグッズショップを展開することもあり、関西方面でも実績がある。

江ノ電が登場する作品

親しみの持てる鉄道として有名なのと、沿線に江の島鎌倉の大仏などの著名な観光地が多いためか、メディアへの露出が多い。なお映画とドラマ、漫画とアニメなど、複数の類似メディアに登場した場合、現版では公開時期が早いメディアのみに振り分けている。なお、これらは一部に過ぎず、実際に被写体として登場している作品等は数えきれない。

映画

テレビドラマ

漫画

アニメ

ゲーム

書籍

音楽

その他

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac 「第112期有価証券報告書」江ノ島電鉄株式会社
  2. ^ 江ノ島電鉄ウェブサイト『会社案内』より
  3. ^ 江ノ島電鉄ウェブサイト『当方見聞録』第一章第一回による。
  4. ^ 『毎日新聞』2008年12月20日 東京夕刊[リンク切れ]『共同通信』2008年12月22日では単に「運転士」、『東京新聞』2008年12月23日[リンク切れ]『読売新聞』2008年12月23日[リンク切れ]によれば、少年の父親の知人が寄贈し、この日江ノ島駅で発車式が行われた「模型電車の運転士」。
  5. ^ 空襲により横須賀線または東海道線に支障をきたした際に迂回路として考えていた。
  6. ^ 世界にひとつだけの乗り物、江ノ島エスカーに初めて出会った日。(Excite Bit コネタ) - エキサイトニュース
  7. ^ http://www.ofunaken.co.jp/page053.html

外部リンク