福島第一原子力発電所事故の影響

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福島第一原子力発電所事故 > 福島第一原子力発電所事故の影響

福島第一原子力発電所事故の影響(ふくしまだいいちげんしりょくはつでんしょじこのえいきょう)では、2011年3月11日東北地方太平洋沖地震を端緒に発生した福島第一原子力発電所事故に起因する、放射性物質による環境食品人体への影響、社会的・経済的影響、住民の避難および風評被害について詳述する。

概要[編集]

発電所周辺の汚染分布図 (3月22日 - 4月3日)。

福島第一原子力発電所事故(以下「原子力発電所」は一般に「原発」という)により大気中に放出された放射性物質の量は、ヨウ素131とヨウ素131に換算したセシウム137の合計として、約90京 Bq[1][2]と推算されている。日本国内では食品・水道水・大気・海水・土壌等から事故由来の放射性物質が検出され、住民の避難、作付制限、飲料水・食品に対する暫定規制値の設定や出荷制限といった施策がとられた。原子炉の停止、放射性物質検出の情報、施策および施策への懐疑的見方は、風評被害、人体の健康に関する論争、市民活動、経済への影響など多岐にわたる影響を及ぼした。

本記事では、その影響度や規制内容が多岐にわたるため、全体として重要と思われるもののみを記載した。また、実際に行われた判断、措置、報道された主張を妥当性の如何にかかわらず記載した。よって読者は、本項目に記載された内容が影響や規制対象の全てではないこと、相対的ないし確定的なデータに基づかない判断および措置、客観性を欠く主張、矛盾をきたす表現を含むことに留意する必要がある。

放射性物質による汚染の状況と影響[編集]

2011年3月17日、厚生労働省食品衛生法上の暫定規制値を発表し、規制値を上回る食品が販売されないよう対応することとして、各自治体に通知した。

枝野官房長官は21日の記者会見で「今回の出荷制限の対象品目を摂取し続けたからといって、直ちに健康に影響を及ぼすものではありません」[3]、「仮に日本人の平均摂取量で1年間摂取した場合の放射線量は牛乳でCTスキャン1回分、ホウレンソウでCTスキャン1回分の5分の1」と述べ[4]、冷静な対応を求めた。

土壌と海洋汚染[編集]

2011年3月21日、東京電力が福島第一原発南放水口付近の海水を調査した結果、安全基準値を大きく超える放射性物質が検出されたことが明らかとなった[5]。22日には、原発から16 km離れた地点の海水からも安全基準の16.4倍の放射性物質が検出された[6]

3月23日、文部科学省は、福島第一原発から北西に約40 km離れた福島県飯舘村で採取した土壌から、放射性ヨウ素が117万 Bq/kgセシウム137が16万3,000 Bq/kg検出されたと発表した[7]チェルノブイリ原子力発電所事故では55万 Bq/以上のセシウムが検出された地域は強制移住の対象となったが、京都大学原子炉実験所今中哲二によると、飯舘村では約326万 Bq/m²検出されている[8][9]

3月31日、国際原子力機関 (IAEA) は、福島第一原発の北西約40 kmにある避難区域外の福島県飯舘村の土壌から、修正値で10倍の20 MBq/m²のヨウ素131を検出したと発表した[10]

5月の東京都内各地の一日単位の平均値は、東京都健康安全センターが地上18 mでおこなっている環境放射線量測定によると、0.068 μSv/h〜0.062 μSv/hであった。5月5日から5月25日まで日本共産党東京都議会議員団が地表1 mで測定した結果では、同程度の濃度だった地域は大田区、杉並区、町田市など、都内全域で見るとごく限られた範囲であった。比較的高い地域は、青梅市・あきる野市・練馬区が0.09 μSv/h台、江戸川区〜江東区の湾岸地域が0.1 μSv/h台、最も高い地域が足立区〜葛飾区で0.2 μSv/h台〜0.3 μSv/h台であった。また、新宿区内約3.5 kmという限られた範囲内の測定でも、0.066 μSv/h〜0.116 μSv/hと大きな開きがあり、狭い範囲でもバラつきがみられた[11]。東京都の5月の調査によって、東京都大田区にある下水処理施設の汚泥の焼却灰から10,540 Bq/kgの放射性セシウムが検出された[12]

福島第一原発から遠く離れた地点でも、ホットスポットと呼ばれる点在する汚染地域が確認されている。

食品の汚染[編集]

牛肉

2011年7月、福島県南相馬市で飼育されていた牛が(汚染された飼料によって)放射性セシウムに二次汚染され、その牛肉が検査を受けないまま出荷流通し、東京、神奈川、静岡など10都道府県に放射能に汚染されたまま消費されていた。東京・府中市内の食肉処理業者が仕入れた牛肉は3400ベクレル、静岡市内の食肉加工業者が購入した肩ロースは1998ベクレルの放射性セシウムが検出された。この問題で。放射線防護学が専門の野口邦和・日大専任講師は、妊婦や子供が1、2回食べたところで問題はないが、県は農家に対して飼料の管理を徹底するように指導すべきだとコメントした[13]

農林水産省は2011年4月、「避難区域」、「計画的避難区域」、「緊急時避難準備区域」を2011年度(平成23年度)の稲の作付制限区域に指定した[14]。2011年10月12日に完了した福島県における作付け制限区域以外の米(玄米)の本調査では、放射性セシウム(セシウム134とセシウム137)が、全ての試料において1 kg当たり500 Bqの暫定規制値を下回った[15]が、その後、この暫定規制値を超える米が相次いで検出された[16]。再調査の結果、1 kg当たり500 Bqを超える米が検出された県内3市9地区には2012年1月4日、米の出荷制限がかけられ[17]、2012年3月9日に発表された平成24年度の稲の作付制限区域にも、「警戒区域」、「計画的避難区域」に、これら3市9地区が加えられた。また、1 kg当たり100 Bqを超える米が発生した地域については、基準を超えた米が流通しないことを担保に細かな区域設定のもと作付けができることとなった[18]

福島産の米、外食産業向けに回復

2012年3月27日 日本経済新聞にて、停滞していた取引が2012年2月から外食中心に取引が徐々に回復して、契約率が7割を超えた事を報道した。なお、日本経済新聞では浜通り産の米も風評被害であると主張している[19]

イカナゴの稚魚

北茨城の沖合で2011年4月1日に採取されたイカナゴの稚魚(コウナゴ)から、4,080 Bq/kgの放射性ヨウ素が検出され、北茨城市の近海では4月4日には526 Bq/kgの放射性セシウムおよび1,700 Bq/kgの放射性ヨウ素が検出された[20][21][22]。当初、はさき漁協が3月下旬以降、茨城県に何度か魚の検査を行うよう要請したが、茨城県は検査をせず、漁協に要請を出しイカナゴ漁および出荷を自粛すると発表した。漁協は県担当者を呼び、検査しない理由を組合員に説明するよう求めた。県担当者は「県産の水産物から基準を超す放射性物質が出れば、今後に影響する。当分は様子を見た方がいい」と説明したという。茨城県日立市の河原子漁協は独自検査を当面見送る方針を示した。県からは「漁協単独の結果が出るたびに騒ぎになって、風評被害につながる」といった懸念が示されたという。これらの経緯について、水産庁幹部は4月5日、茨城県の魚介類検査への対応について「検査をやって公表してもマイナスになるだけだから、と言っている。めちゃくちゃだ」と苦言を呈していた。この幹部は、漁協が独自に行ってきた検査についても「ぜんぶ国の施設でやり直すべきだ」と不信感をあらわにした。こうした不信が、今回の国の検査につながり国が県沖の水産物検査に踏み切った形となった。7日午前、水産庁の依頼でサンプル捕獲にあたる漁船が那珂湊漁港を出港した後、茨城県漁政課の担当者は、事前に国との協議はなかったと語った[23]

2011年5月初旬に神奈川県の茶葉(生茶550 Bq/kg〜570 Bq/kg、荒茶約3,000 Bq/kg)の放射性セシウムが検出され、加工食品の基準値の扱いについて、生産者の立場の農林水産省と消費者の立場の厚生労働省で、意見が分かれた[24]。農林水産省は、お茶は薄めて飲むものであるし、生茶規制値が500 Bq/kgで、乾燥された荒茶も500 Bq/kgでは科学的ではないと主張した。厚生労働省は、数千 Bq/kgの製茶が店頭販売されることは消費者が容認しないとして5月16日、茶の生産地がある14の都県に生茶と荒茶の放射線量の測定を命じた。しかし静岡県知事の川勝平太をはじめ殆どの自治体は荒茶の測定を拒否した。政府は6月2日、荒茶・生茶とも500 Bq/kgを超えたものは原子力災害対策特別措置法に基づき出荷停止対象とする判断を下し、その後に茨城県全域、神奈川県6市町村、千葉県6市町、栃木県2市において、実際に出荷停止命令が出された[25]。 その後に静岡県は県内製茶工場ごとの測定を開始し、6月9日に県内茶工場の製茶から国の基準を超えるセシウムが検出、業者に対し商品回収と出荷自粛を要請した。6月14日には別の2つの工場の製茶も基準を超えたと発表、同様の要請を行った。6月14日の記者会見で川勝知事は「風評被害はNHKや全国紙など報道の責任が大きい」と強く抗議した。6月17日にフランスドゴール空港で静岡産の乾燥茶より1,038 Bq/kgの放射性セシウムが検出され、当局により廃棄処分決定がなされた。これによりフランス当局は、静岡県産の全ての農産物を線量検査対象とすることを決定、EU委員会にもこれをEU基準とするよう上申した[26][27][28][29]。6月20日、JA静岡中央会とJA静岡経済連は地域農協向け説明会において、お茶の放射能被害について東京電力に損害賠償請求する方針を発表。風評被害分については現行法では賠償請求できないため、国に法改正を促すともコメント[30]

9月に入り厚生労働省は、千葉産、埼玉産(狭山茶を含む)からも、抜打ち検査や自主検査により基準超のセシウムが検出されたと発表した[31][32]

きのこ原木

宮城県は2011年11月30日、県内のキノコ原木から国の指標値 (150 Bq/kg) を超える最大2492 Bq/kgの放射性セシウムが検出されたと発表した[33]

その他の食品

以下、一覧表にて示す。

日本国内で報告されている主な食品の汚染(品目別:上記以外)
品目 採取地 採取年月日 放射能濃度[注 1]
(Bq/kg)
出典
きのこ類 原木ナメコ(露地栽培) 福島県相馬市 2011年8月11日 4600 [34]
野生チチタケ 福島県古殿町 2011年8月11日 3200 [34]
原木しいたけ(ハウス栽培) 茨城県鉾田市 2011年10月4日 990 [35]
原木しいたけ(露地栽培) 茨城県小美玉市 2011年10月11日 890 [36]
原木しいたけ(ハウス栽培) 茨城県土浦市 2011年10月11日 510 [36]
原木しいたけ(露地栽培) 茨城県行方市 2011年10月12日 830 [37]
野生チャナメツムタケ 長野県佐久市志賀 2011年10月24日 1320 [38]
豆類 黒豆 福島県岩代町 検査日:2011年12月17日 400 [39]
大豆 福島県二本松市 2011年10月27日 400 [40]
大豆 福島県いわき市 2011年11月1日 240 [41]
大豆 福島県須賀川市 2011年11月16日 184 [42]
大豆 福島県天栄村 2011年11月17日 190 [43]
大豆 福島県西郷村 2011年11月18日 216 [43]
大豆 宮城県山元町 2011年11月10日 99 [44]
大豆 宮城県登米市(旧石越町) 2011年11月17日 240 [45]
大豆 岩手県陸前高田市 2011年10月21日 25 [46]
大豆 岩手県盛岡市 2011年10月25日 64 [46]
大豆 岩手県一関市 2011年10月26日 96 [46]
大豆 栃木県日光市 2011年10月7日 58.8 [47]
大豆 栃木県塩谷町 2011年10月14日 38.4 [47]
大豆 栃木県大田原市 2011年10月27日 32.0 [47]
大豆 栃木県那須塩原市 2011年10月27日 77.0 [47]
大豆 群馬県渋川市 2011年11月
検査日:2011年11月9日
111 [48]
大豆 茨城県日立市 2011年11月14日 99 [49]
海産物
(魚以外)
ワカメ 福島県いわき市 2011年5月16日 1200 [50]
ムラサキ貝 福島県いわき市 2011年5月16日 650 [51]
キタムラサキウニ 茨城県北茨城市大津地先 2011年5月22日 371 [52]
エゾアワビ 茨城県北茨城市平潟地先 2011年5月22日 290 [52]
海水魚 イシガレイ 福島県南相馬市 2011年9月5日 1030 [53]
イシガレイ 茨城県北茨城市沖 2011年11月1日 175 [52]
イシガレイ 茨城県日立市沖 2011年12月13日 103 [52]
シロメバル 福島県いわき市 2011年9月8日 2200 [54]
スズキ 福島県南相馬市 2011年9月10日 670 [54]
ヒラメ 福島県南相馬市 2011年9月10日 1610 [54]
アイナメ 福島県いわき市 2011年9月26日 1680 [55]
コモンカスベ 福島県いわき市 2011年9月26日 980 [55]
ババガレイ 福島県いわき市 2011年9月26日 1140 [55]
エゾイソアイナメ 茨城県日立市沖 2011年9月1日 540 [56]
マコガレイ 茨城県北茨城市沖 2011年10月11日 205 [52]
淡水魚 ヤマメ 阿武隈川(福島県伊達市) 2011年5月17日 990 [51]
アユ 阿武隈川(福島県伊達市) 2011年7月24日 1240 [57]
ワカサギ 赤城大沼(群馬県前橋市) 2011年9月9日 650 [58]
ウグイ 赤城大沼(群馬県前橋市) 2011年9月9日 741 [58]
新基準値適用(2012年4月)以降

厚生労働省によると、2012年4月1日からの新基準値適用以降、4月29日までに一般食品の新基準値(100Bq/kg)を超えたことが判明したのは、岩手、宮城、山形、福島、茨城、栃木、群馬、千葉、神奈川の9県の計51品目333件、乳児用食品(50Bq/kg)、牛乳(50Bq/kg)、水(10Bq/kg)の3分類で新基準値を超えたものは出ていない、とした[59]

東京電力2012年8月21日福島県南相馬市原町区の沖合で採取したアイナメから25,800Bq/kg放射性セシウムを検出したと発表した[60]

水道の汚染[編集]

福島県及び近隣各県において、放射性物質による水道水の汚染が相次いだ。2011年3月17日に厚生労働省が策定した放射能の「暫定基準値」は飲料水の場合300 Bq/kg以下、乳児の場合100 Bq/kg以下である[61]。大気中を漂う放射性物質が雨と共に地上に落下し水源に混入するとみられるため、厚生労働省は3月26日、全国の水道事業者に対し、降雨後の取水を一時中断するように通知した[62]。その後放射能の数値は低下し、3月29日15時には福島県以外での飲用制限がなくなり、4月15日までは福島県飯舘村のみ乳児に対する飲用制限が成されていたが、5月10日にはそれも解除された[63][64]

2011年3月25日、WHOは日本における飲料水の安全性について、「ただちに危険を及ぼすものではないが、地域により事情は異なり、また変動するかも知れない。放射能の危険を減らすことを意図して、幼児に必要な水の摂取が歪められるべきでない」との見解を発表した[65]。同日日本小児科学会日本周産期・新生児医学会日本未熟児新生児学会も共同見解として、乳児の水分摂取を優先させるべきである旨を発表した[66]

福島県

2011年3月17日から20日にかけて南相馬市いわき市などの水道水で暫定基準値、または乳児に対する暫定基準値を上回るヨウ素131を検出した。その後22 - 23日には多くの市町村で暫定基準値を下回った。比較的高いヨウ素131が検出された飯舘村も、4月1日からは摂取制限を解除。ただし前述の通り降雨時に濃度があがる可能性があるため、乳児に関しては摂取を控えるように広報を続けた。その後一か月程度観察を続けたが基準値以上の放射性物質は検出されたなかったとして、5月10日には全ての制限が解除された[67][68][69][70]

東京都

東京都葛飾区金町浄水場で、2011年3月22日午前9時、水道水に210 Bq/kgの放射性ヨウ素131が検出された。この給水範囲である東京都23区武蔵野市町田市多摩市稲城市三鷹市では乳児の水道水摂取を控えるように呼びかけた[71][72][73]。これを受け、東京都は1歳未満の乳児およそ8万人に、1人あたり550ミリリットルのミネラルウォーター3本を配布すると発表した[74]。24日の検査分は79 Bq/kgと、暫定基準値を下回ったと発表した[75]

その他の県

千葉県茨城県の一部浄水場においても、2011年3月23日頃から26日頃にかけて相当量のヨウ素131などが検出され、乳児の飲用を控えるよう呼びかけるなどの措置がとられた[76][77][78][79][80][81][82][83][84]

住民の避難・影響[編集]

福島原発事故に伴う避難区域(2012年3月31日まで)
名称 基準 指定期間 現在の指定範囲
(2011年11月25日改定[85]
避難指示 1.第一原発から半径2km以内
2.第一原発3km以内
3.第一原発10km以内
4.第一原発10km以内+第二原発から半径3km以内
5.第一原発10km以内+第二原発10km以内
6.第一原発20km以内+第二原発10km以内
7.第一原発20km以内+第二原発8km以内(第二原発8km以上10km以内は屋内退避に移行)
8.(第一原発20km以内は警戒区域に移行)第二原発8km以内
9.解除
1.3月11日20:50 -
2.3月11日21:23 -
3.3月12日5:44 -
4.3月12日7:45 -
5.3月12日17:39 -
6.3月12日18:25 -
7.4月21日 -
8.4月22日 -
9.12月26日
なし
屋内退避指示 1.第一原発から半径3km以上10km以内
2.第一原発3km以上10km以内+第二原発から半径3km以上10km以内
3.第一原発20km以上30km以内+第二原発3km以上10km以内
4.解除(大半の区域が、計画的避難区域・緊急時避難準備区域に指定)
1.3月11日21:23 -
2.3月12日7:45 -
3.3月15日11:00 -
4.4月22日
なし
警戒区域 第一原発から半径20km以内 4月22日 - 2013年5月27日 双葉町大熊町富岡町のそれぞれ全域、南相馬市浪江町葛尾村田村市川内村楢葉町のそれぞれ一部
計画的避難区域 事故後1年間の積算線量が20 mSv以上になると予想される区域 4月22日 - 2013年8月7日 葛尾村浪江町の警戒区域を除いた全域、飯舘村全域、南相馬市の警戒区域を除いた一部、川俣町の一部
緊急時避難準備区域 1.上記外の第一原発から半径20km以上30km以内などで緊急時に避難が求められる区域
2.解除
1.4月22日 -
2.9月30日
なし
特定避難勧奨地点 警戒区域・計画的避難区域外で事故後1年間の積算線量が20 mSv以上になると予想される地点が地域内に含まれる区域 2011年6月30日から順次指定(2014年12月28日で全面解除) 南相馬市伊達市川内村のそれぞれ一部
福島原発事故に伴う避難区域(2012年4月1日から)[注 2]
名称 基準 指定期間 指定範囲
警戒区域 1.第一原発から半径20km以内
2.第一原発から半径20km以内で避難指示解除準備区域・居住制限区域でない
3.第一原発から半径20km以内で避難指示解除準備区域・居住制限区域・帰還困難区域でない
1.2011年4月22日 -
2.2012年4月1日 -
3.2012年4月16日 -
4.2012年8月10日 -
5.2012年12月10日 -
6.2013年3月22日 -
7.2013年3月25日 -
8.2013年4月1日 -
9.2013年5月28日
1.双葉町大熊町富岡町のそれぞれ全域、南相馬市浪江町葛尾村田村市川内村楢葉町のそれぞれ一部
2. 1.より田村市川内村のそれぞれ一部を除いた地域
3. 2.より南相馬市の指定されていた地域を除いた地域
4. 3.より楢葉町の指定されていた地域を除いた地域
5. 4.より大熊町を除いた地域
6. 5.より葛尾村の指定されていた地域を除いた地域
7. 6.より富岡町を除いた地域
8. 双葉町
9. なし
計画的避難区域 事故後1年間の積算線量が20 mSv以上になると予想される区域 1.2011年4月22日 -
2.2012年4月16日 -
3.2012年7月17日 -
4.2013年3月22日 -
5.2013年4月1日 -
6.2013年8月8日
1.葛尾村浪江町の警戒区域を除いた全域、飯舘村全域、南相馬市の警戒区域を除いた一部、川俣町の一部
2. 1.のうち南相馬市の指定されていた区域を除いた地域
3. 2.のうち飯舘村全域を除いた地域
4. 3.のうち葛尾村の全域を除いた地域
5.川俣町の一部
6. なし
特定避難勧奨地点 警戒区域・計画的避難区域外で事故後1年間の積算線量が20 mSv以上になると予想される地点が地域内に含まれる区域 1.2011年6月30日から順次指定
2.2012年12月14日 -
3.2014年12月28日
1.南相馬市伊達市川内村のそれぞれ一部
2.南相馬市の一部
3.なし
避難指示解除準備区域 年間積算放射線量が20 mSv以下となることが確実であることが確認された区域 1.2012年4月1日 -
2.2012年4月16日 -
3.2012年7月17日 -
4.2012年8月10日 -
5.2012年12月10日 -
6.2013年3月22日 -
7.2013年3月25日 -
8.2013年4月1日 -
9.2013年5月28日 -
10.2013年8月8日 -
11.2014年4月1日 -
12.2014年10月1日 -
13.2015年9月5日 -
14.2016年6月12日 -
15.2016年6月14日 -
16.2016年7月12日 -
17.2017年3月31日
18.2017年4月1日 -
1.田村市の第一原発から半径20km以内の区域、川内村の居住制限区域を除く第一原発から半径20km以内の区域
2. 1.に加えて南相馬市の一部
3. 2.に加えて飯舘村の一部
4. 3.に加えて楢葉町の大部分の区域(旧警戒区域)
5. 4.に加えて大熊町の一部
6. 5.に加えて葛尾村の大部分の区域
7. 6.に加えて富岡町の一部
8. 7.に加えて浪江町の一部
9. 8.に加えて双葉町の沿岸部の一部
10. 9.に加えて川俣町山木屋地区の大部分
11. 10.から田村市の旧警戒区域を除外
12. 11.から川内村の旧警戒区域を除外(旧居住制限区域は適用)
13. 12.から楢葉町を除外
14. 13.から葛尾村を除外
15. 14.から川内村(旧居住制限区域)を除外
16. 15.から南相馬市を除外
17. 16.から浪江町・川俣町・飯舘村を除外
18. 17.から富岡町を除外(双葉町・大熊町の一部のみ)
居住制限区域 年間積算放射線量が20 mSvを超えるおそれがあり、住民の被曝放射線量を低減する観点から引き続き避難の継続を求める区域 1.2012年4月1日 -
2.2012年4月16日 -
3.2012年7月17日 -
4.2012年12月10日 -
5.2013年3月22日 -
6.2013年3月25日 -
7.2013年4月1日 -
8.2013年8月8日 -
9.2014年10月1日 -
10.2016年6月12日 -
11.2016年7月12日 -
12.2017年3月31日
13.2017年4月1日 -
1.川内村の第一原発から半径20km以内の一部の区域
2. 1.に加えて南相馬市の一部
3. 2.に加えて飯舘村の大部分の区域
4. 3.に加えて大熊町の一部
5. 4.に加えて葛尾村の一部
6. 5.に加えて富岡町の大部分の区域
7. 6.に加えて浪江町の一部
8. 7.に加えて川俣町山木屋地区の一部
9. 8.から川内村を除外
10. 9.から葛尾村を除外
11. 10.から南相馬市を除外
12. 11.から浪江町・川俣町・飯舘村を除外
13. 12.から富岡町を除外(大熊町の一部のみ)
帰還困難区域 5年を経過してもなお、年間積算放射線量が20 mSvを下回らないおそれのある、現時点で年間積算放射線量が50 mSvを超える区域 1.2012年4月16日 -
2.2012年7月17日 -
3.2012年12月10日 -
4.2013年3月22日 -
5.2013年3月25日 -
6.2013年4月1日 -
7.2013年5月28日 -
1.南相馬市の一部(1世帯のみ)
2. 1.に加えて飯舘村の一部
3. 2.に加えて大熊町のほぼ全域
4. 3.に加えて葛尾村の一部
5. 4.に加えて富岡町の一部
6. 5.に加えて浪江町の山間部と一部
7. 6.に加えて双葉町の沿岸部の一部を除く全域

初期の避難指示等[編集]

事故を受けて、2011年3月11日20時50分に、半径2km以内の住民に避難指示が出された。その後、事故が深刻化するにつれて避難指示範囲も拡大し、3月12日18時25分には半径20 km以内に避難指示が出された[86]

避難指示対象地域の多くの住民は、自治体からの情報を聞いて避難を開始した。しかし初期(3月12日)には原発事故とは知らされず、なぜ避難するのか分からずに避難した住民が多かった[87]。避難期間の見通しについての情報も全く無く、着の身着のまま逃げ、そのまま避難が長期化した。また、結果的に汚染地域へ避難してしまった住民も多かった。浪江町は20km圏の外側である津島地区へ、双葉町は川俣町へ避難を指示したが、これらの避難先は、後に高い放射線量が確認され、計画的避難区域に指定された[87]

3月15日11時には半径20kmから30km圏内に屋内退避が指示された[86]。屋内退避指示は短期間の想定だったが、10日間も継続したため、30km圏内への物流が途絶えて住民の生活基盤が崩壊した[87]。3月25日、屋内退避を指示されていた半径20 kmから30 km圏内の住民に、枝野幸男官房長官が自主避難を要請した。枝野長官は、避難区域の拡大は必要ないながらも、市民生活が困難になっているため自主避難を促すと説明した。しかし国会事故調はこれを、避難判断を住民に委ねるという政府の責任放棄だと批判している[87]

福島県双葉郡双葉町は3月19日に役場機能を埼玉県さいたま市に移し、避難住民のうち約1200人も数日中に移動した[88]。さらにその後、同月の30日から31日にかけて、同県の加須市に再び移動した[89]。また、避難指示を受けた福島県大熊町の双葉病院には3月14日時点で病状の重い患者146人が残されていたが、移動を余儀無くされ、14日と15日に自衛隊によって3回にわたる搬送が行われたが、21人が搬送中や搬送後に死亡している[90]。避難指示の出た区域内では人影がなくなり、取り残された多くの家畜が衰弱したり死亡したりしている。ただ、身内の介護や家畜の世話などのために避難指示の出された地域に留まる住民もいて、避難するよう自衛隊や消防組織が説得にあたった[91]

警戒区域、計画的避難区域の設定[編集]

福島原発周辺市町村の地図。
橙色:警戒区域(現在は解除)
桃色:計画的避難区域(現在は解除)
黄色:旧緊急時避難準備区域(現在は解除)
紫の円:各自治体の人口規模
(出典:NIRS資料)

第一原発の北西約40 kmにあり、避難地域に指定されていなかった福島県飯舘村について、3月30日、IAEAのフローリー事務次長はウィーンの本部で記者会見し、高い濃度の放射性物質が検出されたとして、住民に避難を勧告するよう日本政府に促した[92]。IAEAの勧告に対し、枝野官房長官は3月31日、「直ちにそうしたもの(状況)ではない」「長期間そうした土壌の地域にいると、その蓄積で健康被害の可能性が生じる性質のものなので、しっかり把握し対処していかなければならない」と否定的見解を述べた[93]。また、経済産業省原子力安全・保安院も独自に試算した数値を公表し、「避難の必要はない」とIAEAの勧告を明確に否定した[94]

ところが4月になって、政府は、飯舘村の全域と川俣町の一部、半径20 km圏内を除く浪江町葛尾村の全域、南相馬市の一部を「計画的避難区域」に指定し、約1か月かけて避難することになった[95][96]

事故の影響が長引いてくると、政府の対応も長期避難に備えたものに切り替わっていった。4月22日には、半径20 km圏内が災害対策基本法に基づく警戒区域に設定され、民間人は強制的に退去させられ、立ち入りが禁止された[97]。また、半径20 kmから30 km圏内のうち計画的避難区域でない地域の大半が、緊急時に屋内退避や避難ができるよう準備しておくことが求められる「緊急時避難準備区域」に指定され、屋内退避指示は解除された[98]。避難者数は、2011年8月29日時点で、警戒区域で約7万8000人、計画的避難区域で約1万0010人、緊急時避難準備区域で約5万8510人、合計約14万6520人に達した[2]。これらの区域内にある双葉町大熊町浪江町富岡町楢葉町広野町飯舘村葛尾村川内村が、3月から6月までに郡山市二本松市などの外部へ役場機能を移した。5月10日からは警戒区域内の住民の一時帰宅が行われた。原発から3km以内へは一時帰宅できなかったが、8月26日から実施された。

政府はさらに、警戒区域や計画的避難区域外でも局地的に放射線量の高い地点があるとして、事故発生後1年の推定積算放射線量20 mSv(3.2 μSv/h)を目安に「特定避難勧奨地点」を設定した。特定避難勧奨地点は、地区単位ではなく住居ごとに放射線量を測って指定され、避難することを選択すると支援が受けられる。2011年6月30日に福島県伊達市の113世帯、7月21日に福島県南相馬市の59世帯が指定された。しかし住民からは指定方法などに反発が上がり、地区単位で指定するよう要望した。その後、2012年12月14日に伊達市の特定避難勧奨地点を解除し、2014年12月28日に南相馬市の特定避難勧奨地点も解除された。これにより特定避難勧奨地点はすべて解除された。

このような住民避難の実態が、2011年7月23日のNHK特集「飯舘村 〜人間と放射能の記録〜」[99]で放映された。このなかでは、村内の汚染が数十 mSv/hに上ったことから避難に至る様子や、原子力委員会が、村内に汚染土壌の処分場を設置してはどうか、と提案している様子などが放映されている。なお、放射性廃棄物の処分場は地層処分のように多くの手続きや検討を経て選定される[100]

避難区域の再編[編集]

政府は福島第一原発が「冷温停止」した段階で警戒区域の縮小を検討するとしていたが、警戒区域の一部では高い放射線量が観測され、事故後1年間の積算放射線量の推計は最高で508.1 mSv(大熊町小入野)となった[101][102]。政府は放射線量に応じて避難区域を再編することを決め、2012年4月1日より、準備が出来た自治体から順次、警戒区域・計画的避難区域を「避難指示解除準備区域」「居住制限区域」「帰還困難区域」の3区域に再編した。帰還困難区域は年間積算放射線量が50mSv以上で、長期に渡って帰還が難しい地域。居住制限区域は年間20mSv~50mSvで、20mSv以下への除染を目指す地域。避難指示解除準備区域は年間20mSv以下の地域。

再編時期
自治体 時期 再編前 再編後
田村市の一部 2012年4月1日 警戒区域 避難指示解除準備区域
川内村の一部 2012年4月1日 警戒区域 避難指示解除準備区域・居住制限区域
南相馬市の一部 2012年4月16日 警戒区域・計画的避難区域 避難指示解除準備区域・居住制限区域・帰還困難区域
飯舘村全域 2012年7月17日 計画的避難区域 避難指示解除準備区域・居住制限区域・帰還困難区域
楢葉町大部分 2012年8月10日 警戒区域 避難指示解除準備区域
大熊町全域 2012年12月10日 警戒区域 避難指示解除準備区域・居住制限区域・帰還困難区域
葛尾村全域 2013年3月22日 警戒区域・計画的避難区域 避難指示解除準備区域・居住制限区域・帰還困難区域
富岡町全域 2013年3月25日 警戒区域 避難指示解除準備区域・居住制限区域・帰還困難区域
浪江町全域 2013年4月1日 警戒区域・計画的避難区域 避難指示解除準備区域・居住制限区域・帰還困難区域
双葉町全域 2013年5月28日 警戒区域 避難指示解除準備区域・帰還困難区域
川俣町山木屋地区 2013年8月8日 計画的避難区域 避難指示解除準備区域・居住制限区域

このうち、避難指示解除準備区域・居住制限区域は宿泊は認められないなど一部制限はあるものの立ち入りは原則自由になっている。居住制限区域については、原則住民の日中のみの出入りに制限されている。帰還困難区域については、それまでの警戒区域同様、原則立ち入り禁止となっている。(避難指示解除準備区域・居住制限区域では2012年末から大型連休・夏休み・年末年始などで特例宿泊を行っている。それ以外の時期における一時帰宅については日中に限り、事前に対象の市町村役所(役場)に許可を得る必要がある[103]

なお、3区分の区域は賠償のほか税制面でも違いが生じる。例えば、警戒区域の避難者は不動産取得税等の特例減免があるが、警戒区域が解除されると、避難指示解除準備区域のみ解除3か月後に購入した者は課税される。これは帰還を促すための措置だが、5年間帰還できない避難指示解除準備区域の住民は他の区域と状況が変わらないため、減免するよう要求している。

避難指示の解除[編集]

政府は避難指示解除準備区域・居住制限区域の解除を目指して除染を進めた。2014年4月1日に田村市が避難区域では初めて避難指示を解除され、同年10月1日(一部は2016年6月14日)には川内村も避難指示を解除され、2015年9月5日には楢葉町も避難指示を解除され、2016年6月12日には葛尾村の大部分(帰還困難区域を除く)も避難指示を解除され、同年7月12日には南相馬市も避難指示を解除され、2017年3月31日には川俣町山木屋地区・浪江町中心部・飯舘村の大部分(いずれも帰還困難区域を除く)も避難指示を解除され、同年4月1日には富岡町の大部分(帰還困難区域を除く)も避難指示が解除された。これにより、避難指示解除準備区域・居住制限区域は大熊町・双葉町以外で全て解除された。大熊・双葉両町全域および5市町村の帰還困難区域では避難指示が続いている。

避難指示が解除されても、すぐに住民が戻っているわけではない。帰還した住民は、楢葉町では避難指示解除1年後の2016年9月2日時点で9.2%[104]、葛尾村では避難指示解除8カ月後の2017年2月時点で9.9%[105]にとどまった。地元に戻らない理由としては、「原発の安全性に不安」「医療環境に不安」などが、復興庁による住民への意向調査で多かった[105]

帰還困難区域については、政府は2016年8月、駅や役場周辺などに除染やインフラ整備を優先的に進める「復興拠点」を設け、5年後(2021年度末)をめどに避難指示を解除する方針を決めた。復興拠点以外の地域での解除時期は未定である[106][107][108]

日本における汚染対策・規制[編集]

食品中の放射性物質に対する規制[編集]

暫定規制値の数値基準

2011年3月17日から2012年3月末に至る間、厚生労働省は暫定規制値を定め、各自治体に対する通知によって、放射性物質を食品衛生法の規制対象として準用してきた[109]

以下、その数値基準と、WHO (世界保健機関) による水質ガイドラインとの比較を示す。

暫定規制値[109]とWHOによる水質ガイドラインとの比較
核種 暫定規制値(Bq/kg) WHO 飲料水水質ガイドライン[110](Bq/L)
放射性ヨウ素 飲料水[111][注 3] 300 10
牛乳・乳製品 300
野菜類(根菜、芋類を除く。)魚介類 2,000
放射性セシウム 飲料水 200 10
牛乳・乳製品
野菜類 500
穀類
肉・卵・魚・その他
ウラン 乳幼児用食品 20
飲料水 1
牛乳・乳製品
野菜類 100
穀類
肉・卵・魚・その他
プルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種 乳幼児用食品 1
飲料水 1
牛乳・乳製品
野菜類 10
穀類
肉・卵・魚・その他
飲料水の暫定規制値と国際機関の基準値との比較

飲料水の暫定規制値はWHO(世界保健機関)が定める10Bq/Lの30倍であり[110][112]、この違いを疑問視する見方もある。しかし、WHO、IAEA(国際原子力機関)とも、緊急時の最初の1年間の対応としてはWHO基準よりもIAEAの定める基準が優先されるとしている[110][注 4]。IAEAは、2002年の資料において、緊急時の最初の1年間までは100Bq/Lを上限とする、としている[113]。また、FAO(国際連合食糧農業機関)は、幼児の甲状腺に対する影響を考慮して上で、最初の1年間で400Bq/kgを上限としており、暫定規制値はこの1/4となっている[114]。また、IORP(国際放射線防護委員会)の見解に基づけば妊娠中に暫定規制値の上限値の水を毎日1L飲み続けても、胎児、子供に影響が出ない計算となる[115]

2012年4月以降の数値基準

厚生労働省は数値基準の見直しを行うとともに、2012年3月15日までに食品衛生法に基づく省令および告示の改正をし、新たな告示を加え、2012年4月1日から施行及び適用することにより、食品衛生法に基づく規制として法体系を整備した[116][117][118]。以下、その数値基準を示す。

規制値(2012年4月1日施行)[119]
核種 規制値(ベクレル/kg)
放射性セシウム 飲料水 10
牛乳 50
一般食品 100
乳児用食品 50
  • 注:製造・加工食品、米、牛肉、大豆については経過措置あり
基準値策定の経緯

原子力安全委員会は放射性物質を含む飲食物の摂取制限の指標値を2001年2月に示し、2010年12月に改訂した[120]。改訂後の指標値の大意は、1年間の積算被曝線量の上限値をヨウ素甲状腺での線量が50ミリシーベルトセシウムの全身的線量が5ミリシーベルトとするものである[注 5]

また、厚生労働省は2002年3月、原子力関連テロや原子力事故を想定した「緊急時における食品放射能測定マニュアル」を作成し[121]、5月に各地方公共団体に送付していた[122]

厚生労働省福島第一原子力発電所事故による農産物および飲用水の放射性物質による汚染発生を受け、2010年12月に改訂された指標値をもとに、原子力安全委員会に緊急時における食品および飲用水中の放射性物質の濃度の数値基準を策定させた[123]。この策定における考え方としては、内部被曝に繋がる放射性物質の摂取源を 1.飲料水 2.牛乳・乳製品 3.野菜類 4.穀類 5.肉・卵・魚・その他 の5つの食品群に大別し、原子力安全委員会の指標値の上限であるヨウ素につき年間50ミリシーベルトセシウムにつき年間5ミリシーベルトの実効線量を5つの食品群に均等に配分、各食品群について一般成人、乳児および成長期にある人の摂取量と、ある程度の余裕を考慮したうえで、人体に与える放射線の実効線量の単位であるシーベルトによる指標値を、各食品群のキログラム当たりの放射線量(ベクレル単位)を規制・管理することで守ることができるように落とし込みを行ったものであった[124]。その具体的数値は上記のとおりである。厚生労働省はこの指標値を食品衛生法上の放射能に関する暫定規制値として各地方公共団体宛に通知するとともに、緊急時における食品放射能測定マニュアルを参照して食品を検査するよう指示した[109]

2012年4月1日から施行された新基準値においても、内部被曝に繋がる放射性物質の摂取源となる食品を食品群に分け、1年間の積算被曝線量の上限値を各食品群に均等に配分、一般成人、乳児および成長期にある人の摂取量と、余裕を考慮し、シーベルト単位の上限値を Bq/kg の単位に落とし込むという方向性は変化していない。変化した点は、半減期が短く、時間が経つにつれ検出されなくなった放射性ヨウ素についての基準を廃止したこと、緊急時における1年間の積算被曝線量の上限値であるセシウムの年間全身的線量の5ミリシーベルトから、平時の上限値としての年間1ミリシーベルトに設定を変更したこと、野菜類、穀類、肉・卵・魚・その他を一つの食品群にまとめたこと、乳児が摂取する栄養源は特段偏りがあるため、新たに乳児用食品の項目を設けたことである[124]

法体系整備の経緯

福島第一原子力発電所事故以降、2011年3月17日から2012年3月末までは暫定規制値を通知に基づき食品衛生法の規制対象として準用してきた[109]。2012年3月15日に食品衛生法の下位法令にあたる乳及び乳製品の成分規格等に関する省令および食品、添加物等の規格基準が改正され[117][118]乳及び乳製品の成分規格等に関する省令に基づきセシウム134およびセシウム137を規制の対象とする政令が新たに整備され[116]、いずれも4月1日から施行・適用されることとなった。「通達」とも呼ばれる通知に法的根拠はないが、これらの下位法令は法(食品衛生法)の規定するところにより、その運用のために法と同じ拘束力と法的根拠を付与されているので、2012年4月1日以降の食品中の放射性物質は食品衛生法により規制されていることになる。

水道水においては、食品の規制値に合わせる形で目標値が変更されたが、厚生労働省のとっている手法は一貫して通知であり、地方自治法に基づく技術的助言としての位置づけも変わっていない[注 6]

食品中の放射性物質の規制等に係る主な厚生労働省の各種文書の位置づけと内容
 年月日 文書番号 発令元 宛先 件名 種別 摘要 出典
2002年5月9日 医薬局食品保健部
監視安全課
各地方公共団体
衛生主管課
緊急時における食品の放射能測定マニュアルの送付について 事務連絡 原子力関連テロや原子力事故が起きた際の放射能測定マニュアルを送付するので、緊急時モニタリング計画作成などに活用するよう指示。 [122]
2011年3月17日 食安発0317第3号 医薬食品局
食品安全部長
各地方公共団体首長 放射能汚染された食品の取り扱いについて 通知 表に示した値を暫定規制値とし、これを上回る食品を食品衛生法に定める流通させてはならない食品に当たるものとして処置することを指示。放射能測定マニュアルに従って食品を検査するよう指示。 [109]
2011年3月19日 健水発0319第1号 健康局水道課長 各都道府県
水道行政担当部局長
福島第一・第二原子力発電所の事故に伴う水道の対応について 通知 指標(暫定規制値の飲料水の値と同じ)を超過した上水の飲用を控える、飲用以外は問題ない、代替の飲用水がない場合は飲用しても差し支えない、ことを通知。地方自治法に規定する技術的助言。 [123]
2011年3月21日 健水発0321第1号 健康局水道課長 各都道府県
水道行政担当部局長
乳児の水道水の摂取に係る対応について 通知 水道水の放射性ヨウ素が100Bq/kgを超える場合には、水道事業者等が乳児による水道水の摂取を控えるよう広報するよう指示。代替の飲用水がない場合は摂取しても差し支えないことを通知。地方自治法に規定する技術的助言。 [111]
2012年3月5日 健水発0305第2号 健康局水道課長 各厚生労働大臣認可
水道(供給)事業者
水道水中の放射性物質に係る管理目標値の設定等について 通知 飲用水の新基準値(セシウム134及びセシウム137の合計で10Bq/kg)を水道水中の新たな目標値とし、遵守するよう通知。地方自治法に規定する技術的助言。 [125]
2012年3月15日 厚生労働省令第31号 厚生労働大臣
小宮山洋子
省令 乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正し、放射性物質を規制項目に加えるという内容の省令。4月1日から施行する。 [116]
2012年3月15日 厚生労働省告示第129号 厚生労働大臣
小宮山洋子
告示 乳及び乳製品の成分規格等に関する省令で規制する放射性物質をセシウム134及びセシウム137と定め、50Bq/kgの値を以って規制することを定めた告示。経過措置を規定。4月1日から適用する。 [117]
2012年3月15日 厚生労働省告示第130号 厚生労働大臣
小宮山洋子
告示 食品、添加物等の規格基準で規制する放射性物質をセシウム134及びセシウム137と定め、各食品群別に定めた値を以って規制することを定めた告示。経過措置を規定。4月1日から適用する。 [118]
国が定めた規制以外の取り組み
学校給食

福島県やその近県だけではなく、東京都内や大阪府など西日本でも、子に弁当を持たせる事例が続発した。

  • 特別な基準を設けた自治体(学校給食について暫定基準の特別の定めはない。)
    • 東京都武蔵野市
      • 2011年11月1日に行った市内認可保育所の給食食材の検査で、牛乳で14.4 Bq/kgを検出した[126]
      • 2011年11月8日に行った市内認可保育所の給食食材の検査で、茨城産さつまいもで19.2 Bq/kgを検出した[127]
      • 2011年11月17日に行った市立小中学校の給食食材の検査で、長野産マイタケで115 Bq/kg、長野産ナメコで17.1 Bq/kgを検出した[128]
      • 市内認可保育所の給食では、検査で放射性物質を検出した食材は、給食で使用しないことにした[129]
    • 福島県須賀川市
      • 小中学校にて、2012年1月より給食の食材を1 kgあたり10 Bq以下との基準と決め、飲料水や牛乳・乳製品が同5 Bqとし、基準を上回った食材は使用しない方針と決める[130]
    • 北海道札幌市
      • 2011年12月より検査の結果、検出限界値である4 Bq/kg以上の値が検出された場合は、念のため学校給食での使用を控えることを決める[131]
  • 検査結果の公表
    • 宮城県大崎市
      • 牛乳:25 Bq/kg(2011年10月18日(宮城県産(工場・製造元非公表))[132]
スーパーマーケットの食品検査

大手の食品を扱うスーパーマーケットに、独自に放射線を測定し、販売を制限するところが出た。但し、個々に対応が異なる。

  • イトーヨーカ堂:2011年10月18日に、コメのプライベートブランドで自主検査を始めると発表[133]
  • 福島県の中堅の「スーパーマーケットいちい」が独自の放射線測定を行い、その結果を、公開する独自の展開を始める[134]

風評被害への対策[編集]

主に、「日本国の基準を満たしている食品(現在:100ベクレル/kg以下)は、その量に関係なく、いくら食べても安全であり、これらを避ける事は風評被害に当たる」という主張の元に、その対策を日本政府が推進し、一部の企業が協力を行っている活動である。

  • 日本の農林水産省では「食べて応援しよう!」キャンペーンにて風評被害の防止に努めている[135][136]
企業の福島産食材応援の取り組み
  • イオンは、福島県で水揚げされたカツオを、イオンの店舗において販売する事を発表した。[137]
  • 江崎グリコは、これを受けて応援を開始した。2011年6月6日より、東北地方の生乳が主原料の「牧場しぼり」の販売を開始した[138][139]
  • デイリーヤマザキの各店舗では、東北地方の特産品をおむすびで使用し、全国で発売することにより「食」を通じて被災地を応援。2011年5月17日より販売を開始した[140]
  • 吉野家ホールディングスは、牛丼店の主要食材に、福島県でコメの生産の「吉野家ファーム福島」を設立し、東日本大震災の被災地支援を行う。[141]
病院・学校での促進

農林水産省では、取組の拡大ため、大学や都道府県庁舎内の食堂・売店、医療施設、介護・福祉施設における被災地産食品の積極的な活用・販売するように協力を求めている。[142]

人体への影響[編集]

被曝事例[編集]

作業員の被曝[編集]

2011年3月12日に1号機原子炉建屋に入室し、手動ベント弁を開操作してドライベントを実行した作業者の男性が、累積106.3 mSvの急性被曝をし、急性被曝症状である吐き気だるさを訴えて病院に搬送された[143][144]。当時の炉心は、後日の東京電力発表によれば[145]すでにメルトダウンが進行していた可能性があり、また当時は施設内で人体貫通性(染色体破壊能力)が高い中性子線が検出されており、原子炉建屋内での本作業は命をも脅かされかねない危険な行為であったが、切迫した状況の中で、現地判断により、開所当時から手順書が整備されていなかったベント作業[146]を、既存の設計図や配管図など各書類を頼りに考案し即時行うしかなかったと見られている。大阪大学の宮崎慶次名誉教授は「炉心溶融後にベントを行えば、放射性物質の漏出が増える。もっと早い段階で行うのが定石だ」と着手も含めた対応の遅れを指摘した[144]

一方、3号機タービン建屋地下階で3月24日、同月14日の原子炉建屋の水素爆発により破損した配電系統の再敷設工事を行っていた電工系企業の社員および下請け作業員が、現地にあった水たまりに一般的な靴を履いた状態で侵入し、これが高濃度放射能汚染水であったために靴内浸水時に被曝した。同日、作業員3名の自己申告により靴内浸水が発覚、ベータ線被曝が疑われた。3名は福島県立医科大学へ救急搬送され、除染処置を含む緊急治療を受け、翌日には千葉県にある放射線治療研究専門機関、放射線医学総合研究所へ移送された[147]。3月28日には放射線医学総合研究所が記者会見を開き、25日から研究所に入院していた作業員3名が無事に退院したと発表した。3人とも被曝内容はベータ線熱傷(ベータ線は表皮から先へ貫通できず、重症へ至るのは負傷部位から放射性物質がしみこんでの内部被曝被害のみ。臨界現場付近と違い、福島第一原発の当時の汚染水(たまり水)はほぼヨウ素とセシウムの同位体つまりベータ線源が占めていた)であり、3名とも記者会見時点で健康状態に特に問題はなく、うち2人は足のくるぶし下に2 Sv〜3 Sv程度の高線量ベータ線被曝をしているが会見時点では皮膚症状はまったくなく、今後も被曝部位が赤みを帯びる程度であろうと診断されたため、しばらくは経過観察を行う予定であることが発表された(被曝症状は、相当期間が経過した頃に、徐々に、あるいは急に、発現することもあるため)[148][149]

住民の被曝[編集]

4月3日、官房長官枝野幸男は記者会見で、福島第一原発から30 kmの周辺で、甲状腺の被曝調査を行った15歳以下の子ども946人について、問題となる値は見つからなかったことを明らかにした。政府の原子力災害現地対策本部(福島市)によると、調査は3月28〜30日に、福島県川俣町と飯舘村で保育園などを通じて検査を呼びかけ、のどの放射線量を測定した結果、対象者には20 km圏内から避難してきた子ども7人も含まれていたが、最高値は毎時0.07 μSvで、国の原子力安全委員会が示した基準値である同0.2 μSvを全員下回っていた。3月26、27日には、いわき市で同様の調査を137人を対象に実施したが、こちらも基準値を上回った子どもはいなかった[150][151]

4月21日には、市民団体「母乳調査・母子支援ネットワーク」[152]が、3月下旬に福島県および関東地方で暮らす生活協同組合員の授乳婦9名の母乳を検査した結果、4人の母乳から6.4 Bq/kg - 36.3 Bq/kgのヨウ素131を検出したと発表した[153]。これを受けて厚生労働省も福島県および関東地方にて同様の調査を行い、4月24- 25日に採取した23名の母乳から検出されたヨウ素131は検出限界以下から最大8.0 Bq/kgに分布し、セシウム137は1人だけ検出されて2.4 Bq/kg、セシウム134は全員が検出限界以下であったと発表した[154]

福島県が行なっている県民健康調査で、2011年3月11日から7月11日までの4カ月の各個人の行動を基に、外部被曝線量の推計が行なわれている。それによると、2016年12月31日までに調査を終えた分で、放射線業務経験者以外で、10ミリシーベルト以上の被曝をしたのは112人で、最高値は25ミリシーベルトと推計されている[155]

政府の原子力被災者生活支援チームは2011年7月28日、放射線量が比較的高い福島県浪江町、飯舘村、川俣町山木屋地区の住民109人を対象に、福島県が6月27日〜7月10日にホールボディカウンター (WBC) を使って全身から放出されるガンマ線を測定し内部被曝状況を調べた結果、計58人から微量のセシウム134やセシウム137が検出されたが、全員が1 mSv未満だったと発表し、内部被曝の程度は「相当に低い」とした[156]。南相馬市における同様の調査では、1名の預託線量が1 mSvを超えた[157]

専門家の指摘[編集]

事故直後より放射線医学などの専門家から一般に向けたコメントが発表されている。現在福島県において若年者の甲状腺の検査が行われている。

  • 東京大学医学部附属病院放射線科准教授中川恵一は、今回の原発事故に関連してTwitterにおいて「100ミリシーベルト以下の被曝はほぼ安全」などと発言し、その後の飯舘村の現地調査でヨウ素被爆の影響は監視する必要があるなどと病院のWebサイトに掲載した[158]
  • 慶應義塾大学医学部講師近藤誠(放射線治療科)は2011年4月7日、日刊ゲンダイに対し、100ミリシーベルト以下なら安全はウソっぱち、『「100 mSv以下の低線量被曝のデータは少なく、いまのところ発がんリスクはゼロでなく、正確に分からない」と言うべき』と述べ[159][160] 、サイエンス・メディア・センターにおいて小論を公開した[161]自由報道協会のメンバーである日隅一雄も「国際放射線防護委員会 (ICRP) も、100 mSv以下の被曝でも比例的に健康被害が生じると認めている」と述べている[162]
  • 2011年3月16日、イギリス政府主席科学顧問のジョン・ベディントンは、「チェルノブイリの場合でさえ、避難区域は約30kmだった。」と述べている[163]
  • チェルノブイリ事故の放射線対策に関わり、福島も視察したロシア科学アカデミーミハイル・バロノフ (Mikhail Balonov) 博士は「我々は、1986年から25年がたった今、どの公衆の健康被害がチェルノブイリ事故によって引き起こされたかを知っている。この事故がおおむね、1986年5月に放射性ヨウ素を含む地元で生産された乳を飲んだ子供の高い甲状腺癌発生率を生んだ。」として、(石井孝明の訳[164]によると)「福島では、子供が2011年3月から4月にかけて、放射性物質を含むミルクを飲まなかったことにより、この種の放射線被曝は非常に小さかったといえる。このため、近い将来あるいは、遠い将来、どんな甲状腺疾患の増加も予想できない。」と述べている[165]
  • 札幌医科大学教授の高田純は、「福島は広島にもチェルノブイリにもならなかった〜東日本現地調査から見えた真実と福島復興の道筋」という論文を発表した。その中で、2011年4月以降に福島県内で66人に実施した甲状腺検査で、被曝量が最大で8 mSvと、チェルノブイリの事例(最大50 Sv)と比べて1000分の1以下だったことなどを根拠に、「福島では誰も甲状腺がんにはならない」と述べている[166]
  • 2011年7月27日、東京大学アイソトープ総合センターセンター長[167][168]先端科学技術研究センター教授[169]児玉龍彦衆議院厚生労働委員会参考人として出席し、「厚生労働関係の基本施策に関する件(放射線の健康への影響)」について、双葉町や大熊町などで除染などの現地対応に追われた経験を踏まえた発言を重ねた[170][171]。政府と国会の対応を厳しく非難した。以下、発言内容[注 7][170]
    • 母乳からの検出放射能量は、すでにチェルノブイリ事故時のガン発症患者の体内検出量 (6 Bq/L) と互角であり、外部被曝と違って低線量でも健康被害は甚大である
    • 放射性物質の1年後残存量は、核爆弾爆発後は1/1000だが、原発事故後は1/10に過ぎない
    • 福島第一原発の放出量は、熱量換算で広島原爆30個分、ウラン換算で20個分(政府8月発表では、6月時点の放出総量は168個分[172]
    • 単にWBCで内部被曝計測するだけでは、特定臓器に集約される特定線源を把握しきれないので不備
    • 遺伝子は個々人によって300万カ所が異なるので、全員同一の対処法はナンセンス、パーソナライズが重要
    • 内部外部の被曝を問わず、被曝病発症と被曝を関連づけるには世界でも前例が乏しいため、チェルノブイリの場合も20年分のデータがそろうまで無理だった
    • 非線形で、非常に狭い区画で点在するマイクロ・ホットスポットの脅威が、行政対応には反映されていない、除染も補償もそのルール作りもいっこうに進んでいない。20 km圏とか30 km圏という円状のくくりは無意味で、地域毎や学校毎などで細かく計測し調査しないと不備
    • また政府への提案として以下の3点を発言した。
  1. 国策として(機器導入向けの補助金制度及びその宣伝や指導を指していると思われる)食品、土壌、水の線量測定には、安価なGM管方式ではなく高価格帯シンチレータを投入し、高い精度で、土壌と水の除染、食品製造ラインへのシンチレータ計測ライン増設により線量基準超の不良品を排除、などを可能にすること[173]
  2. 子供を守ることを最重要視し、実用的な新法を早急に制定する。現行法では、取り扱うことを許可される放射線量、核種が許認可によって厳密に規制されており、セシウムは認可をもらっておらず、除染作業も東京へ持ち帰って行っており、すべて法律違反の行いである。高価な最新鋭測定機器を有する各研究施設も、これでは活躍できず、現行法は実態に合っていない。
  3. 除染技術の開発や事業化について、既に様々なノウハウを有する各民間企業の力を結集し民主導とすること。官主導でパフォーマンスの悪い公共事業化で予算肥大化する余裕が、財政難の政府にあるとは到底思えない。
  • アメリカ合衆国の独立研究機関放射線と公衆衛生プロジェクト」のジョセフ・マンガノ事務局長は、2011年3月の福島第一原子力発電所事故直後、ウランを高熱で分裂させる過程で100以上の新たな化学物質ができ、それが大気や食物を通じて健康被害を起こす可能性があると指摘、「これらの物質がいったん人体に入れば、暴れ牛が陶器の店に入るような事態になる。人体で暴れ、正常な細胞を破壊する」と述べた。
  • 2012年5月19日、北海道深川市立病院内科部長の松崎道幸は、甲状腺障害についての考察として、「今、福島のこども達に何が起きているか?-甲状腺障害、呼吸機能、骨髄機能をチェルノブイリ事故等の結果[174]から考察する-」と題した意見書をウェブ上で発表した[175]。要旨は以下のとおり。
  1.  内外の甲状腺超音波検査成績をまとめると、10歳前後の小児に「のう胞」が発見される割合は、0.5~1%前後である。
  2.  福島県の小児(平均年齢10歳前後)の35%にのう胞が発見されていることは、これらの地域の小児の甲状腺が望ましくない環境影響を受けているおそれを強く示す。
  3.  以上の情報の分析および追跡調査の完了を待っていては、これらの地域の小児に不可逆的な健康被害がもたらされる懸念を強く持つ。
  4.  したがって、福島の中通り、浜通りに在住する幼小児について、避難および検診間隔の短期化等、予防的対策の速やかな実施が強く望まれる。
  5.  以上の所見に基づくならば、山下俊一が、全国の甲状腺専門医に、心配した親子がセカンドオピニオンを求めに来ても応じないように、文書を出していることは、被曝者と患者に対する人権蹂躙ともいうべき抑圧的なやり方と判断せざるを得ない。

放射線量の基準[編集]

原子力関連施設から廃棄される放射性廃棄物のうち、放射能レベルが自然放射線量よりもさらに低く、健康影響が無視できるレベルは、ICRPIAEA等の考え方を取り入れ、個人線量で年間約10 μSvとされている[176]。このような人体への影響を踏まえた放射線量の設定もあるなか、食品安全委員会は、生涯被曝100ミリシーベルト未満という答申を発表した[177]。一方、年間100ミリシーベルトの被曝量で帰宅させてもよいのではないか、という意見も日本原子力技術協会に掲載されている[178]

長期間な低線量被ばくの健康影響を検討する政府の作業部会は、住民避難の基準として年間20 mSvを容認している。[179]

手帳の配布

福島県浪江町は2012年度から事故が発生した時点の全町民に健康管理のための手帳を配布する[180]

甲状腺の検査結果[編集]

福島県が行なっている、事故当時18歳以下だった県民を対象にした甲状腺検査では、2017年2月20日までに185人が甲状腺がんの疑いと診断され、うち145人が甲状腺がんと確定している[181]。福島県は、チェルノブイリ事故と比べて被曝線量が少ないことなどを根拠に、被曝と発がんの因果関係は考えにくいとしている。福島県立医科大学の研究によれば、2015年6月までに甲状腺検査を受けた対象者について、推計被曝量の高い地域と低い地域とでがんが見つかった割合に差はなく、被曝量と有病率との間に関連性は見られなかった[182]

弘前大学の調査チームは、事故後1か月後の福島県の0歳から80代の住民65人の甲状腺を調べたところ、50人から放射性ヨウ素が検出され、被曝量は推計で最大87 mSvとなったと2012年3月9日に発表した[183]

仏のNGOのアクロは、事故を受けて日本各地で尿検査を行い公表を行っている[184]

X線画像への影響[編集]

東北地方関東地方医療施設では、デジタルX線画像診断システム (Fuji Computed Radiography FCR[185]) において、従来のX線撮影機のフィルムに相当するイメージング・プレート (IP) を長時間放置した後に画像化すると、ランダム配列の黒点が造影される事例が多く報告されている。この原因について製造元は、福島第一原発から放出された放射性物質がIPに付着するなどして、極めて高感度であるIPが胸部レントゲン検査の100万分の1程度の線量でも感受し、造影した結果であるとしており、IP表面の除染とデータ消去を推奨している[186]

経済などへの影響[編集]

東北地方太平洋沖地震及びそれにより発生した津波被害により、同事故で破損した福島第一を含む、多くの発電設備が被害を受けたため[注 8]、東京電力の発電能力は大幅に低下し、需要を満たせなくなる可能性をはらむことになり、電力の使用状況によっては予期しない大規模停電が起こる可能性が出てきた[187][188]。そのため、電車を運行する鉄道会社では大幅に運行本数を削減するなどして、電力不足に対応している[189]

また、福島第一原発からの放射性物質の飛散を懸念し、同発電所の周辺地域や同発電所に比較的近い関東地方、場合によっては日本からの退避を自国民に対し勧告する国もあり[190][191]、東京の大使館業務を縮小したり、ドイツオーストリアなどが一部業務を大阪などに一時移転する動きも見られた[192]

このような状況の中、余震や電力不足による混乱、放射性物質の拡散への懸念などを理由に、東京の社員や業務機能を西日本や第三国に退避する企業が増えた[193][192]。ただし、その後に西日本、特に若狭湾岸に密集する原発に依存する地域でも電力不足の懸念が広まったため、東京に戻ったり海外移転を検討する関西企業も現れている[194]

  • H&M:アルバイトを含む国内従業員とその家族、法人業務を一時大阪に移転。
  • タタ・コンサルタンシー・サービシズ:インド人社員の本国への帰国と日本人社員及び家族の関東からの移動準備。
  • BNPパリバ:東京在住の社員を香港及びシンガポールに配置転換。
  • IKEA:正社員の約半数と本社機能を神戸に移転。

また放射性物質による汚染の懸念から農産物から工業製品に至る日本製品が、海外の市場において隠避される傾向が垣間見られる地域も出てきた。輸出に際して、EU諸国をはじめ放射能の環境基準に敏感な地域などでは検査証明などの検査結果の明示が必要になるケースも出てきている[195]。このことから東京港横浜港川崎港神戸港など日本の主な港湾施設では事前にコンテナの放射線検査を実施するところもある他、検査施設への放射線量測定の依頼が増加している[196][197][198]。また中華人民共和国では日本産の食品輸入が事実上差し止められるなど過剰な措置があるとし、日本政府が日本産食品の安全性についての働きかけを行った[199][200]

福島市の福島競馬場でも、芝コースやダートコースで除染を行うため一部の芝を張り替えたり、砂を入れ替えるなどの処置がされた。

海外ではそれまで人気の高かった日本産食材の売れ行きが落ちたり、客足の伸び悩みで日本食レストランが閉店するなどの影響があるとの報告もある[201][202]

また事故直後、各国政府の退避勧告や、個人や各企業の自主的な敬遠指向などが影響し、外国人観光客の来日数が激減した[203]が、震災後初めての大型連休となったゴールデンウィークには、安近短の傾向ではあるが徐々に国内の観光客数は連休中に回復の兆しを見せた[204]。しかし福島県内でも福島第一原発から距離が遠く放射線量が小さめの会津地方[205]などでも観光業収益の落ち込みが激しい状態が続くなど、福島第一原発周辺地域では9月時点でもなお死活問題となっており、地域によって明暗分かれた格好となっている[206][207]

輪番停電[編集]

電力不足を理由とした「輪番停電」と言われる停電が実行された。これにより、定期的な停電に備えた設備の設置や計画が必要とされたり、実際に停電とされなかった場合でも、常時電源供給が必要とされる工場は生産停止に追い込まれ、多大な出費と損害、さらには倒産が発生した。

代替・処理費用[編集]

原発の代替の火力発電にかかる費用

全国の原発が停止し、原発事故の影響で再稼動できない状態に追い込まれていることから、代替の火力発電に使う燃料となる石油や液化天然ガス (LNG) の輸入が急増したため、2011年、日本は31年ぶりに貿易赤字に転落した[208][209]。状況が変わらない限り、日本の貿易収支は赤字が続くと見られており[210]、貿易赤字が構造的に定着すると経常赤字に転落し、国債が国内で消化できなくなる恐れもある[211]

事故処理にかかる費用

日本経済研究センターは、2011年7月19日、今後10年間で20兆円の処理費用がかかるとの試算結果を公表した[212]。一方、政府は事故処理には数十年必要との見通しを発表している[213]

交通への影響[編集]

福島第一原発事故の影響で人の姿が消えた福島県浪江町の中心部。2011年4月12日撮影。
2014年9月15日に通行規制が条件付きで解除された国道6号。2014年9月15日撮影

福島第一原発から半径20km圏内は、避難指示解除準備区域などで、特に帰還困難区域は、立入が禁止されている為、楢葉町から南相馬市小高区までの交通網(浜通り地方を南北に結ぶ常磐線国道6号など)も避難区域内にあり、寸断されていた。2014年9月15日午前0時より、国道6号および福島県道36号小野富岡線などの通行規制が自動車による通過のみ解除されたが、自動二輪原動機付自転車軽車両歩行者については引き続き通行できない。

鉄道
福島県浜通り地方を通るJR東日本常磐線は、事故による避難区域を含む竜田駅楢葉町) - 原ノ町駅南相馬市)間は、地震並びに津波被害で軌道鉄道施設の被害が甚大で、長期間不通となっているが、2016年7月12日、南相馬市で避難指示が解除されたのと同時に、同市内の小高駅 - 原ノ町駅間で運行を再開した。2017年3月31日、浪江町で避難指示が解除されるのに伴い翌4月1日に、浪江駅 - 小高駅間で運行を再開した。不通区間は今後、除染や復旧工事を進めて2020年3月末までに全線で運行を再開する予定。(同じく甚大な被害を受けていた相馬駅 - 浜吉田駅間は2016年12月10日に運行を再開した)
常磐線は、関東地方東北地方を結ぶ旅客輸送のみならず貨物輸送にとっても重要な幹線の一つであるが、この「竜田⇔小高」区間を境に南北に分断されている状態である。もし常磐線を一部廃線とした場合、旅客・貨物ともに甚大な大打撃を受けてしまう。このため、東京 - 仙台間を直通する鉄道幹線は、東北本線および東北新幹線のみとなっている。
また、2011年の夏には、主に東京電力から給電を受けている、首都圏私鉄地下鉄路線を中心に、節電の一環として優等列車の運転を中止したり、需要に合わせて運行本数を削減するなどの間引き運転が行われた。
高速道路
福島原発事故の影響で長期閉鎖されていた常磐富岡IC
高速道路では、福島第一原発周辺を通る常磐自動車道広野IC - 常磐富岡IC間が警戒区域に指定されており、福島原発事故以降、同区間の復旧工事には着手されていないため、通行止め解除の目処は立っていなかったが、東日本高速道路株式会社2012年(平成24年)8月31日、この区間について2013年度(平成25年度)内の開通を目指すと発表し、2014年2月22日同区間は3年ぶりに再開通(通行再開)した。また、避難区域に指定されている建設中の常磐富岡IC - 相馬IC間が2011年度に開通を、ならはPAが2012年度に開設を予定していたが、建設は凍結状態となり、原発周辺の工事再開の目処は立っていなかった。ただし、南相馬市の一部などで建設が再開され、南相馬IC - 相馬IC間については、2012年4月8日に先行して開通した。常磐富岡IC - 南相馬ICは警戒区域内に入っていたが、2012年2月に復旧・建設工事を再開した結果、2014年12月6日に、浪江IC - 南相馬IC間・相馬IC - 山元IC間の開通を経て、2015年3月1日に常磐道は全線開通した(常磐自動車道#東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響も参照)。
航空路線
航空路線では、放射性物質の飛散による影響を鑑み、自国民の本国への退避のためにチャーター便を出したり、東京国際空港(羽田空港)や成田国際空港発着便を休止、または、関西国際空港中部国際空港、第三国経由とし、乗務員をそこで交代させて東京都内や千葉県成田市周辺に滞在させないようにする航空会社も現れた[214][注 9][215][216][217][218][219][220][221]
また、福島第一原発事故の放射能汚染による懸念からの需要減といった、間接的な理由によって経路設定の変更を行ったり、減便や運休する航空路線も相次いでいる。
国土交通省航空法に基づき、2011年3月15日11時59分から福島第一原発の周囲半径30 km圏内の上空を飛行禁止とした[222][223]。なお、国際民間航空機関 (ICAO) は3月19日時点で、日本への渡航制限はないとしているほか、旅客への放射線検査も不要としている[224]
その後、2011年5月31日0時から飛行禁止区域を半径20 km圏内とした。またこれとともに、半径20 km圏外かつ半径30 km圏内の区域については、緊急時に避難できる準備を求めた[225]。この準備を求める措置は、9月30日に解除された。2012年2月25日0時から半径3 km圏内に飛行禁止区域を縮小した[226][227][228]
その他、2011年3月16日に成田発の全日本空輸 (ANA) 貨物便が中国・大連で、貨物から中国国内の規定値を超えた放射線を計測したとして、荷降ろしができずにそのまま折り返して日本に帰国するという事例も発生している[229]
バス
路線バスでは、新常磐交通北営業所の全路線が運行不能に陥っている。また、車両は警戒区域外へ移動されたり、除籍された。
高速バスでは、いわき号の南相馬線と小名浜線が、シーガル号のいわき駅 - 浪江駅間で無期限の運休を強いられている。

賠償及び補償[編集]

東京電力の賠償[編集]

東京電力は、避難指示対象の住民に対し、慰謝料や宅地・建物に対する賠償金などを支払っている。2016年12月時点で、賠償に必要な額は最終的に7兆9000億円に達すると試算されている[230]

国の損害賠償支援[編集]

2011年8月10日、原子力損害賠償支援機構法が公布、施行された[231]原子力損害の賠償に関する法律は第三条第一項に賠償責任は電気事業者にあるとしているが[232]原子力損害賠償支援機構法第二条には「国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、原子力損害賠償支援機構が前条の目的を達することができるよう、万全の措置を講ずるものとする。」と、国の責任が明記されている。同法第四十一条第一項において、損害賠償支援として、資金交付、株式の引受け、資金の貸付け、社債又は約束手形の取得及び債務保証を規定している[231]。なお、民主党政権下では、原発事故に伴う長期避難者へ被災者生活再建支援法を適用するよう野党時代の公明党自民党が答弁し、日弁連浪江町など被災自治体が再三要望しているが、すべて原子力損害の賠償に関する法律で賄うべきで、県は認めるべきでないと否定しており、国の不作為や無責任が問われている。(『月刊政経東北』2013年6月号51~54頁参照)

政府と福島県は、避難区域外から避難した人(自主避難者)に対し、仮設住宅やみなし仮設の提供を行なった。この無償提供は2017年3月末で打ち切られた。

東京電力は、損害賠償金が不足する為に国の原子力損害賠償支援機構から2011年11月に8900億円、2012年2月に6900億円の合計1兆5千8百億円追加支援の認定を受けている。また2012年3月に3度目の追加資金支援を要請すると報道されている[233]

2012年5月2日、環境省は放射性廃棄物を一時保管する「仮置き場」設置に必要な土地の使用や住宅の庭木の伐採による個人財産の損失補償額の算定基準を策定した[234]

損害賠償請求訴訟[編集]

避難していた夫婦が政府の原子力損害賠償紛争解決センターを通じて東京電力に損害賠償を請求した裁判で、2012年2月27日、初の和解が成立した。東京電力は夫婦に避難費用や慰謝料として約1千万円と、住宅損害として1千3百万円の計2千3百万円を支払う事となった[235]

2012年5月7日、大阪府兵庫県に避難している住民8世帯(25人)が、東京電力に対し損害賠償を求め、原子力損害賠償紛争解決センター(ADR)に和解の仲介の申立てを行った[236]

日本国外における影響[編集]

スリーマイル島原子力発電所事故1979年3月28日)やチェルノブイリ原子力発電所事故1986年4月26日)に伍する、史上最悪の原子力災害の一つであり、旧ソビエト連邦よりも格段に原発の安全策が講じられていると目されていた日本でこのような大惨事が発生したことは、各国のエネルギー政策に大きな影響を与えた。ドイツイタリアは、脱原子力への方向を加速させた[237][238]

震災直後の各国で問題発言やデマなども流布した(東日本大震災関連の犯罪・問題行為参照)。

2011年4月15日、ロシアの放射線に関する政府機関・医学生物学庁ウラジーミル・ウイバ長官は、東京都内の大使館において、同館敷地内で観測された放射線量が0.07 μSv - 0.10 μSvであり、これはモスクワの水準(0.17 μSv - 0.20 μSv)の約半分にとどまるとの調査結果を公表した[239]。医学生物学庁から東京に派遣されたチームは大使館員や在日ロシア人の健康調査等を行った上で、「東京の放射線量は人体に悪影響はない」「現時点で放射能汚染はない」と述べ、これを受けてウイバ長官は「観光を目的とした渡航制限を解除」するようロシア外務省に勧告する意向を明らかにした[239]

諸外国による食品の輸入規制

食品から放射性物質が検出されたことにより、日本の食品、主として、東北・関東地方の農水産物および静岡のお茶について、諸外国が輸入規制の措置を取った[240][241][242]

その他の社会的影響・反応[編集]

福島第一原子力発電所事故を機に、以前から原子力業界の閉鎖性を指して使われてきた「原子力村」という語を、推進派と撤廃派の双方が再び使い出している。又、日本国内では東海村JCO臨界事故1999年9月30日)以来12年ぶりに発生した大規模な原子力災害となり、世界的に見てもスリーマイル島原子力発電所事故1979年3月28日)やチェルノブイリ原子力発電所事故1986年4月26日)と列ぶ大規模な原発事故となったことから、日本国内でも推進派と撤廃派の双方が、原子力発電に関連した大衆運動を増やしている。

「被曝国」[編集]

核爆撃核実験の両方を被った「被爆国」が、原子力発電所事故による「被曝国」になってしまった事態は、マスコミや大衆運動で「ヒロシマナガサキフクシマ」というように、福島原発事故を広島と長崎への原爆投下と列べる論調を増やす結果となった。しかし、日本を巻き込んだ原子力災害は、長崎への原爆投下(1945年8月9日)の次は、福島原発事故(2011年3月11日)ではなく、焼津第五福竜丸が巻き込まれた水爆実験1954年3月1日)である。又、日本で発生した軍事外の原子力災害は、原子力船むつの放射線漏洩事故(1974年9月1日)が最初である。

東京都目黒区目黒区美術館では、2011年4月9日から5月29日まで、広島長崎への原爆投下にまつわる絵画ポスター建築物などを展示する「原爆を視る 1945-1970」を開催する予定であったが、この福島原発事故が起きたために中止になった。運営主体の目黒区芸術文化振興財団は「イメージ的に原発事故などを思い出させる面があり、時局柄、実施しない方がいい」と述べたが、被爆者らは「過剰反応だ」などと指摘。また、『はだしのゲン』の作者である漫画家中沢啓治も、お役所的発想であると区の姿勢を批判しており[243]、これも一種の風評被害と見ることもできる。

パフォーマンス[編集]

『明日の神話』

東京都渋谷区にある渋谷マークシティ京王井の頭線渋谷駅コンコースに設置している岡本太郎壁画作品『明日の神話』に、2011年5月1日午前9時半頃、この事故を思わせる絵を描いたベニヤ板が貼り付けてあったことが判明し、同日夜に撤去された[244][245]。この違法行為は、東京の芸術家集団「Chim↑Pom(チンポム)」のパフォーマンスであったことが、当人らによって同月18日に公表された[246]。なお、岡本太郎記念館館長でもある平野暁臣は、「(このような時世にあって)悪戯と切り捨てられない」との見解を示し、経緯を静観した[247]

PR看板

福島第一原子力発電所が立地する双葉町が原子力のPRとして設置した看板に自身が応募した標語が採用され、事故後は他県で避難生活を送る男性が、看板の前で標語の一部を訂正する写真をネット上に投稿する活動を行っている[248][249]

市民運動・デモ[編集]

この事故は原発への危惧を生じさせ、デモ活動などの大衆運動が発生した。又、原発国民投票などの活動も呼びかけられた[250]。このような原発事故が再び起きぬよう「フクシマを忘れるな」をスローガンに世界中で脱原発集会が起きた[251]

政治における動きとしては小沢一郎を党首とした新党「国民の生活が第一」が発足し、「10年後を目途に全ての原発を廃止する」を基本政策課題として発表した[252][253][254]

東海村長の村上達也は、福島原発事故は「人類史上でチェルノブイリ原発事故に次ぐ放射能汚染による大規模な自然環境破壊であり、すべての生命への危害であった」とした[255]

原発に対する不安と再稼動についての東京新聞社の2012年3月の世論調査では「脱原発」支持8割 必要分だけ再開54%だった[256]

官邸前デモ

2012年6月15日の夜に、官邸前に、1万1千人の市民が集まり、大飯原発再稼働の反対を叫ぶデモを行ったとしんぶん赤旗が報じている[257][258]CNNのサイトによるネット報道(CNN iReport)では、この1万1千人のデモを報道すると共に、日本ではこのニュースが放送されていないとしている[259]。また、翌週の2012年6月22日の夜には、官邸前に、多数の市民が大飯原発再稼働の反対デモに集まったと各種メディアが報じた[260][261]。このデモの参加者数は、朝日新聞の報道によれば、主催者発表で4万人、警察発表では1万人[260]。東京新聞の報道によれば、主催者発表で4万5千人であったとされる[261]。2012年6月29日の夜にも官邸前で反対デモが行われた。デモ参加者数は、主催者発表が約20万人、警察発表で約1万7千人[262]。これ以後、ほぼ毎週金曜日ごとに市民や団体数名による大規模なデモ集会が自発的に開催された。

16回目の2012年7月20日には、鳩山由紀夫が訪れた[263]

さようなら原発10万人集会

2012年7月16日「さようなら原発10万人集会」と銘打ったデモが、東京都渋谷区の代々木公園で開かれ、主催者発表で約十七万人、警視庁関係者によると約七万五千人が参加した[264]

市民による「保養プロジェクト」

2012年7月5日、福島で被爆した可能性のある子供の健康回復を実現するために、沖縄の久米島で「沖縄・球美の里 - 福島の子ども保養プロジェクト」が始まった[265]。福島の子供は無料で保養するが、その資金は市民の募金で賄われる。広河隆一石井竜也宮崎駿などが設立に積極的に加わる。「沖縄・球美の里 - 福島の子ども保養プロジェクト」の「姉妹プロジェクト」は日本各地で開設されていく[266]

反原発に対する批判[編集]

  • 日本経済団体連合会会長の米倉弘昌は、事故発生から4日後(2011年3月16日)に、福島原発事故について「千年に一度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と発言し、原子力行政を擁護した[267]
  • 事故発生時の政権与党である民主党の支援団体の一つである全国電力関連産業労働組合総連合は、「原子力発電は、議会制民主主義において国会で決めた国民の選択。もし国民が脱原発を望んでいるなら、社民党共産党が伸びるはずだ」(内田厚事務局長)と原子力行政を擁護し、脱原発論に反論した[268]
  • 事故発生時の野党である自民党石原伸晃幹事長は、「大きな事故があったので集団ヒステリー状態になるのは心情としては分かる」「脱原発というのも簡単だ。しかし生活を考えたときどういう選択肢があるのか示さなければいけない」と発言した[269]。また、石原幹事長は自民党の河村建夫衆議院議員のセミナーで日本各地の反原発運動について、「アナーキー(無政府主義的)で代替エネルギーのことを考えていない」「公安関係者から聞いたが、(6月11日に東京で起きた原子力発電所反対デモの)バックにいるのは革マル派中核派原水協。そういう人たちがいるのに普通の人が多く集まっている」と発言した[270]
  • 公安調査庁は、反原発運動には中核派などの過激派が、反原発を訴えながら活動を活発化させ、勢力拡大を図っている実態を発表している[271]

風評被害・デマ[編集]

この原発事故により、様々な分野で風評被害デマが発生した。ここで取り扱う「風評被害」の中には、産業界や地元住民などに実際に発生している、または、発生の蓋然性が高いと予想される実害をも含む。本事故による社会的影響は、サプライチェーン(供給連鎖)など、放射性物質と直接的関係のない分野にまで及んでおり、本事故によって発生した実害の軽視に加担しないため、本節では「被災した産業等」のみにかかるものではなく、「実害を訴える人々」をも対象とした包括的な内容を記述する。この事故の影響により、2011年の新語・流行語大賞トップテンに「風評被害」が選出された。

デマ・俗説

放射性ヨウ素の体内摂取を阻止するための内服薬「安定ヨウ素剤」の代わりに、ヨウ素入りのうがい薬や昆布など海草類も有効であるとの情報はデマであると放射線医学総合研究所などが発表したが[272][273]、その後はそれらには一定の効果があることがわかっている。山下俊一は”心配ならば、ヨウ素の量が多い、わかめ、昆布のスープを飲んでおけば、普通の人ができる甲状腺のブロックになる”と発言している。

中華人民共和国において「海水が放射能汚染されたので今後は安全な塩が入手できなくなる」というデマ情報が流れて実際に塩の買い占めに発展したことが挙げられる[274][275][276][277]。また「震災や原発事故の被災地で強盗や性犯罪が多発」などといったデマもインターネット上に多発し、またそれ以降は便乗犯と思われる犯行も相次ぎ(原発作業員もTwitterで自宅に空き巣が入ったと報告)、送電網の断線や各地の原発停止などに起因して夜間停電の続く被災地域および高線量に起因する立入禁止区域の治安が悪化したため、警察が取締まり強化に乗り出す事態となった[278][279][280][281]

ネット上を中心に不安を煽る内容の怪文書が数多く拡散されている[282]ブラックバス釣り雑誌Rod and Reel」2012年1月号が急性リンパ性白血病により亡くなった宮城県内に住む釣り師の追悼記事を掲載したところ、「死亡した釣り師は福島県の祖父の田舎を釣りで応援すると言って、福島原発30 km圏内で野宿し、池や川で釣った魚を食べていた」という、雑誌には書かれていない虚偽情報がブログ2ちゃんねるTwitterで広まり、釣り師の関係者達がネット上の反応に対して「反原発を訴えるのは勝手ですが、友達の死を捏造してまでやるヤツが腹立たしいです」等といった不快感を示した[283][284]

レスリング選手の長島和幸急性白血病と診断されたと日本レスリング協会が発表した後、「福島県内にいたから発症した」とのデマがネット上で流布された[284]。さらに「国公立医師会病院(実際には国公立の医師会病院は存在しない)の統計によると、今年の4月から10月にかけて、『白血病』と診断された患者数が、昨年の約7倍にのぼった」という新聞記事を装った書き込みが出回り、医師会に問い合わせが相次いだことから同会は公式ウェブサイトで「このような発表を行った事実はない」「現段階でそのようなデータについて確認できない」と否定した[285][286]

また枝野官房長官による「ただちに健康に影響はない」という発言のような、原発事故の影響が非常に微小であるとする楽観論についてフリージャーナリスト上杉隆は「安全デマ」だと主張している[287]

報道機関によるデマ報道の発信

2011年5月初旬に、一般市民が、千葉の柏、松戸、流山と、埼玉県の三郷の計4市で放射線を測定した結果、放射線量が高くなる「ホットスポット」を見つけたという情報とその測定値(東京大学-測定(3/21以降)[288]含む)を、インターネット上に記載した。読売新聞はこれを2011年5月16日朝刊において「チェーンメールで放射能のデマ拡散」、「チェーンメールで放射線のデマ拡大」として掲載した[289][290][291]。しかし、柏市の「県立柏の葉公園」では国の除染基準(毎時1マイクロシーベルト)を上回る空間放射線量が実際に検出されたことを、2012年2月16日、千葉県が発表した[292]

人々の言動

福島原発事故に関連し、トラックの運転手が無用の被曝を避けるため、浜通り中通りの福島原発の周辺地域への物資輸送をためらい[293][294]、例えば南相馬市(浜通り北部)やいわき市(浜通り南部)のような、福島原発からやや離れた(概ね40 km)地域には、救援物資どころか一般物資すら届かないという孤立状況が生まれたり[295][296]、「身体等に付着している放射性物質の持ち込み」を警戒して宿泊施設が避難者の受け入れを拒否する[297][298]児童が避難先の学校等で「放射能がうつる(感染する)」などといったいじめを受ける[299]などといった、風評被害および差別的対応が見られた。他にも、浜通りおよび近隣地域に点在するホットスポットを危険視する見方があるため、当該地域への人的役務の対価が高騰していることを悪用した人材派遣会社も現れた。具体的には、女川町宮城県)へのトラック輸送役務契約と偽って派遣労働者に福島第一原発での瓦礫の撤去作業を行わせた等の事例があり、被災地外の人々への被害も出始めている。

韓国北西部の京畿道では、放射性物質を多く含む可能性を懸念して、事故後最初の降雨である2011年4月7日に学校の臨時休校措置が採られた。韓国政府機関は人体や環境に影響がないとして、教育当局に過敏にならないように配慮を求めた。臨時休校としなかったソウル市教育当局のウェブサイト上では、親たちからの不満が徐々に増えたが、授業を中止することはせずに、親たちに平静さを保つように呼びかけた[300]

生産物の取り扱い

農産物に関しては、2011年3月21日に食品衛生法上の暫定規制値を超えたとして一部の野菜に出荷停止措置がとられたが、翌22日には、出荷停止されていない茨城県産のチンゲンサイレタスが小売業者から敬遠されて返品される、などといった被害も確認されている[301]菅直人総理は4月15日、福島県産のキュウリイチゴを自ら口にし、農作物の安全性をアピールした[302]。その一方で、ジャーナリストの青木理宮台真司は、「僕は福島の野菜は絶対に買いませんよ。」、「(中略)政府の言うことを信じて福島の野菜を買うというのは、はっきり言ってアホでしょう。」と発言している[303]。10月19日午前にテレビ放送されたとくダネ!の中で、福島県の農家が米を捨てるためにJAあまくさの中古品の米袋に米を詰めるシーンがあったことから、2ちゃんねるやTwitterで「福島の農家がJA天草(熊本)の米袋に産地偽装してる」といった全く根拠の無い解説が相次いで書き込まれ、このような意見のみを恣意的に集めたまとめサイトが問題となり、JAグループ熊本が「言われなき中傷」「悪意的ネット配信に対し、大変遺憾に感じ強く抗議します」と表明する事態が起きる等、農業の風評被害は全国に広がっている[304]

また、鋼材輸出に関しても風評被害が出ているとの報告が、日本鉄鋼連盟からあった[305]ほか、韓国では「日産・キューブが欲しいが放射能汚染が心配」と言う声があった[306]。このほか、工業など多分野にわたる輸出製品が、取引先に表面線量の自主検査を依頼されるか、相手国で公的検査を受けるなどして打撃を受けた[307]

犯罪・問題行為[編集]

核テロリズムの懸念[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ いずれも放射性セシウムの値である。放射性セシウムの値が核種ごとに出典に別々に記載されている場合は、その和を記載している。
  2. ^ 現在の区域は、首相官邸 東電福島原発 放射能関連情報 | みなさまの安全確保 参照
  3. ^ 「100 Bq/kgを超えるものは、乳児用調製粉乳を水道水に溶かして与える等、乳児による水道水の摂取に使用しないよう指導すること」としている。
  4. ^ 事故直後の1年間は、BSS(IAEA, 1996)並びにその他のWHOおよびIAEAの関連刊行物(WHO, 1988;IAEA, 1997, 1999)に記載されているように、食材に関しての一般的アクションレベルが適用される。『WHO飲料水水質ガイドライン』(2008年) による。
  5. ^ シーベルトは放射線の種別による人体に与えるダメージの差を考慮した放射線の実効線量の単位であるため、人体の健康に関する指標値としては適しているが、シーベルト単位を食品の流通の規制にそのまま適用することは算定に時間がかかりすぎるなどの理由で現実的ではない。
  6. ^ 地方自治法 第二百四十五条の四第1項等に基づくとされる(総務省広報 総務省における今後の通知・通達の取扱い)以下、法文。 第二百四十五条の四  各大臣(内閣府設置法第四条第三項 に規定する事務を分担管理する大臣たる内閣総理大臣又は国家行政組織法第五条第一項 に規定する各省大臣をいう。以下本章、次章及び第十四章において同じ。)又は都道府県知事その他の都道府県の執行機関は、その担任する事務に関し、普通地方公共団体に対し、普通地方公共団体の事務の運営その他の事項について適切と認める技術的な助言若しくは勧告をし、又は当該助言若しくは勧告をするため若しくは普通地方公共団体の事務の適正な処理に関する情報を提供するため必要な資料の提出を求めることができる。
  7. ^ 詳細は膨大であるため、公式議事録を参照。YouTubeなどにも質疑の動画が公開されている場合がある
  8. ^ 東京電力の施設だけでも、福島第二原発、6箇所の火力発電所などが被害を受けた。
  9. ^ なお、表立って同事故を理由としないものの、成田発着便を第三国経由とする航空会社も存在。

出典[編集]

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関連項目[編集]