日米貿易摩擦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

日米貿易摩擦(にちべいぼうえきまさつ)とは、第二次世界大戦敗戦後の日米関係において発生した貿易摩擦をはじめとする経済的要因によって発生した政治的軋轢のこと。

経緯[編集]

第二次世界大戦敗戦後、日本の経済成長と技術革新に裏打ちされた国際競争力の強化によって、アメリカに大量の日本製品が流入した。1960年代後半の繊維製品、1970年代後半の鉄鋼製品、1980年代のカラーテレビやVTRをはじめとする電化製品・自動車(ハイテク製品)などの輸出では、激しい貿易摩擦を引き起こした[1]

1965年以後日米間の貿易収支が逆転してアメリカの対日貿易が恒常的に赤字(日本から見ると黒字)になると、問題が一気に噴出した。

1972年に日米繊維協定(繊維製品)が締結され、続いて1977年に鉄鋼・カラーテレビにおいて日本による実質上の対米輸出自主規制が実施されたことによって一旦は収束した。

1980年代に入ると、今度はアメリカ車・農産物(米・牛肉・オレンジ)が舞台となり、更に1985年にアメリカの対日貿易赤字が500億ドルに達したことをきっかけに、日本の投資・金融・サービス市場の閉鎖性によってアメリカ企業が参入しにくいことが批判され、事実上日米間経済のほとんどの分野で摩擦が生じるようになった。さらに連動して、次に述べる「ハイテク摩擦」も目立つようになった。

日米ハイテク摩擦とは、後述するジャパンバッシングとも関連するが、以前からの経済的な摩擦(貿易摩擦)の背景の上に、半導体部品やその製品であるコンピュータ、航空宇宙などといったハイテク分野において日米間での衝突的な事象が多発したことを指す。具体的には、いくつかの分野では米国がスーパー301条の適用をちらつかせ、あるいは実際に適用し、日本製品が米国から締め出された。スーパーコンピュータについては日米スパコン貿易摩擦と呼ばれる。他にコンピュータ分野ではIBM産業スパイ事件など、両者の感情を逆撫でする事件が起きた。航空宇宙分野では、日米衛星調達合意による日本独自の人工衛星開発の抑制、F-2支援戦闘機の「共同開発」の押し付け(F-2 (航空機)#米議会による外圧を参照)などがあり、他にもミノルタハネウェル訴訟などの知財紛争、などがあった。

1985年、プラザ合意後も日本の貿易黒字経常黒字は減るどころか1986-1988年にかけて1985年に比べ増えていった[2]

1986年4月の「前川レポート」ではアメリカの要求にこたえて10年で430兆円の公共投資を中心とした財政支出(財政赤字)の拡大、民間投資を拡大させるための規制緩和の推進などを約束・実施した[3]

1989年以後日米構造協議が実施され、続いて1994年以後年次改革要望書が出されるようになった。だが、その一方で1990年代に入ると中国の急激な経済成長に伴う貿易摩擦と軍事的・政治的台頭がアメリカ側の注目の対象となり、ジャパンパッシングと呼ばれる現象も発生するようになった。

議論[編集]

ISバランス論とは、経常収支貯蓄投資バランスに等しいことから、相手国の経常収支を縮小させるため「国内投資(政府投資)を増やすべし」と要求する考え方である[4]。投資貯蓄バランス論が、財政赤字・投資を増やせ、貯蓄を減らせというアメリカの要求の裏づけとなっていた[5]

経済学者野口旭は「当時のアメリカ政府は、『貿易黒字』という字面だけを見て、貿易赤字を『損失』と捉え、『貿易黒字減らし』という無意味な要求を日本に行った」と指摘している[6]

ミルトン・フリードマンは「アメリカが日本の経済運営にあれこれ口を挟むべきではない。また、日本もアメリカの経済運営に口出しすべきではない。どちらも自分の問題に専念すべきである」と指摘していた[7]

キッシンジャーの下で働いていたリチャード・アレンによると、1972年のハワイ日米首脳会談では「リチャード・ニクソン大統領とキッシンジャーは繊維の話はせず安全保障の話ばかりしていた。P3CE-2Cを売り込んでいた。」と語っている。

参考文献[編集]

  • 榎本正敏「日米経済摩擦問題」(『国史大辞典 15』、吉川弘文館、1996年)

脚注[編集]

  1. ^ 三和総合研究所編 『30語でわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2000年、76頁。
  2. ^ 岩田規久男 『日本経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2005年、56頁。
  3. ^ 伊藤修 『日本の経済-歴史・現状・論点』 中央公論新社〈中公新書〉、2007年、114頁。
  4. ^ 高橋洋一「ニュースの深層」 「経常収支赤字で日本経済が危ない」は俗説!マスコミ報道に騙されるな現代ビジネス 2014年2月17日
  5. ^ 伊藤修 『日本の経済-歴史・現状・論点』 中央公論新社〈中公新書〉、2007年、117頁。
  6. ^ 野口旭 『ゼロからわかる経済の基礎』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、209頁。
  7. ^ ミルトン・フリードマン 「世界の機会拡大について語ろう」 〜「グローバルビジネス」1994年1月1日号掲載ダイヤモンド・オンライン 2011年8月1日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]