円高不況

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円高不況(えんだかふきょう)は、円相場の上昇(円高)に伴い日本国内の輸出産業や下請けなどその関連企業、あるいは輸入品と競合している産業が損害を被る結果発生する不況のことである。

メカニズム[編集]

円相場が円高に傾くと、日本国内における労働力などの生産要素の価格が国際的に見て高くなる。このコスト高になった結果、輸出財の競争力や収益力は低下することになり、輸出が減少して輸出企業やその下請けなど関連企業が打撃を受ける。一方で、輸入財は相対的に割安になるため国内生産の競合品より競争力が増し、国内生産を行っている企業の業績が悪化するとともに輸入が増加することとなる。輸出の減少と輸入の増加は純輸出を減少させ、GDPの縮小、すなわち景気の悪化を引き起こす。さらに、このような円高の問題を避けるために、企業の海外流出が活発化して長期的にも経済環境が悪化する。これらは貿易収支が赤字であるか黒字であるかによらないメカニズムであり、円高が問題となるのは日本が貿易黒字国であるためという考え方は誤りである。また、輸出企業そのものだけでなくその関連企業の業績も落ち込むので、輸出の規模が小さいから円高の影響も小さいと考えることも誤りである。加えて、実際の経済を分析する場合には、Jカーブ効果によって円高が起きた直後には貿易黒字の拡大が起きやすいことに注意が必要である[1]。貿易黒字が一旦は拡大した後に、円高による価格変化に対応して輸出入数量が調整されるのに従って貿易黒字は縮小していく。よって、円高直後の貿易黒字拡大を見て円高の悪影響を過小評価してはならない。なお、上記のメカニズムは不況という景気循環を捉えるために、完全雇用が常には成り立たない短期について述べたものであり、長期には先決的な総投資と総貯蓄の差によって経常収支は規定される(→貯蓄投資バランス)。そして、そのような経常収支を達成するように為替は決定される。

上記の純輸出減少の問題に加えて、比較優位の理論から示されるように、輸出産業には国内において相対的に生産性の高い産業がなり、輸入産業には相対的に生産性の低い産業がなるため、円高は生産性の高い輸出企業が不利に晒されて生産活動を縮小したり、さらにはそのような企業が海外に拠点を移すことを促すことから、より中長期的にも深刻な問題となりえる[2]

円高による悪影響が、生産要素の価格が国際的に見て高くなることに起因する帰結として、円高に強い企業の体制作りとは、生産効率向上による必要人員の削減や海外移転など、日本の生産要素の使用を抑制する体制を作り上げることを意味する。そのため、仮に企業が円高への耐性を強めたとしても雇用の減少などの国全体における問題は解決せず、景気の悪化を避けられるようになるわけでもない。企業努力によってはあくまで企業の問題が解決するだけであり、日本にとっての円高問題の根本的解決策とはならないことに注意が必要である。

歴史[編集]

対ドル為替レート(1950年以降)
実効為替レート(1970年以降)
数字が大きいほど円高
1970年代

変動相場制移行後最初の円高不況は1971年8月、ニクソン・ショック(ドル・ショック、ニクソン不況とも呼ばれる)の影響で引き起こされた。およそ4半世紀の間1ドル=360円の固定レートが使われていたため収支計算には勿論その固定レートが用いられていたが、スミソニアン協定により急なレートの変更(1ドル=308円)が日本の輸出産業に与えた打撃は大きく、赤字を計上する企業が続出した。その後1973年までの2年間は再び固定相場体制が採られたが、不安定かつ暫定的な体制であったため数次にわたる通貨危機が発生し、遂には完全に変動相場制に移行することとなった。これにより日本円は信用の低下していた米ドルに対して急速に切り上げられ、一時1ドル=260円台となり、再び輸出産業は大きな損害を被った。その後、1ドル=300円台にまで円安になったものの、1976年から1978年にかけて再び円高へ進行、1978年には1ドル=200円を切る状態となった。

1970年代後半・1980年代

1979年から、円安ドル高が進行している状態になり、1985年初頭には、1ドル=250円台となったが、ドル高による国際競争力の喪失を恐れたアメリカは、1985年G5を招集し、ニューヨークのプラザホテルにて会議を開き、諸国にドル安誘導を要請し各国はそれを承認した(プラザ合意)。1985年9月時点で1ドル=240円台で推移していた円相場は1985年末には1ドル=200円まで修正され、日本銀行による高目放置路線などの影響もあり、その後も一貫して円高ドル安状況が継続した[3]

1990年代前半付近

1989年には、円安傾向になったが、1990年から再び円高傾向となり、1994年には、1ドル=100円を突破、1995年4月19日には、瞬間的に79円25銭を記録した。1995~1996年は日本の円安期だった。円安はウォン高になる韓国の輸出企業に打撃を与え、韓国政府の経常収支が80億ドルの赤字から230億ドルの赤字への拡大を招いた[4]

2000年代後半

円高となったものの、その後は円安になり、1ドル=100円以上にまで推移し、1ドルが3桁円の状態が続いた。2004~2007年は日本の円安期だった。円安はウォン高になる韓国の輸出企業に打撃を与え、韓国政府の経常収支が2004年323億ドルの黒字から2008年の1-9月期に33億ドルの赤字への転換を招いた[5]。 しかし、2007年サブプライムローン問題などで、円高が進行し、1ドル=100円を再び突破した。その後も円高傾向は続き、2008年以降1ドル=80円台後半から90円台あたりで上下するようになった。円安方向へ進んでいた実効為替レートも再び円高方向へとシフトした。

2010年代

このように円高状態となったが、連邦準備制度理事会が金融緩和策などを実施したことや東日本大震災による円資金需要の強まりなどからより円高が進み、2011年3月17日には一時76円25銭をつけて最高値を更新した。1ドル=80円台前半あたりで上下するようになった、円高傾向は進んでいたが、アメリカの財政問題が浮上すると、さらに円高が進行し、1ドル=70円台後半あたりで上下するようになった。これらの円高により、日本の製造業は再び大きな影響を受けている。

アベノミクスによる緩和[編集]

アベノミクスによる金融緩による円高是正以降は、国内企業業績が回復するなど円高不況が緩和された。1ドル=80円台後半から一時は1ドル120円台にまで為替を変動させた。2015年には日本円が2013年初頭より対USドルで30%円安になったため、日本企業に製品価格を15%ほど引き下げる余力が生じるなど日本企業の価格競争力は大きく回復した。法人税減税・首都圏工場の規制撤廃・1ドル100円以上の為替レートなど円安政策等で日本を企業が生産しやすい環境にしたことで、円高時の2012年に海外工場を作った企業でさえも日本に生産工場をUターンして設備投資と雇用を国内で創出している。日本は事業がしやすいという認識が広がり、日本企業だけでなく外国企業による投資も増加した。 日本貿易振興機構が2016年11月から2017年1月まで2995社の日本企業を対象に調査した結果、15.3%である458社がここ3年以内に生産施設を日本に移転又は今後3年内に移転する予定だと答えるなどアベノミクスによる国内雇用増加を裏付けている。安倍内閣は東京圏に国際ビジネス特区、大阪など関西圏に国際医療・イノベーション特区など国家戦略特区に指定して規制緩和した。そのため、世界知識財産権協会が2011-2015年の地域別発明家の特許を調査した結果、「東京-横浜」が1位になった。大阪-神戸、名古屋なども10位内に入った。2016年には日本ベンチャー企業の資金調達額は初の2000億円を超えた。韓国経済新聞社は安倍内閣を日本経済が復活した理由だと評価している [6][7][8][9][10][11][12][13][14][15]

脚注[編集]

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  1. ^ 円高なのに輸出は増えて、自動車の生産台数も増えてる件。 : ひろゆき@オープンSNS
  2. ^ COLUMN-〔インサイト〕円高イコール交易条件改善は事実でない、輸出産業の受けた被害
  3. ^ これにより円高不況に陥ったが、名目長期金利の低下や公共事業の活発化を受けて、円高不況後はバブル景気へと突入した。
  4. ^ 韓国経済「日本円の呪い」…円安1年後、経常収支急減 2015年04月24日
  5. ^ 韓国経済「日本円の呪い」…円安1年後、経常収支急減 2015年04月24日
  6. ^ 韓経:<日本経済は走るのに韓国は…>企業が戻ってくる日本…海外に追い出される韓国 2017年09月25日
  7. ^ 円安に苦しんだ韓国輸出企業、ウォン安で反撃か(1) 2015年02月16日
  8. ^ 【社説】日本証券市場が活況…金の力でない企業構造改革結果だ 2015年02月24日
  9. ^ 円安効果でトヨタの営業利益が7年ぶりに過去最高、韓国自動車は… 2014年08月27日
  10. ^ 円安+基本技術×長期不況の教訓=日本の復活 2015年03月30日
  11. ^ 日本、都心地価上昇で消費も回復傾向…「アベノミクス」再点火(1) 2015年03月20
  12. ^ 【社説】日本経済の復活、韓国だけ知らずにいるのではないか 2015年04月22日
  13. ^ 日本造船業界が猛追撃…韓国が緊張(1) 2015年02月03日
  14. ^ 韓経:【社説】輸出が牽引する日本経済の予想以上の成長 2016年11月15日
  15. ^ 韓経:【社説】首都圏規制まで廃止した日本、経済復活には理由がある 2017年05月30日

関連項目[編集]