エルメス (ガンダムシリーズ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

エルメス (ELMETH) は、「ガンダムシリーズ」に登場する架空の兵器。有人操縦式のロボット兵器「モビルアーマー(MA)」の一つ。初出は、1979年に放映されたテレビアニメ機動戦士ガンダム』。

作中の軍事勢力の一つ「ジオン公国軍」の試作機で、「ニュータイプ」と呼ばれる特殊能力者の脳波を利用した操縦システム「サイコミュ」を搭載している。サイコミュで遠隔操作される無人ビーム砲端末「ビット」を多数装備し、多方向からの射撃で敵を撃破するオールレンジ攻撃を得意とする。1985年にテレビ放映された続編『機動戦士Ζガンダム』に登場する「モビルスーツ(MS、人型ロボットの一種)」「キュベレイ」をはじめ、後発のシリーズ作品群にも同様の攻撃手段を持つ兵器が多数登場する。

『機動戦士ガンダム』劇中ではニュータイプの少女「ララァ・スン」が搭乗し、ジオン軍人の「シャア・アズナブル」とともに主人公「アムロ・レイ」が所属する地球連邦軍と敵対する。

機体解説[編集]

諸元
エルメス
ELMETH
型式番号 MAN-08 (MAN-X8)
所属 ジオン公国
開発 フラナガン機関
全高 47.7m[1]
全長 85.4m[1]/38m[2]
本体重量 163.7t[1]
全備重量 291.8t[1]/180t[2]
装甲材質 超硬スチール合金
出力 14,200kw[1]
推力 645,200kg[1][3]
センサー
有効半径
245,000m[1]
最高速度 マッハ7.2[4]
武装 メガ粒子砲×2
ビット×10〜12
搭乗者 ララァ・スン
クスコ・アル

一年戦争末期、ジオン公国軍はニュータイプ専用機としてブラウ・ブロを開発したが、この機体は一般パイロットでも操縦可能であったため[5]、厳密には専用機とは言えなかった。続くエルメスは、サイコミュシステムを本格的に採用した完全なるニュータイプ専用機として、フラナガン博士らによって開発された。機体制御や火器管制はサイコミュでまかなえるため、コックピット内部は必要最低限の操縦機器のみで、そのほとんどはコンソール類となっている。また高Gによるパイロットへの負荷を軽減するため、高性能の緩衝装置が設けられている[6]

機体前面はパイロット保護のため厚い装甲板で覆われている。スラスター類は機体下部の左右エンジンユニットに3基ずつ設けられたバーニア・ノズルが確認できるのみである。これは耐弾性を向上させるためだともいわれ、腕部などのAMBAC作動肢を持たない本機は機体内部にジャイロを有し、これによって機体制御の補助を行う[6]

本体の武装は長距離射撃用メガ粒子砲が2門のみで、それ以外は「ビット」と呼ばれる遠隔操作式の無人ビーム砲端末の運用に特化している。 ブラウ・ブロやジオングなど同時期のニュータイプ専用機のオールレンジ攻撃が有線誘導式だったのに対し、本機はミノフスキー粒子格子の振動波をサイコミュで制御するミノフスキー通信によりビットを無線誘導し、長距離からの攻撃もしくは攻撃対象に対して予期せぬ方向からの攻撃が可能である。各ビットはビーム砲へのエネルギー供給用ジェネレーターを内蔵しており、全長は8.4メートル[7]と、後発の同系統装備に比べ大型である。推進と姿勢制御は1基のメインバーニアと無数の小型バーニアによっておこなわれ、高い機動性を発揮する。ビットにはモノアイが設けられ、捕捉した敵機の映像をサイコミュを介してパイロットに伝達する。ビットは本体の二つの後部円形ハッチから[8]10機[9]または十数機[8]搭載可能とされるが、劇中には格納および射出シーンはない。

当初は連邦軍の索敵圏外からビットでの長距離スタンドオフ攻撃を行なって大戦果をあげたが、パイロットに負担がかかりすぎることから長距離実戦運用投入は1回のみで終わり、フラナガン博士らの手でビットは短距離用に調整された(以降ガンダムシリーズ全編を通して、サイコミュ兵器によるスタンドオフ攻撃は行われていない)。その結果、本機のビット運用は自ら戦いながら操作に集中する必要が生じ、それはニュータイプパイロットといえども難事であったため、その間敵から本機を守る護衛機が必要となった(後述)。

3機が製造され、1号機はテスト中に暴走したビットの攻撃により自爆している[7]。2号機はララァ・スン少尉、3号機はクスコ・アル少尉にそれぞれ与えられ、実戦投入される[9][10]

本機はシステムの完成度の高さからのちのニュータイプ専用MS/MAの基礎となり、特にアクシズネオ・ジオン)が開発したキュベレイは事実上の後継機種である。

劇中での活躍[編集]

機動戦士ガンダム』ではソロモン攻略戦終了後の第38話 - 第41話に登場。第38話はテキサスコロニーで被弾したシャア専用ゲルググを回収する姿がアムロに目撃される。劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙(そら)編』では、ララァとシャアの会話からエルメスで回収したことが示唆されている[11]キシリア・ザビシャリア・ブルをエルメスのパイロットにすることを検討する[12]が、シャアにその意図はなく[13]、エルメスをララァ専用に調整させる。

第39話では、ソロモンに駐留している地球連邦軍艦艇に対し、長距離からビットをコントロールして攻撃。映像で確認できる部分だけでもマゼラン級戦艦1隻、サラミス級巡洋艦2隻、コロンブス級補給艦1隻を撃沈、マゼラン級戦艦1隻の艦橋を破壊し、ジムを1機撃墜する。この戦果をもって連邦軍からソロモンの亡霊とおそれられる。しかし、長距離のビット運用はララァを著しく疲労させるため、シャアはフラナガンと協議の上で疲労要素を取り除く[14]。この措置のため敵の射程圏内でビットをコントロールせねばならず、護衛が必須となる。

ソロモン宙域に停泊中のホワイトベースに、艦隊司令部から送られてきた観測データの画像でエルメスの姿を初めて見たミライ・ヤシマは、「チューリップだか尖んがり帽子みたいなの」と呼んだことから、アムロを含むホワイトベースのクルーは、エルメスを「尖んがり帽子」、ビットを「尖んがり帽子の付録」と呼称する。ほかの連邦軍将兵による呼称は不明。

第40話では、護衛のリック・ドム2機とともに出撃。サラミス級巡洋艦1隻を撃沈するが、護衛のバタシャム中尉が戦意を失って勝手に後退したため、エルメスはサラミスから反撃を受ける。ララァはビットのコントロールに集中できず[15]、大型の艦艇相手にビット攻撃がまったく命中しないという事態に陥る。ザンジバルからその状況を見ていたシャアがゲルググを操縦してエルメスを援護し、集中を取り戻したララァは残るサラミスの撃沈に成功。これ以降、シャアのゲルググのみが本機の護衛機となる。続く第13独立部隊との戦闘では、ガンダムに圧倒されるシャアの援護に回り、戦果はサラミス級2隻撃沈にとどまる。それでも1日に4隻の撃沈は快挙とされる[16]

第41話ではガンダムと再戦するが、ビットはアムロのニュータイプの勘(あるいはニュータイプ同士の共鳴)により動きを予測され次々に撃破される。シャアのゲルググが援護に駆けつけ共闘するが、ゲルググをかばった際にガンダムのビーム・サーベルがコクピットを直撃。機体はララァもろとも爆散し、アムロとシャアに大きな心の傷を残す。

なお、劇場版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』では、シャアの回想としてエルメス撃墜シーンがリメイクされている。

小説版『機動戦士ガンダム』では、ララァの搭乗機が撃墜されたのちにクスコ・アルの搭乗機として再登場する。こちらの機体は2号機とされ、メタリック・グリーンの塗装が施されている。なお、同作では通常型のほかに核弾頭搭載型のミサイルビットも用いられている。

名称と商業展開[編集]

発売されたプラモデルは、ファッションブランドである「エルメス」と名称が被り、著名表示の冒用となるおそれがあることから「ララァ・スン専用モビルアーマー」という名称に変更され[17](プラモデル初版は「エルメス」の名称で流通した)、以後フィギュアなどの商品化の際には同名称で販売されている。また、小説版やゲームなどでララァ・スン以外のパイロットが搭乗することもあることから、「BB戦士」シリーズのプラモデルは「NT専用モビルアーマー」という名称が使われている。

また、2009年12月16日発売の安室奈美恵のアルバム『PAST < FUTURE』収録曲「Defend Love」のPVに、ピンク色の本機が登場する。搭乗者はアニメーションキャラクター化された安室本人で、『機動戦士ガンダム』とのコラボレーションである。アニメーションパートはサンライズが制作した。

2013年に放送された『ガンダムビルドファイターズ』第16話ではレイジが「ララァ・スン専用モビルアーマー」の旧キットを手に取った際、イオリ・タケシが「それには色々と事情があるんだ」と商標問題をほのめかした。

バリエーション[編集]

2号機
小説版『機動戦士ガンダム』において、クスコ・アルが搭乗した機体が「2号機」となっている。メタリック・グリーンの塗装が施されている。
3号機
モビルスーツバリエーション』においては、クスコ・アルが搭乗した機体が「3号機」となっている。
ゲーム『SDガンダム GGENERATION モノアイガンダムズ』及び『SDガンダム GGENERATION DS』において、一年戦争時にフラナガン機関に所属していた12歳のハマーン・カーンが搭乗している。機体色はキュベレイと同じ白。なお、初出の『SDガンダム GGENERATION ギャザービート』では2号機とされている。
4号機
ゲーム『SDガンダム GGENERATION モノアイガンダムズ』及び『SDガンダム GGENERATION DS』に登場。
ジオン軍の強化人間セレイン・イクスペリが搭乗。システム・セイレーネ搭載スペースが準備されているが、一年戦争中に完成しなかったため未実装。ア・バオア・クーでの戦闘後、部隊を売り渡したアイン・レヴィからシグ・ウェドナーをかばって撃墜される。機体色は赤。
安室奈美恵仕様機
安室奈美恵のアルバム『PAST < FUTURE』の収録曲「Defend Love」のPVに登場する機体。機体色はピンク。

ディアブロ[編集]

『RPGマガジングレイト Vol.2』[18]掲載TRPGリプレイ「D-PROTO」に登場(型式番号:X-MAN)。

デラーズ・フリートの本拠地「茨の園」内のニュータイプ研究機関「NTR部隊」で開発された人工ニュータイプ用のMA。射程の異なるA型とB型の2種類のビットを2機ずつ搭載するが、内蔵ではなく外装に取り付けられており、本来のビット搭載スペースにはミサイル地雷ポッドが内蔵されている。メガ粒子砲はビームバルカンに換装され、前方に移設されている。機体色は黒。

ヘリオス[編集]

雑誌企画・漫画『A.O.Ζ Re-Boot ガンダム・インレ -くろうさぎのみた夢-』に登場(型式番号:MAN-08S)。

火星のジオン軍残党組織の一つである火星独立ジオン軍(ジオンマーズ)が、エルメスの後継機として開発したニュータイプ専用MA。開発は元フラナガン機関のスタッフが主導している。機体は中央の胴体部と左右の独立可動式バインダーから構成され、胴体部にはコックピットやモノアイ、メガ粒子砲やサイコミュとその起倒式送受信アンテナを、バインダーには拡散メガ粒子砲やミサイル、ビット・コンテナといった各種武装のほかに推進器とIフィールドを装備し、近距離戦闘が不得手というエルメスの欠点の解消を試みている。巡航形態では、形状はエルメスに似たものになる。

設定のみの存在であり、作中にはこの状態では登場しない。設定では、ジオン残党組織「レジオン」とジオンマーズの間での「レジオン建国戦争」初期に投入されたが、レジオンの「インレの翼」に敗北。その際にパイロットを務めていたニュータイプは戦死する。その後、後述のヘリオス・マリナーに改造される。

ヘリオス・マリナー[編集]

雑誌企画・漫画『A.O.Ζ Re-Boot ガンダム・インレ -くろうさぎのみた夢-』に登場(型式番号:MAN-08S-M)。

レジオンが制空権・制宙権を得た後にジオンマーズが秘匿していたヘリオスを、レジオンからのガンダムTR-6[インレ]奪回を目的として宇宙世紀0091年に行われた「輝ける星」作戦に際して改造した水中戦用MA。機体各部の水密化が行われたほか、バインダーの推進器が水中用の電磁流体誘導推進器(MHD)に換装された。また、機体塗装もエルメス同様の緑色だったヘリオスのものから紺色に変更されている。乗員は2名であり、「輝ける星」作戦では、ジオンマーズと同盟を組んだティターンズ残党の強化人間をパイロットとしている。

サンド・アングラー級潜地空母「フォートアパッチ」を母艦として、「輝ける星」作戦の主目標である、インレの建造が進められているレジオンの氷河地下秘密基地攻撃に向かう。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g 『ENTERTAINMENT BIBLE .1 機動戦士ガンダム MS大図鑑 PART.1 一年戦争編』(バンダイ、1989年)
  2. ^ a b 『テレビマガジン』1981年2月号付録『機動戦士ガンダム大事典』上巻(講談社)
  3. ^ なお、『GUNDAM CENTURY』では274.2t×6としており、これによれば総推力は1,645,200kgとなる。
  4. ^ 『講談社ポケット百科シリーズ15 ロボット大全集1 機動戦士ガンダム』(1981年)
  5. ^ テレビ版第33話では、シムス・アル・バハロフ中尉やコワル少尉ら一般兵によって運用されている。
  6. ^ a b 『機動戦士ガンダム モビルスーツバリエーション(2) ジオン軍MS・MA編』(講談社、1984年)150頁。
  7. ^ a b 『GUNDAM CENTURY 宇宙駆ける戦士達』(みのり書房、1981年)56頁。
  8. ^ a b 『機動戦士ガンダム 記録記録5』日本サンライズ、1980年10月、158頁。
  9. ^ a b 『模型情報・別冊 MSバリエーション・ハンドブック2』(バンダイ、1983年)19頁。
  10. ^ ただし「クスコ・アルの実戦参加」の記述は映像版と展開が異なる小説版に由来するもので、『GUNDAM OFFICIALS』では「信憑性に欠ける」「実在は疑わしい」とされている。
  11. ^ ゲルググを底面に吊り下げコロニー内を飛行するエルメスを見上げるガンキャノン、というシーンも新規に作画されたが、結局没になっている。『ストーリーブック 機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙』講談社、1982年5月、114頁より。
  12. ^ テレビ版第39話。キシリアとジオン軍高級将校の会話より。
  13. ^ テレビ版第39話。シャリアとブラウ・ブロ出撃直後の、シャアとララァの会話より。
  14. ^ テレビ版第39話。シャリア到着直前の、シャアとフラナガンの会話より。
  15. ^ テレビ版第40話の戦闘。ララァは「援護がなければ集中できない」と明言する。
  16. ^ テレビ版第40話、エンディング直前のナレーション。
  17. ^ 書籍「機動戦士ガンダムの常識 - 一年戦争編」より。
  18. ^ 『RPGマガジン9月号別冊 RPGマガジングレイト Vol.2』(ホビージャパン、1998年)

関連項目[編集]