ジオン共和国

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ジオン共和国(ジオンきょうわこく、Republic of Zeon)は、宇宙世紀を舞台とする『ガンダムシリーズ』に登場する架空の国家である。「ジオン共和国」と称する国家はジオン公国の前後に存在し、前者はジオン公国の前身となった国であり[1]、後者は一年戦争最終盤においてザビ家の主要人物が死亡したことにより、ジオン公国のダルシア・バハロ首相を筆頭とする内閣が公王制を廃止して共和制に移行した[2]際の国号である。

独立[編集]

人類が、増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって半世紀が過ぎ、地球の周りには数多くの宇宙都市が誕生していた。

当初は地球上の人口増加や環境破壊の対策として歓迎されていた宇宙移民も、人口や環境問題が一応の安定を見せるにつれ、やがて中止されていく。地球連邦政府の中枢は依然、地球に留まったままであり、地球中心の政策が改められることはなかった。その結果、連邦政府関係者や資産家など連邦政府に強いコネをもった人々の多くは、宇宙よりも生活環境が安定して資源が豊富な地球に居住したまま、特権階級化していく。このような情勢の中、地球に残る一部の特権階級と宇宙へ半ば無理矢理移住させられた移民との間には軋轢が生まれていく。宇宙移民であるスペースノイドの中には、地球からの一方的な政策や差別的な現状を一向に改める気配のない地球連邦政府に対する不満が蓄積していた(特にスペースコロニー住民には、その建造費の返済や維持費を名目にコロニー公社を通じて重税がかけられ、これも不満を高める一因となった)。

こうした中、地球連邦議会の評議員ジオン・ズム・ダイクンコントリズムを提唱するが、議会で孤立して現地活動による成功を目指し、宇宙都市の1つであるスペースコロニー群サイド3に移民する。また、ダイクンにより連邦の支配から独立してコロニー国家の可能性を示された民衆が信奉するコントリズムは、0040年代から急速に広まりつつあった「エレズム」と融合し、「ジオニズム」と呼ばれるようになった。

宇宙世紀0053年、ダイクンはサイド3の首相[3]に任命される。0058年9月14日、サイド3は独立を宣言してジオン共和国を樹立する[4]。これに対して連邦政府は経済制裁[5]を行い、治安維持のための宇宙軍を設立した[6]。これに対し、国防軍を発足させたジオン共和国は武力衝突も辞さない構えであったが、当のダイクンはあくまで連邦政府との話し合いで宇宙移民の国家を認めさせる考えであり、けっして武力を用いての独立は望んでいなかったと言われている。

ダイクン暗殺[編集]

しかし、0067年にジオン・ダイクンが提出したコロニー自治権整備法案を連邦政府が廃案としたため、ダイクンの政治的決着は挫折を余儀なくされてしまう。

これにより、あくまで政治的決着を模索するダイクン派とその側近であったデギン・ソド・ザビとの確執が表面化する。議会内部もダイクン派とザビ派に別れて対立していく。双方は互いに流血のテロを日常的に繰りかえすようになった[7]

その最中の0068年、ダイクンが議会の演説中に心臓発作で急死する。一説にはザビ家の謀殺説も浮上しているが真相は不明である。後継人としてデギンが首相に選ばれた。この後、デギン・ザビの次男サスロ・ザビがテロによって死亡、ドズル・ザビが負傷するという事件が起こり、ザビ派によってダイクン派のテロであると報じられた。

ダイクン派は窮地に追い込まれ、ザビ派に鞍替えする者や、国外に脱出する者が相次いだ。ダイクン派の領袖であるジンバ・ラルは徹底抗戦の構えをみせたが、ダイクンの二人の遺児と共に地球へ亡命し、二人を知人であるテアボロ・マスの養子とした。二人の名はキャスバル・レム・ダイクン(後のシャア・アズナブル)とアルテイシア・ソム・ダイクン(同セイラ・マス)である。

ジオン公国成立[編集]

デギンは実権を握ると反対派を一掃して0069年8月15日に共和制を廃止し、公王制(君主制)への移行を宣言した。権力を手中に収めたザビ家はあくまで武力による連邦政府からの独立を目指し、軍備を大拡張する。そして0079年1月、ジオン独立戦争(一年戦争)を開始した。しかしこの戦争は国力に勝る連邦が勝利し、最終局面においてザビ家は滅亡。ジオン公国は実質的な指導者が不在となったため、終戦直前に共和制に移行して国号をジオン共和国に戻した。0080年1月、連邦とジオン共和国との間に正式に終戦協定が結ばれ、一年戦争は終結した。

アニメ『機動戦士ガンダム』は、一年戦争の終盤における3か月あまりの物語である。

一年戦争終結後[編集]

地球連邦政府は、サイド3のジオン本国がほぼ無傷であり、月面都市グラナダにも旧公国軍戦力が温存されていることを考慮し、それらとの衝突を避けるためにジオン共和国の自治権を認めた[8]。また多くの者が旧公国残党として共和国体制化から離脱した後も、多額の戦時債務を抱えたサイド3の併合を行えば、自身も財政的危機状態にある連邦にサイド3の債務を肩代わりすることは耐えられないと判断したことも、併合が見送られた原因とされる[9]

連邦は、一年戦争におけるジオン公国の戦争責任を全てザビ家に帰結させ、ジオン共和国には問わなかった(その代わり復興支援も行わなかった[10])。そのようにして成立したジオン共和国は、主に旧公国残党から連邦のスペースノイドに対する懐柔としての傀儡政権[11]と見られることが多く、再建はほとんどの旧公国残党から歓迎されなかった。ギレン派の多いデラーズ・フリートは特にその傾向が強く、OVA版『0083』の劇中においてエギーユ・デラーズが自身の決起演説の中で「ジオン共和国を騙る売国奴」と言い切っている。また、『GUNDAM LEGACY』ではジオン残党軍によるテロの標的ともなった[12]。 翌0081年10月には両国の相互撤兵が終了している[13]

その後も旧公国の残党勢力の蜂起は続くが、ジオン共和国として関わった形跡はない。また共和国体制に遷ってからのサイド3において市民が旧公国残党に呼応したり反乱を起こした様子もない。

ジオン共和国は連邦政府の要望によって、旧公国の技術・資料や人員をジオニック社等の株式売却という形で提供している。この際に連邦とアナハイム・エレクトロニクス社との株式取得競争により、多額の資金を手に入れた共和国は債務を返済。被害の少なかったサイドでもある共和国は結果として、最も早く復興を遂げたサイドとして地球圏で重要な地位を占めることになる[9]

グリプス戦役ではティターンズの要請により、チベ改ムサイ改を中心とした機動艦隊(共和国軍)を出動させている[14]。これらについては旧公国勢力を孤立させる為のアピールに過ぎないとされる[15]

0088年の上半期、グリプス戦役末期から第一次ネオ・ジオン抗争初期にかけて、サイド3は他のコロニーと同様、ネオ・ジオンによって制圧されてしまう。さらに同年11月、連邦政府はサイド3をネオ・ジオンに「譲渡」する[16]。『機動戦士ガンダムΖΖ』の作中ではジオン共和国の政府や議会がこれにどう対応したか、ネオ・ジオンによる統治体制がどのようなものであったかは描写されておらず、わずかに観光コロニー『タイガーバウム』の総監スタンパ・ハロイが個人的にハマーン・カーンに協力したこと、資源小惑星『キケロ』の労働者たちがやはり個人的にハマーンに敵対したことが描写されるのみである。12月から翌年1月にかけて、ハマーンとグレミー・トトの対立からネオ・ジオンが内紛を起こし、重要コロニー「コア3」が破壊される。最終的にはネオ・ジオンの自滅後、連邦・エゥーゴ艦隊によって解放されている[17]

第二次ネオ・ジオン抗争時には、新たにネオ・ジオン(前述の同名組織とは別組織)がシャア・アズナブルによって組織されたが、このネオ・ジオンはスウィート・ウォーターを占拠し領土とした為、ジオン共和国とは関わっていない。ジオンの名を持つ国家と軍が並行して別個に存在していたことになる。

小説『機動戦士ガンダムUC』では、0096年の第三次ネオ・ジオン抗争ともいうべきラプラス事件において、シャア・アズナブル亡き後のネオ・ジオン残党(通称「袖付き」)の後援をダルシア・バハロ元首相の長子であるモナハン・バハロ国防大臣が行っていた事実もあり、国防軍[18]内には国粋主義的会派なども存在していた。モナハン・バハロは傀儡政権に堕した共和国に完全な独立をもたらしたいと画策していたようであるが、ネオ・ジオン残党の壊滅により水泡に帰した[19]

サイド共栄圏構想[編集]

発案者はジオン共和国国防大臣モナハン・バハロ国防大臣。小説、アニメ作品『機動戦士ガンダムUC』で登場する架空の構想。

スペースノイドが欲しているのは自治権の確立であるが、連邦政府はこれを認めた瞬間に主従が逆転していることを知っているので、決して認めようとはしなかった。なぜ主従が逆転してしまうのかというと、宇宙世紀0096年の地球圏の生活は、エネルギー、食糧、経済活動そのものも7つのサイドと月があるからこそ回っていて、地球という惑星単体ではもはや20億のアースノイドの口も賄えないのが実情だった[20]。対してスペースノイドは地球を切り離しても十分に自活することが出来る。この事実をジオン・ダイクンは宇宙世紀0052年にサイド3に移住しコントリズムを実践することで証明してみせたのだが[21]、宇宙移民独立運動においては武器として活用しなかった。その事をフル・フロンタルは、ダイクンは優れた思想家ではあっても政治家でなかったと後世で評価している[20]。ジオンの理念を捻じ曲げて独立戦争に利用したザビ家にしても二度に渡るネオ・ジオン戦争にしても同様で、自分達の存在を認めさせるという発想を捨てない限り連邦との戦いに勝利はないのである。

そこでモナハンは、月と7つのサイドの連携を強化し中央を間引きした経済圏を確立したサイド共栄圏の建設を画策する。各サイドが経済協定を結び地球を排斥すれば地球は経済的に何の価値もない田舎になり果て連邦政府も立ち行かなることが見込まれた。そしてサイド共栄圏のまとめ役たりえるのは、連邦の傀儡ではあるが曲がりなりにも認められた自治権を有するジオン共和国であると考えた。しかし問題は、ジオン共和国の自治権の返還期限が4年後に迫っているという事だった。共和国が元のサイド3に戻り、地方自治体以上の活動が許されぬとなったらサイド共栄圏へ至る流れも生まれなくなるからである。そんな時にモナハンがスポンサーである袖付きに届いたのが「ラプラスの箱」を譲渡するというビスト財団からの申し出だった[22]。モナハンは、ラプラスの箱を手にさえすれば時間が手に入るので、連邦を脅し共和国の解体を引き延ばした上でサイド共栄圏を作る暇を稼ごうとした。サイド共栄圏の話をフロンタルから聞かされたミネバは、連邦を蚊帳の外に置いたサイド共栄圏の構築により変わろうとしない者に変われと要求するより無視してしまえばいいという発想は、人類の革新を夢みたジオン・ダイクンの理想からは遠く、地球を人の住めない星にして人類を残らず宇宙へ上げようとしたシャアの狂気、熱情からも程遠いと否定した。また、サイド共栄圏が実現した時にアースノイドは自分達だけで経済を賄うために地球の再開発を加速させる、西暦の時代の再現が起こるだろうと問題提議もした。貧困の中で育つことになる新しい世代がやがてはスペースノイドへの仕返しを目論む事、かつてジオンが一年戦争を引き起こしたように調和も革新もなく弱者と強者が立場を入れ替えながら続く未来をミネバは断固として受け入れることを拒んだ。しかし、自らを注がれた人の総意に従って行動する器だと規定するフロンタルは全人類を生かし続けるために行動し続けるだけだと言った[20]

ミネバとフロンタルの会話を聞いていたバナージ・リンクスは、フロンタルの語る言葉は自分達の今後を語っているのに他人事のような冷たさを感じた。ユニコーンガンダムが大気圏突入時にネェル・アーガマガランシェールを繋いだ時に、機体を包み込んだあの光は自分が知っている皆の思いが重なり合ったような温かさを感じあのような可能性が人にあれば何か変わるのではないかと期待した。しかし、フロンタルも第二次ネオ・ジオン抗争時にもっと大きな光を見ていた。サイコフレームを媒介にして恐らくは地球圏の全人類の無意識を集積して物理的パワーに転化したのであろう光、小惑星アクシズを押し返したサイコ・フィールドいわゆるアクシズ・ショックである。だがそれほどの可能性が示されても人は変わらなかった、現状を維持するためなら可能性さえ葬るのが人間であり、我々はその現実の中で平和と安定を模索していくしかないとフロンタルは語り、最後にバナージの言う可能性というやつは、争いを引き起こす毒になることもあるのだと吐き捨てた。そんなフロンタルを見てミネバは、自分の知っているシャア・アズナブルは本当に死んだのだと確信した[20]

自治権放棄[編集]

「宇宙世紀0100年~ 連邦軍、ジオン共和国の自治権放棄をもって、戦乱の消滅を宣言。」[23]

漫画『機動戦士ガンダム ムーンクライシス』では、『機動戦士ガンダムUC』の設定とは異なるが、宇宙世紀0099年に起きた事件の責任を取る形で、地球連邦代表大統領レイニー・ゴールドマンがサイド3のジオン戦役者慰霊塔において、連邦認知下のジオン共和国自治権を放棄したことが描かれている。

その後[編集]

宇宙世紀0105年を舞台とした漫画『機動戦士ガンダム デイアフタートゥモロー ―カイ・シデンのメモリーより―』では、ジオン共和国の消滅後については詳しく語られていないが、ズム・シティに「一年戦争記念館」が建設され、「ホワイトベース展」が開催されていることと共に地球連邦に対する反感も一部民衆の中には根強く残っていることが描かれている。

宇宙世紀0153年を舞台とした漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』ではサイド3が宇宙戦国時代という歴史の流れから取り残されることで、皮肉にも平和が保たれている。また、公国の首都であったズム・シティが置かれていたコロニーが、この時点では片田舎のコロニーとなっていることが判明している。 宇宙戦国時代に至るまでサイド3がMS開発を凍結し続けた結果、かつて隆盛を極めた重工業分野は衰退したが、情報通信分野は長足の進歩を遂げ、高校生がクラブ活動でAIを組めるまでになっている。

ザンスカール戦争が終結し、16年が過ぎた宇宙世紀0169年を舞台とした漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』では、戦乱による連邦の弱体化によって地球圏は荒廃し、MSの新規開発・生産はおろか既存の機体の修復やコロニーの維持も難しいほど技術力が低下し、戦乱から取り残され事で平和が保たれていたサイド3も例外ではなく、サイド3は「ザビ・ジオン」、「ハイ・ジオン」など、ジオンの後継を名乗る4つの勢力が乱立し、それぞれが対立しあう様相を呈し、技術力の低下や独裁政治による生活環境の悪化で、住民も疲弊している状況になっている。

脚注[編集]

  1. ^ 『機動戦士ガンダムΖΖ データコレクション⑥』P77より。
  2. ^ 『機動戦士ガンダム大事典』111ページ。
  3. ^ 漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では議長。
  4. ^ 『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』でシャアの台詞に「ジオンの名を使った」とあることから、ジオン・ズム・ダイクンが首相である時代は「ムンゾ自治共和国」(『THE ORIGIN』)または「サイド3共和国」(講談社『機動戦士ガンダム モビルスーツバリエーション』)であったことになる。
  5. ^ バルト政策(講談社『MSV』)
  6. ^ 書籍『機動戦士ガンダム 戦略戦術大図鑑 一年戦争全記録』より。
  7. ^ 書籍『機動戦士ガンダム ジオン新報―秘匿された記録』より。
  8. ^ この時のジオン軍の戦力は、ア・バオア・クー戦を終えた連邦軍の残存戦力を上回っており、後続の戦力を合わせても無傷ではいられないことが解っていた。この戦いを実施することは、両国にとって国家維持の限界点を超えることになるという判断から早期講和が行われた(講談社『MSV3 連邦編』)。
  9. ^ a b 機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』7巻
  10. ^ サイド3は軍事偏重によって経済が悪化しているだけで、軍事費の支出が平時に戻れば自然回復することは当然の帰結であり、また連邦側こそ国土が荒廃して復興支援が必要な「敗戦国同然」の状態であった(講談社『MSV3 連邦編』)。
  11. ^ 講談社『MSV』には、「自由と独立」という表現があり、傀儡政権という表現と食い違う。公国政府が連邦軍によって解体され共和国政府が樹立させられたのではなく、ザビ家滅亡後に自ら共和制に復帰して連邦との間に終戦協定やグラナダ条約を締結している。
  12. ^ 夏元雅人 (2009). GUNDAM LEGACY 3. 角川書店. p. 43-220頁. ISBN 978-4-04-715181-9. 
  13. ^ 講談社『MSV 3 連邦軍編』より。
  14. ^ TVアニメ『機動戦士Ζガンダム』より。
  15. ^ 漫画『機動戦士ガンダム 光芒のア・バオア・クー』184ページより。
  16. ^ サンライズ公式年表による。
  17. ^ 再占領とする資料もある。
  18. ^ 小説『機動戦士ガンダムUC』では、共和国軍は一度解体され、連邦主導の下に再結成されたとする記述がある。
  19. ^ ただし、OVA版ではこれらジオン共和国に関する描写は省かれている。
  20. ^ a b c d 『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』 第16話「サイド共栄圏」
  21. ^ 『総解説ガンダム事典Ver.1.5』358ページ
  22. ^ カーディアス・ビストが袖付きの計画を知っていたかは定かでないが、時期的に見て共和国の解体で連邦体制が硬直するのを嫌って行動したのだと、フロンタルは推測していた。
  23. ^ 『機動戦士ガンダムシルエットフォーミュラ91』8ページ記載「宇宙世紀公式年表 GUNDAM OFFICIAL HISTORY」より