ア・バオア・クー

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ア・バオア・クーA BAOA QU)は、アニメ機動戦士ガンダム』『機動戦士Ζガンダム』などに登場する、架空宇宙要塞

元々はルナツーソロモンと同様、資源採掘用にアステロイド・ベルトから運ばれ、ラグランジュポイントのL2に配置された小惑星だったが、一年戦争前にジオン公国の手によってさらにもう1つの小惑星と結合され、半年後に宇宙要塞化工事が完了した。円盤状と錘状を結合させた、キノコとも開いた傘ともつかぬ独特の形状を成す[1]

一年戦争[編集]

宇宙世紀0079年の一年戦争時には、ソロモンやグラナダとともにジオン公国の本国であるサイド3を守る重要拠点の一つである。

本来の目的である宇宙要塞として機能した他、内部に工廠を有して一年戦争末期にはモビルスーツモビルアーマーなどの生産が行われた[1]

地球連邦軍は星一号作戦による攻略目標を本要塞とした。第一大隊の進軍中にソーラ・レイの攻撃によって全艦隊の約30パーセントを失う大損害を受け、さらに最前線の最高指揮官であるレビル将軍を失ったものの、本要塞の攻略を強行した。これにより0079年12月31日から翌日にかけ、地球連邦軍の宇宙艦隊とジオン公国総帥ギレン・ザビ、その妹キシリア・ザビ少将の指揮するジオン軍要塞守備隊との間で大規模戦闘が発生、これは両者の総力戦となり、本要塞は一年戦争最後の戦いの舞台となった。

漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、ジオン軍のMS開発試験場として要塞化される前の姿が登場している。また、ジオン公国宇宙総軍司令部が置かれていた。

ア・バオア・クー攻略戦[編集]

漫画『機動戦士ガンダム 光芒のア・バオア・クー』では、本文中と異なる時系列が見られる[2]

序章[編集]

0079年12月31日0時00分、地球連邦軍艦隊上層部は星一号作戦の実施を決定。ア・バオア・クー攻略を強行した。

同日1時17分、ア・バオア・クーではギレンによる出陣演説が行われ、ジオン軍将兵の士気が頂点に達していた。この後ギレンは、妹のキシリアと共に要塞の司令室で直接指揮を執ることとなる。

ア・バオア・クーは他の要塞とは違い、要塞を傘の部分の上から見下ろした時の周囲を4つの防空管制エリアに区分した防衛システムを採用しており、モビルスーツ隊等のエリア配属・防衛管制を行っていた上、この戦いでは、重要エリアの死角区域にドロス級大型空母が配備されていた。

  • Nフィールド … ジオン公国本土(サイド3)を臨むエリア。ドロスが配備された。
  • Eフィールド … の裏側を臨むエリア。カスペン戦闘大隊(ヨーツンヘイム)が配備された[3]
  • Wフィールド … Eフィールドの反対方面を臨むエリア。ストーリーに出なかったので詳細は不明。『ガンダムフロント東京』の展示ではグワジン級が1隻配備されたのみとされている。
  • Sフィールド … 地球を臨むエリア。ドロス級「ドロワ」が配備された。

各フィールドの名称は東西南北の方位に基づいている(太陽の方向を南としている)[1]

しかし最終決戦にもかかわらず、正規の兵員不足により十分な補充が行えなかったため、練度不足の学徒動員兵をもって数を合わせる有様であった[1]

同日5時00分、地球連邦軍は残存部隊の再編成を完了し、ここに一年戦争最後の戦いの幕が切って落とされようとしていた。

  • 漫画『光芒のア・バオア・クー』ではギレンの演説は9時00分、連邦軍の艦隊再編は11時00分としている。

作戦開始[編集]

地球連邦軍は、ソーラ・レイの被害を受けなかった第二、第三大隊をジオン公国本土を臨むNフィールドへ、被害を受けた第一大隊とホワイトベースをルザル艦隊として地球を臨むSフィールドに向かわせた。Eフィールドにも別動隊が向かった。Eフィールドにおける戦力比は連邦6、ジオン1であった[4]

戦いは、0079年12月31日8時10分、地球連邦軍のパブリク隊の突入から開始された。

これに対してジオン軍はギレンとキシリアが自ら指揮を執った。当初ギレンは連邦軍第二、第三大隊を主力と判断し、Sフィールドの艦艇の半数をNフィールドに投入するなどして戦力を集中させると共に、的確な防衛管制でパブリク隊を撃退し、ドロス級大型空母を全面的に前へ出してきた。間もなく連邦第一大隊が手薄になったSフィールドから突撃するが、キシリアはこれに対応するべくジオングを含む部隊を投入する。

  • 漫画『光芒のア・バオア・クー』では13時20分に作戦開始としている。

ギレン総帥の「戦死」[編集]

当初ジオン軍ではNフィールドへの連邦軍第二、第三大隊の攻撃を退けて優位に立っており、またSフィールドの残った戦力でも戦局を支えるには十分と思われたことで、勝利の兆しが見えたとする余裕すらギレンには見られた。

しかし、戦闘の最中にキシリアはギレンに対し、「父殺しの罪[5]」を犯したとして銃口を向けた。ギレンは真に受けず軽笑してあしらったが、0079年12月31日9時25分、ギレンもキシリアに誅殺された。現場を目撃した司令室の士官たちは動揺し、重い空気が流れていたが、キシリアの「父殺しの罪は総帥であっても免除されない。異議は軍法会議において聴く」の言葉、トワニング准将による、「ギレン総帥は名誉の戦死をされた」という一言は、その場の沈黙を鎮め、キシリアに指揮権を引き継がせることになった。

しかし、ギレンの殺害からキシリアに指揮権が引き継がれるまでの十数分間において命令が出なかったことから、ジオン軍要塞守備隊の指揮系統に混乱を招き、地球連邦軍の攻撃に対して一瞬の隙を作ることになってしまった。

この間隙を突いた地球連邦軍の攻撃は熾烈なものがあったようで、同日9時40分にNフィールドのドロス級大型空母「ドロス」が撃沈され(キシリアが指揮権を掌握するのはドロス轟沈後である)、さらに同日10時10分にはSフィールドのドロスの同型艦である「ドロワ」も撃沈された。防衛の死角を埋めるドロス級大型空母2隻両方を失ったジオン軍要塞守備隊は、急激に防衛力を削られていった。

そして、地球連邦軍はSフィールドのガンダムをはじめとするWB隊の奮戦もあって要塞内部への侵入に成功。前後してNフィールドにもドロス隊を撃破した連邦軍MS部隊が取り付き始め、ジオン軍の旗色は両方面で一気に悪くなった。予備戦力に余裕のないジオン軍は崩れはじめ、練度不足の学徒動員兵の投入だけでは建て直しが不可能となった。

また、最も安全な場所にいるはずのギレン総帥が戦死したという発表に疑問を持ち、キシリア少将に殺害されたことを悟ったエギーユ・デラーズ大佐(当時)が、自らの部隊を集結させて暗礁宙域に向けて移動を始めた他、もはやこれまでと判断したジオン軍の部隊が小惑星アクシズに向けて戦場から離脱し始める等、戦力は大幅に減少した。

その頃、戦いは地球連邦軍MS隊及び着岸した艦艇から突入を開始した陸戦隊が要塞内部へ侵入したことにより、要塞内部での乱戦となり、あちこちで設備が損傷し始めていた。ジオング撃墜の報告とともにNフィールド、Sフィールドともに応答なしという報告が入るなど、連邦軍の優位はほぼ確立した。

ここに至ってキシリアは敗色が濃厚になったと判断し、ザンジバル級機動巡洋艦で脱出を試みたが、12時05分に翻意した配下のシャア・アズナブル大佐に殺害される。直後に地球連邦軍のマゼラン級戦艦およびサラミス級巡洋艦数隻の集中射撃[6]によってザンジバルも撃沈された。こうしてジオン公国は指導者たるザビ家の主要メンバー全員が死亡した。

12時15分には、戦闘の影響によりミサイル工場から火災が発生。電力供給が一部区画を除いて停止して指揮系統が完全に麻痺した他、空調設備も働かなくなり、要塞としての機能に致命的な影響を及ぼし始めた。

ア・バオア・クー防衛司令部から戦闘中の各艦艇に指揮系統の機能停止と今後の自由行動を指示する命令が下ったのはこの頃と思われる。これは事実上の停戦命令(キシリア少将は生前、自身の脱出から15分後に降伏を打診することをトワニングに命じていた)であったが、残存艦艇の多くが未だ維持されていたEフィールドからの突囲撤退を試みたために、連邦軍の攻撃はその後もしばらく停止されなかった。

  • 漫画『光芒のア・バオア・クー』では、ギレン死亡を21時30分、ドロス艦隊撃破はその前としている。なお、ホワイトベースのクルーが敵の動きが緩んだと感じたのは22時15分、キシリアのザンジバル撃沈は23時20分としている。

終戦[編集]

0079年12月31日18時00分、ア・バオア・クーでの戦闘が続く中、ジオン公国のダルシア・バハロ首相は、デギン公王から生前に受けていた内密の依頼によってジオン公国を共和制に移行し、サイド6を通じて地球連邦政府へ終戦協定の締結を打診した。一方、地球連邦軍もこの戦いで戦力を消耗し、続いて行う予定であったグラナダやジオン本国への侵攻が不可能となっていた。

その後、月面都市グラナダにて、地球連邦政府とジオン共和国政府との間に終戦協定が締結され、0080年1月1日15時00分をもって停戦が成立したため、一年戦争の一部としてのこの戦いは自動的に終結した。

しかし両軍の一部には、停戦の成立を無視して戦闘を継続する者がいた。

小説『機動戦士ガンダム』での経緯[編集]

富野喜幸が書いた小説版にも、アニメ版同様にジオン本国最終防衛ラインの要となる軍事拠点として登場するが、その展開はアニメ版と大幅に異なる。

総帥のギレンはサイド3のズム・シティで指揮を執ったため、要塞内での最高指揮官は腹心ランドルフ・ワイゲルマン中将となっており、グラナダから撤退してきたキシリアは次席の指揮官に甘んじていた。

一方連邦軍は、グラナダを占領しフロントバックと改名したのち、ソロモンを無視して直接ア・バオア・クーに攻め込むこととした。事前のコロニーレーザーの照射がないため、連邦軍の総司令官としてレビル大将自らが参戦。またレビル艦隊と並行してカラル中将の支援艦隊が登場している。旗艦はマゼラン級「ドラッグ」。空母「トラファルガ」が中核とされ、パブリクなど小型艇や補助艦艇を含めた総艦艇は三百二十隻余りとされた。

なおア・バオア・クーの攻略作戦名は「チェンバロ作戦」となっている。

またこの時点で無傷だったドズル・ザビ中将の艦隊が独自に追撃を開始。コレヒドール宙域にて追いつき、ドズルが直卒するガンドワ艦隊は連邦軍の右翼に、遅れたミドロ艦隊が左翼に攻撃を開始。さらに正面のア・バオア・クー守備隊を含めて連邦軍は三方から攻撃を受けた。ドズル艦隊はペガサスジュニアを中心とした右翼部隊に殲滅させられたが、左翼部隊はミドロ艦隊が圧倒した。

この戦況下、ドラッグ首脳部ではレビルの「戦力を集中する」という発言を幕僚が「撤退し再集結する」と取り違えるというミスが発生。しかしレビルはそれを否定せずに主力をコレヒドールのミドロ艦隊に向けてこれを殲滅したうえで、再集結と補給を行い再び攻め込んだ。

この第二波の激戦の最中、本国からテストを兼ねたマハルのコロニー・レーザーが発射され、連邦軍カラル艦隊を消滅させた。残されたレビル艦隊はコロニー・レーザーの第2射目(小説版では2発まで連射可能という設定)を避けるべく、要塞の影となるように位置をSフィールドに変更する。しかしこの時ギレンは連邦軍もろとも政敵であるキシリアをも抹殺しようと目論んでいたため、その密命により射線はア・バオア・クー要塞を直撃するよう調整されていた。これにより、レビル将軍を含む連邦艦隊に加えて事前に何も知らされていなかったランドルフ中将以下、大多数の友軍がソーラ・レイによる攻撃に巻き込まれて死亡した。基幹部に直撃を受けた要塞はこれにより機能不随へ追い込まれ、完全に活動を停止している。

しかし肝心のキシリアは寸前で辛くも空域を離脱している。これにはクラウレ・ハモンの密告(その背後にはダルシア首相とデギン公王がいる)があった。

またキシリアはそれをシャアに伝え、シャアは独自の判断によりアムロたちと前線での接触を図った。結果、シャリア・ブルとアムロ・レイ、ハヤト・コバヤシが戦死しながらも、グワジン級ズワメルとペガサスジュニア隊が連合してズム・シティに殺到。結果としてギレンはキシリアに、キシリアはシャアに殺されて、ジオン共和国が成立して連邦と講和し終戦となる。

漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』での経緯[編集]

漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、ソーラ・レイ照射による残存連邦軍艦隊と、サイド3、グラナダ、ア・バオア・クーを合わせたジオン軍艦隊とでは、ジオン側のほうが総戦力は大きかったと設定しており、連邦側は最後の一大攻勢としてア・バオア・クーを陥落させての終戦交渉を望んでいた。

連邦側の指揮官はワッケイン中将が勤めた。

シャア・アズナブル大佐配下のニュータイプ部隊もア・バオア・クーに着任しており、ア・バオア・クー攻略戦のさなかにアムロとララアが戦うことになる。

ア・バオア・クー攻略戦開始後に、キシリアはグラナダから大型空母ドロスを中核とする増援艦隊を率いて、ワッケインらの旗艦艦隊を背後から攻撃、撃沈している。このドロスの攻勢に押されるような形で、連邦側のMS隊やホワイトベースは要塞へと揚陸して行くことになる。

要塞内で、キシリアによるギレンの射殺は同様だが、『THE ORIGIN』ではセイラ・マスが要塞内で捕虜になっており、自身がアルテイシア・ソム・ダイクンだと明かしたことで旧ダイクン派によるクーデターが併発している。

また、キシリアはア・バオア・クー脱出の際には、ア・バオア・クーを連邦軍が利用できないように爆破することを命じている。

一年戦争終結後[編集]

一年戦争終結後はジオン共和国によって管理され、再び資源採掘用として運用されていたが、グリプス戦役では核パルスエンジンを設置、ゼダンの門と名を変えている(正確には、グリプスとア・バオア・クー及びその間の空域の総称がゼダンの門である)[7]ティターンズの要衝となるが、エゥーゴと手を組んだハマーン・カーンによって、小惑星アクシズと激突し、崩壊した。

この時点では、MS開発基地の1つとして「13」のコードが割り振られており、旧ア・バオア・クー製のMS・MA・艦船として、RX-136-1 ラクシャサ、RX-139 ハンブラビ、ガンダムタイプMSの「スコル」、航宙イージス艦の「ハティ」がある。ハンブラビの機体コード「RX-139」は、旧ア・バオア・クー工廠 (13) の9番目に開発された試作機 (RX) を指している[8]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 講談社『機動戦士ガンダム 公式百科事典U.C.0079~0083』ISBN 4063301109 「ア・バオア・クー」の項
  2. ^ 本作は宇宙世紀中の再現映像という体裁である。
  3. ^ しかし『ガンダムフロント東京』の展示にはヨーツンヘイムの姿はない。
  4. ^ 『機動戦士ガンダム MS IGLOO-黙示録0079-』第3話、カスペン大佐の発言より。
  5. ^ ギレンは、作戦開始前に和平交渉のためレビル将軍との会見に赴いた父デギン公王を、ソーラ・レイの発射により、もろともに葬っている。
  6. ^ テレビ版ではマゼラン級、劇場版ではサラミス級の砲撃による。
  7. ^ 『Zガンダム』第27話では、ガディ・キンゼーマウアー・ファラオに「ガゼンの門」と呼ばれている。
  8. ^ 『Model Graphix Special Edition "GUDAM WARSIII" GUNDAM SENTINEL』ISBN 4499205301

関連項目[編集]