イフリート (ガンダムシリーズ)

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イフリート(EFREET) は、「ガンダムシリーズ」に登場する架空の兵器。有人操縦式の人型ロボット兵器モビルスーツ」 (MS) の一つ。初出は、1995年発売のスーパーファミコン用ゲーム『機動戦士ガンダム CROSS DIMENSION 0079』。

作中の敵側勢力である「ジオン公国軍」の試作機。同じジオン製MSである「グフ」と「ドム」の特徴を兼ね備えた近接格闘機で、高性能ながらも量産化が見送られたマイナー機という設定。ゲームクリア後のオリジナルストーリーである「死にゆく者たちへの祈り」にて、ウルフ・ガー隊所属のヘンリー・ブーン大尉の乗機として登場する。

メカニックデザインは大河原邦男が担当。

当記事では、ほかのゲームやアニメ作品などに登場する各派生機の解説も記述する。

機体解説[編集]

諸元
イフリート
EFREET
型式番号 MS-08TX
全高 18.1m
頭頂高 17.2m
重量 50.4t
出力 1,072kw
推力 67,000kg
武装 専用ショットガン
専用ヒート・サーベル
スモークディスチャージャー×4
専用ヒート・ランス(シュナイド機)
3連装35mmガトリング砲(シュナイド機)
ジャイアント・バズ(シュナイド機)
搭乗者 ヘンリー・ブーン
ダグ・シュナイド

ジオン公国軍地球侵攻部隊が独自に設計・開発した[1](ツィマッド社製とする資料もある[2])陸戦用MS。型式番号上はグフとドムの中間に位置する[3]。脚部の大型スラスターによって高い機動性を発揮し、同じ陸戦用MSであるグフを上回る格闘性能をもつ。

生産数は8機のみで量産はされていない。その理由としては、ジオン官僚が宇宙至上主義であったからというものと、カスタムメイドに近く生産性が低かったからというものがある。8機のうち、試作機を改造した004号機がジオン軍のウルフ・ガー隊に配備され、連邦軍アルバトロス隊のピクシーと交戦する。

マルコシアス隊隊長ダグ・シュナイドの搭乗機は専用カラーである紫に塗装されている。シュナイドの戦闘スタイルに合わせ、専用武器のヒート・ランスとグフ・カスタムの3連装ガトリング砲を装備している。キャリフォルニア・ベースから脱出する際にフレッド・リーバーのピクシーと機体を交換し、本機はリーバーの機体として一年戦争終結を迎えることとなる。のちに再度リーバーのもとに戻り、後述の「イフリート・シュナイド」へと改修される。

そのほかの改修機として、EXAMシステム用の試験機である「イフリート改」、ステルス機能に特化した「イフリート・ナハト[4]が存在する。

なお、本機以外のグフとドムの中間機としては、『モビルスーツバリエーション』のMS-07C-5 グフ試作実験機がある。また「MS-08」という型式番号を持つ機体にはイフリートとは別に、YMS-08A 高機動型試作機および『Mobile Suit Discovery』のYMS-08B ドム試作実験機が存在しているが、これらとは直接の関係はない。また機体名の「イフリート」は、コーランに記された精霊の名に由来しており、ジオン系MSとしては珍しく、名称に造語ではなく有意単語が使用されている。同様の例としてはMS-18E ケンプファードイツ語で「闘士」)がある。

主にゲームで登場する本機だが、以下の映像作品への登場も検討されたことがある。OVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』ではノリス・パッカードの乗機として登場する予定だった[5]。また『∀ガンダム』企画当初では、本機が発掘され登場する案があったが、結局その案は流れ、別機体ではあるがキャノン・イルフートの名称にこの経緯の名残が見て取れる[6]

武装[編集]

ヒート・サーベル
本機専用の刀剣武装。グフのサーベルに似た片刃の刀身をもつが、こちらは形状記憶式ではない完全な実体剣である。左腰には帯剣用のホルスターが増設されている。
フィギュア『ZEONOGRAPHY』で立体化された際は右腰にもホルスターが付いており、それに合わせてサーベルも2本付属している。後年のゲームやカードでも二刀流で描かれることが多い。
ショットガン
本機専用の射撃武装。ダブルオーバックシェル42mm散弾を発射する。
デザイン画が公表されていないため正確な形状は判明しておらず、『ZEONOGRAPHY』ではケンプファーと同一のデザインのものが付属していた。
バルカン砲
頭部に計2門内蔵されている[7]。『機動戦士ガンダム CROSS DIMENSION 0079』では使用することはない。

デザイン[編集]

デザインモチーフは。また、デザイン画では肩と脚の端が白く塗られているが、『機動戦士ガンダム CROSS DIMENSION 0079』の画面では赤い。後年のゲームやカードで描かれる際はデザイン画に準拠している。

イフリート改[編集]

諸元
イフリート改
EFREET CUSTOM
型式番号 MS-08TX[EXAM]
頭頂高 17.2m
本体重量 59.4t
全備重量 96.4t
武装 ヒート・サーベル×2
脚部6連装ミサイルポッド×2
腕部2連装グレネードランチャー×2
特殊装備 EXAMシステム
搭乗者 ニムバス・シュターゼン

ゲーム『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』に登場。

クルスト・モーゼス博士が開発した対ニュータイプ用オペレーティングシステム「EXAMシステム」を搭載した実験機。

開発時点ではシステムの負荷に耐えられる機体が、イフリート以外になかったという理由で採用された。冷却システムを含めた装置全体が大型で頭部に収まりきらなかったため、頭部自体を大型化して搭載している。この改修に合わせて、本体の推力や火力、冷却能力を向上させてある。武装は固定装備として両腕にグレネードランチャー、両脚にミサイルポッドがあり、腰部には一対のヒート・サーベルを備える。全身の蒼い色は開発者、両肩の赤い色はパイロットの趣味でカラーリングされている。この色については、クルスト博士がマリオンから「宇宙が青く見える」と聞き、迷彩的な意味合いを込めて着色したとする説もある。

操縦難度の高い機体だが、テストパイロットであるニムバス・シュターゼン大尉の手によって驚異的な性能を発揮した。しかし、EXAMシステム起動時は短時間で機体がオーバーヒートするほどの多大な負荷がかかるため、クルスト自身は本機の出来に不満を抱く。

ニムバスは本機に搭乗して地球連邦へ亡命したクルストを追撃するが、クルストが地球連邦軍にて開発したEXAMシステム搭載機ブルーディスティニー1号機との死闘の末、擱座する。しかし、ニムバスは隙をついて1号機の頭部をグレネードで破壊、直後に当機も爆散する。小説版では勝負を不利と判断したニムバスが本機を捨てて脱出した直後、自動操縦で1号機を妨害するも頭部をビームサーベルで貫かれて機能停止する。なお、敗因についてニムバスは「(イフリートと陸戦型ガンダムの)マシンの性能差か」と述べる。

イフリート改(空間戦仕様)[編集]

たいち庸作画による漫画『ザ・ブルー・ディスティニー』に登場[8]。メカニックデザインはプロモデラーのNAOKIが担当[8]

EXAMシステムの開発初期に使用された宇宙試験用のバリエーション機[8]

ベース機のイフリートは装備を換装することで宇宙戦にも対応可能であるが[8]、当仕様はEXAM発動時の高速戦闘実験のためにさらに強化されている[8]。両肩の装甲がゲルググに似た形状となり、2本の円筒プロペラントタンクを接続したバックパックと、すね側面に増設されたスラスター内蔵の増加装甲をもつ[8]。両前腕には3連装式のランチャーが増設されている[8]

イフリート・ナハト[編集]

諸元
イフリート・ナハト
EFREET NACHT
型式番号 MS-08TX/N
全高 17.9m(推定)
重量 54.0t(推定)
出力 1,300kw(推定)
推力 70,000kg(推定)
武装 コールドブレード
コールドクナイ×4~6
左腕部3連装ガトリング砲
搭乗者 エリク・ブランケ、クリスト・デーア

ゲーム『機動戦士ガンダム戦記』に登場。「ナハト」はドイツ語で「夜」を意味する。

強力なジャミング機能を搭載したステルス特化機。夜間迷彩を兼ねた紫色のカラーリングが施され、熱探知対策のために排熱口やスラスターには開閉可能な可動蓋が設けられている。忍者刀型の実体剣「コールドブレード(ナハトブレード)」と投擲用小型実体剣「コールドクナイ」、左腕装甲内には3連装ガトリング砲を内蔵し、高い白兵戦能力を発揮する。

オデッサ基地司令官だったマ・クベ大佐が所有しており、一年戦争後に地球連邦軍が接収。同基地にて稼動実験が行われていたところをジオン残党軍インビジブルナイツに奪取され、同部隊の隊長エリク・ブランケの搭乗機となる。以降は「水天の涙作戦」のために各地を転戦、地球連邦軍のファントムスイープ隊と数度の戦闘を行う。インビジブルナイツの戦場が宇宙に移行する際、不要となった本機はアデン基地に放棄されるが、HLV発進を防衛する殿としてクリスト・デーア整備長が搭乗。ファントムスイープ隊の隊長機に肉薄するも、タチアナ・デーア(シェリー・アリスン)が搭乗したジム・コマンドによる妨害でアデン基地の自爆に巻き込まれ、ともに消滅する。コミカライズ版でも同様の展開でHLVの噴射炎に巻き込まれるが、咄嗟にジム・コマンドを突き飛ばしてタチアナの命を救うことに成功する。

イフリート・シュナイド[編集]

諸元
イフリート・シュナイド
EFREET SCHNEID
型式番号 MS-08TX/S
全高 17.2m
本体重量 52.8t
全備重量 84.4t
装甲材質 超硬スチール合金+一部ガンダリウム合金
出力 2,202kw
推力 77,000kg
センサー
有効半径
12,200m
武装 ヒート・ダート
ヒートサーベル
ビームサーベル
ショットガン
ジャイアント・バズ
搭乗者 フレッド・リーバー[9]

アニメ版『機動戦士ガンダムUC』に登場。「シュナイド」とはドイツ語で「気骨」「勇気」を意味する[10]。その後に発売されたゲーム『機動戦士ガンダム サイドストーリーズ』にて、かつて本機に搭乗していた搭乗者ダグ・シュナイドを由来に名付けられたと設定された。

一年戦争からラプラス戦争に至る十数年に渡って改修され続けてきた機体[11]。機体色は明るい紫色で、肩部装甲や左前腕、臀部にクナイ状の投擲武器「ヒート・ダート」を装備している。通常のイフリートは両肩のアーマーにスパイクが装備されているが、本機はヒート・ダート用のマウントラッチとなっており、ヒート・ダートがスパイクのように装備される。ヒート・ダートは両肩と前後を合わせて8本、左手の籠手に4本、臀部に2本の計14本を装備する。

ラプラス戦争では地球連邦軍トリントン基地を襲撃したジオン軍残党が使用。ドダイIIに乗って登場し、トリントン基地防衛に出てきた部隊をジャイアント・バズで砲撃する。その後、ジムII・セミストライカーと交戦し、ツイン・ビーム・スピアによる斬撃を回避しつつ背後に回り込むと、ヒート・ダートをコクピットに突き刺して撃破するが、ジムIIIのミサイルで肩部アーマーを損傷し、ヨンム・カークスが搭乗するザクI・スナイパータイプの援護で撤退を促される。

『ガンダムUC』の外伝漫画『「袖付き」の機付長は詩詠う』においてその後の動向が描かれており、「元中佐」率いる海賊MS部隊の構成機として登場。この際はベースジャバーに乗っており、グフ用のヒート・サーベルらしき実体剣およびビーム・サーベルを追加装備している。劇中では海賊によるカークス隊基地奪取作戦に帯同し、トリントン基地戦で共闘したはずのジオン残党軍と敵対。さらに周辺空域に現れたバイアラン・カスタムを迎撃し、ヒート・サーベルを折られながらも互角の空中戦を繰り広げる。しかし、搭乗者はカークス隊のクイント中尉から依頼を受けた間者であり、海賊側の情報を漏洩したり、海賊の母艦であるガウの砲撃を制止するなど、密かに妨害工作を行っていた。最終的にカークス隊の撤退作戦が成功し、バイアラン・カスタムの攻撃でガウが撃墜されると海賊を離反、ビーム・サーベルで「元中佐」が搭乗するザクIIIを撃破する。その後はカークス隊と合流せず単独で撤退、偽装が施された状態で座り込む本機の姿が描かれているものの、以降の動向は不明。

また、『サイドストーリーズ』の新作シナリオ『機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク』にて、宇宙世紀0096年時のパイロットは一年戦争時に連邦軍特務部隊「スレイヴ・レイス」に所属していたフレッド・リーバーであったという設定が明かされた。「シュナイド」と名付けたのもフレッドである。フレッドは本来近接格闘戦を得意としており、忍者がモチーフのピクシーに搭乗していた経緯から、シュナイド機に本来装備されていたヒート・ランスをヒート・ダートへ換装したとされている。同コミカライズ版では整備士のハイヤーがイフリートを整備するエピソードが描かれており、フレッドの特性に合わせてヒート・ダートおよびヒート・ナイフを装備した中間形態というべき姿が登場する。

脚注[編集]

  1. ^ 『B-CLUB』vol.111 61頁。
  2. ^ 『GREAT MECHANICS. DX2』(双葉社)ではイフリートを含む08系列の機体はツィマッド社製と解説。
  3. ^ ゲーム発売当時の雑誌などには「型式番号から察するにグフとドムの中間のようだ」との紹介に止まり、機体設計的に中間だと明言はされていない(『機動戦士ガンダム CROSS DIMENSION 0079』の取扱説明書にも記述はない)。講談社の攻略本には「〜中間のようだがスラスター推力はゲルググより上」とあり、中間というのは開発された順番だとも取れるような記述がある。ただし、ジオン軍内では開発順と型式番号順は必ずしも一致しない。
  4. ^ 『月刊ガンダムエース 2014年7月号』107頁。
  5. ^ 『電撃ホビーマガジン』 1999年6月号 飯田馬之介監督インタビュー 52頁。
  6. ^ LD『∀ガンダム』第4巻ライナーノートより。
  7. ^ 『CROSS DIMENSION 0079』の取扱説明書に掲載されたイラストのみ砲門らしきものが省略されている。
  8. ^ a b c d e f g 『月刊ガンダムエース』、角川書店2017年6月、 121頁。
  9. ^ 週刊ファミ通2014年5/22号より。
  10. ^ 『月刊ホビージャパン』2012年2月号20頁より。
  11. ^ 『グレートメカニック DX 19』31頁より。

関連項目[編集]