ケンプファー

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ケンプファー (KÄMPFER) は、「ガンダムシリーズ」に登場する架空の兵器。有人操縦式の人型ロボット兵器「モビルスーツ」 (MS) の1つ。初出は、1989年に発売されたOVA機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(『0080』、または『ポケ戦』)。

作中の軍事勢力の一つ「ジオン公国軍」の試作機。強大な推進力と多彩な火器を駆使し、敵陣深くに侵攻する強襲任務に特化している。少ない人員と設備で分解、組み立てが可能な整備性の高さも特長。「ケンプファー」はドイツ語で「闘士」を意味する。劇中では、主人公の1人「バーナード・ワイズマン(バーニィ)が所属するジオン軍特殊部隊「サイクロプス隊」の機体として登場し、ヒロインである地球連邦軍中尉「「クリスチーナ・マッケンジー(クリス)」が搭乗する「ガンダムNT-1(アレックス)」と対決する。

メカニックデザインは出渕裕。『0080』に登場するMSたちは、『機動戦士ガンダム』に登場する各MSのデザインをもとに出渕がリファインしているが、このケンプファーは特定のデザインベースを持たないオリジナル機体となっている。

機体解説[編集]

諸元
ケンプファー
KÄMPFER
型式番号 MS-18E[注釈 1]
頭頂高 17.7m
本体重量 43.5t
全備重量 78.5t
装甲材質 チタン合金セラミック複合材
出力 1,550kW
推力 28,500kg×2(背部)
27,000kg×2(後腰部)
12,000kg×4(脚部)
(総推力)159,000kg
センサー
有効半径
6,100m
武装 専用ショットガン×2
ジャイアント・バズII×2
シュツルム・ファウスト×2
ビーム・サーベル×2
60mm頭部バルカン砲×2
チェーンマイン
シールド
搭乗者 ミハイル・カミンスキー
ファビアン・フリシュクネヒト
リリア・フローベール
ほか
その他 姿勢制御バーニア×16

一年戦争末期に開発されたジオン公国軍の最終機体のひとつ[2][注釈 2]。当時のジオン軍では工業力に勝る連邦軍のMS大量投入に苦戦を強いられていたことから、新しい仕様のMSを開発し、質で対抗する策を講じた[3]ゲルググビームライフルの量産体制が整った段階で、YMS-16YMS-17、YMS-18といった複数のMS試作機のロールアウトが行われる(またはロールアウト寸前となる)[1]。ケンプファーはそのうちのYMS-18構想による機体であり[1]、試作機の状態で戦線に投入されている[3][注釈 3]

一年戦争終戦直前の統合整備計画に基づいているため、ザクをベースにフレーム、ジェネレーター、スラスターを強化した機体となっている[4][注釈 4]。ただし、内部構造が異なることに加え、近接戦闘用の機体として見映えがいいデザインを求めた設計者の嗜好により、外観は大きく異なる[4]。なお、機体はブロック構造が取り入れられており、設備が整っていない場所でも組立が容易な特性を持っている[7][注釈 5]

YMS-18はMSの新たな運用法を開拓する機体として開発されていたが[1][注釈 6]、MS-18Eは高い機動性による一撃離脱をコンセプトとし、強襲用重試作MSに分類される[3]。本機はYMS-07Bの局地戦能力をリファインしたような特性を持ち[8]、敵拠点への速やかな強襲を実現するため、大推力のスラスターと姿勢制御用バーニアを全身に装備している[3]。これによって1G下でも短時間の飛行を可能としているが[5]ドムのような直立姿勢ではなく、うつ伏せの前傾姿勢を基本としている[1]。この姿勢は、前面投影面積を小さくすることによる被弾率低減を狙ったもので[1]、装甲も進行方向となる上半身上面に集中して配置されており、それ以外は軽量化のために極力薄く設計されている[1]。それと同時に、武装はジェネレーターの負担によって推力が低下することを防ぐため、ビーム兵器を控えて実体弾兵装主体でまとめられている[3]。これらの装備は、発射後のデッドウェイト化を避けるために専用ジョイントパーツごと排除可能となっている[9]。一方で、熱核ロケットエンジンを多数搭載しているために推進剤の消耗が激しく、継戦時間は短い[9]

武装[編集]

本機の武装は統合整備計画後の機体であることから、ザクとドムの中間的な構成がなされている[4]。また、ジェネレーターの都合から大出力のビーム兵器はドライヴできない[4]。ビーム兵器で敵機のジェネレーターを破壊し、爆風で自機にダメージを与えてしまうリスクが発生する場合を考慮すると、実弾は威力を制御しやすいというメリットも有している[4]

60mmバルカン砲
頭部に2門を設置。
ビーム・サーベル
本機唯一のビーム兵器。両大腿部に1基ずつ、計2基装備する。ゲルググ用デバイスから派生したもので、次世代量産機用に少数が生産された[10]
ビーム兵器の採用が本装備に留まっている要因は、ジェネレーターの出力不足と、至近戦闘においてはサーベル以外のビーム兵器が役に立ち辛い点が挙げられる[4]。なお、本装備はRX-78との交戦データから開発された[4]
197mm口径専用ショットガン(ヤクトゲヴェール、型式番号:ZUX-197[11]
作動の確実性を重視してスライドアクションによって装填するタイプ[3]電動機構による自動装填も可能[要出典])。ショットシェルに9発の金属球が込められた00(ダブルオー)パック式で、弾体はルナチタニウム製となる[3]。非使用時には、ラッチを介して腰背部に装備する。
ザク用の装備をベースに開発された兵装である[4]
ジャイアント・バズII
MS-09R-2 リック・ドムIIなどのものと同型[1]。背部にラッチを介して2基装備する。
シュツルム・ファウスト
使い捨てロケット砲。自動追尾装置を持たないために命中率は低いが、高い威力を発揮する[1]。脛部に2基装備する。
元々はザク用に開発されていた兵装である[4]
チェーン・マイン
機雷をワイヤーで連結したもので、重装甲の敵機を破壊するのに有効な装備[3]。対象に取り付いたユニットのみが爆破され、その他のユニットは連結部から取り外される構造になっている[1]
チョバムアーマー
ガンプラ「SDガンダム BB戦士」で設定されたオリジナル装備。ガンダムNT-1に対抗すべく用意されたもので、頭部と胸部を一体のアーマーが覆う形になっている。

劇中での活躍[編集]

OVA機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争
第2話で一旦組み上げられた後に潜入作戦開始に向け、ハンガーにて解体中の姿で登場し、第3話で偽装した町工場内にて再度組み立てられる。その後、第4話でサイクロプス隊のミハイル・カミンスキーが搭乗し、コロニー内戦闘を行った。高機動性を生かして中立部隊のリーア軍が所有する小型MSドラケンEを破壊しつつ街中を吶喊し、次に迎撃に出た連邦軍のグレイファントムに所属するスカーレット隊[注釈 7]と交戦し、すぐに全滅させた。その後、標的であるガンダムNT-1に迫るが、到達寸前でパイロットのクリスチーナ・マッケンジー中尉が乗り込んで緊急発進させたため、抵抗を許してしまう。この時点で手持ちの武器弾薬のほとんどを消費しており、最後に残った専用ショットガンでの一撃を加えた後はNT-1の頭部に装備された60mmバルカン砲による攻撃を巧みに回避すると、前もってトラックに隠匿しておいたチェーンマインをNT-1へ巻きつけることに成功する。しかし、NT-1の外装のチョバムアーマーしか爆破できず、ビーム・サーベルでの白兵戦に持ち込もうと突入したところに、チョバムアーマーが破壊されたことで腕部内蔵の90mmガトリングガンが使用可能となったNT-1の反撃を受け、軽防御が裏目に出て至近でのガトリングガン掃射の威力には対抗できず、蜂の巣にされて破壊される[注釈 8]。第5話では基地の敷地内に残骸が寝かされており、ズタズタになった血まみれのコクピットが取り出されている。
以上のように、本編における本機は戦闘シーンよりも運用・移動・組み立て・調整・そして解体調査といった、機械や兵器としての側面の方が細かく描写されている。
漫画『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像
シャア・アズナブルらサイド3視察団に随行する、ファビアン・フリシュクネヒト少尉の乗機として登場。その後はイリア・パゾムが乗り継ぎ、宇宙要塞アクシズで挙兵した真ジオン公国軍との戦闘で大破している。
漫画『GUNDAM LEGACY
宇宙世紀0084年にジオン残党が開発した、惑星間巡航用核パルス推進ブースター仕様「シルバー・ランス」の制御用ユニットとして搭載される形で登場。テロ組織「狼の鉄槌」によるジオン共和国に対するテロ計画「シルバー・ランス作戦」を行うため、気化爆弾を入手したリリア・フローベールが搭乗するが、サイド3近海で民間人のマット・ヒーリィらによって阻止されている[注釈 9]

備考[編集]

デザインを務めた出渕裕は自著において、機動力を持たせるかわりに装甲を薄くし、武器の増設を行った機体として説明しており、そのコンセプトは旧日本軍の戦闘機をモデルとしたと語っている。また、ケンプファーという機体名の命名は出渕による。複数の武器をつけるアイデアは『0080』の監督によるもので、武器類は明貴美加が担当したという[13]

プロトタイプ・ケンプファー[編集]

バンダイのプラモデル『1/144 MS-18E ケンプファー』の組立説明書で存在が示された機体[3][注釈 10]。(型式番号:YMS-18)。

正規仕様機とは頭部や胸部コクピット周りと肩部のアーマーや爪先の形状、腰後部のスカートアーマーの有無などの違いがある。カラーリングは緑[注釈 11]。『機動戦士ガンダムオンライン』では、大型重機関銃というオリジナルの武器も搭載されている。

劇中での活躍
漫画『機動戦士ガンダム エコール・デュ・シエル』では、宇宙海賊マリー一味に属するアキラが搭乗。試作型であるために予備パーツの補充が困難で、メンテナンスに苦労している。のちに大型重機関銃を装備している。宇宙世紀0087年、ルオイーコロニーでの攻防時にマリー一味の仇であるハンク・ライアン大佐の座乗艦アレキサンドリア級ベオグラードを追い詰めるが、その最中にエリシア・ノクトンが搭乗するダーグウェによって撃墜される。

ケンプファーF型[編集]

『1/144 MS-18E ケンプファー』の組立説明書で存在を示唆されている機体[3]。ビーム兵器を中心とした装備以外の詳細は不明。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 型式番号の「E」は、襲撃型 (Einhauen typ[1]) または試作実験 (Experiment) の頭文字から採られている。
  2. ^ ただし、ジオングを除く[2]
  3. ^ この試作型にあたる機体がプロトタイプ・ケンプファーであるが、外観はスカートアーマーが廃されるなど大きく変更されていない。
  4. ^ 内部フレームはMS-06を基本に発展させたものを使用したとする資料も存在する[5]。また、全体的にはガルバルディαの流れをくむ機体と言われる資料も見られる[6]
  5. ^ このブロック構造から、リボーコロニーでの戦いに本機が採用されたとする資料も存在する[7]
  6. ^ その中にはNT専用機や、ドムとゲルググの中間的なものも存在したとされる[1]
  7. ^ スカーレット隊の構成はジム・スナイパーIIが4機、量産型ガンキャノンが2機という、1年戦争当時ではかなりの部隊である。
  8. ^ バンダイのプラモデル『SDガンダムBB戦士 ケンプファー』には、キットオリジナル要素としてNT-1のものと似た専用のチョバムアーマーが付属している。
  9. ^ 組織名および作戦名は、書籍『データガンダム キャラクター列伝[宇宙世紀編I]』より[12]
  10. ^ 組立説明書での名称は「MS-18試作案」とのみ表記[3]
  11. ^ バンダイのフィギュア『ZEONOGRAPHY』では、パーツ差し替えという商品の性格上カラーリングは正規仕様機と同じ青に設定され、足首はデザインが変更され、腰後部スカートアーマーは撤廃されている。漫画『エコール・デュ・シエル』では、表紙絵によって緑もしくは青とまちまち。アーケードゲーム『機動戦士ガンダム0083カードビルダー両雄激突』では、緑となっている。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k 『1/100 MG ケンプファー』バンダイ、2001年1月、組立説明書。
  2. ^ a b 『電撃データコレクション 機動戦士ガンダム 一年戦争外伝』メディアワークス、2000年6月、25頁。(ISBN 978-4840205849)
  3. ^ a b c d e f g h i j k 『1/144 ケンプファー』バンダイ、1989年7月、組立説明書。
  4. ^ a b c d e f g h i 『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 オリジナル・アニメ・ビデオ・フィルムコミック PART.2』旭屋出版、1998年7月、241頁。(ISBN 978-4751101315)
  5. ^ a b 『アナザーセンチュリークロニクル 機動戦士ガンダム 一年戦争全史 下巻』学術研究社、2007年4月、79頁。(ISBN 978-4-05-604614-4)
  6. ^ 『B-CLUB 42』バンダイ、1989年4月、11頁。ISBN 4-89189-422-9
  7. ^ a b 『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 オリジナル・アニメ・ビデオ・フィルムコミック PART.2』旭屋出版、1998年7月、220-221頁。(ISBN 978-4751101315)
  8. ^ 『Cyber comix No8』バンダイ、1989年6月、282-283頁。ISBN 4-89189-023-1
  9. ^ a b 『機動戦士ガンダム MS大図鑑 PART.3 アクシズ戦争編』バンダイ、1989年6月、90-93頁。(ISBN 4-89189-019-3)
  10. ^ 『HGUC 1/144 ケンプファー』バンダイ、2008年8月、組立説明書。
  11. ^ 「01-6 ショットガン」『UC ARMS GALLERY 01 ジオン軍実弾兵器開発史』バンダイ、2005年12月22日、付属データシート。
  12. ^ 『データガンダム キャラクター列伝[宇宙世紀編I]』角川書店、2010年4月、200頁。(ISBN 978-4047154452)
  13. ^ 『出渕裕メカニカルデザインワークス 1』ムービック、2000年8月、20-21頁。(ISBN 978-4896014907)

関連項目[編集]