日本語の表記体系
| 日本語の表記体系 | |
|---|---|
| 類型: | 表語文字(漢字)と音節文字(平仮名と片仮名)の併用 |
| 言語: | 日本語 |
| 時期: | 4世紀-現在 |
| 親の文字体系: | |
| Unicode範囲: | 漢字の範囲(漢字) U+3040–U+309F(平仮名) U+30A0–U+30FF(片仮名) |
| ISO 15924 コード: | Jpan |
| 注意: このページはUnicodeで書かれたIPA音声記号を含む場合があります。 | |
日本語の表記体系(にほんごのひょうきたいけい)では、日本語の文章等を文字によって表記するための系統的な方法について解説する。本項目では現代日本語の表記体系とその歴史を扱っている。日本語の概略に関しては日本語を参照。
現代の日本語では、主に以下の3種類の文字体系が用いられる。
| 漢字 | 中国を起源とする表語文字である。国字と呼ばれる日本で造られた漢字も追加されている。 |
|---|---|
| 平仮名(ひらがな) | 漢字の草書体より日本で作られた表音文字(音節文字)である。 |
| 片仮名(カタカナ) | 漢字の一部を省略表記して日本で作られた表音文字(音節文字)である。 |
これらの文字を併用して表記された文章が仮名交(かなまじり)または仮名交文(かなまじりぶん)と呼ばれる、現在の日本における標準的な文章である。これは、「(それまで公式とされた)漢文に、仮名が交じっている」という意味だが、漢字とかなの併用が標準となった現代ではかえって読みにくく、また意味が掴みにくい。そのため、送り仮名をつけた「仮名交じり文」や更に漢字との併用であることを明記した「漢字仮名交じり文」といった表現で示される場合がある。
ローマ由来のアルファベット(ラテン文字)を用いて日本語を表記することもでき、日本ではローマ字と呼ばれる。個々のラテン文字を、イニシャルや略号として、漢字・かなと併用して記すことは普通に行われているが、文章全体をローマ字で記すことは、母語話者においては稀である。
一例として朝日新聞のニュース記事(2004年4月19日)のヘッドラインを次に示す。ここでは上記4種類の文字システムがすべて用いられている。漢字はオレンジ、ひらがなは青、カタカナは緑、ローマ字とアラビア数字は灰色で示す:
- ラドクリフ、マラソン五輪代表に1万m出場にも含み
日本語で書かれた単語の例を以下にいくつか示す:
| 文字 | ローマ字転写 ヘボン式 |
||||
|---|---|---|---|---|---|
| 漢字 | ひらがな | カタカナ | |||
| 語 種 |
大和言葉 | 私 | わたし | ワタシ | watashi |
| 漢語 | 金魚 | きんぎょ | キンギョ | kingyo | |
| 外来語 | 煙草 | たばこ | タバコ | tabako | |
日本語辞典(いわゆる国語辞典)における単語の配列法は第一に漢字ではなく、表音文字である仮名を基盤とする。ローマ字で書かれる単語であっても例外ではなく、その場合見出しは片仮名による。仮名の配列には「五十音順」と「いろは順」の2種類がある。後者は古式でありこれに従う辞典はかつて存在したが、現在ではもはや存在しない。ここで同音異義語である漢語の配列が問題になる。この点、漢字は総画数、部首によって配列されている。
他方、漢和辞典では漢字は部首、画数の順に配列されており、漢字ごとにその字で始まる漢語が、漢字を見出しとして、その読み方の五十音順に配列されている。(詳しくは該当項目を参照)
目次 |
[編集] 文字種の使い分け
大部分の日本語文は漢字とひらがなで書かれ、一部にカタカナが混在して使用される。
[編集] 漢字が使われる事例
詳細は「漢字」、「和製漢字」、および「日本における漢字」を参照
等である。
[編集] ひらがなが使われる事例
詳細は「平仮名」を参照
等である。
[編集] カタカナが使われる事例
詳細は「片仮名」を参照
- 外国の単語、名前
- 擬態語
- 強調。英語ではイタリック体で書くような場面
- 技術、科学用語(生物の名前。「ヒト」、「ネコ」等)
等である。生物名のカタカナ表記の起源については和名を参照。
[編集] ローマ字が使われる事例
詳細は「ローマ字」、「アルファベット」、および「外来語」を参照
- アクロニム、イニシャル。例えばNATO(「北大西洋条約機構 North Atlantic Treaty Organisation」のアクロニム)
- 日本国外で通用するように意図した場合。例えば名刺やパスポートの名前
- 会社名、ブランド名、製品名等。日本国内外問わず用いられる
- 日本語の文脈中にいきなり外国の単語やフレーズを挿入する場合。日本人向け民生品の宣伝等
等である。ローマ字で日本語の単語を表記する例はない。あるように見えるのは転写にすぎない。
[編集] 例外
しかしながら、上記の規則には多くの例外がある。例えば日本人の名前には漢字、ひらがな、カタカナの全てが用いられることがある。
加えて、横書きの文書ではアラビア数字が普通は用いられる。ラテン文字はアクロニムや国際単位系の単位等に用いられる。
[編集] 文字種の意図的な選択
ひらがな、カタカナのいずれでも、全ての日本語の単語を表記することができる。(ローマ字でも"書く"ことは客観的に可能であるがあくまでも音写でしかない。)また、ほとんどの単語には漢字表記がある。どの文字種を用いるかは多くの要因によって決まる。
漢字表記によって異なる意味を表す場合もある(「熱い」「厚い」、「好み」「木の実」等)。場合によっては漢字の書き分けが難しく、誤記するよりましだというのでひらがなで表記する人もいる。
[編集] 表記する方向
詳細は「縦書きと横書き」を参照
伝統的には日本語は「縦書き」で書かれた。文書は縦行に分かれ、各縦行は上から下に、縦行の間では右から左に書かれる。ある縦行の最下部まで読み進んだら、次は左隣の縦行の最上部に移動することになる。これは中国の文と同じ順序である。
現代の日本語は他の方法も採用している。「横書き」といわれるもので、英語などのヨーロッパ諸語と同一の方法である。左から右に書かれた横向きの行が上から下に並んでいる。
[編集] 初期の日本語表記系
現在の日本語表記系は中国語の古典文語である漢文の書き方が伝えられた4世紀にまで遡る。神代文字と称する更に古い表記法が発見されたともいわれているが、それらは絵文字の様であったり、ルーン文字に似ていたり、ハングルに酷似していたりする。これらの内で真正なものと結論づけられたものは一つもなく、漢字の伝来以前に日本に文字があった証拠は存在しない。
[編集] 漢式和文と万葉仮名
『古事記』は漢式和文あるいは変体漢文で書かれている。漢字ばかりであるが漢文ではない。日本語の語順に従って書かれている部分があるから漢文としては読めない。漢字ばかりだから日本語としてどう読んだか書いてない。しかし漢字を追っていけば意味は通じるという文である。[要出典]『古事記』を書くのには漢式和文でいいが、和歌を書き表すためには一字一字正確に表さなければならない。そのために考案されたのが万葉仮名である。万葉仮名が開発されるに及んで、ようやく日本語を表記するシステムが得られた。これは漢字を表意文字ではなく表音文字として(中国音から音を得て)用いるものである。万葉仮名は初め和歌を記録するのに用いられ、例えば759年以前に編纂された『万葉集』に見られる。万葉仮名という名前もこの歌集に由来する。ひらがなは万葉仮名から発達したものである。また、漢文の読み下しを助けるために横に付した符号のうち、発音記号として使った漢字からカタカナが発達した。
[編集] 漢字かな交じり文の成立の時期
905年に成立した『古今和歌集』は漢字ひらがな交じり文で書かれていたので、ひらがなの成立は9世紀の後半だと思われる。ひらがなを知っていれば何でもひらがなで書くことができる。日本人が初めて表音文字を得た瞬間である。日本人は物の名前を漢字で書き表すことは以前から行ってきたので、ひらがなが生まれた時に直ちに漢字とひらがなを交ぜて表示することが始まった。漢字ひらがな交じり文と漢字を使わないでひらがなだけで書いたひらがな文は同じ文を表すが、読みやすさ、把握しやすさでは格段に漢字ひらがな交じり文の方が優れている。ひらがな文は分かち書きをしないとどこで文が切れるか分かりにくいが、漢字かな交じり文は漢字によって緩急がついており、どこで文が切れるか明瞭なため分かち書きの必要がない。
『伊勢物語』、『源氏物語』、『今昔物語』、『平家物語』、『方丈記』、『徒然草』、『奥の細道』、『雨月物語』など、日本古典文学の重要な作品は全て漢字かな交じり文で書かれており、現在まで1100年以上に渡って日本語の標準的な書き言葉となっている。
[編集] 音読みと訓読み
一個の漢字には、一つまたは複数の「音読み」と「訓読み」があることが多い(ない場合もある)。まず、日本に様々な時代の、様々な地域の中国語の発音が伝えられたために、一つの漢字に当てられている音読みに複数のものが生じてきた。呉音、漢音、唐音といったものである。こうした現象は、特定の時代の特定の地域では通常一つの発音しか認めてこなかった中国や朝鮮半島など、他の漢字を受容した地域では、ほとんど観察されない。例えば、「行」は「行く」の「い」(または「ゆ」)であり、「行う」の「おこな」であり、熟語の「行列」では「ぎょう」であり、単語「銀行」では「こう」であり、「行灯」では「あん」である。一つの漢字「行」に「ぎょう」「こう」「あん」の3通りの音読みがあるのは「呉音、漢音、唐音」に対応している。訓読みは意味が同じであれば大和言葉の単語で読んでいいというもので「桜、山、人」に対して「さくら、やま、ひと」という訓読みがなされている。「訓読み」は拡大解釈されて様々な読みに利用されている。「大」に「ひろ」、「美」に「よし」という「訓読み」をつけること等は比較的最近に広まったことである。次に、一つの漢語の持つ意味の広がりが複数の日本語の単語の概念にまたがっていることがあるため、一つの漢字に複数の訓読みが生じることがある。「主」という漢字に「おも」、「ぬし」、「あるじ」といった訓読みが当てられているといった例が挙げられる。逆に一つの大和言葉に複数の漢字が割り当てられる場合もある。
送り仮名は漢字を日本語表意文字として採用したことによって必然的に必要になった。日本語は膠着語であり、中国語は孤立語に相当する。孤立語と膠着語の違いを調整するために送り仮名は必要になった。
[編集] 日本語としての漢語
言語学者は日本語が漢字を借用し中国語の単語を日本語に取り入れたことを、ときとして英語に対するノルマン人のブリテン諸島征服(ノルマン・コンクエスト)による影響に匹敵するとする[誰?]。英語と同様、日本語には語源を異にした多くの同義語がある。中国起源のものと日本起源のものとである。また、中国起源の単語はより厳密さが求められる説明的な文脈で用いられる傾向があり、これはヨーロッパ言語を用いる国や地域の人々がラテン語由来の単語をしばしば上流の証として用いるのと似ている。 近代では、日本人が、漢語を造語する例もあり、英語のphilosophy、ドイツ語のPhilosophieを指す用語として、明治時代の啓蒙家西周が、「哲学」と造語している。これらは和製漢語と呼ばれるもので、現在では漢語の本家である中国語圏において逆輸出されている例も多い。
[編集] 漢字かな交じり文の意義
古い時代の日本において漢字と漢文が中国大陸より伝わり、その漢文を日本語として理解するために漢文訓読という方法が講じられたが、現在の漢字かな混じり文はこの漢文訓読が源流のひとつになっている。その漢字かな交じり文に必要な仮名が世に現れる以前には、文の表記についていろいろな試みや工夫があった。
『万葉集』はその原文を見ればわかるように、本来全て漢字で記されており、基本としては詞書が「漢文」であり肝心の和歌は借字(しゃくじ)いわゆる万葉仮名を交えた表記となっている。その『万葉集』の和歌の中には「難訓歌」といって現在でも和歌として解読できないものがあるが、これはその使われている漢字が借字なのか、または今でいう「訓読み」として読めばいいのか明らかではないということが、読めない理由のひとつにあげられる。しかしその和歌が詠まれ記された当初は、人々はその内容を当然理解することが出来たはずである。それが「難訓歌」となってしまったのは、その内容を理解できる者が作者も含めていなくなったからであり、文字として記されながら、口承によってどのようにして読むかを知る作品だったともいえる。このように文のどこが借字で、どこが訓読みなのか(または漢語なのか)がわからなければ、はじめてそれを読む側にとっては理解にかなりの困難を伴う。そうした困難を回避するために作られたのが「宣命書き」であった。これは漢字の語句の間に、助詞などを小さい借字で書き添えるという形式である。また『古事記』には文中に、「この文字は借字として読め」という意味の注を付けて読ませる方法が見られる。
しかし仮名(平仮名・片仮名)の登場は、そのような状況を一変させるものであった。仮名は借字である漢字から作られたものであるが、もともとの漢字の字形を草書よりももっと崩したりまたは略したりすることによって、そこに漢字を加えても仮名と区別が出来るようになったのである。平安時代以降、平仮名で記された文学作品が多く作られるようになるが、それらはすべてを平仮名で記していたわけではなく、ある程度漢語や漢字を交えて書くようになっていた。それができたのも漢字と仮名が見た目の上で区別できたからであり、これは漢字片仮名交じりの文の場合でも同様である。そして時代が下ると『平家物語』などのように、漢語を多用する漢文訓読ふうの文も綴られるようになった。
仮名の登場によって日本語の繊細な表現を記すことができるようになったといわれるが、漢字と仮名の区別が漢字かな交じり文の成立を可能にさせ、その漢字かな交じり文の発達が、明治以降の和製漢語を生む土壌を作った。漢字かな交じり文は現在でも日本語の表記体系のなかで重要な地位を占めている。
[編集] 日本語表記法の変化
[編集] 明治時代
明治の大変革はしばらくの間日本語の表記には影響を与えなかった。しかし教育制度の変化に伴い、大量の新語が現れ、また文字を読み書きできる国民が増加してくると言語そのものに変化が現れた。大量の新語は他の言語から持ち込まれたものもあれば、新しく作られたものもあった。言文一致運動が完勝を収め、歴史的ないし古典的な文体(文語体)にとってかわって口語体が広く用いられるようになった。日本語の書きづらさについて議論があり、1800年代の終わりには表記に用いる漢字の数を制限しようという意見が見られるようになった。外国語との接触によって、漢字を廃止してカナまたはローマ字のみを用いるようにしようという主張もあったが、これは支持されなかった。西洋語風の句読点が用いられるようになったのもこの頃である(Twine, 1991)。
1900年に、文部省は日本語表記教育の改善を狙って3つの改革を行った:
- ひらがなの字体を標準化し、それ以外を変体仮名として排除しようとした。
- 漢字の字母数制限。初等教育では1200字に絞った。
- 実際の発音に合わなくなっていた漢語のかな表現(字音かな遣い)の改革
最初の2つは次第に広く受け入れられたが、最後の項目は保守層を中心に激しい反発を呼び、1908年に取り下げられることとなった(Seeley, 1991)。
[編集] 第二次世界大戦前
1900年の改革が部分的に失敗したこととナショナリズムの勃興とが合わさり、日本語表記法の改良は進まなかった。漢字の制限については多くの要求があり、いくつかの新聞は自主的に漢字を減らして送り仮名を増やしたが、公的な支持はなく反対も多かった。
[編集] 第二次世界大戦後
終戦直後、大きな改革が行われた。一部にはGHQの影響もあったが、重要な部分のほとんどは保守主義者が教育制度の管理機構から排除されたことに起因しており、以前は着手されなかった改革を進めることができたのである[要出典]。
大きな点は:
ある時期、GHQ内の一部の方針としてローマ字表記への変更が要請されたことがあるが、他の専門家の反対によって沙汰止みとなった(Unger, 1996)。(あるいは、日本の文化人の中にも、ローマ字表記を主張し試行する者がいたが、全かな表記と同様、漢字を表記しないと意味識別が困難であり、実用化されなかった。韓国・北朝鮮においては、漢字混在表記を廃止してハングル一元表記に実際に変更してしまったが、その結果として漢字文化の伝統が若い世代に伝わらず、問題となっていることと対照的であるとも言える。参考:ハングル及び六十年文字戦争)。ベトナムも独立後に漢字を全廃し、アルファベットを使ったクオック・グーに変更してしまったため、韓国・北朝鮮と同様に漢字文化の伝統が若い世代に伝わらなくなってしまっている。
加えて、横書き時の右横書き(右から左へ)は殆ど姿を消し、左横書きに事実上一本化された(縦書きと横書き参照)。
とはいえ、世界の書字体系では、横書きであって、左から右と、右から左が、両方とも可能なものがあり(例えば、古代エジプトのヒエログリフの書字システム)、日本語での右書きも、縦書きの変種ではなく、純粋に横書きと考えられるものもある。実際、このような表記法は現在でも商用車や船舶の右側面に見られ、乗り物の前方から後方に向かって配置されるようになっている(トラックの左側面に「ヰキ商会」、右側面に「会商キヰ」と書くなど)。
ヒエログリフの場合、右書きか左書きかは、人や動物など、「顔の向き」のある文字で、顔の向いている方向でどちらの方向に読むかが決まっていたように、乗り物の側面のように、「進行方向から後ろ」へという読み方の方向性が自然に決まる場合は、右書き・左書きと両方用いられる。
1963年に国語審議会において、吉田富三が「国語は漢字かな交じり文をもって表記の正則とする。国語審議会はこの前提の下に、国語の改善を審議するものとする」という提案を行い、1965年には認められた。この吉田提案は「現状の姿が最も正しい形であり、漢字が多すぎる等というのは誤りである」と主張している。これが日本に於いて漢字かな交じり文が公的に認められた最初である。それまでの制限的な色合いが大幅に緩和され、1981年、当用漢字を元にしつつも、緩やかな目安である常用漢字1945字が内閣から告示され、当用漢字は廃止された。
戦後の日本語表記に関して、ごく簡略に言えば「名詞・用言の語幹を漢字で、用言の活用語尾・付属語をひらがなで表記する」という書き分けの原則が存在する(詳細は上記文字種の使い分けの項参照)。わかち書きを行わない日本語の表記においては、この原則が語と語の切れ目を表示する機能を担っている。
公文書などは当用漢字、常用漢字のみをもって記述すべきとの方針が示され、新聞などもこれに倣ったため、まぜ書き(例:拿捕→だ捕)や漢語の仮名表記(例:軋轢→あつれき)が頻繁に見られるようになった。漢字制限の理念に沿うものだが、上記のような事情があるため語と語の切れ目が見えにくくなり、かえって読みづらいとの批判がある。見苦しい、文化破壊である、といった批判も根強い。
これらの流れについては「国語国字問題」の項も参照されたい。
[編集] ニュアンスを伝える日本語表記系
他の言語では説明を追加したり単語自体を変更したりしなければならない情報でも、日本語の表記システムを用いれば同じ単語の表記を変えるだけで伝えることができる場合がある。例えば英語の「 I 」、ドイツ語の「 ich 」、ロシア語の「 Я 」に相当する「私」は男女兼用でフォーマルな文章にしばしば用いられる。ひらがなで書いた「わたし」は、口語的なニュアンスを帯びており優しい感じがするので、男女ともにインフォーマルな場や、親しみやすさを表現したい場合に使用される。例えば、女性が日記や友人への手紙で用いるなどは、その典型である。
カタカナの「ワタシ」は通常はほとんど用いられない(あえて一人称を強調する時や、外国人が片言で話すニュアンスを出す場合に用いられることがある)。転写にすぎないローマ字の「watashi」は、出現することは滅多になく、言語学や暗号などなにかの意図を含める場合にしか出現しない。(ただし言語学の場合で問題になっているのは単語の意味ではなく単語それ自体である。暗号の場合は表記を隠す意図による。)
文体上の狙いで漢字の複合語を恣意的に読ませることもできる。例えば夏目漱石は短編『十五夜』の中で名詞の「接続」を動詞的に活用した「接続って」を「つながって」と読ませている。これは通常ならば「繋がって」「つながって」と書くものである。(ただし、このような複数の漢字を、それに意味的対応する日本語のかな読みする例は、古くから存在している。「天皇」は「すめらみこと・すめろぎ」と訓んでいたのであり、「日本」も「やまと」と訓んでいた)。
[編集] ローマ字転写
詳細は「ローマ字」を参照
日本語をローマ字で転写する方法にはいくつかある。英語利用者向けに開発されたヘボン式は、実用的な標準の表記法として、日本国内の外ラテン文字圏で用いられている。訓令式はカナとの対応が良く日本語話者には学びやすい。文部省が公式に支持しているのはこれであるが、日本国外で用いられることは稀である。国際規格としてISO 3602があり、他にも日本式、JSL、ワープロ式がある。
キリル文字、アラビア文字、デーヴァナーガリーによる転写もある。
[編集] 関連項目
- 日本語
- 日本における漢字
- 旧字体 - 新字体
- 国語国字問題
- ひらがな、カタカナ
- 仮名遣
- ローマ字
- 書記言語、文語体 (日本語)
- 文語、口語
- 縦書きと横書き
- ルビ
- 漢文訓読
- 公用文作成の要領
- 沖縄方言の表記体系
- ケセン語
[編集] 文字の書体
[編集] 仮名の異形
[編集] 参考書
- Nanette Gottlieb 『Kanji Politics - Language Policy and Japanese Script』 Kegan Paul, 1996 ISBN 0-7103-0512-5
- Nanette Twine 『Language and the Modern State - The Reform of Written Japanese』 Routledge, 1991 ISBN 0-4150-0990-1
- Christopher Seeley 『The Japanese Script since 1900』 Visible Language, XVIII 3, 267-302, 1984
- Christopher Seeley 『A History of Writing in Japan』 University of Hawai'i Press, 1991 ISBN 0-8248-2217-X
- Yaeko Sato Habein 『The History of the Japanese Written Language』 University of Tokyo Press, 1984 ISBN 0-86008-347-0
- J. Marshall Unger 『Literacy and Script Reform in Occupation Japan: Reading Between the Lines』 OUP, 1996 ISBN 0-1951-0166-9
- 山口仲美 日本語の歴史、岩波新書、2006年
- 村島定行 漢字かな混じり文の精神、風詠社、2009年
[編集] 外部リンク
- The Modern Japanese Writing System: an excerpt from 『Literacy and Script Reform in Occupation Japan』 by J. Marshall Unger.
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