縦書きと横書き

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日本語の雑誌広告
1938年昭和13年))。広告本文は右縦書きと右横書きが用いられ、商品ラベルには英語に倣い左横書きが用いられている。
中国語の扁額。北京紫禁城乾清宮の内部。玉座の上に、「正大光明」と1行1文字の右縦書きされている。
英語新聞1918年11月11日付)。左横書きされている。

世界に存在する文書は、その言語および表記する文字体系の組合わせによって文字を書き進める方向(書字方向)が異なる。書字方向には、大きく分けて縦書き(たてがき、縦組み)と横書き(よこがき、横組み)がある。

概説[編集]

書字方向は、文字の並べ方によって縦書き、横書きに二分され、それぞれが行または列の並べ方によりさらに二分される。

縦書きは、文字を列ごとに上から下に縦に連ねる。縦書きには、列を右から左へ(←)順に並べる右縦書きと、左から右へ(→)順に並べる左縦書きがある。

横書きは、文字を行ごとに一方向に横に並べる。横書きには、文字を右から左へ(←)順に並べて行を左に進める右横書きと、文字を左から右へ(→)順に並べて行を右に進める左横書きがある。

中国語および、その影響を受けた日本語(下記詳述)、朝鮮語では、本来縦書きで右から左へ行を進めていた(右縦書き)。しかし、近代以降はいずれの国でも横書きとの併用が行われる。縦書きと横書きの両方が可能な文字言語は現代では比較的珍しく、文字を正方形のマスに見立てて配置する漢字文化圏の特徴である。なお、近年の韓国においてはすべての主要日刊紙や書籍が縦書きから左横書きに変更されるなど横書きの使用が圧倒的になっており、それに伴い縦書きも従来の右縦書きより左縦書きが使用される割合が多くなるなど、縦書きの使用方法につき混乱が見られる。

英語をはじめとする欧米の諸語では、左から右の横書き(左横書き)が主流である。縦書きされることはほとんど無い。日本その他の漢字文化圏でも英語に倣い、左横書きの文書が多くなっている。それぞれ独自の文字を持つ南アジア東南アジアの諸地域でも、左から右への横書き(左横書き)が多い。これに対して、アラビア語ヘブライ語などを代表とする中東圏では、その逆に右から左へと文字が綴られる(右横書き)。

モンゴル文字で表記されるモンゴル語は、世界でも珍しく左から右へと行を進める縦書き(左縦書き)を使用する。これは、モンゴル文字がソグド文字系統のウイグル文字から派生したことに由来する。これらの文字は、もともと右横書きされていたが、後にこれを反時計回りに90度回転した形の左縦書きも用いられた。

古代には、ヒエログリフのように書字方向がかなり融通のきく文字言語や、左右の行端で文字を折り返す牛耕式 (boustrophedon) などを採用する文字言語もあったが、現代の文書には見られない特徴である。また、下から上へ行を重ねる横書きが確認されない一方、下から上への縦書きは、アイルランド・ゲール語のオーガム碑文の例、そして突厥文字(オルホン文字)が稀にそのように書かれるなど、歴史的にもごく僅かに存在する。

日本語における縦書きと横書き[編集]

1885年明治18年)頃に発行された紙幣。日本語には右縦書き(1行1文字の縦書き含む)が用いられ、英語には左横書きが用いられている。
大日本帝国陸軍作成の、二・二六事件の際の鎮圧部隊の行動を示したもの。地図製作では余白を活用するため言語に関係なく右横書き、左横書き、縦書きが現れる。
1935年(昭和10年)頃の憲兵。1行1文字の右縦書きの腕章を身につけている。
1938年10月頃の天王寺駅。左横書きが多いが一部に1行1文字の縦書きも残っている。

この項では日本語の表記における主立った2つの方式である縦書きと横書きについて述べる。

歴史的経緯[編集]

元来日本語は漢文に倣い、文字を上から下へ、また行を右から左へと進めて表記を行っていた。漢字仮名の筆順も縦書きを前提としており、横書き不能な書体も存在する。

横書きとは文章を横方向に進めていくという規範のうちに書かれたものである。横書きには左横書き(左から右へ文字を進めていく方法)と右横書き(右から左に文字を進めていく方法)がある。暖簾や扁額(寺社の門などに掲げられた横長の額)では一見すると右横書きのように見える記法が行われてきたが、これらは「1行1文字の縦書き」、つまり縦書きの規範で書かれたものであって右横書きではない。(縦書きの一文字目を「横読み」することにはなるが)。2文字以上が入るスペースでは文字は縦に配置され、その行が右から左へ進むのである[1]。同様に、左横書きのアルファベット文化圏でも立て看板などのスペースを利用するために、1行1文字の横書きを縦読みさせる例があるが、これも縦書きとはみなし得ない。一方で、日本においては江戸時代蘭学の流行などの影響を受け、洋書を真似た横書き法が発生することになる。

日本語学者屋名池誠の調査によれば、日本で出版物に横書きが現れるのは、(ごくまれな先行例はあるものの)18世紀後半に蘭学が紹介されてからのことである。1788年(天明8年)に大槻玄沢が刊行した『蘭学階梯』が初めて幕府の公認の下にオランダ語の文字(すなわちラテン文字)を紹介したのをきっかけに、民衆の間に横書き文字の存在が広く知られるようになった。一般民衆向けの出版物にも、オランダ語の文字を模倣して日本語の文章を横書きするものが現れた。たとえば1806年(文化3年)刊の式亭三馬による『小野ばかむら嘘字尽』(おののばかむらうそじづくし)は往来物パロディだが、平仮名を左横書きし書体も欧字に似せた「おいらんだ文字」なるものを記している[2]

次に横書きが用いられたのは、外国語辞書であった。最初の日本語の外国語辞書は、外国語が左横書き、日本語が縦書きで、本を回転しないと普通に読めない。1885年明治18年)の「袖珍挿図独和辞書」では語釈(日本語)を横書きしている。

太平洋戦争大東亜戦争)前、欧文併記文書以外の一般大衆を主対象とする新聞や広告などでは、1行1文字の縦書きを横読みさせる記法が優勢であった。しかし、1940年昭和15年)頃からは左横書きによる方向統一の動きが各所で散見されるようになり、文部省の諮問機関、国語審議会では1942年(昭和17年)7月、左横書きを本則とする旨の答申を出すに至る[3]。しかしこれに対して反対論も強く、答申の同部分は閣議提案されなかった[4]。当時、陸軍はむしろ左横書き専用への移行を進めていた。しかし、国粋主義的な論調の高まりの中で、「米英崇拝」であるとして左横書き排除を唱える者も現れ、左横書きを用いる商店への投書運動も展開された[5]。このため、新聞社の中には左横書きの広告を拒否する社もあった[6][7]

戦後、GHQ/SCAPによるアメリカ教育使節団報告書中のローマ字採用勧告や漢字の廃止運動(国語国字問題 / 漢字廃止論)などの社会運動により、西欧の記法に倣う左横書きが革新的、「1行1文字の縦書き」は保守的、というイメージは決定的なものとなり、「1行1文字の縦書き」は衰退の一途をたどることとなった。前出の屋名池の調査によれば、新聞の見出しの横書きは『読売報知新聞』(現在の『読売新聞』)が1946年(昭和21年)1月1日号から左横書きに切り替わったのを初の例として、1948年(昭和23年)までに『日本経済新聞』を除く全紙の見出しが切り替わっている(日本経済新聞は1950年(昭和25年)9月に切り替え)。また紙幣では1948年(昭和23年)3月のB50銭券を端緒として左横書き化されている[8]

また、諸官庁の作成する文書形式のガイドライン『公用文作成の要領』(1951年(昭和26年)10月30日国語審議会審議決定・1952年(昭和27年)4月4日内閣官房長官依命通知)では、「執務能率を増進する目的をもって、書類の書き方について(略)なるべく広い範囲にわたって左横書きとする」としている。これにより、行政機関では、早くから多くの文書で横書きが用いられてきた。しかし、法律案に関する文書や閣議に関する文書など、縦書きされる文書も多く残る。

これに対して、裁判所では、長らく全ての文書で縦書きが用いられていた。しかし、2001年平成13年)1月1日からは、全ての文書で横書きが用いられている。なお、司法試験(論文式)の答案も、同年から横書きに変更された。

1行1文字の縦書きの中には、左横書きの影響を受けることで、長音符が縦棒でなく横棒になっていたり、桁折り進行するもののうち文節と無関係な位置で行替えされるものなどが生まれ、やがて僅かではあるが数行に渡って右横書きで書かれたテキストも登場した。しかし、書物等の長大なテキストを表現する記法として発達することはなく、「1行1文字の縦書き」文化から脱しえなかった。もちろん「戦前までの日本語の横書きは、右横書きしかなかった」という俗説が広がっているが、誤りであり、1行1文字の縦書きに混じって、右横書きも見られた、というのが正しい。

一方、印刷物の本文を見ると、日本で発行されている新聞、雑誌、一般向け書籍の多くで、今日まで縦書き(縦組み)が主流であり続けている。とりわけ新聞の一般紙では、縦組みしかない。朝日新聞社が1950年(昭和25年)頃に1ページのみの横組みの内部テスト版を作ったことがあるが、実際に発行されることはなかった[9]。雑誌でも、自然科学や工学、社会学や経済学、言語学・人類学などの分野を除き、本文に縦組みを採用する例がほとんどである。一般向け科学雑誌の『科学朝日』のように、1941年(昭和16年)の創刊時には縦組みで、その後横書き(横組み)に変えながら、1989年(昭和64年 / 平成元年)に縦組みに戻した例もある。写真やイラストの多いレイアウトに向いていたからだという[10]。文芸書の横組みは、1984年(昭和59年)刊の小峰元『クレオパトラの黒い溜息』が初めてと見られる[11]が、小峰のこれ以外の作品は出版社の要望により、すべて縦組みとなっている[12]。今日でも、文芸作品が横組みとされることはまれである。

縦書きと横書きの字体、書体[編集]

日本語において縦書きと横書きで字形や組版の異なることがある。

漢字[編集]

漢字は、活字体の場合は縦書きのときも横書きのときもその字体に変わりはないが、手書きの字形の場合は異なるケースがある。

手書きの場合次の文字が下になり、横書きの場合は次の文字が右になる。そのため、最終画のはね方などが異なる[13]

仮名[編集]

小書き仮名は、縦書きと横書きで書く位置が異なる。縦書きの場合は、通常の文字に比べ右側に書き、多くの場合は右上に書く。以前は前の文字の右下に書くこともあった。横書きの場合は、下に書き、左下にすることも多い。、下付き文字のように枠外になることはない。

音引き(ー)は、縦書き時は縦線で、横書き時は横線で書かれる。横書きの場合は若干右上に傾けたり、丸みを持たせたりすることがあるが、縦書きの場合は通常傾けない。波ダッシュを用いる場合は、通常縦書きの場合と横書きの場合は90度回転させた上で鏡像にした字形になる。

のような合略仮名は縦書きのときにのみに用いられる。

くの字点は縦書きのときに主に用いられ通常横書きでは用いないが、への字のように書いたりダッシュで代用することもある。

約物[編集]

約物は、縦書きと横書き、さらに横書きでも左横書きと右横書きとで字体が異なるものがある。

句読点は、縦書きの場合は全角枡の右上、横書きの場合には全角枡の左下に書く。

括弧は縦書きの場合と横書きの場合は90度回転させる。

使用する約物を変える場合もあり、横書き時には句読点の代わりにピリオドコンマを用いることがある。また、ダブルクオートを横書きで用いるが、縦書きでは鍵括弧に変更する場合もある。

小数点は、横書きではピリオドを用いるが、縦書きでは中黒を用いる。

ダッシュは、縦書きは縦線、横書きは横線になる。

リーダーは縦書き時には中黒を縦に並べるが、横書きは中黒を横に並べたり、ピリオドを横に並べたりする。

英数字[編集]

数字

数字に関しては、横書きでは算用数字を、縦書きでは漢数字を用いることが多いという違いがある。ただし、縦書きでも2〜3桁程度の算用数字は漢字・かな1文字分のスペースに横に並べて詰め込むことがあり、これを組数字という。

新聞社や通信社の一部では、縦書きの算用数字化を進める動きもあるという[14]

ローマ字

縦書きの中のローマ字は仮名のようにそのまま書かれることも多いが、90度回転して文字の下が左に向くように書くこともある。

日本に現存する右横書き[編集]

バスの右側面の表記例。「貸切」「岩手県北自動車株式会社」「八幡平号」の文字が右横書きで書かれている

自動車など明瞭に前後の概念を持つ対象に文字を書く場合、走行中の読み取りを考慮した結果、右側面に右横書きが用いられることがある。

さらに、右横書きが隆盛であった時期は特定できるため、時代を指し示す懐古調演出として旧い字体・かなづかいと共に右横書きが用いられることがある。

また、蕎麦屋の「蕎麦処」「生蕎麦」等の暖簾文字などに見られるように、「老舗」「伝統」「格式」を演出したいがための右横書きも健在である。ただし、これは上記2例と異なり、前述の扁額などの流れを汲んだ古来よりの「1行1文字の縦書き」に属するものである。

古い寺の門などには、今でも右横書きで寺の名が残っている物が多い。文化財という性質上、何らかの事故で損傷し、修復したり再建したりするときも、右横書きを残す場合が一般的である。

縦書きと横書きの使い分け[編集]

現代日本においては、縦書きも横書きもともに用いられる。全体的な割合としては、古来縦書きが主流だったことの名残から、縦書きの方が横書きよりも多い[要出典]

縦書き(縦組み)は、日本語本来の記法である伝統と矜持と共に、書道作品のほとんど、国語の教科書、文芸小説詩歌戯曲など)、新聞などで用いられる。漫画もその戦前からの伝統を踏襲しており、コマ運びは右横進行、吹出しの台詞は縦書きが標準であるが、左開きに製本された場合、コマ運びだけは、右横進行のことも左横進行のこともある。自然科学関連の書籍でも、数式などを用いない啓蒙書では、縦書きの例が依然として多い。社会科学系の書物も、数理経済学、会計学の専門書を除くと縦書きが多い。公文書においては法令や法案、官報、あるいは国会での決議と決議案が縦書きにされる。縦書きおよび右横書き基調の綴じ本は、右開きに製本される。

横書き(横組み)は、例えば、外国語数学科学音楽になどに関する専門書、つまり、横書きの言語数式楽譜を含むような文書のほとんどで使われる。コンピュータ出力もほとんど横書きである。映画・ゲーム情報誌なども、横長の画面写真を扱うレイアウトの性質上、横書きが主流である。 左横書き基調の綴本は、左開きに製本される。

シナリオも縦書きで出版されるのが普通であるが、英語学習用の洋画の対訳つきシナリオ書などは横書きである。

社会科学系の書物では、副島隆彦の『アメリカ政治思想の大研究』は、人名や専門用語などに正式な英語表記が併記されるために横書きで出版された。しかし、文庫化されたときに縦書きになった。

数式を多用する経済学の場合、専門書は横書きの場合も多いが、経済評論などの場合は縦が普通である。『資本論』も縦書きで出版されることが多い。小室直樹の経済学の啓蒙書は、数式を使うが縦書きである。トム・ピーターズの経営書の訳書も縦書きで出版されていたが、「マニフェスト・シリーズ」は横書きである。

学校教育教科書では、国語に属する分野以外はほぼ横書きが用いられる。社会科が縦書きだった時期も昭和60年代まであったが、その後は横書きになった。

横書き基調の書面の左右端などのスペースに縦書きが用いられたり、逆に縦書き基調の書面の上下端に横書きが用いられることも珍しくなく、こういったことは縦横両用の日本語組版の強みといえる。新聞では、見出しにおいてデザインやレイアウトの都合または強調のために、横書きを使うこともある。またテレビラジオ番組予定欄(ラテ欄)は、原則として横書きである。

文芸作品[編集]

文芸作品の多くが縦書きだが、ケータイ小説は横書きが多い。純文学でも、帰国子女が著者である英語混じりの作品(水村美苗の『私小説from left to right』、黒田晶『メイド・イン・ジャパン』)は、横書きである。そのような事情が無い横書きの純文学小説には、篠原一の『誰がこまどり殺したの?』や福永信の『アクロバット前夜』がある。英語のような横書き言語の訳書であっても縦書きが普通であるが、バロウズの『内なるネコ』(山形浩生・訳)は横書きで出版された。

絲山秋子の『スモールトーク』は、単行本では横書き、文庫版は縦書きだった。

岡井隆の歌集『伊太利亜』は表紙は縦書き、作品は横書きで出版された。

2013年前期の芥川賞(第148回)を横書き小説『abさんご』が受賞した。同賞において、石黒達昌の横書き小説が候補に挙がったことはあったが、受賞したのは本作が初めて。

アジアにおける縦書きと横書き[編集]

東アジア[編集]

東アジアにおける文字の主流は、大きく漢字から派生した文字と、ブラーフミー文字から派生した文字とに分かれる。漢字から派生した文字は、伝統的に主に縦書きを使用する。一方、ブラーフミー文字から派生した文字は、伝統的にヨーロッパのアルファベットと同様、左から右に向かっての横書きを使用する。ただし、現在はパソコンの普及により、漢字から派生した文字についても、横書きが多用されるようになっている。

この2つと関わりのない文字体系も存在するが、書く方向に関しては、この2つの影響を大きく受けているものが殆どである。

日本の文字に大きな影響を与えた中国では、やはり古来は縦書きが主流であり、横書きにするときには基本的に右から書いていた。日本語と同様、中国の漢字に大きな影響を受けた朝鮮ベトナムでは、それぞれハングルチュノムという独自の文字が存在したが、これらもやはり縦書きが主流であった。

しかし、現在ではハングルは左横書きが主流となっている。新聞や小説でも横書きが基本であり、縦書きが廃れつつある。また、ベトナムではチュノムは使用されなくなり、ラテン文字フランス語)から派生したクオック・グーが使用されている。クオック・グーは、当然ながら左横書きであり、縦書きが使用されることは少ない。

現在では使用されていないが、おそらくは漢字に大きな影響を受けたと考えられる西夏文字契丹文字もまた縦書きが主に用いられた。

チベットのチベット文字インド系の文字であったため、漢字と異なり、基本的に左からの横書き専用の文字として発達した。ただし、チベットで中国の影響が強くなると、漢字と同じように縦書きで用いられるようにもなった。また、チベット文字から派生したパスパ文字モンゴル文字は、書き方においてチベット文字と大きく異なり、基本的に縦書き専用の文字である。縦書き専用という特徴のため、モンゴル文字はパソコンの表示において大きな制約が出てしまっている。

他のブラーフミー系文字のタイ文字クメール文字ビルマ文字デーヴァナーガリーなどは、左から右に向かっての横書きである。

西アジア[編集]

西アジアでは、古代アラム語事実上の国際語として普及しており、その文字であるアラム文字もまた広範に使用されていた。その後、アラビア文字シリア文字古ヘブライ文字など、西アジアでは多数の文字が生まれたが、その多くはアラム文字を源流とする。

その多くは右から左に向かって横に書く形式であり、縦書きは基本的に用いられなかった。現在、西アジアで使用される文字は、大きく分けてアルファベット、ヘブライ文字、アラビア文字だが、ヘブライ文字、アラビア文字は今でも右から左に向かって書くのに対し、アルファベットを使用する言語は、ヨーロッパと同様に左から右に書く。

欧文における縦書き[編集]

欧文の縦書きと横書きが混じっている例。柱の部分には、縦書きで"HICKS CANYON"、すぐ下に横書きで"TRAIL"と書いてある。

英語フランス語など、ラテン文字で書かれる言語は通常横書きだが、文字を縦に配置せざるを得ない場面で次のような方法が取られることがある。

  • 文字の向きを変えずに1文字ずつ縦に配置する。これは「#歴史的経緯」で日本語の右横書きについて述べたのと同様、「1文字ずつの横書き」とみなせる。横方向は左から右が原則なので、改行する時は右行に行く。立看板や柱などに書くときに見られる。
  • 横書きの行全体を左に倒す。行の方向は下から上となる。フランス語の書籍の背表紙などに見られる。この場合、改行後は右行に行く。
  • 横書きの行全体を右に倒す。行の方向は上から下となる。英語の書籍の背表紙や、縦書きで書かれた日本語の文章中に欧文を交ぜる時などに見られる。この場合、改行後は左行に行く。

ヒエログリフにおける縦書きと横書き[編集]

古代エジプト象形文字ヒエログリフは、象形の原理によって作られた文字であるが、その用法としては表音(六書でいう仮借)が多い。書字方向は縦書き、横書き、右書き、左書きが可能であり、書字方向の制約がゆるい。しかしながら、規範となる書字方向として右横書きが意識されていた。また、文字は左右逆(鏡像)に書いてもよいので、縦書きの行替えの方向や横書きの進行方向は、人や鳥をかたどった文字の顔の向きで判別する。たとえば、横書きで顔が左を向いていれば左横書きである。文字ごとに形や大きさがまちまちなため、小さい文字や縦長・横長の文字が続くときは、行中で2 - 3個重ねて書く(たとえば横書きであれば縦に重ねる)こともしばしば行われた。

コンピュータ処理における縦書きと横書き[編集]

コンピュータは左横書きの英語を用いる米国で発展したものであり、また同様に左横書きである算用数字を多用することから、コンピュータにおける書字方向は左横書きが圧倒的に優勢である。しかし近年、コンピュータの性能・容量の向上と、普及拡大に伴う国際化多言語化の流れにより、左横書き以外の書字方向のサポートも求められるようになった。

主要な課題は、右横書きと縦書きのサポートである。

右横書きのサポート[編集]

アラビア文字やヘブライ文字は、右横書きのサポートが必須である。しかも、これらの文字に欧文や算用数字が混在する場合はそこだけ左横書きとなることから、単に文字を右から左に並べればよいという問題ではなく、右横書きと左横書きが混在・入れ子になった場合の表示や入力を正しく処理することが求められる。

また、右横書きでは左横書きと比べて約物の向きが逆になる。特に、括弧の論理的意味が逆になる(たとえば「)」が開き括弧となる)点に注意が必要である。

コンピュータの世界では、右横書きのことをR2LあるいはRTL(right-to-left)と呼ぶ。左横書きはL2RないしLTRである。R2LとL2Rが混在した環境のことをBiDi (bi-directional) という。近年、主要なオペレーティングシステムがBiDiをサポートしており、またHTML 4.0においてもdir属性が導入されBiDiのサポートが進められている。

縦書きのサポート[編集]

この節には、一部のコンピュータや閲覧ソフトで表示できない文字(繁体字簡体字)が含まれています詳細

日本語などの漢字文化圏の文字言語は伝統的に縦書きであったが、近年は左横書きも一般的となり、コンピュータでも左横書きで処理されてきた。しかし、手紙や宛名書き、小説などを縦書きで読み書きしたいというニーズは根強いものがあり、テキストエディタワープロソフト、年賀状作成ソフト、電子書籍リーダーなどで縦書きのサポートが取り入れられている。

また、ウェブブラウザには縦書き専用の影鷹がある他、横書きの文章を縦書きに変換するJavascriptのライブラリを提供しているプログラマーもいる。Flashでは、バージョン10から縦書きレイアウトを組めるようになっている。現在普及中のCSSのlevel 3では、縦書きをサポートしている。加えて電子書籍用のファイル形式EPUBではバージョン3から、日本語や中国語の縦書きや、右横書きのアラビア語、ヘブライ語に対応した。

CSSで文字を縦組みに変換する
特性 writing-mode layout-flow -webkit-writing-mode
宣言 writing-mode:tb-rl; layout-flow:vertical-ideographic; -webkit-writing-mode:vertical-rl;
日本語
「天の人を生ずるは億兆皆同一轍にて、之に附与するに動かす可からざるの通義を以てす。即ち其通義とは人の自から生命を保し自由を求め幸福を祈るの類にて、他より之を如何ともす可らざるものなり。」
「天の人を生ずるは億兆皆同一轍にて、之に附与するに動かす可からざるの通義を以てす。即ち其通義とは人の自から生命を保し自由を求め幸福を祈るの類にて、他より之を如何ともす可らざるものなり。」
「天の人を生ずるは億兆皆同一轍にて、之に附与するに動かす可からざるの通義を以てす。即ち其通義とは人の自から生命を保し自由を求め幸福を祈るの類にて、他より之を如何ともす可らざるものなり。」
繁体字中国語
「我等之見解為,下述真理不證自明:凡人生而平等,秉造物者之賜,擁諸無可轉讓之權利,包含生命權、自由權、與追尋幸福之權。」
——《美國獨立宣言》
「我等之見解為,下述真理不證自明:凡人生而平等,秉造物者之賜,擁諸無可轉讓之權利,包含生命權、自由權、與追尋幸福之權。」
——《美國獨立宣言》
「我等之見解為,下述真理不證自明:凡人生而平等,秉造物者之賜,擁諸無可轉讓之權利,包含生命權、自由權、與追尋幸福之權。」
——《美國獨立宣言]》
簡体字中国語
“我等之见解为,下述真理不证自明:凡人生而平等,秉造物者之赐,拥诸无可转让之权利,包含生命权、自由权、与追寻幸福之权。”
——《美国独立宣言》
“我等之见解为,下述真理不证自明:凡人生而平等,秉造物者之赐,拥诸无可转让之权利,包含生命权、自由权、与追寻幸福之权。”
——《美国独立宣言》
“我等之见解为,下述真理不证自明:凡人生而平等,秉造物者之赐,拥诸无可转让之权利,包含生命权、自由权、与追寻幸福之权。”
——《美国独立宣言》
説明 IEでしか適用しない。 IEでしか適用しない。 一部のブラウザでは文字を90度回転することがある。

脚注[編集]

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  1. ^ 屋名池2003年、pp. 9f, 21ff。
  2. ^ 屋名池2003年、pp. 32ff。
  3. ^ 屋名池2003年、pp. 161f。
  4. ^ 屋名池2003年、p. 163。
  5. ^ 平井1948年、pp. 361f。
  6. ^ 平井前掲。
  7. ^ 屋名池2003年、pp. 166f。
  8. ^ 屋名池2003年、pp. 170ff。
  9. ^ 山田1987年、p.31。
  10. ^ 高岡昌江 『国語の教科書は、なぜたて書きなの?』 アリス館、2001年、p. 100。ISBN 4-7520-0179-9当時の編集長に対するインタビューへの回答。
  11. ^ 紀田1994年、p. 193。
  12. ^ 山田1987年、p. 30。
  13. ^ 押木秀樹. “手書き文字の科学-なぜこんなふうに書くのだろう?--なぜと問いかける書写指導のために-” (日本語). 2011年6月11日閲覧。
  14. ^ 第2章 数字表現に関する調査 (2)縦書き算用数字は見やすい? 七転八倒は7転8倒か? 平成20年度「放送における数字表現」に関する調査から メディア研究部(放送用語) 山下洋子

参考文献[編集]

  • 紀田順一郎 『日本語大博物館 悪魔の文字と闘った人々』 ジャストシステム、1994年1月。ISBN 4-88309-046-9同、筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2001年9月。 ISBN 4883090469
  • 平井昌夫 『国語国字問題の歴史』 昭森社〈思潮文庫4〉、1948年9月。 - 1998年(平成10年)に三元社より復刻版が刊行されている。
  • 屋名池誠 『横書き登場』 岩波書店〈岩波新書新赤版863〉、2003年11月。ISBN 4-00-430863-1
  • 山田尚勇「横書きの歴史・現状と評価」、『文学』第55巻第6号、岩波書店、1987年6月、 pp. 25-44。
  • Obana, Yasuko (1997). “Vertical or Horizontal? Reading Directions in Japanese”. Bulletin of the School of Oriental and African Studies, University of London (Cambridge University Press) 60 (1): pp. 86-94. 
  • 西山豊 「書字方向の数理」『理系への数学』現代数学社, 2008年10月, Vol.41, No.10, 13-17.

関連項目[編集]

外部リンク[編集]