ダイアクリティカルマーク

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á
ダイアクリティカルマーク
アクセント符号  
アキュート
´
ダブルアキュート
˝
グレイヴ
`
ダブルグレイヴ
 ̏
ブレーヴェ
˘
倒置ブレーヴェ
 ̑
ハーチェク
ˇ
セディーユ
¸
サーカムフレックス
ˆ
トレマ / ウムラウト
¨
ティルデ
˜
ドット符号
˙
フック
 ̡
フック符号
 ̉
ホーン符号
 ̛
マクロン
¯
オゴネク
˛
リング符号
˚
ストローク符号
/
コンマアバブ
ʻ
コンマビロー
,
非ラテン文字の
ダイアクリティカルマーク
シャクル  
シャッダ
 ّ
キリル文字  
ティトロ
 ҃
グルムキー文字  
ヘブライ文字  
ニクダー
 ִ
ブラーフミー系文字  
日本語  
濁点
半濁点
クメール文字母音  
シリア文字  
タイ文字  
ラーオ文字  
満州文字  
圏点
関連
丸印
声調記号  
国際音声記号  
約物  
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ダイアクリティカルマーク英語: diacritical mark)は、ラテン文字等の文字で、同じ字形の文字であるが、発音が区別されるべき場合に文字に付される記号のこと。あえて日本語の文字で似た概念を探せば、濁点半濁点に相当するであろう。満州文字における圏点もこれに類似したものといえる。

概要[編集]

日本語では、区分符号(区分記号)、補助符号(補助記号)、区別的発音符(区別的発音符号・区別的発音記号)、読み分け符号(読み分け記号)、分音符(分音符号・分音記号)等と訳される場合もある(ただし、分音符・分音符号・分音記号はトレマだけを指すのが普通)。『学術用語集 言語学編』では「補助記号」または「識別記号」の訳語が提案されている[1]

ダイアクリティカルマークが付いた文字の、付かない文字からの独立性の度合いは様々である。言語によって、印刷によっては付けなくてもいいもの、必ず付けなくてはならないもの、付けられない場合は代替の手段をとることが決まっているもの、方言(地域、国等)によって付け方が異なるもの等がある(ローマ字表記された日本語においても、しばしば長音記号が省略されるが、省略された際には厳密な発音の判別が困難となる場合がある)。名称も、独立した名称のあるものとそうでないものがある。また、辞書の順序では、ダイアクリティカルマークがない場合と同じ場所に並べられるものと、独立した位置が決まっているものがある。

コンピュータ[編集]

コンピュータ処理では、ダイアクリティカルマークのついた文字に独立した文字コードを与えているもの(ISO/IEC 8859UnicodeJIS X 0213など)が多いが、別の方法として、親字の前または後に特殊なコードを置くことによって表記する方法がある。前に置く例としてはISO/IEC 6937英語版が、後に置く例としてはUnicodeでCombining Diacritical Marksと呼ばれる一連のコード(U+0300からU+036Fまで)がある。

種類と例[編集]

概観欄には主要な言語のみ挙げた。各記号の詳細については、それぞれの項目、さらに各言語の項目を参照のこと。

なお、言語名の後にカッコつきで示した綴りは、その言語におけるその記号の名称である。

種類 概観
ウムラウト ä, ö, ü 文字の上に小さく書かれていた e の字が起源である。伝統的には例示した3種類のみで、ウムラウト現象によって前舌化した母音価を表す。ドイツ語 (Umlautzeichen) やスウェーデン語で使うほか、ö, ü は前舌円唇系の母音をもつ多くの言語で使用。中国語ピンインでは ü のみ用いられる。
- ダブルアキュート ő, ű ハンガリー語独特の記号で、ウムラウト記号の長音を意味する。
トレマ ë, ï, ü, ÿ 見た目はウムラウトと同じ。フランス語 (tréma)、スペイン語 (crema, diéresis)、ギリシャ語 (διαίρεσις) などで、連続した母音字のどちらかに付けて、発音のルールを変更させるもの。またオランダ語では合字 ijÿ のように表記することがある。
アクセント (下を参照) 元来は古典ギリシア語を読み下す際に用いられた補助記号に由来。一般に、グレイブ・アクセント、アキュート・アクセント、サーカムフレックスの3種類を指す。
- グレイヴ・アクセント à, è, ì, ò, ù イタリア語では強勢符号に使用。フランス語では à, è, ù のみ使用。中国語ピンインの第4声(下降)の声調符号にも使用され、ウムラウトと組み合わせた ǜ も用いられる。
- アキュート・アクセント á, é, í, ó, ú スペイン語、イタリア語で強勢符号に使用。フランス語では é のみ使用し [e] を表す。ハンガリー語では長音符として使用。中国語ピンインの第2声(上昇)の声調符号にも使用され、ウムラウトと組み合わせた ǘ も用いられる。
- サーカムフレックス â, ê, î, ô, û フランス語ポルトガル語ベトナム語(さらにこの上に声調を示すものがつく)などで使用。日本語のローマ字表記でも使用される。
セディーユ ç, ş 文字の下に小さく書かれていた z の字が起源。フランス語 (cédille) やポルトガル語 (cedilha) では ç[s] に用いる。ほかトルコ語系の言語でも使用。
- コンマビロー ș, ț セディーユの変種で、親字との間に隙間がある。ルーマニア語で用いるが、セディーユも同様に用いられ、両者の間に区別はない。
マクロン ā, ē, ī, ō, ū もともとはラテン語の学習に用いられたもので、ほとんどの場合長音を表す。ラトビア語ポリネシアの諸言語などで使用。日本語のローマ字表記でも長音の表示に使用されることが多い。中国語ピンインの第1声(高平)の声調符号にも使用され、ウムラウトと組み合わせた ǖ も用いられる。
ブレーヴェ ă, ğ もともとはラテン語の学習に用いられたもので、breve(短く)の名のとおり、伝統的には短音記号とも呼ばれるが、現代の諸言語では実際には必ずしも短音を表すとは限らない。ğトルコ語に現れる。ăルーマニア語ベトナム語(さらにこの上に声調を示すものがつく)で独特の母音価の表現にあてられている。
チルダ ñ, ã, õ 文字の上に小さく書かれていた n の字が起源。スペイン語 (tilde) の ñ は“ニャ行音”、ポルトガル語には ã, õ が現れる。母音につく場合は鼻母音を表すのが慣例。ベトナム語では声調記号として母音字につく。
オゴネク ą, ę, į, ǫ, ų ポーランド語 (ogonek)、リトアニア語などで使用。鼻母音や、かつて鼻母音であった母音。
リング å, ů 文字の上に小さく書かれていた o の字が起源。åスカンジナビア諸語で「オー」のような音を表す。 ůチェコ語などで使用。
ハーチェク ě, č, š, ž, ř スラブ系のいくつかの言語で使用。ほかにリトアニア語でも。ǎ, ǐ, ǒ, ǔウムラウトと組み合わせた ǚ も中国語ピンインの第3声(降昇)の声調符号としても使用される。
ドット ė, ċ, ġ, ż, ạ, ẹ, ị, ọ, ụ ポーランド語żリトアニア語ėマルタ語ċ, ġ, ż など。ベトナム語では声調記号として母音字の下につく。
ストローク ø, ł ø はスウェーデン語を除く北ゲルマン諸言語で用い、ö に同等と考えてほぼ差し支えない。łポーランド語で使用し、[w] に近い音。
ホーン ơ, ư ベトナム語(さらにこの上に声調を示すものがつく)で使用。ヨーロッパ語に余り現れない音価を表すために創出されたもの。
フック ả, ẻ, ỉ, ỏ, ủ ベトナム語で使用。声調を示す。

正書法に含まれないもの[編集]

以下は各言語の学習や国語学・言語学的な文脈においてのみ用いられるもの。 学習教材や研究文献以外の言語表記で目にすることはほとんどない。

種類 概観
ダブルグレイヴ ȁ, ȅ セルビア語クロアチア語スロベニア語で用いられるアクセント符号。

脚注[編集]

関連項目[編集]