マルタ語
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| マルタ語 Malti |
|
|---|---|
| 話される国 | マルタ共和国、カナダ、オーストラリア、アメリカ、イギリス |
| 地域 | ヨーロッパ及び北米 |
| 話者数 | 60万人 |
| 話者数の順位 | 100位以下 |
| 言語系統 | アフロ・アジア語族 |
| 公的地位 | |
| 公用語 | マルタ共和国、欧州連合 |
| 統制機関 | Il-Kunsill Nazzjonali ta' l-Ilsien Malti (since April 2005) |
| 言語コード | |
| ISO 639-1 | mt |
| ISO 639-2 | mlt |
| ISO 639-3 | mlt |
| SIL | - |
マルタ語(マルタ語:Malti, Lingwa Maltija)は、マルタ共和国で公用語として話される言語。欧州連合(EU)の公式言語の一つ。純言語的にはアラビア語のアーンミーヤ(口語方言)の変種の一つとする説が有力だが、ロマンス系語彙の借用語が多いことから(ただし、これはマグリブのアーンミーヤ全体にいえることである)、純粋に言語学的な観点からも別言語とする学者もいる。
マルタ島を長く支配していたアラブ人によってもたらされたアラビア語を基礎に成立した、ヨーロッパ圏唯一のアフロ・アジア語族 - セム語派の言語である。アラビア語のアーンミーヤ(口語方言)の中では、マグリブ方言に最も近い。
イタリア語を筆頭にロマンス系の語彙を多く含み、セム系言語で唯一のラテン文字による正書法を持つ。
それまで公用語であったイタリア語に変わり、1936年に英語と並んでマルタ共和国の公用語に採用された。今日では、約60万人の話者がいる。オーストラリアやアメリカ合衆国、カナダへ移民した人々の間でも使われている。
現存する最も古い使用例は、15世紀にPietro Caxaroによりかかれた、「en:Il Cantilena」である。何世紀もの間、マルタ語は話言葉であり、記述する時には、アラビア語、のちにイタリア語が使用された。
目次 |
[編集] 文字と発音
| 文字 | A | B | Ċ | D | E | F | Ġ | G | GĦ | H | Ħ | I | IE | J | K |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 音価 | /a/ | /b/ | /ʧ/ | /d/ | /ɛ/ | /f/ | /ʤ/ | /g/ | *1 | *2 | /ħ/ | /i/ | /iɛ, iː/ | /j/ | /k/ |
| 文字 | L | M | N | O | P | Q | R | S | T | U | V | W | X | Ż | Z |
| 音価 | /l/ | /m/ | /n/ | /o/ | /p/ | /ʔ/ | /r/ | /s/ | /t/ | /u/ | /v/ | /w/ | /ʃ, ʒ/ | /z/ | /ʦ, ʣ/ |
- GĦは結合した母音を長母音化し、咽頭音化する。ただし、直後にhが来た場合には、/ħ:/となる。語尾では/ħ/の音価を持つ。例:qtigħ/qtiːħ/
- HはĦ・GĦに続く場合や語尾では/ħ/、それ以外では音価なし。
- /ʃ/は'x'で表記されるため、他言語使用者の目から見ると奇妙な綴りができるときがある。ambaxxata/ambaʃːaːta/は「大使館」であり、xena/ʃeːna/は「場面(scene)」である(イタリア語ではambasciata, scena)。ただしポルトガル語でも部分的ではあるが x を同様に使っている。
[編集] 文法
ロマンス語の影響を受けてはいるが、マルタ語の文法は依然としてセム語的である。形容詞は名詞を後ろから修飾し、本来副詞はなく、語順はかなり自由である。アラビア語やヘブライ語と同様、名詞が定冠詞をとる場合、それを修飾するセム語起源の形容詞も定冠詞をとる。例:L-Art l-Imqaddsa(=<定冠詞>-土地 <定冠詞>-聖なる)。ちなみに、アラビア語では'al-'arḍ 'al-muqaddasa、ヘブライ語ではha'arets hakkedoša。但し、形容詞が定冠詞をとらないこともある。ロマンス語起源の形容詞は定冠詞をとらない。
名詞の数には部分的に双数が残存している。
動詞はセム語的な三語根のパターンを未だに保持している。つまり、子音三つからなる語根に接頭辞、接中辞、接尾辞を付け加えることで動詞に文法的な意味を付与するのである。例えば、「書く」を表す三つの子音KTBに接中辞-i-, 接尾辞-naを加えてktibna(私たちは書いた)を作る(ちなみにアラビア語ではkatabna, ヘブライ語ではkatavnu)。時制は非完了と完了の二つである。
ロマンス語起源の動詞にはセム語的な動詞活用法が適用されず、アラビア語の接頭辞と接尾辞がつく。例えば、iddeċidejna(私たちは決めた)はロマンス語の動詞(i)ddeċidaにアラビア語の語尾-ejna(一人称複数完了)がついたものである。チュニジア方言などいくつかの方言でこのような動詞活用が見られるとはいえ、アラビア語ではこのような動詞活用は行わないのが基本である。
マルタ語の文法にはセム語的なものとロマンス語的なものが共存しており、語彙の起源と慣習に従って使い分けられる。英語からの借用語に見られるアングロサクソン語的な要素は最近の現象である。
ロマンス的な文法は概して単純である。ロマンス語起源の名詞は-iか-ijietを付け加えることで複数になる。例えば、lingwa(言語)はlingwiと複数化される。セム語の複数はもうすこし複雑である。規則変化は-at/-iet/-ijiet(アラビア語の-at, ヘブライ語の-ot)、-(i)n(アラビア語の-iin, ヘブライ語の-im)、-an/-ien(アラビア語の-aan)をつけることで行われ、不規則変化はktieb(本)/kotba; raġel(男)/(i)rġielのように母音の変化によって表される。これらはセム語系では一般的な屈折である(ヘブライ語ではsefer(本)/ sfarim)
[編集] 語彙
マルタ語の語彙はアラビア語語根を基礎とし、(イタリア語トスカーナ方言よりむしろ)シチリア語から膨大な借用語をとりいれたハイブリッドである。この点においてフランス語の影響を強く受けたゲルマン語である英語、アラビア語の影響を強く受けたインド・イラン語派のペルシア語と似ている。 猶、ロマンス語を基調としつつ大量のアラビア語語彙を受け入れたスペイン語とは鏡像的な関係であるとも言える。
語彙の60%はセム語系であり、残りはロマンス語であると概算される。Zammit (2000)によるとコーラン・アラビア語からサンプルをとった1820語の語根のうち40%がマルタ語に見出すことができるとのことである。これはアラビア語のモロッコ方言(58%)やシリア方言(72%)に比べて少ない。一般に基本的な概念を表す語彙はアラビア語起源であり、新しい概念、物、政府、法律、教育、芸術、文学に関する「高尚」な語彙はシチリア語から借用されている。よって、raġel(男)、mara(女)、tifel(子供)、dar(家)、xemx(太陽)、sajf(夏)といった語彙は全てアラビア語起源であり、skola(学校)、gvern(政府)、repubblika(共和国)、re(王)、natura(自然)、pulizija(警察)、ċentru(中心)、 teatru(劇場、映画館)、differenza(差異)などはシチリア語からの借用語である。よって、ロマンス語の話者はマルタ語版ウィキペディアのメインページや新聞記事の見出しを理解することはできるが、「その男は家にいる」のような基本的な文でさえ理解できない。これは、外国語のできない英語話者がフォーマルな、あるいは学術的なフランス語の意味を推測することができるのに、簡単な文章はむしろ理解できないというのに似ている。
例として人権宣言の最初の部分を挙げる。
Il-bnedmin kollha jitwieldu ħielsa u ugwali fid-dinjità u d-drittijiet. Huma mogħnija bir-raġuni u bil-kuxjenza u għandhom iġibu ruħhom ma' xulxin bi spirtu ta' aħwa.
ロマンス系の語彙はイタリア語トスカーナ方言ではなくシチリア語の発音を反映している。よって、イタリア語の語末のoはuに、語末のeはiとなっている。例えばイタリア語のCristo(キリスト),arte(芸術)は、マルタ語ではKristu(シチリア語ではCristu), arti(シチリア語でもarti)である。
[編集] その他
- 嘗てアル・アンダルスで使われていたアラビア語を復元する際には、言語のルーツの近さと接触した言語の類似性からマルタ語が大きな参考とされている。詳しくはアル・アンダルス=アラビア語を参照のこと。
- 言語の成立過程から他のアラビア語話者からは時に「崩れたアラビア語に異教徒のロマンス語を混ぜた背教者の言語」と呼ばれることもある。とりわけイスラム過激派からはそのような見方を示されることが多い。
- 類似の状況の他言語としては、キルギスタンなど中央アジア諸国で漢民族系ムスリムによって使用され中国語方言を基本としながらも、中国語に比べアラビア語・ペルシア語・テュルク諸語・ロシア語からの借用語が多く、キリル文字で表記されるドンガン語が挙げられる。
[編集] 関連記事
[編集] 参考文献
- Aquilina, Joseph (1995). “Maltese: A Complete Course for Beginners (Teach Yourself) ”, NTC Publishing Group, ISBN 0844236977.
- Aquilina, Joseph (1987). “Maltese-English Dictionary: A-L Vol 1”, Midsea Books Ltd, ISBN 999099336X.
- Aquilina, Joseph (1989). “Maltese-English Dictionary: M-Z Vol 2”, Midsea Books Ltd, ISBN 9990993319.
- Zammit, Martin (2000). “Arabic and Maltese Cognate Roots”, Manwel Mifsud Proceedings of the Third International Conference of Aida, 241-245. ISBN 9993200441.

