色
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色(いろ)は、可視光線の組成の差によって質の差が認められる視覚である色覚、および、色覚を起こす刺激である色刺激を指す。
色は視覚を通して得られる感覚のひとつであり、色は、質量や体積のような物理量ではなく、音の大きさのように心理物理量である。例えば、物理的な対応物が擬似的に存在しないのに色を知覚する例として、ベンハムの独楽という錯視現象がある。ベンハムの独楽とは独楽の上面を白と黒で塗り分けただけであるのに、回転させると色知覚が生まれるという実験を指す。
目次 |
[編集] 色と色覚
物理学的には、色の変化は、物体と物体を照らす光との「相性」により説明される。物体に入射する何らかの波長の光が観測者の方向へ反射(正反射・乱反射を含む)する際に、その物体の物性に応じた特定の波長のみが反射されそれ以外は吸収される(=波長に応じ反射率が異なる)という現象が起こる。観測者には反射された光だけが届くため、その波長に基づき判断される色が、「その物体の色」として認識される(つまり、光そのものに色という性質はなく、光を受けた器官が色を作っている)。
またそのように観測者に届く光とそれに対する認識とに左右されるため、一般的な色は、人間の視覚即ち可視光線の範囲内を基準として表現されている。逆に言えば、可視光線の範囲を超えた波長の光について観測すると、可視光域で見た場合に比べて全く別の「色」や模様になっている物体もある。例えば蝶の羽根の模様は紫外線領域では人の肉眼で見る場合とはまた異なる鮮やかな模様を描き出すし、真っ黒に焼け焦げた新聞紙などは赤外線領域の或る波長では燃えた紙とインクが燃えた部分とで反射率が異なるため書かれていた元の内容を読むことが出来る。
生理学的に言うと、網膜内にある3種類の錐体細胞が吸収する可視光線の割合が色の感覚を生む。これらの錐体細胞は、それぞれ長波長・中波長・短波長に最も反応するタンパク質(オプシンタンパク質)を含み、順に L錐体・M錐体・S錐体と呼ばれる。霊長類における L錐体と M錐体はかつて2種類だった色覚の片方が進化の過程で分離したものであり、それゆえ近い波長感度を持っている。錐体が3種類あることはそのまま3種の波長特性を得る元となるので L, M, S の各錐体を直接に赤・緑・青でなぞらえることもある。
或る人が視覚を通して受け取る光の波長が変化すると、それに伴って変化する視覚経験の内容が色であると言える。但し、多数派の色覚を持つ者以外に、多数派の色覚をもつ人と色覚が部分的に整合しない(色覚特性:「色覚が弱い」のではない)人、色覚を持たない(全盲など)人もいるため、この事例にも例外がある。しかしながらこの事態に限っては、色覚特性があっても知覚可能な波長にあっては事情は同様である。
無色の紙のように、全波長において高い反射率で乱反射する物体は白と呼ばれる。一方、全波長において反射がほとんど無い場合、その色は黒と呼ばれる。完全な黒体は、例えば中空の物体に微小な開口部を設けることで実現できる。この場合、中空の部分に入った光はほとんど吸収され外に出てこないので、反射率はほぼ 0 になる。
[編集] 三原色と三種の錐体細胞
人間の視覚が色を認識する際には、その光の分光分布を直接計っているのではなく、眼球の錐体細胞に含まれる3つの色素が光を吸収する割合を計っているに過ぎない。そのため、独立した複数の色を合成する事で人間に別の色を感じさせる事ができる。例えば、黄の波長の光は、赤の波長の光と緑の波長の光の組み合わせによってほぼ同じ刺激を与えることが可能であり、黄は赤と緑の組み合わせの光として表現出来る。そしてこの場合、黄の波長だけが眼球に入っている場合と、赤の波長と緑の波長が組み合わされて眼球に入っている場合を人間は区別出来ない。
[編集] 色の合成
ここで挙げるのはあくまで、一般的な色覚を持つ人間を基準にした色の合成方法である。二色型の色覚を持つ人にとっては、2つの原色で(その人にとっての)全ての色を合成することができるし、4つ或いはそれ以上の錐体(若しくはそれに相当するもの)を持つ生物にとっては、4つ或いはそれ以上の「原色」が必要になる。また、そのような生物には、我々が実際の色に近いと判断する写真が、実物と明らかに異なる色合いに見えると考えられる。
[編集] 加法混色
有色の光線によって色を演出する場合、光を加える形で色を合成する(加法混色)。このとき、積極的な発光によらない、黒さ(暗さ)を表現できる仕組みが求められる。白色の光を合成するための波長を「光の三原色」や「色光の三原色」と言い、下記の三色を用いる。
- ■ 赤(橙赤)(波長: 625-740 nm 周波数: 405-480 THz)
- ■ 緑 (波長: 500-565 nm 周波数: 530-600 THz)
- ■ 青(紫青)(波長: 450-485 nm 周波数: 620-665 THz)
[編集] 減法混色
一方、物体の表面を特定の色にするためにインク等を塗る場合、元の光を遮る形で色を合成する(減法混色)。その合成の元になる色は一般に「色の三原色」や「色料の三原色」と言われ、シアン、マゼンタ、イエローの三色(下掲)を用いる。この三色を合成すれば、光の三原色の場合と反対に黒を作ることが出来る。しかし、この三色によって白を構成することは出来ない。
それ故、印刷等に用いる場合には白色素材の表面に使用することが前提となるし、白色の併用が必要になる場合もある。また、透明性の高い着色材(colorant)を使用しても、三原色の重ねや混合で成立する黒は理想とは異なり、純黒にはならない。然るに、より自然に色を現す目的で黒色の着色材が併用され、一般にCMYK(Cyan, Magenta, Yellow, Key plate) と呼ばれる。
[編集] 反対色性
光の混合おいては、赤(橙赤)と青によってマゼンタなどの紫を得られ、赤(橙赤)と緑を混ぜると黄を得ることが可能である。このとき、紫には元の赤味も青味もあるが、黄においてこの印象は寡少である。黄には元の色彩(赤、緑)がないと主張する人がいる。然しながら、現実に得られる黄は赤気味であったり緑気味であったりする。赤気味でも緑気味でもない「理想の黄」が現実に得られるとは断言できない。また、黄と青から白を作る場合も、元の色味が極度に減じる。このような色味を打ち消しあう性質を反対色性、色自体についてはもう一方の色の反対色、補色という。ただし補色という語は厳密な反対色を意味しない場合が多い。
反対色性は網膜から大脳へ効率的に色情報を伝達しようとするために生じると考えられている。なぜなら、それぞれの色は錐体応答間でも高い相関があるからである。そのため、相関が低くなるよう線形変換し、冗長性を低減している。
[編集] 色の恒常性
以上、人間が光線の波長そのものを知覚しているのではなく三種類の錐体の出力比を知覚していることを述べた。それだけでは例えば黄色みの強い照明の下では全てのものが黄色く見えてしまうはずだが、実際には色味のある照明の下でもその証明に支配されない認識が得られる。これを色の恒常性という。
人間の視覚には慣れがあり、多少の光源の色度の違いは補正される。このため昼と夕方とでは日光の波長分布が違うにも関わらず、物体は同じ色に見える。 太陽光と異なる波長分布を持つ照明下でも「白色」のものは白色と感じられる。例えば、「白」熱灯の波長分布はその名に反してかなり赤に偏っているが、その照明下でも白い紙は白く見える。 周囲の色々なものの見え方からそのときの照明条件を推定し、その推定に従って色の見え方を補正していると考えられる[1]。
太陽光と同じ波長分布の光が最も自然な白色とされるが、それより青成分の強い光を「爽やかな白」と感じる者が多い。それ故、世の中のモニター上に表現される白色は純白より青味が強い色になっている。そのような青味の白も度が過ぎない限り、平時から白を吟味していないような人(多くの人)の眼には「青」でなく「爽やかな白」と感じられる。
夜間など十分な光の得られない環境では錐体の機能、特に赤錐体の機能が低下する。そのため夜間には赤と黒の識別が困難になるのだが、そのような環境にあっても赤色であると知っているものは赤く見える場合がある。例えば、林檎を黒く塗ったものを暗い環境下で見せると、赤く見える、といったことが起こる。
太陽光線の波長分布は季節や時刻によって異なる。また、周囲に反射した光によっても影響される。例えば周りが青い物ばかりならば反射光によって環境光は青みが強くなる。だが、周囲の色に引きづられて物の色が違って見えては困る。色の恒常性は、そのような場合でも出来るだけ一定の色覚を保つために発達したとの考えは、或る自然さを持っている。但し、この補正にも限度があり、極端に偏った波長分布では補正しきれない。
[編集] 様々な生物の色覚
- 脊椎動物
- 色覚を持つものが多いが、色覚が弱いものや、全く持たないものも少なくない。
- 哺乳類
- 哺乳類の多くは 2 色型色覚か、色覚を持たない(実は色覚を持っているがその感度が低い)、というものも多い。哺乳類の祖先である古代の爬虫類は 4 色型であったが、中生代の哺乳類は夜や暗い所で活動することが主であったため、わずかな光でも見えるよう桿体細胞が発達し、その代わりに 2 色型色覚になったり、色覚そのものを失ったとされる。従来、偶蹄目(ウマ、イノシシなど)は色盲とされていたが、現在では 2 色型色覚を持つことが判明している。もっとも、2 色型なので赤から緑にかけての色を見分けるのは難しいようである。また、食肉目(ネコ、イヌなど)も同様に色覚を持つことが近年分かったが、その感度が弱いためにあまり利用されてはいないと考えられている。
- 哺乳類の中でも、狭鼻猿類(ヒトのほか、チンパンジー、オランウータン、ニホンザルなど)は 3 色型色覚を有する。哺乳類が本来あった 4 色型色覚のうち 2 種の視物質を喪失した後に、L 錐体の特性を僅かに変えることで M 錐体を得て、一度失った 3 色型色覚を再獲得したものと考えられている。このため、L 錐体と M 錐体の特性の違いの少ない歪な 3 色型色覚ともいえる。再獲得してからの歴史の浅さを反映して、同じ種内でも 3 色型色覚の個体の他に 2 色型色覚の個体(色覚特性、色覚異常)も少数混じる。それはヒトにおいても決して少なくなく、男性では約 5%、女性でも約 0.3%、全人類人口のうちの約 2 億人が、多少なりとも色覚に特性(異常)があるとされる。
- 鳥類
- 鳥類では色覚が、種や雌雄の識別、さらに餌を探すときなどに幅広く役立てられているようである。これは、色彩が豊かなものや、雌雄で著しく外見が異なるものが多いことからも容易に想像できるであろう。爬虫類由来の 4 色型色覚を持ち、人間でいう紫外線の領域まで認識できる。
鴉もまた 4 色型色覚であるが、主に活用している特定の波長を遮断することで中身をカラスに見えなくし、ゴミが荒されないようなゴミ袋が開発され、一部自治体で採用されている。これは黄色の半透明だが、黄色の袋であれば何でも効果がある訳ではない。 - 爬虫類
- 哺乳類や鳥類へ分岐した過去の爬虫類は一般的に 4 色型色覚を持っていたようだが、現在の爬虫類では 3色型や 2 色型、色覚を持たないものもいる。一部の亀にとっては独立した光が 4 つ存在しており、四色性である。この亀が持っている光受容器は広い範囲の波長を一様に吸収できるようになっているため、細胞自身に波長を区別する能力はない。しかし、特定の光が透過できる 4 種類の油で被膜しているため、色を区別できる。
- 両生類
- 色覚を持つものが多いが、一方で持たないものも多い。
- 魚類
- 硬骨魚類では一般的に 3 色型の色覚を持つ。或る種の魚類は4種類の錐体細胞を持つ。従って、4原色の色覚を持つと考えられている。
[編集] 色覚の共有
同じ波長の光を受けた場合でも、それをどのように知覚するかは人それぞれの目と脳の相関関係によって異なるので、複数の人間が全く同一の色覚を共有しているわけではない。
しかし、知覚した色をどのような色名で呼ぶかは学習によって決定される事柄であり、例えば緑色を見て二人の人間が異なる知覚を得たとしても、二人ともそれを「緑」と呼ぶので、色覚の違いは表面化しない。
色覚の違いが表面化するのは、異なる色を区別できない場合や、区別することが困難な場合であり、そのような状況を色覚特性、色覚異常(色覚障害)と呼ぶ。 近年はバリアフリーが叫ばれているが、色覚特性に配慮した動きはまだ一部に留まっている。
- W3C は、HTML の色使いは色盲・色弱に配慮したコントラストを保つべきだとして綱領を出している。 色の組み合わせチェック - 読みやすい前景色と背景色
- NPO法人 カラーユニバーサルデザイン機構(日本):CUDO
- Color Universal Design Organization(カラーユニバーサルデザイン機構)、略称 CUDO(クドー)は、社会の色彩環境を、多様な色覚を持つ様々な人々にとって使い易い状態に改善してゆく事で、「人にやさしい社会づくり」をめざすNPO 法人
[編集] 色の様相
[編集] 色の三属性
色の見えは光源や物体によって変化するが、色味とその濃淡(鮮やかさ)や明暗を具えている点で共通する。これは、色相、彩度、明度と呼ばれる。色相、彩度、明度、合わせて色の三属性と呼ぶ。
白や灰色、黒のグレースケールは、明度で区別され、色相を含まず彩度が0である。このような色を無彩色と呼ぶ。グレースケール以外の色は三属性すべてを持つ有彩色である[2]。しかしながら実際には、白や黒、グレーであってもふつう幾らかの彩度を示すので、いわゆる白や黒、グレーを色の三属性を一つしか持たない色とするのは不適切である。
- 色相
色相は赤、黄、緑、青といった色の様相の相違である。特定の波長が際立っていることによる変化であり、際立った波長の範囲によって、定性的に記述できる。ただし、常に同じ波長が同じ色に見える訳ではない。この総体を順序立てて円環にして並べたものを色相環(hue circle)と言う。色相の変化を示す例を3つ挙げる。
| 色相の連続的な変化 | ||||||||||||
- 彩度
彩度は色の鮮やかさを意味する。物体の分光反射率が平坦になる程、彩度は低くなる。また、色相によって彩度が高いときの明度が異なる。彩度の変化を示す例を3つ挙げる。
| 彩度の連続的な変化 | |||||||||||
- 明度
明度は色の明るさを意味する。明度の高低は、物体の反射率との相関性が高い。光の明暗に関して、明るさ(brightness,luminousity)があるが同様の知覚内容を指していると言える。
| 明度の連続的な変化 |
[編集] 特殊な色
蛍光色や金属光沢を有する色は特殊な色として挙げることができる。
[編集] 蛍光色
蛍光顔料には、昼光蛍光顔料(有機蛍光顔料)と燐光顔料(無機蛍光顔料)がある。蛍光顔料は紫外線も含め吸収した光エネルギーの波長を変え、通常の反射光と合わせて反射する。このため、高い明度、高い彩度を示す。波長の移動は、長波長側に向かって起こるので、蛍光色は暖色に多い。燐光顔料は、残光性がある物で、蓄光顔料とも言う。有機蛍光顔料とは異なり、顔料そのものの色は弱く、夜光顔料に利用される。
[編集] 構造色
光の波長或いはそれ以下の微細構造による干渉や回折、散乱により物体が色付く現象を構造色と呼ぶ。構造色として有名なものに、昆虫のモルフォチョウ、コウトウキシタアゲハ、タマムシ、他にカモの羽根、宝石のオパールなどがある。油膜やコンパクトディスクの記録面の虹色も構造色といえる。
[編集] 色の作用
- 人間には感知し易い色と知覚し難い色がある。
- 色が人の注意を引きやすく目立つ度合いを、色の誘目性と呼ぶ。無彩色よりも有彩色、寒色系よりも暖色系のほうが誘目性が高い。
- 色は人の奥行き感や距離の判断に影響を与える。暖色系の色は実際よりも飛び出して見える進出色、寒色系の色は引っ込んで見える後退色である傾向がある。また、一般に無彩色よりも有彩色が進出して見える。さらに、背景の色との関連もあり、背景が明るい場合は暗いほど、背景が暗ければ明るいほど、進出して見える。
- 赤や黄等暖色系の色および白色は実寸より物が大きく近くに見える膨張色で、他の色より知覚し易い。日本の児童の帽子やランドセルカバーが黄色なのは、知覚し易い色を採用する事で自動車事故を減らす狙いがあるからである。
- 反対に、青や黒等の寒色系の色は実寸より物が小さく遠くに見える収縮色である。実際に黒色の自動車は他の色に比べて事故が多く、そのためバスやタクシーの車体は黒色を避けているものが多い。また、囲碁の碁石も黒石と白石が同じ大きさだと黒石の方が小さく見えてしまうので、黒石を一回り大きく作っている。
- 人間が暗闇で見え難い色は、茶・黒・青・紫であり、見え易い色は、黄・白・オレンジの順番である。
- 赤ん坊は赤色を強く認識するので、赤ん坊の玩具は赤色を基調に作られている。
- 老人性白内障に罹ると水晶体が黄色く濁り、波長の短い青色緑色系統の色は黒っぽく見えるようになる[1]。このため老人はガスコンロの青い炎が見え難く、火傷や火事を起こし易い。
- 暖色系の色は時間を長く感じさせ、寒色系の色は時間を短く感じさせる[要出典]。
- 色によってその物体の重さも違って感じられる。同じ重さ・形の物体でも、黒い物体は白い物体より1.87倍重く感じたという実験がある[要出典]。
- ロンドンのテムズ川にかかる橋『ブラックフライアブリッジ』は自殺の名所であったが、色を黒から緑に変えた所、自殺者が1/3に減った[要出典]。
- けばけばしい色を避けたがる人間の性格を利用して、イギリスの公園は遊具周辺が派手な色で塗られている。遊具目当ての子供であれば気にしないが、大人には心理的障壁となる様な色使いで、変質者が子供に接近する事を防ぐという狙いがある[要出典]。
- 子供部屋を黄色にすると,知能指数が高い子供が育つという説がある。
[編集] 文化における色
一般に、色は、デザインや視覚芸術上の重要な要素であり、或る「様式」「作風」「文化」の特徴の一つに、特定の色の使用、特定の色の組み合わせ、色と結び付いた意味などが含まれている場合も多い。
[編集] 色名
色名とは色の名のことである。基本色名、系統色名、固有色名などがある。あらゆる文化には、RGB や CMY と同一視出来ない、それぞれの文化的な原色がある。それはその文化の背骨となっている言語の中での、最も古い色名からたどれる。そのような色名は基本色名と呼ばれる。 特別な名前が付けられた色や、また名前の付けられていないような色もあるが、それらは全て基本色名で言い換える事ができる。例えば、「蘇芳色(すおういろ)」は基本色名の「赤」と言い代ることが出来るし、空の色や海の色などをまとめて「青」と呼べる。
[編集] バーリンとケイの基本色名
ある色がどの基本色名で呼ばれるかは文化によって大きく異なる。例えば、英語の「yellow」は「ochre」(黄土色、或いは茶色に近い色)を含んでおり、日本語の「黄」よりも範囲が広い。又、漢字文化圏(古代中国、朝鮮半島、日本、ヴェトナム)やマヤ文明では、「green」と「blue」を区別せずに「青」と呼ぶ。
文化人類学者のバーリン(Brent Berlin)とケイ(Paul Kay)は大学院のセミナーの研究で98種の言語を比較し、言語によって基本色の数は異なること、基本色が対応する色の範囲が異なること、言語の進化によって次第に基本色が分化し増えてゆくことなどを見出した。また心理学者エレナは、基本色名に対応する色の中でも、その焦点となる色(例えば、「赤の中で最も『赤』らしい色」)は文化に拠らず共通する原型色が存在する事実を突き止めた。焦点の存在はヒトの色の認識機能に関わる先天的な要因であり、基本色名に対応する色範囲の違いは文化など後天的な要因であると考えられる。[要出典]
彼らは色名は全ての言語において、以下の順序で進化するという法則があると報告している[3]。
- ) 白(white)と黒(black)は全ての言語にある。
- ) 色名が3つなら赤(red)がある。
- ) 色名が4つなら緑(green)または黄(yellow)がある。
- ) 色名が5つなら緑と黄がある。
- ) 色名が6つなら青(bleu)がある。
- ) 色名が7つなら茶色(brouwn)がある
- ) 色名が8つ以上なら、紫(purple)、桃(pink)、橙(orange)、灰(gray)か、それらのうちどれかを組み合わせた色がある。
[編集] 日本語の色名とその語源
現代の日本語において基本色名と言える色は、上述のバーリンとケイによる定義に従えば、複合語、外来語、物質・植物・動物などに由来する色名は基本色名ではないため、厳密には「赤」、「青」、「白」、「黒」が基本色名になる。ただし、報告の中で(日本語の研究を担当したのはバーリンとケイではなく、セミナーに参加した英国系の2人の人物であった)日本語の「青(blue)」が、「緑(green)」より遥かに古い時代に遡るだけでなく、青がblueとgreenにまたがっている事実を確認しており、これについては日本語を反証と見なさざるを得ないが、法則に違背しない解釈も可能として説明を結んでいる[4]。
古代から存在する色名は、上記の「アカ(赤)」「クロ(黒)」「アヲ(青)」「シロ(白)」の4色である[5]。他の色は、鉱物・植物名などからの借用が多い(簡単な区別法としては、「○○色」を「○○の色」というように分割できないものが古い、と言うことができる。)。
古代からある色が上記4色である事実は現代日本語においても、その使い方の中に見られる。この4色は形容詞があり、「アカい」「アヲい」「シロい」「クロい」という。黄は「黄色い」、茶は「茶色い」というように「色」が含まれる。他の色名は形容詞がない。
また、「アカアカと」、「シラジラと」、「クログロと」、「アオアオと」のように副詞的用法を持つ色もこの4色のみである[6]。
それぞれの語源は、以下の通りとされる。
- アカ(赤)
- 「アケ(朱)」「ア(明)ける」「アカ(明)るい」と同源で、夜が明けて明るくなるという意味から色の赤に転用されたもの。
- クロ(黒)
- 古くは玄の字が多く使われた。「ク(暮)レる」「クラ(暗)い」と同源で、日が暮れて暗くなるという意味から色の黒に転用されたもの。その際、母音交替(a→o甲)を起こしただけでなく、アクセントまでも高起式から低起式に変化しているのは後述のシロと共通している。染料のクリ(涅。水底の黒土。クロと同様低起式)は意義分化に伴ってアクセント変化を遂げた後にクロから生じたものらしい。
- アヲ(青)
- 植物名で染料名でもある「アヰ(藍)」と同源。後述する「シル(顕)し」の対語で、はっきりしないという意味から色の青に転用されたものという。
- シロ(白)
- 「シル(知)」「シルシ(印)」と同源で、はっきりした様を表わす「シル(顕)し」が、色の白に転用されたもの。その際、u→o甲(詳しくは上代特殊仮名遣参照)に母音交替したのみならず、アクセントまでも高起式から低起式に変化しているのは注目される。
文化の原色がこの4色であることから、古代日本語では、明るい色はアカ、暗い色はクロ、はっきりせず曖昧な色はアヲ、はっきりした色はシロと呼ばれていたと思われる。 これらはマンセル色体系等における明度、彩度の概念を想起させるが、現代において「赤」と呼ばれる色ははっきりした(彩度が高い)色であり、「白」と呼ばれている色は明るい(明度が高い)色であることから、赤と白の間で言語の逆転が起こったと思われる。
語源からも分かるように、原始日本語においてはクロの対義語はシロではなくむしろアカであったと判断されるが、奈良時代には既にシロ甲/クロ甲のようにロの母音が同じロ甲類音になっており、シロとクロが対義語として捉えられるようになっていたようである。「白黒はっきりさせる」などのように、或いは警察関係の隠語でシロ・クロというように、シロがクロに対置されるようになった経緯については様々な意見が見られるが、「クラさ」に対する「アカるさ」が、「事物を明瞭にシルことができること」として意味が移り変わっていったことや、中国から入ってきた五行思想の色彩観の影響が理由として挙げられている。
ミドリ(緑)の語源ははっきりしないが、芽ではアクセントが合わないので、アクセントから「ミヅ(水)」と同源ではないかというのが有力である。[要出典]「みどりの黒髪」という言い回しがあるが、『みずみずしさを感じさせる艶のある黒髪』を意味しており、おかしな表現ではない。日本文化の四原色の中で「ミドリ」は「アヲ」の中に属するが、これは概念の問題に過ぎず、古代日本人がgreen(緑)とblue(青)を区別する能力を持たなかったことを意味しない。
日本では、greenをアヲ(青)の一部とする用法は広く残っている。そして、greenをミドリとせずアヲと呼ぶ色彩観も方言などにおいては残っており、地方によっては今でもミドリ系統の色を含めてアヲと呼ぶ。その色彩観は、少なくとも近代まで、日本文化・政治にも存在した。「青信号」という語がその証明で、歩行者・自動車信号は法令により「緑色信号」 (green light) として定められ、実際にも現代人が「ミドリ」と感じる色彩が用いられているにも関わらず、俗に「あお信号」と呼ばれ、そのまま定着した。現在では法令の方が『実情に合わせて』改正され、「青信号」となった。更に、現在の緑信号は、紅緑色弱者に配慮し、藍緑となっている。また、greenではなく、実際にblueの「青信号」も登場している。
尚、現代の中国では、「青信号」を「緑灯」、「青空」を「藍天」と言い、greenとblueを区別している。
キ(黄)は葱(キ)の食べる部分の色という説が有力で、萌葱が由来の萌黄という色名も古くからある[7]。他に、黄はコガネ(黄金)のように複合語の形ではコという語形を取ることから、同様に複合語でコダマ(木霊)・コノハ(木の葉)という語形を取るキ(木)と同源の可能性が疑われる。但し、両者のアクセントは合わないので、その場合は先述したシル(顕)→シロ(白)、クラ(暗)→クロ(黒)と同様に意義分化に伴ってアクセント変化を遂げたものと解釈するしかない。[要出典]
ムラサキ(紫)、チャ(茶)などは染料の名からの借用[要出典]、ハイ(灰)はその名の通り灰の色である。
[編集] 色に対する一般的な印象
色彩は様々な感情を表現したり、事物を連想させることがある。 国や文化などによって違いはあるが、一般的な印象は次のようなものである。
- 白
- 善(主にキリスト教圏)、雪、無、清潔、純粋、無罪、無知、賛成 など
- 黒
- 夜、悪、死、男、武勇、汚濁、有罪、炭、金持ち(欧米) など
- 栗(茶色)
- 土、豊穣、糞 など
- 赤
- 血、生、火、力、女、情熱、危険、熱暑、革命、攻撃、太陽(日本)など
- 橙
- 温暖、快活、陽気、幸福 など
- 黄
- 太陽、穀類、金、注意、臆病、活発、明快、乾燥、王位(中国)、色欲(中国) など
- 緑
- 植物、自然、安全、幼稚、平和、新鮮、湿潤、嫉妬(英語圏)など
- 青
- 水、冷静、知性、悠久、未来、憂鬱、寒冷 など
- 紫
- 王位、高貴、優雅、神秘 など
- 金
- 神、宝、光、生 など
- 灰
- 陰鬱、平凡、沈静 など
職種、階層、貧富を言い表す際にも色が用いられる事がある。例:ホワイトカラー(事務職)・ブルーカラー(肉体労働職)、ブルーブラッド(貴族・首筋が日焼けせず静脈が見える人間)・レッドネック(首筋が日焼けした屋外労働者・アメリカ南部者)・ホワイトトラッシュ(貧乏な白人、ただしレッドネックが白人の男を指すのに対し、こちらは女を限定して指す事もある)
カラーギャングはそれまでのギャングと違い、互いの対立を色で示しあっている。
[編集] 政治における色
政治の世界においては、色が特定の政治的な立場を現すことがよくある。
赤は、左翼・社会主義・共産主義を形容する色としてよく使われ、党派的にも容共で政府・資本家に反く側を表す。一説には、1848年革命やパリ・コミューンの時に、革命軍が掲げていた三色旗が血に染まって赤くなったから、左翼的立場を形容するのに赤を使うようになったとされる。
白は、右翼・反共主義・王党派・復古勢力を指す色として使わる。反共で政府・資本家に親しい側を指す。フランスの王党派が使い始めたのが最初で、フランスのブルボン家の白百合紋章に由来する。以来、反革命軍は白旗を目印として、右翼的立場を形容するのに白を使うようになった。
黒は、アナキズムを象徴する色として使われる。日本では、天皇の臣下を意味する色として利用される事があった。また、しばしばファシズムの象徴として使われる。ベニート・ムッソリーニのファシスト党は、制服の色として使った。
黄は、労資協調主義や自由主義・リベラル派を形容する。御用組合は俗に「黄色組合」とも言われ、黄色は容共かつ政府・資本家に親しい党派を表す。
緑は、環境保護派や「緑の党」を形容する色として広く使われている。
褐(茶色)は、独裁主義やナチズムを形容する。これは、ナチ党の突撃隊(SA)の制服に因む。又、茶色の代わりに、赤と黒の組み合わせで示される場合もある(例:クメール・ルージュ)。
ヨーロッパなどでは三色の縦縞または横縞の国旗が多いが、これらの色にも意味を持たせている。例えばフランス国旗では青=自由、白=平等、赤=博愛の意味があり、国家の在り方を色で示している。
[編集] 商業における色
日本では、JAPAN FASHION COLOR AUTHORITY (JAFCA)が毎年流行色を決めている。
- 自動車業界では緑色は不人気色なので、一般的に中古車として買い取られる場合、他の色より値が下がると言われている。ただし、デミオのように緑色がよく売れた車種も存在する。
- 玩具業界では、黒い玩具は売れない、と言われていたが、ダッコちゃん人形がそれを覆した。
- コンシュマーゲーム業界では、黒色の据え置きハードは売れない、と言われていたがプレイステーション2がそれを覆した。
- レゴブロックは、子供が兵器の模型を作って遊ばないようにと緑のブロックを極力作らなかった。
[編集] コーポレートカラー
企業や団体等の組織を象徴する色をコーポレートカラー(Corporate Color)と言う。
[編集] 看板・標識
商業看板では色がもつ生理的反応や印象を利用してコーポレートカラーと同様の効果を期待した色や組み合わせを用いることが多い。茶色やオレンジ色の組み合わせは体温を上昇させ食欲を増す色とされる。飲食業にあっては、遠くから識別させる目的の商業看板では黒・オレンジ・茶の各種組み合わせが取り入れられている。 視神経はアルコールが入ると赤色に敏感になるため、居酒屋は赤提灯を下げている。
- トンカツ屋:茶色の背景に白抜き文字。
- 牛丼屋:橙の背景に黒文字。
- 喫茶店:焦げ茶。
- 各国料理:フランスに代表される三色旗から各国の料理を指す場合に用いられることが多い。一般にトリコロール(仏:Tricolore、赤・白・青)はフランスを指すが、イタリアの赤・白・緑、アイルランドの橙・白・緑の組み合わせも、同様の用いられ方をする。
- ガソリンスタンド:赤
- コカ・コーラ:赤の背景に白文字。
- マールボロ:紅白のツートンカラーで、米国のタバコ会社のコーポレートカラー。マールボロ・カラーとも言われる。
- ロボットアニメのロボット:1980年頃以前は青・赤・黄がロボット三原則に引っ掛けて「ロボット三原色」と言われ、玩具において子供に訴えかける印象が強いと考えられ必須のものとされていた。逆に子供に不人気な色は緑であり敵方ロボットに多く使われたが、『機動戦士ガンダム』のザク等ではかえって実在の兵器に近い重厚感を醸しだし、人気の一因となった。
- 清涼飲料水:白地に青。1980年に大塚製薬が「飲む点滴液」として開発し発売したポカリスエットは既存のスポーツ飲料と差別化を図り、清涼飲料水としては前例のない色調を使った。色の専門家の多くは販売戦略上は不向きと予測したが企業戦略により新たな分野を開拓し、水分補給の色として確立・定着させた数少ない事例。財団法人ハイライフ研究所PDF
- 工事現場・バイオハザード・放射能等の危険区域:黄と黒の二色一組。警戒色も参照。
- 非常口:緑と白の二色一組。
- 鉄道会社におけるラインカラーについては日本の鉄道ラインカラー一覧を参照。
[編集] その他
- 安定した元素である炭素を素材とする墨や複写機のトナーの複写やコピーで描いた文字、図形や絵画などは紫外線に対して耐光性があり、また空気中や水中の酸素による酸化によって色褪せ、退色や変色することは少ない。木簡の文字はその典型例である。
[編集] 関連項目
- 光
- スペクトル
- 視覚、色覚
- 色覚異常、色覚特性、色盲
- 5色型色覚 - 4色型色覚 - 3色型色覚 - 2色型色覚
- 照明
- 色素、顔料、染料
- グラスマンの法則 (色彩)
- リーブマン効果
- プルキンエ現象
- 心理効果
- クオリア
- RGB - CMYK
- 色空間、カラーチャート
- 原色、二次色、補色、同系色
- 保護色 - カモフラージュ
- 色相 - 彩度 - 明度
- 配色
- 色目
- 色名、色名一覧、日本の色の一覧
- 色調 - トーン
- 色の現象的分類
- 色彩検定
[編集] 脚注
- ^ http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/brain/brain/25-7/index-25-7.html
- ^ 尾登誠一 「3 色の世界を知る」『色彩楽のすすめ』 岩波書店〈岩波アクティブ新書〉、2004-01-07、第1刷、34ページ。ISBN 4-00-700101-4。
- ^ Brent Berlin and Paul Kay. Basic Color Terms: Their Universality and Evolution. Univ. of California Press. 1969.1991.
- ^ 小松 p.171
- ^ 佐竹昭弘『万葉集抜書』 岩波書店
- ^ 小松 p.175
- ^ 小松 p.198
[編集] 出典
- 小松英夫『日本語の歴史』 笠間書院
- 『新潮国語辞典』
- 清少納言『枕草子』(当時の色に関する記述が多く見られる)
[編集] 外部リンク
- 財団法人日本色彩研究所 いろのはなし
- 大日精化工業株式会社 色彩知識表色系、色彩用語の説明。
- コニカミノルタセンシング株式会社 色色雑学
- 脇色彩写真研究所 RW色彩写真全科
- WEB色見本 原色大辞典 HTMLでの色の表記方法
- 色彩のスパイス WEB色見本と配色 HTML色見本


