風立ちぬ (2013年の映画)

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風立ちぬ
The Wind Rises
監督 宮崎駿
脚本 宮崎駿
原作 宮崎駿
製作 鈴木敏夫
出演者 庵野秀明
瀧本美織
西島秀俊
西村雅彦
スティーブン・アルパート[註釈 1]
風間杜夫
竹下景子
志田未来
國村隼
大竹しのぶ
野村萬斎
音楽 久石譲
主題歌 荒井由実
ひこうき雲
撮影 奥井敦[註釈 2]
編集 瀬山武司
制作会社 スタジオジブリ
製作会社 日本テレビ
電通
博報堂DYMP
ディズニー
三菱商事
東宝
KDDI
配給 東宝
公開 日本の旗 2013年7月20日
フランスの旗 2014年1月22日
上映時間 126分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
興行収入 120.2億円(2014年1月現在)[1]
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風立ちぬ』(かぜたちぬ)は、宮崎駿の漫画『風立ちぬ』を原作とした長編アニメーション映画である。

実在の人物である堀越二郎モデルに、その半生を描いた作品であるが[2][3][4]堀辰雄小説風立ちぬ』からの着想も盛り込まれている[2][4]。そのため映画のポスターには両名の名を挙げており、2012年に公表された版では「堀越二郎と堀辰雄に敬意を表して」[4]、翌年公表された版では「堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて」と記されている。

2013年9月、宮崎は本作を最後に長編アニメ製作からの引退を発表した[5]

漫画からのビジュアル面での大きな変更点としては、登場人物の多くが擬人化された動物の姿で描かれていたのを、全てリアルな人間の姿で描かれている点が挙げられる。

あらすじ[編集]

飛行機に憧れている少年・二郎は、夢に現れた飛行機の設計家・カプローニ伯爵に励まされ、自分も飛行機の設計家になることを志す。青年になった二郎は大学で飛行機の設計を学び、関東大震災で偶然出会った少女・菜穂子と彼女の女中を助ける。二郎は二人を気にかけるが、それきり彼女達とは会うことはなかった。

大学を卒業した二郎は飛行機の開発会社に就職する。仕事に打ち込んだ彼は入社5年目にして海軍の戦闘機開発のチーフに大抜擢されるが、完成した飛行機は空中分解してしまう。挫折した二郎は避暑地のホテルで休養を取り、そこで思いかけずに菜穂子と再会する。元気を取り戻した二郎は菜穂子との仲を急速に深めて結婚を申し込む。菜穂子は自分が結核であることを告白したが、二郎は病気が治るまで待つことを約束して二人は婚約する。

だが菜穂子の病状は悪化し、ついには喀血する。菜穂子は二郎と共に生き続けることを願い、病気を治すために人里離れた病院に入院する。しかし再び戦闘機の開発に取り組んでいた二郎が菜穂子を見舞に行けないでいると、菜穂子は病院を抜け出して二郎のもとを訪れてしまう。二郎は菜穂子に付き添って看病したかったが、飛行機の開発を捨てるわけにはいかず、そのまま菜穂子と結婚して毎日を大切に生きることを決意する。二人の決意を知った二郎の上司がささやかな結婚式をとり行い、上司の家の離れに間借りして、二人は結婚生活を送りはじめる。

二郎は寝る間も惜しんで開発に打ち込み、会社から帰宅するのも遅くなるが、菜穂子は仕事をしている二郎が好きだと彼を励ます。しかし菜穂子は日増しに弱っていき、自分の衰えを二郎に悟られぬように隠れて頬紅をさすまでになる。そして飛行機が完成して試験飛行が行われる日の朝、菜穂子は二郎を見送ると、置き手紙を残して密やかに二郎の元を去る。二人の面倒を見ていた上司の妻は、菜穂子は自分の美しい姿だけを二郎に見てもらいたかったのだろうと察する。同じ頃、飛行場で試験飛行の成功を目にしていた二郎も、何かの虫のしらせを感じてハッとする。

やがて年月が流れて日本は焦土となる。再び夢に現れたカプローニ伯爵は、二郎が作った飛行機を褒め称えるが、二郎は彼の飛行機は一機も戻らなかったと打ちひしがれる。しかし同じ夢の中で再会した菜穂子から「生きて」と語りかけられると、二郎は涙を流して何度もうなずき、感極まりながら「ありがとう、ありがとう」とくりかえす。

登場人物[編集]

堀越 二郎(ほりこし じろう)
本作の主人公。裕福な家庭に生まれ、性格はのほほんとしてとらえ所がなく、時間や予定にはルーズ。夢想家で常に頭の中は飛行機とその設計プランで埋め尽くされており、時折周囲の言葉さえ耳に入らないこともある。人柄は真面目で誠実かつ独特のユーモアを持ち合わせている為、人望に恵まれる。大好物は
子供のころから飛行機に憧れるが、近視のためパイロットへの道は閉ざされていた。夢の中で尊敬するカプローニに出会い、設計者の道を志す。東京帝国大学で航空工学を学んでいたが[4]、帰京中に関東大震災に遭遇。その際、後に妻となる菜穂子と運命的な出会いを果たす。大恐慌最中となった大学卒業後、請われてミツビシに入社。英才として将来を嘱望される。その後、ドイツへの留学を経て、航空技術者として菜穂子との想い出の品である計算尺を武器に数々の戦闘機を設計する。[4]七試艦上戦闘機の開発では、初めて設計主務を任されるが[6]、同機は飛行試験中に垂直尾翼が折れて墜落した[7]。失意の中、休暇で訪れた長野県北佐久郡軽井沢町で菜穂子に再会する[8]。避暑地での恋が実を結び菜穂子と婚約。帰京後、あらぬ疑いで特別高等警察に目をつけられ、上司の黒川宅に寄宿するようになる。社内に研究会を立ち上げ、その中心となる。その後、療養所のある山を抜け出してきた菜穂子と黒川夫妻の仲人で結婚し、束の間の幸せな新婚生活を送る。その後、九試単座戦闘機の試作一号機に逆ガル翼沈頭鋲を採用するなど、独創的な設計を行い、その非凡な才能を開花させる。のちに零式艦上戦闘機など優れた飛行機を次々と生み出した。
里見 菜穂子(さとみ なおこ)
本作のヒロイン[4]。性格は明るく純真。その一方で芯の強い女性。東京の代々木上原に住まう資産家の令嬢(関東大震災前は上野広小路)。趣味は画を描くこと。
東京行きの車中で二郎が風で飛ばした帽子をキャッチした。関東大震災発生により乗っていた汽車が脱線した際に骨折した侍女のお絹を助けた二郎に恋心を抱き、二郎が添え木がわりに使った計算尺とお礼の品をお絹に届けさせた。だが、運命の悪戯によりその後しばらくは再会することはかなわなかった。
療養のため滞在していた軽井沢町にて、風で飛ばしたパラソルをたまたま通りかかった二郎が受け止めた際に、その青年が初恋の相手・二郎と気づく。写生の合間に泉で願掛けしていたところに二郎が現れたことでかねてから胸に秘めていた想いを伝える。二郎との会食の約束は持病が悪化し発熱したことで果たせなかったが、紙飛行機を通じて互いの想いを深めることになる。父の許しを得て交際をはじめ将来を誓い合い、持病の結核を治すと宣言する。
だが、病は悪化して喀血。療養施設に入ることになってしまう。しかし、二郎への想いは抑えがたく、療養所を抜け出して二郎のもとへ。その決意を知った二郎は黒川に仲人を頼み、二人は夫婦となる。日々深刻になる病に苦しむ姿を見せまいと気丈に振る舞い、連日深夜に及ぶ二郎の仕事を精神的に支える。だが、二郎が手がけていた飛行機の設計が終わり一段落ついたのを機に、置き手紙を残して療養所に戻った。その後、再び病は悪化し、後に亡くなった。
本作オリジナルの架空の人物である[4]。名前の由来は堀辰雄の小説『菜穂子』に因む[4]。ちなみに、同じく堀辰雄の『美しい村』では、堀がのちの『風立ちぬ』のヒロインとなる少女と軽井沢町で出会う展開となっている。
本庄(ほんじょう)
東京帝国大学時代からの二郎の親友。その後、同僚かつライバルとなる航空技術者[9]。ニヒリストでやや斜に構え、常に日本の技術力の低さに苛立ち焦りを隠さない。潔癖な性格で二郎から新しいアイデアを盛り込んだ設計図を渡されても、二郎が先に使わなければ採用しないほど。重度のヘビースモーカー。
ミツビシ入社後、二郎と共に頭角を現す。共にドイツ留学することになるが、その直前に結婚している。帰国を命じられた二郎とは異なり、ドイツに残留しユンカース社からの技術供与を受ける。そのこともあって爆撃機のライセンス生産に携わる。八試特殊偵察機九試陸上攻撃機(のちの九六式陸上攻撃機)の設計主務を務めた[7][8]
黒川(くろかわ)
二郎の上司[9]。性格はせっかちで気むずかしい堅物。新入社員の二郎にいきなり難易度の高い設計を任せるなど、仕事に対して厳しい。その反面、二郎の天才性を高く評価しドイツ留学を推薦した。特別高等警察の手から救うため二郎を匿った。二郎から仲人を頼まれた際には、菜穂子の病状を考え最初は難色を示すも、2人の気持ちを汲み取って精いっぱいの仲人を務める。
なお同名の登場人物が堀辰雄の小説『菜穂子』にも登場している。
カストルプ
声:スティーブン・アルパート[註釈 1]
軽井沢町に滞在するドイツ人[9]。たまたま二郎や里見家と同宿だったことから、二郎と菜穂子が交際を始める際に立会人となった[10]ナチス・ドイツの台頭を快く思っておらず、世界的に孤立した日本の将来についても悲観的な見通しを持っている。クレソンが好物で、フランツ・シューベルトの楽曲を好む[10]。なお「カストルプ」という名は、二郎との会話で登場したトーマス・マンの小説『魔の山』の主人公と同一である。
里見(さとみ)
菜穂子の父親[9]。菜穂子との交際を申し出た二郎に対し、菜穂子の病状を伝え、考え直すよう諭す[10]。しかし、二郎の考えが変わらないことを知り、2人の交際を認める[10]。しかし、夜行列車を乗り継いで菜穂子の見舞いに来る二郎を心配し、菜穂子だけでなく自身の仕事も大事にするようアドバイスした[8]
本作オリジナルの架空の人物である。
二郎の母(じろうのはは)
二郎の母親[9]
堀越 加代(ほりこし かよ)
二郎の妹[9]。幼い頃から兄の二郎を慕い、「二兄(にいにい)」と呼ぶ。東京に出て医学を学びたいと志すが、父に反対されたため二郎に口添えを頼み、のちに医学生となる。菜穂子とはすぐに仲良しになり、彼女の病状や日々の寂しい暮らしに無頓着な二郎を責めるなど、彼女に対しての思いやりを見せた。看病のため黒川邸を訪れた際に菜穂子が出て行く姿を目撃し、その真意を知って涙した。
服部(はっとり)
二郎が所属する設計課の課長[9]。七試艦上戦闘機の開発の失敗で失意の二郎に、休暇を与えた[7]。二郎の手腕を買っており、九試単座戦闘機の開発では設計主務として二郎を再び推薦する[7]
実在の人物である三菱重工業の服部譲次をモデルとしている。
黒川夫人(くろかわふじん)
二郎の上司である黒川の[9]。二郎と菜穂子が結婚すると言い出した際には、難色を示す夫を尻目に真っ先に賛成し、菜穂子のために婚礼の衣装などを準備した。菜穂子が黒川邸から高原の病院に戻った際には、菜穂子の心情を慮り、連れ戻そうとする加代を止める。
カプローニ
実在の人物であるカプロニ創業者のジャンニ・カプローニをモデルとしている[11]。映画版の企画書によれば、宮崎駿は本作で「零戦の設計者堀越二郎とイタリアの先輩ジャンニ・カプローニとの同じ志を持つ者の時空をこえた友情」[11]を描くとともに「いくたびもの挫折をこえて少年の日の夢にむかい力を尽すふたり」[11]の姿を描くと記している。また、宮崎駿は野村萬斎への演技指導において「カプローニは二郎にとっての“メフィストフェレス”だ」[12]と説明している。
ユンカース
世界的に著名な飛行機製作者。二郎や本庄らがドイツを訪問した際、ユンカース航空機製作の格納庫内にて出会う。二郎と本庄がドイツ側の担当者と揉めているのを目にし、二郎らに自社の飛行機内部の見学を許可した。のちにアドルフ・ヒトラー国家社会主義ドイツ労働者党に批判的な態度をとったため、同社を追われることになった。
実在の人物であるユンカース航空機製作創業者のフーゴー・ユンカースをモデルとしている。

映画公開までの流れ[編集]

製作の経緯[編集]

映画『崖の上のポニョ』の製作を終え一段落したことから、宮崎駿は『モデルグラフィックス』に漫画を連載することとなった[13]。宮崎は「この漫画はいわば趣味として描いていたもの」[13]と語るなど、 漫画版を連載し始めた当初は、本作を映画化することは全く考えていなかった。 その後、鈴木敏夫が映画化を提案したが、宮崎は本作の内容が子供向けでないことを理由に反対していた[14]。宮崎は「アニメーション映画は子どものためにつくるもの。大人のための映画はつくっちゃいけない」[14]と主張していたが、鈴木は戦闘機や戦艦を好む一方で戦争反対を主張する宮崎の矛盾を指摘し「矛盾に対する自分の答えを、宮崎駿はそろそろ出すべき」[14]と述べて映画化を促した。映画版の企画書の中で、宮崎は製作意図について「この映画は戦争を糾弾しようというものではない。ゼロ戦の優秀さで日本の若者を鼓舞しようというものでもない。本当は民間機を作りたかったなどとかばう心算もない。自分の夢に忠実にまっすぐ進んだ人物を描きたいのである」[11]と述べている。 実際のエピソードを下敷きにしつつもオリジナル要素を盛り込んだストーリーが展開されるため、堀越の遺族に対して事前に相談し了解を得ている[4][15]。主人公の性格など人物像にもオリジナル要素が盛り込まれているが、その点についても堀越の息子は「そんなことは無論構わない」[4]と快諾した。なお、宮崎が監督した作品で、実在の人物を主人公とするのは初めてである[4]。また、主人公のモチーフには、宮崎の父の人生も反映されている[16]。宮崎の父は、幼いころに関東大震災に遭い[17]、その後零式艦上戦闘機月光の風防などを製造する会社の経営に携わり[16]、のちに前妻を結核で亡くしている[18]。これらをモチーフとすることで、本作の主人公像が作られていった[16]

同日公開の目論見[編集]

2012年12月の記者会見においては、高畑勲が監督したスタジオジブリの『かぐや姫の物語』も、同日公開の予定と発表されていた[2][3][4]。宮崎と高畑の映画が同時期に公開されるのは、1988年に『となりのトトロ』と『火垂るの墓』が2本立て同時上映されて以来だが、今回は同時上映ではなく個別に上映される予定となっていた[3][4]。しかし、『かぐや姫の物語』は2013年に入っても絵コンテが完成しなかったことから、同作は公開時期を延期し、同年秋に公開されることとなった[19][20][21][22]

庵野秀明の起用[編集]

スタジオジブリの鈴木敏夫に対して、アニメーション監督庵野秀明が「零戦が飛ぶシーンがあるなら描かせてほしい」[23]と申し入れている。仮に庵野の参加が正式決定していれば、1984年公開の『風の谷のナウシカ』以来の宮崎作品への参加となるはずだった[23]。しかし、宮崎は、作画スタッフとしてではなく本作の主人公として出演するよう、庵野に要請した[24]。庵野は困惑しつつもオーディションを受けたが、その直後に宮崎から改めて出演を依頼されたため、庵野も出演を受諾した[24]。宮崎は主人公のイメージとして「早口である」[24]「滑舌がよい」[24]「凛としている」[24]の3つを挙げており、庵野を選んだ理由として「いい声だからでなく、存在感で選んだ」[24]としている。なお、庵野にとって声優参加作品としては『フリクリ』のミユミユ役以来、主演映画作品としては『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』以来となる。

松任谷由実の起用[編集]

宮崎駿は松任谷由実のファンで、1989年公開の『魔女の宅急便』で「やさしさに包まれたなら」と「ルージュの伝言」を挿入歌に起用している。本作での「ひこうき雲」の起用にあたっては、本作発表に先立つ『魔女の宅急便』ブルーレイディスク化記念イベントにて、プロデューサー鈴木敏夫と松任谷が同席し、松任谷のベスト・アルバムに収録の「ひこうき雲」を宮崎が気に入っていることを明かして本作へのオファーを発し、また松任谷も「このために40年やってきたのかなというくらいうれしい。だって私のデビューアルバムの曲ですから。もう後にはひけませんよ(笑)」と応じている[25]。宮崎は、後日の完成報告会見で同曲起用について「力のある歌です。空想で作った歌じゃない、胸にしみるものがあって生まれた歌だと思った」と述べている[26]

映画公開後の反応[編集]

遺族からの反応[編集]

堀越二郎の長男は、映画版を観た感想として、実際には本庄より二郎は年下なので「さん付け」で呼んでいたはず、といった史実と異なる点が気になったものの、関東大震災のシーンあたりから引き込まれ、別れのシーンでは涙が止まらなかったと高く評価している[27]。主人公については「いちずさ、気性、生きざまが美しく、その子供としてすごくうれしかった」[27]と語っている。さらに「父は必ずしも零戦は好きではなかった」[27]と指摘し「宮崎監督がすごいのは『九試』完成までで、零戦を描いていないこと」[27]だと評している。なお、「零戦は好きではなかった」[27]という理由について、堀越の長男は、設計時の要求水準の高さ、テストパイロットの殉職、神風特別攻撃隊での使用など、二郎にとって零式艦上戦闘機には、辛い思い出が多かったことを挙げている。

喫煙シーンへの賛否[編集]

日本禁煙学会による批判[編集]

禁煙推進NPO団体である「NPO法人日本禁煙学会」は、2013年平成25年8月12日に、スタジオジブリに対する『要望書』を提出。映画はたばこ規制枠組み条約13条違反だと批判。教室での喫煙場面、職場で上司を含め職員の多くが喫煙している場面、高級リゾートホテルのレストラン内での喫煙場面などの登場を批判、特に、肺結核で療養中の妻の手を握りながらの喫煙描写は問題であり、この場面でタバコが使われなくてはならなかったのか?他の方法でも十分表現できた筈だ、と批判。また、大学生が「タバコくれ」とは、未成年者の喫煙を助長し、日本の法律である「未成年者喫煙禁止法」にも抵触するおそれがある、と批判した。しかし、これはスタジオジブリを誹謗中傷するものではなく、法令遵守した映画制作を願う、と云うステートメントを発表した[28]

喫煙文化研究会による擁護[編集]

それに対して、愛煙家の団体である「喫煙文化研究会」(すぎやまこういち代表)は、2013年平成25年)8月15日に、映画に対するプレスリリースを発表し、昭和10年代の喫煙率についての公式データが無いが、昭和25年のデータでは、男性の84.5%は喫煙者であり、映画の描写は極自然な事で一般的な描写であると指摘。国際条約との優位性に於いては、現在「憲法優位説」が通説となっており、たばこ規制枠組み条約より、表現の自由を定めた日本国憲法が上位であると指摘し、表現の自由に対する要望は意味を成さない、と指摘し、喫煙者と非喫煙者が、共生出来る『分煙社会を実現すべき』だ、と云うステートメントを発表した[29]

封切り[編集]

キャッチコピーは「生きねば。」である。英語版のタイトルは「The Wind Rises」[30]。制作発表時に、「2013年夏に劇場公開予定[2][3][4]」とされ、当初の予定通り2013年7月に公開された。宮崎が長編アニメーション映画の監督を務めるのは、2008年の『崖の上のポニョ』以来となる[2][4]。また、宮崎が『モデルグラフィックス』に連載した漫画がアニメ化されるのは、1992年の『紅の豚』以来2作目となる[31]

日本公開では全国454スクリーンで公開され、2013年7月20日・21日の2日間で興行収入9億6088万円、観客動員74万7451人となり、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第1位となった[32]。2014年1月28日時点で興行収入は120.2億円を突破している[1][33]

2014年1月22日よりフランスで公開された。公開1か月後時点でのフランスにおける動員数は43万6000人で、『崖の上のポニョ』公開時91万7000人の約半分の勢いという結果になった。内容が大人向けであることや、作品内のモラルがフランスの観客に対しては曖昧と感じさせるものであるためという分析がされている[34]

2013年12月6日から8日にかけてアメリカ合衆国・ロサンゼルスで開催されたLA EigaFest 2013では招待作品として上映された[5]。

海外映画祭[編集]

ロサンゼルスで開催されている「LA EigaFest 2013」にてクロージング映画として上映された。

テレビ放送[編集]

2015年2月20日日本テレビ系列金曜ロードSHOW!』(40分拡大)にてテレビ初放送。

テレビ放送の視聴率[編集]

回数 放送日時 視聴率
1 2015年02月20日 19.5%

スタッフ[編集]

声の出演[編集]

キャラクター 日本語版 英語版
堀越二郎 庵野秀明 ジョゼフ・ゴードン=レヴィット
里見菜穂子 瀧本美織 エミリー・ブラント
本庄 西島秀俊 ジョン・クラシンスキー
黒川 西村雅彦 マーティン・ショート
カストルプ スティーブン・アルパート[註釈 1] ヴェルナー・ヘルツォーク
里見 風間杜夫 ウィリアム・H・メイシー
二郎の母 竹下景子
堀越加代 志田未来 メイ・ホイットマン
服部 國村隼 マンディ・パティンキン
黒川夫人 大竹しのぶ ジェニファー・グレイ
カプローニ 野村萬斎 スタンリー・トゥッチ
堀越二郎(少年期) 鏑木海智
堀越加代(幼少期) 信太真妃
里見菜穂子(幼少期) 飯野茉優
曽根 イライジャ・ウッド
片山 ダレン・クリス
三菱の従業員 ローナン・ファロー

主題歌[編集]

ひこうき雲
作詞・作曲・歌 - 荒井由実EMI Records Japan
プロデューサーの鈴木敏夫が主題歌として使用したい意向を打診し、本人から了承を得た[3]

挿入曲[編集]

「Das gibt's nur einmal」(邦題「唯一度だけ」)
作詞 - Robert Gilbert / 作曲 - Werner Richard Heymann
1931年のドイツ映画『会議は踊る』の主題歌として使われている。劇中ではカストルプ、里見や堀越らが逗留中の軽井沢で歌うシーンがある。

朗読詩[編集]

「風」
原詩 - Christina Rossetti / 訳詩 - 西條八十日本コロムビア
この訳詩に草川信が作曲したは、2007年日本の歌百選の1曲に選定されている。

評価[編集]

受賞[編集]

アニメーション映画部門
個人部門
  • 第41回アニー賞脚本賞(宮崎駿)
  • 第37回日本アカデミー賞最優秀音楽賞(久石譲)
その他
  • 第68回毎日映画コンクールTSUTAYA映画ファン賞(日本映画部門)[37]
  • 第87回キネマ旬報ベスト・テン 日本映画ベスト・テン 第7位
  • 第87回キネマ旬報読者選出 日本映画ベスト・テン 第5位
  • 2013年度日本映画ペンクラブ 選定ベスト5 第3位 
  • 映画芸術 2013年日本映画ベストテン&ワーストテン・ワースト2位[38]
    • 『映画芸術』では、No.445(2013年秋号)において「国民的映画『風立ちぬ』大批判!」と題した批判的な巻頭特集が組まれている[39]
  • カイエ・デュ・シネマ」誌が選ぶ2014年の映画トップ10 第5位[40]
  • 「サイト&サウンド」誌(英国映画協会発行)が選ぶ2014年の映画トップ20 第18位[41]

ノミネート[編集]

脚註[編集]

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註釈[編集]

  1. ^ a b c スティーブン・アルパートはかつてスタジオジブリ海外事業部の取締役部長を務めた人物。一身上の都合で2011年に退社したが、スタジオジブリの海外展開に尽力し、宮崎駿が彼への敬意を込めてカストルプというキャラクターに起こした。カストルプの容貌は彼をモデルに描かれたため、適役として来日している。 - 『風立ちぬ』謎のドイツ人・カストルプに隠された宮崎駿と元ジブリ取締役の友情とは?(シネマトゥデイ)
  2. ^ クレジットでは「撮影監督」と表記されている。

出典[編集]

  1. ^ a b 2014年記者発表資料(2013年度統計) (PDF)”. 日本映画製作者連盟 (2013年1月28日). 2013年1月28日閲覧。
  2. ^ a b c d e スタジオジブリ:新作は「ポニョ」以来5年ぶり宮崎駿作品 14年ぶり高畑作品と2本同時公開 - MANTANWEB(まんたんウェブ)”. スタジオジブリ : 新作は「ポニョ」以来5年ぶり宮崎駿作品 14年ぶり高畑作品と2本同時公開. 毎日新聞デジタル (2012年12月13日). 2012年12月13日閲覧。
  3. ^ a b c d e 島村幸恵 (2012年12月13日). “ジブリ新作、2作一挙公開!宮崎駿&高畑勲作品でジブリ史上初! - シネマトゥデイ”. ジブリ新作、2作一挙公開!宮崎駿&高畑勲作品でジブリ史上初!. シネマトゥデイ. 2012年12月13日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 東宝 映画トピックス”. 「かぐや姫の物語」「風立ちぬ」スタジオジブリ新作発表会見. 東宝 (2012年12月13日). 2012年12月13日閲覧。
  5. ^ “宮崎駿:長編映画製作から引退へ 「風立ちぬ」が最後の作品に”. 毎日jp(毎日新聞). (2013年9月1日). http://mainichi.jp/mantan/news/20130901dyo00m200036000c.html 2013年9月2日閲覧。 
  6. ^ 宮﨑ノビオ「風立ちぬ――妄想カムバック(4)」、『モデルグラフィックス』、大日本絵画、2009年7月
  7. ^ a b c d 宮﨑オソオ「風立ちぬ――妄想カムバック(5)」、『モデルグラフィックス』、大日本絵画、2009年8月
  8. ^ a b c 宮﨑YASUMIGACHI駿「風立ちぬ――妄想カムバック(7)」、『モデルグラフィックス』、大日本絵画、2009年11月
  9. ^ a b c d e f g h 瀧本美織:宮崎駿最新作のヒロイン声優に抜てき - MANTANWEB(まんたんウェブ)”. 瀧本美織 : 宮崎駿最新作のヒロイン声優に抜てき. 毎日新聞社 (2013年6月6日). 2013年6月6日閲覧。
  10. ^ a b c d 宮﨑駿「風立ちぬ――妄想カムバック(6)」、『モデルグラフィックス』、大日本絵画、2009年9月
  11. ^ a b c d 宮崎駿 (2011年1月10日). “風立ちぬ メッセージ”. 企画書. スタジオジブリ. 2013年6月6日閲覧。
  12. ^ 「登場人物」、『風立ちぬ』、東宝出版・商品事業室2013年7月20日
  13. ^ a b 宮崎駿・半藤一利「自分の映画で泣いたのは初めてです――『風立ちぬ』戦争と日本人――零戦の誕生、関東大震災……ただ懸命に生きた時代の証言」、『文藝春秋』第91巻第9号、文藝春秋2013年8月1日、 95頁。
  14. ^ a b c 東京新聞:9条 世界にアピールを スタジオジブリプロデューサー・鈴木敏夫さん:憲法と、:特集・連載(TOKYO Web)”. 9条 世界にアピールを スタジオジブリプロデューサー・鈴木敏夫さん. 中日新聞社 (2013年5月9日). 2013年5月9日閲覧。
  15. ^ 伊藤徳裕 (2012年12月21日). “【伊藤徳裕のここに映画あり】風立ちぬ 宮崎アニメと縁がある群馬県 - MSN産経ニュース”. 風立ちぬ 宮崎アニメと縁がある群馬県. 産経デジタル. 2012年12月21日閲覧。
  16. ^ a b c 宮崎駿・半藤一利「自分の映画で泣いたのは初めてです――『風立ちぬ』戦争と日本人――零戦の誕生、関東大震災……ただ懸命に生きた時代の証言」、『文藝春秋』第91巻第9号、文藝春秋2013年8月1日、 99頁。
  17. ^ 宮崎駿・半藤一利「自分の映画で泣いたのは初めてです――『風立ちぬ』戦争と日本人――零戦の誕生、関東大震災……ただ懸命に生きた時代の証言」、『文藝春秋』第91巻第9号、文藝春秋2013年8月1日、 101頁。
  18. ^ 宮崎駿・半藤一利「自分の映画で泣いたのは初めてです――『風立ちぬ』戦争と日本人――零戦の誕生、関東大震災……ただ懸命に生きた時代の証言」、『文藝春秋』第91巻第9号、文藝春秋2013年8月1日、 104頁。
  19. ^ 東宝映画営業部・宣伝部 (2013年2月4日). “かぐや姫の物語 公開延期のお知らせ”. 『かぐや姫の物語』公開延期のお知らせ. 東宝. 2013年2月4日閲覧。
  20. ^ 共同通信 (2013年2月5日). “高畑監督の新作アニメ、公開延期 「かぐや姫の物語」 - 47NEWS(よんななニュース)”. 高畑監督の新作アニメ、公開延期 「かぐや姫の物語」. 全国新聞ネット. 2013年2月5日閲覧。
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関連事項[編集]

外部リンク[編集]