安藤雅司

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あんどう まさし
安藤 雅司
生年月日 (1969-01-17) 1969年1月17日(53歳)
出生地 日本の旗 日本 広島県
職業 アニメーター
キャラクターデザイナー
アニメ監督
ジャンル アニメーション映画
テレビアニメ
活動期間 1990年 -
主な作品

アニメーション映画
もののけ姫』(作画監督
千と千尋の神隠し』(作画監督)
パプリカ』(キャラクターデザイン・作画監督)
ももへの手紙』(キャラクターデザイン・作画監督・原画)
思い出のマーニー』(脚本・作画監督)
君の名は。』(キャラクターデザイン[注 1]・作画監督)
鹿の王 ユナと約束の旅』(監督[注 2]・キャラクターデザイン・作画監督)


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安藤 雅司(あんどう まさし、1969年1月17日 - )は、日本アニメーターキャラクターデザイナーアニメ監督広島県出身[2]

人物[編集]

邦画歴代興行収入ランキング2位の『千と千尋の神隠し』と3位の『君の名は。』と4位の『もののけ姫』で作画監督を担当した日本のトップアニメーター[3][4][5]

基本的にリアル指向で絵柄もそのようなものを得意とするがある程度の「アニメ絵」っぽさもあり、リアルな中にもソフトな感じがある。例えば現実の存在である人間も空想上の存在である妖怪も両方描けるということである[6][7]

スタジオジブリの先輩であり、苦楽を共にした近藤喜文を師と仰ぎ、尊敬している[2][8]。近藤からは作画における人物の捉え方や動作の描き方などの技術面からアニメーションの仕事に取り組む姿勢まで、多大な影響を受けている。近藤のアニメーターとしての仕事を取り上げた書籍「近藤喜文の仕事-動画で表現できること-」(スタジオジブリ発行)の責任編集や、全国巡回中の「この男がジブリを支えた。近藤喜文展」の音声ガイドも担当している。

漫画家高野文子のファンで、『千と千尋の神隠し』の作画監督を務めた際、高野の絵のように少ない線で人間のリアルなラインを描く表現を作品に取り入れる試みを行った[9]。同作では沖浦啓之監督の『人狼 JIN-ROH』の影響も受けて、それまでのジブリにはないリアルな人物表現を取り入れようとして従来作品通りの演出の宮崎駿監督との間に方向性においてズレが生じた[10]

作画監督で参加した新海誠監督の『君の名は。』では、それまでの新海作品になかったキャラクターの演技(動き)の機微で際立った変化をもたらした[11]。ジブリの同僚だった吉田健一は、安藤がキャラクターデザインへの興味が強く、デザインの良さを咀嚼した上で精度の高い作画が出来るアニメーターだったことが成功の要因だったと語っている[12]。また吉田は『君の名は。』の評価やヒットの要因の分析は新海作品としてどう優れているのかということに偏り過ぎていて絵の力を軽視しているとも語っている[12]。アニメーション映画が大ヒットする場合、色や動画のクオリティを抜きに考えることは出来ず、1,900万人もの観客が2時間の映画をストレスや疲れを感じずに見られたのは観客をドラマに集中させる良質な技術の積み重ねによるもので、それは安藤を中心とした、動画も含めた全作画スタッフの力が大きいというのが吉田の分析である[12]

来歴[編集]

10代のころ、月刊アニメージュに『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』のイラストを投稿して掲載された。

日本大学芸術学部在学中の1990年スタジオジブリを受験し合格、研修生の二期生として入社する[注 3][2][5]

1991年公開の『おもひでぽろぽろ』の動画からアニメーターとしての活動をスタートし、『紅の豚』『海がきこえる』『平成狸合戦ぽんぽこ』『耳をすませば』で原画を担当[13]宮崎駿にその才能を認められ、短編『On Your Mark』で初めて作画監督を任され、25歳で『もののけ姫』のチーフ作画監督に抜擢される[13][14]。『もののけ姫』では宮崎駿のイメージボードを基にキャラクター設定も行った[15]

2001年の『千と千尋の神隠し』でメインの作画監督を務め、当初は演出も任されるという話もあった。しかしキャラクターの描き方や作画作業の役割、演出の方向性での意見の違いから宮崎監督と対立、スタジオジブリを退社してフリーとなる[10][16]

2003年から今敏監督作品に参加するようになる[16]。今監督の映画『東京ゴッドファーザーズ』では作画監督、映画『パプリカ』ではキャラクターデザインと作画監督、テレビアニメ『妄想代理人』ではキャラクターデザインを担当。

2012年、沖浦啓之監督の『ももへの手紙』でキャラクターデザインと作画監督を担当[16]

2013年、『かぐや姫の物語』で作画スタッフとして久しぶりにジブリ作品に参加。翌2014年の『思い出のマーニー』では、『千と千尋の神隠し』以来13年ぶりにジブリ作品で作画監督を務める[17]。また同作では共同脚本も手掛けた[注 4]

2016年新海誠監督の映画『君の名は。』の作画監督とキャラクターデザインを担当した。本来ならキャラクターデザイナーの田中将賀が作画も行った方が作業もスムーズに進むので好ましいが、田中が他の仕事も抱えていたため、新海がもともとファンだった安藤に作画監督のオファーを出した[注 5][6]。作品で安藤は田中将賀のデザインをもとにキャラクター設定表を起こし、チーフ作画監督を担当した[注 1][18]。アニメーター出身ではない新海監督は自ら作画指揮を行う演出スタイルではないため、原画メンバーの多くを招集したり演技設計の最終的なイニシアチブを取ったりと、作画の実務については安藤が担っている[1]

2019年12月、初監督作品[注 2]鹿の王 ユナと約束の旅』が2020年9月18日に劇場公開されると発表された[5][14]。2020年8月6日、公開は2021年に延期となることが配給の東宝から発表された[19]。2021年9月10日の公開が決定した[3]が、再度の公開延期が決定[20]。2度の公開延期を経て新たな公開日が2022年2月4日(金)に決定[21]

作品リスト[編集]

劇場アニメーション[編集]

テレビアニメーション[編集]

Webアニメーション[編集]

ゲーム[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ a b c 主に田中のデザインを作画用にクリンナップする作業を担当した[1]
  2. ^ a b c 『千と千尋の神隠し』で監督助手を経験した宮地昌幸との共同監督。
  3. ^ 同期にアニメーターの吉田健一がいる。
  4. ^ a b 監督の米林宏昌、脚本家の丹羽圭子と共同で書いた。
  5. ^ 2014年末にオファーを受けた安藤は、3∼4カ月後に「田中さんの華のあるキャラクターを僕のような地味な芝居を描いてきたアニメーターが描くことに何か面白みを見いだせそうな気がする」として承諾した[6]

出典[編集]

  1. ^ a b [2]『君の名は。』の作画をめぐって”. 論座. 朝日新聞社 (2017年9月5日). 2021年8月10日閲覧。
  2. ^ a b c アーティストトーク アニメーター安藤雅司が語る「近藤喜文の仕事」”. 筆の里工房 (2016年5月). 2021年8月10日閲覧。
  3. ^ a b milet、アニメーション映画『鹿の王』主題歌を書き下ろし 安藤監督が絶賛”. ORICON NEWS. オリコン (2021年7月9日). 2021年8月10日閲覧。
  4. ^ トップアニメーター・安藤雅司の初監督作品「鹿の王」アヌシー国際アニメーション映画祭2021“長編部門コンペティション”に選出!”. アニメ!アニメ!. 株式会社イード (2021年5月21日). 2021年8月10日閲覧。
  5. ^ a b c 安藤雅司「鹿の王」でアニメファン待望の初監督! 20年9月18日に公開”. 映画ニュース. 株式会社エイガ・ドット・コム(カカクコムグループ) (2019年12月10日). 2021年8月10日閲覧。
  6. ^ a b c 『君の名は。』には、日本のアニメーションの文脈が豊かに含まれている 新海誠監督インタビュー”. FILMERS. 株式会社バース (2016年8月21日). 2021年8月10日閲覧。
  7. ^ 『ももへの手紙』沖浦啓之監督インタビュー 第3回「実在感のあるキャラクターを求めて」”. WEBアニメスタイル. 株式会社スタイル (2012年4月20日). 2021年8月10日閲覧。
  8. ^ 新海誠、『君の名は。』で新たなステージへ 過去作との共通点と相違点から読み解く”. リアルサウンド. 株式会社blueprint (2016年8月26日). 2021年8月10日閲覧。
  9. ^ ロマンアルバム 千と千尋の神隠し Spirited away, p. ?.
  10. ^ a b プロダクションノート - スタジオジブリの新たな挑戦。日本最高峰のスタッフが集結。”. 映画『思い出のマーニー』公式サイト. スタジオジブリ (2016年8月29日). 2021年8月11日閲覧。
  11. ^ 【映画「君の名は。」を観て】RADWIMPSと新海誠監督を結びつけた作品性とは?”. M-ON! MUSIC. ソニーミュージックグループ (2016年8月29日). 2021年8月11日閲覧。
  12. ^ a b c アニメ業界ウォッチング第33回:吉田健一が語る「キャラクターデザイン」に求められる能力”. アキバ総研. 株式会社カカクコム (2017年5月28日). 2021年8月11日閲覧。
  13. ^ a b 安藤雅司 (1999年1月29日). 宮崎作品のアニメーション技術考 安藤雅司氏インタビュー. インタビュアー:叶精二. http://www.yk.rim.or.jp/~rst/rabo/miyazaki/gijyutsu_ron.html 2021年8月14日閲覧。 
  14. ^ a b “映画「鹿の王」2020年9月公開!「もののけ姫」「君の名は。」の安藤雅司が初監督”. コミックナタリー. (2019年12月10日). https://natalie.mu/comic/news/358890 2019年12月31日閲覧。 
  15. ^ 別冊COMIC BOX vol.2「もののけ姫」を読み解く, p. 124.
  16. ^ a b c ジブリ新作は「人の手を借りる」!実写映画の美術監督&宮崎駿に「NO」を突き付けた作画監督を招へい”. シネマトゥデイ. 株式会社シネマトゥデイ (2014年4月20日). 2021年8月15日閲覧。
  17. ^ 「野中くん発 ジブリだより」2014年5月号”. スタジオジブリ (2014年5月10日). 2021年8月9日閲覧。
  18. ^ 「君の名は。」展を松屋銀座にて開催 - キャラクター設定表やビデオコンテなど制作資料約300点”. FASHION PRESS. 株式会社カーリン (2017年2月8日). 2021年8月15日閲覧。
  19. ^ 上橋菜穂子原作、安藤雅司初監督の「鹿の王」21年に公開延期”. 映画ニュース. 株式会社エイガ・ドット・コム(カカクコムグループ) (2020年8月6日). 2021年8月10日閲覧。
  20. ^ 『鹿の王 ユナと約束の旅』再び公開延期に” (2021年8月26日). 2021年12月10日閲覧。
  21. ^ 堤真一&竹内涼真&杏『鹿の王』2月4日公開へ!新予告&新ビジュアル完成” (2021年12月6日). 2021年12月10日閲覧。
  22. ^ トップアニメーター・安藤雅司初監督作品『鹿の王』2022年2月4日公開決定│アニメ&ゲーム by ORICON NEWS”. ORICON (2021年12月6日). 2021年12月10日閲覧。
  23. ^ 片渕須直監督、次回作は「マイマイ新子」千年前の少女がその後の道のり 紹介動画を公開”. ORICON NEWS. オリコン (2022年3月22日). 2022年9月9日閲覧。
  24. ^ 妄想代理人 :作品情報”. アニメハック. 2020年6月11日閲覧。

参考文献[編集]

  • 近藤喜文 『近藤喜文の仕事 動画で表現できること』スタジオジブリ、1982年7月4日。  責任編集:安藤雅司
  • 『バンブームック クリエイターズファイル 宮崎駿の世界』竹書房、2005年1月15日。ISBN 978-4812419434  安藤雅司、吉田健一、村田和也の鼎談を収録
  • スタジオジブリ 『思い出のマーニー ビジュアルガイド』角川書店、2014年7月19日。ISBN 978-4041019788  安藤雅司インタビューを収録
  • スタジオジブリ 『THE ART OF When Marnie Was There 思い出のマーニー』竹書房、2014年7月31日。ISBN 978-4198100179  安藤雅司のイラストとインタビューを収録
  • 才谷遼 編 『別冊COMIC BOX vol.2「もののけ姫」を読み解く』株式会社ふゅーじょんぷろだくと、1997年8月1日。 
  • 才谷遼 編 『別冊COMIC BOX vol.6「千と千尋の神隠し」千尋の大冒険』株式会社ふゅーじょんぷろだくと、2001年1月1日。 
  • アニメージュ編集部 編 『ロマンアルバム 千と千尋の神隠し Spirited away』徳間書店、2001年8月1日。ISBN 978-4197201693 
  • スタジオジブリ 『ジブリの教科書10 もののけ姫』文藝春秋 文春ジブリ文庫、2015年7月10日。ISBN 978-4168120091  安藤雅司インタビューを収録
  • スタジオジブリ 『ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し』文藝春秋 文春ジブリ文庫、2016年3月10日。ISBN 978-4168120114  安藤雅司インタビューを収録
  • 新海 誠Walker ウォーカームック 編 『ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し』KADOKAWA/角川マガジンズ、2016年8月26日。ISBN 978-4048956963  安藤雅司インタビューを収録
  • 『映画秘宝EX 劇場アニメの新時代』洋泉社、2017年3月21日。ISBN 978-4800311825  安藤雅司インタビューを収録
  • フリースタイル編集部 『フリースタイル35 片渕須直×安藤雅司「時間と空間をつくる」』フリースタイル、2017年4月12日。ISBN 978-4939138874  安藤雅司インタビューを収録
  • 『新海誠展 公式図録』文藝春秋、2017年11月。  安藤雅司インタビューを収録