太陽がいっぱい (映画)

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太陽がいっぱい
Plein soleil
監督 ルネ・クレマン
脚本 ポール・ジェゴフ
ルネ・クレマン
原作 パトリシア・ハイスミス
製作 ロベール・アキム
レイモン・アキム
出演者 アラン・ドロン
マリー・ラフォレ
モーリス・ロネ
音楽 ニーノ・ロータ
撮影 アンリ・ドカエ
編集 フランソワーズ・ジャヴェ
製作会社 ロベール・エ・レイモン・アキム
パリタリア 他
配給 イタリアの旗 ティタヌス
日本の旗 新外映配給
公開 フランスの旗 1960年3月10日
日本の旗 1960年6月11日
上映時間 118分
製作国 フランスの旗 フランス
イタリアの旗 イタリア
言語 フランス語
イタリア語
英語
配給収入 1億2441万円[1] 日本の旗
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太陽がいっぱい』(たいようがいっぱい、原題:Plein soleil )は、1960年フランスイタリアの合作映画。主演:アラン・ドロン、監督:ルネ・クレマン

概要[編集]

パトリシア・ハイスミスの小説 The Talented Mr. Ripley (才人リプリー君)(邦訳本の題名は『太陽がいっぱい』、『リプリー』)を原作とした、ピカレスクサスペンス。出演はアラン・ドロンモーリス・ロネマリー・ラフォレルネ・クレマン監督の代表作と言われている。音楽はニーノ・ロータで主題曲も当時ヒットした。

ストーリー[編集]

ローマの街角の舗道カフェで話し込む青年が二人。アメリカから来た大富豪の息子フィリップと貧しく孤独な青年トム・リプリー。[注 1]フィリップはトムを見下している。フィリップをアメリカに連れ戻すよう父親から依頼を受けてアメリカから来たトムだが、フィリップには帰国の意思はなく、約束を果たせず父親から謝礼金を受けることが出来なくなったトムは手持ちの金がなくなり、そしてフィリップの金目当てに彼と行動を共にする。いつしかフィリップから疎まれるようになった。トム自身やフィリップの恋人のパリ娘マルジュに対してフィリップが時折見せる傍若無人な態度にトムの怒りが増す。フィリップはナポリに近い漁村モンジベッロにマルジュと愛の巣を持っていた。

やがて3人でヨットに乗り沖合に出た。ヨットの中でもフィリップの傍若無人ぶりは変わらなかった。マルジュが作った料理を3人で食事すると、テーブルにはマスカットや洋梨が盛られたフルーツ皿、魚のムニエルにレモンを絞り、フィリップは魚を指を使って小骨を丁寧に取りながら食べて、フィリップは「上品ぶるのは下品な奴のすることだ。魚はナイフで切るもんじゃない。ナイフの持ち方も間違っている。」という。その後小細工を弄してマルジュを下船させてから、トムはついに船上でフィリップを殺害し、死体をロープで縛って海に捨てた。

港に戻った後にトムはフィリップになりすまして彼の財産を手に入れようと画策し、彼の身分証明書の写真を自分のものに変えて粘土で押印して偽造し、彼のサインをそっくり真似るため壁に白い紙を貼り付けて、スライドで彼の筆跡を拡大して映写し、その白い紙の上に何度も書いて練習し、彼の声色を真似てフィリップになりすましていく。そしてフィリップに会いたがるマルジュにタイプで打った手紙を渡す。だがフィリップの友人で遊び人のフレディが訪ねてきて、トムがフィリップになりすましていることを見破られたため、布袋尊の置物で撲殺し、彼の死体を捨てる際に「君を殺したのはフィリップさ、僕じゃない」と語る。このフレディ殺しで警察が動き、フィリップが行方不明であることでトムの身辺を捜査し始めた。トムはフィリップがフレディを殺し自殺したように見せかけてマルジュの心を自分に向けさせ、やがてトムはマルジュと結ばれた。

そしてマリーナに停泊したままのフィリップのヨットを売り払うことにした。二人が海岸で泳いだ後にマルジュはヨットの検査に立ち会うためにマリーナへ向かう。イスキアの浜辺でトムは一人イスに座り、売店のウエイトレスに「太陽がいっぱいで最高の気分さ」と語り、完全犯罪に酔いしれる。マリーナではヨットを陸に引き揚げると、ヨットの後尾のスクリューに絡んだ一本のロープが見つかり、それを辿って水面を見ると、マルジュの悲鳴が響き渡った。やがて刑事たちが売店にやってきて、トムはウエイトレスに呼ばれて売店へと歩いていった。後には、太陽がいっぱいの浜と青い海が広がるのみだった。

キャスト[編集]

役名 俳優 日本語吹替声優
TBS フジテレビ 日本テレビ テレビ朝日 テレビ東京 スター・チャンネル
トム・リプレー アラン・ドロン 石立鉄男 野沢那智 松橋登 野沢那智 中村悠一
フィリップ・グリンリーフ モーリス・ロネ 堀勝之祐 中尾彬 有川博 池田秀一 鈴村健一
マルジュ・デュヴァル マリー・ラフォレ 山東昭子 上田みゆき 二宮さよ子 榊原良子 岡寛恵 遠藤綾
リコルディ刑事 エルノ・クリサ 村越伊知郎 西山連 木村元 中田浩二 堀内賢雄 てらそままさき
フレディ・マイルズ ビル・カーンズ 加茂喜久 村瀬正彦 東野英心 飯塚昭三 谷口節 三宅健太
オブライエン フランク・ラティモア 村越伊知郎 宮田光 大塚周夫 咲野俊介
ボリス ニコラス・ペトロフ 仲木隆司
ポポヴァ夫人 エルヴィーレ・ポペスコ 川路夏子 寺島信子 楠田薫 翠準子 久保田民絵
フレディの連れの女性 ロミー・シュナイダー
カメオ出演[2]
恵比寿まさ子
  • TBS版 - 初放映1969年4月4日『金曜ロードショー
    • 『金曜ロードショー』第1回作品。ポニー版の名作洋画劇場と記されたVHSに収録。
  • フジテレビ版 - 初放映1972年10月6日『ゴールデン洋画劇場
    • 演出:春日正伸、翻訳:榎あきら、選曲:赤塚不二夫、効果:PAG、調整:桑原邦男、録音:ニュージャパンフィルム、制作:オムニバス・プロモーション
    • スペシャル・エディションDVDに収録。
  • 日本テレビ版 - 初放映1977年1月12日『水曜ロードショー
  • テレビ朝日版 - 初放映1984年9月2日『日曜洋画劇場
  • テレビ東京版 - 初放映2008年7月20日『夏の名作シネマスペシャル』
    • 演出:小山悟、翻訳:石原千麻、効果:リレーション、調整:重光秀樹、プロデューサー:バブルネック涼・新井正和、制作:HALF H・P STUDIO
  • スター・チャンネル版 - 初放映2016年4月16日 スターチャンネル3[3][4]

エピソード[編集]

  • ルネ・クレマン監督は『鉄路の闘い』(1945年)で第1回カンヌ国際映画祭・国際審査員賞および監督賞を受賞し、その後『海の牙』(1946年)、『禁じられた遊び』(1952年)、『居酒屋』(1956年)など、社会性の強い作品を撮り続けてきたが、この作品は初めての娯楽映画であり、当初あまり演技の実績の無いアラン・ドロンの起用には気乗りがしなかったと言われる。しかし、この一作だけで一躍世界的スターまで彼が登りつめて以後は、『生きる歓び』(1961年)や『危険がいっぱい』(1964年)でもドロンを主役に起用している[5]
  • 1999年にマット・デイモン主演で、映画『リプリー』が公開された。これは『太陽がいっぱい』の再映画化だが、原作により忠実に映画化されている。しかし後半の展開が微妙に違っている[6]
  • 本作で作曲を担当したニーノ・ロータは、この作品に携わった事に強い不満を残している。フェデリコ・フェリーニの常連作曲家であった彼は、フェリーニのようにお互いに話し合いながら音楽を練っていく方法を是としていた。しかし、本作の監督であるルネ・クレマンは居丈高にロータにフィルムを一方的に送りつけ、これに似合う音楽を作れと命令したため、クレマンの態度にロータは立腹したという。
  • 全編を流れる主題曲は当時話題になったが、サウンドトラック盤は発売されず、日本ではフィルム・シンフォニック・オーケストラが演奏した盤が発売されてヒットした。後にテレビ放映で日本語版を作る時に、このフィルム・シンフォニック・オーケストラ盤を使用したのでサウンドトラック盤と間違われやすいが、実際の映画で使われる演奏は違う。
  • 映画評論家荻昌弘は、父親からの多額の謝礼を当てにしてやってきたトムとその彼を見下し軽蔑するフィリップ、普通の青年二人が金を挟んで出会うことになった、ただそれだけのことでのっぴきならない形で犯罪を生み出す構図でこの二人をピタッと設定したことがこの映画の成功であった、と評している。そしてルネ・クレマン監督が全編イタリアを舞台にして画面を明るくきらびやかにして熱く輝かせ、逆に人間の心の奥の深淵に潜む暗さを対比させ、「白昼の明るさの中での黒い恐怖」というモチーフが「太陽がいっぱい」を支配していると述べている。原作にあるアメリカでトムが父親の大富豪から依頼を受ける話が省略されているのはこのためである。[7]
  • ロケ地はオールイタリアロケである。盲目の男性とのシーンはローマ市街。海岸のシーンはイスキア島である。魚市場のさまよいのシーンはナポリ市街で撮影されている。
  • 劇中イタリア語で会話するシーンがある。盲目の男性と、タクシーの運転手とトムが、銀行員とトムが、そして最後のイスキアの海岸シーンでウエイトレスとトムがそれぞれイタリア語で会話している。
  • 淀川長治吉行淳之介 との『恐怖対談』(新潮社  1980年)で「あの映画はホモセクシャル映画の第1号なんですよね」と発言していた。

映像ソフト[編集]

VHS
レーザーディスク
  • 太陽がいっぱい(1995年8月25日、バンダイビジュアル BELL-793)
DVD
  • 太陽がいっぱい(1997年7月25日、バンダイビジュアル BCBF-5)
  • 太陽がいっぱい(2002年10月25日 パイオニアLDC PIBF-1480)
  • 太陽がいっぱい スペシャル・エディション(2008年9月26日、発売元:「太陽がいっぱいSE」発売委員会、販売元:ジェネオンエンタテインメント GNBF-7480)
  • 太陽がいっぱい 最新デジタル・リマスター版(2011年5月28日、発売元:マーメイドフィルム、販売元:紀伊國屋書店 KKDS-623)
Blu-ray Disc
  • 太陽がいっぱい 最新デジタル・リマスター版(2011年5月28日、発売元:マーメイドフィルム、販売元:紀伊國屋書店 KKBS-4)

注釈[編集]

  1. ^ トム・リプリーはふとしたきっかけで富豪グリンリーフ氏に自分が氏の息子フィリップの友人であると信じ込ませ、イタリアから帰らず放蕩三昧のフィリップをアメリカに連れ戻すよう依頼を受ける、と原作にあり、後に同じ原作で再映画化された映画「リプリー」ではリプリーが父親に会う場面が冒頭に描かれているが、この「太陽がいっぱい」ではすべて省略され、最初からイタリアを舞台に青年二人が出会ってからの話として展開させている。

出典[編集]

  1. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)171頁
  2. ^ Plein soleil (1960) - Full cast and crew” (英語). IMDb. 2012年4月16日閲覧。
  3. ^ スターチャンネル・オリジナル吹替プロジェクト「太陽がいっぱい」
  4. ^ オリジナル吹替プロジェクト第3弾! 『太陽がいっぱい』新録完全吹替版”. スター・チャンネル. 2016年2月15日閲覧。
  5. ^ 第2回新・午前10時の映画祭プログラム 20P・21P 「太陽がいっぱい」参照。
  6. ^ 第2回新・午前10時の映画祭プログラム 21P 「太陽がいっぱい」参照。
  7. ^ 「次世代に残したい名作映画96」110~113P 参照 雑誌《スクリーン》1960年7月号から 近代映画社 2013年8月発行。

外部リンク[編集]