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パリは燃えているか

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
パリは燃えているか
Paris brûle-t-il ?
Is Paris Burning?
監督 ルネ・クレマン
脚本 ゴア・ヴィダル
フランシス・フォード・コッポラ
原作 ラリー・コリンズ
ドミニク・ラピエール
製作 ポール・グレッツフランス語版
出演者 カーク・ダグラス
グレン・フォード
ゲルト・フレーベ
イヴ・モンタン
ジャン=ポール・ベルモンド
ロバート・スタック
アラン・ドロン
音楽 モーリス・ジャール
撮影 マルセル・グリニヨンフランス語版
編集 ロバート・ローレンス
製作会社 パラマウント映画
配給 パラマウント映画
公開 フランスの旗 1966年10月26日
アメリカ合衆国の旗 1966年11月10日
日本の旗 1966年12月21日
上映時間 173分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
フランスの旗 フランス
言語 英語
フランス語
配給収入 日本の旗 1億8683万円[1]
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パリは燃えているか』(パリはもえているか、: Paris brûle-t-il?: Is Paris Burning?)は、1966年アメリカ合衆国フランス合作のオールスターキャストによる戦争映画

ラリー・コリンズドミニク・ラピエールによるレジスタンス(共産主義者とドゴール派)と自由フランス軍によるパリの解放を描いたノンフィクション作品の原作[2]ルネ・クレマンが監督した。脚本はゴア・ヴィダルフランシス・フォード・コッポラが担当している。

概要

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1944年8月7日から、8月19日のレジスタンスの蜂起開始、アメリカ軍の援護を受けて、8月25日のフランスの首都パリの解放に至るまでを描く。

物語はドイツ軍の降伏に貢献したレジスタンス運動を中心にしている。主な登場人物は、レジスタンスのアンリ・ロル=タンギーフランス語版大佐やジャック・シャバン・デルマス大佐、ドイツ軍のディートリヒ・フォン・コルティッツ将軍、アメリカ軍のジョージ・パットン将軍、自由フランス軍のフィリップ・ルクレール将軍などである。

映画の終盤、降伏前にパリを破壊しろというアドルフ・ヒトラー総統の命令が下ったが、最終的にコルティッツ将軍は命令に従わずに連合国に無条件降伏し、パリを破壊から守った。パリ側のドイツ軍本部内でうち捨てられた電話機からヒトラーの「パリは燃えているか?(命令通りに破壊したか?)」との声が聞こえていた。

ストーリー

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1944年8月、第2次世界大戦の連合軍の反撃作戦が始まっていた頃、フランスの装甲師団とアメリカの第4師団がパリ進撃を開始する命令を待っていた。独軍下のパリでは地下組織に潜ってレジスタンスを指導するドゴール将軍の幕僚デルマ(アラン・ドロン)と自由フランス軍=FFIの首領ロル大佐(ブルーノ・クリーマー)が会見、パリ防衛について意見をたたかわしていた。左翼のFFIは武器弾薬が手に入りしだい決起すると主張、ドゴール派は連合軍到着まで待つという意見であった。パリをワルシャワのように廃墟にしたくなかったからだ。一方独軍のパリ占領軍司令官コルティッツ将軍(ゲルト・フレーベ)は連合軍の進攻と同時に、パリを破壊せよという総統命令を受けていた。将軍は工作隊に命じて、工場、記念碑、橋梁、地下水道など、ありとあらゆる建造物に対して地雷を敷設させていた。このような時に、イギリス軍諜報部から“連合軍はパリを迂回して進攻する”というメッセージがレジスタンス派に届いた。ロル大佐は自力でパリを奪回しようと決意した。これを知ったデルマは、これをやめさせる人間は政治犯として、独軍に捕らえられているラベしかないと考え、ラベの妻フランソワーズ(レスリー・キャロン)とスウェーデン領事ノルドリンク(オーソン・ウェルズ)を動かして、ラベ救出を図ったが失敗した。結局、ドゴール派と左翼派の会議の結果決起と決まった。そして決まったとなるや逸速くドゴール派が市の要所を占領してしまった。市街戦が始まった。パリ占領司令部は、独軍総司令部からパリを廃墟にせよという命令をうけておりその上、市街戦が長びけば爆撃機が出動すると告げられていた。コルティッツ将軍は、すでにドイツ敗戦を予想していて、パリを破壊することは全く無用なことと思っていた。そこでノルドリンク領事を呼び、一時休戦をして、パリを爆撃機から守り、その間に連合軍を呼べと、遠回しに謎をかけた。ノルドリンクから事情を知ったデルマは、ガロア少佐(ピエール・ヴァネック)を連合軍司令部に送った。ガロアはパリを脱出、ノルマンディの米軍司令部に到着した。パットン将軍(カーク・ダグラス)はパリ解放は米軍の任務ではないと告げ、ガロアを最前線のルクレク将軍(クロード・リッシュ)に送った。ルクレク将軍は事態の急を知ってシーバート将軍(ロバート・スタック)を動かし、ブラドリー将軍(グレン・フォード)を説いた。ブラドリーは全軍にパリ進攻を命令した。8月25日、ヒットラーの専用電話はパリにかかっていて“パリは燃えているか”と叫び続けていた。

キャスト

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役名 俳優 日本語吹替
日本テレビ
イヴォン・モランダ ジャン=ポール・ベルモンド 山田康雄
モノー博士 シャルル・ボワイエ 大木民夫
ロジャー・ガロア少佐 ピエール・ヴァネックフランス語版 堀勝之祐
ジャック・シャバン=デルマス アラン・ドロン 久富惟晴
ディートリヒ・フォン・コルティッツ将軍 ゲルト・フレーベ 田中明夫
ラウル・ノルドリンク領事 オーソン・ウェルズ 金田龍之介
オマー・ブラッドレー将軍 グレン・フォード 木村幌
ジョージ・パットン将軍 カーク・ダグラス 西田昭市
フランソワーズ・ラベ レスリー・キャロン 平井道子
カフェの女主人 シモーヌ・シニョレ 遠藤晴
クレール マリー・ヴェルシニフランス語版 信沢三恵子
ウィリアム・L・シーバート将軍 ロバート・スタック 仁内達之
マルセル・ビジアン軍曹 イヴ・モンタン 家弓家正
アンリ・カルチャー中尉 ジャン=ピエール・カッセル 阪脩
タンクのGI ジョージ・チャキリス 曽我部和行
ワレンGI アンソニー・パーキンス 津嘉山正種
チャーリー スキップ・ワード 野島昭生
アンリ・ロル=タンギー大佐 ブリュノ・クレメール 村越伊知郎
レーベル大佐 クロード・ドーファンフランス語版
アレクサンドル・パロディ ピエール・デュクスフランス語版 村越伊知郎
イヴ・バイエット ダニエル・ジェラン 山内雅人
ザ・ベイカー ジョルジュ・ジェレフランス語版
アルフレート・ヨードル ハンネス・メッセマードイツ語版 藤本譲
フォン・アルニム少佐 ハリー・マイエンドイツ語版 富山敬
エドガー・ピザーニ ミシェル・ピコリ 村松康雄
エーベルナッハ大尉 ヴォルフガング・プライス 増岡弘
フィリップ・ルクレール将軍 クロード・リッシュフランス語版
サージ大尉 ジャン=ルイ・トランティニャン
ルイゼ知事 ミシェル・エチェベリフランス語版
アドルフ・ヒトラー ビリー・フリックフランス語版 梶哲也
フォン・ヴォインブルク将軍 エルンスト・F・フュアブリンガードイツ語版 寺島幹夫
パンタンの指揮官 ギュンター・マイスナー
フレデリック・ジョリオ=キュリー サッシャ・ピトエフ英語版
ディビュ・ブライデル マイケル・ロンズデール[3]
パウエル諜報員 E・G・マーシャル[3]
ナレーション N/A 山内雅人
不明
その他
N/A 納谷六朗
宮川洋一
藤城裕士
飯塚昭三
緒方賢一
吉沢久嘉
加藤正之
神谷明
鈴木れい子
古川登志夫
日比野美佐子
日本語版スタッフ
演出 佐藤敏夫
翻訳 木原たけし
効果 赤塚不二夫
選曲 東上別符精
制作 東北新社
解説 水野晴郎
初回放送 1975年8月20日27日
水曜ロードショー
※ノーカット

日本語吹替音声はニューラインから2021年3月3日に発売のBDに収録[4]。当初は2時間枠での再放送時の音源を収録する予定だったが一般から初回放送のテープ録音の提供がありノーカット版の収録が実現した[5]

スタッフ

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制作

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本作は主に白黒で撮影された。これは、撮影のためハーケンクロイツを公共の建物に掲げることにフランス当局からの許可が出ず、本来の赤い部分を緑に変色させたものを使用したことをごまかすためである。なお、クロージングクレジットでのパリの空中ショットはカラーで撮影された。

映画の制作は当時、存命であったイヴォン・モランダフランス語版、公的機関(パリ警視庁内務省)の両方から多数の承認が必要となった[6]。また、シャルル・ド・ゴールによって厳しい監修が行われ、ド・ゴールは手紙に書いた規則に従うことを条件にパリでのロケ撮影を許可したという。特にド・ゴールはフランス共産党による解放で果たした活躍の描写を最小限に抑えることを切望しており、脚本のフランシス・フォード・コッポラは後に「露骨な政治的検閲だった」と発言している。その他、制作はフランス共産党フランス労働総同盟の二重の支配があり、ド・ゴールまたは共産主義者のいずれかを怒らせるリスクなしに原作本のすべての要素を使用することができなかったとゴア・ヴィダルは感じたという[7]

撮影は、オテル・デ・ザンヴァリッドコンコルド広場ノートルダム大聖堂カルナヴァレ博物館など、パリ全土の180か所で行われた[8]

クロード・リッシュフランス語版はフィリップ・ルクレール役以外にピエール・ド・ラ・フシャルディエール中尉も演じているが、最終的にクレジットされたのはルクレール役のみであった[9]

カーク・ダグラスは、ジャン=ポール・ベルモンドがキャスティングされていることを知り本作への参加を決めたが、最終的に一緒に写る場面は無かった[10]

主な受賞歴

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結果 部門 受賞者
1967 第39回アカデミー賞 ノミネート 撮影賞 (白黒部門) マルセル・グリニヨンフランス語版
美術賞 (白黒部門) ウィリー・ホルト
マーク・フレデリクス
ピエール・ギュフロワ
第24回ゴールデングローブ賞 作曲賞 モーリス・ジャール

脚注

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  1. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)241頁
  2. ^ 訳書は『パリは燃えているか?』(志摩隆訳、早川書房(上下)、新版2005年)
  3. ^ a b クレジットなし
  4. ^ RELEASE INFORMATION パリは燃えているか-HDリマスター版-”. ハピネット. 2021年1月31日閲覧。
  5. ^ @newline_maniacs (2020年12月2日). "『パリは燃えているか』がほぼノーカットの吹替で放送されたのは1975年8月の初回のみ。放送時期的に初回版の入手は諦め、Blu-rayには約2時間の再放送の吹替を収録する予定でしたが、幸運にも初回放送をテープ録音した方より音源の提供を受けることができました。ご尽力下さった方々に深謝いたします。". X(旧Twitter)より2023年5月12日閲覧
  6. ^ Sylvie Lindeperg, "La Résistance rejouée. Usages gaullistes du cinéma", Politix, volume 6, no 24, 1993, p. 144 à 152.
  7. ^ Cité par René Chateau dans Lui, mai 1966.
  8. ^ Paris brûle-t-il ?
  9. ^ "Pierre de la Fouchardière, libérateur de Paris, vit désormais aux Marquises", La Voix du Nord, 21 juin 2010.
  10. ^ Philippe Durant, Destins croisés : Delon - Belmondo, éditions Carnot, 2004, 351 pages, p.59.

外部リンク

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