大平貴之

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大平 貴之
生誕 (1970-03-11) 1970年3月11日(54歳)
日本の旗 日本神奈川県川崎市
国籍 日本の旗 日本
教育 日本大学大学院修士課程
業績
専門分野 プラネタリウム
所属機関 ホリプロ
勤務先 有限会社大平技研
プロジェクト 宇宙オープンラボ[注釈 1]
スカイプラネタリウム[注釈 2]
設計 アストロライナー
メガスター
ホームスター
マイスター
SPACE BALL
GIGANIUM
受賞歴 日本イノベーター大賞優秀賞
文部科学大臣表彰 科学技術賞
家庭用プラネタリウム投影機「ホームスター」

大平 貴之(おおひら たかゆき、1970年(昭和45年)3月11日 - )は、日本のエンジニアプラネタリウムクリエイター。

日本大学第二高等学校日本大学生産工学部機械工学科を卒業し、日本大学大学院理工学研究科精密機械工学専攻修士課程修了。ソニー株式会社生産技術部門を経て2005年に有限会社大平技研を創業し、同社代表となる。

来歴・人物[編集]

生い立ち、学生時代[編集]

1970年神奈川県川崎市に生まれる[2]。小学校の頃からプラネタリウム作りを始め、日本大学生産工学部機械工学科に進学。途中1年間休学し、小さなメーカーでバイトをしながら製作資金を稼ぎ、製品作りの基礎を学ぶ[3]在学中の1991年に、個人製作のプラネタリウムとしては前代未聞のレンズ投影式プラネタリウム「アストロライナー」を完成させ、話題となる[4]。1996年に日本大学大学院理工学研究科精密機械工学専攻を修了し、ソニーに就職[5]

会社員時代、独立[編集]

ソニーでは生産技術部門に配属され[6]、光磁気記録を応用したロータリーエンコーダの開発にも従事するが[7][8]。しかしプラネタリウム製作にかける情熱は冷めることがなく、仕事が終わってからプラネタリウム作りを続けた。1998年には、当時世界最高の170万個の恒星を投影することが可能な、重量わずか30キログラムの移動式プラネタリウム「アストロライナー2(後のメガスター)」を個人で完成させた[6]

2000年頃に退職を申し出るが、経緯を説明したところソニーで事業化が検討されることになる。メガスターの上映会には取締役会議長であった大賀典雄、会長であった出井伸之も参加したほどであったが、組織での開発に行き詰まり、2003年にはソニーを退社してフリーとなる。退社当時の社長であった安藤国威は大平の退社を社内報のコラムで取り上げ、退社に至ったことへの自省を綴った。大平にとってもソニーでの事業化の検討はその後の事業展開に好影響を与えていた[6]

有限会社大平技研時代[編集]

2005年に有限会社大平技研を設立し、代表に就任[5][9]セガトイズと共同で、世界初の光学式家庭用プラネタリウム「ホームスター(HOMESTAR)」を開発した[5][10]。『大人の科学Vol.9』付録のピンホールプラネタリウムの監修も行った(ピンホール原版は大平の手による)[11]。その後もメガスターIIをはじめとする様々なプラネタリウムを開発・製作するかたわら、メガスターやメガスターIIを用いて自ら全国各地で投影活動、プラネタリウム開発の際のコンサルティング活動なども行っていった[9][1]

大平は2003年に自伝『プラネタリウムをつくりました』を出版していたが[4]、2005年8月にこれが『星に願いを〜七畳間で生まれた410万の星〜』としてテレビドラマ化される[12]。また、東京大学特任講師(2005年10月 - ?)[3]和歌山大学客員教授[13]相模女子大学客員教授( - 2014年8月[14])も務めており、和歌山大学では光学機器の研究も行っていた。2005年には日本イノベーター大賞優秀賞を、2006年には文部科学大臣表彰 科学技術賞も受賞する[1][9]

2012年には、六本木ヒルズ52階で11月から開催の「スター・クルーズ・プラネタリウム」に総合プロデューサーとして参加[15]2016年1月より放映のテレビアニメ「ノルン+ノネット」には、星空データを提供した[16]ソニーDADCジャパンと連携し、20等星の光星を再現可能な恒星原版「GIGAMASK」を開発[17]2016年には光源に高輝度LEDを用い、教室や家庭などで10.5等星までの星を再現できるメガスター「MEGASTAR CLASS」を開発。販売、レンタルを開始した[18][19][20][21]

大平は「ドーム球場で、某歌手のコンサートを開催する。そのときに、ドームの天井に星を映し出すことができないか?」という依頼を受け[22]、ミラーボールの仕組みを利用した[23][24]直径500メートルのドームに投影可能な「GIGANIUM」を開発[25]。直径223メートルのドームであるメットライフドームで実証実験を成功させ、2018年に発表[26]。同会場において、2019年8月25日の野球の試合後に一般公開イベントを開催した[27][28][注釈 3]

2020年8月、セガトイズの「HOMESTAR」が「Homestar」としてリニューアルされる[10]。なお、同年は新型コロナウイルス感染症の流行に伴うステイホームもあり、ホームスターシリーズの販売台数が前年の1.9倍になったという[10]。2021年現在、大平は大阪芸術大学で客員教授を務めており、写真学科で授業を担当している[29]

受賞歴[編集]

開発実績[編集]

  • 学生時代
    プラネタリウム用NC工作機械[4]、レンズ式プラネタリウム「アストロライナー」
  • 光学式プラネタリウム「メガスター」シリーズ
    MEGASTAR、MEGASTAR IIA、MEGASTAR IIB、MEGASTAR FUSION、MEGASTAR CLASS、など
  • 家庭用プラネタリウム「ホームスター」シリーズ
    HOMESTAR、HOMESTAR PRO、HOMESTAR PURE、HOMESTAR SPA、HOMESTAR EXTRA
  • ピンホールプラネタリウム「マイスター」
    大人の科学マガジン」No.9の付録[11]
  • 移動式宇宙体感シアター「SPACE BALL」 [13]
    世界初の移動型宇宙体感シアターで、直径約10メートルの球体内部に最新型メガスターで投影する[31]
  • 直径500メートル級の巨大ドームに投影可能なプラネタリウム投影機「GIGANIUM」[25][28]
    ミラーボールの仕組みを利用したもので[23][24]、投影できる星の数は6000個ほど[32]

発明[編集]

(特許取得済み)

(特許出願中)

(特許不成立)

著書[編集]

(単著)

  • 『プラネタリウムを作りました。―7畳間で生まれた410万の星』エクスナレッジ、2003年。ISBN 4767802512 
  • 『プラネタリウムを作りました。(改訂版)―7畳間で生まれた410万の星、そしてその後』エクスナレッジ、2010年7月。ISBN 978-4767810157 [注釈 5]
  • 『プラネタリウム男』講談社講談社現代新書〉、2016年。ISBN 978-4-06-288374-0 

(監修)

  • マーカス・チャウン、ホヴァート・シーリング 著、不二淑子 翻訳、大平貴之 監修 編『Twitter宇宙講座』ブックマン社、2013年7月。ISBN 978-4893088062 

メディア出演[編集]

テレビ番組[編集]

広告[編集]

  • ネスカフェゴールドブレンド「違いを楽しむ人-満天のプラネタリウム」篇(2005年)[44]
  • ネスカフェゴールドブレンド「星振る大地」篇(2006年)[44]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 宇宙オープンラボは宇宙航空研究開発機構との共同研究[1]
  2. ^ スカイプラネタリウムは六本木ヒルズ森タワーで開催された[1]
  3. ^ 2019年8月25日開催の西武楽天[27][28]
  4. ^ 受賞理由 - 「世界最高性能可搬型プラネタリウムによる科学技術の理解増進[3]
  5. ^ 前作に加筆・修正と、2010年までの大平の足取りを綴った書き下ろしを加えたもの[33]
  6. ^ 最高の星空を求めてアルマ望遠鏡建設予定地を訪れる[35]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i 大平貴之 客員教授”. 教員紹介. 相模女子大学. 2013年9月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月12日(UTC)閲覧。
  2. ^ 大平 2003, 著者紹介.
  3. ^ a b c d 大平 2006, p. 3.
  4. ^ a b c 大平 2003.
  5. ^ a b c 大平貴之「世界初の光学式家庭用プラネタリウム」、『日本機械学会誌』第116巻第1141号、2013年、12月、826-827頁。
  6. ^ a b c 大平貴之「ソニーで「MEGASTAR」を事業化しようとした話」、『日経エレクトロニクス』第1138号、日経BP社、2014年7月7日、75-80頁、NAID 40020110169
  7. ^ 飛田和輝、大平貴之、梶谷誠、金森哉吏、明愛国「光磁気記録を応用したロータリエンコーダの試作」『精密工学会誌』第67巻第1号、2001年1月、96-100頁。
  8. ^ 飛田和輝、大平貴之、梶谷誠、金森哉吏、明愛国「光磁気記録を応用したロータリエンコーダの試作(第2報) ―光磁気記録式ロータリエンコーダの補正転写記録―」『精密工学会誌』第67巻第12号、2001年、1976-1980頁。
  9. ^ a b c d e f g h ABOUT”. メガスターオフィシャルサイト. 有限会社大平技研. 2018年5月6日閲覧。
  10. ^ a b c 髙田悠太郎 (2021年08月12日). “家庭用プラネタリウム「ホームスター」 新作は星の瞬きも再現”. 日経XTrend. 2021年9月12日(UTC)閲覧。
  11. ^ a b 大人の科学マガジン Vol.09(プラネタリウム)”. 学研出版サイト. 学研. 2015年12月5日閲覧。
  12. ^ テレビドラマデータベース.
  13. ^ a b 高嶋 2013.
  14. ^ 大平貴之客員教授の退任について”. News&Topics. 相模女子大学 (2014年8月4日). 2015年3月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月12日(UTC)閲覧。
  15. ^ 【特集4】スタークルーズ プラネタリウム” (2013年10月23日). 2014年2月13日閲覧。
  16. ^ アニメ「NORN9 ノルン+ノネット」に星空データ提供。1/7からTOKYO MX他で放送開始!”. NEWS. 有限会社大平技研 (2016年1月6日) 2018年5月5日閲覧。
  17. ^ 庄司亮一(2015年10月13日). “10億個の星を投影するプラネタリウム恒星原板「GIGAMASK」。ソニーのBD製造技術活用”. AV Watch. 2018年5月6日閲覧。
  18. ^ 山下 2016a.
  19. ^ 山下 2016b.
  20. ^ 永井光晴 (2016年7月29日).“これぞハイレゾの星空! 家庭用プラネタリウム「MEGASTAR CLASS」体験会に読者限定招待”. PHILE WEB. 2018年5月6日閲覧。
  21. ^ 庄司亮一(2016年1月21日).“100万の星を映す、個人向け超小型プラネタリウム「MEGASTAR CLASS」”. AV Watch. 2018年5月6日閲覧。
  22. ^ 土肥 2019, p. 2.
  23. ^ a b 特許第6425210号 反射鏡集合体を用いた星空の投影装置”. j-platpat. 2019年5月3日閲覧。
  24. ^ a b 土肥 2019, pp. 2–4.
  25. ^ a b 土肥 2019, pp. 1–4.
  26. ^ 土肥 2019, p. 1.
  27. ^ a b メットライフDで星空観察? 西武本拠地がプラネタリウムに”. 西日本スポーツ. (2019年7月27日) 2020年6月27日閲覧。
  28. ^ a b c 冨安京子 (2019年12月2日). “時空超えた星空案内人=大平貴之 プラネタリウム・クリエーター”. ワイドインタビュー問答有用 771. エコノミストONLINE. 2020年6月27日閲覧。
  29. ^ 【大学力】関西の大学2021 大阪芸術大学”. 朝日新聞デジタル. 2021年9月12日(UTC)閲覧。
  30. ^ 大平貴之がIPS(国際プラネタリウム協会)「 TECHNOLOGY & INNOVATION AWARD 2018」を受賞!”. MEGASTAR.jp (2018年11月24日) 2019年10月15日閲覧。
  31. ^ japan.internet.com 編集部 (2012年10月5日). “移動式大型宇宙体感シアター「SPACE BALL」が始動、体験イベントが全国で展開”. 2014年2月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年2月13日閲覧。
  32. ^ 土肥 2019, p. 4.
  33. ^ プラネタリウムを作りました。【改訂版】”. 書籍検索. X-Knowledge. 2018年5月5日閲覧。
  34. ^ 大平貴之のTV出演情報”. oricon news. p.3. 2021年9月12日(UTC)閲覧。
  35. ^ a b プラネタリウムクリエイター大平貴之さん、アルマ訪問”. ニュース. アルマ望遠鏡 (2011年10月13日) 2019年10月15日閲覧。
  36. ^ 重定菜子「番組制作ファイル(第3回)スペシャル番組『世界一美しい星空の見える村 ~ニュージーランド星空紀行~』~世界一美しい星空の撮影奮闘記~」『映像情報メディア学会誌』第66巻第6号、2012年、495-498頁。
  37. ^ 世界一美しい星空の見える村 ~ニュージーランド星空紀行~ BSテレ東 2014年7月4日(金) 18時00分~19時55分”. テレビ東京・BSテレ東7ch(公式). 2021年9月12日(UTC)閲覧。
  38. ^ ソロモン流【賢人:大平貴之】字幕放送データ放送 テレビ東京 2013年1月20日(日) 21時54分~22時48分”. テレビ東京・BSテレ東7ch(公式). テレビ東京. 2021年9月12日(UTC)閲覧。
  39. ^ 株式会社テレビ東京ホールディングス (2013年7月22日).“大好評!移動式宇宙体感シアター「SPACE BALL」注目のベイエリア・豊洲で開催!星空の彼方 宇宙の果てへ旅立つ”. PRTIMES. 2019年10月15日閲覧。
  40. ^ 「アウト×デラックス」 2016年11月17日(木)放送内容”. テレビ紹介情報. 価格.com. 2021年9月12日(UTC)閲覧。
  41. ^ vol.1030 2018年12月02日(日)放送分 大平貴之(プラネタリウム・クリエイター)”. 情熱大陸. TBS. 2019年5月3日閲覧。
  42. ^ #435 プラネタリムクリエイター 大平貴之 今回訪れたのは、「横浜にあるボクシングジム」2019.4.28”. 1Hセンス. フジテレビ. 2019年5月3日閲覧。
  43. ^ 川井郁子×大平貴之”. NHK (2021年9月4日). 2021年8月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月12日閲覧。
  44. ^ a b 大平貴之のCM出演情報”. oricon news. 2021年9月12日(UTC)閲覧。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]

(関連動画)

(プロフィール)