普通列車

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JR西日本の普通列車(207系

普通列車(ふつうれっしゃ)とは、旅客列車における列車種別の一種である。一般的には運賃のみで乗車可能な各駅に停車する列車を指し、「各駅停車」と案内する事業者もある。

日本国有鉄道(国鉄)・JRの旅客営業規則における用語では、特別急行列車を含む広義の急行列車以外の列車を指し、この場合は快速列車も含まれる概念となる。市販の時刻表では細字[注 1]で表示されている列車を表す[1]

本稿は特に断りがない限り、日本における普通列車を主題として解説している。

概要

各駅に停車する列車種別には、「普通列車」の他に「各駅停車」の案内がある。一般的にどちらか一方の用語に統一されているが、両方の列車種別を用いている事業者もある。両方が用いられる典型的な例として、複々線区間における急行線・緩行線双方の各駅停車列車が挙げられる。

日本国有鉄道・JR

基本的に各駅へ停車する(もしくは一部の駅を通過する)列車が普通列車と案内される。

JRの旅客営業規則では「急行列車」以外の列車を「普通列車」と定めており[2]、運賃・料金面では「乗車券回数券定期券を含む)以外に特急料金急行料金が不要な旅客列車」となる。この場合は快速列車も含む概念であり、フリーきっぷなどで「普通列車(快速含む)」とあるのは[注 2]この規則による。JRにおいて快速列車を含む普通列車は普通車自由席であれば、乗車券または定期券で乗車可能である。

私鉄

基本的に各駅へ停車する(もしくは一部の駅を通過する)列車が普通列車と案内される。

事業者によっては、国鉄・JRの営業規則における「普通列車」と同様に料金不要の速達列車を運行しているが、それらを包括して「普通列車」と案内することは少なく、単に速達列車のことを優等列車として扱うのが一般的であるが[4]、その一方で料金不要列車には優等列車という表現に否定的な見解を持つ事業者もある[注 3]

通過駅

複々線の場合

複々線区間において、全駅にホームが設置されている緩行線と少数の駅にのみにホームが設置される急行線(快速線)が別々に運行管理される場合、急行線を走る普通列車は緩行線に対しては複数の駅を通過することになる。

首都圏JR東日本では、1993年(平成5年)11月30日までの中央急行線2004年(平成16年)3月12日までの常磐快速線ではそれぞれ高尾駅から大月・甲府方面に直通する列車と取手駅から土浦・水戸方面に直通する中距離の普通列車のほうが近距離の快速電車よりも停車駅が少ないという逆転現象が見られた。

東北本線宇都宮線)・高崎線ではさいたま新都心駅上野東京方面(上野東京ライン)の普通列車は停車するが、湘南新宿ラインは普通列車でも通過する。これは、湘南新宿ラインの列車は北隣の大宮駅以南で東北貨物線を走行するのだが、東北貨物線上にはホームが設置されていないためである。2013年3月15日までは浦和駅も同様の理由で通過していたが、こちらは高架化に際してホームが設置されたため、解消された。

JR東海では名古屋駅 - 金山駅間は東海道本線と中央本線が並走しているが、中間にある尾頭橋駅は中央本線側にホームが設置されていないため、東海道本線の列車のみ停車する。なお、市販されている時刻表では路線図には東海道本線の列車のみが停車する旨が記載されており、中央本線のページには尾頭橋駅は記載されていない。

私鉄でも、京王線新宿駅笹塚駅間では、京王新線が開業した際に京王線(本線/旧線)の初台駅幡ヶ谷駅が廃止されたため、この両駅は新線経由の列車のみ停車し、京王線(本線/旧線)経由の普通列車はこの両駅は通過となる。阪急電鉄でも京都本線の列車は普通列車も含めて中津駅を通過する。これは梅田駅 - 十三駅間において1959年(昭和34年)3月の3複線化に際して京都本線側にホームを設置するスペースがなかったためである。それ以前は宝塚本線と線路を共用していたが、乗り入れ列車が特急・急行のみであったため中津駅には停車しなかった(普通列車は十三駅折り返し)[5]

乗降客の少ない駅など

主に地方の路線において、普通列車であっても、乗降客の少ない一部駅、例えば北海道の旧・仮乗降場などを通過する列車がある。

かつて存在した京成本線博物館動物園駅名鉄河和線椋岡駅神戸電鉄有馬線菊水山駅など、JRと同様に駅施設の事情や乗客の利用状況などによりやむなく停車する列車が限られる場合には、一部の普通列車が通過することもあった[9]

早朝・夜間に運行される一部の普通列車では主要駅のみに停車する列車がある。例として、高山本線高山駅 - 岐阜駅間を運行する始発および最終列車は下呂駅 - 岐阜駅間は各駅に停車するが、高山駅 - 下呂駅間は久々野駅飛騨小坂駅飛騨萩原駅のみに停車する。また、青い森鉄道線では青森駅 - 八戸駅間のそれぞれ始発電車が、一部の無人駅を通過[10]する。

また、かつて運行されていた夜行普通列車も、深夜時間帯は主要駅のみに停車する列車が多かった。東京駅 - 大垣駅間を運行していた夜行普通列車も深夜は主要駅のみの停車であったが、のちに快速「ムーンライトながら」となっている。

更に、秋田県の奥羽本線上飯島駅では、かつて客車普通列車[11]は通過していた。

奥羽本線赤岩駅では、冬期間のみ普通列車を含む全列車が通過する。2016年3月のダイヤ改正で廃止された山田線大志田駅・浅岸駅も同様の理由で通過していた[12]

夜行普通列車

道路が十分に整備されておらず、鉄道以外の公共交通機関が未発達だったころは鉄道が中、長距離輸送の主力であり、深夜の時間帯でも一定の旅客需要があったことから、主要幹線では夜行普通列車も数多く運転されていた。寝台車が連結されていた列車もあり、寝台券発券の都合上「はやたま」「山陰」などのように列車愛称が付けられていた列車もあった。

夜行普通列車は全区間通しあるいは一部区間のみで乗車する場合もあったほか、同じ区間を並行する特急急行寝台列車などを末端部分で補完するような場合もあった。特に速達列車が停車しない駅に早朝に到着したい場合などに、速達列車からの乗り換えなどにより補完していた。

大部分が国鉄時代に廃止されたが、JR化後も残った列車もあり、「ムーンライト」などの夜行快速列車などに受け継がれることになる。

愛称

列車愛称を持つ普通列車の例:「いさぶろう・しんぺい」

特急や急行とは異なり、基本的に列車愛称はつけられない。

国鉄・JRでは、指定席車や寝台車が連結される列車には1974年(昭和49年)7月以降、指定席発券システムの管理上、指定券・寝台券発券の都合から種別のほかに列車名が付けられる(「いさぶろう・しんぺい」「妙高」「ながさき」「はやたま」「山陰」「からまつ」など)。それ以前は指定席車や寝台車連結の普通列車は指定券や寝台券の購入の需要が沿線の地域に限定されていたため、列車愛称はなく、発券は手作業で行っていた[13]。一方、全車自由席で列車名がつけられる例としては「むさしの号」「しもうさ号」「はこだてライナー」などが挙げられる。

車両

日本国有鉄道・JR

車両上の区分

昭和30年代以前に製造された車両は電車と気動車は普通列車用として製造されたため、特に明確な車両区分を規程していなかった。客車についても基本的に普通列車で用いることを前提とした客車は終戦後まもなく登場した戦災復旧車である70系と鋼体化改造車である60系の普通車[注 4]があるが、それ以外は普通車に関しては実質的に特急用として製造されたスハ44系を除いて種別ごとに使用形式を特に限定していないが、長距離列車で使用することを前提に製造され、登場後しばらくは優等列車での使用が優先され、後継車の増備や置き換えなどにつれて過去に優等列車で使用された客車が格下げの体制で使用された[注 5]。10系以前の客車については「一般形客車」「在来形客車」「旧型客車」と呼称されることもあるが、20系客車以降の客車との対比で使われたもので、規程上の正式な呼称ではなく、明確に分類されるものではなかった[注 6]

新性能電車や液体式気動車が実用化した昭和30年代以降、動力近代化計画の取り組みにより、動力分散方式が推進され、優等列車にも静粛性が追求される夜行列車用を除いて電車や気動車が導入されたことから用途分化するようになる。

電車では普通列車用でも最高速度や車内設備の違いなどから通勤形車両近郊形車両に用途を二分したが、東日本旅客鉄道(JR東日本)ではE231系電車で初めて通勤形と近郊形の形式上の区別を廃止し[17]一般形電車として形式・区分を統一したが[18][19][20][21][22][23]、E231系とE233系には通勤タイプと近郊タイプがあり、運用上の区別がされている。

一方、その他の車両ではそれすら行われず、慣例的に一般形へ区分され、気動車では通勤輸送と中距離列車への使用の兼ね合いからこの用法を使用しているが、用途上、通勤形(キハ35系キハ38形)や近郊形(キハ45系)として製造した車両も含まれる概念となっている[24]。旧型客車置き換え用に製造された50系は用途上は通勤用であったが、室内はセミクロスシートであったため、「通勤形でも近郊形でもない」車両であるため、一般形に区分されていた[25][注 7]

国鉄による普通列車用の車種と定義は次の通りである[26]

  • 通勤形 - 客室に出入口を有し、縦型座席(ロングシート)を備え、通勤輸送に適した性能を有する車両形式のもの
  • 近郊形 - 客室に出入口を有し、横型(ロングシート)及び縦型腰掛(クロスシート)を備え、都市近郊の運用に適した性能を有する車両形式のもの
  • 一般形 - 客室に出入口を有し、横型(ロングシート)及び縦型腰掛(クロスシート)を備え、通勤輸送に適した性能を有する車両形式のもの

気動車

久留里線で運用されていたキハ37形とキハ30形

気動車では基本的に一般形気動車が使用される。国鉄時代の液体式気動車は特急形を除いて汎用性と互換性が重視され、電車のように形式ごとによる運用上の区別は明確でなかった。また、急行形と混用されることもあった。JR発足後は電気指令式ブレーキや密着連結器を採用し、電車並みに性能が向上した一般形気動車が登場すると在来車とは併結できなくなったため、JR発足後に導入した一般形気動車は基本的に在来車と運用上の区別が徹底されるようになる。

電車

電車では新性能電車の実用化後は基本的に系列ごとに運用が区別されている。

首都圏及び京阪神快速・緩行線

首都圏(中央線を除く)及び京都駅 - 西明石駅間のJR線では、列車線を走行する列車(総武線では快速、常磐線では取手駅を越えて土浦・水戸方面へ直通する快速のみ。京阪神間では快速・新快速)には近郊形車両を[注 8]、電車線を走行する列車(京阪神間では普通電車)には通勤形車両[注 9]が使用される。なお、京阪神区間は朝ラッシュ時の一部を除く大半の快速が電車線を走行しており、新快速も草津駅 - 京都駅間と新大阪駅 - 大阪駅間は電車線を走行するため、近郊形車両と通勤形車両の両方が電車線を走行していることとなる。

その他の線区
函館本線の普通列車は近郊形である721系と通勤形である731系が併結する列車もある。

その他の線区では導入する車種は基本的に定められていないが、何形を導入するかはその線区の実情による。主流は近郊形であるが、後述のとおり特急形が使用される線区もある。過去には急行形が使用された線区もあった。通勤形については国鉄時代は仙石線など一部の線区でしか使用されなかったが、JR発足後は導入する線区が増えている(通勤形車両 (鉄道)#地方都市圏での導入も参照)。首都圏や京阪神区間とは異なり、距離を問わず使用され、JR東日本では107系[27]701系[28]E127系といった3ドアロングシート車が導入され、これらはJR東日本の公式ウェブサイト上では通勤形に区分されているが[29]、701系に至っては片道200kmを超える運用に充当されたこともあった[30]

国鉄時代は車両置き換えに際して東京・大阪の大都市圏が優先されたため、地方では1970年代半ばまでは長らく旧型車が使用され、旧型車の置き換えに際しては比較的程度がよい車両を地方に転用させていた。JR化後もJR東日本とJR西日本ではこの体制は続けられている。例えばJR西日本では1990年代、山陽地区では115系の非冷房車置き換えに冷房車が多かった103系を転用したことがある。2008年以降は呉線で使用される一部の車両を除いて京阪神地区で使用されていた113系に置き換えられたが、呉線で運用していた103系も2015年3月14日のダイヤ改正で227系に置き換えられ、運用を離脱した。JR東日本でも京浜東北線のE233系電車導入で余剰となった209系を房総地区(久留里線を除く)に転用し、113系と211系を置き換え、普通列車用の車種を209系に統一している。

新性能電車については基本的に系列ごとによる運用上の区別はされているものの、系列・車種による運用上の区別が明確でない線区もある。JR北海道では731系・733系・735系は通勤形に分類されているが、近郊形である721系と基本的に共通運用されており、首都圏や京阪神区間とは異なり、通勤形と近郊形の運用上の区別はされていない[31][32][33]

1990年代の一時期、地方(特に東北・九州)でもロングシート車(701系、815系など)を導入した事例があったが、後継車両ではセミクロスシートに戻した車両もある(E721系817系など[注 10])。

客車

かつては客車による普通列車も運行していた。

かつては客車による普通列車も運行され、首都圏及び京阪神地区の通勤電車区間を除く国鉄全線の列車は大部分が客車で運行されていた[34]

客車が運用されていた時代は1970年代半ばまでは10系以前の客車(旧型客車)が長らく使用されていた。これは客車の新車の投入は原則として優等列車が優先され、普通列車への新車の投入が消極的であったため、優等列車の後継車の増備や置き換えにつれて捻出した車両を充てていたほかは鋼体化改造車(60系客車)の普通車[注 11]が使用されていた。終戦後には車両不足に対処するため、戦災復旧車(70系客車)が導入されたが、接客設備の悪さから本来の旅客車の増備や置き換えにつれて早いうちに荷物車や事業用車などに改造されている。しかし旧型客車は元来は一部を除いて普通車に関しはデッキを有する2ドアクロスシートで製造され、優等列車への使用が前提であったことから通勤輸送に難があり、また、手動ドアで安全性にも問題があったことから1977年には50系が導入され、機関車の有効活用と製造コスト面で有利なことから大量に投入され、交流電化線区や非電化幹線を中心に使用された。

なお、客車による普通列車は動力分散方式の移行につれて淘汰され、客車による定期列車は各駅停車では2001年10月の鹿児島本線と筑豊本線を最後に、快速列車では2002年11月の「海峡」を最後に廃止された。2015年時点での定期列車においては客車の普通列車は設定されていない。

特急形・急行形車両の使用

急行形車両間合い運用や一部の区間で普通列車として運行する列車はもとより、地方(特に交流電化線区)では急行列車の廃止・削減などで余剰となり、余剰車両を有効活用する観点から格下げの形で使われていた。最後まで急行形車両が使用されたのは北陸本線であり、2015年3月14日のダイヤ改正で413系と編成を組むクハ455形700番台2両を除いて全車運用を離脱した[35]

特急形車両は1970年代半ばまでは特別な存在であったため、普通列車には原則として使用されなかったが、1970年代半ば以降は急行列車の特急格上げにつれて一部の地域では特急形車両による間合い運用による普通列車や一部の区間で普通列車として運行する列車が設定され、185系373系のように間合い運用で普通列車にも使用することを想定した車両も導入された。

中には格下げの形で使用された例もある。例として、四国旅客鉄道(JR四国)ではキハ185系の格下げ改造車が使われている。

なお、信越本線長野駅 - 直江津駅間の普通列車「妙高」は新幹線連絡列車であった性質上、指定席車連結の観点から特急形電車である183・189系が使用されていた。

私鉄

私鉄では特急や一部の急行といった優等列車とは異なり[注 12]、基本的そのほかの車両(一般車両)が使用されるが、料金不要の優等列車を運行している私鉄においては入出庫の関係上、優等列車用車両が使われる場合がある。また、優等列車用車両であった車両が優等列車の運用を離脱した場合には格下げの形で普通列車に使用される場合があり、中には通勤形車両に近い形に改造する車両もある。

例外的に専用の車両を使用する例として、阪神電気鉄道では本線においては普通列車に適した性能を有する専用の車両(ジェットカー)が使われる。かつては京阪電気鉄道でも普通列車・区間急行用に適した性能を有する専用の車両である2000系を保有していた。同様の事例として、京王帝都電鉄(現・京王電鉄)では京王線系統においては各駅停車には長らく緑色に塗装された2010系以前の車両(グリーン車と呼ばれた)が使用されていた。これは急行系列車には程度の良い車両を使用し、各駅停車には後継車両の増備で捻出した車両を充てていたためである。また、その置き換え用である7000系は2001年3月のダイヤ改定で車両の運用方針を変更するまでは各駅停車運用に用いる車両とされていたが、こちらは性能面では6000系などと大差はなかった。東京急行電鉄東横線においても8000系8090系導入後は2001年(平成13年)3月のダイヤ改正で車両運用方針が変更されるまで長らく各駅停車専用で運用されていたが、2013年(平成25年)以降は各駅停車のみ停車する駅が8両対応なので各駅停車には8両編成の5050系[注 13]ならびに東京メトロ7000系横浜高速鉄道Y500系が充当される。

一方で優等列車と普通列車で使用する車種が定められていない私鉄もあり、富山地方鉄道では観光路線であることと優等列車との兼ね合いで2ドア転換クロスシート車や回転クロスシート車が使われているが、特に明確な区分はしていない。ただしロングシート車である17480形は原則として特急運用には充当されない[37]名古屋鉄道でも1975年までは着席通勤と優等列車への使用を前提に2ドア転換クロスシート車が導入され、種別ごとに使用系列を限定して運用していたわけではないが、最新の系列のみが特急列車に使用され、後継車両の増備につれて次第に普通列車にも運用されるようになっていたため、「特急用」「一般用」などといった用途分類の概念がなく、明確な定義(区分)すらしていなかった[注 14]

普通列車を運行していない区間

JRにおいて、優等列車(有料列車)のみの区間

特急・急行列車の自由席に乗車券のみで乗車できる区間

路線名 区間 備考
石勝線 新夕張駅 - 新得駅 現在、該当区間では普通列車を運行していない[38]
津軽海峡線
津軽線 - 海峡線
蟹田駅 - 木古内駅 2002年11月30日まで快速「海峡」を運行していたが、現在、該当区間では普通列車を運行していない[39]

別途特急料金が必要な区間

路線名 区間 接続路線 備考
博多南線[注 15] 博多駅 - 博多南駅 山陽新幹線
九州新幹線
新幹線用設備を使用するものの、旅客営業上は在来線となっている[注 16]
上越線 越後湯沢駅 - ガーラ湯沢駅[注 17] 上越新幹線
私鉄において、「普通」名義の列車がない区間
会社名 路線名 区間 備考
京成電鉄 成田空港線
(成田スカイアクセス)
京成高砂駅 - 成田空港駅 スカイライナーとアクセス特急のみの運行であるため、2015年時点で「普通」は設定されていない[注 18]。なお、アクセス特急には乗車券のみで乗車できる。
京浜急行電鉄 久里浜線 京急久里浜駅 - 三崎口駅 1999年以降「普通」は設定されておらず、快特・特急が各駅に停車して運行されている(いずれも乗車券のみで乗車できる)。
名古屋鉄道 名古屋本線 豊橋駅 - 伊奈駅 1991年以降特急・快速特急・急行のみの運行であるため、「普通」は設定されていない。なお、特急・快速特急の一般車[注 19]と急行には乗車券のみで乗車できる。

各路線での案内

多くの会社では各駅に停車するため、発車標や列車の方向幕などで「普通」と表示していても、放送では「各駅停車」と案内される場合がある。日本の大手私鉄では、京成電鉄東武鉄道近畿日本鉄道[注 20]京阪電気鉄道阪急電鉄阪神電気鉄道が該当する。

基本的に種別幕や停車駅案内で「普通」とするか「各停」とするか、無表示とするかは色も合わせて各社ごとに統一されている場合がほとんどである。例えば東京メトロ有楽町線副都心線及び、それらと直通運転を行う西武池袋線東急東横線横浜高速鉄道みなとみらい21線では「各停」である[注 21]のに対し、東武東上線では「普通」で統一されている[注 22]。ほかにも停車駅によって2種類の「各停」に区別して運行している例として東急大井町線がある。

JR東日本の中央本線では、立川駅 - 大月駅間において中央東線の普通列車と中央線快速電車が運行されているが、下りの快速電車はすべて「各駅停車」と案内されているため、当該区間に限り「普通」と「各駅停車」が混在している。

JR西日本の琵琶湖線JR京都線JR神戸線では、各駅に停車する列車が「普通」、通過駅がある列車が「快速」であるが、高槻駅京都駅 - 野洲駅米原駅間と西明石駅 - 加古川駅姫路駅間では快速が各駅に停車するため「普通」と案内している。ただし駅時刻表では途中駅から快速運転をする列車は、快速列車の色であるオレンジ色で表記している。

なお、新快速学研都市線JR宝塚線湖西線[注 23]の快速は、各駅停車区間でも普通表示には切り替えない[注 24]

「普通車」の表現

普通列車・各駅停車を「普通車」と称する会社もある。多くの私鉄ではグリーン車等の特別車両を保有しないことから、この場合は特別席に対する言葉ではなく、特急列車など優等列車に対しての普通列車という意味合いで慣例的に用いられているとされる。

関西地区では慣例として「普通車」という表現を使用する会社が多くあった。南海電気鉄道(南海)や山陽電気鉄道(山陽電鉄)では、現在でも案内放送などで用いられている[43]

南海電鉄においては、難波駅 - 岸里玉出駅間の複々線の西側2線を南海本線、東側2線を高野線が使用しているが、途中の今宮戎駅萩ノ茶屋駅は、南海本線の列車が走る西側2線にホームがない。このため、両駅を通過する南海本線の列車は「普通車」、両駅に停車する高野線の列車は各駅停車と使い分けている[1][44][45]。1968年までは、南海本線の列車にも東側2線を走り両駅に停車する「各駅停車」、1970年までは高野線の列車にも東側2線を走るが両駅を通過する「普通車」があった。

関東では京浜急行電鉄が、各駅停車列車を「普通車」と表現している[注 25]

日本国外における普通列車・相当種別

日本国外では日本の列車種別を明確に当てはめることは難しいが、運賃では優等列車や接客設備に格差のある運賃体系をとっている国もあり、運賃が格安な種別や各駅に停車する種別が日本の普通列車と同類の列車として扱うこともある。また、設備の違いにより運賃に格差をつけている国もある。

台湾

台湾の台湾鉄路管理局では非対号列車と呼ばれており、普快車区間車・区間快車が普通列車に相当する種別である。普快車と区間車は各駅停車、区間快車は快速に相当する種別である。車両では普快車は非冷房車を、区間車・区間快車は冷房車を使用するため、普快車と区間車・区間快車で運賃に格差をつけている。

東南アジア

東南アジアの普通列車は運賃体系が等級制で下等車両では座席は木製で冷房すらない車両が使われている。

韓国

韓国ではソウル特別市とその周辺では日本の近距離電車に相当する列車として首都圏電鉄広域電鉄)を運行しており、4ドアロングシートの通勤形車両が使用される。改札も首都圏電鉄(広域電鉄)では無人化され、その他の路線と区別されている。一方、その他の路線では列車は指定制で普通列車に相当する種別として全列車全車両が自由席の通勤列車を運行し、気動車を使用しているが、終日運行しているものの、広域電鉄の拡大や優等列車を主体とする運行になりつつあるため、通勤列車は廃止・削減される傾向にあり、2015年現在では京元線東豆川 - 白馬高地間のみの運行となっている。そのため、韓国では優等列車であるムグンファ号が実質的に地域輸送を担っている状況である。

中国

中国では通勤と普客と普快が普通列車に相当する。そのうち、普客は各駅に停車する。普快は長距離列車で寝台車や食堂車も連結される。運賃は座席の硬さによる等級制で空調の有無により、追加料金が徴収される。なお、中国では快速列車は日本の急行、特快列車は日本の特急に相当する優等列車の種別である。

インドネシア

インドネシアのKRLジャボタベックでは2013年以降は冷房車に統一されたが、それ以前は冷房の有無により、運賃に格差をつけていた。

欧州

欧州では長らく客車が主体で機関車の付け替えを必要としない運転台付きの客車も見られるが、動力分散方式に移行しつつある。車両も2階建車両が主流で通勤輸送と近郊輸送を両立させている。

脚注

注釈

  1. ^ 交通新聞社『JR時刻表』では黒字。
  2. ^ 時刻表のフリーきっぷのページでは普通列車用のフリーきっぷについては案内上、「フリーエリア内の快速・普通列車の普通車自由席が乗り降り自由です」と案内されている[3]
  3. ^ 詳細は優等列車#料金不要列車に対する表現を参照。
  4. ^ 例外はオハニ63形(後のオハニ36形)。
  5. ^ 優等列車の性質上、優等列車には常に程度の良い車両を使用する風潮があった。
  6. ^ そもそも、10系以前の客車に国鉄が定義した一般形の区分を当てはめるには難がある。 岡田誠一は(旧型客車が製造された時代の時点では)正式な意味で急行形、一般形などと明確に呼ばれていないことを述べている[14][15][16]
  7. ^ このため、国鉄・JRの客車において厳密な意味で通勤形や近郊形に区分される客車は製造されていない
  8. ^ JR東日本では前述のとおり、一般形に形式・区分を統一したが、E231系とE233系は原則として近郊タイプの車両を使用。なお、常磐線においては1995年から2007年までは土浦発着の一部の快速(2004年3月以前は普通)には通勤形であるE501系も充当されていた。
  9. ^ JR東日本では前述のとおり、一般形に形式・区分を統一したが、E231系とE233系は原則として通勤タイプの車両を使用。
  10. ^ ただし817系は後にロングシート車も製造されている。
  11. ^ 例外はオハニ63形(後のオハニ36形)
  12. ^ 優等列車(特に特急列車)用車両はその性質上、快適性や速達性が重視され、専用の設備・性能を持つ車両が導入される[36]
  13. ^ 一部田園都市線から転属した5000系を含む。
  14. ^ 1982年(昭和57年)以降は白帯が入った7000系・7700系(通称『白帯車』)のみが特急列車に充当されていた。 また、名鉄線内のみで特急列車専用で運用される電車においても1984年(昭和59年)に8800系が登場するまでは保有していなかった。
  15. ^ 車両基地を往復する回送線を走る回送列車の地元陳情による旅客列車化のため開業した[40]
  16. ^ 全国新幹線鉄道整備法の定義から外れるため。
  17. ^ JR東日本社員の車内プロジェクトによるガーラ湯沢スキー場に向かう路線として開業した[41]
  18. ^ ただし、並行する北総鉄道北総線(京成高砂駅-印旛日本医大駅間)および京成本線(空港第2ビル駅-成田空港駅間の一部列車)では、いずれも「普通」が運行されている。
  19. ^ 名古屋鉄道では料金不要の自由席車両を「一般車」と呼称している[42]
  20. ^ 近畿日本鉄道で「各駅停車」と呼称するのは大阪輸送統括部管内で、名古屋輸送統括部管内では「普通電車」と呼称している。
  21. ^ 西武鉄道が「各停」へと列車種別名を改称したのは2008年6月14日改正以降であり、それ以前は東武と同様「普通」であった。
  22. ^ 東武と東京メトロ境界駅である和光市駅では「普通」「各停」の表示を切り替える。
  23. ^ 湖西線内でも京都駅 - 近江舞子駅間で通過運転を行い快速の表示を出すものが1日1往復あり、この列車のみ山科駅から(夕方の大阪発は京都駅まで)新快速となる。
  24. ^ 野洲駅・姫路駅では新快速・普通の相互切り替えを行う列車がある。
  25. ^ ちなみに同社では優等列車としてウィングエアポート快特快特・特急・エアポート急行があるが、定期列車として乗車制限を設けている「ウィング」以外は特別な料金が設定されておらず、ウィングも快特と同じ2100形電車を使用しているため、座席のランク付けも存在しない。

出典

  1. ^ a b 電気車研究会『鉄道ピクトリアル』No.844 p.11
  2. ^ 例えば、JR東日本旅客営業規則旅規第3条(5)、JR東日本
  3. ^ JTBパブリッシング『JTB時刻表』2013年3月号 p.1015-1033
  4. ^ 一例として、12月5日(土)北総線ダイヤ改正 - 北総鉄道 2015年10月22日
  5. ^ 東京堂出版 梅原淳『鉄道・車両の謎と不思議』p.117-118
  6. ^ 平成25年春ダイヤ改正について (PDF) - 西日本旅客鉄道福知山支社
  7. ^ 平成26年3月ダイヤ改正について (PDF) - 四国旅客鉄道、2013年12月20日
  8. ^ 鳴門線時刻表 - JR四国ホームページ
  9. ^ 東京堂出版 梅原淳『鉄道・車両の謎と不思議』p.110-116
  10. ^ 該当列車は、2016年3月26日ダイヤ改正で、快速列車に変更される。
  11. ^ 気動車普通列車については、男鹿線直通を含む列車は停車していた。出典:交通新聞社発行昭和61年12月号と日本交通公社発行昭和62年11月号時刻表の奥羽本線のページ。
  12. ^ 冬季通過の記述は、出典:交通新聞社発行小型全国時刻表2015年12月号付録1ページから。
  13. ^ イカロス出版『J-Train』Vol25 p.48-49
  14. ^ 交友社『鉄道ファン』No.413 p. 50
  15. ^ JTBパブリッシング 岡田誠一『国鉄鋼製客車Ⅰ』 p. 239
  16. ^ ネコ・パブリッシング『Rail Magazine』No.336 p. 9
  17. ^ JR東日本の通勤電車の開発経緯 (PDF) - 東日本旅客鉄道
  18. ^ イカロス出版『E231/E233 Hyper Detail』p.108
  19. ^ 交友社『鉄道ファン』No.539 p.36
  20. ^ 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』No.403 p.72
  21. ^ 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』No.492 p.33
  22. ^ 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』No.517 p.46
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  24. ^ JTBパブリッシング 石井幸孝『キハ47物語』 p.36 - 37
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  27. ^ JR東日本:車両図鑑>在来線 107系
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  40. ^ 『読む・知る・愉しむ 新幹線がわかる事典』日本実業出版社 2005年 p.337
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参考文献

関連項目