途中下車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
途中下車(とちゅうげしゃ)とは、「乗車券の券面に表示された発着区間内の途中駅に下車して出場(有人駅においては、改札口を出る、無人駅(有人駅の無人時間帯を含む)では、列車から降りる)し、再び入場して残りの区間を乗車すること」をいう(このため、乗車券が前途無効になり回収される場合の下車及び出場は「途中駅での下車」ではあっても、運送約款に定められた「途中下車」ではない)。遠距離逓減制を採用している鉄道会社では、乗車区間ごとに分けて乗車券を購入するのではなく、最終目的地までの乗車券を購入して、途中下車制度を利用したほうが安価になるケースがほとんどであるが、一部例外もある(特にJRにおいては、分割運賃の方が安いケースがまれに見られる)。
目次 |
[編集] 国鉄・JRの途中下車
鉄道運輸規程13条は、「乗車券ハ其ノ通用区間中何レノ部分ニ付イテモ其ノ効力ヲ有ス但シ特種ノ乗車券又ハ列車ニ付鉄道ガ別段ノ定ヲ為シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ」と定め、権利の分割行使を認めている。JR ではこれを受けて、旅客営業規則(以下、旅規とする)156条において、原則として途中下車を可とし、「別段ノ定」として、以下の条件に該当する乗車券について途中下車を認めない駅を定めている。
- 全区間の営業キロが片道100キロメートルまでの区間の普通乗車券を使用する場合、その区間内の駅(ただし、列車の接続関係等の理由により、旅客が下車を希望する場合で、JRが指定した接続駅を除く)
- 大都市近郊区間内の駅相互発着(区間外に跨る場合を除く)の普通乗車券を使用する場合、その区間内の駅
- 特定都区市内・東京山手線内発着の乗車券で、券面に表示された特定都区市内又は東京山手線内にある駅
- 回数乗車券を使用する場合、その区間内の駅
特急券は基本的に一列車限り有効で、新幹線など複数列車を乗り継げる特例が存在する場合でも出場すると前途無効となるため、特急券については途中下車の概念は成立しない。
Suicaを始めとするIC乗車券の場合は、入場時は出場駅が未確定のため、途中下車の概念がない(定期券を除く)。
また、いわゆる割引切符(特別企画乗車券)では、フリー乗車券の乗降自由なエリアを除き、途中下車が禁止あるいは指定駅のみに制約されているものが多い。途中下車が不可能な駅で下車した場合は、前途無効で乗車券が回収されるか、乗車券の使用が認められず改めて正規の運賃・料金を支払うかのどちらかである。
なお、途中下車が可能な状況であれば、自動改札機をそのまま通れる場合が多い。
しかし、乗車券に表示された経路上の駅での途中下車の場合は、ゲートは閉じずにそのまま通れる場合もあるが、その代わり駅係員が分かるように自動改札機の赤いランプが点灯することがある。また、例えば、JR東日本の自動改札機は基本的に途中下車に対応しているが、旅規70条(東京付近の特定区間を通過する場合の特例)が適用されている乗車券を用いて「東京付近の特定区間」の駅で途中下車する場合については、運賃計算に用いた最短経路以外の駅では自動改札機が対応していないので、有人改札口を利用する必要がある。
旅規165条では、これらの途中下車を認めない駅(乗車券の発着区間内の全駅である場合は券面に「下車前途無効」、それ以外の場合は「○○市内では途中下車できません」などと表示)で下車した場合は、乗車券を前途無効として回収すると定めている。ただし、旅規157条3項、160条3項、旅客営業取扱基準規程148条2項などで、「大都市近郊区間」駅相互発着の乗車券(途中下車不可)で大回り中の場合や、「東京付近の特定区間」駅発又は着の乗車券(特定区間内の迂回乗車可)を用いて迂回乗車中の場合に、途中駅で下車したときは、「区間変更」として取り扱うことが定められている(券面額と比較し、不足分を精算する。ただし、多かった場合の払い戻しはない)。これらのケースで前途無効とすると、実際の乗車区間の運賃よりも安価に乗車できることになるので(大回りや迂回のため)、実乗車区間の運賃を徴収するための措置である。
駅の構造上、改札を出ないと乗り継げない場合の乗り換えによる出場は、途中下車とみなされない。九州旅客鉄道(JR九州)の折尾駅と新八代駅、東日本旅客鉄道(JR東日本)の燕三条駅・佐久平駅・古川駅・新花巻駅・浜川崎駅、西日本旅客鉄道(JR西日本)の宮島口駅および東海旅客鉄道(JR東海)三河安城駅が該当する。大阪市内発着の乗車券に限っては西日本旅客鉄道(JR西日本)大阪駅⇔北新地駅の乗り換え入出場も認めている。かつては石巻駅・宇美駅・尼崎駅もあったが石巻駅は駅舎統合、宇美駅は勝田線廃止、尼崎駅は福知山線尼崎港支線廃止により消滅している。
国鉄において初めて途中下車が認められたのは1889年7月、東海道本線の全通に際してである。50マイル以上の乗車券を所持する旅客は、途中駅で自由に下車して再度旅行することを認めた。当時は列車の速度が遅いことや、車内の設備が貧弱でもあったため、夜に主要駅で下車して宿に宿泊し、翌朝出発する旅行形態が多かったらしい。その後1890年11月途中下車を制度化し、指定駅のみで途中下車できる制度に改めた。当初、全国で17駅を指定しその後拡大した。1916年5月には、指定駅制度を改め、乗車距離に応じて途中下車できる回数を2回から5回までに制限する方式を採用した。この回数制限は1932年8月に撤廃され、今日に至っている。回数制限の撤廃当時は、東京と大阪の電車区間(今日の大都市近郊区間の前身)相互発着の乗車券以外は距離の制限なく途中下車が可能であった。しかし、戦後の昭和30年代前半に21キロ以上の制限が加えられ、1966年3月の運賃改定で31キロ、昭和40年代半ばに51キロと段階的に制限が引き上げられた後、昭和50年代に101キロ以上になった。民営化後は距離については変更がないものの、首都圏や京阪神圏発着の乗車券では大都市近郊区間の拡大に伴い、より長い乗車券でなければ途中下車できないようになってきた。
[編集] JR以外の鉄道事業者の途中下車
私鉄・公営などのJR以外の鉄道事業者では、ほとんどの場合普通乗車券での途中下車を認めていない。
路線長が100キロを超えていた北海道ちほく高原鉄道(2006年4月廃止)は、分離前のJR時代同様、100キロを超える乗車券で途中下車可能だった。
会津鉄道は湯野上温泉駅および塔のへつり駅でのみ、特例として途中下車が認められている。
伊豆急行は24キロメートル以上であり、同一運賃の駅でない乗車券の場合は途中下車ができる。
箱根登山鉄道は、長らく温泉めぐりの客の便を考慮して片道乗車券でも2日間有効とし途中下車可能だったが、2002年4月より規則を変更し、片道は当日のみ有効で、途中の駅で下車した場合は前途無効となった。
名古屋鉄道(名鉄)でも1970年頃まで途中下車が可能であった。
私鉄最大の路線長を持ち、沿線に伊勢志摩国立公園、奈良など国内有数の観光地を抱える近畿日本鉄道は、従来一定の範囲で途中下車を認めていた(途中下車指定駅制度)が、Jスルー及びスルッとKANSAIの導入に際して迂回乗車を認めることになったことに伴い、2001年2月に途中下車制度を全廃した。途中下車可能であったころは、後述の西日本鉄道とは異なり、自動改札機を利用しての途中下車が可能であった。
京阪電気鉄道には、以前、指定した駅での途中下車を認める制度があったが、回数券の磁気化に伴い1995年11月に廃止された。
高松琴平電気鉄道には、かつての京阪と同様に、指定した駅(その駅が乗車券の運賃と同一運賃の駅でない場合)での途中下車制度がある。近年はIruCaの導入や無人化される指定駅が出るといった環境の変化があるものの、現在のところ廃止には至っていない。なお、IruCaでは途中下車は適用されない。
西日本鉄道は、17キロメートル以上であり、乗車券の運賃と同一運賃の駅でない場合は途中下車できる。ただしnimoca・よかネットカード使用の場合は乗車券に引き換えて乗車する。その場合、自動改札機を利用しての途中下車はできない。有人通路にて係員にその旨を申告する必要がある。
近江鉄道や島原鉄道のように、途中下車が無制限に可能な事業者もある。ケーブルカーで中間駅を持つ事業者の中にも、比叡山鉄道のように途中下車が無制限に可能なところもある。
なお、JRとの連絡運輸を行っており、両者の営業キロ合計が101キロ以上で有効が2日以上となる連絡乗車券についてのみ、社線内の駅で途中下車が可能になる場合がある。連絡運輸規則を準用し途中下車を可能としている場合が多いが、不可とする事業者もあり、詳細は事業者ごとに確認が必要である。一例として、同条件のJR連絡乗車券がある松本電気鉄道は、社線内駅については途中下車不可である。
JRと同様、一度改札を出ないと乗り換えができない駅で乗り換えのために出場する場合は、途中下車とはみなされない。東京地下鉄(東京メトロ)・東京都交通局(都営地下鉄)の一部の駅、東京急行電鉄の渋谷駅、近畿日本鉄道の近鉄四日市駅(近鉄名古屋線・近鉄湯の山線⇔近鉄内部線)及び田原本駅・西田原本駅、大阪市交通局(大阪市営地下鉄)の東梅田駅・梅田駅・西梅田駅、福岡市交通局(福岡市地下鉄)の天神駅・天神南駅などがこれに該当する。ただし、自動改札やストアードフェアシステムの普及に伴い、出場時間に30分などの時間制限が設けられていることが多い。制限時間を過ぎると乗車券は前途無効となり、ストアードフェアシステムカードはその駅で運賃計算が打ち切られる。
[編集] 定期券による途中乗降
定期乗車券については、現在すべての鉄道事業者が区間内の途中乗降を認めている。日本以外の諸国では、「定期券は決められた区間を決められた目的で乗車するために運賃を割引いて発行するものであって、それ以外の目的で乗車する場合は、改めて切符を買い直す必要がある」という趣旨から、定期乗車券で途中乗降を認めない例があるが、日本においては、名古屋市交通局(名古屋市営地下鉄)がかつて通学定期乗車券についてこれを認めていなかったのがおそらく唯一の例と思われる。
1957年に制定された名古屋市高速電車乗車料条例施行規程には、「指定した通用区間内における途中乗降は通学定期を除き、制限しないものとする」という条項が存在した。通学定期券については「途中乗降無効」という取扱をし、区間内の途中下車及び途中乗車を認めず、定期券による乗り越しは「別途乗車」扱いで乗車駅からの運賃を徴収していた。

