札幌市営地下鉄

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札幌市営地下鉄
シンボルマーク
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路線総延長 48.0 km
電圧 750 V
1500 V(直流

札幌市営地下鉄(さっぽろしえいちかてつ)は北海道札幌市が経営する地下鉄である。市の条例・規則等では「鉄道事業」及び「高速電車」としている。市内で3路線が展開され、全線がゴムタイヤを用いた案内軌条式鉄道ゴムタイヤ式地下鉄)である。

「札幌市交通事業の設置等に関する条例」[1]を根拠として軌道事業(札幌市電)と共に設置されている市営交通で、地方公営企業である市営交通事業は当該管理者(交通局長)が業務を執行[2]し、その権限下の事務を処理する交通局[3]が置かれている。

南北線の高架部分を走行中の5000形車両(2006年11月2日、南平岸駅
東西線の8000形車両(2007年10月10日、新さっぽろ駅
3線で最も新しい路線・東豊線の7000形車両(2007年10月14日、福住駅

事業所[編集]

  • 札幌市交通局高速電車部
日本 北海道札幌市厚別区大谷地東2丁目4-1(交通局本局内)

概要[編集]

転轍機。切り替えは案内軌条の昇降で行う(自衛隊前駅・2008年11月)

走行路面上を新交通システムのように主輪のゴムタイヤで駆動して、走行路面中央にある1本のレール案内軌条とする。

南北線と東西線・東豊線では下記のような違いがある。

  • 集電方法(南北線は第三軌条方式、東西線・東豊線は架空電車線方式
  • 案内軌条の形状(南北線はT字型、東西線・東豊線はI字型)
  • 走行路面の材質
    • 樹脂:南北線、東西線(琴似 - 白石)
    • 鉄板:東西線(宮の沢 - 琴似・白石 - 新さっぽろ)、東豊線
  • ゴムタイヤ(南北線はダブルタイヤ、東西線・東豊線はシングルタイヤ)

ゴムタイヤ式地下鉄パリ地下鉄等でも見られるが、札幌市営地下鉄は独特の形式であり、「札幌方式」と呼ばれることがある。

札幌方式の特徴[編集]

通常の鉄車輪式と比較して、札幌市営地下鉄のゴムタイヤ方式には以下のような特徴がある。

  • 加速・減速性能に優れている。
  • 粘着性が比較的高いため、急勾配における登攀性に優れている。
  • 乗り心地が良く、保線の必要が少ない。
  • 騒音が少ない。ただし、全車非冷房車のため、夏場は窓を開けることから車内ではトンネル内の走行音が大きくなる傾向がみられる。
  • タイヤの磨耗が激しくタイヤ保守費用が嵩む。
  • 車両が完全に独自規格のため、他社との基本設計の共通化によるコスト削減が困難。
  • トンネル断面積が大きいことで、キロメートル当たりの建設費用が必然的に割高となる。

 リニアメトロの普及によりゴムタイヤ方式のメリットは低くなりつつある。

路線とラインカラー[編集]

札幌市営地下鉄路線図

路線とラインカラーの関係を次の表に示す。

記号 路線名 区間 営業キロ
グリーン N 南北線 麻生駅 (N01) - 真駒内駅 (N16) 14.3
オレンジ T 東西線 宮の沢駅 (T01) - 新さっぽろ駅 (T19) 20.1
スカイブルー H 東豊線 栄町駅 (H01) - 福住駅 (H14) 13.6

計画路線・未成線などについては「整備計画」の節を参照。

各路線間の相互乗り換えは大通駅さっぽろ駅にて、ともにホーム同士を結ぶ連絡通路を利用する。改札を出てしまうと途中下車として取り扱われるため切符は回収され、共通ウィズユーカードSAPICAは精算される。そのため、改札口には切符が回収される旨の大きな掲示が見られる。

駅ナンバリング[編集]

2006年1月26日から、各路線を表すために記号(アルファベット)と駅番号が導入された。路線記号とその由来は次の通り。

  • 南北線 (N):北 (Namboku) 線の頭文字から
  • 東西線 (T):西 (Tozai) 線の頭文字から
  • 東豊線 (H):東 (Toho) 東西線のTとの重複を避けるため、Hを採用した

車両[編集]

東西線6000形車内(2002年9月)。手前左側の青色の座席は高齢者等専用席
ドアに貼り付けられた点字プレート(2008年3月)。写真は南北線3000形で、札幌市営地下鉄で唯一の「8号車」表記。
女性とこどもの安心車両(東西線)

開業以来、すべての車両がアルミ合金製車体である。車体幅は3,080mmで、2010年現在日本国内で営業中の鉄道車両では最大(新幹線はのぞく)。過去の例を合わせても、名古屋東山モノレールの3,100mmに次ぐ大きさである。

札幌は比較的冷涼な気候であるほか、南北線の一部区間をのぞき地下のみを走行するため、冷房装置は搭載していない。夏は送風装置や窓からの風と、車内に取付けられる風鈴で暑さをしのぐ(そのため風鈴取付け用のフックが車内天井に設置されている)。

貫通扉のない、六角断面の広い連結部が特徴(最初の営業車両であった1000形・2000形のみ2両を1ユニットとして楕円形の広い貫通路と長方形の狭い貫通路が交互に連なっていた)。ただし、大邱地下鉄放火事件を教訓とした2005年12月の法令改正により、2006年度に落成した新車(東西線用8000形)からは強化ガラス製の貫通扉が設置されている。

開業以来、すべての車両で座席上の荷棚(網棚)が設置されていない。これは乗客の忘れ物防止や、乗車時間が比較的短いことなどが理由とされている[4]。しかし、通常は荷棚がある位置に立客用の掴み棒が設置されている(5000形、8000形には設置されていない)ため、一見荷棚があるかのように錯覚しやすい。このため、旅行者など不慣れな乗客が荷棚があることを前提に載せようとした荷物を着席している乗客の頭上に落としてしまうことがある。また、大きな荷物も床に置かざるを得ないため、限られた車内スペースの有効活用や利用者へのサービスの観点からも問題視されることがある。現在は配布用の安全報告書などにも「札幌市営地下鉄の車両には網棚がありません」と注意を呼び掛けている。

全国で設けられている「優先席」については、一般的な「優先席」とはせず「専用席」としている。そのため、混雑時に周囲に高齢者など席を必要とする乗客がいない場合でも常に空いている場合が多い。また、首都圏等のJR・私鉄・地下鉄ではこうした席の付近の吊革にオレンジ色のものが採用されていく中、札幌市営地下鉄には長らく導入されていなかった。2013年に市電で採用され始めると徐々に地下鉄車両にも導入されるようになった。

また「女性専用車両」に関しても、「女性とこどもの安心車両」としている。2008年8月18日から9月12日までの間、南北線での導入実験が行われたが、「女性専用車」という名称では「乗車可能な男性(小学生以下の男児、障害者介護者)が利用しにくい」と理由があったためである。

かつては、2000形やローレル賞を受賞した6000形のように内外装ともに個性的で斬新なデザインの車両が多かったが、1993年に策定された市交通局イメージアップ計画で、市民からのアンケート結果を基に市交通局とデザイン専門家の検討の結果に決定したカラーリングが採用されるようになった。従来の札幌市章に代わって、「STマーク」(札幌市交通局の英称"Sapporo city Transportation bureau"の頭文字)が前面と側面にあしらわれ、白色の車体に側面ドアと前面非常口をラインカラーとする塗り分けであり、俗にSTカラーとも呼ばれている(採用されたカラーリングは、前述のアンケートでは最下位であった)。1994年に投入された東豊線7000形3次車を皮切りに、3路線ともにイメージの近い車両(5000形・8000形)が投入された。

2007年7月から、すべての車両の乗降ドアの内側に、号車とドア位置を示す点字プレートが設置された。ただし、この当時まだ営業運転を行っていた東西線6000形第1編成はドア窓の大きさの関係で設置されなかった。

現在の営業車両[編集]

  • 南北線
    • 5000形(北海道初にして唯一の4扉車)
  • 東西線
    • 8000形
    • 8300形 - 6000形・8000形への増結用車両
  • 東豊線

導入予定の営業車両[編集]

過去の営業車両・試験車両[編集]

ローレル賞を受賞した東西線6000形(2005年7月)。写真の6102号車に受賞プレートが取り付けられていた(宮の沢駅)。

営業車両[編集]

試験車両[編集]

第3次試験車「はるにれ」
第4次試験車「すずかけ」
  • 第1次試験車
    • 廃車されたバスを改造した実験車両。走行試験終了後、ブルーム式試験除雪車に改造された。
  • 第2次試験車
    • 現存しない。
  • 第3次試験車「はるにれ」
    • 車体および座席配置がマイクロバス型のガソリンカー。札幌市東区の札苗実験場で走行試験を行った。現在、札幌市交通資料館に静態保存されている。
  • 第4次試験車「すずかけ」
    • 営業車両(1000形)と同等の足回りにトレーラーのような仮の車体を載せた試作車。札苗実験場で走行試験を行った。現在、札幌市交通資料館に静態保存されている。
  • 試験除雪車
    • ブルーム式 - ササラ電車と同様の方式
    • 真空式 - 掃除機の原理で雪を吸い込む方式
      • 当初の計画より高架区間が短縮され、かつシェルターで覆われることになったため不要となった。2種類とも札幌市交通資料館に静態保存されていたが、2006年に撤去。

乗車料金[編集]

札幌市交通局では『運賃』を『乗車料金』と称している。

大人普通乗車料金(小児半額・10円未満切り上げ)。2014年4月1日改定。“電車”とは札幌市電を指す。(2) 区は各種運賃表等では2の丸囲みまたは「マル2区」と表現される。

区数 乗車料金(円) 乗継乗車料金
電車
乗継乗車料金
バス1区
乗継乗車料金
バス2区
1区 ( - 3 km) 200 290 330 360
(2) 区 ( - 5 km) 240 330 350 380
2区 ( - 7 km) 360 390
3区 ( - 11 km) 280 370 410 440
4区 ( - 15 km) 310 400 440 470
5区 ( - 19 km) 340 - 470 500
6区 ( - 21 km) 360 - 490 520

乗継割引[編集]

適用は対象路線の札幌市内相互間で、現金・共通ウィズユーカードSAPICAKitacaSuicaなどSAPICAに片乗り入れしているIC乗車券も含む)で支払う。共通ウィズユーカードやSAPICAについては、一部導入していないバス事業者もある。基本的に地下鉄乗車料金から60円、電車またはバス乗車料金から20円を割り引いた計80円引きとなる。乗継に時間制限は設けられていないが当日に限り有効。乗継先が0時を過ぎた場合でも、最終便まで当日の乗継とみなされる。

(2) 区のみ100円引きなのは、かつて「バスから地下鉄への乗り継ぎに限り、(2) 区は1区と同じ運賃とする(逆の場合は2区と同じ運賃)」という制度が存在していたためで、1997年(平成9年)4月1日の運賃制度改正で1区と2区の中間額となった。この制度は電車との乗継には適用されなかったため、電車との乗継運賃は (2) 区・2区とも同じである。

地下鉄から電車・バスへ乗り継ぐ場合は、地下鉄駅で購入した乗継券のみでそのまま乗り継ぎが可能。バスの乗車区間が2区や対キロ乗車料金となる場合はバス車内で差額を精算する。電車・バスから地下鉄へ乗り継ぐ場合は、通常乗車料金に120円を加えた額を払って乗継券を受け取る。地下鉄の乗車区間が1区を超えた場合は下車駅で精算する。共通ウィズユーカードを使用しての乗継は自動的に適用される。電車またはバス降車時に残額不足となった場合は別の共通ウィズユーカードまたは現金で差額精算となる。各バス事業者発行のカード乗車券や紙式回数乗車券との併用はできない。乗継定期乗車券は札幌市交通局の定期券販売所でのみ取り扱う。

1つのバス路線が複数の地下鉄駅を経由する場合は、原則として最も郊外側にある駅かつ郊外側に向かうバスに乗り継ぐ場合のみ適用される。1990年代後半以降に当時札幌市営バスとして運行されていた路線に対しては大幅に緩和され、札幌都心を含め地下鉄駅、バス利用方向にかかわらず適用となった。

乗継可能なバス会社[編集]

各種乗車券[編集]

各種乗車カードが使用できる改札機(新さっぽろ駅にて)

ICカード[編集]

磁気カード[編集]

乗車カード[編集]

以下のカードは、2014年5月31日をもって、発売を終了している。いずれのカードも、2015年3月31日まで使用可能である。

  • 共通ウィズユーカード
    • 詳細は当該項目を参照。
  • 昼間割引カード(地下鉄専用)
    • 発売額:2000円(2,500円分乗車可能)
    • 利用時間:入場時刻を基準として午前10時 - 午後4時の間に使用可能。出場時は時間制限はない。
    • 自動券売機で地下鉄乗車券購入にも使えるが、購入した乗車券は昼間割引カード同様の有効時間制限がある。
一日乗車券[編集]

地下鉄のみ利用可能

  • 地下鉄専用1DAYカード(800円)
  • ドニチカキップ(500円)
    • 詳細は当該項目を参照。

他の交通機関も利用可能

  • 共通1DAYカード(地下鉄・市電・バス、1,000円)
    • 共通ウィズユーカード導入事業者で利用できる。バスは札幌市内特殊運賃区間のみ適用。

過去に発売していた乗車カード[編集]

  • エコキップ(地下鉄・市電・バス、700円)2010年11月20日をもって、発売および利用を終了
    • 詳細は当該記事を参照。

経営状況[編集]

2012年度の経営状況は以下の通り[7]

  • 乗車料収入は、366.4億円。
    • 経常損益は、59.5億円の黒字。
  • 企業債は3,451億円。
  • 補助金は69.2億円。

1980年代初頭から赤字が続き、2004年度には単年度赤字約71億1,000万円、累積赤字も同年度末で4,400億円という(当時の札幌市全体の歳入は年間8,000億円弱)危機的な状況となっていた。赤字の主な要因は建設費の償還とその利息負担で、特にバブル景気の最中に建設された東豊線北部の分が大きいとされる。

2004年から2013年度にかけて、収支の改善を掲げた「札幌市営地下鉄事業10か年経営計画」を実施中である。沿線人口の高齢化に伴う利用客の減少が見込まれ、苦しい経営が予想されていたが、計画より5年も早く2006年度には25年ぶりに経常収支ベースでの単年度黒字を達成した。累積欠損金や企業債も減少傾向にあり、経営計画を上方修正するまでに至った。これは補助金の増額(2001年度以降増額され続け、2005年度は2001年度と比べ約60億円の増額)と支払利息の減少・人件費の大幅なカットによるところが大きいが、企業債及びその利息の削減に伴い現在は補助金も減らし続けている。

輸送統計によると2008年度の1日平均乗車人員は、3路線合計で571,847人であった。1990年代をピークに利用客数が減っていったが、現在は一定幅内での増減が繰り返されておりほぼ横ばいの状態と言える。ただしこれは東豊線の利用客数増加によるものが大きく、南北線や東西線の利用客数は減少傾向にある。ちなみに現在は1日乗車券などの普及により定期外客が増加している一方、定期客は1990年代前半の約2分の1まで落ち込んでいる(1990年代前半までは定期客と定期外客の比率がほぼ1対1であったが、2008年度では26対74となっている)。そのため乗車料収入は横ばいの状態が続いている。

2012年度収支上では南北線33.07億円、東西線4.49億円、東豊線21.9億円と3線とも黒字扱いとされているが、補助金を中心とした営業外利益収入が南北線0.95億円、東西線6.17億円、東豊線62.09億円発生しており、東西線及び東豊線に関しては実質的には赤字経営状態と考えられる。

人身事故対策[編集]

東西線南郷7丁目駅に設置された札幌市営地下鉄初の可動式ホーム柵

開業以来、ホームから人が転落する事故が多く問題となっている。交通局では運行障害の元にもなる飛び込みによる自殺を減らそうと、ホームに投身防止を呼び掛けるプレートや、飛び込もうとする自分の姿を見て思いとどまってもらうべく「鏡」を設置したり、相談を受け付ける「いのちの電話」へ協賛するなどの対策を講じてきた。

2006年には全駅へ列車非常停止装置の設置を完了したほか、2008年度から以下の通り可動式ホーム柵を各駅に順次設置していく予定。投身や思わぬ転落事故の防止のほか、ワンマン運転化による人件費の削減が見込まれている。

  • 東西線 : 2008年度中に全駅へ可動式ホーム柵設置を完了[8]し、2009年4月1日よりワンマン運転を開始[9]
  • 南北線 : 2012年7月より麻生駅から設置工事に着手し、設置が完了した駅から順次稼働開始。2013年3月までに全駅へ設置後、2013年4月1日よりワンマン運転を開始[10]
  • 東豊線 : 『安全報告書2013』によると、2016年度(平成28年度)に設置する予定である[11]。ただし、具体的な設置日程等は発表されていない。

上記のほか、携帯電話向けに障害発生情報や復旧見込み時間を電子メールで配信するサービスもある。

開業前のエピソード[編集]

1960年代、急速なモータリゼーションの進行によって、特に積雪期の交通渋滞に悩まされていた札幌市では、市内交通の中心だった市電とバスによる輸送が限界に近づいていた。さらに札幌オリンピック1972年(昭和47年)に開催されることが決定し、選手や観客を輸送するためには市電やバスの輸送力では到底対応しきれないことから、高速・大量輸送が可能な新しい軌道系交通機関建設への機運が高まっていった。

市は1964年(昭和39年)に『札幌市における将来の都市交通計画』に関する調査書を民間に委託して作成させ、翌1965年(昭和40年)から札苗実験場(現東区)でゴムタイヤ方式の試験車両による各種試験を開始した。なお、モノレール、鉄車輪とゴムタイヤを併用するパリ方式、あるいはブリュッセルプレメトロを参考にした路面電車を都心部のみ地下に潜らせる「路下電車」なども検討された。

札幌市がゴムタイヤ方式に固執した理由は、高速電車と入れ替わりに廃止が予想される市電と同等の利便性を確保するため、高速電車の駅間隔を当初、電停並みの300メートル程度と想定していたことによる。走行実験の開始直後、除雪についての具体策もはっきりしない時期、札幌市の広報誌には、「短い駅間隔での高加減速運転には鉄輪は不向きで、ゴムタイヤこそが最適」との趣旨の記述がある。

当時人口が80万人規模だった札幌[12]での地下鉄建設には、当時の運輸省が難色を示していたという。「札幌に地下鉄を作って赤字になったらどうするんだ、熊でも乗せるのか」という大蔵省職員の冗談に、当時の市交通局長で後に「札幌地下鉄の生みの親」と呼ばれた大刀豊(だいとう ゆたか)が「料金を払えば熊でも乗せる」と言ったという逸話が残っている。

1967年(昭和42年)12月の定例市議会で南北線真駒内 - 北24条間の建設が可決され、直ちに免許が申請された。当時の地方鉄道法には、鉄軌条でも、モノレールでもない「札幌方式」に関する規定がなく、関係省令を一部改正して「案内軌条式鉄道」の項目を設けた上で認可された。日本モノレール協会では、「札幌方式」がモノレールに関する特許に抵触していないかどうか公開質問状を送付し、また調査員を派遣した。

1971年(昭和46年)2月のプレオリンピック開催時には、南北線の試運転車両に当時の皇太子明仁と皇太子妃美智子が試乗した[13]

これに限らず、市民を対象にした試乗会は完成検査前の同年1月頃から実施されていたが、9月3日には真駒内駅で試乗列車が脱線して運転士2名と試乗客3名が負傷する事故が起きている。

整備計画[編集]

札幌市が1965年に発表した『札幌市都市交通機関計画資料』では、昭和60年(1985年)までに地下鉄を南北線・東西線の計45km、また、都心および沿線各地区にバスターミナルを建設するとしており、このうち第一次計画として昭和50年(1975年)までに地下鉄20kmと都心バスターミナルを建設することになっていた。

最初期の計画では、地下区間は都心部の約6km(南北線:北11条付近 - 南8条付近、東西線:西18丁目付近 - 東5丁目付近)のみで、残りはすべて高架とする予定だった。また、東西線については千歳線の経路変更に伴う廃線区間(現:北海道道1148号札幌恵庭自転車道線)に高架を建設する案もあった。

1973年、自治省が札幌市の要請に基いて編成した調査団によって、札幌市の将来あるべき交通体系に関する調査が行われた。翌1974年3月に提出された報告書『最適交通体系の選択と投資順位の研究』では、地下鉄について

  • (1) 昭和49年(1974年)既設及工事中の路線
  • (2) 昭和55年(1980年)以前建設提案路線
  • (3) 昭和55年 - 60年(1985年)建設提案路線
  • (4) 昭和60年 - 65年(1990年)建設提案路線
  • (5) 昭和65年以降建設提案路線

の5段階で、4路線計81.3kmの建設が提案されている。内訳は以下の通り。

南北線
北24条 - 真駒内:12.1km (1)
北24条 - 麻生町:2km (2)
麻生町 - 新札幌団地[14]:9.0km (5)
麻生町 - 茨戸:6.2km (5)
真駒内 - 藤の沢:7.0km (5)
東西線
琴似 - 白石:10.0km (1)
白石 - 厚別副都心:8.1km (3)
琴似 - 木工団地:2.8km (4)
木工団地 - 手稲:4.2km (5)
三号線
新川通 - 南34条西11丁目:9.0km (5)
四号線(現:東豊線)
元町 - 月寒:11.0km (5)

札幌市では、これを基に3路線、約50kmを建設する構想、いわゆる「地下鉄50キロ計画」を定めた。現在までに、そのうちの48kmが建設され、他にも以下のような区間について延伸が検討、もしくは要望されているが、交通局や札幌市自体の財政状況からこれ以上の延伸は難しい情勢にある。

  • 東豊線:清田方面へ
    • 地下鉄50キロ計画にも含まれているが、福住駅付近の線形の問題で、そこから先のルートが決まっていない。また、公共交通機関の利用者が低迷している中で、新たに膨大な投資を必要とする地下鉄についてはなかなか厳しい判断をせざるを得ないとの考え方が示されている[15]
  • 南北線:石山・藤野方面、新琴似・屯田方面へ
    • 南側は真駒内まで建設時に将来の延伸に備えて旧・定山渓鉄道の跡地を一括取得していたが、一部は道路などに転用された。
  • 東西線:JR森林公園駅発寒駅
    • 宮の沢延伸工事中には、後述するJRとの相互乗り入れに関連して、発寒駅への延伸も検討されたが、「乗り入れ自体は不可能ではないが、きわめて困難」とされたことから見送られている。

なお、これらの区間には、地下鉄ではなくライトレールで、という意見もある。また、札幌から石狩市へ鉄道ないしはモノレールを建設する計画があるが、その起点を麻生駅か栄町駅とする案がある。

JR北海道(旧日本国有鉄道)との関係[編集]

ゴムタイヤ方式を採用した札幌市営地下鉄は、北海道旅客鉄道(JR北海道)の路線との直通運転(相互乗り入れ)が困難である。乗り換えを強いられるため、アクセスが悪く不便である一方、雪の影響を全く受けないというメリットもある。

市営地下鉄の建設が始まった昭和40年代前半の頃は、現在の札幌都市圏のように通勤や通学の範囲も広くなかったことに加え、JR北海道の前身である当時の日本国有鉄道(国鉄)は駅間隔も長く普通列車の運行本数も地方都市並みであり、通勤・通学に利用しやすい存在ではなかった。当時、市民の足は主に市電・バスであり、同じく通勤・通学輸送を目的とした札幌市営地下鉄にとって、鉄軌道方式による相互乗り入れの必要性は低かったと考えられる。

しかし国鉄分割民営化と前後して、国鉄や民営化により発足したJR北海道は札幌近郊輸送を重視するようになり、列車の大幅な増発や駅の増設、また函館本線の高架化や札沼線(学園都市線)の複線高架化を行った。結果、現在ではJR線も通勤・通学路線としての役割を担っている。そのため、路線が市内東西に並行するJR函館本線・千歳線東西線、南北に並行するJR札沼線と南北線北部・東豊線北部が競合状態にある。

JR線との相互乗り入れの可能性については、1995年から札幌市とJR北海道の部・課長クラスで「JRと地下鉄連携に関する研究会」を設けて検討され、鉄道総合技術研究所に調査委託した。翌1996年の研究所からの報告書では「両軌道に対応できる車両を開発する案が有力で、技術的には可能」とされた。しかし、その開発費は数百億円から1千億円程度に上るとのことで、その後の市総合交通対策調査審議会により、採算を理由に見送られた経緯がある。

JR線、地下鉄線ともに利用可能な相互連絡乗車券や定期券は期間・数量限定の「YOSAKOIソーランパス」以外発売されていない。また運行障害が発生しても振替輸送は従来行われなかったが、2008年11月からはJR線で2時間以上の運行障害が発生した場合、地下鉄線への振替輸送を行うことになった。これは2007年12月に札幌周辺のJR線が列車防護無線装置の誤発報で長時間に渡って運行が乱れた際、その対応でJR北海道に厳しい批判が寄せられたことから札幌市交通局との間で協議が進められていたものである。

ICカードの導入時も共通化を図る方向で2005年より協議が進められていたが、東日本旅客鉄道(JR東日本)の「Suica」との共通化を優先するJR北海道と、バスや市電など市内交通機関との共通化を主張する市交通局との間で意見が分かれ、当面の間共通化は見送られることになった。結果、2008年10月より導入されたKitaca(JR北海道)と、2009年1月より導入されたSAPICA(札幌市交通局)の2枚を使い分ける必要が生じている。2013年6月22日からJR東日本のSuicaと相互利用が可能なカードが利用可能となった(ただし逆にSAPICAはJR東日本等SAPICA以外の地域では利用不可[16])。

JR北海道と札幌市営地下鉄は同じ北海道の鉄道事業者でありながら、対応やサービスの異なる面が多い。サービス面での違いは以下の通り。2009年3月31日までは、携帯電話のルールに関しても違いがあった。

  • 車内の冷房装置
    • JR北海道:あり
    • 札幌市営地下鉄:無し
  • 駅ナンバリング
    • JR北海道:導入は地下鉄より遅れたが、車内LED案内表示器でもナンバリング表示
    • 札幌市営地下鉄:先に導入したが、車内LED案内表示器は一部非対応(路線図への表記のみ)
  • ホームでの乗車待ち整列
    • JR北海道:2列
    • 札幌市営地下鉄:4列
  • 携帯電話(2009年3月31日まで)
    • JR北海道:優先席と周辺部のみ電源OFF、それ以外の場所はマナーモードに設定のうえ通話は禁止
    • 札幌市営地下鉄:全面禁止・電源OFF(2009年4月1日からはJRと同様)

その他[編集]

路線[編集]

  • 東西線西11丁目駅と東豊線さっぽろ駅の間には、東豊線車両を西車両基地に回送するための連絡線がある。
  • 各路線の終端駅はすべて島式ホームに統一されている。また、東豊線延長部以降に延伸された区間では建設費を抑えるため途中駅もすべて島式ホームとなった。
  • 2000年4月より駅業務は財団法人札幌市交通事業振興公社へ順次委託され、2007年度には全駅の業務委託化が完了。将来的には運転業務も含めた全業務を委託する計画。
  • 東豊線の栄町 - 豊水すすきの間は当初から8両編成に対応できるようにホームを建設したが、学園前 - 福住間は4両編成の現状に合わせてホームを6両分しか完成させなかった。ただし、残り2両分の基礎工事は既にされており、今後追加工事を行うことで8両化にも対応できるようになっている。

技術[編集]

  • ゴムタイヤが走行する走行路面は、南北線が耐磨レジン(樹脂)、東西線[17]と東豊線が鉄板となっている。このため、南北線では各所で走行路面の補修が行われており、走行中の揺れが大きい。
  • 通常の鉄道では車輪からレールにアースしているが、ゴムタイヤ方式ではそのための集電靴(シュー)を必要とする。東西線や東豊線では、集電靴をI字型の案内軌条の両側から挟むように擦りつけているため、駅の直前やカーブなどで一瞬離れてまた接触する時に、スズメの鳴き声に例えられる特有の走行音が発生する。南北線はT字型の案内軌条の天面に擦りつける方式のため、この音はほとんど発生しない。
  • 駅停車中は、車体裾のコンタクターとホーム端面の鉄板を導通させ、静電気の滞留を防止している。

乗車制度[編集]

  • 札幌市交通局の発行する定期券は、地下鉄の定期券である場合「高」(高速電車)という記号が印字される(市電の場合は「電」)。
  • 磁気乗車券を使用した自動改札機を本格的に全面採用したのは札幌市営地下鉄が日本で初めてである。なお、現在札幌市営地下鉄で使用されている自動改札機は最新型を含め、切符・カード・定期券の裏からの投入ができず、裏から投入した場合は『「裏入れ」表を上にして入れ直してください』と表示され、扉が閉まる。
  • 2011年2月28日に不正乗車検知システムを導入。入場の際に乗車券(定期券)に入場履歴が書き込まれ、出場の際に入場と異なる乗車券で改札を利用するとエラーとなり扉が閉まる。

サービス[編集]

  • 携帯電話の車内での利用に関しては、2009年4月1日より「専用席付近は電源OFF それ以外の場所ではマナーモード」という一般的なルールに移行された。それまでは、車内での携帯電話の使用は全面的に禁止されており、電源を切るように呼びかけていた。2012年からは東豊線でdocomo Wi-Fiが利用できるようになった[18]
  • 案内板などに用いられる各路線のピクトグラムは当初、それぞれのラインカラーを地色に、2000形6000形7000形(前期)電車を模したデザインが使われていた。現在は最新の営業車両である5000形、7000形(後期)、8000形電車がほぼ同形状であるためデザインを改めて各線とも共通化し、ラインカラーで区別するものが使われている。
  • 駅売店は、他都市のような交通局の外郭団体ではなく、JR北海道の子会社である北海道キヨスクが運営している。
  • 1971年の開業後、比較的早い時期より、各駅にそれぞれ異なる駅スタンプが設置されている。色はラインカラー(緑・橙・青)に合わせたものとなっている(さっぽろ駅・大通駅は路線毎にデザインが異なる)。サタデーテーリングのスタンプとは異なるが、数年に一度、地下鉄駅のスタンプラリーも行われることがある。開業以来のSマークの頃と、STマークに変更となった後は、一部の駅のデザインが変更となっている(例・東豊線さっぽろ駅:時計台→JRタワー)。開業記念のスタンプ(シェルター断面図と1000系車両を模したもの)は近年までさっぽろ駅に設置されていた。
  • 開業以来、元日は始発時刻が遅く市民から批判の声もあったが、2006年以降は元日も通常と同様の始発時刻に改められた[19]

節電の取り組み[編集]

  • 2012年夏季、北海道電力泊原子力発電所の稼働停止による電力需要逼迫への対策として、駅構内及び電車内で照明の間引きなどの節電が行われた。駅構内では一部の電照式案内サインを消灯するなどの対策が行われたが、電照式案内サインの文字が見難くなる(特に東豊線)状態となったため、一部のサインには上から貼り紙が貼られる措置がとられた。なお、冬季の節電時ではこのような対策は行われなかった。

フィクションへの登場[編集]

映画[編集]

  • ガメラ2 レギオン襲来
    • 南北線の真駒内行始発電車(2000形だった)が大通駅 - すすきの駅間でソルジャーレギオンに襲われ、多数の犠牲者を出すというストーリーである。また、描写されていないがすすきの駅自体もレギオン草体によって大ダメージを受けたと推測される。ただし、実際にはこの区間は一直線の上、ホームから隣の駅の灯りが見えるほどに近接しており、やや現実とそぐわない場面も見られた。
  • 交渉人 真下正義
    • 東豊線大通駅構内および東車両基地の出入庫線でロケが行われた。設定では東京の地下鉄が舞台のため、架空電車線方式でデザインにクセがない8000形7000形が使用され、ゴムタイヤ部分はCG加工された。しかし車体部分はほぼ実物のままなので、本編中で容易に発見することができる。8000形に至っては札幌市交通局のロゴマークが判別できるシーンがある。
  • その他、鈴井貴之監督の映画作品でも登場している。

テレビドラマ[編集]

漫画[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 札幌市交通事業の設置等に関する条例
  2. ^ 地方公営企業法第二章
  3. ^ 札幌市交通事業の設置等に関する条例
  4. ^ 網棚について
  5. ^ 札幌市交通局向け地下鉄電車を受注川崎重工業プレスリリース 2013年5月22日
  6. ^ ICカード乗車券:名前は「SAPICA」 2009年1月、サービス開始 /北海道 毎日新聞 2008年3月29日
  7. ^ 平成24年度決算の概要(高速電車) - 札幌市
  8. ^ 東西線での設置状況と今後の設置予定 (PDF)
  9. ^ ワンマン運転開始のお知らせ (PDF)
  10. ^ 札幌市交通局プレスリリース(2013年2月4日)
  11. ^ 安全報告書2013 (PDF)”. 札幌市交通局. 2014年6月2日閲覧。
  12. ^ 札幌市は、1970年(昭和45年)国勢調査で初めて法定人口が100万人を突破した。政令指定都市移行は1972年(昭和47年)4月1日
  13. ^ [http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000201202060003 【白銀の祭典 札幌五輪から40年】 (3)地下鉄 突貫で通す] - 朝日新聞デジタル(2012年2月5日)
  14. ^ 現在の石狩市花川南付近。
  15. ^ 平成21年第一部予算特別委員会-03月16日-07号における札幌市長答弁
  16. ^ 札幌市交通局等におけるSuicaのサービス開始について (PDF) - 東日本旅客鉄道
  17. ^ 宮の沢 - 琴似間、白石 - 新さっぽろ間のみ。
  18. ^ docomo Wi-Fiが札幌市営地下鉄東豊線、横浜市営地下鉄グリーンラインなどでサービス開始
  19. ^ 始発と終発時刻は通常通りだが、日中の運行間隔を通常より間引きした特別ダイヤとなっている。

参考書籍[編集]

  • 『さっぽろ文庫11 札幌の駅』(編:札幌市教育委員会、発行:北海道新聞社)
    • 第5章第1節「地下鉄誕生」(筆者:大刀豊)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]