「野焼き」の版間の差分
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一方、野焼きは[[PM2.5]]などの[[大気汚染]]の大きな原因として[[公害]]を引き起こし、国境を超えて遠くまで被害が及ぶ([[越境汚染]])ため国際問題に発展しているケースも見られる<ref>[https://www.afpbb.com/articles/-/3061213|シンガポール、野焼きの煙害で全校休校に インドネシアを非難]</ref>。そうした理解が進んだ現在においては野焼きは大気汚染とそれに係わる疾患・死亡原因として、また圃場の地力低下や土壌[[侵食]]の原因として国際的に認識されるに至った<ref name="Cassou2018">{{Cite book|title=Agricultural Pollution: Field Burning|author=Cassou, Emilie|publisher=World Bank|date=2018|id={{Hdl|10986/29504}}}}</ref><ref name="CCAC">{{Cite web|url=https://www.ccacoalition.org/en/activity/open-agricultural-burning|title=Open agricultural burning|publisher=CCAC|accessdate=2019-12-24}}</ref>。 |
一方、野焼きは[[PM2.5]]などの[[大気汚染]]の大きな原因として[[公害]]を引き起こし、国境を超えて遠くまで被害が及ぶ([[越境汚染]])ため国際問題に発展しているケースも見られる<ref>[https://www.afpbb.com/articles/-/3061213|シンガポール、野焼きの煙害で全校休校に インドネシアを非難]</ref>。そうした理解が進んだ現在においては野焼きは大気汚染とそれに係わる疾患・死亡原因として、また圃場の地力低下や土壌[[侵食]]の原因として国際的に認識されるに至った<ref name="Cassou2018">{{Cite book|title=Agricultural Pollution: Field Burning|author=Cassou, Emilie|publisher=World Bank|date=2018|id={{Hdl|10986/29504}}}}</ref><ref name="CCAC">{{Cite web|url=https://www.ccacoalition.org/en/activity/open-agricultural-burning|title=Open agricultural burning|publisher=CCAC|accessdate=2019-12-24}}</ref>。 |
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== 問題点 |
== 問題点 == |
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=== 環境汚染 |
=== 環境汚染 === |
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==== 焼き畑 ==== |
==== 焼き畑 ==== |
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[[File:Manantenina bushfire.jpg|thumb|違法に行われている焼き畑]] |
[[File:Manantenina bushfire.jpg|thumb|違法に行われている焼き畑]] |
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==== 気管支喘息の誘発 ==== |
==== 気管支喘息の誘発 ==== |
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野焼きの煙は[[たばこ]]の煙と同様に[[気管支喘息]]を誘発する。秋田県の医師の間では、稲の収穫期を迎えて籾殻や稲わらなどの作物残渣が野焼きされる季節になると喘息発作の救急外来が急増するという事象がよく知られていた |
野焼きの煙は[[たばこ]]の煙と同様に[[気管支喘息]]を誘発する。秋田県の医師の間では、稲の収穫期を迎えて籾殻や稲わらなどの作物残渣が野焼きされる季節になると喘息発作の救急外来が急増するという事象がよく知られていた<ref>{{Cite journal|和書 |author=萱場広之 |title=2 稲作地域における環境因子と気管支喘息 : 穀物粉塵と野焼きを中心に(化学物質過敏症の診断・治療と問題点) |url=https://doi.org/10.15036/arerugi.53.224_1 |journal=アレルギー |publisher=日本アレルギー学会 |year=2004 |volume=53 |issue=2 |pages=224 |naid=110002432669 |doi=10.15036/arerugi.53.224_1 |issn=0021-4884}}</ref>。 |
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== 対策 |
== 対策 == |
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[[File:Plow land using an earth mover in Kerala, India IMG 20200715 132331.jpg|thumb|農機によるすき込み]] |
[[File:Plow land using an earth mover in Kerala, India IMG 20200715 132331.jpg|thumb|農機によるすき込み]] |
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{{仮リンク|気候と大気浄化の国際パートナーシップ|en|Climate and Clean Air Coalition to Reduce Short-Lived Climate Pollutants}}の農業イニシアチブは、環境保全を伴う生産性向上や、健康状態の改善のほか、とりわけブラックカーボンの排出抑制を目的として、2015年から作物残渣の野焼きの抑制計画を開始した<ref name="CCAC" />。野焼きに代わる作物残渣の有効利用法としては、[[不耕起栽培]]などのマルチング、圃場すき込み、堆肥化、飼料・敷料といった耕畜連携のほか、紙や[[バイオプラスチック]]などの素材原料、[[バイオ燃料]]原料や[[バイオ炭|バイオ炭(木炭)]]原料として利用する取り組みがある<ref name="Cassou2018" />。 |
{{仮リンク|気候と大気浄化の国際パートナーシップ|en|Climate and Clean Air Coalition to Reduce Short-Lived Climate Pollutants}}の農業イニシアチブは、環境保全を伴う生産性向上や、健康状態の改善のほか、とりわけブラックカーボンの排出抑制を目的として、2015年から作物残渣の野焼きの抑制計画を開始した<ref name="CCAC" />。野焼きに代わる作物残渣の有効利用法としては、[[不耕起栽培]]などのマルチング、圃場すき込み、堆肥化、飼料・敷料といった耕畜連携のほか、紙や[[バイオプラスチック]]などの素材原料、[[バイオ燃料]]原料や[[バイオ炭|バイオ炭(木炭)]]原料として利用する取り組みがある<ref name="Cassou2018" />。 |
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[[ファイル:WataraseYusuichi Yoshiyaki1.JPG|thumb|[[渡良瀬遊水地]]のヨシ焼き]] |
[[ファイル:WataraseYusuichi Yoshiyaki1.JPG|thumb|[[渡良瀬遊水地]]のヨシ焼き]] |
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[[File:Yamayaki (Mount Iwawaki)1.jpg|thumb|[[岩湧山]]の山焼き]] |
[[File:Yamayaki (Mount Iwawaki)1.jpg|thumb|[[岩湧山]]の山焼き]] |
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日本では伝統的に、[[春]]先のまだ[[草本]]の新芽が出ない時期に、野山の枯れ草を焼く事が多い。[[山焼き]]とも言う<ref>{{Cite web |date= |url=http://omuroyama.com/event/ |title=伊豆の春を告げる大室山の山焼き |publisher=大室山リフト |accessdate=2019-06-27}}</ref>。また、田の畔や<ref>{{Cite web |date=2019-06-27 |url=https://www.sankei.com/affairs/news/190627/afr1906270011-n1.html |title=田んぼに焼死体で捜査 滋賀・竜王町 |publisher=産経新聞 |accessdate=2019-06-27}}</ref>、[[河川敷]]を焼くことも野焼きということもある<ref>{{Cite web |date=2019-01-20 |url=https://www.asahi.com/articles/ASM1K4CDSM1KUTNB009.html|title=河原植物を守れ 熊谷の荒川河川敷で「火入れ |publisher= 朝日新聞デジタル|accessdate=2019-06-27}}</ref>。 |
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日本の自然の状態では酷寒地を除き、[[草原]]は |
日本の自然の状態では酷寒地を除き、[[草原]]は森林へと[[遷移 (生物学)|遷移]]する。野焼きや採草、[[放牧]]を行うことで、この遷移がリセットされ、初期状態の草地に戻る。このように人為的に手を加えることで維持されている草原を二次草原(半自然草原)といい、採草地や放牧地として利用されてきたほか、特に野草地では特有の生物相を形成する<ref>{{Cite journal|title=日本の半自然草地における生物多様性研究の現状|author=大窪久美子|journal=日本草地学会誌|volume=48|issue=3|pages=268-276|publisher=日本草地学会|date=2002|doi=10.14941/grass.48.268_1}}</ref><ref>{{Cite journal|url=http://www.jiid.or.jp/ardec/ardec44/ard44_key_note5.html|title=生物多様性を豊かにする日本の牛放牧|author=吉田光宏|journal=ARDEC|volume=44|date=2011-3|publisher=日本水土総合研究所}}</ref>。野焼きは、地下に[[生長点]]を持つ[[草本植物]]を生かしつつ、地表を覆う[[有機物]]や、地上に生長点を持つ[[木本植物]]を減らし、また炎などによる地温上昇や発芽誘導物質([[カリキン]])の生成などにより土中種子の[[休眠#種子休眠|休眠]]打破を促したり、炭による暗色化([[アルベド]]低下)で地温を上昇させたり、有機物を無機塩類とすることで新たに出る若草のための[[肥料]]としたり、[[ダニ]]などの[[害虫]]を焼き殺す効果も期待される<ref>{{Cite journal|title=植生管理の手法としての火入れ|author=津田智|journal=環境技術|volume=30|issue=6|pages=450-453|date=2001|publisher=環境技術学会|doi=10.5956/jriet.30.450}}</ref><ref>{{Cite journal|和書|url=http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/163/mgzn16306.html|title=論文の紹介: 植物の灰や煙に含まれる化学物質が種子の発芽と幼植物の生長を促進する|author=加茂綱嗣|journal=農業と環境|publisher=農業環境技術研究所|issue=163|date=2013-11-1}}</ref>。 |
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よく知られた山野の野焼きには、次のようなものがある。 |
よく知られた山野の野焼きには、次のようなものがある。 |
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[[稲藁]]や[[籾殻]]、[[果樹園|果樹]]の[[剪定枝]]といった作物残渣は、従来は[[堆肥化]]や[[畜産]]資材、[[藁]]細工など手工業製品の材料として資源利用されてきたが、現代になり農家の担い手減少や牛馬の減少、[[農業機械]]化、化学肥料の普及などによりその利用途が減少し、その一部が焼却されるようになった<ref name="zennoh"/><ref name="Kamide"/>。特に稲作における野焼きは、昭和40 - 50年代の[[自脱型コンバイン]]などによる機械収穫の普及に伴い増加し、一時は稲作付面積の25%で野焼きが行われ、その[[煙害]]は「稲わら[[スモッグ]]」と呼ばれ社会問題化した<ref name="Tomiyama2017">{{Cite journal|和書|author=富山一、他|title=野焼き発生の時間分布調査および稲作残渣野焼きによる大気汚染物質排出量の日変動推計|journal=大気環境学会誌|publisher=大気環境学会|volume=52|issue=4|date=2017|pages=105-117|doi=10.11298/taiki.52.105}}</ref><ref name="to-o"/>。 |
[[稲藁]]や[[籾殻]]、[[果樹園|果樹]]の[[剪定枝]]といった作物残渣は、従来は[[堆肥化]]や[[畜産]]資材、[[藁]]細工など手工業製品の材料として資源利用されてきたが、現代になり農家の担い手減少や牛馬の減少、[[農業機械]]化、化学肥料の普及などによりその利用途が減少し、その一部が焼却されるようになった<ref name="zennoh"/><ref name="Kamide"/>。特に稲作における野焼きは、昭和40 - 50年代の[[自脱型コンバイン]]などによる機械収穫の普及に伴い増加し、一時は稲作付面積の25%で野焼きが行われ、その[[煙害]]は「稲わら[[スモッグ]]」と呼ばれ社会問題化した<ref name="Tomiyama2017">{{Cite journal|和書|author=富山一、他|title=野焼き発生の時間分布調査および稲作残渣野焼きによる大気汚染物質排出量の日変動推計|journal=大気環境学会誌|publisher=大気環境学会|volume=52|issue=4|date=2017|pages=105-117|doi=10.11298/taiki.52.105}}</ref><ref name="to-o"/>。 |
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野焼きは大気汚染、[[悪臭]]などの公害、洗濯物の汚れ<ref>[https://www.city.ashikaga.tochigi.jp/page/noyakidame.html 野焼き行為は、迷惑行為]</ref>など近隣トラブル、火災など事故の原因となる<ref>{{Cite web|url=http://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_kikaika/anzen/siryo.html#野焼き|title=農作業安全の啓発資料 / 野焼き|publisher=農林水産省|accessdate=2019-10-21}}</ref>ほか、地域における農産・観光のイメージ低下<ref>{{Cite journal|和書|url=http://opac.niigatacitylib.jp/shisei/koho/akiha/koho_niitsu/2003/2003pdf/0901/20030901_08~09.pdf|title=稲わら焼却は「新津米」のブランドを落とします!|journal=広報にいつ|publisher=新津市|issue=963|page=8|date=2003-9-1}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/docs/2015093000019/files/04_inawarasyoukyaku.pdf|title=稲作農家のみなさまへ -稲わらは燃やさずすき込みましょう!-|work=[https://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/docs/2015093000019/ 稲わらを有効活用しましょう!!]|publisher=会津若松市/福島県|date=2015|accessdate=2019-10-27}}</ref>や、焼却により有機物の土壌への還元量が減少し、地力・収量低下につながることが示される<ref name="zennoh">{{Cite web|url=https://www.zennoh.or.jp/activity/hiryo_sehi/pdf/qa_inawara.pdf|title=施肥コストの低減 / 稲わら・有機物|publisher=全国農業協同組合連合会|accessdate=2019-10-21}}</ref><ref>{{Cite journal|和書|title=「わら焼き」が水稲収量及び地力へもたらす影響|author=須藤弘毅|author2=米村由美子|author3=藤澤春樹|author4=清藤文仁|url=http://www.naro.affrc.go.jp/org/tarc/to-noken/DB/DATA/068/068-033.pdf|publisher=東北農業試験研究協議会|journal=東北農業研究|issue=68|date=2015-12|pages=33-34}}</ref>など、営農面においても問題があることから、[[農協]]や行政機関における土づくり運動が興り<ref name="Kamide">{{Cite journal|和書|title=東北地方における稲わら処理の現状と問題点|author=上出順一|journal=農業機械学会誌|publisher=農業食料工学会|volume=38|issue=3|date=1976|pages=418-422|doi=10.11357/jsam1937.38.3_418}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/nourin/sanzen/files/01tuti-plan00-01.pdf|title=日本一健康な土づくり推進プラン|publisher=青森県|date=2007|accessdate=2019-10-22|page=4|quote=県では、稲わらの焼却が社会問題化したことや、化学肥料への過度な依存により水田の地力低下が懸念されたことから、昭和50年度から総合的な土づくり運動を展開してきました。}}</ref>、地力増進法{{Refnest|group="注"|地力増進法に基づいて定められる地力増進基本指針では、1997年以降の改正により環境保全型農業の推進が加えられ、作物残渣の堆肥化またはすき込み、廃掃法の遵守、廃棄物資材の利用・加工にあたっての環境保全への配慮を求めている<ref>{{Cite journal|和書|url=https://js-soilphysics.com/downloads/pdf/120001.pdf|title=巻頭言 土づくりと土壌物理性|author=志賀弘行|journal=土壌の物理性|issue=120|date=2012|publisher=土壌物理学会|pages=1-2}}</ref>。}}、持続農業法<ref group="注">持続農業法では、有機物の循環など持続性の高い農業生産方式を実践する農業者を認定し、資金支援や都道府県の[[環境ラベリング制度]]において優遇措置を設ける。</ref>、GAP([[適正農業規範]]){{Refnest|group="注"|[[国際連合食糧農業機関]] |
野焼きは大気汚染、[[悪臭]]などの公害、洗濯物の汚れ<ref>[https://www.city.ashikaga.tochigi.jp/page/noyakidame.html 野焼き行為は、迷惑行為]</ref>など近隣トラブル、火災など事故の原因となる<ref>{{Cite web|url=http://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_kikaika/anzen/siryo.html#野焼き|title=農作業安全の啓発資料 / 野焼き|publisher=農林水産省|accessdate=2019-10-21}}</ref>ほか、地域における農産・観光のイメージ低下<ref>{{Cite journal|和書|url=http://opac.niigatacitylib.jp/shisei/koho/akiha/koho_niitsu/2003/2003pdf/0901/20030901_08~09.pdf|title=稲わら焼却は「新津米」のブランドを落とします!|journal=広報にいつ|publisher=新津市|issue=963|page=8|date=2003-9-1}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/docs/2015093000019/files/04_inawarasyoukyaku.pdf|title=稲作農家のみなさまへ -稲わらは燃やさずすき込みましょう!-|work=[https://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/docs/2015093000019/ 稲わらを有効活用しましょう!!]|publisher=会津若松市/福島県|date=2015|accessdate=2019-10-27}}</ref>や、焼却により有機物の土壌への還元量が減少し、地力・収量低下につながることが示される<ref name="zennoh">{{Cite web|url=https://www.zennoh.or.jp/activity/hiryo_sehi/pdf/qa_inawara.pdf|title=施肥コストの低減 / 稲わら・有機物|publisher=全国農業協同組合連合会|accessdate=2019-10-21}}</ref><ref>{{Cite journal|和書|title=「わら焼き」が水稲収量及び地力へもたらす影響|author=須藤弘毅|author2=米村由美子|author3=藤澤春樹|author4=清藤文仁|url=http://www.naro.affrc.go.jp/org/tarc/to-noken/DB/DATA/068/068-033.pdf|publisher=東北農業試験研究協議会|journal=東北農業研究|issue=68|date=2015-12|pages=33-34}}</ref>など、営農面においても問題があることから、[[農協]]や行政機関における土づくり運動が興り<ref name="Kamide">{{Cite journal|和書|title=東北地方における稲わら処理の現状と問題点|author=上出順一|journal=農業機械学会誌|publisher=農業食料工学会|volume=38|issue=3|date=1976|pages=418-422|doi=10.11357/jsam1937.38.3_418}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/nourin/sanzen/files/01tuti-plan00-01.pdf|title=日本一健康な土づくり推進プラン|publisher=青森県|date=2007|accessdate=2019-10-22|page=4|quote=県では、稲わらの焼却が社会問題化したことや、化学肥料への過度な依存により水田の地力低下が懸念されたことから、昭和50年度から総合的な土づくり運動を展開してきました。}}</ref>、地力増進法{{Refnest|group="注"|地力増進法に基づいて定められる地力増進基本指針では、1997年以降の改正により環境保全型農業の推進が加えられ、作物残渣の堆肥化またはすき込み、廃掃法の遵守、廃棄物資材の利用・加工にあたっての環境保全への配慮を求めている<ref>{{Cite journal|和書|url=https://js-soilphysics.com/downloads/pdf/120001.pdf|title=巻頭言 土づくりと土壌物理性|author=志賀弘行|journal=土壌の物理性|issue=120|date=2012|publisher=土壌物理学会|pages=1-2}}</ref>。}}、持続農業法<ref group="注">持続農業法では、有機物の循環など持続性の高い農業生産方式を実践する農業者を認定し、資金支援や都道府県の[[環境ラベリング制度]]において優遇措置を設ける。</ref>、GAP([[適正農業規範]]){{Refnest|group="注"|[[国際連合食糧農業機関]](FAO)で示されたGAP原則<ref>{{Cite book|url=http://www.fao.org/3/ag856e/ag856e00.htm|title=Good Agricultural Practices - a working concept|series=FAO GAP working paper series 5|author=Anne-Sophie Poisot|author2=Andrew Speedy|author3=Eric Kueneman|publisher=FAO|date=2007|page=26|quote=Farming produces by-products, some of which are potential pollutants of soil, water, or air. The production of these by-products should be minimized while others are resources that can be reused or recycled.}}</ref>や農林水産省GAP共通基盤ガイドライン(またその先鞭となった農業環境規範)をはじめ、多くのGAP規範・規準では、作物残渣など副産物の循環的な利用や環境汚染の最小化を求めている<ref>{{Cite web|url=https://fagap.or.jp/yougo/glossary2.html#g41|title=GAP用語集 野焼き(Burn off in a field)|publisher=日本生産者GAP協会|accessdate=2019-9-3}}</ref>。2018年度には環境保全型農業直接支払の要件として国際水準GAPの実施が定められた<ref>{{Cite web|url=http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/attach/pdf/index-30.pdf|title=平成30年度予算概算決定 環境保全型農業直接支払交付金|publisher=農林水産省|accessdate=2019-10-24}}</ref>}}などの政策において、作物残渣は焼却せずに堆肥や飼料として利用することが奨励されるようになっている<ref name="DietQuestioning-181st-no30" />。 |
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日本国内での作物残渣の焼却量は、都道府県が把握するデータからの算出では、稲(藁・籾殻)で1990年には1,019.5[[キロトン]]、2016年には295.4キロトン、麦類の焼却割合は2007年度には13.5%、2016年度には7.7%である<ref>{{Citation|和書|title=日本国温室効果ガスインベントリ報告書|url=https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/2019unfccc.html|chapter=第5章 農業分野|chapterurl=https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/unfccc/NIR-JPN-2019-J07_chapter_5.pdf|publisher=国立環境研究所|date=2019}}</ref><ref>{{Citation|和書|title=温室効果ガス吸収量の算定と報告〜温室効果ガスインベントリ等関連情報〜 温室効果ガス排出・吸収量の算定方法|url=https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/methodology/|chapter=3. 農業分野 3.F 農作物残渣の野焼き 3.F.1 穀物|chapterurl=https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/methodology/material/methodology_3F1_2018.pdf|publisher=環境省|date=2018}}</ref>。2012年の[[第181回国会]]での内閣[[答弁書]]によれば、2010年度産の稲由来の焼却された稲藁の重量割合は、各都道府県からの集計で1.8%である<ref name="DietQuestioning-181st-no30">{{Cite web|url=http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/181030.htm|title=第181回国会 質問番号30 稲わら焼きに関する質問主意書|publisher=衆議院|date=2012-11-16|accessdate=2020-10-18}}</ref>。地域の取り組みによっても違いがあり、例えば米の最多産地(2018年時点)である[[新潟県]]では、1993年には独自の指導要綱を制定するなど作物残渣の適正処理を積極的に推進し<ref>{{Cite web|url=https://www.sankei.com/west/news/180914/wst1809140003-n3.html|title=【関西の議論】野焼きは「違法」か…農地とニュータウン混在の自治体の悩み|author=中川三緒|work=産経ニュース|publisher=産経新聞社|date=2018-9-14|accessdate=2019-12-23}}</ref><ref name="hashimoto">{{Cite web|url=http://www.npa-niigata.jp/teigen/teig-hmt02.htm|title=提言/主張 ストップ!!稲わら焼却!!|author=橋本尚士|work=新潟県小児科医会ウェブサイト|date=2001-8-9|accessdate=2019-10-23}}</ref>、稲藁の焼却割合(対作付面積)は、1995年度には6.9%(9,451ヘクタール)、2017年度には0.0%(36ヘクタール)となっている<ref>{{Citation|和書|title=平成30年度版 新潟県の農林水産業(資料編:農業)|url=https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/nogyosomu/siryou-nogyo30.html|chapter=第5 豊かな食生活とうるおいの提供 1 環境保全型農業の取組 (2) 有機物の施用状況|chapterurl=https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/185044.pdf|publisher=新潟県|date=2019-8|page=105}}</ref>。[[青森県]]では2010年に稲藁の適正処理を推進する条例を制定し、作付面積の1%まで野焼きが減少したが、一部地域では根強く残る<ref name="to-o">{{Cite web|url=https://www.toonippo.co.jp/articles/-/268090|title=【フカボリ】わら焼き 農家ジレンマ|work=Web東奥|publisher=東奥日報社|date=2019-10-27|accessdate=2019-12-23}}</ref>。 |
日本国内での作物残渣の焼却量は、都道府県が把握するデータからの算出では、稲(藁・籾殻)で1990年には1,019.5[[キロトン]]、2016年には295.4キロトン、麦類の焼却割合は2007年度には13.5%、2016年度には7.7%である<ref>{{Citation|和書|title=日本国温室効果ガスインベントリ報告書|url=https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/2019unfccc.html|chapter=第5章 農業分野|chapterurl=https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/unfccc/NIR-JPN-2019-J07_chapter_5.pdf|publisher=国立環境研究所|date=2019}}</ref><ref>{{Citation|和書|title=温室効果ガス吸収量の算定と報告〜温室効果ガスインベントリ等関連情報〜 温室効果ガス排出・吸収量の算定方法|url=https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/methodology/|chapter=3. 農業分野 3.F 農作物残渣の野焼き 3.F.1 穀物|chapterurl=https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/methodology/material/methodology_3F1_2018.pdf|publisher=環境省|date=2018}}</ref>。2012年の[[第181回国会]]での内閣[[答弁書]]によれば、2010年度産の稲由来の焼却された稲藁の重量割合は、各都道府県からの集計で1.8%である<ref name="DietQuestioning-181st-no30">{{Cite web|url=http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/181030.htm|title=第181回国会 質問番号30 稲わら焼きに関する質問主意書|publisher=衆議院|date=2012-11-16|accessdate=2020-10-18}}</ref>。地域の取り組みによっても違いがあり、例えば米の最多産地(2018年時点)である[[新潟県]]では、1993年には独自の指導要綱を制定するなど作物残渣の適正処理を積極的に推進し<ref>{{Cite web|url=https://www.sankei.com/west/news/180914/wst1809140003-n3.html|title=【関西の議論】野焼きは「違法」か…農地とニュータウン混在の自治体の悩み|author=中川三緒|work=産経ニュース|publisher=産経新聞社|date=2018-9-14|accessdate=2019-12-23}}</ref><ref name="hashimoto">{{Cite web|url=http://www.npa-niigata.jp/teigen/teig-hmt02.htm|title=提言/主張 ストップ!!稲わら焼却!!|author=橋本尚士|work=新潟県小児科医会ウェブサイト|date=2001-8-9|accessdate=2019-10-23}}</ref>、稲藁の焼却割合(対作付面積)は、1995年度には6.9%(9,451ヘクタール)、2017年度には0.0%(36ヘクタール)となっている<ref>{{Citation|和書|title=平成30年度版 新潟県の農林水産業(資料編:農業)|url=https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/nogyosomu/siryou-nogyo30.html|chapter=第5 豊かな食生活とうるおいの提供 1 環境保全型農業の取組 (2) 有機物の施用状況|chapterurl=https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/185044.pdf|publisher=新潟県|date=2019-8|page=105}}</ref>。[[青森県]]では2010年に稲藁の適正処理を推進する条例を制定し、作付面積の1%まで野焼きが減少したが、一部地域では根強く残る<ref name="to-o">{{Cite web|url=https://www.toonippo.co.jp/articles/-/268090|title=【フカボリ】わら焼き 農家ジレンマ|work=Web東奥|publisher=東奥日報社|date=2019-10-27|accessdate=2019-12-23}}</ref>。 |
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;火災 |
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総務省消防庁の「平成30年(1~12月)における |
総務省消防庁の「平成30年(1~12月)における火災の状況(確定値)」によれば、火入れは日本国内で6番目の(たばこ、[[焚き火|たき火]]、こんろ、放火、放火の疑いに次ぐ)火災原因であり、全体の4.9%(1,856件、死者18名)を占める<ref>{{Citation|和書|url=http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01shoubo01_02000206.html|title=平成30年(1~12月)における火災の状況(確定値)|publisher=総務省|date=2019-9-6}}</ref>。[[林野火災]]においては、たき火に次ぐ2番目の原因であり、全体の18.9%(258件)を占める。また、野焼きの火が下草に延焼し、人が炎に巻かれ死亡する事故が度々発生している<ref>[http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150418/k10010053091000.html/ 野焼きに巻き込まれ男児死亡]</ref><ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2101H_R20C10A2CC1000/ 演習場で野焼き延焼]</ref><ref>[https://news.yahoo.co.jp/articles/6ce22d23798beb636da1d66bffc5f1cdabfbc6cc/ 田んぼで人が燃えている]</ref>。 |
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;粒子状物質(PM2.5) |
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野焼きは[[粒子状物質|微小粒子状物質]]([[PM2.5]])の主要な国内発生源のひとつと考えられており、2015年から環境省のPM2.5政策パッケージにおいて排出抑制が検討されるようになった<ref>{{Cite journal|author=遠藤真弘|date=2015-4-28|title=PM2.5 による大気汚染の現状と対策|url= |
野焼きは[[粒子状物質|微小粒子状物質]]([[PM2.5]])の主要な国内発生源のひとつと考えられており、2015年から環境省のPM2.5政策パッケージにおいて排出抑制が検討されるようになった<ref>{{Cite journal|author=遠藤真弘|date=2015-4-28|title=PM2.5 による大気汚染の現状と対策|url=https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9275297_po_0866.pdf?contentNo=1|journal=調査と情報-Issue Brief-|issue=866|publisher=国立国会図書館}}</ref><ref>{{Cite journal|author=瀧口博明|date=2016-5|title=特集「大気汚染の現状と対策」|url=http://www.soumu.go.jp/main_content/000417381.pdf|journal=ちょうせい|issue=85|pages=20-25|publisher=総務省公害等調整委員会}}</ref><ref>{{Cite news|url=https://www.nishinippon.co.jp/item/n/443225/|title=PM2.5、野焼きも影響か 中国の濃度は低下傾向 条例で禁止する自治体も|newspaper=西日本新聞|publisher=西日本新聞社|date=2018-8-22}}</ref>。環境省は、野焼きが地域のPM2.5濃度に与える影響が高まりやすい気象条件として、弱風や、秋から冬にかけて晴れた日の夜間に形成されやすい[[逆転層]]、高湿度を挙げ、こうした条件での野焼きをしないよう求めている<ref name="MOE-notice-air-1803273">{{Citation|和書|url=https://www.env.go.jp/air/osen/pm/ca/300327noyaki.html|title=平成30年3月27日環水大大発第1803273号 微小粒子状物質(PM2.5)と野焼き行為との関連について|publisher=環境省|date=2018-3-27}}</ref>。また含水率の高い作物残渣はPM2.5の排出量を増加させる<ref>{{Cite book|和書|url=http://www.nies.go.jp/kanko/tokubetu/setsumei/sr-109-2015b.html|title=都市大気における粒子状物質削減のための動態解明と化学組成分析に基づく毒性・健康影響の評価|series=国立環境研究所研究プロジェクト報告第109号|editor=森野悠、高見昭憲|publisher=国立環境研究所|date=2015-9-30}}</ref>。環境省の「PM2.5等大気汚染物質排出インベントリ」によれば、2015年度の作物残渣の野焼きによるPM2.5一次粒子の推計排出量は約1万3千トンであり、国内排出全体(約12万トン)の約1割を占める<ref>{{Cite web|url=https://www.env.go.jp/council/07air-noise/y078-09a/mat903.pdf|title=PM2.5等大気汚染物質排出インベントリの整備状況|work=[https://www.env.go.jp/council/07air-noise/y078-09a.html 微小粒子状物質等専門委員会(第9回)議事次第・配付資料]|publisher=環境省|date=2019|accessdate=2019-11-17}}</ref>。またその他の大気汚染物質として、[[揮発性有機化合物]]約1万1千トン、[[硫黄酸化物]]約1,300トン、[[窒素酸化物]]約8千トン、[[アンモニア]]約3,500トン、[[一酸化炭素]]約12万トンの年間排出量が推計される(2012年度データ)<ref>{{Cite journal|author=森川多津子|date=2017|title=PM2.5排出インベトリの最新状況と課題|journal=大気環境学会誌|volume=52|issue=3|pages=A74-A78|publisher=大気環境学会|doi=10.11298/taiki.52.A74}}</ref>。麦や稲の野焼きで発生するPM2.5粒子には、一般大気中のPM2.5と同程度もしくはそれ以上の毒性があると考えられ<ref>{{Cite book|和書|editor=茶谷聡、高見昭憲|url=https://www.nies.go.jp/kanko/tokubetu/setsumei/sr-133-2018b.html|title=未規制燃焼由来粒子状物質の動態解明と毒性評価|series=国立環境研究所研究プロジェクト報告第133号|publisher=国立環境研究所|date=2019-2-28}}</ref>、[[ベンゾピレン|ベンゾ[a]ピレン]]などの[[発癌性物質]]も含まれる<ref>{{Cite journal|author=伏見暁洋|date=2018-2|title=特集 化学物質曝露の包括的・網羅的把握に向けて 最近の大気中PM2.5の起源と稲わら等の野焼きの影響|url=https://www.nies.go.jp/kanko/news/36/36-6/36-6-03.html|journal=国立環境研究所ニュース|volume=36|issue=6|publisher=国立環境研究所}}</ref><ref>{{Cite journal|和書|author=北畠茂|date=2019|title=青森県内における稲わら焼却による大気汚染状況について|url=http://tenbou.nies.go.jp/science/institute/region/journal/JELA_4402010_2019.pdf|journal=全国環境研会誌|volume=44|issue=2|pages=10-15|publisher=全国環境研協議会|author2=対馬典子|author3=野澤直史}}</ref><ref name="to-o" />。 |
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;山火事 |
;山火事 |
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野焼きは[[山火事]]を引き起こす原因として上位に入っており、国や地方自治体が警告のアナウンスを出している<ref>[http://www.hodatsushimizu.jp/open_imgs/info/0000017231.pdf|野焼きは法律で禁止されています!!]</ref><ref>[https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/hogo/200221.html 令和2年全国山火事予防運動の実施について:林野庁 www.rinya.maff.go.jp |
野焼きは[[山火事]]を引き起こす原因として上位に入っており、国や地方自治体が警告のアナウンスを出している<ref>[http://www.hodatsushimizu.jp/open_imgs/info/0000017231.pdf|野焼きは法律で禁止されています!!]</ref><ref>[https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/hogo/200221.html 令和2年全国山火事予防運動の実施について:林野庁 www.rinya.maff.go.jp > press > hogo]</ref>。 |
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;交通事故 |
;交通事故 |
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野焼きにより発生した煙が車の視界を遮った結果、交通事故が発生し女児が事故死した事件が発生し、野焼きを行っていた男性が書類送検された<ref>[https://www.asahi.com/articles/ASKBM5JN4KBMUJUB00M.html 野焼きで車の視界妨げた疑い、書類送検 |
野焼きにより発生した煙が車の視界を遮った結果、交通事故が発生し女児が事故死した事件が発生し、野焼きを行っていた男性が書類送検された<ref>[https://www.asahi.com/articles/ASKBM5JN4KBMUJUB00M.html 野焼きで車の視界妨げた疑い、書類送検 2歳児が事故死]</ref>。 |
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==== 法規制 ==== |
==== 法規制 ==== |
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*直罰規定 :廃掃法では、原則的に法定基準外の焼却は不法焼却として処罰の対象となるが、例外として「農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却」や「震災、風水害、火災、凍霜害その他の災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な廃棄物の焼却」にあたる野焼きは罰則になじまない行為として除外される(法16条の2、施行令14条)。例外にあたるには、周辺の生活環境への影響が軽微であることが要件とされるが、具体的な線引きはない<ref name="MAFF-GAP">{{Cite web|title=これから始めるGAP|url=http://gap.maff.go.jp/files/starting_gap.pdf|publisher=農林水産省|date=2018-4-1|page=23|accessdate=2019-10-21}}</ref>。「やむを得ない」の要件も、個別具体的な事情で判断されるが、[[煙害]]を伴うため他の方法より公益上有効であることが求められることがある<ref name="hashimoto" />。廃ビニール<ref name="H12-9-28-Eikan78">{{Citation|和書|url=https://www.env.go.jp/hourei/11/000398.html|title=平成12年9月28日衛環78号 廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律の一部を改正する法律の施行について|publisher=厚生省|date=2000-9-28}}</ref>や家庭ごみ<ref>{{Cite journal|和書|date=2019-6|title=違法な焼却はやめましょう 2. 違法焼却の事例(※罰金刑が科せられた事例)|url=http://www.city.shobara.hiroshima.jp/main/government/koho/pr/files/koho171_15.pdf|journal=広報しょうばら|issue=171|page=15|publisher=庄原市|quote=家庭などから排出された廃棄物(事例としては「紙類」「段ボール」「雑誌」「弁当ガラ」「ポリ袋」「包装箱」「板切れ」「杭」「丸太」「木片」「稲木」「棚」「机」「じゅうたん」「その他のごみ」など)を、空地や田畑で焼却した行為が、罰則の対象となります。}}</ref>の野焼きは不法焼却にあたる。家庭菜園やレジャー農園はここでの農林業に含まれず、造園業や植木屋などの園芸サービス業は条例により明文的に規制されることがある。 |
*直罰規定 :廃掃法では、原則的に法定基準外の焼却は不法焼却として処罰の対象となるが、例外として「農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却」や「震災、風水害、火災、凍霜害その他の災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な廃棄物の焼却」にあたる野焼きは罰則になじまない行為として除外される(法16条の2、施行令14条)。例外にあたるには、周辺の生活環境への影響が軽微であることが要件とされるが、具体的な線引きはない<ref name="MAFF-GAP">{{Cite web|title=これから始めるGAP|url=http://gap.maff.go.jp/files/starting_gap.pdf|publisher=農林水産省|date=2018-4-1|page=23|accessdate=2019-10-21}}</ref>。「やむを得ない」の要件も、個別具体的な事情で判断されるが、[[煙害]]を伴うため他の方法より公益上有効であることが求められることがある<ref name="hashimoto" />。廃ビニール<ref name="H12-9-28-Eikan78">{{Citation|和書|url=https://www.env.go.jp/hourei/11/000398.html|title=平成12年9月28日衛環78号 廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律の一部を改正する法律の施行について|publisher=厚生省|date=2000-9-28}}</ref>や家庭ごみ<ref>{{Cite journal|和書|date=2019-6|title=違法な焼却はやめましょう 2. 違法焼却の事例(※罰金刑が科せられた事例)|url=http://www.city.shobara.hiroshima.jp/main/government/koho/pr/files/koho171_15.pdf|journal=広報しょうばら|issue=171|page=15|publisher=庄原市|quote=家庭などから排出された廃棄物(事例としては「紙類」「段ボール」「雑誌」「弁当ガラ」「ポリ袋」「包装箱」「板切れ」「杭」「丸太」「木片」「稲木」「棚」「机」「じゅうたん」「その他のごみ」など)を、空地や田畑で焼却した行為が、罰則の対象となります。}}</ref>の野焼きは不法焼却にあたる。家庭菜園やレジャー農園はここでの農林業に含まれず、造園業や植木屋などの園芸サービス業は条例により明文的に規制されることがある。 |
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*間接罰規定 :焼却禁止の例外にあたる野焼きも、法定基準外の焼却であるため、生活環境保全上の支障を生じうる行為として、措置命令(法19条の4)などの対象となり、命令違反は処罰の対象となる<ref>{{Cite web|author=長岡文明|url=http://www.revacs.com/biz/web/column/writer1/c014/|title=「環境省の通知の背景と内容解説」シリーズ 第14回 野焼きについて|publisher=リヴァックス|date=2015-5-20|accessdate=2019-9-3}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.pref.gunma.jp/04/e0910022.html|title=群馬県の生活環境を保全する条例のQ&A|publisher=群馬県|date=2011-3-1|accessdate=2019-9-3|quote=廃棄物の処理及び清掃に関する法律第 |
*間接罰規定 :焼却禁止の例外にあたる野焼きも、法定基準外の焼却であるため、生活環境保全上の支障を生じうる行為として、措置命令(法19条の4)などの対象となり、命令違反は処罰の対象となる<ref>{{Cite web|author=長岡文明|url=http://www.revacs.com/biz/web/column/writer1/c014/|title=「環境省の通知の背景と内容解説」シリーズ 第14回 野焼きについて|publisher=リヴァックス|date=2015-5-20|accessdate=2019-9-3}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.pref.gunma.jp/04/e0910022.html|title=群馬県の生活環境を保全する条例のQ&A|publisher=群馬県|date=2011-3-1|accessdate=2019-9-3|quote=廃棄物の処理及び清掃に関する法律第16条の2では、廃棄物処理基準に従わない廃棄物の焼却を禁止していますが、「災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な焼却」及び「農業、林業又は漁業を営むためやむを得ないものとして行われる焼却」については、焼却禁止の例外(同法第16条の2、同法施行令第14条)とされています。しかし、これらの行為であっても処理基準を遵守しない焼却として、同法第19条の3の改善命令、第19条の4第1項の措置命令や行政指導の対象となります(平成12年9月28日付衛環第78号厚生省環境整備課長通知)。}}</ref><ref name="H12-9-28-Eikan78" /><ref>{{Citation|和書|url=https://www.env.go.jp/press/101974.html|title=平成28年1月21日環境省告示第7号 廃掃法基本方針|publisher=環境省|date=2016-1-21|page=20|quote=廃棄物の処理基準に適合しない処理に対しては、一般廃棄物については市町村、産業廃棄物については都道府県において、生活環境の保全上の支障が生じることを未然に防止するため、行政命令を適正かつ迅速に行うとともに、行政命令違反、不法投棄、焼却禁止違反等の行為については、都道府県警察との連携を強化し、厳正に対処しなければならない。}}</ref>。ここでの「[[生活環境]]」とは[[環境基本法]]での定義に準じて「社会通念に従って一般的に理解される生活環境」などをいい、措置命令の発出は「高度の蓋然性や切迫性までは要求されておらず、通常人をして支障の生ずるおそれがあると思わせるに相当な状態をもって足りる」とされる<ref>{{Citation|和書|url=http://www.env.go.jp/hourei/add/k068.pdf|title=平成30年3月30日環循規発第18033028号 行政処分の指針について(通知)|work=[http://www.env.go.jp/recycle/waste/laws/kaisei2017/index.html 平成29年改正廃棄物処理法について]|publisher=環境省|date=2018-3-30|page=29}}</ref>。 |
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*罰則 :平成以降、不法焼却の厳罰化が進められており<ref>{{Cite web|url=http://www.city.oita.oita.jp/o144/shigotosangyo/jigyokegomi/1085025711456.html|title=野外焼却は禁止です!|publisher=大分市|date=2014-9-12|accessdate=2019-11-6}}</ref>、未遂罪<ref>{{Egov law|345AC0000000137|廃掃法}} 25条第2項</ref>(点火など<ref>{{Citation|和書|url=http://www.env.go.jp/recycle/waste/laws/kaisei2017/index.html|title=平成30年3月30日環循規発第18033028号 行政処分の指針について(通知)|publisher=環境省|date=2018-3-30|page=44|quote=行為者が廃棄物を燃焼させるべく、焼却行為に着手した時点で、不法焼却の実行の着手があったものとして、不法焼却未遂罪に該当するものと考えられること。具体的な行為類型としては、直接廃棄物に点火したが廃棄物が独立して燃焼するに至らなかった場合、廃棄物を燃焼する目的で媒介物に着火した場合、焼却する目的で廃棄物にガソリンを散布した場合等が考えられること。}}</ref>)や、目的罪(収集・運搬)<ref name="haisouhou-26-1-6">{{Egov law|345AC0000000137|廃掃法}} 26条第1項第6号</ref>も定められる。不法焼却(未遂を含む)や措置命令違反の罰則は、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方であり<ref>{{Egov law|345AC0000000137|廃掃法}} 25条</ref>、不法焼却に法人がかかわる場合は3億円以下の罰金が法人に併せて科される<ref name="Haisouhou-32">{{Egov law|345AC0000000137|廃掃法}} 32条</ref>。不法焼却の目的罪の罰則は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方であり<ref name="haisouhou-26-1-6" />、法人がかかわる場合は300万円以下の罰金が法人に併せて科される<ref name="Haisouhou-32" />。 |
*罰則 :平成以降、不法焼却の厳罰化が進められており<ref>{{Cite web|url=http://www.city.oita.oita.jp/o144/shigotosangyo/jigyokegomi/1085025711456.html|title=野外焼却は禁止です!|publisher=大分市|date=2014-9-12|accessdate=2019-11-6}}</ref>、未遂罪<ref>{{Egov law|345AC0000000137|廃掃法}} 25条第2項</ref>(点火など<ref>{{Citation|和書|url=http://www.env.go.jp/recycle/waste/laws/kaisei2017/index.html|title=平成30年3月30日環循規発第18033028号 行政処分の指針について(通知)|publisher=環境省|date=2018-3-30|page=44|quote=行為者が廃棄物を燃焼させるべく、焼却行為に着手した時点で、不法焼却の実行の着手があったものとして、不法焼却未遂罪に該当するものと考えられること。具体的な行為類型としては、直接廃棄物に点火したが廃棄物が独立して燃焼するに至らなかった場合、廃棄物を燃焼する目的で媒介物に着火した場合、焼却する目的で廃棄物にガソリンを散布した場合等が考えられること。}}</ref>)や、目的罪(収集・運搬)<ref name="haisouhou-26-1-6">{{Egov law|345AC0000000137|廃掃法}} 26条第1項第6号</ref>も定められる。不法焼却(未遂を含む)や措置命令違反の罰則は、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方であり<ref>{{Egov law|345AC0000000137|廃掃法}} 25条</ref>、不法焼却に法人がかかわる場合は3億円以下の罰金が法人に併せて科される<ref name="Haisouhou-32">{{Egov law|345AC0000000137|廃掃法}} 32条</ref>。不法焼却の目的罪の罰則は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方であり<ref name="haisouhou-26-1-6" />、法人がかかわる場合は300万円以下の罰金が法人に併せて科される<ref name="Haisouhou-32" />。 |
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[[環境省]]は毎年12月を大気汚染防止推進月間と定めて各種提案を行っている。そのうち1つで野焼きをしないよう求めており<ref>[http://www.env.go.jp/air/osen/gekkan/ |
[[環境省]]は毎年12月を大気汚染防止推進月間と定めて各種提案を行っている。そのうち1つで野焼きをしないよう求めており<ref>[http://www.env.go.jp/air/osen/gekkan/]</ref>、またTwitterの環境省公式アカウントにおいても、野焼き防止の啓発ツイートを行うなどしている<ref>[https://twitter.com/Kankyo_Jpn/status/1074606637757788162]</ref>。 |
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===== 地方自治体 ===== |
===== 地方自治体 ===== |
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[[新潟県]]では平成5年に「県稲わら等適正処理に関する指導要綱」を発表、推進している。これは稲刈り後に残る作物残渣である「稲わら」を、野焼きするのではなく細かくして土にすき込むというものである。県農産園芸課によれば平成14年には |
[[新潟県]]では平成5年に「県稲わら等適正処理に関する指導要綱」を発表、推進している。これは稲刈り後に残る作物残渣である「稲わら」を、野焼きするのではなく細かくして土にすき込むというものである。県農産園芸課によれば平成14年には90%以上の農家がすき込みに移行することに成功、現在は県への野焼きに対する苦情はほとんど無くなった<ref>[https://www.sankei.com/west/news/180914/wst1809140003-n3.html 【関西の議論】野焼きは「違法」か…農地とニュータウン混在の自治体の悩み]</ref>。 |
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[[富山県]]射水(いみず)市では平成23年から「もみ殻循環プロジェクト」を開始した。米の脱穀後に残る作物残渣である「もみ殻」を燃料として用いるものである。取り出した熱は冬場のイチゴ栽培用のビニールハウスの暖房、焼却灰は肥料にする。廃棄物であるもみ殻が有効活用できるため、他市からの視察も多い<ref>[https://www.sankei.com/west/news/180914/wst1809140003-n3.html 【関西の議論】野焼きは「違法」か…農地とニュータウン混在の自治体の悩み]</ref>。 |
[[富山県]]射水(いみず)市では平成23年から「もみ殻循環プロジェクト」を開始した。米の脱穀後に残る作物残渣である「もみ殻」を燃料として用いるものである。取り出した熱は冬場のイチゴ栽培用のビニールハウスの暖房、焼却灰は肥料にする。廃棄物であるもみ殻が有効活用できるため、他市からの視察も多い<ref>[https://www.sankei.com/west/news/180914/wst1809140003-n3.html 【関西の議論】野焼きは「違法」か…農地とニュータウン混在の自治体の悩み]</ref>。 |
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[[兵庫県]][[三田市]]では、野焼き対応を巡って取り締まり対象とする県警側と、容認姿勢を取る三田市側で対立が発生した。三田市オンブズパーソンは三田市に対し批判を展開、市長が謝罪するに至った<ref>[https://www.sankei.com/west/news/180914/wst1809140003-n1.html 【関西の議論】野焼きは「違法」か…農地とニュータウン混在の自治体の悩み]</ref> <ref>[https://mainichi.jp/articles/20180622/k00/00e/040/204000c 三田市 野焼き問題で三田署と見解対立 |
[[兵庫県]][[三田市]]では、野焼き対応を巡って取り締まり対象とする県警側と、容認姿勢を取る三田市側で対立が発生した。三田市オンブズパーソンは三田市に対し批判を展開、市長が謝罪するに至った<ref>[https://www.sankei.com/west/news/180914/wst1809140003-n1.html 【関西の議論】野焼きは「違法」か…農地とニュータウン混在の自治体の悩み]</ref> <ref>[https://mainichi.jp/articles/20180622/k00/00e/040/204000c 三田市 野焼き問題で三田署と見解対立 市長陳謝]</ref>。三田市オンブズパーソンは稲わらなどの農業廃棄物は一般廃棄物相当であり、行政側が責任を持って回収し、[[清掃工場]]に持っていく仕組みを策定することを提案している<ref>[https://www.city.sanda.lg.jp/soumu/documents/h30houkokusyo.pdf 三田市オンブズパーソン www.city.sanda.lg.jp > soumu > documents]</ref>。 |
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富山県砺波市では、落ち葉やせん定枝の野焼き防止のため、行政による戸別回収サービスの実証実験を開始した。回収された廃棄物はごみ処理センター([[清掃工場]])へ運ばれる<ref>[https://www.47news.jp/localnews/5327822.html 屋敷林のせん定枝を戸別回収 |
富山県砺波市では、落ち葉やせん定枝の野焼き防止のため、行政による戸別回収サービスの実証実験を開始した。回収された廃棄物はごみ処理センター([[清掃工場]])へ運ばれる<ref>[https://www.47news.jp/localnews/5327822.html 屋敷林のせん定枝を戸別回収 砺波市が野焼き防止と景観保全へ実証実験]</ref>。また、屋敷林で出る枝を粉砕機でチップ化し堆肥にする取り組みが進められている<ref>[https://www.hokkoku.co.jp/subpage/T20200608203.htm 粉砕機で堆肥に 砺波・高波振興会 屋敷林の枝をチップ化]</ref>。 |
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稲作が盛んな[[秋田県]]では、以下のような包括的な対応を行っている。 |
稲作が盛んな[[秋田県]]では、以下のような包括的な対応を行っている。 |
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* パトロ-ルにより監視・指導を行う |
* パトロ-ルにより監視・指導を行う |
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* 稲わら等を焼却している行為者に対し、直ちに焼却を中止するよう指導、勧告を行い、従わない場合は氏名を公表する |
* 稲わら等を焼却している行為者に対し、直ちに焼却を中止するよう指導、勧告を行い、従わない場合は氏名を公表する |
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* 大気中の浮遊粒子状物質を県内 |
* 大気中の浮遊粒子状物質を県内16箇所の測定局で常時監視し、野焼きによる大気汚染を観測したら「稲わらスモッグ注意報」を発令 |
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<ref>[https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/15882 STOP!稲わら焼き |
<ref>[https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/15882 STOP!稲わら焼き ~稲わらやもみ殻は焼かずに有効活用を~]</ref> |
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=== 国外 |
=== 国外 === |
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==== [[インドネシア]] ==== |
==== [[インドネシア]] ==== |
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[[File:Haze in Singapore - 20130617.jpg|thumb|シンガポールに流れ込んだヘイズ]] |
[[File:Haze in Singapore - 20130617.jpg|thumb|シンガポールに流れ込んだヘイズ]] |
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インドネシアでの[[プランテーション]]を目的とした違法野焼きが原因の森林火災・[[泥炭]]火災が例年発生しており、しばしば深刻な[[煙害]]や越境汚染となり社会問題となっている<ref>{{Cite news|url=https://www.sankei.com/world/news/191009/wor1910090001-n1.html|title=【アジア見聞録】「火星のような赤い空」それでもインドネシアの森林火災はなくならない|author=森浩|work=産経ニュース|publisher=産経新聞社|date=2019-10-9|accessdate=2019-12-23}}</ref>。特に[[シンガポール]]と[[マレーシア]]への越境汚染は深刻な国際問題に発展している<ref>[https://www.afpbb.com/articles/-/3061213 シンガポール、野焼きの煙害で全校休校に]</ref><ref>[https://www.asahi.com/articles/ASM9P2RP1M9PUHBI00L.html インドネシアで煙害深刻、乳児ら死亡 |
インドネシアでの[[プランテーション]]を目的とした違法野焼きが原因の森林火災・[[泥炭]]火災が例年発生しており、しばしば深刻な[[煙害]]や越境汚染となり社会問題となっている<ref>{{Cite news|url=https://www.sankei.com/world/news/191009/wor1910090001-n1.html|title=【アジア見聞録】「火星のような赤い空」それでもインドネシアの森林火災はなくならない|author=森浩|work=産経ニュース|publisher=産経新聞社|date=2019-10-9|accessdate=2019-12-23}}</ref>。特に[[シンガポール]]と[[マレーシア]]への越境汚染は深刻な国際問題に発展している<ref>[https://www.afpbb.com/articles/-/3061213 シンガポール、野焼きの煙害で全校休校に]</ref><ref>[https://www.asahi.com/articles/ASM9P2RP1M9PUHBI00L.html インドネシアで煙害深刻、乳児ら死亡 周辺国も巻き添え]</ref>。 |
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*[[山焼き]]、[[末黒野]] |
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== 外部リンク == |
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2020年11月5日 (木) 09:06時点における版
野焼き(のやき、英: controlled burn)とは、野外で植生(バイオマス)、作物残渣などを人為的に焼却することである。その他ごみの野外焼却に対しても野焼きという言葉が使われる(#その他ごみの野焼き)。
概要
野焼きは古来より焼き畑を行い農地をならすために、近年では山火事の防止、生態系の管理などを目的として行われてきた。 一方、野焼きはPM2.5などの大気汚染の大きな原因として公害を引き起こし、国境を超えて遠くまで被害が及ぶ(越境汚染)ため国際問題に発展しているケースも見られる[2]。そうした理解が進んだ現在においては野焼きは大気汚染とそれに係わる疾患・死亡原因として、また圃場の地力低下や土壌侵食の原因として国際的に認識されるに至った[3][4]。
問題点
環境汚染
焼き畑
発展途上国においては現在も熱帯林を野焼きすることによる焼畑農業が広く行われており、大気汚染の原因となっている。本来の焼畑は短期間の利用の後に放棄され森林として再生される。しかし近代では一部において、再生を前提としない大規模かつ永続的な野焼きまで「焼畑」と誤認されている。草原の野焼きはアフリカなど世界各地の草原で主に放牧のためにおこなわれており、ロシアのステップや北アメリカのグレートプレーンズにおける研究では、土壌の窒素を放出させたり、野焼き後に成長する若い植物は収量は減るが栄養価や採食嗜好性は高まるといったことが知られている[5]。 穀類や豆類、サトウキビの残茎・藁稈・殻・葉などの作物残渣の野焼きは世界各地で多くは規制のもとで行われている。原因として、伝統的に雑草・病害虫を防ぐために必要であるとみなされてきたこと、経済的理由により野焼きを行う以外に処分する選択肢を持てない農民が多いことが挙げられる[6][7]。世界銀行によれば、上位の国として中国、インド、米国、ブラジル、インドネシア、ロシアが挙げられるほか、アフリカ、メキシコ、タンザニアなどで割合が高く、この数十年の間に世界の多くの国々で増加した[3]。野焼きで得られる草木灰は、有機物そのものより窒素飢餓のリスクが少なく、カリウムなどを含む肥料として利用できる。一方で、燃焼に伴い栄養の多くや有機物の土づくり効果が失われることが知られている[3]。アジア工科大学院のMohammad Esmaeil Asadiによれば、稲藁の野焼きは炭素のほぼ全量、窒素の99%、リンの18%、カリウムの44%を失わせる[8]。オーストラリアのビクトリア州政府によれば、小麦藁の野焼きは窒素の80%、リンの40%、カリウムの60%、硫黄の50%を失わせ、また長期的には土壌の酸性化を招く[9]。高温に曝された土壌は一時的に交換性アンモニア態窒素や重炭酸塩抽出リンの画分が増加するが、長期的には理化学性・生物性のいずれも低下すると考えられている[3][10]。
地球温暖化
地球温暖化の観点からは雪氷圏の温暖化に影響が大きいブラックカーボンの排出源として最大の分野であると考えられている 温室効果ガス排出の観点では、二酸化炭素についてはカーボンニュートラルと捉えることができ、メタンや一酸化二窒素についても全体への寄与は目立たないが、土壌微生物に影響を与え土壌の温室効果ガス排出を増加させる[3]。
人体への悪影響
肺がん
農業廃棄物(一般廃棄物)、産業廃棄物を問わず、モノが不完全燃焼するときは粒子状物質(PM2.5)を大量に発生させる。特に籾殻の焼却においては発がん性物質であり珪肺の原因となる結晶質シリカを生成する。野焼きによってこれらが生成、飛散することで周囲を汚染する。[11]
気管支喘息の誘発
野焼きの煙はたばこの煙と同様に気管支喘息を誘発する。秋田県の医師の間では、稲の収穫期を迎えて籾殻や稲わらなどの作物残渣が野焼きされる季節になると喘息発作の救急外来が急増するという事象がよく知られていた[12]。
対策
気候と大気浄化の国際パートナーシップの農業イニシアチブは、環境保全を伴う生産性向上や、健康状態の改善のほか、とりわけブラックカーボンの排出抑制を目的として、2015年から作物残渣の野焼きの抑制計画を開始した[4]。野焼きに代わる作物残渣の有効利用法としては、不耕起栽培などのマルチング、圃場すき込み、堆肥化、飼料・敷料といった耕畜連携のほか、紙やバイオプラスチックなどの素材原料、バイオ燃料原料やバイオ炭(木炭)原料として利用する取り組みがある[3]。
バイオ炭はその製造過程において、不完全燃焼に伴う大量の有害物質が大気中に放出される。この問題の解決策として、環境を汚染しない高性能ガス化炉の実証実験が2019年にスタートした[13]。
各地の野焼き
日本
山野の野焼き
日本では伝統的に、春先のまだ草本の新芽が出ない時期に、野山の枯れ草を焼く事が多い。山焼きとも言う[14]。また、田の畔や[15]、河川敷を焼くことも野焼きということもある[16]。
日本の自然の状態では酷寒地を除き、草原は森林へと遷移する。野焼きや採草、放牧を行うことで、この遷移がリセットされ、初期状態の草地に戻る。このように人為的に手を加えることで維持されている草原を二次草原(半自然草原)といい、採草地や放牧地として利用されてきたほか、特に野草地では特有の生物相を形成する[17][18]。野焼きは、地下に生長点を持つ草本植物を生かしつつ、地表を覆う有機物や、地上に生長点を持つ木本植物を減らし、また炎などによる地温上昇や発芽誘導物質(カリキン)の生成などにより土中種子の休眠打破を促したり、炭による暗色化(アルベド低下)で地温を上昇させたり、有機物を無機塩類とすることで新たに出る若草のための肥料としたり、ダニなどの害虫を焼き殺す効果も期待される[19][20]。
よく知られた山野の野焼きには、次のようなものがある。
- 奈良・若草山の山焼き
- 阿蘇の野焼き
- 別府市の扇山火まつり・十文字原の野焼き
- 渡良瀬遊水地の葦焼き
- 大室山の山焼き
- 秋吉台の山焼き
- 房総の野焼き
- 仙石原の山焼き
- 平尾台の野焼き
- 都井岬の野焼き
- 東富士演習場、北富士演習場の野焼き
国立公園など自然保護区における野草地の野焼きは、採草や放牧とあわせ、二次草原環境や生物多様性の維持に有用な管理手段のひとつとして行われており、環境省は自然再生推進法などに基づき支援している[21]。草地の野焼きの量の正確なデータは把握されていないが、1,000ヘクタール以上の主要な野焼き実施地の5箇所(計24,400ヘクタール)を想定し、単位ヘクタール当たりの平均焼却量を10トンとする概算(日本国温室効果ガスインベントリ)があり、単純計算で244キロトンのバイオマス焼却が行われうると想定される[22]。野焼きは土地の炭素貯留を減少させると一般的には考えられているが、阿蘇の二次草原(約16,400ヘクタールの野焼き地)では、文献上は千年以上前から(延喜式に基づく説)、土壌分析によれば一万年以上前から野焼きがおこなわれ、かつ耕起がおこなわれてこなかった結果、土壌に蓄積した炭と植生由来の有機物により、土壌炭素の貯留が高められていると考えられている[23]。
野焼きに関する春の季語には「野焼」や「山焼」、「野山焼く」、「野火」、「畑焼」などがある[24]。
作物残渣の野焼き
稲藁や籾殻、果樹の剪定枝といった作物残渣は、従来は堆肥化や畜産資材、藁細工など手工業製品の材料として資源利用されてきたが、現代になり農家の担い手減少や牛馬の減少、農業機械化、化学肥料の普及などによりその利用途が減少し、その一部が焼却されるようになった[25][26]。特に稲作における野焼きは、昭和40 - 50年代の自脱型コンバインなどによる機械収穫の普及に伴い増加し、一時は稲作付面積の25%で野焼きが行われ、その煙害は「稲わらスモッグ」と呼ばれ社会問題化した[27][28]。
野焼きは大気汚染、悪臭などの公害、洗濯物の汚れ[29]など近隣トラブル、火災など事故の原因となる[30]ほか、地域における農産・観光のイメージ低下[31][32]や、焼却により有機物の土壌への還元量が減少し、地力・収量低下につながることが示される[25][33]など、営農面においても問題があることから、農協や行政機関における土づくり運動が興り[26][34]、地力増進法[注 1]、持続農業法[注 2]、GAP(適正農業規範)[注 3]などの政策において、作物残渣は焼却せずに堆肥や飼料として利用することが奨励されるようになっている[39]。
日本国内での作物残渣の焼却量は、都道府県が把握するデータからの算出では、稲(藁・籾殻)で1990年には1,019.5キロトン、2016年には295.4キロトン、麦類の焼却割合は2007年度には13.5%、2016年度には7.7%である[40][41]。2012年の第181回国会での内閣答弁書によれば、2010年度産の稲由来の焼却された稲藁の重量割合は、各都道府県からの集計で1.8%である[39]。地域の取り組みによっても違いがあり、例えば米の最多産地(2018年時点)である新潟県では、1993年には独自の指導要綱を制定するなど作物残渣の適正処理を積極的に推進し[42][43]、稲藁の焼却割合(対作付面積)は、1995年度には6.9%(9,451ヘクタール)、2017年度には0.0%(36ヘクタール)となっている[44]。青森県では2010年に稲藁の適正処理を推進する条例を制定し、作付面積の1%まで野焼きが減少したが、一部地域では根強く残る[28]。
その他ごみの野焼き
ごみを廃棄物処理法に従わずに焼却処分することを指す。そのまま地面に積み上げて、穴を掘りそのなかに投棄して、ドラム缶や焼却炉といったものを使用して、それぞれ焼却する[45] [46]。
日本では近代化以降、戦後まで適切な焼却施設が普及していなかったためごみの野焼きが常態化していたが、ごみ問題の深刻化を受けて1963年の生活環境施設整備緊急措置法で焼却施設の整備方針が定められ[47]、2000年の廃棄物処理法改正でごみの野焼きが全般的に原則禁止された[48]。ごみの野焼きは、煙害・火災などの問題に加え、特にダイオキシン類に代表される有害物質の発生が問題とされる[49][50]。
農業分野では、事業系一般廃棄物にあたる作物残渣の野焼きが焼却禁止の例外に含まれているが、これは軽微かつやむを得ない場合の特例であり、原則的にごみの野焼きは禁止されている(詳しくは#法規制を参照)。特に産業廃棄物に指定される廃ビニールなど廃プラスチック類は少量でも汚染が深刻であり、災害非常時でも野焼きしてはならないものとされている[48][50]。農業におけるこうしたごみの野焼きは、大気汚染や土壌汚染のほか、農業用水の汚染が懸念される場合もある[51]。
環境省の「産業廃棄物行政組織等調査報告書」によれば、日本国内の産業廃棄物の野焼きは1990年代後半から大幅に減少し、廃プラスチック類の野焼きの量は1996年度には3,446トン、2015年度には19トン、木くずの野焼きの量は1996年度には59,916トン、2015年度には831トンである[52]。警察庁の「警察白書」ほか統計によれば、廃棄物処理法の焼却禁止違反(不法焼却)による検挙件数は、2018年には2,802件(うち2千件以上が一般廃棄物事犯[53])であり、同法違反による検挙全体の約51%を占める[54]。
公害および事故原因
- 市民からの苦情
総務省の「平成30年度公害苦情調査」によれば、野焼きは日本国内で最も多い公害苦情の発生原因であり、全体の18.3%(12,243件)を占める[55]。
- 火災
総務省消防庁の「平成30年(1~12月)における火災の状況(確定値)」によれば、火入れは日本国内で6番目の(たばこ、たき火、こんろ、放火、放火の疑いに次ぐ)火災原因であり、全体の4.9%(1,856件、死者18名)を占める[56]。林野火災においては、たき火に次ぐ2番目の原因であり、全体の18.9%(258件)を占める。また、野焼きの火が下草に延焼し、人が炎に巻かれ死亡する事故が度々発生している[57][58][59]。
- 粒子状物質(PM2.5)
野焼きは微小粒子状物質(PM2.5)の主要な国内発生源のひとつと考えられており、2015年から環境省のPM2.5政策パッケージにおいて排出抑制が検討されるようになった[60][61][62]。環境省は、野焼きが地域のPM2.5濃度に与える影響が高まりやすい気象条件として、弱風や、秋から冬にかけて晴れた日の夜間に形成されやすい逆転層、高湿度を挙げ、こうした条件での野焼きをしないよう求めている[63]。また含水率の高い作物残渣はPM2.5の排出量を増加させる[64]。環境省の「PM2.5等大気汚染物質排出インベントリ」によれば、2015年度の作物残渣の野焼きによるPM2.5一次粒子の推計排出量は約1万3千トンであり、国内排出全体(約12万トン)の約1割を占める[65]。またその他の大気汚染物質として、揮発性有機化合物約1万1千トン、硫黄酸化物約1,300トン、窒素酸化物約8千トン、アンモニア約3,500トン、一酸化炭素約12万トンの年間排出量が推計される(2012年度データ)[66]。麦や稲の野焼きで発生するPM2.5粒子には、一般大気中のPM2.5と同程度もしくはそれ以上の毒性があると考えられ[67]、ベンゾ[a]ピレンなどの発癌性物質も含まれる[68][69][28]。
- 山火事
野焼きは山火事を引き起こす原因として上位に入っており、国や地方自治体が警告のアナウンスを出している[70][71]。
- 交通事故
野焼きにより発生した煙が車の視界を遮った結果、交通事故が発生し女児が事故死した事件が発生し、野焼きを行っていた男性が書類送検された[72]。
法規制
森林法により、森林やその1キロメートル以内の土地で野焼き(法律用語では「火入れ」)を行う場合はその所在地の市町村長の許可を得なければならない[73]。森林法で規制される火入れとは、土地の利用を目的とした面的な焼却をいうが、焼却物を複数箇所に収集しての「寄せ焼き」や、筋状に収集しての「筋焼き」も実質的に火入れとみなされる[74]。
また、消防法に基づいて地方公共団体が定める火災予防条例により、通例は「火災とまぎらわしい煙又は火炎を発するおそれのある行為」として消防機関への届出をしなければならない[73][75]。火災警報発令中は同条例の制限に従う必要があり(法22条)、その他火災予防上必要な時には禁止命令などが出される場合もある(法3条)。
田畑などで行われる作物残渣の野焼きは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)において、焼却禁止の例外とされるが、生活環境への影響のいかんにより、直罰規定(行為を罰する規定)と間接罰規定(命令違反を罰する規定)の2段階で規制される。このほか青森県や秋田県など一部の地方公共団体では、条例によって別途に規制を加えている[63]。
- 直罰規定 :廃掃法では、原則的に法定基準外の焼却は不法焼却として処罰の対象となるが、例外として「農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却」や「震災、風水害、火災、凍霜害その他の災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な廃棄物の焼却」にあたる野焼きは罰則になじまない行為として除外される(法16条の2、施行令14条)。例外にあたるには、周辺の生活環境への影響が軽微であることが要件とされるが、具体的な線引きはない[76]。「やむを得ない」の要件も、個別具体的な事情で判断されるが、煙害を伴うため他の方法より公益上有効であることが求められることがある[43]。廃ビニール[48]や家庭ごみ[77]の野焼きは不法焼却にあたる。家庭菜園やレジャー農園はここでの農林業に含まれず、造園業や植木屋などの園芸サービス業は条例により明文的に規制されることがある。
- 間接罰規定 :焼却禁止の例外にあたる野焼きも、法定基準外の焼却であるため、生活環境保全上の支障を生じうる行為として、措置命令(法19条の4)などの対象となり、命令違反は処罰の対象となる[78][79][48][80]。ここでの「生活環境」とは環境基本法での定義に準じて「社会通念に従って一般的に理解される生活環境」などをいい、措置命令の発出は「高度の蓋然性や切迫性までは要求されておらず、通常人をして支障の生ずるおそれがあると思わせるに相当な状態をもって足りる」とされる[81]。
- 罰則 :平成以降、不法焼却の厳罰化が進められており[82]、未遂罪[83](点火など[84])や、目的罪(収集・運搬)[85]も定められる。不法焼却(未遂を含む)や措置命令違反の罰則は、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方であり[86]、不法焼却に法人がかかわる場合は3億円以下の罰金が法人に併せて科される[87]。不法焼却の目的罪の罰則は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方であり[85]、法人がかかわる場合は300万円以下の罰金が法人に併せて科される[87]。
行政による対応
国
環境省は毎年12月を大気汚染防止推進月間と定めて各種提案を行っている。そのうち1つで野焼きをしないよう求めており[88]、またTwitterの環境省公式アカウントにおいても、野焼き防止の啓発ツイートを行うなどしている[89]。
地方自治体
新潟県では平成5年に「県稲わら等適正処理に関する指導要綱」を発表、推進している。これは稲刈り後に残る作物残渣である「稲わら」を、野焼きするのではなく細かくして土にすき込むというものである。県農産園芸課によれば平成14年には90%以上の農家がすき込みに移行することに成功、現在は県への野焼きに対する苦情はほとんど無くなった[90]。
富山県射水(いみず)市では平成23年から「もみ殻循環プロジェクト」を開始した。米の脱穀後に残る作物残渣である「もみ殻」を燃料として用いるものである。取り出した熱は冬場のイチゴ栽培用のビニールハウスの暖房、焼却灰は肥料にする。廃棄物であるもみ殻が有効活用できるため、他市からの視察も多い[91]。
兵庫県三田市では、野焼き対応を巡って取り締まり対象とする県警側と、容認姿勢を取る三田市側で対立が発生した。三田市オンブズパーソンは三田市に対し批判を展開、市長が謝罪するに至った[92] [93]。三田市オンブズパーソンは稲わらなどの農業廃棄物は一般廃棄物相当であり、行政側が責任を持って回収し、清掃工場に持っていく仕組みを策定することを提案している[94]。
富山県砺波市では、落ち葉やせん定枝の野焼き防止のため、行政による戸別回収サービスの実証実験を開始した。回収された廃棄物はごみ処理センター(清掃工場)へ運ばれる[95]。また、屋敷林で出る枝を粉砕機でチップ化し堆肥にする取り組みが進められている[96]。
稲作が盛んな秋田県では、以下のような包括的な対応を行っている。
- 独自の県公害防止条例を策定し、稲わら焼きを原則禁止
- 10月1日から11月10日の間は、稲わらだけでなく籾殻(含もみ殻くん炭の製造)等も含めた野焼きの全面禁止
- 「稲わら等焼却禁止重点地域」を定め、域内の全農家に「稲わら等焼却防止リーフレット」を配布
- パトロ-ルにより監視・指導を行う
- 稲わら等を焼却している行為者に対し、直ちに焼却を中止するよう指導、勧告を行い、従わない場合は氏名を公表する
- 大気中の浮遊粒子状物質を県内16箇所の測定局で常時監視し、野焼きによる大気汚染を観測したら「稲わらスモッグ注意報」を発令
国外
インドネシアでのプランテーションを目的とした違法野焼きが原因の森林火災・泥炭火災が例年発生しており、しばしば深刻な煙害や越境汚染となり社会問題となっている[98]。特にシンガポールとマレーシアへの越境汚染は深刻な国際問題に発展している[99][100]。
アマゾン川流域では、開墾を目的とした野焼きが原因の森林火災が例年数万件発生しており、2019年には過去最多となり国際問題にも発展した[101][102]。
作物残渣の野焼きによる煙害が深刻である。ハーバード大学やNASAほかグループの研究によれば、季節によってはデリーの大気汚染の半分は農業の野焼きに起因するといわれる[103]。国際食料政策研究所ほかグループの研究によれば、インド北部では作物残渣の野焼きが急性呼吸器感染症のリスクを3倍に高めており、その経済損失は5年間で約15億ドルと試算される[104]。野焼きの背景には担い手不足と収穫の機械化があり、法律で規制されているが事実上遵守されていない[10][105]。対策のひとつとしてハッピー・シーダーと呼ばれる不耕起栽培での二毛作のための農機(刈り取りと同時に播種し藁マルチングをおこなう)がオーストラリア国際農業研究センターの事業計画のもと開発され、野焼きの抑制と地力・収益向上が図られている[106][107]。また家具大手のイケアは、藁を製品材料にすることで野焼きを減らす「Better Air Now」という計画を2018年に発表し、インドで開始した[108][109]。
では地方政府により作物残渣の野焼きが禁止されている。かつては違法な野焼きで得られる草木灰肥料に依存する農家が多かったが、2008年から中央政府により作物残渣の有効利用が推進され、大きく改善した[110]。
穀類・豆類・アブラナの作物残渣の野焼きは、教育目的や、法律で定められた病害虫処理、破損したロールベールなどの片付けを除き禁止している[111]。また前述の教育目的・病害虫処理や亜麻の作物残渣の場合は、夜間や土日祝日の野焼きを禁止し、面積や周辺環境、従事者、通知、消火設備、燃焼灰の処分などの条件を設けている。またヒースや草原の野焼きについても、季節、時刻、従事者、設備、通知などの条件や許可制を設けている。
マニトバ州の法律では、夜間の作物残渣の野焼きを禁止し、日中は季節による規制期間や許可制を設けている[112]。ブリティッシュコロンビア州は2020年に、大気質の悪化が新型コロナウイルス感染症の悪化につながることを鑑み、被害軽減策として野焼きやキャンプファイヤーを禁止した[113][114]。
サバナではアボリジニが狩りのためにおこなう小規模な野焼きが5 - 12万年前から続けられている。モザイク状に焼け野が形成されるため、結果的に生物多様性の維持と山火事の延焼抑制に役立っていると考えられている。[115]。一方、野焼きは山火事に対し無力であり、根本原因である気候変動を解決するべきだという意見もあり、また野焼きそのものが山火事の原因になる危険が指摘されている[116]。
注釈
- ^ 地力増進法に基づいて定められる地力増進基本指針では、1997年以降の改正により環境保全型農業の推進が加えられ、作物残渣の堆肥化またはすき込み、廃掃法の遵守、廃棄物資材の利用・加工にあたっての環境保全への配慮を求めている[35]。
- ^ 持続農業法では、有機物の循環など持続性の高い農業生産方式を実践する農業者を認定し、資金支援や都道府県の環境ラベリング制度において優遇措置を設ける。
- ^ 国際連合食糧農業機関(FAO)で示されたGAP原則[36]や農林水産省GAP共通基盤ガイドライン(またその先鞭となった農業環境規範)をはじめ、多くのGAP規範・規準では、作物残渣など副産物の循環的な利用や環境汚染の最小化を求めている[37]。2018年度には環境保全型農業直接支払の要件として国際水準GAPの実施が定められた[38]
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- ^ Jennifer Smith (2020年3月26日). “Increased coronavirus cases spark B.C.-wide burning restrictions”. Victoria News. Black Press Group. 2020年4月15日閲覧。
- ^ “オーストラリア北部アーネムランドの「野焼き」による景観管理”. 里なび. 環境省. 2019年12月23日閲覧。
- ^ 【有為転変】第139回 山火事をどう抑える?
関連項目
外部リンク
- FAOSTAT / Data / Burning - Savanna - 全世界のサバンナ、灌木地、草原の野焼きによる温室効果ガス排出データ(国際連合食糧農業機関)
- FAOSTAT / Data / Burning - Crop Residues - 全世界の作物残渣の野焼きによる温室効果ガス排出データ(国際連合食糧農業機関)