スベンスマルク効果

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内, 検索

スベンスマルク効果(スベンスマルクこうか)とは、宇宙空間から飛来する銀河宇宙線(GCR)が地球のの形成を誘起しているという仮説である[1][2]。原理的には霧箱の仕組みを地球大気に当てはめたものであり、大気に入射した高エネルギー宇宙線は空気シャワー現象によりミュー粒子などの多量の二次粒子を生じさせ、その二次粒子を核として雲の形成が促進される効果を指す。それが温暖化の要因になっている可能性を主張する意見がある一方、その影響量が特筆すべき規模かどうかについては疑義が指摘されており[3]IPCC第4次評価報告書でも証拠不十分として採用されていない[4]。また宇宙線の量と温暖化との相関性は信頼性の低い仮説に留まる[3]一方、近年は複数の研究によって否定的な結果が報告され[5][6][7]、宇宙線の気候への影響はあっても無視できると結論づけられている[8]

目次

[編集] 概要

太陽磁場は宇宙線が直接地球に降り注がれる量を減らす役割を果たしている。そのため、太陽活動が活発になると太陽磁場も増加し、地球に降り注がれる宇宙線の量が減少する。この説はその結果、地球の雲の量が減少し、アルベド(反射率)が減少した分だけ気候が暖かくなった可能性を指摘した。

1998年にジュネーヴCERN素粒子物理学研究所のジャスパー・カービーJasper Kirkby)により大気化学における宇宙線の役割を調査するためにCLOUD[9]と呼ばれる実験が提案され、本格的なデータが得られるのは2010年くらいとされていた。また小規模なSKYと呼ばれる実験がヘンリク・スベンスマルクHenrik Svensmark)により行われた[10]。2005年の実験では、空気中において宇宙線によって放出された電子が雲の核形成の触媒として作用することが明らかとなった。このような実験により、スベンスマルクらは宇宙線が雲の形成に影響を与えるかもしれないとの仮説を提案した。しかし2011年、CERNのCLOUD実験でも、実際に雲を形成できるような大きさの水滴の生成は確認できていない[11]

また宇宙線の量に関して、温暖化を説明できるような長期的傾向が見られず、主張に用いられている計算手法やデータにも疑義が指摘されている[3]IPCCの第三次評価報告書(WG1 第六章)および第四次評価報告書(WG1 第二章)でもいずれも証拠が不十分と指摘され、採用されていない[12][4]

2008年4月、J.E.Kristjanssonらは雲量の観測結果に宇宙線との関連性が見られないとの調査結果を発表し[5]、「これが重要だという証拠は何もない」と指摘している[6]。またA.Seppalaらはその影響が極地方に限定されるであろうことを指摘し、全地球規模での影響も限られるであろうと述べている[6]。さらに2009年2月にはCalogovicらにより、Forbush Decreaseと呼ばれる宇宙線の変化現象に対する雲量の応答を調べた結果「どのような緯度・高度においても、対応する雲量の変化は見られない」と報告されている[7]。 2011年には、複数の検証結果に基づいたレビューにより、実際の雲量への宇宙線の影響は確認できず、地球規模での気候への影響はあっても無視できる程度であると結論づけられている[8]

[編集] 脚注

[ヘルプ]
  1. ^ H. Svensmark et. al. (1997). “Variation of cosmic ray flux and global cloud coverage—a missing link in solar-climate relationships”. Journal of Atmospheric and Solar-Terrestrial Physics 59 (11): 1225. doi:10.1016/S1364-6826(97)00001-1. http://www.dsri.dk/~hsv/9700001.pdf. 
  2. ^ H. Svensmark (1998). “Influence of Cosmic Rays on Earth's Climate”. Physical Review Letters 81 (22): 5027. doi:10.1103/PhysRevLett.81.5027. http://www.dsri.dk/~hsv/prlresup2.pdf. 
  3. ^ a b c 地球温暖化懐疑論批判、明日香壽川他、東京大学、2009年
  4. ^ a b 2.7.1.3 Indirect Effects of Solar Variability (IPCC 2007 AR4)
  5. ^ a b [1]
  6. ^ a b c BBC、2008年4月18日 08:48の記事
  7. ^ a b Calogovic, J., C. Albert, F. Arnold, J. Beer, L. Desorgher, and E. O. Flueckiger (2010), Sudden cosmic ray decreases: No change of global cloud cover, Geophys. Res. Lett., 37, L03802
  8. ^ a b A.D. Erlykin, A.W. Wolfendale, Cosmic ray effects on cloud cover and their relevance to climate change, Journal of Atmospheric and Solar-Terrestrial Physics, Volume 73, Issue 13, August 2011, Pages 1681-1686
  9. ^ CLOUD Proposal Documents
  10. ^ H. Svensmark (2007). “Cosmoclimatology: a new theory emerges”. Astronomy & Geophysics 48 (1): 1.18. doi:10.1111/j.1468-4004.2007.48118.x. http://www.spacecenter.dk/research/sun-climate/Scientific%20work%20and%20publications/svensmark_2007cosmoClimatology.pdf. 
  11. ^ Jasper Kirkby et al., Role of sulphuric acid, ammonia and galactic cosmic rays in atmospheric aerosol nucleation, Nature 476, 429–433, 25 August 2011
  12. ^ 6.11.2.2 Cosmic rays and clouds (IPCC 2001 TAR)

[編集] 関連記事

[編集] 参考文献

  • Henrik Svensmark and Nigel Calder, "The Chilling Stars: A New Theory of Climate Change", Totem Books, 2007 (ISBN 1-840-46815-7)

[編集] 外部リンク

個人用ツール
名前空間

変種
操作
案内
ヘルプ
ツールボックス