二酸化炭素貯留

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

二酸化炭素貯留(にさんかたんそのちょりゅう)とは、気体として大気中に放出された、あるいは放出される直前の二酸化炭素を人為的に集め、地中水中などに封じ込めること、また、その技術のことである。CO2貯留、二酸化炭素地中(水中)固定、二酸化炭素地中(水中)隔離、炭素隔離など、さまざまな名称がある。

光合成によるものなど、生物による二酸化炭素の吸収と貯留は、炭素固定と呼ばれ区別される。

目次

[編集] 概要

二酸化炭素の貯留に関しては、二酸化炭素の回収方法と貯留方法にそれぞれいくつかの種類がある。

回収方法として代表的なものの1つが、火力発電所工場などで燃料燃焼によって排出される二酸化炭素を回収するものである。二酸化炭素の回収・貯蔵(CCS、carbon capture and storage)、二酸化炭素隔離、炭素隔離などと呼ばれる。また、大気中に含まれる二酸化炭素を集めて貯留する方法、木材など将来二酸化炭素を放出するもととなる物質を集めて貯留する方法などもあるが、いずれも技術的に容易ではなく、回収効率や大気中二酸化炭素濃度の削減効果が高くない。

貯留方法としては、大気中へ染み出るリスクが小さい、地中の帯水層への封入、地中の油田などに封入することで採掘効率を上げる方法や、河川海洋への溶解深海底で水ハイドレートとして沈着させる方法などがある。油田への封入が実用化されているほかは、多くがまだ研究段階にある。

以上のような方法で二酸化炭素を貯留する最大の目的は、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの1つである二酸化炭素の大気中濃度を下げることである。今後世界各国で温室効果ガスの削減目標が課されることになれば、二酸化炭素の貯留によって大量の二酸化炭素排出が削減されるだろうという見方もある。

しかし、貯留に際して、二酸化炭素が十分に封じ込められるのかどうかといった問題、海中への封じ込めの際に急激な上昇流が発生し作業船が転覆するなどの危険性もある。

[編集] 回収方式

[編集] 大規模排出源での回収

工場発電所ガス田油田鉱山など、二酸化炭素を大量に排出する場所で回収を行う。回収の効率は良い。

[編集] 分散型排出源での回収

自動車航空機船舶発電機家庭など、少量ながら発生源が多数あるものから回収を行う。回収の効率は悪い。

[編集] 技術的に見た回収手法

[編集] 化学吸収法

[編集] アミン法

二酸化炭素のみを吸収するようなアルカリ性の溶液に、二酸化炭素を吸収させて回収する手法。溶液にはアミン炭酸カリウム水溶液などを用いる。実証が行われており、実用化に向けて研究が進められている。

[編集] 固体

二酸化炭素のみを吸収するような固体に、二酸化炭素を吸収させて回収する手法。固体にはリチウムシリケート酸化亜鉛などを用いる。

[編集] 物理吸収法

高い圧力をかけて、溶解度を上げた液体に二酸化炭素を吸収させて回収する手法。排気ガスからの回収については実用化例が少ない。

[編集] 膜分離法

多孔質の膜にガスを通し、分子ふるいとして用いたり、拡散速度の違いを利用するなどして、二酸化炭素を分離して回収する手法。高分子セラミックなどの膜を用いる。一部実用化例がある。

[編集] 物理吸着法

ガスを吸着剤に触れさせ、二酸化炭素のみを吸着させて回収する手法。圧力スイング式吸着(PSA)法、熱スイング式吸着(TSA)法、圧力温度スイング式吸着(PTSA)法などの方法がある。吸着剤にはゼオライト活性炭アルミナなどを用いる。一部実用化例がある。

[編集] 深冷分離法

ガスを圧縮冷却し、蒸留によって二酸化炭素を分離して回収する手法。液化二酸化炭素としての回収は実用化されている。

[編集] ハイドレート分離法

二酸化炭素ハイドレートが生成しやすい環境下に置くことで、ハイドレート化させた高濃度の二酸化炭素を回収する手法。

[編集] 貯留手法

[編集] 地中隔離法

[編集] 炭層固定

地中の石炭層に二酸化炭素を封入し、層内の圧力を高めて資源としてのメタンを回収し、代わりに炭層に二酸化炭素を吸着させる手法。

[編集] 帯水層貯留

地中の帯水層に高圧の二酸化炭素を封入し、地下水に溶解させるなどして固定・貯留する手法。液体または固体として封入する。

[編集] 油層・ガス層貯留

地中の油層ガス層に二酸化炭素を封入する手法。採取が行われている油層やガス層に封入することで層内の圧力を高めて産出量の増加に利用する石油増進回収法(Enhanced Oil Recovery, EOR)と、採取がされていない油層やガス層に封入した後密閉する手法がある。

[編集] 鉱物化

二酸化炭素を、封入した地層内で反応させ、鉱物化させて固定する手法。蛇紋岩層への固定、高温の岩石への固定などがある。技術的には研究段階にある。

[編集] ハイドレート貯留

海底の層に二酸化炭素を封入し、ハイドレート化させて貯留する手法。技術的には研究段階にある。

[編集] メタンへの変換

二酸化炭素を、封入した地層内で、メタン菌を利用してメタンにして貯留する手法。技術的には研究段階にある。

[編集] 海洋隔離法

[編集] 溶解・希釈

大規模排出源で回収された二酸化炭素を海洋に注入する手法。パイプラインを通して海洋の表層・中層に注入し溶解させる手法と、タンカーなどで輸送して海洋の中層・深層に注入し希釈させる手法とがある。前者では気体または液体、後者では液体として注入する。技術的には研究段階にあるが、パイプライン式はコストが安くなると予想されており、実現性は高いとされている。

[編集] 海底貯留

大規模排出源で回収された二酸化炭素をタンカーなどで輸送して、深海底に液体として注入し貯留する手法。技術的には研究段階にある。

[編集] 分解法

[編集] プラズマ分解法

二酸化炭素にプラズマを照射し、炭素一酸化炭素に分離する手法。温室効果ガス削減のためには電源を再生可能エネルギーとする必要がある。

[編集] 金属と反応させる方法

精製した金属に二酸化炭素を触れさせた後、水素と反応させて炭素として分離する手法。金属にはマグネタイトマグネシウムを用いる。温室効果ガス削減のためには、水素の精製に際して再生可能エネルギーを用いたり、再生可能な資源を用いることが必要。

[編集] メタンを利用する方法

酸化金属に二酸化炭素とメタンを触れさせ、化学反応により炭素とにして分離する手法。エネルギー効率が悪い。

[編集] 化石燃料の分離

化石燃料を炭素と水素に分離し、炭素は地中に封入、水素をエネルギーとして利用する手法。エネルギー効率が悪い。

[編集] 化学製品への利用

[編集] 炭酸塩固定

二酸化炭素を炭酸塩として固定する手法。アルカリ土類金属であるカルシウム塩マグネシウム塩を利用するものと、珪酸塩アルミン酸塩の風化を促進させてこれを利用するものがある。

[編集] 化学合成への利用

二酸化炭素を、他の物質の合成に利用して工業的に炭素固定する手法。二酸化炭素と水素を触媒反応させてメタノールDMEなどを合成するものや、二酸化炭素とモノマーを共重合させるなどしてポリカーボネートなどの高分子を合成するものなどがある。 所要のエネルギーを再生可能エネルギーとすること、また生成物を燃料として使わないことが必要である。

しかし一方で原子力による水の熱化学分解(IS法)の進歩と天然ガス価格上昇により、CO2を排出せずに在来法並のコストで水から水素/酸素が供給できる目処が立ちつつある[要出典]が、水素は貯蔵運搬が困難なのでCO2を添加して反応熱も原子炉から供給してメタノール合成する研究が行われており、その場合は炭素固定に有効である。

二酸化炭素を超臨界状態とし、その性質を利用して炭酸ジメチルウレタン、ポリカーボネートなどの合成を行うものもあるが、これはエネルギー効率の面から有効とされている。

[編集] 還元

二酸化炭素を還元する手法。電気化学的に行うものと、光触媒錯体を利用した光学的還元とがある。電気化学的なものはエネルギー効率が悪いが、光学的なものは有効とされている。

[編集] バイオリアクターを利用する手法

バイオリアクターとなる生物を利用し、二酸化炭素を用いて有用な物質を生産させる手法。光合成を用いるものは有効とされるが、光合成を用いないものはまだ議論の途上にある。

[編集] 関連項目

[編集] 出典

[編集] 外部リンク