地球温暖化への対応の動き

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概要[編集]

地球温暖化への対策(緩和策)は、下記のような取り組みが既に始まっている。有効性は認められているものの、現状では効果が全く不足しており、さらに強力かつ早期の取り組みが必要であることも指摘されている[1]

政策[編集]

世界各国・各地域の政策面での動き[編集]

エネルギー:

省エネルギー:

  • 自動車の燃費や窒素酸化物の排出量に対して各国で規制が強められている。
  • 家電製品などの消費エネルギー量に対して各国で規制が強められている。

国際協力に関する動き[編集]

地球温暖化の抑制は特定の国や地域の努力だけでは効果が限られるため、国際的な取り組みの必要性が指摘されている(AR4、スターン報告)。

  • 国際的枠組み:
気候変動枠組条約(UNFCCC)…この条約に基づく締約国会議(COP)にて排出削減量などの取り決めが行われ、国際的に大きな影響力を持つ。法的拘束力のある数値目標を定めた京都議定書もここで作成された。
クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)…米国主導で作成された、日本を含む一部の国々による枠組み。
エネルギー安全保障と気候変動に関する主要排出国会議…米国主導で行われている、EU、中国、インドや国連を含んだ会議[2][3]
  • 途上国に対する支援:
AR4やスターン報告において、途上国に対する技術的支援の必要性も指摘されている。
技術支援の国際的枠組みとしてはクリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップIEAなどがあり、主に先進国から発展途上国に対する技術供与という形で、技術協力が始まっている。

日本国内の政策面での動き[編集]

  • 2005年5月、小池百合子環境大臣(当時)は、「夏場の軽装による冷房の節約」をキャッチフレーズにしたクール・ビズを提唱した。この提唱はあっという間に官公庁はもとより企業にも浸透して、彼女の人気も手伝って2005年の流行語にも選ばれた。また冬場は着込むことによって暖房費を節約するウォーム・ビズも同年8月に環境省によって提唱された。
  • 2007年5月、日本はポスト京都議定書の枠組み作りに向けて、当時の首相である安倍晋三美しい星50を国際社会に提案した。しかし自国における具体的な削減目標は提示されなかった。
  • 2008年1月、首相の福田康夫によってクールアース推進構想が発表された。主要排出国がすべて参加する仕組みを作ることや途上国に対する支援の仕組み作り、対策技術への投資などが表明されたが、削減目標は示されなかった。
  • 2008年5月、日本は温暖化ガス排出削減の長期目標を現状比で2050年までに60-80%削減する方針を固めた[4]。しかしIPCC第4次評価報告書などにおいて求められている2020年ごろまでの削減割合(中期目標)については示されなかった[5]
  • 長期目標の設定に対しては一定の評価が得られたものの、G8環境相会合においては中期目標の設定を迫られた[6]。中期目標の不在に対し、国内からも批判が噴出した[7][8][9]
  • 2008年6月9日、福田康夫首相より「福田ビジョン」として排出量削減構想が発表され、2020年までに2005年比で14%減が可能との見通しが示され、具体策にも踏み込んだ内容が発表された[10][11][12]。下記のような対策内容が挙げられている[11]
福田ビジョンの発表は内外から様々な反応を呼んだが、肯定的評価[13]の一方、削減目標の不足や政策の不備など[14]を指摘する批判も多く見られる。詳しくは福田ビジョンを参照されたい。
  • 2008年6月25日、東京都議会CO2の排出削減を義務化する条例を成立した。原油換算で年間1,500キロリットル消費に相当する電力を使う約1,300の大規模事業所は2010年から削減を実施し、2020年までにこの条例成立時点の3年間の平均値より15-20%の削減を目指す。オフィス工場 が削減の対象。排出量取引によっても削減義務量を達成できない事業所には措置命令を出し、それでも達成できない場合は50万円以下の罰金を科す。[15][16] 法令条例での義務化は日本で初めてのこと。
  • 2008年頃からスーパー等で配られるレジ袋を減らす為買い物用袋を持参する所謂「マイバッグ運動」が広がり、レジ袋を有料化とした地方自治体も増えている。
  • 2007年度の日本の排出量は基準年比+8.7%であり、京都議定書の約束を満たすには約14%の削減が必要となった[17]。2008年10月に「中期目標検討委員会」[18]による中期目標の検討が始められたが、2008年12月の時点ではコストを恐れる意見も相次いだ[19][20]
  • 世論調査では、1990年比で4%増~25%減の6案のうち、7%減(2005年比-14%)を支持する意見が最も多く見られた[21]
  • 2009年6月、麻生太郎首相は2020年の温室効果ガス削減の中期目標を、「真水」分で1990年比で-8%(2005年比で-15%)とすると発表した[22]。これは外国からの排出枠購入や森林による吸収分を含まない数値である[23]
日本の目標に対しては、国内外から様々な反応が出ている。
  • 排出権枠の購入を含まない純減分であることに対しては一定の評価も見られる[24]
  • EUはより大きな削減幅を求めており、2005年比で-15%だけでは先進国間での合意が難しいとの指摘もある[24]
  • 環境NGOは地球温暖化の緩和に不十分だとして、より大きな削減幅を求めている[25]
  • 途上国には目標設定に対して一定の評価を示す意見も見られる一方、削減幅が不十分として批判の声もある[26]
  • 産業面では省エネ家電やエコカーなどへの特需が指摘される一方、途上国も削減義務を負わなければ産業の空洞化が進むとの懸念も見られる[27]
  • むしろビジネスの機会になるとの指摘も見られる[28][29]
  • 2009年6月、自民党は2050年の目標として「60~80%削減」を明記した低炭素社会法最終案を固めた[30]
  • その一方で、2009年3月に政府与党(自民党公明党)は世界金融危機後の景気刺激策として高速道路土休日1000円乗り放題をに決定したが、これは公共交通機関からマイカーへのシフトを促しCO2排出を増大させる可能性のあるもので、アメリカ合衆国オバマ大統領韓国李明博大統領の唱える「グリーンニューディール政策」とは正反対の政策である。
  • 日本の地球温暖化対策は個人や事業所の協力に頼るところが多く[31]、政府が本気で対策で乗り出しているとは言い難い。また官庁や財界の利権や景気対策の為、地球温暖化を助長する政策すらとっており(例:高速道路のETC大幅割引等)、日本国内では経済刺激策の影でCO2削減の政策は完全に形骸化している。それを打開する為政府は闇雲に諸外国と排出量取引を進めている有様である[32]
  • 2009年の衆議院総選挙民主党が政権を取り、首相になった鳩山由紀夫ニューヨーク国際連合本部で開かれた国連気候変動サミットで温室効果ガスの25%削減を表明したが、あまりにもその削減量が多すぎることから産業界から疑問の声が出ており、更に具体的な実行策は示さずむしろ高速道路料金無料化など削減に逆行する政策を推し進めるなどその実現に対して疑問符が投げかけられている。二酸化炭素排出量25%削減という2009年の鳩山プランと並行して、温暖化対策としての原子力発電の促進も議論された。二酸化炭素を排出しない原子力エネルギーは日本の電力需要を満たすキーであることを鳩山は認めており、鳩山内閣として国会にて地球温暖化対策基本法を可決させる予定でいた。環境大臣在任中の小沢鋭仁もこの法案に関して、原発の記載の必要を唱えていた[33]。しかし当時の内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全担当)であった福島みずほは、地震が頻発する日本における原発施設の安全性に懸念を示しており、この法案の閣議決定をめぐって鳩山と対立していた[34]

結局、鳩山プランは2013年に安倍内閣によって取り消された[35]

民間レベルでの活動[編集]

  • ドイツの産業界は炭素の価格に応じた影響を分析したレポート[36]を作成し、政策提言を行っている[37]。エネルギーコストの増加など様々な影響に対する配慮を求めてはいるものの、政府の挑戦的目標を「はっきりと」(expressly)支持する、と表明している(P.45)。このレポートでは排出権取引炭素税固定価格買い取り制度(フィードインタリフ制度)、各種の規制などの政策の効果や影響も織り込まれている。特に鉄鋼産業などについては、競争力維持の観点から、政策面での国際協調の重要性が指摘されている。
  • 日本の経団連炭素税(環境税)や排出権取引などの導入に反対してきた[38]が、排出権取引については2008年はじめに容認の姿勢に転換した[39]。しかし目標達成までの具体的道筋を提案するまでには至っていない。
  • 2008年1月、IPCCのラジェンドラ・パチャウリ議長は個人ができる対策として、二酸化炭素を大量に排出することになる肉の消費を減らし、自転車を使い、必要なものだけを買うことだと述べた[40]

日本における活動[編集]

日本においては、京都議定書の約束期間に突入しても削減公約とは逆に1990年比で排出量を増やすなどしており、対策の弱さが国内外から指摘されている。

  • 2008年5月、国立環境研究所などが中心となって「低炭素社会に向けた12の方策」[41]を発表し、日本でも1990年比で温暖化ガスの排出量を70%削減できるポテンシャルがあることを指摘している。
  • 2009年1月に温室効果ガス観測衛星"いぶき"を打ち上げ、米国の衛星と共にCO2やメタンの排出を宇宙より観測する予定である。

脚注[編集]

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  1. ^ たとえばIPCC第4次評価報告書スターン報告に明確な指摘がある。
  2. ^ エネルギー安全保障と気候変動に関する主要排出国会議-米国議員、および、非営利団体とシンクタンクの反応- (NEDO ワシントン事務所)
  3. ^ 「エネルギー安全保障と気候変動に関する主要排出国会議」についてのブリーフィング (NEDO ワシントン事務所)
  4. ^ Nikkei Net、2008年5月11日 7時2分の記事
  5. ^ Nikkei Net、2008年5月13日 7時3分の記事
  6. ^ ロイター、2008年5月25日
  7. ^ 毎日新聞、2008年5月27日の社説
  8. ^ 小池環境相へのインタビュー、朝日新聞、2008年5月29日
  9. ^ NHK、2006年6月8日
  10. ^ Nikkei Net, 2008年6月9日の記事
  11. ^ a b 福田内閣総理大臣スピーチ「低炭素社会・日本」をめざして、首相官邸、2008年6月9日
  12. ^ 毎日新聞、2008年6月10日の記事による要旨まとめ
  13. ^ MSN Sankei、2008年6月10日の社説
  14. ^ 日経エコロミー、2008年6月19日の記事
  15. ^ 読売新聞、2008年6月26日の記事
  16. ^ CO2:東商が削減を容認 都条例改正、評価の意見書毎日新聞
  17. ^ 、2007年度(平成19年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について、環境省、平成20年11月12日
  18. ^ 地球温暖化問題に関する懇談会、首相官邸
  19. ^ 温室効果ガス削減:「京都後」議論遅れ 「中期目標」の方向性定まらず、毎日新聞、2008年12月29日
  20. ^ 中期目標設定、最大の焦点 「ポスト京都」正念場、Business i
  21. ^ 温室効果ガス削減、「7%減目標」が最多 懇談会が世論調査、産経ニュース、2009.5.24
  22. ^ 日本の温室効果ガス削減の中期目標、2020年に2005年比15%減=麻生首相、ロイター、2009年 06月 10日
  23. ^ 温室効果ガス「05年比15%減」 中期目標発表、朝日新聞、2009年6月10日
  24. ^ a b 中期目標15%減 「各国で公平な負担」へ主導権、フジサンケイ ビジネスアイ、2009年6月11日
  25. ^ 日本の中期目標をめぐる国内外の声、Make The Rule"
  26. ^ 日本の温暖化ガス削減目標、途上国など「数値は不十分」
  27. ^ 経済空洞化加速の懸念 温室ガス削減目標に広がる反発、CNET、2009年6月11日
  28. ^ 社説:中期削減目標 意志と理念が伝わらぬ、毎日新聞、2009年6月11日
  29. ^ WWF「最低でも25%減に」 日本の中期目標で、47News、2009年6月9日
  30. ^ 「50年60~80%減」を明記 自民の低炭素社会法最終案
  31. ^ 2009年6月の麻生首相の温室効果ガス削減の中期目標発表の際も、国民にはそれ相応の負担を求めると発言しながら政府の具体的な実行策等については何も発表はなかった。
  32. ^ チェコ共和国とのグリーン投資スキーム(GIS)実施に向けた割当量購入契約の締結について 環境省 報道発表資料 2009年3月31日
  33. ^ 温暖化法案、原発利用を明記=連立相手の社民にも配慮-小沢環境相 yahoo!ニュース 時事通信 2010年2月23日
  34. ^ Mr. Hatoyama's Climate Headache Opinion Asia, The Wall Street Journal, March 8, 2010
  35. ^ A Change of Carbon Climate in Japan Opinion, The Wall Street Journal, November 20, 2013
  36. ^ Costs and Potentials of Greenhouse Gas Abatement in Germany, McKinsey&Company, Inc., September 2007
  37. ^ BDI Annual Report 2008
  38. ^ 朝日新聞、2007年12月11日00時39分の記事
  39. ^ ロイター、2008年2月26日 05:46JSTの記事
  40. ^ 「温暖化防止にライフスタイルの変革を」、IPCC議長 国際ニュース (AFPBB News、2008年1月22日)
  41. ^ 低炭素社会に向けた12の方策国立環境研究所京都大学立命館大学みずほ情報総研など、2008年5月22日