児童労働

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アメリカの写真家ルイス・ハインによる、作者不詳の風刺画の写真。1912年

児童労働(じどうろうどう)とは、15才に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの者が労働することを指す[1]

日本では、労働基準法など一部の法令によって児童労働が制限されている。具体的には15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了する日以降からを適法な労働者としている。13歳以上の15歳以下(15歳に達した場合は以後の最初の3月31日が終了する日まで)の者については新聞配達などの年少者にとって有害でなく軽易な労働を修学時間外にさせる条件を満たした場合は労働基準監督署の許可をもとにを認めているが、13歳に満たない者の就労については、児童福祉を侵害するとして、映画の製作、演劇の事業の労働(子役など)を修学時間外にさせることを除いて認めていない。このように学齢期の労働をできる限り回避する規定になっている。なお、労働基準法等の法律用語では「児童労働」の語は使用されていない(「年少者」を使用している)。

しかしながら、上記の規制はあくまで労働基準法によるものであるから、雇用関係のない方式での就労においては上記の規制の適用外となる。

児童労働を規制する国際条約[編集]

児童労働は、国際条約で定義・禁止され、世界の大半の国々が条約を批准し、児童労働を禁止する法律を有する。国際労働機関(ILO)が1973年に「最低年齢条約」を作り、働いてよいのは義務教育を終えてからと定め、1999年に「最悪の形態の児童労働条約」によって子供にとって特に搾取的な労働を明確に定め、最悪の形態の労働に就く18歳未満の子供たちを優先的に保護することを定めた。1989年に国連で採択された「子どもの権利条約」には、18歳未満が子供であること、子供には教育を受ける権利や経済的搾取を含むあらゆる搾取や暴力・虐待から保護される権利があるなど、54の条文で子供の基本的人権が定義されている。

最低年齢条約(国際労働機関(ILO)第138号条約 1973年)[編集]

働きはじめてよい最低年齢を定めた国際条約で年齢や労働の種類によって最低年齢が異なる。以下は就業が認められる最低年齢を示す。2013年3月現在、ILO加盟国183カ国中、165カ国が批准。

  • 原則として、おとなと同じように働いてよいのは義務教育を終えてから(一般的に15歳。途上国は例外的に14歳でも可)
  • 軽易な労働は13歳から(途上国は12歳でも可)
  • 健康・安全・道徳を損なうおそれのある危険な労働は18歳から。健康・安全・道徳が保護され、適切な職業訓練を受ける場合は16歳から。

最悪の形態の児童労働条約(国際労働機関(ILO)第182号条約 1999年)[編集]

児童労働の中でも最も搾取的な労働を「最悪の形態」と定め、義務教育を終えたとしても、無条件ですぐに子供を労働から引き離し保護することを定義。「最悪の形態」とは、以下の4つに分類される。2013年3月現在、ILO加盟国183カ国中、177カ国が批准。日本は2001年6月18日に批准。[2]

  • 強制労働、債務労働、農奴、紛争での子供兵士(強制的な徴兵)、人身売買
  • 買春、ポルノに子供を使うこと
  • 麻薬の売買などの犯罪行為に子供を使うこと
  • その他、子供の健康・安全・道徳を外資、心身の健全な成長を妨げる危険で有害な労働(虐待にさらされる労働、炭坑内、水中、危険な高所や閉所での労働、危険な機械を使用する労働、化学物質や高温、騒音にさらされる労働、長時間労働、夜間労働、不当に拘束される労働など。多くは国の法律で別途定められている)

児童の権利に関する条約(国際連合 1989年)[編集]

児童(18歳未満の者)の権利について定められている国際条約である。18歳未満を「子供」と定義し、生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利など、特別な保護と援助を必要とする子供にとって、守られるべき基本的人権を明文化している。2013年3月現在、140カ国が署名。193カ国が締約。日本は1994年4月22日、158番目に批准。

国際的には児童労働を何歳以下の労働とするのかは明確にされていない。国際労働機関(ILO)の「就業の最低年齢に関する条約(第138号)」では、労働を禁止する最低年齢を「義務教育年齢及び、いかなる場合にも、15歳を下回らないもの」とし、「健康、安全又は道徳を損なう恐れのある業務につかせることができる最低年齢は、18歳を下回らないもの」としている。国連の「子ども(児童)の権利条約」や「奴隷制度、奴隷取引並びに奴隷類似の制度及び慣行の廃止に関する補足条約」では18歳未満を対象としている。これらから、従来は、狭く捉えても15歳未満を、広く捉えれば18歳未満が児童とされている。このため、日本における高校生のアルバイトも児童労働の対象年齢以下のため、労働の内容によっては国際的には問題になることもある。ILOの統計では、5~14歳の労働の統計があり、それでは5~14歳の24.7%にあたる2億5千万人が働いているとされている。これに統計のない5歳未満、5~14歳でも家事労働で働く者を含めるとその数倍に達すると推測されている。

児童労働者数[編集]

ごみ再資源化の仕事をする少年。ホーチミン市2006年7月23日

2013年発表[編集]

2013年9月、国際労働機関(ILO)が発表した報告書“Marking Progress against Child Labour”(「児童労働撤廃への前進を記す」)によると、全世界の児童労働者推計は1億6795万人となり、2008年当時の推計と比べ4700万人減少した。国際労働機関(ILO)がはじめて世界統計を発表した2000年の推計2億4600万人から、児童労働者は3分の2に減少。2012年の推計1億6795万人は、世界の子供人口(5~17歳)の10.6%にあたり、世界の子供のおよそ9人に1人が児童労働をしている計算になる。そのうち子供兵士や人身売買を含む危険・有害労働に従事する子供は8534万人に上り、ILOが目標としている「2016年までの最悪の形態の児童労働の撤廃」は、このままでは達成できないと指摘。[3]

2010年発表[編集]

2010年5月、国際労働機関(ILO)が発表した「グローバルレポート“Accelerating action against child labour”(邦題「反児童労働行動の加速化」)」によると、2008年時点の児童労働者数(5歳~17歳)は2億1500万人にのぼる。[4](※同レポートでは、2006年に発表された児童労働者数は見積りが少なすぎたとして、2004年時点の児童労働者数を2億1800万人から2億2200万人に訂正。)

2000年、2億4600万人から2004年の変化を見みると、5歳から17歳の人口が世界で2.3%増えているのに対して、児童労働者数は11.3%減、危険な児童労働者数は25.9%減少している。地域別に見ると、アジアは微減、ラテンアメリカは大幅に減少している。アフリカは、児童労働者数は増えているが、5歳から17歳の人口に対する児童労働者の割合は2%減少している。

児童労働とみなされるケース[編集]

働く形態によって子供の活動が児童労働と見なされたり見なされなかったりする。例えば、見習の状況は訓練とされ児童労働と見なされない場合がある。また、学校に通いながら働いている場合は、統計上、児童労働者に入れられない場合が多い[要出典]。しかしながら、見習や学校に通いながら働いている者も児童労働に含めて考えるべきものである。また、児童買春少年兵士についても国際労働機関(ILO)では児童労働の形態として認めている。

ただし、一般的な家事労働やアルバイト程度のものは児童労働とは見なされない[誰によって?]が、このような場所でも劣悪な労働条件で働く者もおり、保護の対象と考えるべきとされる。

児童労働の例[編集]

よく知られている児童労働の例としては、ネパールカトマンドゥ地域、インドウッタル・プラデシュ州、パキスタンでのカーペット産業による労働、ブラジルサトウキビ畑やアフリカ諸国のカカオ畑など農場での労働、フィリピンの首都マニラスモーキー・マウンテン(閉鎖)を代表するスカベンジャータイバンコクにおける児童買春などがあげられる。一見、児童労働に縁のない国際的な大企業でも末端の納入業者などが関与することもあり、過去には1990年代のナイキのスポーツシューズ、サッカーボール、2007年のGAPの衣料品[5]、2014年のサムスン電子の電子部品[6]といった製品が取りざたされ、各社が対応を迫られた例がある。

1999年に国際労働機関(ILO)が定めた第182号条約『最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約』では、18歳未満の児童による最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃を確保するための即時の効果的な措置を求めている(2010年現在、163ヶ国が批准)。最悪の形態の児童労働とは、人身売買、強制労働(紛争への徴収を含む)、債務奴隷などの奴隷労働など、売春、ポルノ製造、薬物の生産や取引、ならびに児童の健康や安全、道徳を害するおそれがある労働をいう。

日本の児童労働[編集]

日本で毎年公表されている労働基準監督年報で労働基準法違反の状況を見ると、日本においても相当数の児童労働者が存在していることは疑いのない状況である。日本でも労働災害にあう者も少なくない。児童労働に関係する事件の一覧である。

  • 平成24年
    • 14才の児童の死亡災害[7]
  • 平成26年
    • 12才の児童による接客業。[8]

ただし、日本ではあらゆる児童労働が違法となるわけではないため、児童労働は上記に限られているわけではない。また、これは事件とは言い難いが、就労における年齢制限の対象外職種において、誹謗中傷の存在を理由に退職したことが報道されたことがある。[9]

児童労働のデメリット[編集]

東京都台東区に事務所を構えるNGOのACE(エース)は、児童は成長をする時期であり、重労働を課せられることで健康が損なわれる、教育を受けられないため最低限の読み書きができなくなる、衛生に関する知識を身につけられないため自分自身を守ることができなくなるため、こどもの未来を奪うことといえるとしている。[10]

児童労働の背景[編集]

児童労働の主要な要因は貧困であるとされることが多いが、最近の研究では、絶対的な経済的貧困状態よりも、その地域の経済格差による貧困感の方が児童労働の主要な要因であるとされるものもある。 日本においても15歳に満たない子供の労働は少ないものの存在するが、日本においても絶対的な貧困状態で子供が労働させられる例はほとんど見当たらない。相対的な貧困感が児童労働を発生させるという説明と符合するところである。しかし、近年では日本でも貧困度合いが進み相当の児童労働者が存在し、社会問題化している。日本はすでに児童労働に関しては対策を求められる国に位置づけられている[誰によって?]

関連する作品[編集]

関連文献[編集]

脚注[編集]

児童労働に従事する5-14歳の子供の比率。 黒色40%以上、赤色30-40%、橙色20-30%、黄緑色10-20%、淡黄色0.01-10%、灰色データなし。世界銀行、2005年[11]
  1. ^ とはいっても、誰か(雇用主)に雇用されて労働しているとは限らず、自らゴミ拾いや靴磨きなどの労働を始める例もある。
  2. ^ 最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約
  3. ^ ILO says global number of child labourers down by a third since 2000
  4. ^ Accelerating action against child labour. Report of the Director-General, International Labour Conference, 99th session, 2010
  5. ^ “米GAP、インドの下請け業者で児童労働か”. AFPBBNews (フランス通信社). (2007年10月29日). http://www.afpbb.com/articles/-/2304225?pid=2291600 2014年7月21日閲覧。 
  6. ^ “サムスン、中国工場で児童労働の「証拠」 取引を一時停止”. AFPBBNews (フランス通信社). (2014年7月14日). http://www.afpbb.com/articles/-/3020475 2014年7月21日閲覧。 
  7. ^ 工事現場でアルバイト、壁崩れ中3男子重体 群馬:日本経済新聞
  8. ^ [1]2014年3月31日閲覧
  9. ^ http://news.nicovideo.jp/watch/nw1025078?ver=video_q 2014年4月12日閲覧
  10. ^ http://acejapan.org/childlabour/?gclid=CNbn1LSQ6LoCFeZfpgodMT0AKQ 2013年11月16日閲覧
  11. ^ Percentage of children aged 5-14 engaged in child labour

関連項目[編集]

外部リンク[編集]