豪雪地帯
豪雪地帯(ごうせつちたい)とは冬に大量の積雪がある地域のことで、日本においては特に豪雪地帯対策特別措置法に基づき指定された地域を指す。
定義
豪雪地帯対策特別措置法は、「積雪が特にはなはだしいため、産業の発展が停滞的で、かつ、住民の生活水準の向上が阻害されている地域」(第1条)のうち、「国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣」が「前条に規定する地域について、積雪の度その他の事情を勘案して政令で定める基準に従い、かつ、国土審議会の意見を聴いて、道府県の区域の全部又は一部を豪雪地帯として指定する。」(第2条第1項)と定義している。
さらに同法は、「国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣」は、豪雪地帯のうち「積雪の度が特に高く、かつ、積雪により長期間自動車の交通が途絶する等により住民の生活に著しい支障を生ずる地域」について「国土審議会の議決を経て国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣が定める基準に従つて、豪雪地帯として指定された道府県の区域の一部を特別豪雪地帯として指定する。」(第2条第2項)としている。
これらの指定において、同法では「国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣は、豪雪地帯又は特別豪雪地帯の指定をしたときは、これを公示しなければならない。」(第2条第3項)としている。
本法により豪雪地帯(および特別豪雪地帯)の指定を受けた地域においては、道府県豪雪地帯対策基本計画が策定、適用され、交通通信、農林業、義務教育、医療などにおいて、積雪期のこれら機能の維持対策が施行される。
豪雪地帯(および特別豪雪地帯)の指定基準
「豪雪地帯対策特別措置法」に基づく「豪雪地帯」あるいは「特別豪雪地帯」の地域指定については、それぞれ、同法の下位政令である「豪雪地帯の指定基準に関する政令」に定める基準(以上、豪雪地帯の指定)あるいは同法第2条第2項に基づき国土審議会の議決を受けた「特別豪雪地帯の指定基準」(以上、特別豪雪地帯の指定)に基づいて行われる。
豪雪地帯の指定基準に関する政令
本政令では、豪雪地帯の指定基準について以下のように規定している。
- 豪雪地帯対策特別措置法第二条第一項の指定は、国土交通省令・総務省令・農林水産省令で定める期間における累年平均積雪積算値が五千センチメートル日以上の地域(以下「豪雪地域」という。)の存する道府県又は市町村で次の各号のいずれかに該当するものの区域について行うものとする。
- その区域の三分の二以上が豪雪地域である道府県又は市町村
- その区域の二分の一以上が豪雪地域であり、かつ、当該道府県の道府県庁が所在する市の区域の全部又は一部が豪雪地域である道府県
- 当該市町村の市役所若しくは町村役場又は当該市町村の区域内に存する施設で国土交通省令・総務省令・農林水産省令で定めるものが豪雪地域内にある市町村
- その区域の二分の一以上が豪雪地域であり、かつ、当該市町村の境界線の延長の三分の二以上が前三号の一に該当する道府県又は市町村に接している市町村
特別豪雪地帯指定基準
1971年、国土審議会は「豪雪地帯対策特別措置法」に基づき特別豪雪地帯指定基準を議決した。その後1979年には基準判定に用いる気象統計情報の観測年数・時期等を修正する改定を議決した。本基準は、第一号要件「積雪の度の要件」と第二号要件「積雪による住民の生活の支障の要件」から成る。
豪雪地帯(および特別豪雪地帯)の指定地域
2007年3月31日時点において、日本の国土の約半分である約19万平方キロメートル、自治体数にして24道府県546市町村(全国の約31%)、人口約2千万人(日本の全人口の約16%)が豪雪地帯の指定を受けており、その範囲は北海道・北東北・日本海沿岸部および本州を縦断する山地部に亘る。中国地方西部(島根県)においては、山地部のみが豪雪地帯指定を受け日本海沿岸部はその指定地域外となっている。
これら豪雪地帯のうち、特別豪雪地帯指定を受けている地域は、国土の約20%である約7.5万平方キロメートル、自治体数にして202市町村(全国の約11%)、人口約338万人(日本の全人口の約2.6%)となっている。
豪雪地帯・特別豪雪地帯に指定された地域には除雪や交通・通信の確保、地域の振興などのための豪雪地帯対策基本計画が定められ、行財政上の特別の配慮が行われる。
全域が豪雪地帯に指定されている道県
北海道
- 特別豪雪地帯
- 石狩振興局:石狩市(旧厚田村・旧浜益村に限る)、当別町、新篠津村
- 渡島総合振興局:木古内町、八雲町、長万部町
- 檜山振興局:せたな町(旧大成町を除く)、今金町
- 後志総合振興局:黒松内町、蘭越町、ニセコ町、真狩村、留寿都村、喜茂別町、京極町、倶知安町、共和町、岩内町、神恵内村、積丹町、古平町、仁木町、赤井川村
- 空知総合振興局:岩見沢市(旧栗沢町を除く)、美唄市、赤平市、三笠市、滝川市、砂川市、深川市、月形町、浦臼町、新十津川町、妹背牛町、秩父別町、雨竜町、北竜町、沼田町
- 上川総合振興局:士別市、名寄市、富良野市、鷹栖町、当麻町、愛別町、上川町、東川町、美瑛町、南富良野町、占冠村、和寒町、剣淵町、下川町、美深町、音威子府村、中川町、幌加内町
- 留萌振興局:全域
- 宗谷総合振興局:稚内市、猿払村、浜頓別町、中頓別町、枝幸町、幌延町
- オホーツク総合振興局:津別町、清里町、遠軽町(旧丸瀬布町・旧白滝村に限る)、滝上町、興部町、西興部村、雄武町
- 胆振総合振興局:伊達市(旧大滝村に限る)、豊浦町、洞爺湖町(旧洞爺村に限る)
- 十勝総合振興局:新得町
- 根室振興局:中標津町、標津町
- 豪雪地帯
- 特別豪雪地帯以外の地域
青森県
- 特別豪雪地帯:青森市、弘前市(旧相馬村に限る)、黒石市、五所川原市、十和田市(旧十和田湖町に限る)、平川市(旧平賀町・旧碇ヶ関村に限る)、平内町、今別町、蓬田村、鰺ヶ沢町、西目屋村、野辺地町、東北町(旧東北町に限る)
- 豪雪地帯
- 特別豪雪地帯以外の地域
岩手県
秋田県
- 特別豪雪地帯:横手市(旧増田町・旧山内村に限る)、大館市(旧比内町・旧田代町に限る)、湯沢市、鹿角市(旧八幡平村に限る)、由利本荘市(旧矢島町・旧鳥海町・旧東由利町に限る)、大仙市(旧協和町に限る)、北秋田市(旧森吉町・旧阿仁町に限る)、仙北市(旧角館町を除く)、上小阿仁村、藤里町、美郷町(旧千畑町に限る)、羽後町、東成瀬村
- 豪雪地帯
- 特別豪雪地帯以外の地域
山形県
- 特別豪雪地帯
- 豪雪地帯
- 特別豪雪地帯以外の地域
新潟県
- 特別豪雪地帯
- 豪雪地帯
- 特別豪雪地帯以外の地域
富山県
- 特別豪雪地帯:富山市(旧大山町・旧八尾町・旧山田村・旧細入村に限る)、砺波市(旧庄川町に限る)、南砺市(旧福野町・旧井波町・旧井口村を除く)、黒部市(旧宇奈月町に限る)、上市町、立山町
- 豪雪地帯
- 特別豪雪地帯以外の地域
石川県
福井県
鳥取県
- 特別豪雪地帯:なし(県内豪雪地帯のみ)
- 豪雪地帯
- 県内全域
一部が豪雪地帯に指定されている府県
宮城県
- 豪雪地帯:仙台市(旧宮城町・旧秋保町に限る)、大崎市(旧古川市・旧岩出山町に限る)、白石市、栗原市(旧瀬峰町を除く)、蔵王町、七ヶ宿町、川崎町、加美町(旧小野田町・旧宮崎町に限る)
- 特別豪雪地帯:大崎市(旧鳴子町に限る)
福島県
- 豪雪地帯:福島市(旧松川町・旧信夫村・旧飯野町を除く)、会津若松市、郡山市(旧湖南村に限る)、喜多方市(旧喜多方市・旧塩川町に限る)、天栄村、南会津町(旧田島町に限る)、猪苗代町、会津坂下町、湯川村、会津美里町(旧会津本郷町・旧新鶴村に限る)
- 特別豪雪地帯:喜多方市(旧熱塩加納村・旧山都町・旧高郷村に限る)、下郷町、檜枝岐村、只見町、南会津町(旧舘岩村・旧伊南村・旧南郷村に限る)、北塩原村、西会津町、磐梯町、柳津町、会津美里町(旧会津高田町に限る)、三島町、金山町、昭和村
栃木県
群馬県
- 豪雪地帯:高崎市(旧榛名町・旧倉渕村・旧箕郷町に限る)、渋川市(旧北橘村・旧赤城村を除く)、沼田市(旧白沢村を除く)、榛東村、吉岡町、中之条町、東吾妻町、長野原町、嬬恋村、草津町、高山村、川場村、みなかみ町
- 特別豪雪地帯:片品村
山梨県
長野県
- 豪雪地帯:長野市(旧篠ノ井市・旧松代町・旧川中島町・旧更北村・旧信更村・旧戸隠村・旧鬼無里村を除く)、松本市(旧安曇村に限る)、上田市(旧塩田町・旧川西村・旧丸子町・旧武石村を除く)、飯田市(旧南信濃村に限る)、須坂市(旧東村に限る)、中野市、大町市(旧八坂村を除く)、安曇野市(旧穂高町・旧堀金村に限る)、松川村、飯綱町、小川村
- 特別豪雪地帯:長野市(旧戸隠村・旧鬼無里村に限る)、飯山市、白馬村、小谷村、高山村、山ノ内町、木島平村、野沢温泉村、信濃町、栄村
岐阜県
- 豪雪地帯:高山市(旧荘川村を除く)、関市(旧洞戸村・旧板取村に限る)、山県市(旧美山町に限る)、飛騨市(旧古川町に限る)、本巣市(旧根尾村に限る)、郡上市(旧美並村・旧和良村を除く)、下呂市(旧馬瀬村に限る)、関ヶ原町、揖斐川町(旧坂内村・旧徳山村を除く)
- 特別豪雪地帯:高山市(旧荘川村に限る)、飛騨市(旧古川町を除く)、揖斐川町(旧坂内村・旧徳山村に限る)、白川村
静岡県
滋賀県
- 豪雪地帯:大津市(旧堅田町に限る)、長浜市(旧びわ町・旧湖北町・旧虎姫町・旧高月町・旧余呉町を除く)、米原市(旧山東町・伊吹町に限る)、高島市(旧マキノ町・旧今津町・旧朽木村に限る)
- 特別豪雪地帯:長浜市(旧余呉町に限る)
京都府
兵庫県
島根県
岡山県
- 豪雪地帯:津山市(旧久米町を除く)、新見市(旧哲多町・旧哲西町を除く)、真庭市(旧北房町・旧勝山町・旧落合町・旧久世町を除く)、美作市(旧勝田町・旧大原町・旧東粟倉村に限る)、新庄村、鏡野町(旧富村・旧奥津町・旧上齋原村に限る)、奈義町、西粟倉村
広島県
- 豪雪地帯:三次市(旧君田村・旧布野村・旧作木村に限る)、庄原市(旧庄原市・旧総領町を除く)、廿日市市(旧吉和村に限る)、安芸高田市(旧美土里町・旧高宮町に限る)、安芸太田町(旧戸河内町に限る)、北広島町
世界の豪雪地帯
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世界の豪雪地帯としては、カナダブリティッシュコロンビア州からワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州にかけてのロッキー山脈西部 、アメリカ五大湖のエリー湖南岸、ロシアのカムチャッカ半島、チリのアンデス山脈、ノルウェーの西海岸、トルコからグルジアにかけての黒海南東岸山岳地帯、イラン西部の高地、天山山脈西部などがあげられる。また、中東では突発的な豪雪になることがあり、イスラエルのエルサレム[1]でも1920年1月9~11日には1m以上の積雪記録が残っているほか、ヨルダンのアンマンやシリア北部、イラク北部なども積雪量が多くなる。
北アメリカの豪雪地帯
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- ワシントン州のレーニア山、ベーカー山周辺などのカスケード山脈は世界屈指の豪雪地帯である。ベーカー山の1998~1999年の年間降雪量は1140インチ(2895.6cm)であり、これは世界一の記録である[2]。また、カナダ大西洋側からニューイングランド山地部も豪雪地帯である[3]。東海岸のボストン、ニューヨーク、ワシントンDCなどにけかけての地域も低気圧(ノーイースター)による50~80センチ程度の局地的な大雪となることがあるが普段は雪はそれほど多くはない。
日本と世界各都市における降雪量の比較
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出典:気象庁・気象統計情報、Environment Canada
関連項目外部リンク脚注
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