「高級住宅街」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
Hitsuma (会話 | 投稿記録)
編集の要約なし
4行目: 4行目:
}}
}}
[[File:長町武家屋敷跡3.jpg|thumb|200px|[[近世]]の高級住宅街・[[長町武家屋敷跡]]([[金沢市]])]]
[[File:長町武家屋敷跡3.jpg|thumb|200px|[[近世]]の高級住宅街・[[長町武家屋敷跡]]([[金沢市]])]]
'''高級住宅街'''(こうきゅうじゅうたくがい)とは、一般的に高額な[[住宅]]([[邸宅]]・[[豪邸]])が集中的に分布していることを特徴とする特定の[[都市]]の[[地域]]のことである。'''お屋敷町'''(おやしきまち)、'''邸宅街'''(ていたくがい)とも呼ばれる。その定義は主観的なものであり、要件は国や地域によって異なるが、[[不動産]]の鑑定評価等において大きな[[ブランド]]力を保持していることも事実である。
'''高級住宅街'''(こうきゅうじゅうたくがい)とは、一般的に高額な[[住宅]]([[邸宅]]・[[豪邸]])が集中的に分布していることを特徴とする特定の[[都市]]の地域のことである。'''お屋敷町'''(おやしきまち)、'''邸宅街'''(ていたくがい)とも呼ばれる。その定義は主観的なものであり、要件は国や地域によって異なるが、[[不動産]]の鑑定評価等において大きな[[ブランド]]力を保持していることも事実である。


== 概要 ==
== 概要 ==
定義は多分に曖昧かつ主観的であり、下記の要件についても国や地域・時代によっても認識は多様である。
定義は多分に曖昧かつ主観的であり、下記の要件についても国や地域・時代によっても認識は多様である。


日本においては、国土交通省の「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」では、「住宅地域」を①~④の4つに細分化し、①を「[[敷地]]が広く、街区及び画地が整然とし、植生と眺望、景観等が優れ、[[建築]][[施工]]の質の高い[[建物]]が連たんし、良好な近隣環境を形成する等居住環境の極めて良好な従来から名声の高い地域」と定義する<ref>[https://www.mlit.go.jp/common/001204077.pdf 国土交通省 不動産鑑定評価基準運用上の留意事項]</ref>。これを「高級住宅地域」とする理解が見られる<ref>津村孝『詳解・不動産鑑定評価の教科書』(プログレス,2010)38頁</ref>。
日本においては、国土交通省の「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」では、「住宅地域」を①~④の4つに細分化し、①を「[[敷地]]が広く、街区及び画地が整然とし、植生と眺望、景観等が優れ、建築の施工の質の高い[[建物]]が連たんし、良好な近隣環境を形成する等居住環境の極めて良好な従来から名声の高い地域」と定義する<ref>[https://www.mlit.go.jp/common/001204077.pdf 国土交通省 不動産鑑定評価基準運用上の留意事項]</ref>。これを「高級住宅地域」とする理解が見られる<ref>津村孝『詳解・不動産鑑定評価の教科書』(プログレス,2010)38頁</ref>。


[[固定資産]]評価においては、「敷地が広大で、かつ、平均的にみて、一般住宅よりも多額の建築費を要する住宅の宅地が連続集中している地区」が「高級住宅地区」と定義されている<ref>[http://test.reinet.or.jp/?page_id=64 日本不動産研究所 固定資産評価用語辞典]</ref><ref>[http://daiwakantei.co.jp/daiwawp/system_word/ 大和不動産鑑定 固定資産システム評価 用語集]</ref>。<!-- これらについては日本の場合、「敷地が広く」「建築の施工の質が高い[[建物]]」を「優良な住宅」とされ、「街区及び画地が整然とし、植生と眺望、景観等が優れ」「良好な近隣環境を形成する」等の要件を満たした地域が「居住[[環境]]の極めて良好な地域で従来から名声の高い住宅地域」とされている{{要出典|date= 2017年2月}}。それらの住宅地は一区画の面積が広いため税法上の優遇が受けられないケースが多く、そのため相対的に一区画あたりの地価は高いが、面積あたりの地価は低くなる傾向にある。
[[固定資産]]評価においては、「敷地が広大で、かつ、平均的にみて、一般住宅よりも多額の建築費を要する住宅の宅地が連続集中している地区」が「高級住宅地区」と定義されている<ref>[http://test.reinet.or.jp/?page_id=64 日本不動産研究所 固定資産評価用語辞典]</ref><ref>[http://daiwakantei.co.jp/daiwawp/system_word/ 大和不動産鑑定 固定資産システム評価 用語集]</ref>。<!-- これらについては日本の場合、「敷地が広く」「建築の施工の質が高い[[建物]]」を「優良な住宅」とされ、「街区及び画地が整然とし、植生と眺望、景観等が優れ」「良好な近隣環境を形成する」等の要件を満たした地域が「居住環境の極めて良好な地域で従来から名声の高い住宅地域」とされている{{要出典|date= 2017年2月}}。それらの住宅地は一区画の面積が広いため税法上の優遇が受けられないケースが多く、そのため相対的に一区画あたりの地価は高いが、面積あたりの地価は低くなる傾向にある。


* 「優良な住宅」
* 「優良な住宅」
24行目: 24行目:
立ち並ぶ建物が[[共同住宅]]か[[一戸建て]]かといった形態で高級住宅街を定義できるものではないが、[[高層マンション]]群は、その独自の景観や居住環境から、高級住宅街として定義されないこともある<ref name ="journal">"[https://biz-journal.jp/2019/03/post_27103.html/amp ゴーストタウン化する東京の高級住宅街…富裕層は厄介な広い一軒家より都心タワマンへ]"Business Journal(2019.03.17)</ref>。この問題からしばしば伝統富裕層と新興富裕層の対立構造がメディアなどによって描かれる場合もある<ref name ="journal"/>。
立ち並ぶ建物が[[共同住宅]]か[[一戸建て]]かといった形態で高級住宅街を定義できるものではないが、[[高層マンション]]群は、その独自の景観や居住環境から、高級住宅街として定義されないこともある<ref name ="journal">"[https://biz-journal.jp/2019/03/post_27103.html/amp ゴーストタウン化する東京の高級住宅街…富裕層は厄介な広い一軒家より都心タワマンへ]"Business Journal(2019.03.17)</ref>。この問題からしばしば伝統富裕層と新興富裕層の対立構造がメディアなどによって描かれる場合もある<ref name ="journal"/>。


'''高級別荘地'''は、住宅の用途・目的の違い(「[[日常生活]]のための利用」か「[[余暇]]のための利用」かの違い)を除けば、高級住宅街とほぼ同義である。実際、時代とともに高級別荘地から高級住宅街へと変容した地域も多い。別荘地でありながら[[移住]]者がいる場合もある。また高級別荘地は、日常生活を送る上で必須ではない[[レジャー]]施設である[[別荘]]にまで多額の費用を投じることができるほどの財力がある個人や法人のコミュニティであるため、潜在的に莫大な資金力を保有していると考えられている。伝統的な[[避暑地]]や[[リゾート|サマーリゾート]]では「夏になると[[首都]]が移転してくる」といった比喩が生まれるほど、高級別荘地は高級住宅街との人的往来も顕著に見られる。一方で「高級」とはいえ、都市化している住宅街とは異なり、別荘地の多くは、[[森林]]や[[海浜]]などの[[自然]]が周囲に広がる、朴訥さや牧歌的な雰囲気を有した[[田舎]]や[[地方]]にあることも大きな特徴である。例として日本では、[[軽井沢町|軽井沢]]<ref>内田順文『[https://www.jstage.jst.go.jp/article/grj1984a/62/7/62_7_495/_article/-char/ja/ 軽井沢における「高級避暑地・別荘地」のイメージ定着について]』(地理学評論 62A-7, pp.495-512, 日本地理学会, 1989)</ref>、[[中禅寺湖|日光中禅寺湖畔]]<ref>“[https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/931 グラバーへの手紙 奥日光を愛した人に 12.夏湖畔に外務省がやってきた]”下野新聞社</ref>、[[南禅寺界隈別荘|京都南禅寺界隈]]<ref>“[https://style.nikkei.com/article/DGXMZO21310610Q7A920C1000000/ 五感で味わう京都・對龍山荘 名匠・植治の庭を歩く]”NIKKEI STYLE(2017.09.23. 日本経済新聞社)</ref>、[[ニセコ]]<ref>“[https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-n7b0a3f84f610 高額物件が飛ぶように売れる北海道 コロナ禍で何が?]”NHK北海道(2021.02.26)</ref>等が高級別荘地として知られる。その他世界の有名な別荘地については、[[別荘#世界の有名な別荘地]]を参照。
'''高級別荘地'''は、住宅の用途・目的の違い(「[[日常生活]]のための利用」か「[[余暇]]のための利用」かの違い)を除けば、高級住宅街とほぼ同義である。実際、時代とともに高級別荘地から高級住宅街へと変容した地域も多い。別荘地でありながら[[移住]]者がいる場合もある。また高級別荘地は、日常生活を送る上で必須ではない[[レジャー]]施設である[[別荘]]にまで多額の費用を投じることができるほどの財力がある個人や法人のコミュニティであるため、潜在的に莫大な資金力を保有していると考えられている。伝統的な[[避暑地]]や[[リゾート|サマーリゾート]]では「夏になると[[首都]]が移転してくる」といった比喩が生まれるほど、高級別荘地は高級住宅街との人的往来も顕著に見られる。一方で「高級」とはいえ、都市化している住宅街とは異なり、別荘地の多くは、森林や[[海浜]]などの[[自然]]が周囲に広がる、朴訥さや牧歌的な雰囲気を有した[[田舎]]や[[地方]]にあることも大きな特徴である。例として日本では、[[軽井沢町|軽井沢]]<ref>{{Cite journal|和書 |author=内田順文 |url=https://doi.org/10.4157/grj1984a.62.7_495 |title=軽井沢における「高級避暑地・別荘地」のイメージ定着について |journal=地理学評論 |publisher=日本地理学会 |year=1989 |volume=62 |issue=7 |pages=495-512 |doi=10.4157/grj1984a.62.7_495 |ISSN=00167444}}</ref>、[[中禅寺湖|日光中禅寺湖畔]]<ref>“[https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/931 グラバーへの手紙 奥日光を愛した人に 12.夏湖畔に外務省がやってきた]”下野新聞社</ref>、[[南禅寺界隈別荘|京都南禅寺界隈]]<ref>“[https://style.nikkei.com/article/DGXMZO21310610Q7A920C1000000/ 五感で味わう京都・對龍山荘 名匠・植治の庭を歩く]”NIKKEI STYLE(2017.09.23. 日本経済新聞社)</ref>、[[ニセコ]]<ref>“[https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-n7b0a3f84f610 高額物件が飛ぶように売れる北海道 コロナ禍で何が?]”NHK北海道(2021.02.26)</ref>等が高級別荘地として知られる。その他世界の有名な別荘地については、[[別荘#世界の有名な別荘地]]を参照。


== 欧州における高級住宅街 ==
== 欧州における高級住宅街 ==
=== イギリス ===
=== イギリス ===
[[ファイル:Brompton_road_pelham_street.jpg|右|サムネイル|[[ロンドン]]市内[[サウス・ケンジントン]]([[:en:South Kensington|en]], [[ケンジントン・アンド・チェルシー区|ケンジントン&チェルシー区]])の街並]]
[[ファイル:Brompton_road_pelham_street.jpg|右|サムネイル|[[ロンドン]]市内[[サウス・ケンジントン]]([[:en:South Kensington|en]], [[ケンジントン・アンド・チェルシー区|ケンジントン&チェルシー区]])の街並]]
[[ファイル:Bruntsfield Place in Edinburgh.jpg|右|サムネイル| [[エジンバラ]]のブランツフィールド ([[:en:Bruntsfield|en]])]]
[[ファイル:Bruntsfield Place in Edinburgh.jpg|右|サムネイル| [[エジンバラ]]のブランツフィールド ([[:en:Bruntsfield|en]])]]
[[ロンドン]]中心部の[[メイフェア]]地区([[シティ・オブ・ウェストミンスター]])、[[ベルグレイヴィア]]地区(シティ・オブ・ウェストミンスター及び[[ケンジントン・アンド・チェルシー区|ケンジントン&チェルシー区]])などが最高級住宅地とされているが、サウス・ケンジントン地区や[[チェルシー (ロンドン)|チェルシー]]地区(ケンジントン&チェルシー区)、[[リンカーンズ・イン・フィールズ]]界隈([[カムデン区]])なども知られている。なお、ロンドン市内の高級住宅街の殆どが高級[[アパートメント]]である。
[[ロンドン]]中心部の[[メイフェア]]地区([[シティ・オブ・ウェストミンスター]])、[[ベルグレイヴィア]]地区(シティ・オブ・ウェストミンスター及び[[ケンジントン・アンド・チェルシー区|ケンジントン&チェルシー区]])などが最高級住宅地とされているが、サウス・ケンジントン地区や[[チェルシー (ロンドン)|チェルシー]]地区(ケンジントン&チェルシー区)、[[リンカーンズ・イン・フィールズ]]界隈([[カムデン区]])なども知られている。なお、ロンドン市内の高級住宅街の殆どが高級[[アパートメント]]である。
35行目: 35行目:


=== ドイツ ===
=== ドイツ ===
[[ベルリン]]南西部のツェーレンドルフ地区 ([[:en:Zehlendorf (Berlin)|en]]) 等が位置する[[シュテーグリッツ=ツェーレンドルフ区]]内が高級住宅地とされているが、隣接するグリューネバルド地区 ([[:en:Grunewald|en]], [[シャルロッテンブルク=ヴィルマースドルフ区]]) も知られている。<!-- これら2区の日本語版、英語版を参照。また、右の3つの外部個人サイト https://www.google.co.jp/amp/www.tomotrp.com/entry/2016/06/10/104326%3famp=1、http://gentosha-go.com/articles/-/2091、https://www.google.co.jp/amp/s/child-s.com/oyakoryugaku/berlinoyakoijyu-chiiki/amp/ ・・等を参照した。 -->
[[ベルリン]]南西部のツェーレンドルフ地区 ([[:en:Zehlendorf (Berlin)|en]]) 等が位置する[[シュテーグリッツ=ツェーレンドルフ区]]内が高級住宅地とされているが、隣接するグリューネバルド地区 ([[:en:Grunewald|en]], [[シャルロッテンブルク=ヴィルマースドルフ区]]) も知られている。<!-- これら2区の日本語版、英語版を参照。また、右の3つの外部個人サイト https://www.google.co.jp/amp/www.tomotrp.com/entry/2016/06/10/104326%3famp=1、http://gentosha-go.com/articles/-/2091、https://www.google.co.jp/amp/s/child-s.com/oyakoryugaku/berlinoyakoijyu-chiiki/amp/ ・・等を参照した。-->


また、[[デュッセルドルフ]]近郊メアブッシュ ([[:en:Meerbusch|en]]) には裕福な住人が多く、1人当たりの納税額が例年[[ドイツ]]国内で1位である。緑が多く落ち着いた街並みとなっている。メアブッシュ市内のビューダリッヒ地区 ([[:de:Büderich (Meerbusch)|de]]) には高級住宅街が2ヶ所あり、そこにはプールが付いた大きな庭のある[[豪邸]]が多く立ち並んでいる。デュッセルドルフから西に約10kmの位置にある。
また、[[デュッセルドルフ]]近郊メアブッシュ ([[:en:Meerbusch|en]]) には裕福な住人が多く、1人当たりの納税額が例年[[ドイツ]]国内で1位である。緑が多く落ち着いた街並みとなっている。メアブッシュ市内のビューダリッヒ地区 ([[:de:Büderich (Meerbusch)|de]]) には高級住宅街が2ヶ所あり、そこにはプールが付いた大きな庭のある[[豪邸]]が多く立ち並んでいる。デュッセルドルフから西に約10kmの位置にある。
44行目: 44行目:
[[パリ]]中心部の[[サン=ルイ島]]([[4区 (パリ)|4区]])が最高級住宅地とされているが、元々スペースが狭いパリ市街<!--山手線内側ぐらいしかない。-->の中でも、更に狭い島でしかない。それは“貴族街”とも呼ばれる[[アンバリッド|アンヴァリッド]]地区や[[サンジェルマン|フォーブール・サンジェルマン]]界隈([[7区 (パリ)|7区]])でも事情は変わらず、旧[[貴族]]や[[富豪]]らが暮らすスペースとしてパッシー界隈([[16区 (パリ)|16区]])が発展したように、高級化の波はパリ市街西部に拡がっていった歴史を持つ。これらの他に、[[サン=ジェルマン=デ=プレ|サンジェルマン・デ・プレ]]地区([[6区 (パリ)|6区]])、[[シャンゼリゼ通り]]周辺やフォーブール・サントノレ界隈([[8区 (パリ)|8区]])<!--シャンゼリゼ周辺とは、つまりフォーブール・サントノレ通り界隈のこと。7区のリンク先にある、仏語版「オテル・ド・シャトレ」の記述も参照。-->等が知られている。
[[パリ]]中心部の[[サン=ルイ島]]([[4区 (パリ)|4区]])が最高級住宅地とされているが、元々スペースが狭いパリ市街<!--山手線内側ぐらいしかない。-->の中でも、更に狭い島でしかない。それは“貴族街”とも呼ばれる[[アンバリッド|アンヴァリッド]]地区や[[サンジェルマン|フォーブール・サンジェルマン]]界隈([[7区 (パリ)|7区]])でも事情は変わらず、旧[[貴族]]や[[富豪]]らが暮らすスペースとしてパッシー界隈([[16区 (パリ)|16区]])が発展したように、高級化の波はパリ市街西部に拡がっていった歴史を持つ。これらの他に、[[サン=ジェルマン=デ=プレ|サンジェルマン・デ・プレ]]地区([[6区 (パリ)|6区]])、[[シャンゼリゼ通り]]周辺やフォーブール・サントノレ界隈([[8区 (パリ)|8区]])<!--シャンゼリゼ周辺とは、つまりフォーブール・サントノレ通り界隈のこと。7区のリンク先にある、仏語版「オテル・ド・シャトレ」の記述も参照。-->等が知られている。


[[フランス]]の場合、[[英語圏|英米圏]]などと異なり、大都市の都心部やかつての城壁に囲まれた地域が一般的に高級住宅街とされているが、例外として挙げれば、パリ近郊だと[[ヌイイ=シュル=セーヌ]]が隣接する16区と並ぶグレードの高さで知られている。パリ16区(パッシー、オートゥイユ)からヌイイまでまとめて ([[:en:Neuilly-Auteuil-Passy|Neuilly-Auteuil-Passy]]) 、"NAP"(ナップ、[[:en:Nap (disambiguation)#Other|en]], [[:fr:NAP|fr]])と呼称されている<!--ヌイイ=シュル=セーヌについては、英語版 en:16th arrondissement of Paris より。"所得"において、パリ7区に次ぎ16区と同等か上と書かれている-->。
[[フランス]]の場合、[[英語圏|英米圏]]などと異なり、大都市の都心部やかつての城壁に囲まれた地域が一般的に高級住宅街とされているが、例外として挙げれば、パリ近郊だと[[ヌイイ=シュル=セーヌ]]が隣接する16区と並ぶグレードの高さで知られている。パリ16区(パッシー、オートゥイユ)からヌイイまでまとめて ([[:en:Neuilly-Auteuil-Passy|Neuilly-Auteuil-Passy]])、"NAP"(ナップ、[[:en:Nap (disambiguation)#Other|en]], [[:fr:NAP|fr]])と呼称されている<!--ヌイイ=シュル=セーヌについては、英語版 en:16th arrondissement of Paris より。"所得"において、パリ7区に次ぎ16区と同等か上と書かれている-->。
[[ファイル:Monte_carlo_ville.jpg|右|thumb|[[モンテカルロ]]([[モナコ]])、グローバル・プロパティ・ガイドによると、世界で最も高価な住宅街 <ref>{{Cite web|url=https://economia.uol.com.br/ultnot/infomoney/2009/03/13/ult4040u18087.jhtm|title=Brasil aparece na 76ª posição em ranking de mercados de imóveis mais caros|publisher=[[UOL]]|date=13 de março de 2009|accessdate=14 de dezembro de 2019}}</ref>]]
[[ファイル:Monte_carlo_ville.jpg|右|thumb|[[モンテカルロ]]([[モナコ]])、グローバル・プロパティ・ガイドによると、世界で最も高価な住宅街 <ref>{{Cite web|url=https://economia.uol.com.br/ultnot/infomoney/2009/03/13/ult4040u18087.jhtm|title=Brasil aparece na 76ª posição em ranking de mercados de imóveis mais caros|publisher=[[UOL]]|date=13 de março de 2009|accessdate=14 de dezembro de 2019}}</ref>]]
{{See also|バンリュー}}なお、高級住宅地ないし高級[[リゾート]]地としては、[[モナコ]]も包含する[[コート・ダジュール]]が世界的に著名である。もう1つの有名な[[南フランス]]の地区は、多くの美術館がある観光地である[[ニース]]の街にあるシミエがあげられる<ref>{{Cite web|url=http://www.guiatimeout.estadao.com.br/franca_nice_cannes_areas_cimiez_intro|title=Nice/Cannes por área - Cimiez & Arredores de Nice|publisher=[[Estadão]]|accessdate=14 de dezembro de 2019|archiveurl=https://web.archive.org/web/20100407063434/http://www.guiatimeout.estadao.com.br/franca_nice_cannes_areas_cimiez_intro|archivedate=7 de abril de 2010}}</ref>。
{{See also|バンリュー}}なお、高級住宅地ないし高級[[リゾート]]地としては、[[モナコ]]も包含する[[コート・ダジュール]]が世界的に著名である。もう1つの有名な[[南フランス]]の地区は、多くの美術館がある観光地である[[ニース]]の街にあるシミエがあげられる<ref>{{Cite web|url=http://www.guiatimeout.estadao.com.br/franca_nice_cannes_areas_cimiez_intro|title=Nice/Cannes por área - Cimiez & Arredores de Nice|publisher=[[Estadão]]|accessdate=14 de dezembro de 2019|archiveurl=https://web.archive.org/web/20100407063434/http://www.guiatimeout.estadao.com.br/franca_nice_cannes_areas_cimiez_intro|archivedate=7 de abril de 2010}}</ref>。
51行目: 51行目:
[[ファイル:Alameda_dos_Oceanos.jpg|左|サムネイル|200x200ピクセル|[[パルケ・ダス・ナソンイス地区]]、[[リスボン]]、{{PRT}}]]
[[ファイル:Alameda_dos_Oceanos.jpg|左|サムネイル|200x200ピクセル|[[パルケ・ダス・ナソンイス地区]]、[[リスボン]]、{{PRT}}]]
[[スペイン]]など[[ヒスパニック]]諸国では、そのようなタイプの命名法はなく、[[ポルトガル]]など[[ルゾフォニア]]ではめったに使用されない<ref name="nome">Pesquisa em alguns jornais desses países.</ref>。ただし経済的に豊かな人口密集地がある都市の場合、例えば[[リスボン]]であれば、ラパ、エストレラ、[[パルケ・ダス・ナソンイス地区|パルケ・ダスナッソエス]]、プリンチペレアルと[[シアード (リスボン)|シアード]]などいくつかみられる。
[[スペイン]]など[[ヒスパニック]]諸国では、そのようなタイプの命名法はなく、[[ポルトガル]]など[[ルゾフォニア]]ではめったに使用されない<ref name="nome">Pesquisa em alguns jornais desses países.</ref>。ただし経済的に豊かな人口密集地がある都市の場合、例えば[[リスボン]]であれば、ラパ、エストレラ、[[パルケ・ダス・ナソンイス地区|パルケ・ダスナッソエス]]、プリンチペレアルと[[シアード (リスボン)|シアード]]などいくつかみられる。
{{clear}}


=== ロシアとウクライナ ===
=== ロシアとウクライナ ===
[[ファイル:Гончарі-Кожум'яки.jpg|thumb|200px|ゴンチャリ-コズミャキ 、[[キエフ]]の中心、{{UKR}}。]]
[[ファイル:Гончарі-Кожум'яки.jpg|thumb|200px|ゴンチャリ-コズミャキ、[[キエフ]]の中心、{{UKR}}。]]
[[ファイル:Moscow 05-2012 PertsovaHouse.jpg|thumb|200px|カモヴニキ、[[モスクワの行政区画|中央行政区]]、[[モスクワ]]、{{RUS}}。]]
[[ファイル:Moscow 05-2012 PertsovaHouse.jpg|thumb|200px|カモヴニキ、[[モスクワの行政区画|中央行政区]]、[[モスクワ]]、{{RUS}}。]]
[[ロシア]]では、[[共産主義]]政府と[[ソ連]]の崩壊後、高貴な地域の現象がより一般的になった。これらの地域で最もよく知られているのは[[:ru:Рублёвка|ルブリオフカ]]である。事実上、ルブリオフカは公式の地区ではなく: ジュコフカ、バルビカ、ゴーリキー2、ゴーリキー-10、セレブリアニーボルなどの[[ゲーテッドコミュニティ]]で構成されている。18世紀の終わりに、16の王子一族と5人のコンダル一族がそこに住んでいた。しかし、[[ヨシフ・スターリン]]の[[ダーチャ]]のおかげで、近所は1910年代に自分自身を崇拝した。その後まもなく、ソ連の政治家と知性のメンバーは、近所に彼らのダーチャを建てた。[[2000年]]代以降、この地域は政治エリートのメンバーの拠点の一つである(その中には、[[ドミートリー・メドヴェージェフ]]<ref>{{cite web|title=Белый Кремль|url=https://itogi.ru/russia/2008/12/4893.html|publisher=itogi|date=June 25, 2009|accessdate=September 28, 2021|archiveurl=https://web.archive.org/web/20090625163800/http://www.itogi.ru/russia/2008/12/4893.html|archivedate=June 25, 2009}}</ref>、[[ウラジーミル・プーチン]]<ref>{{cite web|title=Путины меняют адрес|url=https://www.lenpravda.ru/whoiswho/269217.html|publisher=Ленправда|date=November 8, 2000|accessdate=September 28, 2021|archiveurl=https://www.lenpravda.ru/whoiswho/269217.html|archivedate=November 8, 2000}}</ref>、[[ミハイル・ゴルバチョフ]]、[[ロシアのオリガルヒ]]、[[モスクワ]]の有名人がいる)。ルブリオフカの地価は、今日、モスクワ州とすべてのポストソビエト諸国の中で最も高価である。[[Forbes]]によると、ここに位置する邸宅の1つは、世界で最も高価な5つのプロパティのリストに含まれている<ref>{{Cite web|title=Почем сотка на Рублевке?|url=http://pda.izvestia.ru/article.html/use.article.27211_01/|publisher=Izvestia|date=June 25, 2009|accessdate=September 27, 2021|archiveurl=https://web.archive.org/web/20090625125025/http://pda.izvestia.ru/article.html/use.article.27211_01/|archivedate=June 25, 2009}}</ref>。
[[ロシア]]では、[[共産主義]]政府と[[ソ連]]の崩壊後、高貴な地域の現象がより一般的になった。これらの地域で最もよく知られているのは[[:ru:Рублёвка|ルブリオフカ]]である。事実上、ルブリオフカは公式の地区ではなく: ジュコフカ、バルビカ、ゴーリキー2、ゴーリキー-10、セレブリアニーボルなどの[[ゲーテッドコミュニティ]]で構成されている。18世紀の終わりに、16の王子一族と5人のコンダル一族がそこに住んでいた。しかし、[[ヨシフ・スターリン]]の[[ダーチャ]]のおかげで、近所は1910年代に自分自身を崇拝した。その後まもなく、ソ連の政治家と知性のメンバーは、近所に彼らのダーチャを建てた。[[2000年]]代以降、この地域は政治エリートのメンバーの拠点の一つである(その中には、[[ドミートリー・メドヴェージェフ]]<ref>{{cite web|title=Белый Кремль|url=https://itogi.ru/russia/2008/12/4893.html|publisher=itogi|date=June 25, 2009|accessdate=September 28, 2021|archiveurl=https://web.archive.org/web/20090625163800/http://www.itogi.ru/russia/2008/12/4893.html|archivedate=June 25, 2009}}</ref>、[[ウラジーミル・プーチン]]<ref>{{cite web|title=Путины меняют адрес|url=https://www.lenpravda.ru/whoiswho/269217.html|publisher=Ленправда|date=November 8, 2000|accessdate=September 28, 2021|archiveurl=https://www.lenpravda.ru/whoiswho/269217.html|archivedate=November 8, 2000}}</ref>、[[ミハイル・ゴルバチョフ]]、[[ロシアのオリガルヒ]]、[[モスクワ]]の有名人がいる)。ルブリオフカの地価は、今日、モスクワ州とすべてのポストソビエト諸国の中で最も高価である。[[Forbes]]によると、ここに位置する邸宅の1つは、世界で最も高価な5つのプロパティのリストに含まれている<ref>{{Cite web|title=Почем сотка на Рублевке?|url=http://pda.izvestia.ru/article.html/use.article.27211_01/|publisher=Izvestia|date=June 25, 2009|accessdate=September 27, 2021|archiveurl=https://web.archive.org/web/20090625125025/http://pda.izvestia.ru/article.html/use.article.27211_01/|archivedate=June 25, 2009}}</ref>。


[[ウクライナ]]に関する限り、[[キエフ]]の南に[[:uk:Конча-Заспа|コンシャ・ザスパ]]がある。 他の高貴な地域のように、コンシャ・ザスパは徐々にそして効果的に高潔になった。 近隣は閉鎖されたマンションで構成されており、高速道路の左側が最も価値があると考えられている。 コンシャ・ザスパは、その高価な地形と金持ちの住民、公人、政治家、政治家でウクライナで有名である<ref>{{cite web|title=Конча-Заспа: село главных богачей страны|url=https://lifestyle.segodnya.ua/lifestyle/fun/koncha-zacpa-celo-hlavnykh-bohachej-ctrany-193780.html|publisher=segodnya|date=April 7, 2010|accessdate=September 28, 2021|archiveurl=https://lifestyle.segodnya.ua/lifestyle/fun/koncha-zacpa-celo-hlavnykh-bohachej-ctrany-193780.html|archivedate=April 7, 2010}}</ref>。
[[ウクライナ]]に関する限り、[[キエフ]]の南に[[:uk:Конча-Заспа|コンシャ・ザスパ]]がある。他の高貴な地域のように、コンシャ・ザスパは徐々にそして効果的に高潔になった。近隣は閉鎖されたマンションで構成されており、高速道路の左側が最も価値があると考えられている。コンシャ・ザスパは、その高価な地形と金持ちの住民、公人、政治家、政治家でウクライナで有名である<ref>{{cite web|title=Конча-Заспа: село главных богачей страны|url=https://lifestyle.segodnya.ua/lifestyle/fun/koncha-zacpa-celo-hlavnykh-bohachej-ctrany-193780.html|publisher=segodnya|date=April 7, 2010|accessdate=September 28, 2021|archiveurl=https://lifestyle.segodnya.ua/lifestyle/fun/koncha-zacpa-celo-hlavnykh-bohachej-ctrany-193780.html|archivedate=April 7, 2010}}</ref>。


== 北米における高級住宅街 ==
== 北米における高級住宅街 ==
=== アメリカ ===
=== アメリカ ===
広大な国土を持つ[[アメリカ合衆国|アメリカ]]においては大半の場合、高級住宅街は都心部から十数キロメートル以上離れた郊外に存在する。
広大な国土を持つ[[アメリカ合衆国|アメリカ]]においては大半の場合、高級住宅街は都心部から十数キロメートル以上離れた郊外に存在する。
[[ファイル:Photograph of Fifth Avenue from the Metropolitan—New York City.jpg|右|サムネイル|[[マンハッタン]] [[アッパー・イースト・サイド]]界隈[[ミュージアム・マイル (ニューヨーク)|ミュージアム・マイル]] ([[5番街 (マンハッタン)|5番街]])の街並]]
[[ファイル:Photograph of Fifth Avenue from the Metropolitan—New York City.jpg|右|サムネイル|[[マンハッタン]] [[アッパー・イースト・サイド]]界隈[[ミュージアム・マイル (ニューヨーク)|ミュージアム・マイル]] ([[5番街 (マンハッタン)|5番街]])の街並]]
[[ファイル:MalibuAir.jpg|右|サムネイル|200px|[[マリブ (カリフォルニア州)|マリブ]]、[[ロサンゼルス郡]]は、米国で最も裕福な地域の一つである。]]
[[ファイル:MalibuAir.jpg|右|サムネイル|200px|[[マリブ (カリフォルニア州)|マリブ]]、[[ロサンゼルス郡]]は、米国で最も裕福な地域の一つである。]]
[[ファイル:The_Manor,_Holmby_Hills,_Los_Angeles,_in_2008.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|[[ビバリーヒルズ]]の街とベルエアとホルムビーヒルズの近隣(写真)は[[ロサンゼルス郡 (カリフォルニア州)|、ロサンゼルス郡]]で最も高価な地域である''ため、プラチナトライアングル''(トライアングル[[白金|プラチナ]])と呼ばれている。{{USA}} <ref>{{Cite web|url=https://www.latimes.com/archives/la-xpm-2007-jul-07-fi-platinum7-story.html|title=No housing slump for super-rich|author=Annette Haddad|publisher=[[Los Angeles Times]]|date=7 de julho de 2007|accessdate=14 de dezembro de 2019}}</ref>]]
[[ファイル:The_Manor,_Holmby_Hills,_Los_Angeles,_in_2008.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|[[ビバリーヒルズ]]の街とベルエアとホルムビーヒルズの近隣(写真)は[[ロサンゼルス郡 (カリフォルニア州)|、ロサンゼルス郡]]で最も高価な地域である''ため、プラチナトライアングル''(トライアングル[[白金|プラチナ]])と呼ばれている。{{USA}} <ref>{{Cite web|url=https://www.latimes.com/archives/la-xpm-2007-jul-07-fi-platinum7-story.html|title=No housing slump for super-rich|author=Annette Haddad|publisher=[[Los Angeles Times]]|date=7 de julho de 2007|accessdate=14 de dezembro de 2019}}</ref>]]
72行目: 73行目:
概して経済力による住み分けの激しいアメリカは「豪邸が立ち並んでいるから高級住宅街」というわけではなく「どのような人([[人種]]や[[職業]]など)が住んでいるか」が重要となる。事実、その[[国土]]の広さがもたらす地価の安さ及び人口密度の低さ故、立地次第では[[中流階級]]でも巨大な土地にプール付きの邸宅を構えることも可能である(日本の住宅と比べれば大半の一戸建てが「豪邸」と呼ぶに相応しいサイズである)。
概して経済力による住み分けの激しいアメリカは「豪邸が立ち並んでいるから高級住宅街」というわけではなく「どのような人([[人種]]や[[職業]]など)が住んでいるか」が重要となる。事実、その[[国土]]の広さがもたらす地価の安さ及び人口密度の低さ故、立地次第では[[中流階級]]でも巨大な土地にプール付きの邸宅を構えることも可能である(日本の住宅と比べれば大半の一戸建てが「豪邸」と呼ぶに相応しいサイズである)。


[[日本]]の[[都市]]はごく一部の地域を除いてオフィス街と住宅街([[マンション]]等)が隣接していることも多いが、アメリカにおいてはその区別は非常に明確で、マンハッタンなどの一部の例外を除き、殆どの都市において一定以上の経済力を持つ[[富裕層]]で家族をもつ世帯は、概して郊外への移住を好む。主な理由として緑が多く閑静で好環境であること、貧困層が少ないため治安が良いこと、サイズの大きな家に住めること、などがある。デメリットとしては都心部への通勤時間が長くなることがあるが、アメリカの労働環境やアメリカ人富裕層の住宅事情を鑑みた場合、メリットがデメリットを遥かに凌いでいる。またこれらの郊外高級住宅街のいくつかは「[[ゲーテッドコミュニティ|ゲーテッド・コミュニティ]]」と呼ばれ、周辺を監視カメラなどを装備した塀で覆い、出入り口には警備員を常駐させたゲートを構えるなどして内部の治安を保つようにされている。
[[日本]]の都市はごく一部の地域を除いてオフィス街と住宅街([[マンション]]等)が隣接していることも多いが、アメリカにおいてはその区別は非常に明確で、マンハッタンなどの一部の例外を除き、殆どの都市において一定以上の経済力を持つ[[富裕層]]で家族をもつ世帯は、概して郊外への移住を好む。主な理由として緑が多く閑静で好環境であること、貧困層が少ないため治安が良いこと、サイズの大きな家に住めること、などがある。デメリットとしては都心部への通勤時間が長くなることがあるが、アメリカの労働環境やアメリカ人富裕層の住宅事情を鑑みた場合、メリットがデメリットを遥かに凌いでいる。またこれらの郊外高級住宅街のいくつかは「[[ゲーテッドコミュニティ|ゲーテッド・コミュニティ]]」と呼ばれ、周辺を監視カメラなどを装備した塀で覆い、出入り口には警備員を常駐させたゲートを構えるなどして内部の治安を保つようにされている。


このように、「レジデンシャル・セグレゲーション」と呼ばれるアメリカの[[経済的不平等|経済格差]]による[[ニッチ#棲み分け|住み分け]]は激しく、ニューヨーク都市圏などの一部の例外(なおニューヨーク都市圏にも、上述の郊外のウエストチェスターにスカースデールやハーツデールなどの高級住宅街がある)を除けば「郊外=富裕層 都心=貧困層」と考えても概ね差し支えない。例えば郊外で生活する為には車の購入は必須であり、賃貸住宅も少ない(アパートメントはほぼ皆無)ため必然的にローンを組める信頼度が必要なことなど「郊外族」にはそれ相当の収入が必要となる一方、都心部の場合公共交通機関が安価で利用でき、尚且つ賃貸住宅(主にアパートメント)に入居するので審査が軽い。もちろん多くの[[大都市]]の都心部にも富裕層は在住しているが全体的な比率や人口動性を見た場合、郊外の住宅街へと移り住むことがはるかに多い。
このように、「レジデンシャル・セグレゲーション」と呼ばれるアメリカの[[経済的不平等|経済格差]]による[[ニッチ#棲み分け|住み分け]]は激しく、ニューヨーク都市圏などの一部の例外(なおニューヨーク都市圏にも、上述の郊外のウエストチェスターにスカースデールやハーツデールなどの高級住宅街がある)を除けば「郊外=富裕層 都心=貧困層」と考えても概ね差し支えない。例えば郊外で生活する為には車の購入は必須であり、賃貸住宅も少ない(アパートメントはほぼ皆無)ため必然的にローンを組める信頼度が必要なことなど「郊外族」にはそれ相当の収入が必要となる一方、都心部の場合公共交通機関が安価で利用でき、尚且つ賃貸住宅(主にアパートメント)に入居するので審査が軽い。もちろん多くの大都市の都心部にも富裕層は在住しているが全体的な比率や人口動性を見た場合、郊外の住宅街へと移り住むことがはるかに多い。


=== カナダ ===
=== カナダ ===
91行目: 92行目:
==== 関東地方 ====
==== 関東地方 ====
; [[埼玉県]]
; [[埼玉県]]
: [[さいたま市]][[北区 (さいたま市)|北区]]の[[盆栽町]]は、大正時代に開発され、先進的な区画整備を行なったことから、高級住宅街として知られるようになった。さいたま市[[浦和区]]の[[高砂 (さいたま市)|高砂]]、[[岸町 (さいたま市)|岸町]]、[[常盤 (さいたま市)|常磐]]は、県内有数の高級住宅街として知られる<ref>『東京土地のグランプリ 2012-2013』講談社 、2012年、151-153頁</ref>。[[所沢市]][[松が丘 (所沢市)|松が丘]]地区<ref>[http://www.city.tokorozawa.saitama.jp/smph/kurashi/jutaku/keikan/mijikanakekan/keikanshigen/ichiran/shiteiichiran/matugaokanojyuutakuchi.html 所沢市HP「松が丘の住宅地」]</ref>は[[西武グループ]]が開拓したニュータウンの高級住宅街であるが、バブル崩壊や高齢化の影響で地価が低下している<ref name="aera20160921">[https://dot.asahi.com/aera/2016092000250.html?page=1 かつては“高嶺の花”ニュータウン いまは地価8分の1 一挙に高齢化 (1-2) 〈AERA〉|AERA dot_ (アエラドット)]</ref>。
: [[さいたま市]][[北区 (さいたま市)|北区]]の[[盆栽町]]は、大正時代に開発され、先進的な区画整備を行なったことから、高級住宅街として知られるようになった。さいたま市[[浦和区]]の[[高砂 (さいたま市)|高砂]]、[[岸町 (さいたま市)|岸町]]、[[常盤 (さいたま市)|常磐]]は、県内有数の高級住宅街として知られる<ref>『東京土地のグランプリ 2012-2013』講談社、2012年、151-153頁</ref>。[[所沢市]][[松が丘 (所沢市)|松が丘]]地区<ref>[http://www.city.tokorozawa.saitama.jp/smph/kurashi/jutaku/keikan/mijikanakekan/keikanshigen/ichiran/shiteiichiran/matugaokanojyuutakuchi.html 所沢市HP「松が丘の住宅地」]</ref>は[[西武グループ]]が開拓したニュータウンの高級住宅街であるが、バブル崩壊や高齢化の影響で地価が低下している<ref name="aera20160921">[https://dot.asahi.com/aera/2016092000250.html?page=1 かつては“高嶺の花”ニュータウン いまは地価8分の1 一挙に高齢化 (1-2) 〈AERA〉|AERA dot_ (アエラドット)]</ref>。


; [[千葉県]]
; [[千葉県]]
[[file:100hills.jpg|thumb|200px|[[ワンハンドレッドヒルズ]]([[千葉市]][[緑区 (千葉市)|緑区]])]]
[[file:100hills.jpg|thumb|200px|[[ワンハンドレッドヒルズ]]([[千葉市]][[緑区 (千葉市)|緑区]])]]
: [[市川市]]の[[国府台 (市川市)|国府台]]、[[菅野 (市川市)|菅野]]、[[真間]]、[[市川 (市川市)|市川]]、[[本八幡]]一帯は、大正時代に「東の[[鎌倉市|鎌倉]]」と称し別荘地として分譲され、[[将校]]たちが邸宅を構えた<ref name ="miura">三浦展『[https://library.time.u-tokai.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=v3search_view_main_init&block_id=323&direct_target=catdbl&direct_key=%2542%2542%2530%2530%2535%2539%2530%2531%2530%2536&lang=english#catdbl-BB00590106 娯楽する郊外]』(柏書房、2019年)</ref>。船橋市の[[海神 (船橋市)|海神台]]や[[花輪台]]は、昭和初期に[[京成電鉄]]や[[京浜急行電鉄|京急]]によって高級住宅地として分譲され、市内では「東の海神、西の花輪台」と称された<ref name ="miura"/><ref>『法令全書 第11号』(内閣官報局、1965年)59頁</ref>。[[千葉市]][[緑区 (千葉市)|緑区]]には、バブル期に1戸あたり数億円から数十億円で販売された[[ゲーテッドコミュニティ]]形式を採用した住宅街「[[ワンハンドレッドヒルズ]]」が存在するが<ref>[https://www.city.chiba.jp/toshi/kenchiku/shido/onehund.html 千葉市あすみが丘ワンハンドレッドヒルズ建築協定の概要] - 千葉市公式サイト</ref>、バブル崩壊や高齢化の影響で地価が低下している。[[浦安市]]の一部地域([[舞浜]]や[[新浦安]]など)は、戦後の[[埋め立て]]整備により高級住宅街として知られるようになっている<ref>”[https://www.chibanippo.co.jp/news/national/770950 「ドアが勝手に」 街並み一変した高級住宅街、液状化で揺れた住民の思い【#あれから私は】]”千葉日報(2021.03.09)</ref>。
: [[市川市]]の[[国府台 (市川市)|国府台]]、[[菅野 (市川市)|菅野]]、[[真間]]、[[市川 (市川市)|市川]]、[[本八幡]]一帯は、大正時代に「東の[[鎌倉市|鎌倉]]」と称し別荘地として分譲され、[[将校]]たちが邸宅を構えた<ref name ="miura">{{Cite book|和書 |author=三浦展 |year=2019 |url=https://opac.time.u-tokai.ac.jp/webopac/BB00590106 |title=娯楽する郊外 |publisher=柏書房 |ISBN=9784760151035}}</ref>。船橋市の[[海神 (船橋市)|海神台]]や[[花輪台]]は、昭和初期に[[京成電鉄]]や[[京浜急行電鉄|京急]]によって高級住宅地として分譲され、市内では「東の海神、西の花輪台」と称された<ref name ="miura"/><ref>『法令全書 第11号』(内閣官報局、1965年)59頁</ref>。[[千葉市]][[緑区 (千葉市)|緑区]]には、バブル期に1戸あたり数億円から数十億円で販売された[[ゲーテッドコミュニティ]]形式を採用した住宅街「[[ワンハンドレッドヒルズ]]」が存在するが<ref>[https://www.city.chiba.jp/toshi/kenchiku/shido/onehund.html 千葉市あすみが丘ワンハンドレッドヒルズ建築協定の概要] - 千葉市公式サイト</ref>、バブル崩壊や高齢化の影響で地価が低下している。[[浦安市]]の一部地域([[舞浜]]や[[新浦安]]など)は、戦後の[[埋め立て]]整備により高級住宅街として知られるようになっている<ref>”[https://www.chibanippo.co.jp/news/national/770950 「ドアが勝手に」 街並み一変した高級住宅街、液状化で揺れた住民の思い【#あれから私は】]”千葉日報(2021.03.09)</ref>。


; [[東京都]]
; [[東京都]]
[[File:Houses in Denenchofu.jpeg|thumb|200px|[[田園調布]]([[大田区]])]]
[[File:Houses in Denenchofu.jpeg|thumb|200px|[[田園調布]]([[大田区]])]]
[[File:品川御殿山 Goten-yama, Shinagawa - panoramio.jpg|thumb|200px|[[御殿山 (品川区)|御殿山]]([[品川区]])]]
[[File:品川御殿山 Goten-yama, Shinagawa - panoramio.jpg|thumb|200px|[[御殿山 (品川区)|御殿山]]([[品川区]])]]
: [[明治|明治時代]]以降、[[江戸]]市街のうち[[武家屋敷]]などが建ち並んでいた[[山の手]]を中心とするエリアに富裕層が居を構えるようになり、初期の高級住宅街が形成された。[[芝 (東京都港区)|芝]]([[白金台]]・[[高輪]]・[[三田 (東京都港区)|三田]]等)、[[四谷]]、[[牛込]]([[払方町]]・[[市谷]]・[[若宮町 (新宿区)|若宮町]]等)、[[番町]]、[[麹町]]、[[紀尾井町]]、[[赤坂 (東京都港区)|赤坂]](赤坂・[[南青山]]等)、[[麻布]]([[南麻布]]・[[元麻布]]・[[六本木]]・[[広尾 (渋谷区)|広尾]]等)、[[小石川]]([[小日向]]・[[音羽]]・[[関口]]・[[白山 (文京区)|白山]]・[[目白台]]等)、[[本郷 (文京区)|本郷]](本郷・[[千駄木]]・[[本駒込]]等)といったエリアが該当する<ref name ="bunshun">”[https://bunshun.jp/articles/-/9096?page=1 東京の「ブランド住宅地」と「似非ブランド住宅地」をスマホで簡単に見分ける方法]”文春オンライン(2018.09.25)</ref>。しかし、[[1923年]]([[大正]]12年)に東京中心部を襲った[[関東大震災]]はこの流れを大きく変える事となり、震災を契機として武家屋敷跡をルーツにしない高級住宅街が多く誕生する。[[渋谷]]([[松濤]]・[[富ヶ谷]]・[[神山町 (渋谷区)|神山町]]・[[南平台町]]等)や[[世田谷区]]の[[桜新町]]、[[深沢 (世田谷区)|深沢]]、[[岡本 (世田谷区)|岡本]]、[[上北沢]]などがそれに該当する<ref name ="bunshun"/>。大正期には、さらに鉄道会社が東京の郊外に電車を走らせその沿線に高級住宅街を開発していく。その代表例として知られているのが[[大田区]]の[[田園調布]]である。[[渋沢栄一]]などを中心として[[1918年]](大正7年)に設立された[[田園都市 (企業)|田園都市株式会社]]([[現在]]の[[東急|東急株式会社]]の源流の一つ)が、当時交通が不便だったエリアに鉄道を敷設し住宅地としての開発を進めるという、[[阪急阪神東宝グループ|阪急]]の手法を東京で最初に用いた事例である。[[1922年]](大正11年)[[洗足]]地区([[洗足田園都市]])、翌年多摩川台地区(後の田園調布)が分譲され、[[1980年]]([[昭和]]55年)には[[星セント・ルイス]]のギャグ「田園調布に家が建つ」の流行を経て、現在は全国に知られる高級住宅地として認知されている<ref>。[http://www.keihin.ktr.mlit.go.jp/tama/04siraberu/tama_tosyo/tamagawashi/parts/text/084321.htm 多摩川誌 第8編 流域の経済と都市化 第4章 集落・都市 第3節 下流地域 3.2 住宅地域の開発 3.2.1 郊外電鉄と田園都市]</ref>。同様に[[東急線]]の[[自由が丘]]、[[奥沢]]、[[久が原]]、[[等々力 (世田谷区)|等々力]]、[[小田急線]]の[[成城]]、[[経堂]]、[[赤堤]]などが高級住宅街として開発され、現在でも知られている<ref name ="bunshun"/>。昭和期には、[[品川区]]の[[城南五山]]([[東五反田]]・[[上大崎]]・[[北品川]]・高輪)や[[渋谷区]]の徳川山([[代々木]]・[[西原 (渋谷区)|西原]])が新興の高級住宅街として開発された<ref name ="bunshun"/>。
: [[明治|明治時代]]以降、[[江戸]]市街のうち[[武家屋敷]]などが建ち並んでいた[[山の手]]を中心とするエリアに富裕層が居を構えるようになり、初期の高級住宅街が形成された。[[芝 (東京都港区)|芝]]([[白金台]]・[[高輪]]・[[三田 (東京都港区)|三田]]等)、[[四谷]]、[[牛込]]([[払方町]]・[[市谷]]・[[若宮町 (新宿区)|若宮町]]等)、[[番町]]、[[麹町]]、[[紀尾井町]]、[[赤坂 (東京都港区)|赤坂]](赤坂・[[南青山]]等)、[[麻布]]([[南麻布]]・[[元麻布]]・[[六本木]]・[[広尾 (渋谷区)|広尾]]等)、[[小石川]]([[小日向]]・[[音羽]]・[[関口]]・[[白山 (文京区)|白山]]・[[目白台]]等)、[[本郷 (文京区)|本郷]](本郷・[[千駄木]]・[[本駒込]]等)といったエリアが該当する<ref name ="bunshun">”[https://bunshun.jp/articles/-/9096?page=1 東京の「ブランド住宅地」と「似非ブランド住宅地」をスマホで簡単に見分ける方法]”文春オンライン(2018.09.25)</ref>。しかし、[[1923年]]([[大正]]12年)に東京中心部を襲った[[関東大震災]]はこの流れを大きく変える事となり、震災を契機として武家屋敷跡をルーツにしない高級住宅街が多く誕生する。[[渋谷]]([[松濤]]・[[富ヶ谷]]・[[神山町 (渋谷区)|神山町]]・[[南平台町]]等)や[[世田谷区]]の[[桜新町]]、[[深沢 (世田谷区)|深沢]]、[[岡本 (世田谷区)|岡本]]、[[上北沢]]などがそれに該当する<ref name ="bunshun"/>。大正期には、さらに鉄道会社が東京の郊外に電車を走らせその沿線に高級住宅街を開発していく。その代表例として知られているのが[[大田区]]の[[田園調布]]である。[[渋沢栄一]]などを中心として[[1918年]](大正7年)に設立された[[田園都市 (企業)|田園都市株式会社]](現在の[[東急|東急株式会社]]の源流の一つ)が、当時交通が不便だったエリアに鉄道を敷設し住宅地としての開発を進めるという、[[阪急阪神東宝グループ|阪急]]の手法を東京で最初に用いた事例である。[[1922年]](大正11年)[[洗足]]地区([[洗足田園都市]])、翌年多摩川台地区(後の田園調布)が分譲され、[[1980年]]([[昭和]]55年)には[[星セント・ルイス]]のギャグ「田園調布に家が建つ」の流行を経て、現在は全国に知られる高級住宅地として認知されている<ref>。[http://www.keihin.ktr.mlit.go.jp/tama/04siraberu/tama_tosyo/tamagawashi/parts/text/084321.htm 多摩川誌 第8編 流域の経済と都市化 第4章 集落・都市 第3節 下流地域 3.2 住宅地域の開発 3.2.1 郊外電鉄と田園都市]</ref>。同様に[[東急線]]の[[自由が丘]]、[[奥沢]]、[[久が原]]、[[等々力 (世田谷区)|等々力]]、[[小田急線]]の[[成城]]、[[経堂]]、[[赤堤]]などが高級住宅街として開発され、現在でも知られている<ref name ="bunshun"/>。昭和期には、[[品川区]]の[[城南五山]]([[東五反田]]・[[上大崎]]・[[北品川]]・高輪)や[[渋谷区]]の徳川山([[代々木]]・[[西原 (渋谷区)|西原]])が新興の高級住宅街として開発された<ref name ="bunshun"/>。


; [[神奈川県]]
; [[神奈川県]]
: [[横浜市]][[中区 (横浜市)|中区]][[山手 (横浜市)|山手]]は、明治期の[[外国人居留地]]に端を発し、古くから高級住宅街として知られている<ref>“[https://www.sankei.com/article/20220322-FXPTMC6RFROBBGKDRYR3YPITPI/?outputType=amp 公示地価 神奈川県の住宅地、一転上昇 回復基調]”産経ニュース(2022.03.22)</ref>。[[鎌倉市]][[鎌倉山]]は、昭和初期から別荘地として分譲された歴史を持ち、その運営会社が経営不振に陥った後は頒布資料による高級イメージ戦略など、住民らの努力により高級住宅地へと変容していった<ref>[http://www.jusoken.or.jp/pdf_paper/2011/1006-0.pdf 昭和初期の別荘地開発と住宅地形成に関する研究住総研]</ref>。横浜市[[青葉区 (横浜市)|青葉区]][[美しが丘 (横浜市)|美しが丘]]は、[[多摩田園都市]]構想により誕生した、新興の高級住宅街である<ref>”[https://style.nikkei.com/article/DGXMZO97375270X10C16A2I00000/ 「金曜日の妻たちへ」の舞台も… 郊外でも進む高齢化]”NIKKEI STYLE(2016.02.21. 日本経済新聞)</ref>。[[逗子市]]の[[披露山庭園住宅]]もまた、昭和40年代に分譲された新興の高級住宅地であり、「日本の[[ビバリーヒルズ]]」などと呼ばれた<ref>“[https://www.city.zushi.kanagawa.jp/zushiphoto/list/item.html?code=994 開発が始まった披露山庭園住宅(昭和48年)]”逗子市</ref>。
: [[横浜市]][[中区 (横浜市)|中区]][[山手 (横浜市)|山手]]は、明治期の[[外国人居留地]]に端を発し、古くから高級住宅街として知られている<ref>“[https://www.sankei.com/article/20220322-FXPTMC6RFROBBGKDRYR3YPITPI/?outputType=amp 公示地価 神奈川県の住宅地、一転上昇 回復基調]”産経ニュース(2022.03.22)</ref>。[[鎌倉市]][[鎌倉山]]は、昭和初期から別荘地として分譲された歴史を持ち、その運営会社が経営不振に陥った後は頒布資料による高級イメージ戦略など、住民らの努力により高級住宅地へと変容していった<ref>{{Cite journal|和書|author=赤松加寿江, 片山伸也, 水沼淑子, 奥山信治 |year=2012 |title=昭和初期の別荘地開発と住宅地形成に関する研究 |url=https://doi.org/10.20803/jusokenronbun.38.0_113 |journal=住総研研究論文集 |ISSN=21878188 |publisher=住総研 |volume=38 |pages=113-124 |doi=10.20803/jusokenronbun.38.0_113}}</ref>。横浜市[[青葉区 (横浜市)|青葉区]][[美しが丘 (横浜市)|美しが丘]]は、[[多摩田園都市]]構想により誕生した、新興の高級住宅街である<ref>”[https://style.nikkei.com/article/DGXMZO97375270X10C16A2I00000/ 「金曜日の妻たちへ」の舞台も… 郊外でも進む高齢化]”NIKKEI STYLE(2016.02.21. 日本経済新聞)</ref>。[[逗子市]]の[[披露山庭園住宅]]もまた、昭和40年代に分譲された新興の高級住宅地であり、「日本の[[ビバリーヒルズ]]」などと呼ばれた<ref>“[https://www.city.zushi.kanagawa.jp/zushiphoto/list/item.html?code=994 開発が始まった披露山庭園住宅(昭和48年)]”逗子市</ref>。


==== 中部地方 ====
==== 中部地方 ====
; [[愛知県]]
; [[愛知県]]
: [[名古屋市]]では、[[昭和区]][[南山町 (名古屋市)|南山]]や[[八事]]とその周辺の丘陵地一帯が高級住宅街となっている<ref>{{Cite web |url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/aija/60/471/60_KJ00004221194/_pdf/-char/ja |title=八事丘陵地における住宅地の形成過程とその空間的特質について |access-date=2022年10月20日}}</ref>。[[1939年]][[八事]]風致地区として指定された、計画的田園都市である。尾張高野の名で知られた[[興正寺 (名古屋市)|興正寺]]など風光明媚な文化人の保養地であったことに起因する。これらの計画にあたり、八事の有力者である、料理旅館(現在は老舗料亭)の[[八勝館]]の館長柴田次郎にも影響を及ぼし、周辺の都市住宅の開発が進行した<ref>{{Cite web |url=https://core.ac.uk/download/pdf/228782479.pdf |title=風致地区制度創設期における 風致育成概念の存在と風致協会の意義 |access-date=202210月19日}}</ref>。[[1970年]]には、名古屋市風致地区建築等規制条例が施行され、市の計画的な[[建ぺい率]]の制限や植栽への配慮等の住宅環境向上が図られた<ref>{{Cite web |url=https://www.city.nagoya.jp/ryokuseidoboku/cmsfiles/contents/0000010/10356/jourei.pdf |title=名古屋市風致地区内建築等規制条例 |access-date=2020年10月19日}}</ref>。現在は昭和区南山町、[[五軒家町]]、[[汐見町 (名古屋市)|汐見町]]、[[高峯町 (名古屋市)|高峯町]]、[[瑞穂区]][[春山町 (名古屋市)|春山町]]、[[松栄町 (名古屋市)|松栄町]]など一帯に風致地区の邸宅街が広がる。また、[[東区 (名古屋市)|東区]]の名古屋市の定める「[[白壁]]・主税・橦木町並み保存地区」が質の高い住宅が多いとされる<ref>[http://www.city.nagoya.jp/kankobunkakoryu/cmsfiles/contents/0000080/80116/shirakabe_keikaku.pdf 名古屋市白壁・主税・橦木町並み保存地区保存計画|名古屋市]</ref>。
: [[名古屋市]]では、[[昭和区]][[南山町 (名古屋市)|南山]]とその周辺一帯が[[1939年]]より[[八事]]風致地区として計画・指定された高級住宅街とっている。尾張高野の名で知られた[[興正寺 (名古屋市)|興正寺]]など風光明媚な文化人の保養地であったことに起因する。これらの計画にあたり、八事の有力者である、料理旅館(現在は老舗料亭)の[[八勝館]]の館長柴田次郎にも影響を及ぼし、周辺の田園都市の開発が進行した<ref>{{cite journal|和書 |url=http://id.nii.ac.jp/1186/00000230/ |author=阿部伸太 |year=2006 |title=風致地区制度創設期における風致育成概念の存在と風致協会の意義 |journal=東京農業大学農学集報 |publisher=東京農業大学 |volume=50 |issue=4 |pages=121-129 |naid=110004091303 |ISSN=0375-9202 |access-date=2022-10-20}}</ref>。[[1970年]]には、名古屋市風致地区建築等規制条例が施行され、市の計画的な[[建ぺい率]]の制限や植栽への配慮等の住宅環境向上が図られた<ref>{{Cite web |url=https://www.city.nagoya.jp/ryokuseidoboku/cmsfiles/contents/0000010/10356/jourei.pdf |title=名古屋市風致地区内建築等規制条例 |access-date=2020年10月19日}}</ref>。また、[[東区 (名古屋市)|東区]]の名古屋市の定める「[[白壁]]・主税・橦木町並み保存地区」が質の高い住宅が多いとされる<ref>[http://www.city.nagoya.jp/kankobunkakoryu/cmsfiles/contents/0000080/80116/shirakabe_keikaku.pdf 名古屋市白壁・主税・橦木町並み保存地区保存計画|名古屋市]</ref>。


==== 近畿地方 ====
==== 近畿地方 ====
116行目: 117行目:


; [[大阪府]]
; [[大阪府]]
: 大阪府においては[[帝塚山]]、また、都心から電車で数十分の位置にある[[北摂]]の衛星都市、地理的には[[北摂山系]]の南側に高級住宅街が数多く展開している。そのうち特筆すべきものとして、[[1910年]]([[明治]]43年)に日本で初めて私鉄系不動産が分譲した邸宅街である[[池田市]][[室町 (池田市)|室町]]<ref>[http://lib-ikedacity.jp/kyodo/kyodo_bunken/muromachi_jutaku/index.html 室町住宅 | 池田市立図書館]</ref>、日本初の田園都市型郊外住宅地とされる[[吹田市]][[千里山#千里山住宅地|千里山住宅地]]<ref>[https://mukogawa.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=1828&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1 「イギリスの田園都市レッチワースと ニューガーデンシティー舞多聞の実験」神戸芸術工科大学学 齊木崇人]</ref>、総合商社による宅地開発として日本最初の事例である[[高槻市]][[南平台 (高槻市)|南平台]]<ref>[http://nanpeidai-fudousan.jp/img/news01.pdf 商工ニュースたかつき2016年7月号]([[2018]][[平成]]30年)6月10日閲覧)</ref>がある。
: 大阪府においては[[帝塚山]]、また、都心から電車で数十分の位置にある[[北摂]]の衛星都市、地理的には[[北摂山系]]の南側に高級住宅街が数多く展開している。そのうち特筆すべきものとして、[[1910年]]([[明治]]43年)に日本で初めて私鉄系不動産が分譲した邸宅街である[[池田市]][[室町 (池田市)|室町]]<ref>[http://lib-ikedacity.jp/kyodo/kyodo_bunken/muromachi_jutaku/index.html 室町住宅 | 池田市立図書館]</ref>、日本初の田園都市型郊外住宅地とされる[[吹田市]][[千里山#千里山住宅地|千里山住宅地]]<ref>{{Cite journal|和書 |url=https://doi.org/10.14993/00001790 |title=イギリスの田園都市レッチワースとニューガーデンシティー舞多聞の実験 |journal=武庫川女子大学生活美研究所紀要 |publisher=武庫川女子大学 |author=齊木崇人 |year=2019 |volume=29 |pages=59-75 |doi=10.14993/00001790 |ISSN=0916-9709}}</ref>、総合商社による宅地開発として日本最初の事例である[[高槻市]][[南平台 (高槻市)|南平台]]<ref>[http://nanpeidai-fudousan.jp/img/news01.pdf 商工ニュースたかつき2016年7月号](2018年(平成30年)6月10日閲覧)</ref>がある。


: 大阪府東部・南部の高級住宅街としては、[[堺市]]西区の浜寺昭和町周辺は明治時代末期から別荘地として開発された地区で、昭和に入り高級住宅の建設が進んだ<ref>[https://www.pref.osaka.lg.jp/kenshi_kikaku/keikan-ustukushii/100kei-51.html 大阪府/浜寺昭和町のまちなみ(堺市)]</ref>。
: 大阪府東部・南部の高級住宅街としては、[[堺市]]西区の浜寺昭和町周辺は明治時代末期から別荘地として開発された地区で、昭和に入り高級住宅の建設が進んだ<ref>[https://www.pref.osaka.lg.jp/kenshi_kikaku/keikan-ustukushii/100kei-51.html 大阪府/浜寺昭和町のまちなみ(堺市)]</ref>。
122行目: 123行目:
; [[兵庫県]]
; [[兵庫県]]
[[File:Ashiya river03s3872.jpg|thumb|200px|[[芦屋川]]沿い([[芦屋市]])]]
[[File:Ashiya river03s3872.jpg|thumb|200px|[[芦屋川]]沿い([[芦屋市]])]]
: [[芦屋市]]には敷地面積の最低限度等を[[条例]]で定める{{要検証範囲|日本で唯一の|date=2022-07}}景観保護条例、{{要出典|範囲=所謂「豪邸条例」|date=2022-07}}が存在する。その対象地区は[[六甲山]]麓の[[六麓荘町]]と六甲山中腹は[[国立公園]]内の[[奥池|奥池南町]]で、{{要出典|範囲=前者は[[電線地中化]]の日本における先駆、後者は市街地へ行くには[[有料道路]]利用が必須などで知られる|date=2022年7月}}<ref>{{Cite news|和書|title=芦屋ブランド守る条例案 新築は敷地400平方メートル以上|newspaper=朝日新聞|date=2006-12-04|page=夕刊14面}}</ref><ref>{{Cite news|和書|title=敷地400平方m未満の新築ダメ 兵庫・芦屋市の豪邸限定条例可決|newspaper=読売新聞|date=2006-12-22|page=東京夕刊1面}}</ref><ref>[https://www.city.ashiya.lg.jp/kenchikushidou/kaihatsushidou/kaihatsu_03.html 芦屋市/奥山地区(奥池町・奥池南町等)の規制内容]</ref>。このほかにも芦屋市には山手を中心に数多くの邸宅街があり、浜手では日本初のプライベート[[係留施設|バース]]付きの邸宅街を擁する[[ベルポート芦屋]]レジデンシャルコーヴ(涼風町)が特筆される<ref>[http://news-sv.aij.or.jp/academic/seika/07houkoku/g.pdf 2006~2007年度 調査研究関係委員会活動報告会 海洋建築委員会 報告-「海洋建築」のさらなる伸展に向けて-2008.3.19]</ref><ref>[http://marinajapan.jp/residential-cove/ Residential Cove | Marina Japan]</ref>。
: [[芦屋市]]には敷地面積の最低限度等を[[条例]]で定める{{要検証範囲|日本で唯一の|date=2022-07}}景観保護条例、{{要出典|範囲=所謂「豪邸条例」|date=2022-07}}が存在する。その対象地区は[[六甲山]]麓の[[六麓荘町]]と六甲山中腹は[[国立公園]]内の[[奥池|奥池南町]]で、{{要出典|範囲=前者は[[電線地中化]]の日本における先駆、後者は市街地へ行くには[[有料道路]]利用が必須などで知られる|date=2022年7月}}<ref>{{Cite news|和書|title=芦屋ブランド守る条例案 新築は敷地400平方メートル以上|newspaper=朝日新聞|date=2006-12-04|page=夕刊14面}}</ref><ref>{{Cite news|和書|title=敷地400平方m未満の新築ダメ 兵庫・芦屋市の豪邸限定条例可決|newspaper=読売新聞|date=2006-12-22|page=東京夕刊1面}}</ref><ref>[https://www.city.ashiya.lg.jp/kenchikushidou/kaihatsushidou/kaihatsu_03.html 芦屋市/奥山地区(奥池町・奥池南町等)の規制内容]</ref>。このほかにも芦屋市には山手を中心に数多くの邸宅街があり、浜手では日本初のプライベート[[係留施設|バース]]付きの邸宅街を擁する[[ベルポート芦屋]]レジデンシャルコーヴ(涼風町)が特筆される<ref>[http://news-sv.aij.or.jp/academic/seika/07houkoku/g.pdf 2006~2007年度 調査研究関係委員会活動報告会 海洋建築委員会 報告-「海洋建築」のさらなる伸展に向けて-2008.3.19]</ref><ref>[http://marinajapan.jp/residential-cove/ Residential Cove | Marina Japan]</ref>。
: [[神戸市]]においては、[[東灘区]]の[[御影 (神戸市)|御影]]・[[住吉山手]]に大邸宅群が形成されている。これは明治後期から昭和初期まで、このエリア(旧・[[住吉村 (兵庫県)|住吉村]])に居住する[[富豪]]数が日本最多であった事に由る<ref>{{Cite web|url=http://www.jusoken.or.jp/pdf_paper/2004/0305-0.pdf|title=住宅総合研究財団研究論文集No.31, 2004年(平成16年)版『旧住吉村の住宅地開発とその特徴-日本の近代萌芽期における郊外住宅地-』|work=|author=山本ゆかり・萬谷治子・加藤拓郎|publisher=住宅総合研究財団|accessdate=2019-04-16}}</ref>。
: [[神戸市]]においては、[[東灘区]]の[[御影 (神戸市)|御影]]・[[住吉山手]]に大邸宅群が形成されている。これは明治後期から昭和初期まで、このエリア(旧・[[住吉村 (兵庫県)|住吉村]])に居住する[[富豪]]数が日本最多であった事に由る<ref>{{Cite journal|和書|author=山本ゆかり, 萬谷治子, 加藤拓郎 |year=2004 |title=旧住吉村の住宅地開発とその特徴:日本の近代萌芽期における郊外住宅地 |url=https://doi.org/10.20803/jusokenold.31.0_91 |journal=住宅総合研究財団研究論文集 |ISSN=18802702 |publisher=住宅総合研究財団 ; 東京 |issue=31 |pages=91-102 |doi=10.20803/jusokenold.31.0_91 |accessdate=2022-09-26}}</ref>。


; [[奈良県]]
; [[奈良県]]
130行目: 131行目:
==== 九州地方 ====
==== 九州地方 ====
; [[福岡県]]
; [[福岡県]]
: [[福岡市]][[中央区 (福岡市)|中央区]]の[[大濠公園|大濠]]、[[浄水通]]、[[平尾 (福岡市)|平尾]]などは、大正から昭和初期にかけて開発され、高級住宅街として知られる<ref>“[https://www.data-max.co.jp/article/36446 コンパクトシティ・福岡 4つの高級住宅街の特徴(2)]データ・マックス(2020.06.30)</ref><ref>“[https://www.data-max.co.jp/article/36447 コンパクトシティ・福岡 4つの高級住宅街の特徴(3)]データ・マックス(2028.07.01)</ref>。
: [[福岡市]][[中央区 (福岡市)|中央区]]の[[大濠公園|大濠]]、[[浄水通]]、[[平尾 (福岡市)|平尾]]などは、大正から昭和初期にかけて開発され、高級住宅街として知られる<ref>“[https://www.data-max.co.jp/article/36446 コンパクトシティ・福岡 4つの高級住宅街の特徴(2)] データ・マックス NetIB-News(2020.06.30)</ref><ref>“[https://www.data-max.co.jp/article/36447 コンパクトシティ・福岡 4つの高級住宅街の特徴(3)] データ・マックス NetIB-News(2020.07.01)</ref>。
; [[長崎県]]
; [[長崎県]]
: [[長崎市]]の[[平野町]]は、古くから高級住宅街として知られたが、[[長崎市への原子爆弾投下|原爆]]によって甚大な被害を受けた<ref>“[https://www.city.nagasaki.lg.jp/heiwa/3030000/3030200/p005165.html 浜口町北部の惨状(現在の平野町)“] 長崎市(2013.03.01)</ref>。[[佐世保市]]の[[テーマパーク]]、[[ハウステンボス]]の隣接地には、[[オランダ]]の高級住宅街を再現した「ワッセナー」という分譲地がある。定住者は2割程度で、別荘としての利用が多いというが<ref>”[https://o-uccino.com/front/articles/47957 長崎ハウステンボスにある「ワッセナー」とは?別荘活用が多い分譲住宅に住む魅力]”オウチーノニュース(2021.08.31)</ref>、公式ホームページでは「高級別荘地(分譲住宅)」と紹介している。
: [[長崎市]]の[[平野町]]は、古くから高級住宅街として知られたが、[[長崎市への原子爆弾投下|原爆]]によって甚大な被害を受けた<ref>“[https://www.city.nagasaki.lg.jp/heiwa/3030000/3030200/p005165.html 浜口町北部の惨状(現在の平野町)“] 長崎市(2013.03.01)</ref>。[[佐世保市]]の[[テーマパーク]]、[[ハウステンボス]]の隣接地には、[[オランダ]]の高級住宅街を再現した「ワッセナー」という分譲地がある。定住者は2割程度で、別荘としての利用が多いというが<ref>”[https://o-uccino.com/front/articles/47957 長崎ハウステンボスにある「ワッセナー」とは?別荘活用が多い分譲住宅に住む魅力]”オウチーノニュース(2021.08.31)</ref>、公式ホームページでは「高級別荘地(分譲住宅)」と紹介している。
139行目: 140行目:


=== 台湾 ===
=== 台湾 ===
古くから[[外国人]]が居住した[[台北市]]の[[士林区]][[天母]]が高級な住宅街の雰囲気をかもし出しているとして有名<ref>[https://www.koryu.or.jp/Portals/0/images/publications/magazine/2013/3/03-05.pdf 「交流 2013.3 No.864」公益財団法人日本台湾交流協会]</ref>。
古くから[[外国人]]が居住した[[台北市]]の[[士林区]][[天母]]が高級な住宅街の雰囲気をかもし出しているとして有名<ref>{{PDFlink|[https://www.koryu.or.jp/Portals/0/images/publications/magazine/2013/3/03-05.pdf 「交流 2013.3 No.864」公益財団法人日本台湾交流協会]}}</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
146行目: 147行目:


=== 出典 ===
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
{{Reflist|30em}}


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
{{No footnotes|section=1|date= 2020年10月1日 (木) 08:40 (UTC)}}
{{No footnotes|section=1|date= 2020年10月1日 (木) 08:40 (UTC)}}
*「[[阪神間モダニズム]]」(淡文社)1998年
* 「[[阪神間モダニズム]]」(淡文社)1998年
* {{Cite journal|和書|author=戸田清子 |title=阪神間モダニズムの形成と地域文化の創造 |url=http://id.nii.ac.jp/1447/00000872/ |journal=奈良県立大学研究季報 |issn=1346-5775 |publisher= |year=2009 |month=mar |volume=19 |issue=4 |pages=49-77 |naid=110009621502}}
* {{Cite journal|和書|author=戸田清子 |title=阪神間モダニズムの形成と地域文化の創造 |url=http://id.nii.ac.jp/1447/00000872/ |journal=奈良県立大学研究季報 |issn=1346-5775 |publisher= |year=2009 |month=mar |volume=19 |issue=4 |pages=49-77 |naid=110009621502}}



2022年10月20日 (木) 09:52時点における版

近世の高級住宅街・長町武家屋敷跡金沢市

高級住宅街(こうきゅうじゅうたくがい)とは、一般的に高額な住宅邸宅豪邸)が集中的に分布していることを特徴とする特定の都市の地域のことである。お屋敷町(おやしきまち)、邸宅街(ていたくがい)とも呼ばれる。その定義は主観的なものであり、要件は国や地域によって異なるが、不動産の鑑定評価等において大きなブランド力を保持していることも事実である。

概要

定義は多分に曖昧かつ主観的であり、下記の要件についても国や地域・時代によっても認識は多様である。

日本においては、国土交通省の「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」では、「住宅地域」を①~④の4つに細分化し、①を「敷地が広く、街区及び画地が整然とし、植生と眺望、景観等が優れ、建築の施工の質の高い建物が連たんし、良好な近隣環境を形成する等居住環境の極めて良好な従来から名声の高い地域」と定義する[1]。これを「高級住宅地域」とする理解が見られる[2]

固定資産評価においては、「敷地が広大で、かつ、平均的にみて、一般住宅よりも多額の建築費を要する住宅の宅地が連続集中している地区」が「高級住宅地区」と定義されている[3][4]

立ち並ぶ建物が共同住宅一戸建てかといった形態で高級住宅街を定義できるものではないが、高層マンション群は、その独自の景観や居住環境から、高級住宅街として定義されないこともある[5]。この問題からしばしば伝統富裕層と新興富裕層の対立構造がメディアなどによって描かれる場合もある[5]

高級別荘地は、住宅の用途・目的の違い(「日常生活のための利用」か「余暇のための利用」かの違い)を除けば、高級住宅街とほぼ同義である。実際、時代とともに高級別荘地から高級住宅街へと変容した地域も多い。別荘地でありながら移住者がいる場合もある。また高級別荘地は、日常生活を送る上で必須ではないレジャー施設である別荘にまで多額の費用を投じることができるほどの財力がある個人や法人のコミュニティであるため、潜在的に莫大な資金力を保有していると考えられている。伝統的な避暑地サマーリゾートでは「夏になると首都が移転してくる」といった比喩が生まれるほど、高級別荘地は高級住宅街との人的往来も顕著に見られる。一方で「高級」とはいえ、都市化している住宅街とは異なり、別荘地の多くは、森林や海浜などの自然が周囲に広がる、朴訥さや牧歌的な雰囲気を有した田舎地方にあることも大きな特徴である。例として日本では、軽井沢[6]日光中禅寺湖畔[7]京都南禅寺界隈[8]ニセコ[9]等が高級別荘地として知られる。その他世界の有名な別荘地については、別荘#世界の有名な別荘地を参照。

欧州における高級住宅街

イギリス

ロンドン市内サウス・ケンジントンen, ケンジントン&チェルシー区)の街並
エジンバラのブランツフィールド (en)

ロンドン中心部のメイフェア地区(シティ・オブ・ウェストミンスター)、ベルグレイヴィア地区(シティ・オブ・ウェストミンスター及びケンジントン&チェルシー区)などが最高級住宅地とされているが、サウス・ケンジントン地区やチェルシー地区(ケンジントン&チェルシー区)、リンカーンズ・イン・フィールズ界隈(カムデン区)なども知られている。なお、ロンドン市内の高級住宅街の殆どが高級アパートメントである。

イギリスの他の地域の例としては、スコットランドエジンバラにある、マーチモント (en)、ブランツフィールド (en)、カムリー・バンク (en)、ジョッパ (en) の各地区が知られている。

ドイツ

ベルリン南西部のツェーレンドルフ地区 (en) 等が位置するシュテーグリッツ=ツェーレンドルフ区内が高級住宅地とされているが、隣接するグリューネバルド地区 (en, シャルロッテンブルク=ヴィルマースドルフ区) も知られている。

また、デュッセルドルフ近郊メアブッシュ (en) には裕福な住人が多く、1人当たりの納税額が例年ドイツ国内で1位である。緑が多く落ち着いた街並みとなっている。メアブッシュ市内のビューダリッヒ地区 (de) には高級住宅街が2ヶ所あり、そこにはプールが付いた大きな庭のある豪邸が多く立ち並んでいる。デュッセルドルフから西に約10kmの位置にある。

フランス

パリの行政区は同心円を形成するように番号が付けられており、その多くに17世紀と18世紀に建てられた歴史的な邸宅があり、一部はフランス政府が所有している[10]

エッフェル塔からパッシーパリ16区)を望む。下を流れるのはセーヌ川

パリ中心部のサン=ルイ島4区)が最高級住宅地とされているが、元々スペースが狭いパリ市街の中でも、更に狭い島でしかない。それは“貴族街”とも呼ばれるアンヴァリッド地区やフォーブール・サンジェルマン界隈(7区)でも事情は変わらず、旧貴族富豪らが暮らすスペースとしてパッシー界隈(16区)が発展したように、高級化の波はパリ市街西部に拡がっていった歴史を持つ。これらの他に、サンジェルマン・デ・プレ地区(6区)、シャンゼリゼ通り周辺やフォーブール・サントノレ界隈(8区)等が知られている。

フランスの場合、英米圏などと異なり、大都市の都心部やかつての城壁に囲まれた地域が一般的に高級住宅街とされているが、例外として挙げれば、パリ近郊だとヌイイ=シュル=セーヌが隣接する16区と並ぶグレードの高さで知られている。パリ16区(パッシー、オートゥイユ)からヌイイまでまとめて (Neuilly-Auteuil-Passy)、"NAP"(ナップ、en, fr)と呼称されている。

モンテカルロモナコ)、グローバル・プロパティ・ガイドによると、世界で最も高価な住宅街 [11]

なお、高級住宅地ないし高級リゾート地としては、モナコも包含するコート・ダジュールが世界的に著名である。もう1つの有名な南フランスの地区は、多くの美術館がある観光地であるニースの街にあるシミエがあげられる[12]

スペインとポルトガル

パルケ・ダス・ナソンイス地区リスボンポルトガルの旗 ポルトガル

スペインなどヒスパニック諸国では、そのようなタイプの命名法はなく、ポルトガルなどルゾフォニアではめったに使用されない[13]。ただし経済的に豊かな人口密集地がある都市の場合、例えばリスボンであれば、ラパ、エストレラ、パルケ・ダスナッソエス、プリンチペレアルとシアードなどいくつかみられる。

ロシアとウクライナ

ゴンチャリ-コズミャキ、キエフの中心、 ウクライナ
カモヴニキ、中央行政区モスクワロシアの旗 ロシア

ロシアでは、共産主義政府とソ連の崩壊後、高貴な地域の現象がより一般的になった。これらの地域で最もよく知られているのはルブリオフカである。事実上、ルブリオフカは公式の地区ではなく: ジュコフカ、バルビカ、ゴーリキー2、ゴーリキー-10、セレブリアニーボルなどのゲーテッドコミュニティで構成されている。18世紀の終わりに、16の王子一族と5人のコンダル一族がそこに住んでいた。しかし、ヨシフ・スターリンダーチャのおかげで、近所は1910年代に自分自身を崇拝した。その後まもなく、ソ連の政治家と知性のメンバーは、近所に彼らのダーチャを建てた。2000年代以降、この地域は政治エリートのメンバーの拠点の一つである(その中には、ドミートリー・メドヴェージェフ[14]ウラジーミル・プーチン[15]ミハイル・ゴルバチョフロシアのオリガルヒモスクワの有名人がいる)。ルブリオフカの地価は、今日、モスクワ州とすべてのポストソビエト諸国の中で最も高価である。Forbesによると、ここに位置する邸宅の1つは、世界で最も高価な5つのプロパティのリストに含まれている[16]

ウクライナに関する限り、キエフの南にコンシャ・ザスパがある。他の高貴な地域のように、コンシャ・ザスパは徐々にそして効果的に高潔になった。近隣は閉鎖されたマンションで構成されており、高速道路の左側が最も価値があると考えられている。コンシャ・ザスパは、その高価な地形と金持ちの住民、公人、政治家、政治家でウクライナで有名である[17]

北米における高級住宅街

アメリカ

広大な国土を持つアメリカにおいては大半の場合、高級住宅街は都心部から十数キロメートル以上離れた郊外に存在する。

マンハッタン アッパー・イースト・サイド界隈ミュージアム・マイル (5番街)の街並
マリブロサンゼルス郡は、米国で最も裕福な地域の一つである。
ビバリーヒルズの街とベルエアとホルムビーヒルズの近隣(写真)は、ロサンゼルス郡で最も高価な地域であるため、プラチナトライアングル(トライアングルプラチナ)と呼ばれている。アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 [18]

東海岸を見ると、ニューヨーク都市圏では、ウエストチェスターニュージャージー州のアルパイン、コネチカット州などが知られている。
西海岸をみると、サンフランシスコを中心とするサンフランシスコ・ベイエリア都市圏では、サンフランシスコ市の緑豊かなプレシディオ地区、スタイリッシュな店が軒を並べるパシフィックハイツ地区、ゴールデンゲートブリッジ対岸のサウサリート、またサンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジ対岸の大学都市であるバークレーの背後に広がる丘陵地帯バークレー・ヒルズ、その尾根づたいのケンジントン市やオークランドのクレアモント地区などがサンフランシスコ湾を見渡す好立地条件にあり一般的に高級住宅街として知られている。ロサンゼルス都市圏では、ビバリーヒルズ、ベルエア、パサデナサンタモニカ等が知られている。マリブの他[19]、カラバサス[注 1]は"ハリウッドセレブ"の住む高級住宅街として映画にも登場する[20]。その他、ハワイ州オアフ島のカハラなども中心部から離れた場所にある。

ニューヨーク市の中心部であるマンハッタンには一戸建てがほとんど無く、数少ない例外であるがアッパー・イースト・サイドにはタウンハウスが存在し数十億円で取引されている。高級アパートメントが立ち並び治安や環境の良い地域はアッパー・イースト・サイドやグリニッジ・ヴィレッジが代表的である。北東部に位置するマサチューセッツ州ボストンビーコンヒルも数少ない例外の1つであり、一戸建てが非常に少ない。

概して経済力による住み分けの激しいアメリカは「豪邸が立ち並んでいるから高級住宅街」というわけではなく「どのような人(人種職業など)が住んでいるか」が重要となる。事実、その国土の広さがもたらす地価の安さ及び人口密度の低さ故、立地次第では中流階級でも巨大な土地にプール付きの邸宅を構えることも可能である(日本の住宅と比べれば大半の一戸建てが「豪邸」と呼ぶに相応しいサイズである)。

日本の都市はごく一部の地域を除いてオフィス街と住宅街(マンション等)が隣接していることも多いが、アメリカにおいてはその区別は非常に明確で、マンハッタンなどの一部の例外を除き、殆どの都市において一定以上の経済力を持つ富裕層で家族をもつ世帯は、概して郊外への移住を好む。主な理由として緑が多く閑静で好環境であること、貧困層が少ないため治安が良いこと、サイズの大きな家に住めること、などがある。デメリットとしては都心部への通勤時間が長くなることがあるが、アメリカの労働環境やアメリカ人富裕層の住宅事情を鑑みた場合、メリットがデメリットを遥かに凌いでいる。またこれらの郊外高級住宅街のいくつかは「ゲーテッド・コミュニティ」と呼ばれ、周辺を監視カメラなどを装備した塀で覆い、出入り口には警備員を常駐させたゲートを構えるなどして内部の治安を保つようにされている。

このように、「レジデンシャル・セグレゲーション」と呼ばれるアメリカの経済格差による住み分けは激しく、ニューヨーク都市圏などの一部の例外(なおニューヨーク都市圏にも、上述の郊外のウエストチェスターにスカースデールやハーツデールなどの高級住宅街がある)を除けば「郊外=富裕層 都心=貧困層」と考えても概ね差し支えない。例えば郊外で生活する為には車の購入は必須であり、賃貸住宅も少ない(アパートメントはほぼ皆無)ため必然的にローンを組める信頼度が必要なことなど「郊外族」にはそれ相当の収入が必要となる一方、都心部の場合公共交通機関が安価で利用でき、尚且つ賃貸住宅(主にアパートメント)に入居するので審査が軽い。もちろん多くの大都市の都心部にも富裕層は在住しているが全体的な比率や人口動性を見た場合、郊外の住宅街へと移り住むことがはるかに多い。

カナダ

ウェストバンクーバー

カナダ西部太平洋岸のブリティッシュコロンビア州バンクーバー市を中心とするバンクーバー都市圏では、ダウンタウンの郊外北西に位置するウェストバンクーバー市南部が、大富豪の巨大邸宅が連なるエリアとして知られている。

メキシコ

ポランコメキシコ市メキシコの旗 メキシコ

メキシコでは、サン・アンヘルロマス・デ・チャプルテペックポランコハルディネス・デル・ペドレガルなどの例がある。

東亜における高級住宅街

日本

関東地方

埼玉県
さいたま市北区盆栽町は、大正時代に開発され、先進的な区画整備を行なったことから、高級住宅街として知られるようになった。さいたま市浦和区高砂岸町常磐は、県内有数の高級住宅街として知られる[21]所沢市松が丘地区[22]西武グループが開拓したニュータウンの高級住宅街であるが、バブル崩壊や高齢化の影響で地価が低下している[23]
千葉県
ワンハンドレッドヒルズ千葉市緑区
市川市国府台菅野真間市川本八幡一帯は、大正時代に「東の鎌倉」と称し別荘地として分譲され、将校たちが邸宅を構えた[24]。船橋市の海神台花輪台は、昭和初期に京成電鉄京急によって高級住宅地として分譲され、市内では「東の海神、西の花輪台」と称された[24][25]千葉市緑区には、バブル期に1戸あたり数億円から数十億円で販売されたゲーテッドコミュニティ形式を採用した住宅街「ワンハンドレッドヒルズ」が存在するが[26]、バブル崩壊や高齢化の影響で地価が低下している。浦安市の一部地域(舞浜新浦安など)は、戦後の埋め立て整備により高級住宅街として知られるようになっている[27]
東京都
田園調布大田区
御殿山品川区
明治時代以降、江戸市街のうち武家屋敷などが建ち並んでいた山の手を中心とするエリアに富裕層が居を構えるようになり、初期の高級住宅街が形成された。白金台高輪三田等)、四谷牛込払方町市谷若宮町等)、番町麹町紀尾井町赤坂(赤坂・南青山等)、麻布南麻布元麻布六本木広尾等)、小石川小日向音羽関口白山目白台等)、本郷(本郷・千駄木本駒込等)といったエリアが該当する[28]。しかし、1923年大正12年)に東京中心部を襲った関東大震災はこの流れを大きく変える事となり、震災を契機として武家屋敷跡をルーツにしない高級住宅街が多く誕生する。渋谷松濤富ヶ谷神山町南平台町等)や世田谷区桜新町深沢岡本上北沢などがそれに該当する[28]。大正期には、さらに鉄道会社が東京の郊外に電車を走らせその沿線に高級住宅街を開発していく。その代表例として知られているのが大田区田園調布である。渋沢栄一などを中心として1918年(大正7年)に設立された田園都市株式会社(現在の東急株式会社の源流の一つ)が、当時交通が不便だったエリアに鉄道を敷設し住宅地としての開発を進めるという、阪急の手法を東京で最初に用いた事例である。1922年(大正11年)洗足地区(洗足田園都市)、翌年多摩川台地区(後の田園調布)が分譲され、1980年昭和55年)には星セント・ルイスのギャグ「田園調布に家が建つ」の流行を経て、現在は全国に知られる高級住宅地として認知されている[29]。同様に東急線自由が丘奥沢久が原等々力小田急線成城経堂赤堤などが高級住宅街として開発され、現在でも知られている[28]。昭和期には、品川区城南五山東五反田上大崎北品川・高輪)や渋谷区の徳川山(代々木西原)が新興の高級住宅街として開発された[28]
神奈川県
横浜市中区山手は、明治期の外国人居留地に端を発し、古くから高級住宅街として知られている[30]鎌倉市鎌倉山は、昭和初期から別荘地として分譲された歴史を持ち、その運営会社が経営不振に陥った後は頒布資料による高級イメージ戦略など、住民らの努力により高級住宅地へと変容していった[31]。横浜市青葉区美しが丘は、多摩田園都市構想により誕生した、新興の高級住宅街である[32]逗子市披露山庭園住宅もまた、昭和40年代に分譲された新興の高級住宅地であり、「日本のビバリーヒルズ」などと呼ばれた[33]

中部地方

愛知県
名古屋市では、昭和区南山とその周辺一帯が、1939年より八事風致地区として計画・指定された高級住宅街となっている。尾張高野の名で知られた興正寺など風光明媚な文化人の保養地であったことに起因する。これらの計画にあたり、八事の有力者である、料理旅館(現在は老舗料亭)の八勝館の館長柴田次郎にも影響を及ぼし、周辺の田園都市の開発が進行した[34]1970年には、名古屋市風致地区建築等規制条例が施行され、市の計画的な建ぺい率の制限や植栽への配慮等の住宅環境向上が図られた[35]。また、東区の名古屋市の定める「白壁・主税・橦木町並み保存地区」が質の高い住宅が多いとされる[36]

近畿地方

近畿圏の高級住宅街は、大阪市帝塚山、また、北摂山系とそれに連なる六甲山系の南斜面、一般に北摂阪神と呼ばれる地区に多くみられる。その中でも現在の神戸市東部( 中央区灘区東灘区)・芦屋市西宮市宝塚市に相当する地域の山麓ラインに高級住宅街は集中しており、明治後期・大正昭和初期(阪神大水害発生まで)には「日本一の長者村」と呼ばれた旧・武庫郡住吉村(現・神戸市東灘区の住吉地区各町)も、その線上にある。なお、これらの邸宅街の多くは阪急神戸本線宝塚本線甲陽線今津線沿線に重なっているが、これは小林一三が主導した私鉄(=現在の阪急電鉄)路線網の拡充と宅地開発が連動していることによる。
京都府
京都市内では京都盆地を取り囲む山々に高級住宅街が点在し、中でも下鴨[37]に代表される左京区に多い。
大阪府
大阪府においては帝塚山、また、都心から電車で数十分の位置にある北摂の衛星都市、地理的には北摂山系の南側に高級住宅街が数多く展開している。そのうち特筆すべきものとして、1910年明治43年)に日本で初めて私鉄系不動産が分譲した邸宅街である池田市室町[38]、日本初の田園都市型郊外住宅地とされる吹田市千里山住宅地[39]、総合商社による宅地開発として日本最初の事例である高槻市南平台[40]がある。
大阪府東部・南部の高級住宅街としては、堺市西区の浜寺昭和町周辺は明治時代末期から別荘地として開発された地区で、昭和に入り高級住宅の建設が進んだ[41]
兵庫県
芦屋川沿い(芦屋市
芦屋市には敷地面積の最低限度等を条例で定める日本で唯一の[要検証]景観保護条例、所謂「豪邸条例」[要出典]が存在する。その対象地区は六甲山麓の六麓荘町と六甲山中腹は国立公園内の奥池南町で、前者は電線地中化の日本における先駆、後者は市街地へ行くには有料道路利用が必須などで知られる[要出典][42][43][44]。このほかにも芦屋市には山手を中心に数多くの邸宅街があり、浜手では日本初のプライベートバース付きの邸宅街を擁するベルポート芦屋レジデンシャルコーヴ(涼風町)が特筆される[45][46]
神戸市においては、東灘区御影住吉山手に大邸宅群が形成されている。これは明治後期から昭和初期まで、このエリア(旧・住吉村)に居住する富豪数が日本最多であった事に由る[47]
奈良県
奈良市学園前駅から学研奈良登美ヶ丘駅にかけて近鉄により造成された百楽園町、登美ヶ丘一丁目、二丁目の一部の住宅地は「高級イメージ」を持っているとされる[48]

九州地方

福岡県
福岡市中央区大濠浄水通平尾などは、大正から昭和初期にかけて開発され、高級住宅街として知られる[49][50]
長崎県
長崎市平野町は、古くから高級住宅街として知られたが、原爆によって甚大な被害を受けた[51]佐世保市テーマパークハウステンボスの隣接地には、オランダの高級住宅街を再現した「ワッセナー」という分譲地がある。定住者は2割程度で、別荘としての利用が多いというが[52]、公式ホームページでは「高級別荘地(分譲住宅)」と紹介している。

香港

ヴィクトリア・ピーク

香港島では、香港ピーク地区が高級住宅街とされる[53]

台湾

古くから外国人が居住した台北市士林区天母が高級な住宅街の雰囲気をかもし出しているとして有名[54]

脚注

注釈

  1. ^ 下記ソフィア・コッポラ作品映画『ブリングリング』の出典リンク先ページでは"カサバラス"となっているが、サンタモニカ北西にあるカラバサス英語版との間違い。

出典

  1. ^ 国土交通省 不動産鑑定評価基準運用上の留意事項
  2. ^ 津村孝『詳解・不動産鑑定評価の教科書』(プログレス,2010)38頁
  3. ^ 日本不動産研究所 固定資産評価用語辞典
  4. ^ 大和不動産鑑定 固定資産システム評価 用語集
  5. ^ a b "ゴーストタウン化する東京の高級住宅街…富裕層は厄介な広い一軒家より都心タワマンへ"Business Journal(2019.03.17)
  6. ^ 内田順文「軽井沢における「高級避暑地・別荘地」のイメージの定着について」『地理学評論』第62巻第7号、日本地理学会、1989年、495-512頁、doi:10.4157/grj1984a.62.7_495ISSN 00167444 
  7. ^ グラバーへの手紙 奥日光を愛した人に 12.夏湖畔に外務省がやってきた”下野新聞社
  8. ^ 五感で味わう京都・對龍山荘 名匠・植治の庭を歩く”NIKKEI STYLE(2017.09.23. 日本経済新聞社)
  9. ^ 高額物件が飛ぶように売れる北海道 コロナ禍で何が?”NHK北海道(2021.02.26)
  10. ^ Imóveis de luxo: Governo francês se desfaz de mansões”. Web Luxo (20 de setembro de 2007). 14 de novembro de 2011時点のオリジナルよりアーカイブ。14 de dezembro de 2019閲覧。
  11. ^ Brasil aparece na 76ª posição em ranking de mercados de imóveis mais caros”. UOL (13 de março de 2009). 14 de dezembro de 2019閲覧。
  12. ^ Nice/Cannes por área - Cimiez & Arredores de Nice”. Estadão. 7 de abril de 2010時点のオリジナルよりアーカイブ。14 de dezembro de 2019閲覧。
  13. ^ Pesquisa em alguns jornais desses países.
  14. ^ Белый Кремль”. itogi (2009年6月25日). 2009年6月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月28日閲覧。
  15. ^ Путины меняют адрес”. Ленправда (2000年11月8日). 2000年11月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月28日閲覧。
  16. ^ Почем сотка на Рублевке?”. Izvestia (2009年6月25日). 2009年6月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月27日閲覧。
  17. ^ Конча-Заспа: село главных богачей страны”. segodnya (2010年4月7日). 2010年4月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月28日閲覧。
  18. ^ Annette Haddad (7 de julho de 2007). “No housing slump for super-rich”. Los Angeles Times. 14 de dezembro de 2019閲覧。
  19. ^ 原因は放火?カリフォルニアの高級住宅地マリブで、またも山火事 映画.com 2007年11月28日
  20. ^ INTERVIEW|ハリウッドのクローゼットを荒らしまくったティーン窃盗団 『ブリングリング』 ソフィア・コッポラ来日記念インタビュー(1) OPENERS 2013年12月2日
  21. ^ 『東京土地のグランプリ 2012-2013』講談社、2012年、151-153頁
  22. ^ 所沢市HP「松が丘の住宅地」
  23. ^ かつては“高嶺の花”ニュータウン いまは地価8分の1 一挙に高齢化 (1-2) 〈AERA〉|AERA dot_ (アエラドット)
  24. ^ a b 三浦展『娯楽する郊外』柏書房、2019年。ISBN 9784760151035https://opac.time.u-tokai.ac.jp/webopac/BB00590106 
  25. ^ 『法令全書 第11号』(内閣官報局、1965年)59頁
  26. ^ 千葉市あすみが丘ワンハンドレッドヒルズ建築協定の概要 - 千葉市公式サイト
  27. ^ 「ドアが勝手に」 街並み一変した高級住宅街、液状化で揺れた住民の思い【#あれから私は】”千葉日報(2021.03.09)
  28. ^ a b c d 東京の「ブランド住宅地」と「似非ブランド住宅地」をスマホで簡単に見分ける方法”文春オンライン(2018.09.25)
  29. ^ 多摩川誌 第8編 流域の経済と都市化 第4章 集落・都市 第3節 下流地域 3.2 住宅地域の開発 3.2.1 郊外電鉄と田園都市
  30. ^ 公示地価 神奈川県の住宅地、一転上昇 回復基調”産経ニュース(2022.03.22)
  31. ^ 赤松加寿江, 片山伸也, 水沼淑子, 奥山信治「昭和初期の別荘地開発と住宅地形成に関する研究」『住総研研究論文集』第38巻、住総研、2012年、113-124頁、doi:10.20803/jusokenronbun.38.0_113ISSN 21878188 
  32. ^ 「金曜日の妻たちへ」の舞台も… 郊外でも進む高齢化”NIKKEI STYLE(2016.02.21. 日本経済新聞)
  33. ^ 開発が始まった披露山庭園住宅(昭和48年)”逗子市
  34. ^ 阿部伸太「風致地区制度創設期における風致育成概念の存在と風致協会の意義」『東京農業大学農学集報』第50巻第4号、東京農業大学、2006年、121-129頁、ISSN 0375-9202NAID 1100040913032022年10月20日閲覧 
  35. ^ 名古屋市風致地区内建築等規制条例”. 2020年10月19日閲覧。
  36. ^ 名古屋市白壁・主税・橦木町並み保存地区保存計画|名古屋市
  37. ^ 魅力度ランキング2位「京都」に住んでわかる理想と現実 | 知ったら住みたくなるケンミン性 | ダイヤモンド・オンライン
  38. ^ 室町住宅 | 池田市立図書館
  39. ^ 齊木崇人「イギリスの田園都市レッチワースとニューガーデンシティー舞多聞の実験」『武庫川女子大学生活美学研究所紀要』第29巻、武庫川女子大学、2019年、59-75頁、doi:10.14993/00001790ISSN 0916-9709 
  40. ^ 商工ニュースたかつき2016年7月号(2018年(平成30年)6月10日閲覧)
  41. ^ 大阪府/浜寺昭和町のまちなみ(堺市)
  42. ^ 「芦屋ブランド守る条例案 新築は敷地400平方メートル以上」『朝日新聞』、2006年12月4日、夕刊14面。
  43. ^ 「敷地400平方m未満の新築ダメ 兵庫・芦屋市の豪邸限定条例可決」『読売新聞』、2006年12月22日、東京夕刊1面。
  44. ^ 芦屋市/奥山地区(奥池町・奥池南町等)の規制内容
  45. ^ 2006~2007年度 調査研究関係委員会活動報告会 海洋建築委員会 報告-「海洋建築」のさらなる伸展に向けて-2008.3.19
  46. ^ Residential Cove | Marina Japan
  47. ^ 山本ゆかり, 萬谷治子, 加藤拓郎「旧住吉村の住宅地開発とその特徴:日本の近代萌芽期における郊外住宅地」『住宅総合研究財団研究論文集』第31号、住宅総合研究財団 ; 東京、2004年、91-102頁、doi:10.20803/jusokenold.31.0_91ISSN 188027022022年9月26日閲覧 
  48. ^ 熊野貴文「大阪大都市圏郊外における戸建て住宅地の変容―近鉄学園前駅周辺の住宅地の事例―」『人文地理』第66巻第4号、人文地理学会、2014年、352-368頁、doi:10.4200/jjhg.66.4_352ISSN 0018-7216NAID 130006321325 
  49. ^ コンパクトシティ・福岡 4つの高級住宅街の特徴(2) データ・マックス NetIB-News(2020.06.30)
  50. ^ コンパクトシティ・福岡 4つの高級住宅街の特徴(3) データ・マックス NetIB-News(2020.07.01)
  51. ^ 浜口町北部の惨状(現在の平野町)“ 長崎市(2013.03.01)
  52. ^ 長崎ハウステンボスにある「ワッセナー」とは?別荘活用が多い分譲住宅に住む魅力”オウチーノニュース(2021.08.31)
  53. ^ アジアで最も高級な住宅地は香港ピーク地区-観光地としても有名
  54. ^ 「交流 2013.3 No.864」公益財団法人日本台湾交流協会 (PDF)

参考文献

関連項目