「国土交通省直轄ダム」の版間の差分

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[[ファイル:Yubarishuparo Dam 2011.jpg|250px|thumb|完成すれば総貯水容量で日本最大の国土交通省直轄ダムとなる[[大夕張ダム#夕張シューパロダム|夕張シューパロダム]]([[北海道]]・[[夕張川]])]]
'''国土交通省直轄ダム'''(こくどこうつうしょうちょっかつダム)は、[[河川法]]・[[特定多目的ダム法]]などに基づき[[一級水系]]に建設される[[ダム]]および[[堰]]。通常、[[二級水系]]に建設されることはない<ref>例外として[[沖縄総合事務局]]管轄ダムについては、[[沖縄振興特別措置法]]に基づき[[沖縄県知事]]の要請があれば、[[二級河川]]にもダムが建設される。また、以前は[[島根県]]の[[神戸川 (島根県)|神戸川]][[水系]]も二級河川時代に志津見ダムが計画されていた。</ref>。日本全国にある8[[地方整備局]](東北・関東・北陸・中部・近畿・中国・四国・九州)と[[北海道開発局]]建設部、[[沖縄総合事務局]]開発建設部によって実際に管理されている<ref>沖縄総合事務局は本来[[内閣府]]に属するが、国土交通省直轄ダムについては[[特定多目的ダム法]]に基づき建設されているため、[[国土交通大臣]]の所管となる。</ref>。
'''国土交通省直轄ダム'''(こくどこうつうしょうちょっかつダム)は、[[日本のダム]]のうち[[国土交通省]]により施工、管理が行われている[[ダム]]または[[堰]]である。主として[[河川法]]、[[特定多目的ダム法]]に基づき、国土交通省の各[[地方整備局]]および[[北海道開発局]]、[[内閣府]][[沖縄総合事務局]](委託管理。後述)が実際の施工・管理業務を担当する。

== 総論 ==
''[[国土交通省直轄ダム事業年表]]も参照''


== 概説 ==
国土交通省が管理や施工を行うダム事業は「河川整備基本計画」又は「河川工事実施基本計画」に基づく「[[河川総合開発事業]]」として建設される。一部のダムを除き、通常は国土交通大臣によって計画から建設、そして管理まで一元的に行われる'''[[多目的ダム#特定多目的ダム|特定多目的ダム]]'''がほとんどであるが、直轄ダムの中には河川法第17条による「兼用工作物」として管理が複数の利水事業者と行われているダムもある(詳細は「[[多目的ダム]]」を参照)。近年では[[洪水調節]]のみを目的とした[[治水ダム]]も近年では事業計画がなされている。多目的・治水何れのダムについても、最大の目的は'''洪水調節'''、すなわち治水である。
国土交通省が管理や施工を行うダム事業は「河川整備基本計画」又は「河川工事実施基本計画」に基づく「[[河川総合開発事業]]」として建設される。一部のダムを除き、通常は国土交通大臣によって計画から建設、そして管理まで一元的に行われる'''[[多目的ダム#特定多目的ダム|特定多目的ダム]]'''がほとんどであるが、直轄ダムの中には河川法第17条による「兼用工作物」として管理が複数の利水事業者と行われているダムもある(詳細は「[[多目的ダム]]」を参照)。近年では[[洪水調節]]のみを目的とした[[治水ダム]]も近年では事業計画がなされている。多目的・治水何れのダムについても、最大の目的は'''洪水調節'''、すなわち治水である。


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}}</ref>、ダム建設事業を全面的に見直す立場を示した。今後、事業を継続すべきか否かの妥当性について再検証が行われることとなり、12月に具体的な「凍結」ダム事業が発表された。対象となった直轄ダムはサンル・[[桂沢ダム|新桂沢]]・三笠ぽんべつ・[[二風谷ダム#平取ダム|平取]]・田川・成瀬・鳥海・[[八ッ場ダム|八ッ場]]・万座・利賀・[[設楽ダム|設楽]]・[[丸山ダム|新丸山]]・[[足羽川ダム|足羽川]]・[[大戸川ダム|大戸川]]・横瀬川・[[山鳥坂ダム|山鳥坂]]・[[大分川ダム|大分川]]・[[城原川ダム|城原川]]・本明川・立野・七滝・[[川辺川ダム|川辺川]]・奥間の23ダム事業である(導水事業などを除く)。
}}</ref>、ダム建設事業を全面的に見直す立場を示した。今後、事業を継続すべきか否かの妥当性について再検証が行われることとなり、12月に具体的な「凍結」ダム事業が発表された。対象となった直轄ダムはサンル・[[桂沢ダム|新桂沢]]・三笠ぽんべつ・[[二風谷ダム#平取ダム|平取]]・田川・成瀬・鳥海・[[八ッ場ダム|八ッ場]]・万座・利賀・[[設楽ダム|設楽]]・[[丸山ダム|新丸山]]・[[足羽川ダム|足羽川]]・[[大戸川ダム|大戸川]]・横瀬川・[[山鳥坂ダム|山鳥坂]]・[[大分川ダム|大分川]]・[[城原川ダム|城原川]]・本明川・立野・七滝・[[川辺川ダム|川辺川]]・奥間の23ダム事業である(導水事業などを除く)。


== 直轄ダム一覧 ==
== 各論 ==
=== 一覧表解説 ===
備考:黄色欄は建設中・計画中のダム、赤欄は建設中止・凍結の方針を表明しているダム。
各論におけるダム一覧表の見方については、以下の通りである。ダムデータは[[財団法人]][[日本ダム協会]]『ダム便覧』を基礎出典とし、適宜追記する。横線は検証可能な出典での数値提示が不能なものである。
{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
!所在<br/>
!水系<br />
!河川<br />
!ダム<br />
!型式<br/>
!{{Nowrap|高さ}}<br />
!{{Nowrap|総貯水容量}}<br />
!着工<br />
!完成<br/>
!分類<br/>
![[水源地域対策特別措置法|水特法]]<br />
!備考<br />
|-
|A県||A川||A川||Aダム||[[重力式コンクリートダム|重力]]||align="right"|50.0||align="right"|50,000||1960||1970||||||
|-bgcolor="yellow"
|B県||B川||B川||Bダム||[[ロックフィルダム|ロックフィル]]||align="right"|100.0||align="right"|100,000||1990||2020||[[多目的ダム#兼用工作物|兼用]]||指定||工事中
|-bgcolor="pink"
|C県||C川||C川||Cダム||[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]||align="right"|150.0||align="right"|200,000||2000||未定||特定||9条等指定||事業見直し
|}
*'''所在''' - ダムが所在する道府県。複数の所在地にまたがる場合はダム便覧に準じ、ダム[[左岸]]の所在地に属する。
*'''水系''' - ダムが所在する[[水系]]。[[沖縄県]]を除き通常は[[一級水系]]である。
*'''河川''' - ダムが所在する[[河川]]。
*'''型式''' - ダムの型式。詳細は各型式の項目を参照。
*'''高さ''' - ダムの高さ。単位は[[メートル]]。
*'''総貯水容量''' - ダムが貯水できる全ての貯水容量。単位は1,000[[立方メートル]]。詳細は[[ダム#諸元]]を参照
*'''着工''' - ダム事業が開始される実施計画調査の着手年。
*'''完成''' - ダムが完成し、運用を開始した年。「未定」は完成予定年度が定まっていない場合に記載する。
*'''分類''' - 河川関連法規に基づくダムの分類。以下に分ける。
#「'''特定'''」 - 1957年施行の[[特定多目的ダム法]]に基づき[[国土交通大臣]]が一貫して施工・管理するダム。詳細は[[多目的ダム#特定多目的ダム]]を参照。
#「'''兼用'''」 - 1964年改定の[[河川法]]第17条における特例により、複数の事業者により施工・管理されるダム。詳細は[[多目的ダム#兼用工作物]]を参照。
#「'''治水'''」 - 目的が[[洪水調節]]専用の[[治水ダム]]。詳細は当該項目を参照。
#空欄は特定多目的ダム法施行以前に完成、または同法に拠らない直轄河川総合開発事業に基づき施工されたダム。
*'''水特法''' - 1973年施行の[[水源地域対策特別措置法]](水特法)に指定されたダム。「9条等指定」は水没物件が多大で、通常より補償を厚くしたダム。詳細は当該項目を参照。
*'''備考''' - 特記することを記す。
#「'''工事中'''」 - 現在工事中・[[ダム再開発事業]]中のダム。黄色欄で示す。
#「'''事業見直し'''」 - 国土交通省によるダム事業再検証の対象となっているダム。桃色欄で示す。
#「'''ダム湖百選'''」 - 財団法人[[ダム水源地環境整備センター]]が2005年に選定した[[ダム湖百選]]に[[人造湖]]が選定されたダム。詳細は当該項目を参照。


=== 北海道開発局 ===
=== 北海道開発局 ===
[[File:Jyozankei-124-r1.JPG|200px|thumb|開発局管理ダムでは最も堤高が高い[[定山渓ダム]]([[小樽内川]])]]
北海道開発局管内では現在既設ダム15基、建設中ダム6基の合計21基を直轄管理・施工している。
[[ファイル:Katsurazawa-49-r1.JPG|200px|thumb|北海道では初の直轄ダムなった[[桂沢ダム]](幾春別川)。現在[[ダム再開発事業]]([[桂沢ダム#新桂沢ダム|新桂沢ダム]])が施工中である。]]
[[北海道開発局]]管内では直轄ダムが運用16、施工中5の計21ダムを管理・施工している。北海道開発局は国土交通省の[[地方支分部局]]として国土交通省の発足時に統合されたが、農林水産省の[[地方農政局]]機能も担当している<ref>[http://www.hkd.mlit.go.jp/sosiki/yakuwari.htm 国土交通省北海道開発局『国土交通省北海道開発局の役割』]2012年8月15日閲覧</ref>。このため[[土地改良法]]に基づく国営農業水利事業によって建設された[[大夕張ダム]]と川端ダム([[夕張川]])も直轄管理しているが、両ダムは[[農林水産省直轄ダム]]としての扱いを受け、国土交通省直轄ダムには該当しない<ref>[http://www.sp.hkd.mlit.go.jp/outline/agri/yubari/ 国土交通省北海道開発局札幌開発建設部 大夕張ダム管理所]2012年8月15日閲覧</ref><ref>[http://www.hkd.mlit.go.jp/zigyoka/z_kasen/kawa_kan/13.html 国土交通省北海道開発局『北海道のダム事業』]2012年8月15日閲覧</ref>。


[[1952年]](昭和27年)、[[北海道開発庁]]設立と共に「第一次北海道総合開発計画」が策定され、この中で北海道内の治水利水の根幹となる[[石狩川]]の総合開発計画された。こ石狩川水系総合開発事業」は「幾春別川・芦別川総合開発事業」よ[[1957年]](昭和32年)に直轄ダムとしては北海道内初とな'''桂沢ダム'''が完成した。この後[[空知川]][[千歳川]][[]][[豊平川]]といっ主な[[支流]]に相次い目的ダムが建設されるようになり、[[1975年]](昭和50年)には石狩川本流に'''大雪ダム'''も完成した。現在石狩川水系では既設[[ダム再開発事業]]が進められており、'''新桂沢ダム''''''夕張シューパロダム'''が現在施工中である。特に夕張シューパロダムは完成すれば道内最大・日本屈指の多目的ダムとなる
北海道は[[1950年]](昭和25年)[[5月]]に[[北海道開発法]]が施行され同法に基づき[[北海道開発庁]](1950年[[6月]])と北海道開発局([[1951年]][[7月]])が設立。以後数にわたる北海道総合開発計画に沿って河川総合開発事業を展開していた<ref>『石狩川 その治水利水』p.43</ref>。[[1952年]](昭和27年)から第一次北海道総合開発計画において道内最大河川・[[石狩川]]水系の河川総合開発事業が初めて盛れ、[[利水]]目的の事業として[[雨竜川]]の鷹泊ダムが[[1953年]](昭和28年)に完成する<ref>『石狩川 その治水と利水』p.102</ref>が、[[治水]]目的として計画されたのが[[三笠市]]を流れ幾春別(いくしゅんべつ)川の[[桂沢ダム]]と、[[空知川]][[支流]]芦別川の[[ダム]]である。[[電源開発]]などの共同事業で計画され両ダムは、双方を[[トンネル]]導水路連結して治水のほか[[上水道]]供給、[[灌漑]]、[[水力発電]]を目的とし、[[1957年]](昭和32年)に道内初の直轄ダムとして完成した<ref>『石狩川 その治水と利水』p.105</ref>


以後石狩川水系の河川開発は石狩川改修全体計画(1953年)、石狩川水系工事実施基本計画([[1965年]])に基づいて進められ[[金山ダム]](空知川)、[[大雪ダム]](石狩川)、[[漁川ダム]]([[漁川]])が建設されたほか、[[札幌冬季オリンピック]]開催を控え人口の増加が顕著となった[[札幌市]]の治水安全度と上水道供給向上を図るため[[豊平川]]流域の総合開発も計画され、[[豊平峡ダム]](豊平川)が建設された。しかし[[1981年]](昭和56年)の[[昭和56年台風第14号|台風14号]]と[[寒冷前線]]による豪雨は石狩川流域で過去最悪となる大[[洪水]]を引き起こし、治水計画は根本からの見直しが図られた。結果全ての主要支流においてダム計画が立案され、[[定山渓ダム]]([[小樽内川]])、[[滝里ダム]](空知川)、[[忠別ダム]]([[忠別川]])、[[大夕張ダム#夕張シューパロダム|夕張シューパロダム]](夕張川)、[[桂沢ダム#新桂沢ダム|新桂沢ダム]](幾春別川)、三笠ぽんべつダム(奔別川)が計画・施工されている<ref>『石狩川 その治水と利水』pp.56-58</ref>。
日本第4の大河・[[天塩川]]では本流に'''岩尾内ダム'''が完成し、現在は名寄川流域に'''サンルダム'''が計画されている。サンルダムは北海道では[[当別ダム]]([[当別川]])と共に[[台形CSGダム]]として計画されている。[[十勝川]]水系では[[電源開発|電源開発株式会社]]による[[水力発電]]事業が先行していたが、[[1984年]](昭和59年)に'''十勝ダム'''が本流筋に、[[1998年]](平成10年)に'''札内川ダム'''が完成し十勝川の治水に貢献。[[常呂川]]には'''鹿ノ子ダム'''が建設され、[[オホーツク海]]に注ぐ河川で唯一の多目的ダムとなった。また日本で1,2を争う清流・[[後志利別川]]でも'''美利河ダム'''が[[1991年]](平成3年)に完成した。魚類への影響を最小限に食い止めるため全長6キロメートルの[[魚道]]が建設されて、湖への遡上を助けている。


石狩川以外では日本第4の大河である[[天塩川]]水系で本流に岩尾内ダムが[[1971年]](昭和46年)完成。[[十勝川]]水系では電源開発による十勝糠平系電源一貫開発計画により糠平ダム([[音更川]])などの水力発電事業が先行していたが、[[1962年]](昭和37年)の大水害を契機に十勝川水系の総合開発計画が実施され、本流に[[十勝ダム]]、支流[[札内川]]に[[札内川ダム]]が完成した<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.166-167</ref><ref>[http://www.ob.hkd.mlit.go.jp/hp/tisui/bot.html 国土交通省北海道開発局帯広開発建設部『治水事業』]2012年8月15日閲覧</ref>。また[[オホーツク海]]に注ぐ[[常呂川]]では[[北見市]]などの治水安全度と上水道供給向上を目的に[[鹿ノ子ダム]](常呂川)が、日高では[[沙流川]]流域に[[二風谷ダム]](沙流川)、清流として知られる[[後志利別川]]には[[美利河ダム]]がそれぞれ完成している。[[留萌川]]水系では[[1988年]](昭和63年)の洪水で[[留萌市]]全世帯の4分の1が浸水した大水害を契機にダム計画が進められ、支流のチバベリ川に留萌ダムが完成している<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.138-139</ref>。
現在は6か所でダム建設が進められているが、サンルダムではダム建設に反対する北るもい[[漁業協同組合]]と市民団体が「[[遊水池]]案」を掲げ、ダム建設を推進する流域自治体・農業団体と対立している。また、[[沙流川]]では'''二風谷ダム'''建設に際し土地収用を違法とする判決が出され、この際に[[アイヌ]]民族が先住民として認められ、「[[北海道旧土人保護法]]」廃止にまで繋がった。支流の'''平取ダム'''ではアイヌの遺跡発掘が行われ事業は一時凍結されているが地元住民は[[2003年]](平成15年)の日高豪雨の被害を受けており早期のダム完成を求めている。隣の[[鵡川]]では昭和30年代に堤高103メートル・総貯水容量3億5,000万[[立方メートル]]の「赤岩ダム」が名勝・[[鵡川|赤岩青巌峡]]一番淵付近に建設されようとしていたが、3分の2が水没する[[占冠村]]の猛反対により[[1961年]](昭和36年)白紙撤回されている。


現在施工中のダムとして石狩川水系では夕張シューパロ、新桂沢、三笠ぽんべつの各ダム、天塩川水系では支流[[名寄川]]の二次支流である[[サンル川]]にサンルダム、沙流川では支流の[[額平川]]に[[二風谷ダム#平取ダム|平取ダム]]がある。このうち夕張シューパロダムは既設大夕張ダムの[[ダム再開発事業]]であるが、[[2014年]](平成26年)に完成すれば貯水容量で日本最大の直轄ダムとなる。だが夕張シューパロダム以外のダムは国土交通省によるダム事業再検証の対象となり、事業は凍結状態である<ref name="minaoshi">[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/HHyou.cgi?hh=Kensyou 『ダム便覧』国交省検証ダム一覧]2012年8月15日閲覧</ref>。またダム事業に対する地元との摩擦については二風谷ダムにおいて[[萱野茂]]と[[貝沢正]]が起こしたダム建設差し止め[[訴訟]]が知られる。ダム建設差し止め自体は却下されたが[[アイヌ民族]]の先住性が裁判で認められ、[[1997年]](平成9年)には差別的法律であった[[北海道旧土人保護法]]の廃止と[[アイヌ文化振興法]]の制定につながった<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/TPage.cgi?id=251 『ダム便覧』文献にみる補償の精神【20】]2012年8月15日閲覧</ref>。
なお、直轄河川では鵡川のほか[[尻別川]]・[[渚滑川]]・[[湧別川]]・[[網走川]]・[[釧路川]]の各水系において多目的ダムが建設されていない。何れもダム建設の適地がないことが理由であり、釧路川は[[釧路湿原]]が自然の遊水地となるほか[[新釧路川]]開削により[[放水路]]としての機能を有し、これらがダムの代わりとして治水に供されている。


なお、北海道開発局が管轄する一級河川のうち[[渚滑川]]、[[湧別川]]、[[網走川]]、[[釧路川]]、[[鵡川]]、[[尻別川]]の各水系には直轄ダムが建設されておらず、このうち渚滑川と釧路川は本支流の何れにもダムが全く建設されていない。また石狩川水系の主要支流では雨竜川流域には直轄ダムが建設されていない。
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:small;"

{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!水系
!水系<br />
!一次<br />支<br />(本川)
!川<br />
!二次<br />支川名
!ダム<br />
!三次<br />支川名
!型式<br/>
!{{Nowrap|高さ}}<br />
!ダム名
!{{Nowrap|総貯水容量}}<br />
!堤高<br />(m)
!着工<br />
!総貯水<br/>容量<br />(千m&sup3;)
!完成<br/>
!型式
!着手<br />(年)
!分類<br/>
![[水源地域対策特別措置法|水特法]]<br />
!完成<br />(年)
!備考
!備考<br />
|-
|-
|[[石狩川]]||芦別川||[[芦別ダム]]||[[重力式コンクリートダム|重力]]||align="right"|22.8||align="right"|1,598||1947||1957||||||
|[[天塩川]]
|天塩川
|-
|-
|岩尾内ダム
| align=right|58.0
| align=right|107,000
|[[重力式コンクリートダム|重力式]]
|1963
|1970
|-
|- bgcolor="pink"
|天塩川
|[[名寄川]]
|サンル川
|-
|サンルダム
| align=right|48.0
| align=right|73,000
|[[台形CSGダム|台形CSG]]
|1988
|未定
|見直し対象
|-
|-
|石狩川||[[漁川]]||[[漁川ダム]]||[[ロックフィルダム|ロックフィル]]||align="right"|45.5||align="right"|15,300||1971||1980||特定||||
|[[留萌川]]
|チバベリ川
|-
|-
|留萌ダム
| align=right|41.2
| align=right|21,800
|[[ロックフィルダム|ロックフィル]]
|1984
|2009
|
|-
|-
|[[天塩川]]||天塩川||岩尾内ダム||重力||align="right"|58.0||align="right"|107,700||1963||1970||特定||||
|[[石狩川]]
|-bgcolor="yellow"
|石狩川
|石狩川||幾春別川||[[桂沢ダム]]||重力||align="right"|63.6||align="right"|92,700||1947||1957||||||[[ダム再開発事業|再開発]]中
|-
|-
|[[大雪ダム]]
| align=right|86.5
| align=right|66,000
|ロックフィル
|1965
|1975
|-
|-
|-
|石狩川||[[空知川]]||[[金山ダム]]||[[中空重力式コンクリートダム|中空重力]]||align="right"|57.3||align="right"|150,450||1959||1967||特定||||[[ダム湖百選]]
|石狩川
|[[忠別川]]
|-
|-
|[[忠別ダム]]
| align=right|86.0
| align=right|93,000
|[[コンバインダム|複合型]]
|1977
|2007
|水特法指定
|-
|-
|[[常呂川]]||常呂川||[[鹿ノ子ダム]]||重力||align="right"|55.5||align="right"|39,800||1972||1983||特定||||
|石狩川
|[[空知川]]
|-
|-
|[[金山ダム]]
| align=right|57.3
| align=right|150,450
|[[中空重力式コンクリートダム|中空重力式]]
|1959
|1967
|-
|-
|-
|[[十勝川]]||[[札内川]]||[[札内川ダム]]||重力||align="right"|114.0||align="right"|54,000||1981||1998||特定||||
|石狩川
|-bgcolor="pink"
|空知川
|天塩川||[[サンル川]]||サンルダム||[[台形CSGダム|台形CSG]]||align="right"|46.0||align="right"|57,200||1988||未定||特定||||事業見直し
|-
|-
|[[滝里ダム]]
| align=right|50.0
| align=right|108,000
|重力式
|1979
|1998
|水特法9条指定
|-
|-
|石狩川||[[小樽内川]]||[[定山渓ダム]]||重力||align="right"|117.5||align="right"|82,300||1974||1989||特定||||
|石狩川
|-bgcolor="pink"
|空知川
|石狩川||幾春別川||[[桂沢ダム#新桂沢ダム|新桂沢ダム]]||重力||align="right"|75.5||align="right"|147,300||1985||未定||特定||||桂沢ダム再開発<br/>事業見直し
|芦別川
|-
|[[芦別ダム]]
| align=right|22.8
| align=right|1,598
|重力式
|1947
|1957
|-
|-
|-
|石狩川||石狩川||[[大雪ダム]]||ロックフィル||align="right"|86.5||align="right"|66,000||1965||1975||特定||||
|石狩川
|幾春別川
|-
|-
|[[桂沢ダム]]
| align=right|63.6
| align=right|92,700
|重力式
|1947
|1957
|-
|- bgcolor="pink"
|石狩川
|幾春別川
|-
|-
|[[桂沢ダム|新桂沢ダム]]
| align=right|71.5
| align=right|147,300
|重力式
|1985
|未定
|見直し対象
|- bgcolor="pink"
|石狩川
|幾春別川
|奔別川
|-
|三笠ぽんべつダム
| align=right|53.0
| align=right|8,620
|重力式
|1985
|未定
|見直し対象
|- bgcolor="yellow"
|石狩川
|[[夕張川]]
|-
|-
|[[大夕張ダム#夕張シューパロダム建設事業|夕張シューパロダム]]
| align=right|110.6
| align=right|427,000
|重力式
|1991
|2013
|工事中<br/>水特法9条指定
|-
|-
|石狩川||空知川||[[滝里ダム]]||重力||align="right"|50.0||align="right"|108,000||1979||1999||特定||9条等指定||
|石狩川
|[[千歳川]]
|[[漁川]]
|-
|[[漁川ダム]]
| align=right|45.5
| align=right|15,300
|ロックフィル
|1971
|1980
|-
|-
|-
|石狩川||[[忠別川]]||[[忠別ダム]]||[[コンバインダム|複合]]||align="right"|86.0||align="right"|93,000||1977||2006||特定||指定||
|石狩川
|[[豊平川]]
|-
|-
|[[豊平峡ダム]]
| align=right|102.5
| align=right|47,100
|[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]
|1965
|1972
|-
|-
|-
|十勝川||十勝川||[[十勝ダム]]||ロックフィル||align="right"|84.3||align="right"|112,000||1970||1984||特定||||
|石狩川
|豊平川
|[[小樽内川]]
|-
|[[定山渓ダム]]
| align=right|117.5
| align=right|82,300
|重力式
|1974
|1989
|-
|-
|-
|[[沙流川]]||沙流川||[[二風谷ダム]]||重力||align="right"|32.0||align="right"|31,500||1973||1997||特定||指定||
|[[後志利別川]]
|-bgcolor="pink"
|後志利別川
|沙流川||[[額平川]]||[[二風谷ダム#平取ダム|平取ダム]]||重力||align="right"|56.5||align="right"|45,800||1973||未定||特定||||事業見直し
|-
|-
|[[美利河ダム]]
| align=right|40.0
| align=right|17,000
|複合型
|1975
|1991
|水特法指定
|-
|-
|[[後志利別川]]||後志利別川||[[美利河ダム]]||複合||align="right"|40.0||align="right"|18,000||1975||1991||特定||指定||
|[[常呂川]]
|常呂川
|-
|-
|[[鹿ノ子ダム]]
| align=right|55.5
| align=right|39,800
|重力式
|1972
|1983
|-
|-
|-
|石狩川||[[豊平川]]||[[豊平峡ダム]]||[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]||align="right"|102.5||align="right"|47,100||1965||1972||特定||||ダム湖百選
|[[十勝川]]
|-bgcolor="pink"
|十勝川
|石狩川||奔別川||三笠ぽんべつダム||台形CSG||align="right"|53.0||align="right"|8,620||1985||未定||[[治水ダム|治水]]||||事業見直し
|-
|-bgcolor="yellow"
|-
|石狩川||[[夕張川]]||[[大夕張ダム#夕張シューパロダム|夕張シューパロダム]]||重力||align="right"|110.6||align="right"|427,000||1991||2014||[[多目的ダム#兼用工作物|兼用]]||9条等指定||[[大夕張ダム]]再開発<br/>工事中
|[[十勝ダム]]
| align=right|84.3
| align=right|112,000
|ロックフィル
|1970
|1984
|-
|-
|-
|[[留萌川]]||チバベリ川||留萌ダム||ロックフィル||align="right"|41.2||align="right"|23,300||1984||2009||特定||||
|十勝川
|[[札内川]]
|-
|-
|札内川ダム
| align=right|114.0
| align=right|54,000
|重力式
|1981
|1998
|-
|-
|[[沙流川]]
|沙流川
|-
|-
|[[二風谷ダム]]
| align=right|32.0
| align=right|27,100
|重力式
|1973
|1993
|水特法指定
|- bgcolor="pink"
|沙流川
|額平川
|-
|-
|[[平取ダム]]
| align=right|56.5
| align=right|45,800
|重力式
|1973
|未定
|見直し対象<br/>水特法指定
|}
|}
<gallery>
Image:Chubetsu-134-r1.JPG|[[忠別ダム]]([[忠別川]])
Image:Yubarishuparo-3101-r1.JPG|[[夕張シューパロダム]]([[夕張川]])
image:Hoheikyo-87-r1.JPG|[[豊平峡ダム]]([[豊平川]])
Image:Jyozankei-124-r1.JPG|[[定山渓ダム]]([[小樽内川]])


==== 北海道開発局の中止事業 ====
</gallery>
[[ファイル:Mu River (Hokkaidō).jpg|200px|thumb|[[鵡川]]の赤岩青巌峡([[占冠村]])。赤岩ダムが当地に計画されていたが中止されている。]]
北海道開発局において、中止となった直轄ダム事業としては鵡川本流に計画されていた赤岩ダムと、石狩川本流に計画されていた[[大雪ダム|石狩ダム]]がある。

赤岩ダムについては[[1950年代]]、鵡川上流にある景勝地・赤岩青巌峡の一番瀬付近に高さ103メートルの重力式コンクリートダムを計画。治水と日高電源一貫開発計画に沿った形での水力発電目的を以って計画が行われていた。完成すれば総貯水容量が3億5,000万立方メートルに達し[[朱鞠内湖]]を越える大人造湖が出現するが、トマム・ニニウを含め[[占冠村]]の大部分が水没するため占冠村官民挙げて反対運動が巻き起こった。最終的に[[1961年]](昭和36年)に開発局が計画を白紙撤回し、中止された<ref name="shimukappu">『占冠村史』pp.279-285</ref>。

一方石狩ダムは大雪ダムの前身として、北海道電力との共同事業として[[1960年代]]より[[層雲峡]]に計画されていた。高さ118.2メートル、総貯水容量1億4,200万立方メートルの[[中空重力式コンクリートダム]]として計画され、完成すれば石狩川水系最大規模の多目的ダムであったが、その後の計画変更により現在の大雪ダム地点にダム計画が移転し、[[1975年]](昭和50年)に現在の規模で完成している<ref name="nenkan36">『ダム年鑑 1964』pp.36-37</ref>。

{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
!{{Nowrap|水系}}<br />
!河川<br />
!ダム<br />
!{{Nowrap|型式}}<br />
!高さ<br />
!総貯水容量<br />
!分類<br/>
!水特法<br/>
!{{Nowrap|備考}}<br />
!出典<br />
|-
|[[鵡川]]||鵡川||赤岩ダム||重力||align="right"|103.0||align="right"|350,000||||||||<ref name="shimukappu"/>
|-
|石狩川||石狩川||[[大雪ダム|石狩ダム]]||中空重力||align="right"|118.2||align="right"|147,000||||||大雪ダムの前身||<ref name="nenkan36"/>
|}


=== 東北地方整備局 ===
=== 東北地方整備局 ===
[[ファイル:Tamagawa-394-r1.jpg|200px|thumb|東北地方整備局管理ダムでは最大の総貯水容量を有する[[玉川ダム]]([[玉川 (秋田県)|玉川]]・[[秋田県]])]]
東北地方整備局管内では、既設ダム19基・工事中ダム8基の合計26基を直轄管理・施工している。これは全ての地方整備局の中で最多である。
[[ファイル:Ishibuchi-237-r1.JPG|200px|thumb|日本の[[ロックフィルダム]]施工第一号となった[[石淵ダム]]([[胆沢川]])。[[2013年]]に[[胆沢ダム]]が完成すると水没する。]]
[[東北地方整備局]]管内では既設ダム・堰23基、施工中ダム5基の合計28基を直轄管理・施工している。これは全ての地方整備局の中で最多である。また、総貯水容量が1億立方メートルを超える大人造湖を擁するダムが既設・施工併せて8基あり、これもまた地方整備局の中では随一である。ただし東北地方の直轄ダムにおいて、[[阿賀野川]]水系と[[荒川 (羽越)|荒川]]水系にあるダム([[大川ダム]]、[[横川ダム (山形県)|横川ダム]])については本流[[河口]]が[[新潟県]]に位置するため、水系一貫管理の観点から[[北陸地方整備局]]の管理となっている。なお[[仙台市]]などの水源でもある[[釜房ダム]](碁石川)の人造湖である[[釜房ダム#釜房湖|釜房湖]]は人造湖としては唯一、[[湖沼水質保全特別措置法]](湖沼法)に指定されており、厳重な水質管理が行われている<ref>[http://www-gis.nies.go.jp/explain/kisei_w_detail.html 国立環境研究所『湖沼水質保全特別措置法に基づく指定地域』]2012年8月22日閲覧</ref>。事業については河川法第17条に基づく[[多目的ダム#兼用工作物|兼用工作物]]として鳴瀬川中流堰([[鳴瀬川]])が国土交通省と[[農林水産省]]の共同事業として建設されている<ref name="narusegawa">[http://www.thr.mlit.go.jp/karyuu/activity/shuyo_koji/02naruse/naruse_index.htm 国土交通省東北地方整備局北上川下流河川事務所『鳴瀬川中流堰』]2012年8月15日閲覧</ref>。


東北地方においては、[[1937年]](昭和13年)の水統制事業制度導入時から総合開発が進められており、[[1941年]](昭和16年)に直轄ダムとして初の施工例となる'''田瀬ダム'''が[[内務省 (日本)|内務省]]の北上川上流改修事業」の下進められていた。この後内務省は北上川本支流に五か所のダムを建設する計画を立案し、後の「'''[[北上特定地域総合開発計画#北上川五大ダム計画|北上川五大ダム]]'''」計画('''石淵ダム'''・ダム・'''湯田ダム'''・'''四十四田ダム'''・'''御所ダム''')に繋っていく
[[東北地方]]は日本でも早期より多目的ダムによる総合開発事業積極的に進められていた。[[青森県]]は多目的ダムとして日本最初の施工例となった[[沖浦ダム]](浅瀬石川)や[[十和田湖]]の総合開発事業を[[1938年]](昭和13年)より実施。河川総合開発の父である[[物部長穂]]の故郷・[[秋田県]]も[[田沢湖]]・[[玉川 (秋田県)|玉川]]の総合開発を[[1939年]](昭和14年)より実施するなど他の都道府県に先駆けて河川開発を進めていた。当時河川行政を管轄した[[内務省 (日本)|内務省]]も1941年より国直轄河川総合開発を計画し、[[北上川]]と[[名取川]]が東北は対象とさ[[田瀬ダム]]([[猿ヶ石川]])が直轄ダム日本第一号とし施工を開始、さらに田瀬ダムなど5ダムを北上川本支流に建設する[[北上特定地域総合開発計画#北上川五大ダム計画|北上川五大ダム計画]]田瀬、[[石淵ダム|石淵]]、[[湯田ダム|田]]、[[四十四田ダム|四十四田]]、[[御所ダム|御所]])がこの時成立した。また釜房ダムの計画も進められた、[[太平洋戦争]]により事業は中断した<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.60-61</ref>


戦後[[カスリーン台風]][[アイオン台風]]によって北上川流域を中心に甚大害を受け、従来河川改修では克服できない状況となった。[[1949年]](昭和24年)に[[経済安定本部]]において「河川改訂改修計画」が立案されるが東北地方では北上川のほか[[江合川]]・[[鳴瀬川]]が対象河川となり、それぞれに治水計画が改定された。この中で「北上川五大ダム」は規模・位置などが改められ建設が進んだ。さらに、日本全国22地域を象として[[国土総合開発法]]に基づく「[[河川総合開発事業#特定地域総合開発計画一覧|特定地域総合開発計画]]」計画された。東北では「十和田岩木川」・「奥羽」・「[[北上特定地域総合開発計画|北上]]」「仙塩」・「阿仁田沢」・「[[最上川#最上特定地域総合開発計画|最上]]」・「[[只見特定地域総合開発計画|只見]]」がされ、これに伴い[[多目的ダム]]の建設[[岩木川]]水系・[[雄物川]]水系・[[名取川]]水系で始まり、遅れて[[最上川]]水系や[[阿武隈川]]水系でも開始された。[[1981年]](昭和56年の御所ダム完成により「北上川五ダム」は全て完成。北上の総合開発は一応の完成を見る。また建設省施工のダムのうち、目屋ダム(岩木川)・鎧畑ダム([[川 (秋田県)|川]])・皆瀬ダム([[皆瀬川 (秋田県)|皆瀬川]])[[大倉ダム]]([[大倉川 (宮城県)|大倉川]])は完成後所在の自治体に管理を移管している。東北地方整備局管理ダムの特徴としては、総貯水容量1億立方メートルを超える大貯するダムが建設中を8基あり、地方整備局随一である。
戦後東北では1947年の[[カスリーン台風]]、翌1948年の[[アイオン台風]]北上川や名取川、[[雄物川]]どが致命的な水害を引き起こし多数死者を出した。治水対策が急務となった建設省は北上川と支流の[[江合川]]、および鳴瀬川対象とした河川改訂改修計画を立案しダムによる治水を盛り込む。さらに戦後の食糧・電力不足にも応するため1950年の[[国土総合開発法]]に基づく特定地域総合開発計画が実施され東北では[[岩木川]]・[[奥入瀬川]]を対象とした「十和田岩木川」上川鳴瀬川を対象とした「[[北上特定地域総合開発計画|北上]]」、名取川を対象とした「仙塩」、[[米代川]]雄物川を対象とした「阿仁田沢」、[[最上川]][[赤川]]を対象とした「[[最上川#最上特定地域総合開発計画|最上]]」そして阿賀野川[[只見川]]・[[信濃川]]を対象とした「[[只見特定地域総合開発計画|只見]]」と東北6県全て地域の対象となった<ref>『国土総合開発特定地域の栞』pp.12-24</ref>。これに基づき北上川五大ダムなど多数直轄ダムが建設され、一部は所在地方自治体へ管理を移管させた(後述)。さらに[[東北自動車道]][[東北新幹線]]開通などによる人口の増加に伴う治安全度の低下や水需要の増大、[[羽越豪雨]]などの深刻な害を機に[[阿武隈川]]水系や最上川水系で直轄ダム事業が進められ、阿武隈川水系で[[七ヶ宿ダム]]([[白石川]]、[[三春ダム]](滝根[[摺上川ダム]][[摺上]]が、最上川水系では[[ダム (山形県)|ダム]](置賜白川、[[寒河江ダム]]([[寒河江川]])[[長井ダム]]([[置賜野川]])が建設されたまた、東北の直轄ダムで最も総貯水容量の多い[[玉川ダム]](玉川)は事業の一環として玉川の[[酸性]]水を[[中和]]する施設を建設、ダム湖を利用して粒状[[石灰石]]と和させることで長年流域住民苦した[[玉川温泉 (秋田県)#玉川毒水|玉川毒水]]を大きく改善させた<ref>[http://www.thr.mlit.go.jp/tamagawa/01dam/04tyuwagaiyo/index.html 国土交通省東北地方整備局玉川ダム管理所『中和処理施設の概要』]2012年8月15日閲覧</ref><ref>[http://www.pref.akita.jp/fpd/sosui/sosui-03.htm 秋田県『玉川毒水 蘇命の水』]2012年8月15日閲覧</ref>


直轄ダムで現在施工中のダムは5基あるが、[[ダム再開発事業]]として津軽ダム(岩木川)と[[胆沢ダム]]([[胆沢川]])の2ダムがある。完成すれば直上流にある目屋ダム(岩木川)と石淵ダム(胆沢川)は水没する。既に[[沖浦ダム#浅瀬石川ダム|浅瀬石川ダム]](浅瀬石川)により沖浦ダムが、長井ダムにより[[管野ダム]](置賜野川)が湖底に水没した。この他施工中のダムは田川ダム(田川)、鳥海ダム([[子吉川]])、成瀬ダム([[成瀬川]])があるが何れもダム事業再検討の対象となり、事実上凍結している<ref name="minaoshi"/>。ダム事業と住民の摩擦については住民軽視の補償交渉が後年批判の的となった[[石淵ダム#補償|石淵ダム補償問題]]のほか、胆沢ダムと津軽ダムでは石淵・目屋ダムで移転を余儀なくされた住民が、再び移転を余儀なくされる例も現れている<ref>『湖水を拓く』pp.11-16</ref><ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=0192 『ダム便覧』目屋ダム(元)]2012年8月15日閲覧</ref>。また、度重なる大[[地震]]による施設被害も起こり、[[岩手・宮城内陸地震]]では石淵ダムの堤体が損傷<ref>[http://www.thr.mlit.go.jp/bumon/kisya/saigai/images/22239_1.pdf 『地震復旧情報(終報)』PDF]2012年8月15日閲覧</ref>、[[東日本大震災]]では沿岸を襲った大[[津波]]が河川を遡上したことで[[北上大堰]](北上川)、阿武隈大堰(阿武隈川)、馬淵大堰([[馬淵川]])などが被害を受けている<ref>[http://www.jice.or.jp/sonota/t1/pdf/03shiryou_5.pdf 第3回東北地方太平洋沖地震を踏まえた河口堰・水門等技術検討委員会『津波の河川遡上と河口堰・水門等の被害状況』]2012年8月15日閲覧</ref>。
現在施工中のダム7基の中で、ダム再開発によるものは2か所ある。'''津軽ダム'''(岩木川)と'''胆沢ダム'''(胆沢川)がそれであり、完成すると既存の目屋ダム・石淵ダムは水没する。既に'''浅瀬石川ダム'''(浅瀬石川)の完成により、既設ダムで日本における多目的ダム施工第1号となった[[沖浦ダム]]が水没している。[[管野ダム]]も'''[[長井ダム]]'''(置賜野川)に水没した。また、施工中のダムの大半は[[日本の長期化ダム事業|事業が長期化]]しており、森吉山ダムはほぼ工事が終了しているが、「鳴瀬川総合開発事業」の'''田川ダム'''(田川)や'''鳥海ダム'''(子吉川)等は完成時期も定かではなく、いくつかは10年以上完成までに時間を要する。この他、[[公共事業]]見直しにより[[小川原湖]][[河口堰]]による小川原湖淡水化計画・「小川原湖総合開発事業」が中止となっている。


なお、東北の直轄ダムにおける技術的特徴として、石淵ダムは[[ロックフィルダム]]施工の日本第一号であり<ref group="注">完成例は岐阜県の[[小渕ダム]]([[久々利川]])が最初である。</ref>、[[鳴子ダム]](江合川)は[[日本人]]だけで手掛けられた最初の[[アーチ式コンクリートダム]]である<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=0290 『ダム便覧』鳴子ダム]2012年8月15日閲覧</ref>。また堰では鳴瀬堰(鳴瀬川)は大河川を堰き止めた最初の[[ゴム引布製起伏堰]](ラバーダム)であり<ref name="naruse">[http://www.thr.mlit.go.jp/karyuu/activity/study_5_2_narusezeki.html 国土交通省東北地方整備局北上川下流河川事務所『鳴瀬堰』]2012年8月15日閲覧</ref>、[[最上川さみだれ大堰]](最上川)はゴム引布製起伏堰として日本最大級である<ref name="samidare">[http://business3.plala.or.jp/nik-kawa/shusuigen/samidare1.html 日向川土地改良区『最上川さみだれ大堰』]2012年8月15日閲覧</ref>。
なお、[[山形県]]にある横川ダム(横川)と[[福島県]]にある大川ダム([[阿賀野川]])は、北陸地方整備局の管轄である。これは水系本流の[[河口]]所在地が[[新潟県]]にあるためである。


{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:small;"
{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!所在<br/>
!水系名
!水系<br />
!一次<br />支川名<br />(本川)
!二次<br />支川名
!河川<br />
!三次<br />支川名
!ダム<br />
!型式<br/>
!ダム名
!高<br />(m)
!{{Nowrap|さ}}<br />
!総貯水<br/>容量<br />(千m&sup3;)
!{{Nowrap|総貯水容量}}<br />
!着工<br />
!型式
!着手<br />(年)
!完成<br/>
!完成<br />(年)
!分類<br/>
![[水源地域対策特別措置法|水特法]]<br />
!備考
!備考<br />
|-
|-
|[[青森県|青森]]||[[岩木川]]||浅瀬石川||[[沖浦ダム#浅瀬石川ダム|浅瀬石川ダム]]||[[重力式コンクリートダム|重力]]||align="right"|91.0||align="right"|53,100||1971||1988||特定||9条等指定||[[沖浦ダム]][[ダム再開発事業|再開発]]
|[[馬淵川]]
|-bgcolor="yellow"
|馬淵川
|青森||岩木川||岩木川||津軽ダム||重力||align="right"|97.2||align="right"|140,900||1988||2016||特定||9条等指定||目屋ダム再開発<br/>工事中
|-
|-
|馬淵大堰
| align=right|-
| align=right|-
|[[可動堰]]
|
|1980
|-
|-
|-
|青森||[[馬淵川]]||馬淵川||馬淵大堰||[[堰]]||align="right"|-||align="right"|-||1973||1980||||||<ref>[http://www.thr.mlit.go.jp/aomori/river/mabechi/seibi/kihon/honbun.pdf 国土交通省河川局『馬淵川水系河川整備基本方針』]2012年8月15日閲覧</ref><ref>[http://www.thr.mlit.go.jp/aomori/river/other/060905/06090504.pdf 馬淵川圏域総合流域防災協議会『馬淵川圏域の課題と当面の進め方』2006年9月]2012年8月15日閲覧</ref>
|[[北上川]]
|-bgcolor="yellow"
|北上川
|[[岩手県|岩手]]||[[北上川]]||[[胆沢川]]||[[胆沢ダム]]||[[ロックフィルダム|ロックフィル]]||align="right"|132.0||align="right"|143,000||1983||2013||特定||指定||石淵ダム再開発<br/>工事中
|-
|-bgcolor="yellow"
|-
|岩手||北上川||胆沢川||[[石淵ダム]]||ロックフィル||align="right"|53.0||align="right"|16,150||1945||1953||||||再開発中
|[[四十四田ダム]]
| align=right|50.0
| align=right|47,100
|[[コンバインダム|複合型]]
|1960
|1968
|-
|- bgcolor="yellow"
|北上川
|北上川
|-
|-
|[[北上特定地域総合開発計画#一関遊水池|一関遊水池]]
| align=right|-
| align=right|-
|[[遊水池]]
|1973
|未定
|-
|-
|-
|岩手||北上川||[[雫石川]]||[[御所ダム]]||[[コンバインダム|複合]]||align="right"|52.5||align="right"|65,000||1967||1981||特定||9条等指定||[[ダム湖百選]]
|北上川
|北上川
|-
|-
|[[北上大堰]]
| align=right|-
| align=right|-
|可動堰
|1968
|1979
|-
|-
|-
|岩手||北上川||北上川||[[四十四田ダム]]||複合||align="right"|50.0||align="right"|47,100||1960||1968||特定||||
|北上川
|[[雫石川]]
|-
|-
|[[御所ダム]]
| align=right|52.5
| align=right|65,000
|複合型
|1967
|1981
|水特法9条指定
|-
|-
|岩手||北上川||[[猿ヶ石川]]||[[田瀬ダム]]||重力||align="right"|81.5||align="right"|146,500||1938||1954||||||ダム湖百選
|北上川
|[[猿ヶ石川]]
|-
|-
|[[田瀬ダム]]
| align=right|81.5
| align=right|146,500
|[[重力式コンクリートダム|重力式]]
|1938
|1954
|-
|-
|-
|岩手||北上川||和賀川||[[湯田ダム]]||[[重力式アーチダム|重力アーチ]]||align="right"|89.5||align="right"|114,610||1953||1964||特定||||ダム湖百選
|北上川
|和賀川
|-
|-
|[[湯田ダム]]
| align=right|89.5
| align=right|114,160
|[[重力式アーチダム|重力式アーチ]]
|1953
|1964
|-
|-
|-
|[[宮城県|宮城]]||[[阿武隈川]]||阿武隈川||阿武隈大堰||堰||align="right"|-||align="right"|-||1973||1982||||||<ref>[http://www.thr.mlit.go.jp/sendai/iwanuma/con4/con4_profile1.html 国土交通省東北地方整備局仙台河川国道事務所岩沼出張所『河川管理施設』]2012年8月15日閲覧</ref>
|北上川
|[[胆沢川]]
|-
|-
|[[石淵ダム]]
| align=right|53.0
| align=right|16,150
|[[ロックフィルダム|ロックフィル]]
|1945
|1953
|-
|- bgcolor="yellow"
|北上川
|胆沢川
|-
|-
|[[胆沢ダム]]
| align=right|132.0
| align=right|143,000
|ロックフィル
|1983
|2013
|工事中<br/>水特法指定
|-
|-
|宮城||[[名取川]]||碁石川||[[釜房ダム]]||重力||align="right"|45.5||align="right"|45,300||1964||1970||特定||||[[湖沼水質保全特別措置法|湖沼法]]指定<br/>ダム湖百選
|北上川
|[[江合川]]
|-
|-
|[[鳴子ダム]]
| align=right|94.5
| align=right|50,000
|[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]
|1951
|1958
|-
|-
|-
|宮城||北上川||北上川||[[北上大堰]]||堰||align="right"|-||align="right"|-||1968||1979||||||<ref>[http://www.thr.mlit.go.jp/karyuu/activity/study_5_2_kitakami_ozeki.html 国土交通省東北地方整備局北上川下流河川事務所『北上大堰』]2012年8月15日閲覧</ref>
|[[鳴瀬川]]
|鳴瀬川
|-
|-
|鳴瀬川中流堰
| align=right|-
| align=right|-
|[[ゴム引布製起伏堰|ラバーダム]]
|1997
|2001
|-
|- bgcolor="pink"
|鳴瀬川
|田川
|-
|-
|田川ダム
| align=right|85.0
| align=right|15,000
|ロックフィル
|1992
|未定
|見直し対象
|-
|-
|宮城||阿武隈川||[[白石川]]||[[七ヶ宿ダム]]||ロックフィル||align="right"|90.0||align="right"|109,000||1973||1991||特定||9条等指定||ダム湖百選
|[[名取川]]
|-bgcolor="pink"
|碁石川
|宮城||[[鳴瀬川]]||田川||田川ダム||ロックフィル||align="right"|85.0||align="right"|14,500||1992||未定||特定||||事業見直し
|-
|-
|[[釜房ダム]]
| align=right|45.5
| align=right|45,300
|重力式
|1964
|1970
|[[湖沼法]]指定
|-
|-
|宮城||北上川||[[江合川]]||[[鳴子ダム]]||[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]||align="right"|94.5||align="right"|50,000||1951||1958||||||
|[[阿武隈川]]
|阿武隈川
|-
|-
|阿武隈大堰
| align=right|-
| align=right|-
|可動堰
|1973
|1982
|-
|-
|-
|宮城||鳴瀬川||鳴瀬川||鳴瀬川中流堰||堰||align="right"|-||align="right"|-||1997||2001||[[多目的ダム#兼用工作物|兼用]]||||<ref name="narusegawa"/>
|阿武隈川
|大滝根川
|-
|-
|[[三春ダム]]
| align=right|65.0
| align=right|42,800
|重力式
|1972
|1997
|水特法9条指定
|-
|-
|宮城||鳴瀬川||鳴瀬川||鳴瀬堰||[[ラバーダム]]||align="right"|-||align="right"|-||1982||1991||||||<ref name="naruse"/>
|阿武隈川
|[[摺上川]]
|-
|-
|[[摺上川ダム]]
| align=right|105.0
| align=right|153,000
|ロックフィル
|1982
|2005
|水特法9条指定
|-
|-
|[[秋田県|秋田]]||[[雄物川]]||[[玉川 (秋田県)|玉川]]||[[玉川ダム]]||重力||align="right"|100.0||align="right"|254,000||1973||1990||特定||指定||ダム湖百選
|阿武隈川
|-bgcolor="pink"
|[[白石川]]
|秋田||[[子吉川]]||子吉川||鳥海ダム||[[台形CSGダム|台形CSG]]||align="right"|81.0||align="right"|47,200||1993||未定||特定||||事業見直し
|-
|-bgcolor="pink"
|-
|秋田||雄物川||[[成瀬川]]||成瀬ダム||ロックフィル||align="right"|113.5||align="right"|78,700||1983||未定||特定||指定||事業見直し
|[[七ヶ宿ダム]]
| align=right|90.0
| align=right|109,000
|ロックフィル
|1973
|1991
|水特法9条指定
|- bgcolor="yellow"
|[[岩木川]]
|岩木川
|-
|-
|津軽ダム
| align=right|97.5
| align=right|142,300
|重力式
|1988
|2016
|工事中<br/>水特法9条指定
|-
|-
|秋田||[[米代川]]||小又川||森吉山ダム||ロックフィル||align="right"|89.9||align="right"|78,100||1973||2012||特定||9条等指定||
|岩木川
|[[平川 (青森県)|平川]]
|浅瀬石川
|-
|[[沖浦ダム#浅瀬石川ダム|浅瀬石川ダム]]
| align=right|91.0
| align=right|53,100
|重力式
|1971
|1988
|水特法9条指定
|- bgcolor="yellow"
|[[米代川]]
|[[阿仁川]]
|小又川
|-
|森吉山ダム
| align=right|89.9
| align=right|78,100
|ロックフィル
|1973
|2011
|工事中<br/>水特法9条指定
|-
|-
|[[山形県|山形]]||[[赤川]]||梵字川||月山ダム||重力||align="right"|123.0||align="right"|65,000||1976||2001||特定||||
|[[雄物川]]
|[[玉川 (秋田県)|玉川]]
|-
|-
|[[玉川ダム]]
| align=right|100.0
| align=right|254,000
|重力式
|1973
|1990
|水特法指定
|- bgcolor="pink"
|雄物川
|[[皆瀬川 (秋田県)|皆瀬川]]
|成瀬川
|-
|成瀬ダム
| align=right|113.5
| align=right|78,700
|ロックフィル
|1983
|2017
|見直し対象<br/>水特法指定<br/>[[秋田県]]より移管
|- bgcolor="pink"
|[[子吉川]]
|子吉川
|-
|-
|鳥海ダム
| align=right|82.0
| align=right|44,100
|[[台形CSGダム|台形CSG]]
|1993
|未定
|見直し対象
|-
|-
|山形||[[最上川]]||[[寒河江川]]||[[寒河江ダム]]||ロックフィル||align="right"|112.0||align="right"|109,000||1972||1990||特定||指定||ダム湖百選
|[[最上川]]
|最上川
|-
|-
|[[最上川さみだれ大堰]]
| align=right|-
| align=right|-
|ラバーダム
|1987
|1995
|-
|-
|-
|山形||最上川||置賜白川||[[白川ダム (山形県)|白川ダム]]||ロックフィル||align="right"|66.0||align="right"|50,000||1968||1981||特定||||
|最上川
|置賜白川
|-
|-
|[[白川ダム (山形県)|白川ダム]]
| align=right|66.0
| align=right|50,000
|ロックフィル
|1968
|1981
|-
|-
|-
|山形||最上川||[[置賜野川]]||[[長井ダム]]||重力||align="right"|125.5||align="right"|51,000||1979||2011||特定||||[[管野ダム]]再開発
|最上川
|[[置賜野川]]
|-
|-
|[[長井ダム]]
| align=right|125.5
| align=right|51,000
|重力式
|1979
|2011
|[[山形県]]より移管
|-
|-
|山形||最上川||最上川||[[最上川さみだれ大堰]]||ラバーダム||align="right"|-||align="right"|-||1989||1995||||||<ref name="samidare"/>
|最上川
|[[寒河江川]]
|-
|-
|[[寒河江ダム]]
| align=right|112.0
| align=right|109,000
|ロックフィル
|1972
|1990
|水特法指定
|-
|-
|[[福島県|福島]]||阿武隈川||[[摺上川]]||[[摺上川ダム]]||ロックフィル||align="right"|105.0||align="right"|153,000||1982||2006||特定||9条等指定||
|[[赤川]]
|-
|梵字川
|福島||阿武隈川||大滝根川||[[三春ダム]]||重力||align="right"|65.0||align="right"|42,800||1972||1997||特定||9条等指定||
|-
|
|}
==== 東北地方整備局の中止事業 ====
|月山ダム
[[ファイル:Urushizawa-301-r1.jpg|200px|thumb|事実上内野ダム計画の後身となった漆沢ダム([[鳴瀬川]])。[[宮城県]]が管理する[[多目的ダム#補助多目的ダム|補助多目的ダム]]。[[1980年]]完成。]]
| align=right|123.0
東北地方整備局管内における中止したダム事業は、旧建設省時代を含めると6事業がある。大別すると特定地域総合開発計画において計画され、諸事情で立ち消えになったダムと、1990年代以降の公共事業見直しの中で中止されたダムという二つの要因がある。
| align=right|65,000

|重力式
前者の例では、阿仁田沢特定地域総合開発計画における雄物川河川総合開発計画の中心事業として、鎧畑ダム、皆瀬ダムと共に「雄物川四大ダム」として計画された肴沢ダム(成瀬川)と川井ダム(役内川)がある。肴沢ダムは現在の秋田県[[雄勝郡]][[東成瀬村]]肴沢、[[国道342号]]肴沢橋付近に建設が予定されていたが諸元は不明。川井ダムは現在の秋田県[[湯沢市]]川井、[[国道108号]]新川井橋付近に建設が予定されており、完成すれば鎧畑ダムとほぼ同等の規模を有するダムであった<ref name="zenshu38">『多目的ダム全集』p.38</ref><ref name="nenkan60">『ダム年鑑 1960』</ref>。しかし両ダム共1960年代には計画が自然消滅し、その後の雄物川水系における直轄事業としてのダムは玉川ダムと、肴沢ダム地点よりも上流の成瀬ダムが新たに加わった。現在役内川にはダムは計画されていない。
|1976

|2001
また、北上特定地域総合開発計画の一環として鳴瀬川上流に計画されていた内野ダムは、筒砂子川との合流点直下流に建設が予定されていた<ref name="utino">『河川総合開発調査実績概要』第八巻 pp.1-43</ref>。しかし内野ダムは計画が立ち消えになり、暫くはダム計画も行われなかった。その後旧内野ダム予定地より上流に[[治水ダム]]を建設する計画が宮城県により立てられ、計画は治水目的に留まらず灌漑、上水道、工業用水道の供給、さらに水力発電目的も加わり[[国庫]]の補助を受けて建設される[[多目的ダム#補助多目的ダム|補助多目的ダム]]として1980年に完成した。これが漆沢ダムであり、結果的に内野ダムの目的を引き継ぎかつ強化した形となっている<ref>『日本の多目的ダム 補助編 1990年版』pp.60-61</ref>。一方鳴瀬川水系では後者の理由で中止したダム事業として、支流である田川に鳴瀬川総合開発事業の一環として計画された田川第二ダムがある。鳴瀬川総合開発事業は田川に田川第一ダムと田川第二ダムを建設して田川の治水と鳴瀬川流域の灌漑、および上水道・工業用水道供給を目的とした事業であり、[[1992年]](平成4年)より事業に着手した。しかしその後の水需要の変化などで事業が縮小されて田川第二ダムは中止、第一ダムは田川ダムと名称を変更しさらに工業用水道供給目的を廃止。現在は隣接する二ッ石川流域より[[バイパス]][[トンネル]]による洪水導水路を田川ダムに連結、田川・二ッ石川流域の治水と灌漑・上水道供給目的を以って計画されているが、ダム事業再検討対象になっている<ref>『河川開発』第78号 p.10,pp.20-21</ref><ref>[http://www.thr.mlit.go.jp/naruse/dam_01.html 国土交通省東北地方整備局鳴瀬川総合開発調査事務所]2012年8月30日閲覧</ref><ref name="minaoshi"/>。
|-

また天然湖沼開発である[[小川原湖]]総合開発事業も後者の例である。同事業は小川原湖より流出する[[高瀬川]]と高瀬川[[放水路]]に[[河口堰]]を建設して小川原湖をダム化し、淡水化することで治水と灌漑、[[むつ小川原開発計画|むつ小川原開発地域]]への上水道と[[工業用水道]]供給を目的としていた<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp,176-177</ref>が、水需要の低下などにより中止された。

{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
!{{Nowrap|所在}}<br />
!水系<br />
!河川<br />
!ダム<br />
!{{Nowrap|型式}}<br />
!高さ<br />
!総貯水容量<br />
!分類<br />
!水特法<br />
!{{Nowrap|備考}}<br />
!出典<br />
|-
|青森||[[高瀬川]]||[[小川原湖]]||小川原湖[[河川総合開発事業|総合開発]]||堰||align="right"|2.9||align="right"|153,800||||||||<ref>『ダム年鑑 1991』pp.80-81</ref>
|-
|宮城||鳴瀬川||鳴瀬川||内野ダム||ロックフィル||align="right"|65.0||align="right"|20,000||||||漆沢ダムの前身||<ref name="utino"/>
|-
|宮城||鳴瀬川||田川||田川第二ダム||重力||align="right"|43.0||align="right"|2,850||特定||||||<ref>[http://damnet.or.jp/Dambinran/binran/Hozon/HzKietaFr_482.html 『ダム便覧』田川第二ダム]2012年8月15日閲覧</ref>
|-
|秋田||雄物川||役内川||川井ダム||重力||align="right"|52.0||align="right"|43,000||||||||<ref name="nenkan60"/>
|-
|秋田||雄物川||成瀬川||肴沢ダム||-||align="right"|-||align="right"|-||||||||<ref name="zenshu38"/>
|}
|}
<gallery>
Image:Isawa-277-r1.JPG|[[胆沢ダム]](胆沢川)
Image:Surigamigawa-536-r1.jpg|[[摺上川ダム]](摺上川)
Image:Tamagawa-394-r1.jpg|[[玉川ダム]]([[玉川 (秋田県)|玉川]])
Image:Nagai-448-r1.JPG|[[長井ダム]](置賜野川)
</gallery>


=== 関東地方整備局 ===
=== 関東地方整備局 ===
[[関東地方整備局]]管内では、既設ダム・堰が13基、工事中ダムが3基の合計16基を直轄管理施工している。
[[ファイル:miyagasedam.JPG|200px|thumb|[[関東地方整備局]]最大の直轄ダム・[[宮ヶ瀬ダム]]([[中津川 (相模川水系)|中津川]][[神奈川県]])]]
[[File:Yanba-624-r1.jpg|200px|thumb|[[八ッ場ダム]]([[吾妻川]]・[[群馬県]])の建設予定地([[2006年]]撮影)。60年以上の紆余曲折を経て本体工事に着手しようとしている。]]
[[関東地方整備局]]管内では既設13基、施工中3基の合計16基のダムが運用・施工中である。

管内には日本最大の河川である[[利根川]]が流れている。有史以来洪水と改修を繰り返していた利根川水系において治水目的のダムが計画されたのは1926年、[[物部長穂]]による河水統制計画案を国策として採用した[[内務省 (日本)|内務省]]内務[[技監]]・[[青山士]]らが中心となって策定した[[鬼怒川]]改修計画における[[五十里ダム|五十里(いかり)ダム]](男鹿川)が最初である。[[1931年]](昭和6年)に現在のダム地点より約2.5キロメートル上流地点<ref group="注">現在、五十里湖に架かる海尻橋付近。</ref>で工事が開始されたが劣悪な[[断層]]が多数露出して中断。太平洋戦争もあって事業は中断したまま戦後を迎えた<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.224-225</ref><ref>『湖水を拓く』pp.104-106</ref>。1947年[[関東地方]]を[[カスリーン台風]]が襲い利根川は[[埼玉県]][[北埼玉郡]][[大利根町]](現在の[[加須市]])で[[堤防]]を決壊させ、その濁流は[[東京都]][[江戸川区]]にまで達し死者・行方不明者1,100名を数える大災害を招いた<ref>『利根川百年史』pp.874-880</ref>。内閣経済安定本部の指示を受けた建設省は利根川改訂改修計画を1949年に策定し、ダムによる利根川の洪水調節を目論んだが1950年の国土総合開発法施行により灌漑と水力発電を含めた総合開発計画に拡充。1951年に[[利根川#利根特定地域総合開発計画|利根特定地域総合開発計画]]を策定した。この時計画・施工されたのが先の五十里ダムの他[[藤原ダム]](利根川)、[[相俣ダム]](赤谷川)、[[薗原ダム]]([[片品川]])、[[八ッ場ダム]]([[吾妻川]])、[[川俣ダム]](鬼怒川)、[[行徳可動堰]]([[江戸川]])である<ref>『利根川百年史』pp.923-960,1208</ref>。また[[荒川 (関東)|荒川]]の治水を主目的に[[二瀬ダム]](荒川)が[[1961年]](昭和36年)完成する。


その後利根川水系の河川開発は爆発的な人口増加を示す東京都など[[首都圏]]への上水道・工業用水道供給といった利水が主眼となり、[[利根川#利根川水系水資源開発基本計画|利根川水系水資源開発基本計画]]が1962年策定された。この時建設省が計画していた[[矢木沢ダム]](利根川)、[[下久保ダム]]([[神流川 (利根川水系)|神流川]])、[[草木ダム]]([[渡良瀬川]])などが[[水資源開発公団]](現在の[[独立行政法人]][[水資源機構]])に事業移管された<ref>『水資源開発公団30年史』pp.110-170</ref>。一方で[[千葉県]]・[[茨城県]]南部の治水・利水を目的に[[川治ダム]](鬼怒川)が建設されたほか、[[遊水池]]内を掘削して貯水池を建設し、平野部の治水と利水を図るため[[渡良瀬遊水地]]内に[[渡良瀬遊水地#谷中湖|渡良瀬貯水池]](谷中湖)、[[荒川第一調節池]]内に[[荒川調節池]](彩湖)が建設されている<ref name="yanakako">[http://www.ktr.mlit.go.jp/tonedamu/tonedamu00025.html 国土交通省関東地方整備局利根川ダム統合管理事務所『渡良瀬貯水池』]2012年8月17日閲覧</ref><ref>[http://www.ktr.mlit.go.jp/arajo/arajo00150.html 国土交通省関東地方整備局荒川上流河川事務所『調節池』]2012年8月17日閲覧</ref>。また、日本有数の酸性河川だった吾妻川の中和を図るため実施された世界初の河川中和事業・[[品木ダム#吾妻川酸性水中和事業|吾妻川酸性水中和事業]]<ref>[http://www.ktr.mlit.go.jp/sinaki/history/index.html 国土交通省関東地方整備局品木ダム水質管理所『中和物語』]2012年8月17日閲覧</ref>の中心施設である[[品木ダム]]は[[群馬県]]の事業として[[1965年]](昭和40年)完成するが、[[1968年]](昭和43年)に建設省に移管されている<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.238-239</ref>。
管内に日本最大の河川・[[利根川]]を擁するため、治水事業は利根川が最大の事業となる。[[1947年]](昭和22年)の[[カスリーン台風]]は利根川に史上最悪の水害をもたらし、濁流は首都・東京にまで押し寄せた。[[首都圏]]を水害から守るため利根川の治水はより強固なものにする必要があり、その根本として[[1952年]](昭和27年)に「利根川改訂改修計画」がまとめられた。この中で利根川水系に10箇所のダムを建設する計画が立案され、現在の[[利根川水系8ダム]]の原点となった。さらに「利根特定地域総合開発計画」の策定によって利水も含めた総合的な河川開発が図られるようになり、[[1961年]](昭和36年)の「[[水資源開発促進法]]」・「水資源開発公団法」へと継承され利水は水資源開発公団(現・[[独立行政法人]][[水資源機構]])の手に委ねられていく。また、[[荒川 (関東)|荒川]]水系も利根川と密接な関係がある事から利根川水系と包摂されていく。「改訂改修計画」により完成したダムには'''藤原ダム'''(利根川)・'''相俣ダム'''(赤谷川)・'''薗原ダム'''(片品川)・'''川俣ダム'''([[鬼怒川]])・'''五十里ダム'''(男鹿川)があり、直轄から公団に施工が移管されたダムとして[[矢木沢ダム]](利根川)・[[下久保ダム]]([[神流川 (利根川水系)|神流川]])・[[草木ダム]]([[渡良瀬川]])・[[浦山ダム]](浦山川)・[[滝沢ダム]](中津川)がある。この他自然湖である[[霞ヶ浦]]の利用や'''渡良瀬遊水地'''(谷中湖)・'''荒川調節池'''(彩湖)といった洪水調節池も存在する。


一方[[相模川]]は既に[[神奈川県]]によって戦前から相模川河水統制事業が進められ、[[相模ダム]][[城山ダム]]が相模川本流に建設され[[横浜市]][[横須賀市]][[川崎市]]などの源となっている。宅地化の進展で青天井の勢である人口増加に対処し、さらに相模川流域の治水安全度を高める必要性があるため、支流の[[中津川 (相模川水系)|中津川]]に'''宮ヶ瀬ダム'''を[[2000年]](平成12年)に完成させた首都圏最大のダムとして、神奈川県の大部分の水源のみならず、相模川水系の治水の要として、さらに観光拠点として重要な役割果たしている。
利根川水系以外での直轄ダム事業は[[横浜市]]、[[川崎市]]、[[横須賀市]]といった大都市を抱える[[神奈川県]]を流れる[[相模川]]水系で実施された。相模川水系では神奈川県によ戦前から相模川河水統制事業が進められ、[[相模ダム]](1947年)と[[城山ダム]](1964年)が相模川本流に建設され県の水源となったが人口の増加は2ダムの供給量を凌駕。このため県西部の[[酒匂川]]水系も開発され[[三保ダム]](河内川、[[1978年]])が完成するが需要に対する供給量は三保ダム完成を以ってしても不足た。このため相模川支流の[[中津川 (相模川水系)|中津川]]に建設されたのが関東地方の直轄ダムとして最大規模誇る[[宮ヶ瀬ダム]]である宮ヶ瀬ダムは相模川の治水に加え相模・城山・三保ダムと共に神奈川県全域の水源として、さらに年間延べ訪問者数約157万人を超える神奈川県内有数の観光として重要な位置占めている<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/TPage.cgi?id=172 『ダム便覧』ダムの書誌あれこれ(16)神奈川県のダム]2012年8月17日閲覧</ref><ref>[http://www.mlit.go.jp/river/press_blog/past.../tyosa_gaiyou.pdf 国土交通省河川局『平成18年度河川空間利用実態調査・ダム湖利用実態調査』]2012年8月17日閲覧</ref>


現在施工中のダムは八ッ場ダムと湯西川ダム(湯西川)、および荒川上流ダム再編事業<ref group="注">新大洞ダム建設、二瀬ダム再開発、二瀬・[[滝沢ダム|滝沢]]・[[浦山ダム|浦山]]3ダムの貯水容量再配分の何れか、もしくは複数を組み合わせて荒川の治水安全度向上を図る事業。</ref>の一環である新大洞ダム(大洞川)がある。八ッ場ダムは1952年に計画が立案され、当初は吾妻川の酸性水対策の目処が立たず、[[1967年]](昭和42年)より本格的な計画が進められたが[[川原湯温泉]]水没を伴うため[[吾妻郡]][[長野原町]]の猛烈な反対運動により計画が膠着。[[2001年]](平成13年)に補償基準に調印し[[2015年]](平成27年)完成予定で事業が進められたが鳩山由紀夫内閣の前原誠司国土交通大臣(当時)により中止方針が示され再度膠着した。前原の方針に神奈川県を除く関東一都五県の知事や地元長野原町、水没住民は挙って反発し以後迷走を続けたが、[[野田内閣]]においてダム事業再検証の結果事業継続が決定した。だが計画から60年以上経過しても完成しない日本の長期化ダム事業の代名詞的存在となっている<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=0624 『ダム便覧』八ッ場ダム]2012年8月17日閲覧</ref><ref>[[朝日新聞]]2009年9月4日付記事</ref><ref>[[産経新聞]]2009年9月17日付記事</ref><ref>[[毎日新聞]]2009年9月18日付記事</ref><ref>[[読売新聞]]2009年9月25日付記事</ref><ref name="minaoshi"/>。八ッ場ダム以外にも地元との軋轢を生じたダムとして地元の了解無しに工事を強行して深刻な対立を招いた藤原ダム<ref>『湖水を拓く』pp.19-21</ref>や[[老神温泉]]が一部水没することで『東の薗原、西の[[松原ダム|松原]]・[[下筌ダム|下筌]]』とまで形容されるほどの反対運動となった薗原ダムがある<ref>『利根川百年史』p.1379</ref>。国土交通省によるダム事業再検証では八ッ場と新大洞ダム、[[品木ダム#吾妻川上流総合開発事業|吾妻川上流総合開発事業]](後述)が対象となり、八ッ場は継続、吾妻川上流総合開発は中止となり新大洞は検討中となっている<ref name="minaoshi"/><ref group="注">このため新大洞ダムの諸元は現在未定となっている。表中の諸元は計画当初のものである。</ref>。
しかし、[[多摩川]]水系・[[那珂川]]水系・[[久慈川]]水系及び[[富士川]]水系は、堤防整備や[[しゅんせつ]]等を主体とした河川整備を行っており、直轄事業としてのダム事業は行われていない。また、[[日本の長期化ダム事業]]の代表格のひとつである'''八ッ場ダム'''は、計画発表から52年経過して漸く本体工事に着手しようとしていたが、政権交代により誕生した[[鳩山由紀夫内閣]]ではダム本体事業の中止の方針が示され、これに反発する地元関係者との対立が続いている。「利根川改訂改修計画」の根幹を成す予定であった「[[沼田ダム計画]]」は、[[沼田市]]の大半が水没することで沼田市を始め[[群馬県]]も反対し、[[1972年]](昭和47年)に白紙撤回されている。遊水地に掘込式の貯水池を建設してダム化し、東京都の水源とする「渡良瀬第二貯水池総合開発計画」・「荒川第二調節池総合開発計画」、[[印旛沼]]を拡張して多目的貯水池とする「印旛沼総合開発計画」や'''行徳可動堰'''と'''江戸川水閘門'''の直上流に新しい[[河口堰]]を建設して[[江戸川]]の治水を行う「江戸川総合開発計画」も中止されている。


なお関東地方整備局が管轄する一級河川のうち[[久慈川]]、[[那珂川]]、[[多摩川]]、[[鶴見川]]、[[富士川]]の各水系には直轄ダムが建設されていない。特に鶴見川水系は都市河川でもあるためダムは本支流含め一つも建設されていない。久慈川、那珂川、富士川水系については支流に茨城県、栃木県、[[山梨県]]の各県が[[多目的ダム#補助多目的ダム|補助多目的ダム]]を建設している。
現在は'''湯西川ダム'''(湯西川)のほか、「利根川上流ダム群再編事業」と「荒川上流ダム群再編事業」が施工・計画されている。この中で利根川では藤原・薗原・下久保の三ダムが対象となり貯水容量変更やダムかさ上げの検討が行われ、荒川では'''二瀬ダム'''(荒川)を嵩上げするか、'''新大洞ダム'''(大洞川)を建設するか、あるいは既設ダムの容量を変更するかで検討が行われている。また酸性河川である吾妻川上流の中和事業を強化するための「吾妻川上流総合開発事業」として'''品木ダム'''(湯川)の再開発と中和施設改築に加え、残る酸性河川・万座川に'''万座ダム'''を建設する計画が進められている。


{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:small;"
{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!所在<br/>
!水系名
!水系<br />
!一次<br />支川名<br />(本川)
!二次<br />支川名
!河川<br />
!三次<br />支川名
!ダム<br />
!型式<br/>
!ダム名
!高<br />(m)
!{{Nowrap|さ}}<br />
!総貯水<br/>容量<br />(千m&sup3;)
!{{Nowrap|総貯水容量}}<br />
!着工<br />
!型式
!着手<br />(年)
!完成<br/>
!完成<br />(年)
!分類<br/>
![[水源地域対策特別措置法|水特法]]<br />
!備考
!備考<br />
|-
|-
|[[栃木県|栃木]]||[[利根川]]||男鹿川||[[五十里ダム]]||[[重力式コンクリートダム|重力]]||align="right"|112.0||align="right"|55,000||1941||1956||||||
|[[利根川]]
|利根川
|-
|-
|[[藤原ダム]]
| align=right|95.0
| align=right|52,490
|[[重力式コンクリートダム|重力式]]
|1951
|1957
|-
|-
|-
|栃木||利根川||[[鬼怒川]]||[[川治ダム]]||[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]||align="right"|140.0||align="right"|83,000||1968||1983||特定||9条等指定||
|利根川
|赤谷川
|-
|-
|[[相俣ダム]]
| align=right|67.0
| align=right|25,000
|重力式
|1952
|1959
|[[群馬県]]より移管
|-
|-
|栃木||利根川||鬼怒川||[[川俣ダム]]||アーチ||align="right"|117.0||align="right"|87,600||1957||1966||特定||||
|利根川
|-bgcolor="yellow"
|片品川
|栃木||利根川||湯西川||湯西川ダム||重力||align="right"|119.0||align="right"|75,000||1982||2012||特定||9条等指定||工事中
|-
|-
|[[薗原ダム]]
| align=right|76.5
| align=right|20,310
|重力式
|1958
|1965
|-
|- bgcolor="pink"
|利根川
|[[吾妻川]]
|-
|-
|[[八ッ場ダム]]
| align=right|131.0
| align=right|107,500
|重力式
|1967
|未定
|見直し対象<br/>水特法9条指定
|- bgcolor="pink"
|利根川
|吾妻川
|万座川
|-
|万座ダム
| align=right|-
| align=right|-
|-
|1990
|未定
|見直し対象
|- bgcolor="yellow"
|利根川
|吾妻川
|[[白砂川]]
|湯川
|[[品木ダム]]
| align=right|43.5
| align=right|1,668
|重力式
|1961
|1965
|群馬県より移管<br/>再開発中
|-
|-
|栃木||利根川||[[渡良瀬川]]||[[渡良瀬遊水地#谷中湖|渡良瀬貯水池]]||掘込式貯水池||align="right"|8.5||align="right"|26,400||1973||2002||特定||||<ref name="yanakako"/>
|利根川
|[[渡良瀬川]]
|-
|-
|[[渡良瀬遊水地|渡良瀬貯水池]]
| align=right|6.5
| align=right|26,400
|掘込式貯水池
|1973
|1989
|-
|-
|-
|[[群馬県|群馬]]||利根川||赤谷川||[[相俣ダム]]||重力||align="right"|67.0||align="right"|25,000||1952||1959||||||[[ダム湖百選]]
|利根川
|[[鬼怒川]]
|-
|-
|[[川俣ダム]]
| align=right|117.0
| align=right|87,600
|[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]
|1957
|1966
|-
|-
|-
|群馬||利根川||湯川||[[品木ダム]]||重力||align="right"|43.5||align="right"|1,668||1961||1965||||||
|利根川
|鬼怒川
|-
|-
|[[川治ダム]]
| align=right|140.0
| align=right|83,000
|アーチ
|1968
|1983
|[[水源地域対策特別措置法|水特法]]9条指定
|-
|-
|群馬||利根川||[[片品川]]||[[薗原ダム]]||重力||align="right"|76.5||align="right"|20,310||1958||1965||||||
|利根川
|鬼怒川
|男鹿川
|-
|[[五十里ダム]]
| align=right|112.0
| align=right|55,000
|重力式
|1941
|1956
|-
|- bgcolor="yellow"
|利根川
|鬼怒川
|男鹿川
|湯西川
|[[湯西川ダム]]
| align=right|119.0
| align=right|75,000
|重力式
|1982
|2011
|工事中<br/>水特法9条指定
|-
|-
|群馬||利根川||利根川||[[藤原ダム]]||重力||align="right"|95.0||align="right"|52,490||1951||1958||||||
|利根川
|-bgcolor="yellow"
|[[江戸川]]
|群馬||利根川||[[吾妻川]]||[[八ッ場ダム]]||重力||align="right"|116.0||align="right"|107,500||1967||2015||特定||9条等指定||工事中
|-
|-
|[[行徳可動堰]]
| align=right|-
| align=right|-
|可動堰
|1950
|1957
|-
|-
|-
|[[埼玉県|埼玉]]||[[荒川 (関東)|荒川]]||荒川||[[荒川第一調節池|荒川調節池]]||掘込式貯水池||align="right"|-||align="right"|11,100||1977||1996||特定||||
|[[荒川 (関東)|荒川]]
|-bgcolor="pink"
|荒川
|埼玉||荒川||大洞川||新大洞ダム||重力||align="right"|155.0||align="right"|33,000||1995||未定||[[治水ダム|治水]]||||事業見直し
|-
|-
|[[二瀬ダム]]
| align=right|95.0
| align=right|26,900
|[[重力式アーチダム|重力式アーチ]]
|1952
|1961
|-
|-
|-
|埼玉||荒川||荒川||[[二瀬ダム]]||[[重力式アーチダム|重力アーチ]]||align="right"|95.0||align="right"|26,900||1952||1961||特定||||
|荒川
|荒川
|-
|-
|[[新六堰]]
| align=right|-
| align=right|-
|可動堰
|1994
|2002
|-
|-
|-
|[[千葉県|千葉]]||利根川||[[江戸川]]||[[行徳可動堰]]||[[堰]]||align="right"|-||align="right"|-||1950||1957||||||<ref>[http://www.ktr.mlit.go.jp/edogawa/edogawa00094.html 国土交通省関東地方整備局江戸川河川事務所『行徳可動堰』]2012年8月17日閲覧</ref>
|荒川
|荒川
|-
|-
|[[荒川第一調節池]]
| align=right|11.3
| align=right|11,100
|掘込式貯水池
|1977
|1993
|-
|- bgcolor="yellow"
|荒川
|大洞川
|-
|-
|[[二瀬ダム|新大洞ダム]]
| align=right|155.0
| align=right|33,000
|重力式
|1995
|未定
|工事中
|-
|-
|[[神奈川県|神奈川]]||[[相模川]]||[[中津川 (相模川水系)|中津川]]||[[宮ヶ瀬ダム]]||重力||align="right"|156.0||align="right"|193,000||1971||2000||特定||9条等指定||[[ダム湖百選]]
|[[相模川]]
|[[中津川 (相模川水系)|中津川]]
|-
|-
|[[宮ヶ瀬ダム]]
| align=right|156.0
| align=right|193,000
|重力式
|1971
|2000
|水特法9条指定
|-
|-
|神奈川||相模川||中津川||[[宮ヶ瀬副ダム]]||重力||align="right"|34.5||align="right"|557||1971||2000||特定||||
|相模川
|中津川
|-
|-
|[[宮ヶ瀬副ダム]]
| align=right|34.5
| align=right|557
|重力式
|1971
|2000
|-
|}
|}
<gallery>
File:Kawamata Dam.jpg|[[川俣ダム]]([[鬼怒川]])
File:Kawaji Dam right view.jpg|[[川治ダム]](鬼怒川)
Image:Ikari-559-r1-2.JPG|[[五十里ダム]](男鹿川)
image:miyagasedam.JPG|[[宮ヶ瀬ダム]]([[中津川 (相模川水系)|中津川]])
</gallery>


=== 北陸地方整備局 ===
==== 関東地方整備局の中止事業 ====
関東地方整備局管内で中止されたダム事業は、旧建設省時代を含めると16事業17ダムに上るが、そのほとんどは利根川・荒川水系で計画されたものである。
北陸地方整備局管内では、既設ダム・堰を11基と工事中ダムを2基、現在直轄管理・施工している。ただし'''手取川ダム'''(手取川)に関しては[[河川法]]第17条による「兼用工作物」として[[電源開発]]・[[石川県]]と、'''妙見堰'''については[[東日本旅客鉄道|JR東日本]]と共同管理している。


中止ダムのうち利根川本流の[[沼田ダム計画]]は利根川の治水、[[赤城山]]・[[榛名山]]麓の大規模農地灌漑、東京都への水道供給そして出力130万キロワットの水力発電を目的とし、ダムにより誕生する人造湖は総貯水容量が8億立方メートルと仮に完成していれば日本最大の多目的ダムとなっていた<ref name="numata">[http://criepi.denken.or.jp/intro/matsunaga/recom/recom_08.pdf 『東京の水は利根川から』]2012年8月17日閲覧</ref>。しかしダムにより群馬県[[沼田市]]において2,200世帯が水没し移転を余儀なくされ、多大な犠牲を蒙る沼田市は市議会で建設反対決議を全会一致で可決。さらに[[神田坤六]][[群馬県知事]]以下群馬県当局・[[群馬県議会]]も建設反対を表明し群馬県が官民一体で反対運動を繰り広げ、最終的に[[第1次田中角栄内閣]]の[[建設大臣]]であった[[木村武雄]]が[[1972年]](昭和47年)に計画中止を表明するまで地元に大きな混乱をもたらした<ref>『沼田市史 通史編三』pp.649-652</ref>。広地([[白砂川]])、鳴瀬(温川)、高沼([[四万川]])、本庄([[烏川]])、山口([[鏑川]])、跡倉(南牧川)の6ダムは利根川改訂改修計画や利根特定地域総合開発計画において利根川治水計画の一環で検討された<ref name="kaihatu_56">『河川総合開発調査実績概要』第一巻 p.56</ref><ref name="gaiyo34">『河川総合開発調査実績概要』第二巻 pp.34-35</ref>ものの立ち消えとなっており、このうち四万川には[[四万川ダム]]、烏川には倉渕ダムが後に完成または施工されている<ref group="注">倉渕ダムは国土交通省のダム事業再検討対象となっている。</ref>。また利根川改訂改修計画で計画された坂原ダム(神流川)はその後神ヶ原ダム計画を経て下久保ダムとして完成している<ref name="gaiyo54">『河川総合開発調査実績概要』第一巻 p.54</ref><ref name="kaihatu_56"/>。
日本最長の河川・[[信濃川]]を擁しているが本川には[[多目的ダム]]がなく、支流に'''三国川ダム'''(三国川)・'''大町ダム'''(高瀬川)が建設されている。日本屈指の[[一級水系]]にしては少ないが、これは[[大河津分水|大河津分水路]]や[[関屋分水|関屋分水路]]といった大規模な[[放水路]]による治水対策が早くから行われたためである。また、上流部や主要支川で[[多目的ダム|補助多目的ダム]]が多く建設されていることも1つである。このため、直轄ダム事業は[[1969年]](昭和44年)の「信濃川水系工事実施基本計画」の策定まで行われなかった。信濃川水系を始め北陸地方の河川は大正時代から[[水力発電]]開発が盛んで、主な河川に発電専用ダムが多く建設されたことも、ダム建設地点選定に影響を与えたとも言われている{{誰2|date=2009年5月}}。この後計画された[[清津峡#清津川ダム建設計画|清津川ダム]](清津川)や千曲川上流ダム(信濃川)は、[[公共事業]]見直しの風潮の中で姿を消している。


一方1990年代以降の公共事業見直しで中止になった事業も多い。関東地方整備局管内では既存の遊水池や天然湖沼などを利用し、ダム化する事業が多く計画されたが渡良瀬貯水池と荒川調節池を除き中止された。茨城県[[取手市]]の利根川にある稲戸井調節池内に貯水池を設ける稲戸井調整池総合開発事業、[[渡良瀬遊水地|渡良瀬第二遊水地]]内に貯水池を設ける渡良瀬第二貯水池事業、[[さいたま市]]の荒川第二調節池に貯水池を設ける荒川第二調節池総合開発事業、[[印旛沼]]を掘削して貯水容量を増大させる印旛沼総合開発事業がこれに当たる<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.220-221,240-241,244-247,252-253</ref>。また行徳可動堰と[[江戸川水閘門]]([[旧江戸川]])直上流に新しい堰と水門を建設し江戸川の治水と利水を強化する江戸川総合開発事業<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.254-255</ref>、相俣ダム上流に高さ160メートルと関東の直轄ダムでは最も高いダムを建設して利根川の治水と首都圏への利水強化を目的とした[[相俣ダム#川古ダム計画|川古ダム計画]]も中止された<ref name="nenkan97">『ダム年鑑 1997』pp.106-107</ref>。さらに万座ダム(万座川)の新規建設と品木ダムの嵩上げ、中和処理施設改築を柱とする吾妻川上流総合開発事業は国土交通省のダム事業再検証対象となり、2012年に中止が決定されている<ref name="minaoshi"/><ref name="kaihatsu78">『河川開発』第78号 pp.20-21</ref>。
管内の多目的ダム事業で特筆すべき事項として、[[黒部川]]の'''宇奈月ダム'''による[[連携排砂]]がある。これは直上流にある[[関西電力]]管理の[[出し平ダム]]と連携して出水時に排砂を行うことでダムの宿敵である堆砂を防除するのを目的とした事業である。改良すべき点は多いと言われているが{{誰2|date=2009年5月}}、今後のダム保守・管理において一つの道程を付けた。


利根川・荒川水系以外では[[山梨県]]南部を流れる[[富士川]]支流の[[早川 (山梨県)|早川]]に計画されていた角瀬ダムが1950年代に中止されている。完成すれば富士川水系最大規模の多目的ダムとなるが、計画を検討したところダムを建設するだけの[[費用対効果]]が得られないという結論に達し、事業は調査段階で中止となった<ref name="hayakawa">『河川総合開発調査実績概要』第三巻 pp.59-65</ref>。
なお、北陸地方ではあるが[[福井県]]の[[九頭竜川]]水系と[[北川]]水系は、近畿地方整備局の管轄になっている。


{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:small;"
{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!{{Nowrap|所在}}<br />
!水系名
!水系<br />
!一次<br />支川名<br />(本川)
!二次<br />支川名
!河川<br />
!三次<br />支川名
!ダム<br />
!{{Nowrap|型式}}<br />
!ダム名
!高<br />(m)
!高<br />
!総貯水<br/>容量<br />(千m&sup3;)
!総貯水容量<br />
!{{Nowrap|分類}}<br />
!型式
!着手<br />(年)
!水特法<br />
!完成<br />(年)
!{{Nowrap|備考}}<br />
!出典<br />
!備考
|-
|-
|[[茨城県|茨城]]||利根川||利根川||稲戸井調節池総合開発||掘込式貯水池||align="right"|10.5||align="right"|21,400||特定||||||<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.220-221</ref>
|[[阿賀野川]]
|阿賀野川
|-
|-
|[[大川ダム]]
| align=right|75.0
| align=right|57,500
|[[コンバインダム|複合型]]
|1971
|1987
|[[水源地域対策特別措置法|水特法]]指定
|-
|-
|栃木||利根川||渡良瀬川||[[渡良瀬遊水地#谷中湖|渡良瀬第二貯水池]]||掘込式貯水池||align="right"|4.8||align="right"|10,500||特定||||||<ref>『ダム年鑑 1991』pp.102-103</ref>
|[[荒川 (羽越)|荒川]]
|横川
|-
|-
|[[横川ダム (山形県)|横川ダム]]
| align=right|72.5
| align=right|24,600
|[[重力式コンクリートダム|重力式]]
|1987
|2008
|水特法指定
|-
|-
|群馬||利根川||利根川||[[沼田ダム計画|沼田ダム]]||アーチ||align="right"|125.0||align="right"|800,000||||||||<ref name="numata"/>
|荒川
|大石川
|-
|-
|[[大石ダム]]
| align=right|87.0
| align=right|22,800
|重力式
|1968
|1980
|-
|-
|-
|群馬||利根川||赤谷川||[[相俣ダム#川古ダム計画|川古ダム]]||重力||align="right"|160.0||align="right"|75,000||特定||||||<ref name="nenkan97"/>
|[[信濃川]]
|信濃川
|-
|-
|[[妙見堰]]
| align=right|-
| align=right|-
|[[可動堰]]
|1985
|1990
|-
|-
|-
|群馬||利根川||湯川||品木ダム再開発||重力||align="right"|59.5||align="right"|3,893||治水||||[[品木ダム#吾妻川上流総合開発事業|吾妻川上流総合開発]]||<ref name="kaihatsu78"/>
|信濃川
|信濃川
|-
|-
|[[蒲原大堰]]
| align=right|-
| align=right|-
|可動堰
|1978
|1984
|-
|-
|-
|群馬||利根川||万座川||万座ダム||重力||align="right"|90.0||align="right"|8,900||治水||||吾妻川上流総合開発||<ref name="kaihatsu78"/>
|信濃川
|[[犀川 (長野県)|犀川]]
|[[高瀬川 (長野県)|高瀬川]]
|-
|[[大町ダム]]
| align=right|107.0
| align=right|33,900
|重力式
|1972
|1985
|-
|-
|-
|群馬||利根川||[[白砂川]]||広地ダム||-||align="right"|-||align="right"|-||||||||<ref name="kaihatu_56"/>
|信濃川
|[[魚野川]]
|三国川
|-
|[[三国川ダム]]
| align=right|119.5
| align=right|27,500
|[[ロックフィルダム|ロックフィル]]
|1975
|1993
|-
|-
|-
|群馬||利根川||温川||鳴瀬ダム||-||align="right"|-||align="right"|-||||||||<ref name="kaihatu_56"/>
|信濃川
|[[大河津分水|新信濃川]]
|-
|-
|[[大河津可動堰]]
| align=right|-
| align=right|-
|可動堰
|1927
|1931
|-
|-
|-
|群馬||利根川||[[四万川]]||高沼ダム||重力||align="right"|75.0||align="right"|28,700||||||||<ref name="gaiyo34"/>
|信濃川
|[[関屋分水|関屋分水路]]
|-
|-
|[[関屋分水|新潟大堰]]
| align=right|-
| align=right|-
|可動堰
|1964
|1972
|-
|-
|-
|群馬||利根川||[[烏川]]||本庄ダム||-||align="right"|-||align="right"|-||||||||<ref name="kaihatu_56"/>
|[[黒部川]]
|黒部川
|-
|-
|[[宇奈月ダム]]
| align=right|97.0
| align=right|24,700
|重力式
|1974
|2001
|-
|- bgcolor="pink"
|[[庄川]]
|利賀川
|-
|-
|利賀ダム
| align=right|110.0
| align=right|31,000
|重力式
|1989
|未定
|見直し対象
|-
|-
|群馬||利根川||[[鏑川]]||山口ダム||-||align="right"|-||align="right"|-||||||||<ref name="kaihatu_56"/>
|[[小矢部川]]
|小矢部川
|-
|-
|小矢部川大堰
| align=right|-
| align=right|-
|可動堰
|1977
|1983
|-
|-
|-
|群馬||利根川||南牧川||跡倉ダム||-||align="right"|-||align="right"|-||||||||<ref name="kaihatu_56"/>
|[[手取川]]
|-
|手取川
|群馬||利根川||[[神流川 (利根川水系)|神流川]]||坂原ダム||重力||align="right"|101.0||align="right"|22,000||||||[[下久保ダム]]の前身||<ref name="gaiyo54"/>
|-
|
|-
|群馬||利根川||神流川||神ヶ原ダム||-||align="right"|-||align="right"|-||||||下久保ダムの前身||<ref name="kaihatu_56"/>
|[[手取川ダム]]
|-
| align=right|153.0
|千葉||利根川||江戸川||江戸川総合開発||堰||align="right"|-||align="right"|7,100||特定||||||<ref name="nenkan_102">『ダム年鑑 1991』pp.102-103</ref>
| align=right|231,000
|-
|ロックフィル
|千葉||利根川||[[印旛沼]]||印旛沼総合開発||掘込式貯水池||align="right"|6.8||align="right"|50,800||特定||||||<ref name="nenkan_102"/>
|1969
|-
|1979
|埼玉||荒川||荒川||荒川第二調節池総合開発||掘込式貯水池||align="right"|12.8||align="right"|11,000||特定||||||<ref>『ダム年鑑 1991』pp.106-107</ref>
|水特法9条指定
|-
|[[山梨県|山梨]]||[[富士川]]||[[早川 (山梨県)|早川]]||角瀬ダム||重力||align="right"|80.0||align="right"|47,600||||||||<ref name="hayakawa"/>
|}
|}
<gallery>
File:Omachi Dam.jpg|[[大町ダム]]([[高瀬川 (長野県)|高瀬川]])
Image:Sagurigawa-787-r1.JPG|[[三国川ダム]](三国川)
Image:Unazuki Dam.jpg|[[宇奈月ダム]]([[黒部川]])
image:Tedorigawa Dam.jpg|[[手取川ダム]]([[手取川]])
</gallery>


=== 中部地方整備局 ===
=== 北陸地方整備局 ===
[[File:Tedorigawa Dam.jpg|200px|thumb|北陸地方整備局管内で最大の直轄ダム・[[手取川ダム]]([[手取川]])。[[電源開発]]と共同管理。]]
中部地方整備局管内では既設ダム8基、堰2基、工事中ダム4基の14基を直轄管理・施工している。'''佐久間ダム'''に関しては再開発事業を施工しているがダムの管理は[[電源開発]]が行っているため、直轄管理ダムではない。'''丸山ダム'''(木曽川)は[[河川法]]第17条に基づく「兼用工作物」として[[関西電力]]と、'''新豊根ダム'''(大入川)は[[電源開発]]と、'''櫛田可動堰'''(櫛田川)は[[三重県]]と共同管理を行っている。
[[File:Unazuki Dam.jpg|200px|thumb|[[関西電力]][[出し平ダム]]と[[連携排砂]]を行う[[宇奈月ダム]]([[黒部川]]・[[富山県]])。画面右側に排砂設備がある。]]
[[北陸地方整備局]]管内では、既設ダム・堰が11基、施工中ダム2基の計13基が存在する。日本最長の河川・[[信濃川]]を始め[[阿賀野川]]、[[荒川 (羽越)|荒川]]の各水系を一貫管理する関係上、本来は[[東北地方整備局]]管内である[[山形県]]の[[横川ダム (山形県)|横川ダム]](横川)、[[福島県]]の[[大川ダム]](阿賀野川)や[[中部地方整備局]]管内である[[長野県]]の[[大町ダム]]([[高瀬川 (長野県)|高瀬川]])は北陸地方整備局管理の直轄ダムである。反面北陸地方でも[[福井県]]を流域に持つ[[九頭竜川]]水系と[[北川]]水系は、近畿地方整備局の管轄となっている。事業形態としては[[河川法]]第17条における[[多目的ダム#兼用工作物|兼用工作物]]規定に基づき、管内最大規模の直轄ダムである[[手取川ダム]]([[手取川]])は[[電源開発]]、[[北陸電力]]、[[石川県]]との共同事業で建設され(後述)現在は電源開発<ref group="注">電源開発はダム本体の維持修繕および水力発電に関連するダムの運用において、管理業務を担当している。</ref>との共同管理である<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.278-279</ref>。また[[新潟県]][[長岡市]]に建設された[[妙見堰]](信濃川)は治水目的のほか[[国道17号]][[バイパス]]([[越の大橋]])としての[[渋滞]]緩和、[[東日本旅客鉄道]](JR東日本)の[[信濃川発電所|小千谷・新小千谷発電所]]の[[放流 (ダム)|放流]]水均等化(逆調整)目的も有することから、旧建設省の河川管理部局と道路管理部局および東日本旅客鉄道の三者による共同事業として建設されている<ref>[http://www.mlit.go.jp/river/basic_info/.../shinanogawa35-1.pdf 国土交通省河川局『信濃川水系河川整備基本方針』]2012年8月21日閲覧</ref>。


北陸地方を流域に持つ河川は[[融雪]]による豊富な水量、[[北アルプス]]や[[三国山脈]]といった急峻な山岳地帯を流れるため急流かつ高落差であるという[[水力発電]]の好条件を備える河川が多く、[[大正]]時代から水力発電事業が各河川で盛んに実施された。だが水力発電に適した河川は大雨が降れば容易に洪水を引き起こし、信濃川の[[戌の満水]]や[[横田切れ]]など流域に甚大な被害を与える水害を度々もたらしていた。こうした中で実施された国直轄の河川事業で早期に行われたものとして信濃川[[大河津分水]]事業が挙げられる。[[享保]]年間より構想された分水計画は[[1896年]]([[明治]]22年)[[7月22日]]の横田切れを機に急速に進められ、[[放水路]]である大河津分水(新信濃川)と信濃川の流量を調節する[[大河津分水#概要|大河津洗堰]]が[[1922年]](大正11年)完成する。しかし[[1927年]](昭和2年)の洪水で分水側の堰が破壊されたことから、[[1931年]](昭和6年)[[大河津可動堰]]が完成し分水本来の目的が強化された<ref name="okotsu">[http://www.hrr.mlit.go.jp/shinano/ohkouzu/toha/toha-mokuji.htm 信濃川大河津資料館『すぐ分かる大河津分水とは』]2012年8月20日閲覧</ref>。
日本有数の大河川・[[木曽川]]を始め[[天竜川]]・[[矢作川]]は大正時代から盛んに[[水力発電]]開発が行われ、発電専用ダムも[[大井ダム]](木曽川)・[[泰阜ダム]](天竜川)など多く建設された。一方で急流かつ水量の多い河川は豪雨になると水害を頻発し、そのための治水は古来より多くの先人達の苦労によって築かれている。戦後、「木曽川水系流域計画」・「[[木曽川#木曽特定地域総合開発計画|木曽特定地域総合開発計画]]」・「[[天竜川#天竜奥三河特定地域総合開発計画|天竜奥三河特定地域総合開発計画]]」等木曽川を中心に河川総合開発が手掛けられるようになり、従来の発電ダムから[[多目的ダム]]の建設へと開発の軸足が移されていった。さらに[[中京工業地帯]]の発展に伴う[[中京圏]]の人口増加は利水開発の必要性も生じ、[[1966年]](昭和41年)木曽川水系は「[[水資源開発促進法]]」の指定水系となり、以後水資源開発公団([[水資源機構]])による「[[木曽川#木曽川水系水資源開発基本計画|木曽川水系水資源開発基本計画]]」が策定された。この後[[味噌川ダム]](木曽川)・[[岩屋ダム]]([[馬瀬川]])・[[阿木川ダム]](阿木川)・[[徳山ダム]]([[揖斐川]])は公団に事業を移管した。[[豊川]]水系も[[1991年]](平成3年)に指定水系となっている。その他の水系に関しては、利水目的もあるが治水事業としての意味合いが濃い。


戦後、[[国土総合開発法]]に基づく[[河川総合開発事業#特定地域総合開発計画|特定地域総合開発計画]]のうち、北陸地方の河川に関連するものとしては[[只見川]]を中心とした阿賀野川、信濃川水系が対象の[[只見特定地域総合開発計画]]<ref>『国土総合開発特定地域の栞』pp.21-23</ref>、[[神通川]]、[[常願寺川]]、[[庄川]]水系を対象とした飛越特定地域総合開発計画<ref>『国土総合開発特定地域の栞』pp.31-33</ref>があるが<ref group="注">このほかに能登特定地域総合開発計画があるが、[[河北潟]]・[[邑知潟]]の干拓と[[漁港]]や道路の整備が主目的である。</ref>、何れも主目的は電力会社が事業主体の水力発電であり治水は常願寺川の[[砂防]]事業程度であった。活発な水力発電開発により[[黒部ダム]]([[黒部川]])を筆頭に日本屈指の規模を持つダムが多く建設されたが、他地域で盛んに実施されていた[[河川総合開発事業]]に基づく治水が主目的の多目的ダム事業は[[一級河川]]では富山県が神通川水系の支流で実施した程度であった。しかし[[1967年]](昭和42年)に新潟県[[下越地方]]・山形県[[置賜地方]]を襲った[[羽越豪雨]]は特に荒川流域に致命的な被害を与え<ref>[http://www.hrr.mlit.go.jp/uetsu/contents/river/abaregawa/data/index.html 国土交通省北陸地方整備局羽越河川国道事務所『暴れ川荒川 水害の記録』]2012年8月21日閲覧</ref><ref>[http://www.pref.niigata.lg.jp/shibata_seibi/1206378083692.html 新潟県新発田地域振興局『8.28水害(羽越水害)』]2012年8月21日閲覧</ref><ref>[http://www.town.oguni.yamagata.jp/data/history/table/s42/s42.html 山形県小国町『昭和42年 羽越水害』]2012年8月21日閲覧</ref>、[[1969年]](昭和44年)8月の前線による集中豪雨は信濃川・黒部川流域に大きな被害をもたらした<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.260-261,264-265,274-275</ref>。これら水害を機に新たな河川整備が計画され、荒川では[[二級河川]]だった河川等級を[[1968年]](昭和43年)に一級河川に昇格させ<ref>『河川便覧 2004』pp.86-87</ref>[[大石ダム|大石]](大石川)・横川ダムが、信濃川水系では[[関屋分水]]・[[蒲原大堰]](信濃川)などといった下流部治水事業に加え支流[[魚野川]]流域に[[三国川ダム|三国川(さぐりがわ)ダム]](三国川)と[[犀川 (長野県)|犀川]]流域に大町ダムが建設され、[[電力会社管理ダム|水力発電専用ダム]]しか存在しなかった黒部川水系にも[[宇奈月ダム]](黒部川)が建設された。一方石川県最大の河川・手取川では手取川ダムを巡り旧建設省の治水事業、電源開発・北陸電力の水力発電事業、石川県による水道事業が競合していたが一本化され、河川法第17条に基づき四事業者の共同事業による手取川総合開発事業として[[1979年]](昭和54年)完成した<ref>『電発30年史』pp.319-321</ref>。
現在は「丸山ダム再開発事業」としての'''新丸山ダム'''を始め施工中のダム事業は五か所で行われている。特に天竜川においては深刻な貯水池[[ダムと環境#堆砂|堆砂]]を防除するために'''美和ダム'''([[三峰川]])・'''小渋ダム'''(小渋川)における排砂バイパストンネルの建設や、「天竜川ダム再編事業」として佐久間ダムの多目的ダム化を現在行っており、複数のダムによる総合的堆砂対策と治水事業が行われている。だが多くの施工中ダムは完成予定が定まって居らず、唯一定まっている'''設楽ダム'''(豊川)も完成予定が[[2020年]](平成32年)と遠い将来の状況である。今後長期化する可能性は高いといわれている。また、矢作川河口に建設が予定されていた「矢作川河口堰」は[[1998年]](平成10年)に工業用水道需要低下と漁業権交渉の不調によって事業を中止。[[戸草ダム]](三峰川)については[[2008年]](平成20年)に事業中止の方向性が示され、'''上矢作ダム'''([[上村川 (矢作川水系)|上村川]])についても同年に「今後30年間事業に着手しない」として事業が凍結された。


現在施工中の事業としては大河津可動堰の改築と利賀ダム(利賀川)がある。大河津分水と信濃川の水量を制御する大河津可動堰と大河津洗堰は完成から70年以上経過して老朽化が著しく、治水安全上施設を改良する必要性が生じた。このため[[2000年]](平成12年)に大河津洗堰が改築され、続いて大河津可動堰の改築が実施された。何れも旧堰地点とは別に新堰を建設し、旧堰の機能を継承・向上させる目的であり新可動堰は[[2011年]](平成23年)に本体が完成し通水が行われ、現在は[[2013年]](平成25年)を目処とした旧可動堰の解体・撤去が行われている<ref name="okotsu"/><ref>[http://www.hrr.mlit.go.jp/shinano/ohkouzu80/ceremony.html 国土交通省北陸地方整備局信濃川河川事務所『大河津分水完工80年事業』]2012年8月21日閲覧</ref>。利賀ダムは庄川水系における初の[[多目的ダム#特定多目的ダム|特定多目的ダム]]として計画されている<ref group="注">県営の補助多目的ダムとしては[[和田川ダム]]([[和田川 (庄川水系)|和田川]])、利賀川ダム(利賀川)、[[境川ダム]](境川)が建設されている。</ref>が、国土交通省によるダム事業再検討の対象となっている<ref name="minaoshi"/>。一方、北陸地方整備局におけるダム事業の技術的特色として宇奈月ダムは関西電力の[[出し平ダム]]と連携してダム管理上の宿敵である[[ダムと環境#堆砂|堆砂]](たいしゃ)を海に流す[[連携排砂]]事業を実施している<ref>[http://www.kurobe.go.jp/haisa/haisa.cgi 国土交通省北陸地方整備局黒部川河川事務所『宇奈月ダム・排砂関連情報』]2012年8月21日閲覧</ref>。しかし宇奈月ダム完成前の[[1991年]](平成3年)に出し平ダムが単独で実施した第1回排砂に対し、[[富山湾]]の漁業関係者の一部が排砂による漁業被害を理由に排砂の中止を求めて起こした黒部川ダム排砂被害[[訴訟]]が起こり<ref>[http://homepage2.nifty.com/haisa/ 黒部川排砂ダム被害訴訟支援ネットワーク]2012年8月21日閲覧</ref>、[[第一審]]の[[富山地方裁判所]][[判決]]では排砂と[[ワカメ]]被害の因果関係を認め被告の関西電力に賠償を支払う判決が下されたが原告・被告双方が[[控訴]]<ref group="注">[[魚類]]の影響が認められなかったことを不服として控訴している。</ref>。最終的に「海中での被害立証は困難」とする[[名古屋高等裁判所]]金沢支部が和解を提案、2011年4月に両者の和解が成立した<ref>朝日新聞2011年4月5日記事</ref>。本訴訟に宇奈月ダムは直接の関係は無いが、連携排砂と環境保護の両立は先の見えない状況が続いている。
[[狩野川]]水系・[[菊川]]水系・[[安倍川]]水系には発電用を含めダムが1基も存在しない。これは地形的な制約などが原因でダムサイトに適した場所がないためと言われている{{誰2|date=2009年5月}}。ただし狩野川には[[狩野川放水路]]が完成している。また[[鈴鹿川]]水系には[[加佐登調整池]](椎山川)、[[雲出川]]水系には君ヶ野ダム(八手俣川)、[[宮川 (三重県)|宮川]]水系には[[宮川ダム (三重県)|宮川ダム]]・[[三瀬谷ダム]](宮川)と直轄ダムは無いものの多目的ダムが本流・支流に建設されている。なお、[[富士川]]水系は関東地方整備局の管轄となっている。


なお、北陸地方の一級河川では[[関川]]、[[姫川]]、常願寺川、神通川、[[梯川]]の各水系で直轄ダムが建設されておらず、特に姫川水系には本支流の何れにもダムが建設されていない<ref group="注">本流に[[姫川第二ダム]]、[[姫川第三ダム]]が建設されているが、高さが15メートル未満であることから河川法上のダムとはならず、堰の扱いである。</ref>。常願寺川は砂防事業が治水事業の根幹であり、支流を含め治水目的のダムは建設されていない。神通川・梯川水系は富山・石川・[[岐阜県]]により治水目的を有する[[多目的ダム#補助多目的ダム|補助多目的ダム]]・[[治水ダム#補助治水ダム|補助治水ダム]]が建設されているが、関川水系の[[笹ヶ峰ダム]](関川)は治水目的を持たない多目的ダムである。
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:small;"

{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!所在<br/>
!水系名
!水系<br />
!一次<br />支川名<br />(本川)
!二次<br />支川名
!河川<br />
!三次<br />支川名
!ダム<br />
!型式<br/>
!ダム名
!高<br />(m)
!{{Nowrap|さ}}<br />
!総貯水<br/>容量<br />(千m&sup3;)
!{{Nowrap|総貯水容量}}<br />
!着工<br />
!型式
!着手<br />(年)
!完成<br/>
!完成<br />(年)
!分類<br/>
![[水源地域対策特別措置法|水特法]]<br />
!備考
!備考<br />
|-
|-
|[[山形県|山形]]||[[荒川 (羽越)|荒川]]||横川||[[横川ダム (山形県)|横川ダム]]||[[重力式コンクリートダム|重力]]||align="right"|72.5||align="right"|24,600||1987||2007||特定||指定||
|[[大井川]]
|大井川
|-
|-
|[[長島ダム]]
| align=right|109.0
| align=right|78,000
|[[重力式コンクリートダム|重力式]]
|1972
|2001
|[[水源地域対策特別措置法|水特法]]指定
|- bgcolor="yellow"
|[[天竜川]]
|天竜川
|-
|-
|[[佐久間ダム]]
| align=right|155.5
| align=right|326,848
|重力式
|2003
|未定
|再開発中
|-
|-
|[[福島県|福島]]||[[阿賀野川]]||阿賀野川||[[大川ダム]]||重力||align="right"|75.0||align="right"|57,500||1971||1987||特定||指定||
|天竜川
|[[三峰川]]
|-
|-
|[[美和ダム]]
| align=right|69.1
| align=right|34,751
|重力式
|1952
|1959
|-
|-
|-
|[[新潟県|新潟]]||荒川||大石川||[[大石ダム]]||重力||align="right"|87.0||align="right"|22,800||1970||1978||特定||||
|天竜川
|小渋川
|-
|-
|[[小渋ダム]]
| align=right|105.0
| align=right|58,000
|[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]
|1961
|1969
|-
|-
|-
|新潟||[[信濃川]]||信濃川||[[大河津分水#概要|大河津洗堰]]||[[堰]]||align="right"|-||align="right"|-||1909||1922||||||[[2000年]]改築<ref name="okotsu"/>
|天竜川
|-bgcolor="yellow"
|大千瀬川
|新潟||信濃川||[[大河津分水]]||[[大河津可動堰]]||堰||align="right"|-||align="right"|-||1927||1931||||||改築中<ref name="okotsu"/>
|大入川
|-
|[[新豊根ダム]]
| align=right|116.5
| align=right|53,500
|アーチ
|1969
|1972
|[[愛知県]]より移管
|- bgcolor="pink"
|[[豊川]]
|豊川
|-
|-
|[[設楽ダム]]
| align=right|129.0
| align=right|98,000
|重力式
|1978
|2020
|見直し対象
|-
|-
|新潟||信濃川||信濃川||[[蒲原大堰]]||堰||align="right"|-||align="right"|-||1978||1984||||||<ref>[http://www.hrr.mlit.go.jp/shinage/shisetsu/kannaka/kannaka.html 国土交通省北陸地方整備局信濃川下流河川事務所『蒲原大堰・中ノ口川水門』]2012年8月20日閲覧</ref>
|豊川
|豊川
|-
|-
|寒狭川頭首工
| align=right|-
| align=right|-
|可動堰
|1992
|2002
|-
|-
|-
|新潟||信濃川||三国川||[[三国川ダム]]||[[ロックフィルダム|ロックフィル]]||align="right"|119.5||align="right"|27,500||1975||1993||特定||||
|[[矢作川]]
|矢作川
|-
|-
|[[矢作ダム]]
| align=right|100.0
| align=right|80,000
|アーチ
|1962
|1970
|-
|- bgcolor="pink"
|矢作川
|[[上村川 (矢作川水系)|上村川]]
|-
|-
|上矢作ダム
| align=right|150.0
| align=right|54,000
|[[ロックフィルダム|ロックフィル]]
|1993
|未定
|事業凍結
|-
|-
|新潟||信濃川||[[関屋分水]]||[[新潟大堰]]||堰||align="right"|-||align="right"|-||1964||1972||||||<ref>[http://www.hrr.mlit.go.jp/shinage/shisetsu/sekibun/sekibun.html 国土交通省北陸地方整備局信濃川下流河川事務所『関屋分水路』]2012年8月20日閲覧</ref>
|[[庄内川]]
|小里川
|-
|-
|[[小里川ダム]]
| align=right|114.0
| align=right|15,100
|重力式
|1979
|2004
|-
|-
|-
|新潟||信濃川||信濃川||[[妙見堰]]||堰||align="right"|-||align="right"|-||1985||1990||[[多目的ダム#兼用工作物|兼用]]||||<ref>[http://www.hrr.mlit.go.jp/shinano/office/kanri_myoken.html 国土交通省北陸地方整備局信濃川河川事務所妙見堰管理支所]2012年8月20日閲覧</ref><ref>[http://www.hrr.mlit.go.jp/shinano/myoken_k/index.html 妙見記念館]2012年8月20日閲覧</ref>
|[[木曽川]]
|木曽川
|-
|-
|[[丸山ダム]]
| align=right|98.2
| align=right|79,520
|重力式
|1950
|1955
|-
|- bgcolor="pink"
|木曽川
|木曽川
|-
|-
|[[丸山ダム|新丸山ダム]]
| align=right|122.5
| align=right|146,350
|重力式
|1980
|未定
|見直し対象<br/>水特法指定
|- bgcolor="yellow"
|木曽川
|[[揖斐川]]
|-
|-
|[[横山ダム]]
| align=right|80.8
| align=right|48,500
|[[中空重力式コンクリートダム|中空重力式]]
|1957
|1964
|再開発中
|-
|-
|[[富山県|富山]]||[[黒部川]]||黒部川||[[宇奈月ダム]]||重力||align="right"|97.0||align="right"|24,700||1974||2000||特定||||
|[[櫛田川]]
|櫛田川
|-
|-
|櫛田可動堰
| align=right|-
| align=right|-
|可動堰
|1964
|1969
|-
|-
|-
|富山||[[小矢部川]]||小矢部川||小矢部大堰||堰||align="right"|-||align="right"|-||-||1982||||||<ref>[http://www.hrr.mlit.go.jp/press/2012/06/120608toyama2.pdf 国土交通省北陸地方整備局富山河川国道事務所『記者発表資料』]2012年8月20日閲覧</ref>
|櫛田川
|-bgcolor="pink"
|蓮川
|富山||[[庄川]]||利賀川||利賀ダム||重力||align="right"|112.0||align="right"|31,100||1989||2022||特定||||事業見直し
|-
|
|-
|[[石川県|石川]]||[[手取川]]||手取川||[[手取川ダム]]||ロックフィル||align="right"|153.0||align="right"|231,000||1970||1979||兼用||9条等指定||
|[[蓮ダム]]
|-
| align=right|78.0
|[[長野県|長野]]||信濃川||[[高瀬川 (長野県)|高瀬川]]||[[大町ダム]]||重力||align="right"|107.0||align="right"|33,900||1972||1985||特定||||
| align=right|32,600
|重力式
|1971
|1991
|水特法指定
|}
|}
<gallery>
Image:Nagashima Dam spillway.jpg|[[長島ダム]]([[大井川]])
Image:Sakuma-1160-r1.jpg|[[佐久間ダム]]([[天竜川]])
Image:Koshibu Dam left view.jpg|[[小渋ダム]](小渋川)
Image:Shintoyone Dam view from left side.jpg|[[新豊根ダム]](大入川)
</gallery>


=== 近畿地方整備局 ===
==== 北陸地方整備局の中止事業 ====
[[ファイル:Kiyotsukyo Summer.jpg|200px|thumb|[[清津峡]]。清津川ダムが建設されていれば水没する運命であった。]]
近畿地方整備局管内では既設ダム・堰が8基、工事中ダムが4基の12基を直轄管理・施工している。この他事業凍結中のダムが1基存在する。'''九頭竜ダム'''は[[河川法]]第17条の「兼用工作物」として[[電源開発]]と共同管理を行っている。
北陸地方整備局管内で中止したダム事業は旧建設省時代を含めると4ダム事業があり、信濃川水系と阿賀野川水系で中止事業が存在する。


信濃川水系では1964年に構想が発表され[[1985年]](昭和60年)に予備調査が開始された信濃川本流の千曲川上流ダム計画と、[[1974年]](昭和49年)3月の信濃川水系工事実施基本計画で三国川、大町ダムと共に計画され[[1984年]](昭和59年)に事業が着手された清津川ダム計画([[清津川]])がある。両ダムとも大規模な特定多目的ダムであり、仮に完成すれば千曲川上流ダムは長野県最大、清津川ダムは新潟県最大の多目的ダムとなる<ref name="nenkan122">『ダム年鑑 1991』pp.122-123</ref><ref name="shinano">[[信濃毎日新聞]]2002年2月28日記事</ref>。しかし千曲川上流ダムでは[[南佐久郡]][[南牧村 (長野県)|南牧村]]主要部と[[川上村 (長野県)|川上村]]で250戸が水没し、さらにJR[[小海線]]や[[国道141号]]が水没するなど地域に大打撃を与えるとして両村が反対、[[参議院]]に請願書を提出するなど抵抗した<ref>[http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/seigan/156/yousi/yo1560515.htm 参議院ホームページ 第156回国会請願の要旨]2012年8月21日閲覧</ref>。また清津川ダムも[[南魚沼郡]][[湯沢町]]などで110戸が水没、さらに[[上信越高原国立公園]]・[[名勝]]・国の[[天然記念物]]に指定されている[[清津峡]]が水没することで強い反対が起こり、当時の[[中魚沼郡]][[中里村 (新潟県)|中里村]](現在の[[十日町市]])議会も反対に回るなど流域間で対立を招いた<ref name="yuzawa">[http://www.town.yuzawa.niigata.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=1377 湯沢町『清津川ダム計画の主な経緯』]2012年8月21日閲覧</ref>。最終的に千曲川上流ダム・清津川ダムは両方共[[2002年]](平成14年)に事業中止が決定する<ref name="shinano"/><ref name="yuzawa"/>。しかしダム建設に反対していた地元住民は中止後の生活再建に対し国のみならず、ダム事業に反対していた政党や[[市民団体]]、旧中里村が何ら手を差し伸べないことを批判している<ref>[http://www.dpl-jp.com/kiyotsugawa/index.html 清津川ダム対策協議会]2012年8月21日閲覧</ref>。治水目的のダムは千曲川上流・清津川に限らず信濃川水系では[[田中康夫]][[長野県知事]](当時)による「[[中止したダム事業#脱ダム宣言によるもの|脱ダム宣言]]」以降多くのダムが中止された。しかし[[平成16年7月新潟・福島豪雨]](2004年)や[[平成23年7月新潟・福島豪雨]](2011年)など信濃川水系は水害による被害を受け続けており、治水事業は途上である。また[[平成18年7月豪雨]]では大町ダムと犀川流域の発電用5ダム([[奈川渡ダム|奈川渡]]、[[水殿ダム|水殿]]、[[稲核ダム|稲核]]、[[高瀬ダム|高瀬]]、[[七倉ダム|七倉]])の連携[[洪水調節]]で、犀川の氾濫が抑制されている<ref>[http://www.dam-net.jp/reserver_pdf/Vol_13.pdf 財団法人ダム水源地環境整備センター『H18.7千曲川豪雨 高瀬川・梓川6ダム連携操作』]2012年8月21日閲覧</ref>。
長らく政治・文化の中心であった近畿地方は、[[淀川]]とは密接な関わりを持つ。[[1875年]](明治7年)の「淀川修築工事」以降数多の直轄河川改修が実施され、[[新淀川]]開削・'''瀬田川洗堰'''建設・[[巨椋池]]干拓・[[琵琶湖疏水]]建設などの治水・利水事業が完成した。だが、[[1953年]](昭和28年)の台風13号では淀川水系で過去最悪の水害を喫し、さらに[[紀の川]]水系・[[大和川]]水系・[[熊野川]]水系等で水害による甚大な被害が発生した。


阿賀野川水系では只見川支流の[[伊南川]]に計画していた大桃ダムが中止されている。只見川流域唯一の治水目的を持つダムで、只見特定地域総合開発計画で計画された内川ダム計画<ref group="注">[[東北電力]]が計画していた高さ119メートル、総貯水容量3億2,000万立方メートルの水力発電専用の巨大ダム計画。</ref>中止後の伊南川流域における水力発電目的を有していたが、計画自体が立ち消えとなった<ref name="gaiyo8">『河川総合開発調査実績概要』第八巻</ref>。これにより[[奥只見ダム]](只見川)を筆頭に多数のダムが建設されている只見川は、治水を目的とするダムが現在一つも存在しない。一方[[日橋川]]上流総合開発事業は、天然湖沼である[[猪苗代湖]]周辺地域の治水安全度向上を図るため、日橋川流出口にある[[十六橋水門]]を改築することで猪苗代湖に新規の治水容量を確保、同時に複数の事業者に分散している猪苗代湖の[[水利権]]を河川管理者である国が一括管理することを主目的とした事業であるが<ref>[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/123/0396/main.html 国会会議録検索システム 衆議院予算委員会第八分科会 平成4年3月12日]2012年8月21日閲覧</ref><ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.216-217</ref>、公共事業見直しにより中止されている。なお、猪苗代湖自体は日橋川上流総合開発中止後[[2005年]](平成17年)より福島県が河川管理者として湖を管理し、現状の十六橋水門を利用した多目的ダムとして運用している<ref>[http://www.pref.fukushima.jp/kasen/seibi/dam/dobokubu%20damuichirann.htm 福島県土木部河川整備課『福島県土木部のダム一覧』]2012年8月21日閲覧</ref><ref name="kitakata">[http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=15007 福島県喜多方建設事務所『管理現況』]2012年8月21日閲覧</ref>。
これを受け「河川改訂改修計画」の淀川版ともいえる「淀川水系改修基本計画」が[[1954年]](昭和29年)12月に決定された。この中で計画されたのが瀬田川洗堰の改修、'''天ヶ瀬ダム'''(淀川)・月ヶ瀬ダム([[名張川]])・宇陀川ダム([[宇陀川]])の建設であり、後に宮村ダム([[桂川 (淀川水系)|桂川]])などが加わった。その後急速な経済成長を遂げる中で[[関西圏]]の水需要がひっ迫し、新規利水開発の必要性に迫られたため[[1962年]](昭和37年)「水資源開発促進法」が施行され淀川水系は[[利根川]]水系と共に開発水系に指定。以後水資源開発公団によって総合開発が推進された。この中で月ヶ瀬ダム・宇陀川ダムの事業移管が行われ、それぞれ[[高山ダム]]・[[室生ダム]]として建設され[[青蓮寺ダム]](青蓮寺川)・[[布目ダム]](布目川)・[[比奈知ダム]](名張川)と共に「木津川上流ダム群」として関西の水がめとなった。また、「淀川水系工事実施基本計画」で計画が本格化した宮村ダムも移管され、[[日吉ダム]]と名を変え完成している。


{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
一方、[[奈良盆地]]の深刻な水不足を解消するため、水量の豊富な熊野川からの導水による水需要の確保を目的に「[[紀の川]]・十津川総合開発事業」が[[農林省]](現・[[農林水産省]])との共同事業として施工され、その後「[[紀の川#吉野熊野特定地域総合開発計画|吉野熊野特定地域総合開発計画]]」に拡充された。この中で[[熊野川]]からの導水施設として直轄ダムとして唯一の利水専用ダム・'''猿谷ダム'''(熊野川)が建設され、紀の川水系には農林省によって[[大迫ダム]](紀の川)・[[津風呂ダム]](津風呂川)・[[山田ダム]](野田原川)が建設され、水需要は大きく改善した。その後室生ダムによる初瀬水路から大和川への導水などによりさらなる供給が図られた。[[九頭竜川]]水系では[[北陸電力]]・電源開発が競願していた「奥越電源開発計画」が[[伊勢湾台風]]による水害の影響で治水を加えた「九頭竜川総合開発計画」となり、治水・発電の根幹施設として九頭竜ダムが建設された。その後[[1965年]](昭和40年)の奥越豪雨によって真名川流域が壊滅的被害を受けたことで'''真名川ダム'''も建設された。[[加古川]]水系では[[1947年]](昭和22年)から「国営加古川水系広域農業水利事業」が策定され、鴨川ダム(鴨川)・[[呑吐ダム]]([[志染川]])など[[農林水産省直轄ダム]]が建設されたが、治水に関しては立ち遅れていた。水害の頻発に対応するため直轄事業として'''加古川大堰'''が[[1988年]](昭和63年)に漸く完成した。なお、[[由良川]]水系では本川に大野ダムが建設省施工で[[1961年]](昭和36年)完成したが、完成直後より[[京都府]]に管理を移管させた。
|-
!{{Nowrap|所在地}}<br />
!水系<br />
!河川<br />
!ダム<br />
!{{Nowrap|型式}}<br />
!高さ<br />
!総貯水容量<br />
!{{Nowrap|分類}}<br />
!水特法<br />
!{{Nowrap|備考}}<br />
!出典<br />
|-
|福島||阿賀野川||[[猪苗代湖]]||[[日橋川]]上流総合開発||堰||align="right"|5.7||align="right"|3,800,000||||||||<ref>『ダム年鑑 1991』pp.96-97</ref><ref name="kitakata"/>
|-
|福島||阿賀野川||[[伊南川]]||大桃ダム||重力||align="right"|74.0||align="right"|13,881||||||||<ref name="gaiyo8"/>
|-
|新潟||信濃川||[[清津川]]||清津川ダム||重力||align="right"|150.0||align="right"|170,000||特定||||||<ref name="nenkan122"/>
|-
|長野||信濃川||信濃川||千曲川上流ダム||重力||align="right"|80.0||align="right"|80,000||特定||||||<ref name="shinano"/>
|}


=== 中部地方整備局 ===
だがこの管内では強烈なダム建設反対運動が多かった。特に紀の川本流に[[1960年]](昭和35年)より計画された'''大滝ダム'''は、[[川上村 (奈良県)|川上村]]住民の強硬な反対運動によって計画が長年進展せず、「東の八ッ場、西の大滝」と進展しない事業の代名詞となってしまった。[[2000年]](平成12年)に本体竣工に漕ぎ着けたものの試験湛水中に川上村白岩地区などで地割れが発生。地滑りの危険があったため貯水を中断し現在は対策工事に着手している。このため一部運用はされているが完成には未だ至っていない。
[[File:Yahagi Dam.jpg|200px|thumb|中部地方整備局管理の直轄ダムでは総貯水容量が最大の[[矢作ダム]]([[矢作川]]・[[愛知県]])]]
[[File:Miwa Dam bypass spillway overflow.jpg|200px|thumb|[[美和ダム]]([[三峰川]]・[[長野県]])の[[ダム再開発事業|再開発事業]]で建設された[[ダムと環境#堆砂|堆砂]]防除用の[[バイパス]][[トンネル]]出口。]]
[[中部地方整備局]]管内では既設ダム・堰7基、工事中・[[ダム再開発事業|再開発]]中ダム7基の14基を直轄管理・施工している。ただし、[[河川法]]第17条の[[多目的ダム#兼用工作物|兼用工作物]]として[[丸山ダム]](木曽川)は[[関西電力]]と<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.280-281</ref>、[[新豊根ダム]](大入川)は[[電源開発]]と<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.294-295</ref>、櫛田川可動堰([[櫛田川]])は[[三重県]]との共同事業として建設されている<ref name="kushida">[http://www.cbr.mlit.go.jp/mie/jigyo/kasen/syoukai/kushida/index02.html#03 国土交通省中部地方整備局三重河川国道事務所『事業紹介 櫛田川水系』]2012年8月24日閲覧</ref>。また、[[中部地方]]を流れる河川のうち[[富士川]][[水系]]は[[関東地方整備局]]、[[信濃川]]水系、[[神通川]]水系、[[庄川]]水系は[[北陸地方整備局]]が管理する河川である。


管内を流れる木曽川水系、[[大井川]]水系、[[天竜川]]水系、[[矢作川]]水系は[[北陸地方]]の河川と同様に[[水力発電]]に適した河川として、[[大正]]時代から[[福澤桃介]]や[[松永安左エ門]]などにより[[大井ダム]](木曽川)などの水力発電用ダムが建設され、治水は[[木曽三川]](木曽川・[[長良川]]・[[揖斐川]])の分流工事など[[堤防]]整備を中心とした改修が行われていた。しかし戦後の水害頻発や食糧・電力不足を補う必要が生じたため[[多目的ダム]]による河川開発が木曽川水系と天竜川水系で計画され、それぞれ[[木曽川#木曽特定地域総合開発計画|木曽特定地域総合開発計画]]、[[天竜川#天竜東三河特定地域総合開発計画|天竜東三河特定地域総合開発計画]]として1951年[[閣議]]決定されて本流・支流に多数の多目的ダムが計画された<ref>『国土総合開発特定地域の栞』pp.35-40</ref>。直轄ダムとしては木曽川水系において[[日本発送電]]が施工し関西電力に継承された丸山ダムが[[治水]]目的を加えた多目的ダムとして[[1955年]](昭和30年)に完成。天竜川水系では[[特定多目的ダム法]]指定第一号の直轄ダムとして[[美和ダム]]([[三峰川]])が[[1957年]](昭和32年)に完成した<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=1010 ダム便覧『美和ダム(元)』]2012年8月24日閲覧</ref>。その後[[1959年]](昭和34年)9月の[[伊勢湾台風]]や[[1961年]](昭和36年)の[[昭和36年梅雨前線豪雨]](三六災害)による管内河川の洪水被害を受け木曽川、矢作川、天竜川の各水系で多目的ダムが計画され、[[横山ダム]](揖斐川)、[[矢作ダム]](矢作川)、[[小渋ダム]](小渋川)が建設された。
[[2005年]](平成17年)、近畿地方整備局の諮問機関「淀川水系流域委員会」が'''大戸川ダム'''([[大戸川]])・'''余野川ダム'''(余野川)・[[丹生ダム]](高時川)・[[川上ダム (三重県)|川上ダム]](前深瀬川)・天ヶ瀬[[ダム再開発事業]](淀川)の五事業中止を勧告したため国土交通省は大戸川・余野川ダムについて建設中止を表明した。ところが流域自治体・流域住民・移転住民が猛反発、その一方でダム事業に否定的なスタンスを取る[[嘉田由紀子]][[滋賀県知事]]が就任、ダム事業凍結宣言を行った。だが、[[2004年]](平成16年)の[[平成16年7月福井豪雨]]によってダムの[[洪水調節]]能力が発揮されたことを受けて、[[足羽川]]に予定され建設が凍結されていた'''足羽川ダム'''が[[治水ダム|治水専用ダム]]として流域自治体や被害住民の意向によって建設を再開。さらに[[平成18年7月豪雨]]後、治水対策の後手から「脱ダム」の旗手だった[[田中康夫]]が[[長野県知事]]の座を失うなどした。こうした流れを受け[[2007年]](平成19年)に嘉田知事は「凍結宣言」を撤回し大戸川・丹生の両ダムについて[[治水ダム#穴あきダム|穴あきダム]]としての建設を容認、国土交通省に一旦は建設再開を促したが、[[2008年]](平成20年)に[[大阪府]]・[[京都府]]・滋賀県の三知事による共同声明において、川上ダムと天ヶ瀬ダム再開発の建設は容認したものの大戸川ダムについては建設凍結を求めるなど流動的な状態が続いている。また余野川ダムは同年に国土交通省自体が中止が決定、丹生ダムについては貯水するか穴あきかで県と当時の[[余呉町]](現・[[長浜市]])の対立が激化した。


中部地方については[[名古屋市]]を中心とした[[中京圏]]の人口増加、古くから穀倉地帯である[[濃尾平野]]の農業生産力向上と[[知多半島]]、[[渥美半島]]、[[三方原台地]]、[[牧之原台地]]など慢性的な[[水不足]]地域への水供給、さらに[[中京工業地帯]]の拡充による[[利水]]需要の増大が戦前・戦後を通じ表面化。[[愛知用水]](1961年)や[[豊川用水]](1963年)などの完成により水需要は改善したものの[[東名高速道路]]や[[東海道新幹線]]の開通は人口の増加に拍車を掛け、水不足は容易に解決しなかった。このため[[1965年]](昭和40年)に木曽川水系が[[水資源開発促進法]]の対象河川として[[水資源開発公団]](現在の[[独立行政法人]][[水資源機構]])の開発河川に指定され、同法に基づく[[木曽川#木曽川水系水資源開発基本計画|木曽川水系水資源開発基本計画]]により[[建設省]]が計画していた[[徳山ダム]](揖斐川)、[[岩屋ダム]]([[馬瀬川]])、[[阿木川ダム]]([[阿木川]])は公団へ事業が移管された<ref>『水資源開発公団30年史』p.14,p.22</ref>。
なお、[[円山川]]水系では多目的ダムが建設されていないが、[[北川]]水系には河内川ダム(河内川)、[[大和川]]水系では初瀬ダム(大和川)、[[揖保川]]水系では引原ダム(引原川)のように[[多目的ダム#補助多目的ダム|補助多目的ダム]]が建設もしくは計画されている。


このほか[[中部電力]]による水力発電事業が先行していた大井川水系では[[島田市]]、[[掛川市]]など大井川流域市町村への治水・利水を目的に流域唯一の多目的ダムとして[[長島ダム]](大井川)が2001年(平成13年)に完成<ref>[http://www.cbr.mlit.go.jp/nagashima/profile/roles.html 国土交通省中部地方整備局長島ダム管理所『長島ダムの役割』]2012年8月24日閲覧</ref>。名古屋市を貫流する[[庄内川]]水系では下流域の都市化により堤防建設や川幅拡張が極めて困難な状況になったことからダムによる治水が計画され、支流の小里(おり)川に[[小里川ダム]]が[[2003年]](平成15年)完成している<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.286-287</ref>。櫛田川では[[1969年]](昭和44年)に三重県が従来建設していた農業用の固定堰を改築して治水目的を加えた櫛田川可動堰が完成<ref name="kushida2">[http://www.cbr.mlit.go.jp/mie/jigyo/kasen/.../kushida_H2405.pdf 国土交通省中部地方整備局三重河川国道事務所『櫛田川河川維持管理計画』]2012年8月24日閲覧</ref>、さらに[[1991年]](平成3年)には水系唯一の多目的ダムである[[蓮ダム|蓮(はちす)ダム]]が支流の蓮川に完成。三重県中南部のみならず離島である[[神島]]の水需要に貢献している<ref>[http://www.cbr.mlit.go.jp/hachisu/dam-yakuwari.html 国土交通省中部地方整備局蓮ダム管理所『蓮ダムの役割』]2012年8月24日閲覧</ref>。
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:small;"

管内における施工中のダムは7基あるが、このうち[[ダム再開発事業]]が4ダム存在する。天竜川水系の美和、小渋ダムは流域が[[南アルプス]]に属しているが南アルプスは脆弱な[[地質]]が原因で絶えず崩壊しており、崩壊による大量の土砂がダム湖に流入して深刻な[[ダムと環境#堆砂|堆砂]]を招いていた。このため堆砂を防除してダム機能を維持するための[[バイパス]][[トンネル]]建設を軸にした再開発事業が現在進められている<ref>[http://www.cbr.mlit.go.jp/mibuso/ 国土交通省中部地方整備局三峰川総合開発工事事務所]2012年8月24日閲覧</ref><ref>[http://www.cbr.mlit.go.jp/tendamu/work/jigyou/index.html 国土交通省中部地方整備局天竜川ダム統合管理事務所『堰堤改良事業』]2012年8月24日閲覧</ref>。また天竜川最大にして日本屈指のダムである[[佐久間ダム]](天竜川)は天竜川下流の治水強化とダム機能維持を目的として[[2004年]](平成16年)より[[佐久間ダム#佐久間ダム再開発事業|佐久間ダム再開発事業]](天竜川ダム再編事業)が計画されており、完成すれば佐久間ダムは従来の水力発電目的単独から[[洪水調節]]目的が加わり多目的ダムとなる<ref>[http://www.cbr.mlit.go.jp/hamamatsu/gaiyo_dam/tenryu.html 国土交通省中部地方整備局浜松河川国道事務所『天竜川ダム再編事業』]2012年8月24日閲覧</ref>。一方木曽川本流の丸山ダム再開発は[[1983年]](昭和58年)の豪雨で木曽川が[[美濃加茂市]]で氾濫し、丸山ダムの治水機能向上が不可避となったことから日本国内では最大となる24.3メートルのダム嵩上げをして治水容量を旧ダムの3.5倍に拡張する[[丸山ダム#新丸山ダム|新丸山ダム]]を建設する計画である<ref>[http://www.cbr.mlit.go.jp/shinmaru/201_damunogaiyou/02_kasaage/main.html 国土交通省中部地方整備局新丸山ダム工事事務所『国内最大級の嵩上げダム』]2012年8月24日閲覧</ref>。新規ダム事業としては慢性的な水不足が頻発する[[豊橋市]]など[[愛知県]]東部の水がめおよび[[治水ダム]]がない[[豊川]]水系の治水を目的にした[[設楽ダム]](豊川)、美和ダム上流に建設して三峰川の治水を強化する[[戸草ダム]](三峰川)がある。しかし国土交通省によるダム事業再検討で新丸山、設楽、戸草の3ダム事業は見直し対象となり<ref name="minaoshi"/>検証中である。特に戸草ダムは2001年に[[田中康夫]][[長野県知事]](当時)が利水事業からの撤退を表明、[[2008年]](平成20年)には国土交通省が事業中止を表明したものの[[伊那市]]など地元の反発により中止を撤回した経緯があるが<ref>[[長野日報]]2008年8月18日記事</ref>、[[2012年]](平成24年)7月に再検討の結果多目的ダムとしての戸草ダム事業は中止し、治水ダムとして再度計画を検討する方向性となった<ref>信濃毎日新聞2012年7月31日記事</ref><ref>長野日報2012年6月8日記事</ref>。

なお、管内の[[一級河川]]において[[狩野川]]、[[安倍川]]、[[菊川]]、[[鈴鹿川]]、[[雲出川]]、[[宮川 (三重県)|宮川]]の各水系には直轄ダムが建設されておらず、このうち狩野川と安倍川には本支流を含めダムが全く建設されていない。ただし狩野川については[[狩野川台風]]による甚大な被害を契機に[[狩野川放水路]]が建設されている。雲出川と宮川については三重県により君ヶ野ダム(雲出川水系八手俣川)、[[宮川ダム (三重県)|宮川ダム]](宮川)といった[[多目的ダム#補助多目的ダム|補助多目的ダム]]が完成。鈴鹿川には支流に利水専用ダム([[加佐登調整池]])が建設されている。

{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!所在<br/>
!水系名
!水系<br />
!一次<br />支川名<br />(本川)
!二次<br />支川名
!河川<br />
!三次<br />支川名
!ダム<br />
!型式<br/>
!ダム名
!高<br />(m)
!{{Nowrap|さ}}<br />
!総貯水<br/>容量<br />(千m&sup3;)
!{{Nowrap|総貯水容量}}<br />
!着工<br />
!型式
!着手<br />(年)
!完成<br/>
!完成<br />(年)
!分類<br/>
![[水源地域対策特別措置法|水特法]]<br />
!備考
!備考<br />
|-bgcolor="yellow"
|[[長野県|長野]]||[[天竜川]]||小渋川||[[小渋ダム]]||[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]||align="right"|105.0||align="right"|58,000||1961||1969||特定||||[[ダム再開発事業|再開発]]中
|-bgcolor="pink"
|長野||天竜川||[[三峰川]]||[[戸草ダム]]||[[重力式コンクリートダム|重力]]||align="right"|140.0||align="right"|61,000||1984||未定||特定||||事業見直し
|-bgcolor="yellow"
|長野||天竜川||三峰川||[[美和ダム]]||重力||align="right"|69.1||align="right"|34,300||1952||1959||特定||||再開発中<br/>[[ダム湖百選]]
|-
|-
|[[岐阜県|岐阜]]||[[庄内川]]||小里川||[[小里川ダム]]||重力||align="right"|114.0||align="right"|15,100||1979||2003||特定||||
|[[九頭竜川]]
|-bgcolor="pink"
|九頭竜川
|岐阜||[[木曽川]]||木曽川||[[丸山ダム#新丸山ダム|新丸山ダム]]||重力||align="right"|122.5||align="right"|146,350||1980||未定||特定||指定||丸山ダム再開発<br/>事業見直し
|-
|-bgcolor="yellow"
|-
|岐阜||木曽川||木曽川||[[丸山ダム]]||重力||align="right"|98.2||align="right"|79,520||1950||1955||[[多目的ダム#兼用工作物|兼用]]||||再開発中
|[[九頭竜ダム]]
| align=right|128.0
| align=right|353,000
|[[ロックフィルダム|ロックフィル]]
|1962
|1968
|-
|-
|-
|岐阜||木曽川||[[揖斐川]]||[[横山ダム]]||[[中空重力式コンクリートダム|中空重力]]||align="right"|80.8||align="right"|40,000||1957||1964||特定||||2010年再開発
|九頭竜川
|-bgcolor="yellow"
|九頭竜川
|[[静岡県|静岡]]||天竜川||天竜川||[[佐久間ダム#佐久間ダム再開発事業|佐久間ダム再開発]]||重力||align="right"|155.5||align="right"|343,000||2004||未定||||||ダム湖百選<ref group="注">ダムは1956年完成。再開発事業における諸元を掲載。現在のダム諸元とは異なる。</ref>
|-
|-
|[[九頭竜川鳴鹿大堰]]
| align=right|5.5
| align=right|667
|[[可動堰]]
|1989
|2003
|-
|-
|-
|静岡||[[大井川]]||大井川||[[長島ダム]]||重力||align="right"|109.0||align="right"|78,000||1972||2001||特定||指定||
|九頭竜川
|-bgcolor="pink"
|真名川
|[[愛知県|愛知]]||[[豊川]]||豊川||[[設楽ダム]]||重力||align="right"|129.0||align="right"|98,000||1978||未定||特定||||事業見直し
|-
|-
|[[真名川ダム]]
| align=right|127.5
| align=right|115,000
|[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]
|1967
|1977
|-
|- bgcolor="pink"
|九頭竜川
|[[日野川 (福井県)|日野川]]
|[[足羽川]]
|部子川
|[[足羽川ダム]]
| align=right|96.0
| align=right|28,700
|[[重力式コンクリートダム|重力式]]
|1983
|未定
|見直し対象
|- bgcolor="yellow"
|[[紀の川]]
|紀の川
|-
|-
|[[大滝ダム]]
| align=right|100.0
| align=right|84,000
|重力式
|1962
|2012
|暫定運用中<br/>[[水源地域対策特別措置法|水特法]]9条指定
|-
|-
|愛知||天竜川||大入川||[[新豊根ダム]]||アーチ||align="right"|116.5||align="right"|53,500||1969||1972||兼用||||
|紀の川
|紀の川
|-
|-
|[[紀の川大堰]]
| align=right|7.1
| align=right|5,100
|可動堰
|1978
|2009
|
|-
|-
|愛知||[[矢作川]]||矢作川||[[矢作ダム]]||アーチ||align="right"|100.0||align="right"|80,000||1962||1970||特定||||
|[[熊野川]]
|熊野川
|-
|-
|[[猿谷ダム]]
| align=right|74.0
| align=right|23,300
|重力式
|1950
|1957
|-
|-
|-
|[[三重県|三重]]||[[櫛田川]]||櫛田川||櫛田川可動堰||[[堰]]||align="right"|-||align="right"|-||-||1969||兼用||||<ref name="kushida"/><ref name="kushida2"/>
|[[淀川]]
|淀川
|-
|-
|[[瀬田川洗堰]]
| align=right|-
| align=right|2,750,000
|可動堰
|1957
|1961
|貯水量は[[琵琶湖]]
|- bgcolor="yellow"
|淀川
|淀川
|-
|-
|[[天ヶ瀬ダム]]
| align=right|72.0
| align=right|26,280
|アーチ
|1955
|1964
|再開発中
|-
|-
|三重||櫛田川||蓮川||[[蓮ダム]]||重力||align="right"|78.0||align="right"|32,600||1971||1991||特定||指定||
|淀川
|淀川
|-
|-
|[[淀川大堰]]
| align=right|-
| align=right|-
|可動堰
|1971
|1984
|-
|- bgcolor="pink"
|淀川
|[[大戸川]]
|-
|-
|[[大戸川ダム]]
| align=right|92.5
| align=right|33,600
|重力式
|1978
|未定
|見直し対象<br/>水特法指定
|-
|[[加古川]]
|加古川
|-
|-
|加古川大堰
| align=right|6.0
| align=right|1,960
|可動堰
|1979
|1988
|-
|}
|}
<gallery>
Image:Kuzuryu Dam.jpg|[[九頭竜ダム]]([[九頭竜川]])
File:Managawa-947-r1.JPG|[[真名川ダム]](真名川)
Image:Otaki-1579-r1.jpg|[[大滝ダム]]([[紀の川]])
Image:Sarutani-1559-r1.jpg|[[猿谷ダム]]([[熊野川]])
</gallery>


=== 中地方整備局 ===
==== 中地方整備局の中止事業 ====
[[ファイル:Iwaya Dam.jpg|200px|thumb|[[岩屋ダム]]([[馬瀬川]]・[[水資源機構]])<br/>1952年の計画は立ち消えとなり、[[中部電力]]による構想を経て1969年に計画が復活し1976年に完成する。]]
中国地方整備局管内では既設ダム・堰12基、工事中ダム3基の合計14基を直轄管理・施工している。
中部地方整備局管内における中止したダム事業は旧建設省時代を含め15ダムあるが、その大半は木曽川水系におけるものである。


木曽川水系では木曽特定地域総合開発計画において、木曽川の丸山ダムを始め多数の多目的ダムが計画されたが、木曽三川のほか流域面積では木曽川水系最大の支流である[[飛騨川]]流域において河川総合開発が計画されていた。当時飛騨川は[[中部電力]]による[[飛騨川流域一貫開発計画]]に基づく水力発電事業が積極的に実施されていたが、木曽特定地域総合開発計画により建設省が新たにダム計画を定めていた。飛騨川本流の[[上麻生ダム|久田見ダム]]をはじめ支流に大規模な多目的ダムを建設するほか、中部電力が施工していた[[朝日ダム]](飛騨川)を丸山ダムと同様に多目的ダム化する計画も存在していた。また揖斐川流域(揖斐川、[[根尾川]]、[[牧田川]])にも横山ダム以外にダムを建設するほか、長良川支流の[[板取川]]にも大規模ダムを建設。さらに木曽川本流中流部の愛知県[[犬山市]]に犬山ダムを建設するのが当初の計画だった<ref name="gaiyo_66">『河川総合開発調査実績概要』第一巻 p.66</ref>。
戦前の「河水統制事業」において[[錦川]]・[[旭川 (岡山県)|旭川]]が早期より河川総合開発を行い、[[多目的ダム]]完成例としては日本初の[[向道ダム]](錦川)や[[旭川ダム]](旭川)が完成、戦後は[[高梁川]]においても総合開発が行われたが、何れも[[多目的ダム#補助多目的ダム|補助多目的ダム]]事業であり直轄によるダム事業は[[1968年]](昭和43年)の'''菅沢ダム'''(印賀川)が初となる。これより前には[[斐伊川]]本流に[[三成ダム]]が施工されていたが、完成後[[島根県]]に事業が移管されている。特殊な例としては[[小瀬川ダム]]([[小瀬川]])があり、事業者である[[広島県]]・[[山口県]]の意見調整が付かずに両県より施工を委託され、これを受け受託施工した経緯がある。また、[[佐波川ダム]]([[佐波川]])も建設省が受託施工し、完成後山口県に移管されている。


しかし計画は変更されて揖斐川・長良川流域のダム計画は横山ダムを除き中止され、飛騨川のダム計画も久田見、岩屋、岩瀬3ダムに縮小された。代わりに信濃川水系との導水計画が加わって木曽川最上流部に薮原ダムが計画され、信濃川水系[[奈良井川]]との間にトンネルを建設して導水する予定であった。だがこれらの計画も変更されほとんどのダム計画が立ち消えとなり、最終的に完成したのは丸山、横山および二子持ダム計画から治水目的を除き愛知用水の水源とした[[牧尾ダム]]の3ダムである<ref name="gaiyo2-67">『河川総合開発調査実績概要』第二巻 p.67</ref>。なお中止したダム計画のうち幾つかは、その後別なダム事業として事実上の前身となる例があった。その例として薮原ダム地点に味噌川ダム、東杉原ダム地点に徳山ダムが建設され、岩屋ダムは1969年に旧計画を大幅に凌駕する大規模ダム計画として復活した。また根尾ダム地点付近には中部電力により[[1995年]](平成7年)、奥美濃揚水発電所の下部調整池・[[上大須ダム]](根尾東谷川)が建設されている<ref>『河川総合開発調査実績概要』第一巻 p.67</ref>。
[[瀬戸内海]]沿岸地域は[[水島]]・[[呉市|呉]]・[[大竹市|大竹]]など相次いで大型工業地域が形成され、これによる[[工業用水道]]の整備拡充が必須となった上、[[1970年代]]に相次いだ豪雨災害を契機に管内の河川においてダムによる[[洪水調節]]が企図され、「河川工事実施基本計画」を改訂して[[多目的ダム#特定多目的ダム|特定多目的ダム]]を主要河川に計画した。[[太田川]]では洪水調節のほか中国地方最大の都市・[[広島市]]の水需要確保を図るため[[江の川]]と連携した総合開発が行われ、これに伴い西日本一の堤高を誇る'''温井ダム'''(滝山川)や'''土師ダム'''(江の川)、'''高瀬堰'''(太田川)が建設された。ダム技術としては、'''島地川ダム'''(島地川)が日本初のRCD工法で建設され、これ以降のダム建設技術に大きな変革をもたらした。


一方1990年代の公共事業見直しにより中止した事業としては矢作川水系の2ダムがある。矢作川本流に[[1971年]](昭和46年)より計画された矢作川河口堰は矢作川河口より1.7キロメートル上流に計画され、矢作川河口部の治水と衣浦臨海工業地域への[[工業用水道]]供給を目的としていたが、水道事業者である愛知県が[[水利権]]を返上して事業から撤退し事業継続の必要性が低下、[[2000年]](平成12年)に事業が中止された<ref>[http://www.cbr.mlit.go.jp/toyohashi/jigyou/.../seibikeikaku.pdf 国土交通省河川局『矢作川水系河川整備計画』]2012年8月24日閲覧</ref><ref name="yahagi">『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.290-291</ref>。また支流[[上村川 (矢作川水系)|上村川]]に計画されていた上矢作ダムは[[東海豪雨]]による矢作川・上村川流域の被害が甚大であったものの、[[費用対効果]]と迅速な治水事業の進捗という観点で矢作ダムの有効活用と河川改修を重点に置くという矢作川水系河川整備基本方針の策定を受け、[[2009年]](平成21年)に事業は見送りとなり[[鳩山由紀夫内閣]]の[[前原誠司]][[国土交通大臣]]によるダム事業見直しで中止が決定した<ref>[http://www.cbr.mlit.go.jp/kikaku/jigyou/data/pdf/h2101_shiryou14.pdf 国土交通省中部地方整備局豊橋河川事務所『上矢作ダム建設事業』]2012年8月24日閲覧</ref>。
管内のダム建設において、'''苫田ダム'''([[吉井川]])・'''八田原ダム'''([[芦田川]])・'''弥栄ダム'''(小瀬川)・'''灰塚ダム'''(上下川)を始め現在施工中のダムは何れも[[水源地域対策特別措置法]]の指定を受け、補償に関する手厚い対策を講じている。この中には苫田ダムのように[[訴訟]]を含んだ長年の反対運動を受けている例もある。一方温井ダムのように水特法の指定を受けていないが地元との綿密な地域活性化計画によって一大観光地となった例もあり、補償交渉をめぐる様々な事例を垣間見る。なお、[[公共事業]]見直しにより「高梁川総合開発事業」として計画されていた「柳井原堰」(小田川)は事業中止となっている。他に「太田川水系工事実施基本計画」で太田川本川に計画されていた「吉和郷ダム」も計画自体が立ち消えとなっている。


{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
[[天神川]]水系・[[高津川]]水系には支川を含め多目的ダムが1基も建設されていない。また、高梁川水系と旭川水系は先述のように補助多目的ダムとして[[湯原ダム]]・[[旭川ダム]](旭川)や[[千屋ダム]](高梁川)が建設されている。また、[[二級水系]]でありながら『河川工事実施基本計画』が[[1976年]](昭和51年)に唯一策定されていた[[神戸川 (島根県)|神戸川]]水系は、『斐伊川・神戸川水系河川整備基本計画』に基づき[[2006年]](平成18年)[[8月1日]]に斐伊川水系に編入され、一級河川に昇格した。現在'''尾原ダム'''(斐伊川)・'''志津見ダム'''(神戸川)が建設されており、両ダムを連結したトンネルによって効率的な水運用を図ろうとしている。

{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!{{Nowrap|所在}}<br />
!水系名
!水系<br />
!一次<br />支川名<br />(本川)
!二次<br />支川名
!河川<br />
!三次<br />支川名
!ダム<br />
!{{Nowrap|型式}}<br />
!ダム名
!高<br />(m)
!高<br />
!総貯水<br/>容量<br />(千m&sup3;)
!総貯水容量<br />
!{{Nowrap|分類}}<br />
!型式
!着手<br />(年)
!水特法<br />
!完成<br />(年)
!{{Nowrap|備考}}<br />
!出典<br />
!備考
|- bgcolor="yellow"
|[[千代川]]
|袋川
|-
|-
|殿ダム
| align=right|73.0
| align=right|12,400
|[[ロックフィルダム|ロックフィル]]
|1985
|2011
|工事中<br/>[[水源地域対策特別措置法|水特法]]指定
|-
|-
|長野||木曽川||木曽川||薮原ダム||重力||align="right"|50.0||align="right"|9,000||||||[[味噌川ダム]]の前身||<ref name="gaiyo2-67"/>
|[[日野川]]
|日野川
|-
|-
|日野川堰
| align=right|-
| align=right|-
|[[ゴム引布製起伏堰|ラバーダム]]
|
|1994
|
|-
|-
|岐阜||木曽川||王滝川||二子持ダム||重力||align="right"|75.0||align="right"|68,500||||||[[牧尾ダム]]の前身||<ref name="gaiyo_66"/>
|日野川
|印賀川
|-
|-
|菅沢ダム
| align=right|73.5
| align=right|19,800
|[[重力式コンクリートダム|重力式]]
|1962
|1967
|-
|- bgcolor="yellow"
|[[斐伊川]]
|斐伊川
|-
|-
|[[尾原ダム]]
| align=right|90.0
| align=right|60,800
|重力式
|1987
|2010
|工事中<br/>水特法指定
|- bgcolor="yellow"
|斐伊川
|[[神戸川 (島根県)|神戸川]]
|-
|-
|志津見ダム
| align=right|85.5
| align=right|50,600
|重力式
|1985
|2010
|工事中<br/>水特法指定
|-
|-
|岐阜||矢作川||[[上村川 (矢作川水系)|上村川]]||上矢作ダム||[[ロックフィルダム|ロックフィル]]||align="right"|150.0||align="right"|54,000||特定||||||<ref>『河川開発』第80号 p.26</ref>
|[[江の川]]
|江の川
|-
|-
|[[土師ダム]]
| align=right|50.0
| align=right|47,300
|重力式
|1966
|1973
|-
|-
|-
|岐阜||木曽川||[[飛騨川]]||[[朝日ダム]]再開発||重力||align="right"|92.0||align="right"|34,400||||||||<ref name="gaiyo_66"/>
|江の川
|馬洗川
|上下川
|-
|[[灰塚ダム]]
| align=right|50.0
| align=right|52,100
|重力式
|1974
|2006
|水特法9条指定
|-
|-
|岐阜||木曽川||飛騨川||[[上麻生ダム|久田見ダム]]||重力||align="right"|60.0||align="right"|76,000||||||||<ref name="gaiyo_66"/>
|[[吉井川]]
|吉井川
|-
|-
|[[苫田ダム]]
| align=right|74.0
| align=right|84,100
|重力式
|1972
|2004
|水特法9条指定
|-
|-
|岐阜||木曽川||[[小坂川]]||落合ダム||重力||align="right"|70.0||align="right"|67,250||||||||<ref name="gaiyo_66"/>
|吉井川
|吉井川
|-
|-
|坂根堰
| align=right|4.9
| align=right|2,200
|可動堰
|1966
|1982
|-
|-
|-
|岐阜||木曽川||[[馬瀬川]]||旧[[岩屋ダム]]||重力||align="right"|70.0||align="right"|24,000||||||1969年計画復活||<ref name="gaiyo_66"/>
|[[芦田川]]
|芦田川
|-
|-
|[[八田原ダム]]
| align=right|84.9
| align=right|60,000
|重力式
|1973
|1997
|水特法指定
|-
|-
|岐阜||木曽川||和良川||岩瀬ダム||重力||align="right"|50.0||align="right"|17,500||||||||<ref name="gaiyo_66"/>
|芦田川
|芦田川
|-
|-
|[[芦田川河口堰]]
| align=right|6.0
| align=right|5,460
|可動堰
|1969
|1981
|-
|-
|-
|岐阜||木曽川||[[板取川]]||洞戸ダム||重力||align="right"|60.0||align="right"|155,500||||||||<ref name="gaiyo_66"/>
|[[太田川]]
|太田川
|-
|-
|[[高瀬堰]]
| align=right|5.5
| align=right|1,980
|可動堰
|1970
|1975
|-
|-
|-
|岐阜||木曽川||[[揖斐川]]||東杉原ダム||重力||align="right"|72.0||align="right"|184,000||||||[[徳山ダム]]の前身||<ref name="gaiyo_66"/>
|太田川
|滝山川
|-
|-
|[[温井ダム]]
| align=right|156.0
| align=right|82,000
|[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]
|1974
|2001
|-
|-
|-
|岐阜||木曽川||[[根尾川]]||黒津ダム||重力||align="right"|84.0||align="right"|130,000||||||||<ref name="gaiyo_66"/>
|[[小瀬川]]
|小瀬川
|-
|-
|[[弥栄ダム]]
| align=right|120.0
| align=right|112,000
|重力式
|1971
|1990
|水特法指定
|-
|-
|岐阜||木曽川||根尾東谷川||根尾ダム||重力||align="right"|45.0||align="right"|16,000||||||||<ref name="gaiyo_66"/>
|[[佐波川]]
|-
|島地川
|岐阜||木曽川||[[牧田川]]||一之瀬ダム||重力||align="right"|32.0||align="right"|6,710||||||||<ref name="gaiyo_66"/>
|-
|
|-
|愛知||矢作川||矢作川||矢作川河口堰||堰||align="right"|6.2||align="right"|20,000||||||||<ref name="yahagi"/>
|[[島地川ダム]]
|-
| align=right|89.0
|愛知||木曽川||木曽川||犬山ダム||重力||align="right"|35.0||align="right"|35,150||||||||<ref name="gaiyo_66"/>
| align=right|20,600
|重力式
|1972
|1981
|-
|}
|}
<gallery>
Image:Hattabara.JPG|[[八田原ダム]]([[芦田川]])
image:nukui-1991-r1.JPG|[[温井ダム]](滝山川)
Image:Yasaka-1996-r1.JPG|[[弥栄ダム]]([[小瀬川]])
Image:Simajigawa-2086-r1.JPG|[[島地川ダム]](島地川)
</gallery>


=== 四国地方整備局 ===
=== 近畿地方整備局 ===
四国地方整備局管内では既設ダム8基、工事中ダム2基の合計10基を直轄管理施工している事業凍結中のダムが1基存在する
[[ファイル:Kuzuryu Dam.jpg|200px|thumb|近畿地方整備局管内では最大規模の直轄ダム・[[九頭竜ダム]]([[九頭竜川]][[福井県]])[[電源開発]]と共同事業。]]
[[File:Otaki Dam.JPG|200px|thumb|[[大滝ダム]]([[紀の川]]・[[奈良県]])<br/>本格運用開始まで50年を費やした[[日本の長期化ダム事業]]の代表格。]]
[[近畿地方整備局]]管内では管理中ダム10基(取水ダム含む)、施工・[[ダム再開発事業]]中3基の計13基を管理・施工している。ただし[[河川法]]第17条の[[多目的ダム#兼用工作物|兼用工作物]]として管内最大の直轄ダムである[[九頭竜ダム]]([[九頭竜川]])は[[電源開発]]と<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.304-305</ref>、[[淀川大堰]]([[淀川]])は[[水資源開発公団]](現在の[[独立行政法人]][[水資源機構]])との共同事業として建設されている<ref name="30nenshi">『水資源開発公団30年史』pp,404-405</ref>。


管内に[[大阪市]]、[[京都市]]、[[神戸市]]などの大都市と西日本最大の河川・淀川を擁する関係上、淀川水系の河川開発は最重要であった。古くは[[行基]]の頃より手掛けられた淀川の治水は[[1900年]](明治33年)より実施された淀川改良工事で[[新淀川]]開削<ref>[http://www.yodogawa.kkr.mlit.go.jp/know/rekisi/tanjyou.html 国土交通省近畿地方整備局淀川河川事務所『100年前の大洪水と新しい川の誕生』]2012年8月25日閲覧</ref>のほか[[琵琶湖]]の水位を調整する[[瀬田川洗堰|南郷洗堰]](淀川)が建設され、さらに琵琶湖河水統制事業が[[1943年]](昭和18年)より実施されて治水のほか[[水力発電]]、[[灌漑]]を目的に[[1952年]](昭和27年)完成する<ref>『河川総合開発調査実績概要』第一巻 pp,79-82</ref>。ところが[[1953年]](昭和28年)[[昭和28年台風第13号|台風13号]]が淀川、[[由良川]]に過去最悪となる水害を起こし、根本的な河川改修が求められた。結果[[淀川#淀川水系改修基本計画|淀川水系改修基本計画]]が定められ淀川本流に[[天ヶ瀬ダム]]が建設されたほか[[瀬田川洗堰]](淀川)の改築、[[木津川 (京都府)|木津川]]や[[桂川 (淀川水系)|桂川]]といった大支流に[[多目的ダム]]を建設する計画が立案された。その後淀川水系の河川開発は大阪市など[[関西圏]]の人口増加や[[阪神工業地帯]]の拡充による水道需要の急増に伴い、水資源開発に重点が移ったことから[[1962年]](昭和37年)に[[水資源開発促進法]]に拠る淀川水系水資源開発基本計画が策定され、旧建設省が計画していた[[高山ダム]]([[名張川]])は水資源開発公団に事業を移管させた。以後、淀川水系の多目的ダム事業は水資源開発公団が主体で行い、[[青蓮寺ダム|青蓮寺]](青蓮寺川)、[[室生ダム|室生]]([[宇陀川]])、[[一庫ダム|一庫]]([[一庫大路次川]])、[[布目ダム|布目]](布目川)、[[比奈知ダム|比奈知]](名張川)、[[日吉ダム|日吉]](桂川)の各ダムが建設された。また[[1972年]](昭和47年)琵琶湖総合開発特別措置法制定により建設省・水資源開発公団・[[滋賀県]]および琵琶湖沿岸市町村が一体的に参加した琵琶湖総合開発事業が実施され、琵琶湖の多目的ダム化が図られた<ref>[http://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/development/d02.html 独立行政法人水資源機構琵琶湖開発総合管理所『琵琶湖開発事業の概要』]2012年8月25日閲覧</ref>。これに関連し[[1971年]](昭和46年)の淀川水系工事実施基本計画に伴い、琵琶湖に関連する河川での多目的ダム事業が計画され、[[丹生ダム]]([[高時川]])<ref group="注">計画当初は高時川ダムという名称であった。後に水資源機構へ事業移管。</ref>や[[大戸川ダム]]([[大戸川]])が計画された<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.310-313</ref>。
四国においては、[[吉野川]]水系の開発が最重要課題とされた。四国四県に影響を及ぼすだけに各自治体間の調整が極めて重要となった。既に戦前には「[[銅山川 (四国)|銅山川]]分水」が[[愛媛県]]によって計画されていたが、下流の[[徳島県]]と[[水利権]]をめぐって紛糾する事態となっていた。戦後「[[吉野川#吉野川総合開発計画|吉野川総合開発計画]]」が[[1949年]](昭和24年)より始まり、この中で[[早明浦ダム]](吉野川)を中心とする総合開発が企図されたが、[[1965年]](昭和40年)に吉野川水系が「水資源開発促進法」の指定水系となり、一切の事業は水資源開発公団(現・[[水資源機構]])へと移管された。このため、吉野川水系において直轄管理されているダムは愛媛県から移管された'''柳瀬ダム'''(銅山川)のみとなっている。この他[[物部川]]本流に建設された永瀬ダムも、完成後に[[高知県]]へと移管されている。[[肱川]]本流の'''鹿野川ダム'''については完成後愛媛県に移管されたが、[[2006年]](平成18年)に直轄管理へと戻っている。


淀川と同時期に総合開発が実施された河川としては[[紀の川]]がある。紀の川の水を[[奈良盆地]]へ導水する吉野川分水計画は[[奈良県]]300年来の悲願であったが、[[水利権]]を巡る下流の[[和歌山県]]との対立は激化し単独での事業遂行は不可能だった。戦後[[1949年]](昭和24年)に[[農林省]](現在の[[農林水産省]])主導による十津川・紀の川総合開発計画で[[新宮川]]([[熊野川]])の水を紀の川へ導水、さらに紀の川の水を奈良盆地に導水して奈良・和歌山両県の水需要を満たす計画が立案。同事業は[[1950年]](昭和25年)の[[国土総合開発法]]に基づく[[紀の川#吉野熊野特定地域総合開発計画|吉野熊野特定地域総合開発計画]]に組み入れられ、新宮川・紀の川間導水の要である[[猿谷ダム]](熊野川)を皮切りに[[農林水産省直轄ダム|農林省直轄ダム]]として[[大迫ダム|大迫]](紀の川)、[[津風呂ダム|津風呂]](津風呂川)、[[山田ダム|山田]](野田原川)の各ダムが完成し奈良県の悲願である吉野川分水が達成された<ref>[http://www.maff.go.jp/kinki/seibi/midori/jigyou/minamikinki/history01.html 農林水産省近畿農政局南近畿土地改良調査管理事務所『吉野川・紀の川分水の歴史』]2012年8月25日閲覧</ref><ref>『国土総合開発特定地域の栞』pp.40-43</ref>。ところが[[1959年]](昭和34年)の[[伊勢湾台風]]で紀の川流域は水害による大きな被害を受け、治水目的の多目的ダム建設が急務となり紀の川本流に[[大滝ダム]]が計画されることになる<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.324-325</ref>。
ダム建設をめぐり管内では'''吉野川第十堰'''可動堰化問題と「'''[[長安口ダム#細川内ダム計画|細川内ダム]]'''」([[那賀川]])の2つが[[公共事業]]のあり方をめぐる問題として注目された。前者は洪水流下の阻害要因となる第十堰を[[固定堰]]から可動堰に改造する事業を巡っての賛否が[[徳島市]]の住民投票にまで発展。結果賛成派の棄権に伴い反対票のみの得票をもって可動堰計画に徳島市が反対表明を行って、現在事業が頓挫している。後者は慢性的水不足からの脱却と多雨地帯・那賀川の治水を目的に計画された多目的ダム・細川内ダム(堤高103.0メートル)を巡り、地元[[木頭村]](現・[[那賀町]])が20年に亘って反対を行った。結果[[2000年]](平成12年)に計画が白紙撤回され住民の勝利となった。何れも[[市民団体]]・[[日本共産党]]が旗振りを行い、公共事業の在り方を振り返る契機になった。だが第十堰では可動堰化を悲願としていた吉野川北岸地域の住民が猛反発を起こし、細川内ダムでは計画中止後豪雨災害や[[2005年]](平成17年)の大渇水で那賀川流域が150億円以上の損害を受けるなど、流域の治水・利水が有効に機能していない。肱川でも'''[[山鳥坂ダム]]'''(河辺川)事業で、水没住民が建設を容認したが下流の市民団体が建設反対を訴え、事態が硬直化している。この他吉野川総合開発計画の一環で計画された[[小歩危ダム計画]](吉野川)が[[名勝]][[大歩危]]・[[小歩危]]水没に対する住民の反対で中止。「[[土器川]]総合開発事業・前の川ダム」(前の川)も事業中止となっている。


このほか九頭竜川水系は九頭竜ダムを核にした電源開発と[[北陸電力]]による奥越電源開発計画が競合していたが、伊勢湾台風や[[第二室戸台風]]による九頭竜川の洪水を機に建設省が九頭竜ダム計画に参入。電源開発との共同事業で[[1968年]](昭和43年)に完成させるが<ref>『電発30年史』pp.217-220</ref>、[[1965年]](昭和40年)9月の[[昭和40年台風第24号|台風24号]]に伴う奥越豪雨は[[笹生川ダム]](真名川)の治水機能を喪失させ、当時の[[大野郡]][[西谷村 (福井県)|西谷村]](現在の[[大野市]])に壊滅的被害を与え村を消滅させるなど甚大な被害を与えた。このため支流真名川の総合開発も計画され[[1977年]](昭和52年)[[真名川ダム]]が完成する<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.302-303</ref>。その後九頭竜川中流部の治水・利水を目的に[[九頭竜川鳴鹿大堰]](九頭竜川)が完成し、[[福井市]]などへの利水も強化された。こうした中発生した[[2004年]](平成16年)の[[平成16年7月福井豪雨]]において、真名川流域では真名川ダムの[[洪水調節]]で下流域への洪水被害をほぼ皆無に抑えた反面、強固な反対運動で[[足羽川ダム]]事業が凍結していた[[足羽川]]流域では福井市内で[[堤防]]が決壊するなど死者を出す大きな被害を生じ、同じ[[降水量]]にも関わらず対照的な結果をもたらした<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/TPage.cgi?id=211 『ダム便覧』もしダムが完成していたら~平成16年7月福井豪雨~]2012年8月25日閲覧</ref><ref>[http://www.kkr.mlit.go.jp/kuzuryu/ 国土交通省近畿地方整備局九頭竜川ダム統合管理事務所『”検証”平成16年7月福井豪雨 支川にも及ぶダム効果』記者発表資料]2012年8月25日閲覧</ref>。福井豪雨以後ダム建設再開要望が福井市など流域市町村より高まり、[[治水ダム#穴あきダム|穴あきダム]]として足羽川支流の部子川に建設する新ダム計画となった。[[前原誠司]][[国土交通大臣]](当時)はダム事業再検証対象としたが、[[2012年]](平成24年)にダムは事業継続となる<ref name="minaoshi"/><ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=0952 『ダム便覧』足羽川ダム]2012年8月25日閲覧</ref>。[[加古川]]水系は農林水産省による広域農業水利事業により[[鴨川ダム]](鴨川)、[[呑吐ダム|呑吐(どんど)ダム]]([[志染川]])など農林水産省直轄ダムが支流に建設されていたが、治水・利水を目的として水系初の直轄ダムである[[加古川大堰]](加古川)が[[1988年]](昭和63年)に完成した<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.320-321</ref>。
上記の経緯から土器川水系と那賀川水系では[[多目的ダム#特定多目的ダム|特定多目的ダム]]は建設されていない。だが那賀川では度重なる渇水の被害に悩まされ続けている流域自治体や徳島県からの要望があり、水系最大の[[多目的ダム#補助多目的ダム|補助多目的ダム]]であった'''長安口ダム'''(那賀川)が国土交通省の直轄管理に[[2007年]](平成19年)4月より移管されている。[[四万十川]]は本流の河川勾配の影響でダム建設は技術的に不可能であり、支流の中筋川流域でダム建設('''中筋川ダム'''・'''横瀬川ダム''')が行われている。なお、管内における直轄ダムの型式は全て[[重力式コンクリートダム]]である。


管内におけるダム事業と移転住民の摩擦では大滝ダムが特に知られる。[[1962年]](昭和37年)より計画に着手したが[[吉野郡]][[川上村 (奈良県)|川上村]]で399[[戸]]487[[世帯]]が移転対象となり激しい反対運動が繰り広げられ、さらに試験的に貯水を行う試験湛水中に川上村白屋地区で[[地すべり]]が発生。対策工事などで本格的な運用を開始するまで50年を費やし、完成した日本のダムにおいて施工期間が最も長い[[日本の長期化ダム事業]]の代表格となった<ref>[http://www.kkr.mlit.go.jp/kinokawa/news/kisya.html 国土交通省近畿地方整備局紀の川ダム統合管理事務所『記者発表』]2012年8月25日閲覧</ref><ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=1579 『ダム便覧』大滝ダム]2012年8月25日閲覧</ref>。また建設省が施工し京都府に管理が移管された[[大野ダム (京都府)|大野ダム]](由良川)は[[蜷川虎三]][[京都府知事]](当時)の奔走により補償交渉が妥結するという状況であった<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/TPage.cgi?id=249 『ダム便覧』文献に見る補償の精神【18】]2012年8月25日閲覧</ref>。一方で水没戸数が大野郡[[和泉村]](現在の大野市)で529戸と大滝ダムを上回る規模の九頭竜ダムでは、施工を担当した電源開発が「補償交渉終了まで工事は実施しない」という方針を打ち出し、大滝ダムとは対照的にわずか2年で補償交渉を妥結に導いた。この原則は「九頭竜補償方式」と名づけられ以後電源開発によるダム事業の大原則となる<ref>『電発30年史』pp.220-222</ref>。そして[[2005年]](平成17年)に国土交通省の諮問機関である淀川水系流域委員会が答申した計画5ダム(丹生、大戸川、[[余野川ダム|余野川]]、[[川上ダム (三重県)|川上]]、天ヶ瀬ダム再開発)の事業中止答申は流域自治体に大きな影響を与え、国土交通省は一旦5事業を中止する意向を示したものの流域自治体が反発。その後[[嘉田由紀子]][[滋賀県知事]]によるダム事業見直し政策などで状況は二転三転し淀川水系の河川開発は混乱を来たした<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=1367 『ダム便覧』大戸川ダム]2012年8月25日閲覧</ref>。現在5ダムのうち余野川が中止(後述)、丹生・大戸川・川上は国土交通省によるダム事業再検証の対象、天ヶ瀬ダム再開発事業のみ再検証対象外として事業が継続している<ref name="minaoshi"/>。また[[関西国際空港]]関連事業として大阪府が水利権を有していた[[紀の川大堰]](紀の川)では、当時の[[橋下徹]][[大阪府知事]]が[[2009年]](平成21年)に水利権を返上している<ref>読売新聞2009年9月1日記事</ref><ref group="注">なお、この問題に絡み知事が大阪府全職員に配信した[[メール]]に対し批判した職員が処分されている。</ref>。
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:small;"

なお、管内における[[一級河川]]のうち[[北川]]、[[円山川]]、[[揖保川]]、[[大和川]]水系には直轄ダムが建設されていない。大和川を除く3水系は本流にダムが建設されていないが、支流に[[多目的ダム#補助多目的ダム|補助多目的ダム]]が福井県や[[兵庫県]]、奈良県により建設、施工されている。また淀川水系の主要な支流のうち、木津川本流にはダムが建設されていない。ダム管理上の新たな問題点として天ヶ瀬ダムでは[[自殺]]者が急増したことにより一時緊急的にダムの立入を禁止し、現在はダムの夜間訪問が禁止されている<ref>[http://www.mlit.go.jp/chosahokoku/h22giken/.../ippan2-04.pdf 柳川雄司『天ヶ瀬ダムでの自殺防止対策』国土交通省近畿地方整備局大和川河川事務所]2012年8月25日閲覧</ref><ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/Konogoro.cgi?id=159 『ダム便覧』最近の天ヶ瀬ダム事情]2012年8月25日閲覧</ref>。自殺防止対策として飛び降り防止柵や青色照明灯を導入するなどの対策により、[[2011年]](平成23年)度における自殺者はゼロとなっている<ref>[http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20120604/311101/?ST=architecture 日経BPネット『青色照明導入の天ヶ瀬ダム、10年ぶりに自殺者ゼロ』]2012年8月25日閲覧</ref>。

{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
!所在<br/>
!水系<br />
!河川<br />
!ダム<br />
!型式<br/>
!{{Nowrap|高さ}}<br />
!{{Nowrap|総貯水容量}}<br />
!着工<br />
!完成<br/>
!分類<br/>
![[水源地域対策特別措置法|水特法]]<br />
!備考<br />
|-bgcolor="yellow"
|[[福井県|福井]]||[[九頭竜川]]||部子川||[[足羽川ダム]]||[[重力式コンクリートダム|重力]]||align="right"|96.0||align="right"|28,700||1983||未定||[[治水ダム|治水]]||指定||工事中
|-
|福井||九頭竜川||九頭竜川||[[九頭竜ダム]]||[[ロックフィルダム|ロックフィル]]||align="right"|128.0||align="right"|353,000||1962||1968||[[多目的ダム#兼用工作物|兼用]]||||
|-
|福井||九頭竜川||九頭竜川||[[九頭竜川鳴鹿大堰]]||[[堰]]||align="right"|5.7||align="right"|667||1989||2003||特定||||
|-
|福井||九頭竜川||真名川||[[真名川ダム]]||[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]||align="right"|127.5||align="right"|115,000||1965||1977||特定||||
|-
|-
|[[滋賀県|滋賀]]||[[淀川]]||淀川||[[瀬田川洗堰]]||堰||align="right"|-||align="right"|27,500,000||1900||1905||||||1961年改築<ref>[http://www.biwakokasen.go.jp/rivers/seta/sluice/araizeki.html 国土交通省近畿地方整備局琵琶湖河川事務所『瀬田川洗堰』]2012年8月25日閲覧</ref><br/>貯水容量は[[琵琶湖]]
!水系名
|-bgcolor="pink"
!一次<br />支川名<br />(本川)
|滋賀||淀川||[[大戸川]]||[[大戸川ダム]]||重力||align="right"|67.5||align="right"|21,900||1978||未定||治水||指定||事業見直し
!二次<br />支川名
|-bgcolor="yellow"
!三次<br />支川名
|[[京都府|京都]]||淀川||淀川||[[天ヶ瀬ダム]]||アーチ||align="right"|73.0||align="right"|26,280||1955||1964||特定||||[[ダム再開発事業|再開発]]中
!ダム名
!堤高<br />(m)
!総貯水<br/>容量<br />(千m&sup3;)
!型式
!着手<br />(年)
!完成<br />(年)
!備考
|-
|-
|[[大阪府|大阪]]||淀川||淀川||[[淀川大堰]]||堰||align="right"|-||align="right"|-||1971||1984||兼用||||<ref name="30nenshi"/>
|[[吉野川]]
|吉野川
|-
|-
|[[吉野川第十堰]]
| align=right|-
| align=right|-
|[[固定堰]]
|-
|1752
|-
|- bgcolor="pink"
|吉野川
|吉野川
|-
|-
|[[吉野川可動堰]]
| align=right|6.2
| align=right|6,500
|[[可動堰]]
|1988
|-
|凍結中
|-
|-
|[[兵庫県|兵庫]]||[[加古川]]||加古川||[[加古川大堰]]||堰||align="right"|6.0||align="right"|1,960||1979||1988||特定||||
|吉野川
|[[銅山川 (四国)|銅山川]]
|-
|-
|[[柳瀬ダム]]
| align=right|55.5
| align=right|32,200
|[[重力式コンクリートダム|重力式]]
|1948
|1953
|[[愛媛県]]より移管
|- bgcolor="yellow"
|[[那賀川]]
|那賀川
|-
|-
|[[長安口ダム]]
| align=right|85.5
| align=right|54,278
|重力式
|1950
|1955
|再開発中<br/>[[徳島県]]より移管
|-
|-
|[[奈良県|奈良]]||[[新宮川]]||池津川||池津川取水ダム||重力||align="right"|16.8||align="right"|-||-||1956||||||
|[[仁淀川]]
|仁淀川
|-
|-
|大渡ダム
| align=right|96.0
| align=right|66,000
|重力式
|1966
|1986
|-
|-
|-
|奈良||[[紀の川]]||紀の川||[[大滝ダム]]||重力||align="right"|100.0||align="right"|84,000||1962||2012||特定||9条等指定||
|[[四万十川]]
|中筋川
|-
|-
|中筋川ダム
| align=right|73.1
| align=right|12,600
|重力式
|1982
|1998
|-
|- bgcolor="pink"
|四万十川
|中筋川
|横瀬川
|-
|横瀬川ダム
| align=right|72.1
| align=right|7,300
|重力式
|1996
|2012
|見直し対象
|-
|-
|奈良||新宮川||[[熊野川]]||[[猿谷ダム]]||重力||align="right"|74.0||align="right"|23,300||1950||1957||||||
|[[重信川]]
|[[石手川]]
|-
|-
|[[石手川ダム]]
| align=right|87.0
| align=right|12,800
|重力式
|1966
|1972
|-
|-
|-
|[[和歌山県|和歌山]]||紀の川||紀の川||[[紀の川大堰]]||堰||align="right"|7.1||align="right"|2,900||1978||2009||特定||||
|[[肱川]]
|肱川
|-
|-
|[[野村ダム]]
| align=right|60.0
| align=right|16,000
|重力式
|1971
|1981
|[[水源地域対策特別措置法|水特法]]指定
|- bgcolor="yellow"
|肱川
|肱川
|-
|-
|鹿野川ダム
| align=right|61.0
| align=right|48,200
|重力式
|1953
|1958
|再開発中<br/>愛媛県より移管
|- bgcolor="pink"
|肱川
|河辺川
|-
|-
|[[山鳥坂ダム]]
| align=right|103.0
| align=right|24,900
|重力式
|1986
|2019
|見直し対象<br/>水特法指定<br/>愛媛県より移管
|}
|}
<gallery>
Image:Yoshinogawa Daijuzeki.jpg|[[吉野川第十堰]]([[吉野川]])
Image:Yanase-2243-r1.jpg|[[柳瀬ダム]]([[銅山川 (四国)|銅山川]])
Image:Nagayasuguchi-2122-r1.jpg|[[長安口ダム]]([[那賀川]])
image:Odo-2323-r1.jpg|大渡ダム([[仁淀川]])
</gallery>


=== 九州地方整備局 ===
==== 近畿地方整備局の中止事業 ====
[[ファイル:Ikehara Dam survey.jpg|200px|thumb|近畿地方最大級のダム・[[池原ダム]]([[北山川]]・[[電源開発]])。<br/>建設省による[[池原ダム#熊野川総合開発計画|熊野川総合開発計画]]で計画された前鬼口ダムが前身である。]]
九州地方整備局管内では既設ダム・堰12基、工事中ダム7基の合計18基を直轄管理・施工している。
近畿地方整備局管内における中止したダム事業は、旧[[内務省 (日本)|内務省]]・旧建設省時代を含め11事業に上る。


日本における最初期の直轄ダム事業として計画された猪名川ダム([[猪名川]])は[[太平洋戦争]]の激化により事業が中断され、戦後も再開されることはなかった<ref name="tamokuteki61">『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』p.61</ref>。猪名川流域における多目的ダム事業は[[1968年]](昭和43年)の一庫ダム着工まで行われなかったが、猪名川支流の[[余野川]]に余野川ダムが1980年より計画された。これは猪名川流域の洪水調節と[[上水道]]供給に加え、深刻な[[水質汚濁]]が慢性的に続く猪名川の水質改善を目的にダムより[[放流 (ダム)#河川維持放流|河川維持放流]]を行い、下流に設けられる河川浄化施設と連携することで猪名川の水質を改善させる計画であった<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.318-319</ref>。しかし2005年の淀川水系流域委員会答申で余野川ダムの中止が勧奨され、2008年には中止方針が決定された<ref>[http://www.yodoriver.org/.../080822_honda_yonogawa_ppt.pdf 淀川水系流域委員会合同作業検討会『余野川ダムについての課題』]2012年8月25日閲覧</ref>。
[[1953年]](昭和28年)6月の[[昭和28年西日本水害]]は九州地方全域に甚大な被害をもたらし、特に[[筑後川]]水系は[[夜明ダム]](筑後川)の決壊など深刻であった。このため「[[筑後川#筑後川水系治水基本計画|筑後川水系治水基本計画]]」が策定され、[[多目的ダム]]による総合開発として'''松原ダム'''(筑後川)・'''下筌ダム'''(津江川)が建設されたほか、[[遠賀川]]・[[山国川]]・[[菊池川]]・[[緑川]]・[[川内川]]の各水系で総合開発が行われた。[[1982年]](昭和57年)の[[長崎大水害]]を契機に壊滅的な被害を与えた[[本明川]]水系でも'''本明川ダム'''(本明川)が計画された。このように九州地方においては[[台風]]の常襲地帯である故に先ずは治水を目的とした多目的ダム建設が行われ、利水に関しては[[1964年]](昭和39年)に筑後川水系が「水資源開発促進法」に指定されて水資源開発公団(現・[[水資源機構]])による総合開発([[江川ダム]]・[[寺内ダム]]・[[筑後大堰]]など)が行われた以外は、主に各地方自治体で積極的に行われていて直轄事業で行う例は少ない。また、'''城原川ダム'''(城原川)や'''立野ダム'''([[白川 (熊本県)|白川]])の様に治水専用ダムも建設されている。


一方、吉野熊野特定地域総合開発計画の中で旧建設省は、新宮川水系において十津川・紀の川総合開発計画とは別個に[[池原ダム#熊野川総合開発計画|熊野川総合開発計画]]を立案。本流筋に3箇所、支流[[北山川]]筋に4箇所の多目的ダムを建設し、治水、[[灌漑]]および水力発電を行う計画を検討した。ところが詳細な計画立案を行ったところ事業費約450億円(当時の額)に対し完成後の効果がわずかであり、[[費用対効果]]に著しく欠けることが判明。1953年9月に建設省は調査事務所を閉鎖して熊野川総合開発計画とそれに基づくダム計画は全て白紙となった<ref>『河川総合開発調査実績概要』第一巻 pp.73-79</ref>。しかし水力発電単独目的であれば採算性が取れることから電源開発が同計画を発電単独目的に修正した[[池原ダム#熊野川開発全体計画|熊野川開発全体計画]]として1954年7月より事業に着手した<ref>『10年史』pp.94-95</ref>。現在新宮川水系にある[[風屋ダム]](熊野川)、[[二津野ダム]](熊野川)、[[池原ダム]](北山川)、[[七色ダム]](北山川)、小森ダム(北山川)、坂本ダム([[東ノ川]])は何れも熊野川総合開発計画に基づき計画されたダム群の後身である。
管内では[[公共事業]]をめぐる係争は早くから始まっていた。その代表が[[下筌ダム|蜂の巣城紛争]]であり、10年に亘る室原知幸らの闘争は河川開発と住民の[[基本的人権]]との整合性を世に問い、この一件から[[水源地域対策特別措置法]]等の水源地域対策が本腰で行われるようになった。現在は日本のダム問題の縮図として'''川辺川ダム'''([[川辺川]])がクローズアップされており、水没住民・水源地域の[[五木村]]を始め[[八代市]]などの流域市町村・農業水利組合が早期建設を要望する一方[[市民団体]]が反対運動を盛り上げ、[[2008年]](平成20年)には[[人吉市]]と[[相良村]]そして[[熊本県]]が反対に回るなど地元の意見も錯綜。2009年の政権交代で誕生した鳩山由紀夫内閣では本体事業中止の方針が示されている。城原川ダムでは[[ダム建設の是非]]をめぐり地元住民が分裂、[[2006年]](平成18年)4月の[[神埼市]]市長選挙でも争点となったが、新市長は態度を当初保留していたが賛成の方針へ舵を切った。この他公共事業の再点検により「猪牟田ダム」([[玖珠川]])・「矢田ダム」(平井川)の建設が中止となっている。


紀の川水系では和歌山県[[橋本市]]と[[伊都郡]][[九度山町]]を流れる支流の紀伊丹生川に建設が計画されていた紀伊丹生川ダムが中止されている。治水および大阪府、[[和歌山市]]などへの利水を目的に高さ145メートルの巨大ダムが[[1989年]](平成元年)より計画されたが景勝地の[[玉川峡]]が水没することで反対運動が強く、その後水道事業者の大阪府、和歌山市などがダム事業から撤退し費用対効果で事業の継続が困難になったことから[[2002年]](平成14年)に中止されている<ref>[http://www.kkr.mlit.go.jp/wakayama/ryuiki_iinkai/ryuiki/comm09/news09_2.html 国土交通省近畿地方整備局和歌山河川国道事務所『紀の川流域委員会ニュース No.9』]2012年8月25日閲覧</ref><ref>[http://www5a.biglobe.ne.jp/~kiinyu/ 玉川峡(紀伊丹生川)を守る会]2012年8月25日閲覧</ref>。
管内の河川では[[五ヶ瀬川]]水系・[[番匠川]]水系・[[大野川]]水系・[[小丸川]]水系・[[大淀川]]水系で直轄ダムが建設されていない。これらは何れも支流に[[多目的ダム#補助多目的ダム|補助多目的ダム]]が戦後早い時期から建設されている。[[肝属川]]水系では[[高隈ダム]](串良川)があるが、多目的ダムではない。
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:small;"
{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!{{Nowrap|所在}}<br />
!水系名
!水系<br />
!一次<br />支川名<br />(本川)
!二次<br />支川名
!河川<br />
!三次<br />支川名
!ダム<br />
!{{Nowrap|型式}}<br />
!ダム名
!高<br />(m)
!高<br />
!総貯水<br/>容量<br />(千m&sup3;)
!総貯水容量<br />
!{{Nowrap|分類}}<br />
!型式
!着手<br />(年)
!水特法<br />
!完成<br />(年)
!{{Nowrap|備考}}<br />
!出典<br />
!備考
|-
|-
|福井||九頭竜川||[[足羽川]]||旧足羽川ダム||重力||align="right"|77.0||align="right"|60,000||特定||||[[治水ダム]]へ変更||<ref>『ダム年鑑 1991年版』pp.136-137</ref>
|[[山国川]]
|山国川
|-
|-
|[[平成大堰]]
| align=right|3.2
| align=right|278
|[[可動堰]]
|1983
|1990
|-
|-
|-
|大阪||淀川||[[余野川]]||[[余野川ダム]]||重力||align="right"|74.0||align="right"|17,500||特定||||||<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.318-319</ref>
|山国川
|山移川
|-
|-
|[[耶馬溪ダム]]
| align=right|62.0
| align=right|23,300
|[[重力式コンクリートダム|重力式]]
|1970
|1984
|[[水源地域対策特別措置法|水特法]]指定
|- bgcolor="pink"
|[[大分川]]
|[[七瀬川 (大分県)|七瀬川]]
|-
|-
|[[大分川ダム]]
| align=right|95.5
| align=right|27,500
|[[ロックフィルダム|ロックフィル]]
|1978
|2017
|見直し対象<br/>水特法指定
|-
|-
|兵庫||淀川||[[猪名川]]||猪名川ダム||-||align="right"|-||align="right"|-||||||||<ref name="tamokuteki61"/>
|[[遠賀川]]
|遠賀川
|-
|-
|遠賀川河口堰
| align=right|6.5
| align=right|11,140
|可動堰
|1969
|1982
|-
|-
|-
|奈良||新宮川||熊野川||旧[[風屋ダム]]||重力||align="right"|130.0||align="right"|172,000||||||[[電力会社管理ダム|発電専用ダム]]に変更||<ref name="gaiyo_78">『河川総合開発調査実績概要』第一巻 p.78</ref>
|[[筑後川]]
|筑後川
|-
|-
|[[松原ダム]]
| align=right|83.0
| align=right|54,600
|重力式
|1958
|1972
|-
|-
|-
|奈良||新宮川||熊野川||鹿測ダム||重力||align="right"|70.0||align="right"|47,000||||||[[風屋ダム|二津野ダム]]の前身||<ref name="gaiyo_78"/>
|筑後川
|津江川
|-
|-
|[[下筌ダム]]
| align=right|98.0
| align=right|59,300
|[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]
|1958
|1972
|-
|- bgcolor="pink"
|筑後川
|佐賀江川
|城原川
|-
|[[城原川ダム]]
| align=right|98.5
| align=right|15,800
|[[ロックフィルダム|ロックフィル]]
|1979
|未定
|見直し対象
|-
|-
|奈良||新宮川||[[北山川]]||[[前鬼口ダム]]||重力||align="right"|95.0||align="right"|29,500||||||[[池原ダム]]の前身||<ref name="gaiyo_78"/>
|[[矢部川]]
|矢部川
|-
|-
|松原堰
| align=right|-
| align=right|-
|[[ゴム引布製起伏堰|ラバーダム]]
|
|1998
|
|-
|-
|奈良||新宮川||北山川||北山ダム||重力||align="right"|65.0||align="right"|37,000||||||[[七色ダム]]の前身||<ref name="gaiyo_78"/>
|矢部川
|矢部川
|-
|-
|瀬高堰
| align=right|-
| align=right|-
|可動堰
|
|1990
|
|-
|-
|奈良||新宮川||北山川||大沼ダム||重力||align="right"|40.0||align="right"|-||||||小森ダムの前身||<ref name="gaiyo_78"/>
|[[松浦川]]
|[[厳木川]]
|-
|-
|厳木ダム
| align=right|117.0
| align=right|13,600
|重力式
|1973
|1986
|-
|-
|-
|奈良||新宮川||[[東ノ川]]||大瀬ダム||重力||align="right"|130.0||align="right"|91,500||||||坂本ダムの前身||<ref name="gaiyo_78"/>
|[[六角川]]
|六角川
|-
|-
|六角川河口堰
| align=right|11.5
| align=right|19,000
|可動堰
|1968
|1982
|-
|- bgcolor="yellow"
|[[嘉瀬川]]
|嘉瀬川
|-
|-
|[[嘉瀬川ダム]]
| align=right|97.0
| align=right|71,000
|重力式
|1973
|2011
|工事中<br/>水特法9条指定
|-
|-
|和歌山||紀の川||紀伊丹生川||紀伊丹生川ダム||重力||align="right"|145.0||align="right"|60,500||特定||||||<ref>[http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdf/Dambinran/binran/Hozon/HzKietaFr_39.html 『ダム便覧』紀伊丹生川ダム]2012年8月25日閲覧</ref>
|嘉瀬川
|嘉瀬川
|-
|-
|嘉瀬川大堰
| align=right|-
| align=right|-
|可動堰
|
|1991
|-
|- bgcolor="pink"
|[[本明川]]
|本明川
|-
|-
|本明川ダム
| align=right|64.0
| align=right|8,600
|[[台形CSGダム|台形CSG]]
|1990
|未定
|見直し対象
|-
|-
|和歌山||新宮川||熊野川||檜杖ダム||重力||align="right"|30.0||align="right"|70,000||||||||<ref name="gaiyo_78"/>
|[[菊池川]]
|迫間川
|-
|-
|[[竜門ダム]]
| align=right|99.5
| align=right|42,500
|[[コンバインダム|複合型]]
|1970
|2001
|水特法9条指定
|- bgcolor="pink"
|[[白川 (熊本県)|白川]]
|白川
|-
|-
|立野ダム
| align=right|87.0
| align=right|10,100
|重力式
|1979
|2014
|見直し対象
|-
|[[緑川]]
|緑川
|-
|-
|緑川ダム
| align=right|76.5
| align=right|46,000
|重力式
|1964
|1970
|-
|-
|緑川
|加勢川
|-
|-
|六間堰
| align=right|-
| align=right|-
|可動堰
|1993
|1999
|-
|- bgcolor="pink"
|緑川
|御船川
|-
|-
|七滝ダム
| align=right|90.0
| align=right|17,500
|ロックフィル
|1991
|未定
|見直し対象
|- bgcolor="pink"
|[[球磨川]]
|[[川辺川]]
|-
|-
|[[川辺川ダム]]
| align=right|107.5
| align=right|133,000
|[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]
|1967
|未定
|見直し対象<br/>水特法9条指定
|- bgcolor="yellow"
|[[川内川]]
|川内川
|-
|-
|[[鶴田ダム]]
| align=right|117.5
| align=right|123,000
|重力式
|1959
|1965
|再開発中
|}
|}
<gallery>
Image:Shimouke-2797-r1.JPG|[[下筌ダム]](津江川)
Image:Kasegawa-2553-r1.JPG|[[嘉瀬川ダム]]([[嘉瀬川]])
Image:Ryumon-2675-r1.JPG|[[竜門ダム]](迫間川)
Image:Tsuruta-2861-r1.JPG|[[鶴田ダム]]([[川内川]])
</gallery>


=== 沖縄総合事務局 ===
=== 中国地方整備局 ===
[[File:nukui-1991-r1.JPG|200px|thumb|ダムの高さでは西日本随一の規模を有する[[温井ダム]]([[温井ダム#地理|滝山川]]・[[広島県]])]]
''[[日本の多目的ダム一覧#沖縄県]]も参照のこと''
[[File:Simajigawa-2086-r1.JPG|200px|thumb|世界初のRCD工法で建設された[[島地川ダム]](島地川・[[山口県]])]]
[[中国地方整備局]]管内では既設ダム・堰16基を直轄管理している。ただし[[河川法]]第17条の[[多目的ダム#兼用工作物|兼用工作物]]規定に基づき、坂根堰([[吉井川]])は[[農林水産省]]、および水道事業者の代理人である[[岡山県]]との共同事業として建設されている<ref name="sakane">[http://www.pref.okayama.jp/page/269675.html 岡山県農林水産部耕地課『坂根合同堰』]2012年8月27日閲覧</ref>。


[[中国地方]]の河川総合開発は日本全国に先駆け[[山口県]]が、[[青森県]]とほぼ同時に開始した。県東部を流れる[[錦川]]に[[1940年]](昭和15年)、日本最初の[[多目的ダム]]である[[向道ダム]]が本流上流部に建設され、続いて[[厚東川ダム]]([[厚東川]])や[[木屋川ダム]]([[木屋川]])が施工された。終戦後には岡山県も岡山三大河川の一つで県都・[[岡山市]]を貫流する[[旭川 (岡山県)|旭川]]の総合開発に着手し、本流中流部に[[旭川ダム]]を建設した<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.61-64</ref>。[[1950年]](昭和25年)の[[国土総合開発法]]施行による[[河川総合開発事業#特定地域総合開発計画|特定地域総合開発計画]]では大山出雲特定地域総合開発計画に基づき[[湯原ダム]](旭川)が、錦川特定地域総合開発計画に基づき[[菅野ダム]](錦川)が[[都道府県営ダム|県営ダム事業]]として建設され<ref>『国土総合開発特定地域の栞』pp.43-46,48-49</ref>、続いて[[佐波川]]水系、[[高梁川]]水系などでも[[佐波川ダム]](佐波川)や[[河本ダム]](西川)といった多目的ダムが建設されるなど、中国地方における初期の河川開発は[[地方自治体]]が積極的に進めていた。
沖縄総合事務局管内では既設ダム7基、工事中ダム3基の合計10基が直轄管理・施工されている。


一方、国直轄の河川総合開発は[[1947年]](昭和22年)に[[内閣]][[経済安定本部]]が中国地方最大の河川である[[江の川]]を調査対象河川に指定して、[[治水]]・[[灌漑]]・[[水力発電]]を目的とした多目的ダム群を建設する江の川総合開発計画を[[1949年]](昭和24年)に策定したのが最初である。しかしこの計画は[[1952年]](昭和27年)を以って打ち切られ、以後は河川改修を軸とした計画に縮小された(後述)。国直轄ダム事業が開始されたのは[[鳥取県]]西部を流れる[[日野川]]の支流・印賀川に[[1964年]](昭和39年)より着手した菅沢ダムが初であり、日野川の治水や[[米子市]]周辺地域の灌漑、[[上水道]]供給を目的として[[1968年]](昭和43年)に完成した<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.330-331</ref>。1964年の[[河川法]]改定で河川等級制度が導入され、中国地方では中国地方最大の都市・[[広島市]]を貫流する[[太田川]]水系が[[1965年]](昭和40年)に[[一級河川]]の指定を受けたのを皮切りに、1968年の[[小瀬川]]水系まで13水系が一級河川の指定を受けた<ref>『河川便覧 2004』pp.86-87</ref><ref group="注">13水系の詳細については[[一級水系]]の項目を参照。</ref>。一級河川指定に伴い各水系では水系全体の治水・利水事業計画である工事実施基本計画が旧[[建設省]]により定められ、多目的ダム事業もこの中で計画されたが、計画が加速するのは[[1972年]](昭和47年)7月に発生した[[梅雨前線]]による[[集中豪雨]]・[[昭和47年7月豪雨]]による[[水害]]であった<ref>[http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/report/1972/19720703/19720703.html 気象庁『災害をもたらした気象事例』昭和47年7月豪雨]2012年8月28日閲覧</ref>。この豪雨は[[島根県]]で[[斐伊川]]・[[宍道湖]]の氾濫により[[松江市]]中心部が1週間にわたり浸水被害を受けたほか<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.336-337</ref>、[[広島県]]では江の川の氾濫で[[三次市]]、太田川の氾濫で県北西部が洪水被害を受ける<ref>[http://www.bousai.pref.hiroshima.jp/www/contents/1318849611586/index.html 広島県危機管理監危機管理課『広島県防災Web』豪雨災害(県北)]2012年8月28日閲覧</ref>など中国地方の主要河川の多くが氾濫し流域に大きな被害を与えた。
[[1972年]](昭和47年)の[[沖縄返還]]以降、[[沖縄県]]の地域開発・振興を図るため政府は[[沖縄振興特別措置法]]を制定したほか、[[総理府]]の管轄下に[[沖縄開発庁]]と現地執行機関である'''沖縄総合事務局'''を設置した。この措置法で沖縄県においては知事の要請があった場合、特措法第107条に基づき[[二級河川]]であっても[[建設大臣]]([[国土交通大臣]])が河川事業を直轄で施工することが可能となった。これは遅れていた沖縄の[[インフラストラクチャー]]整備を強力に推進するための施策であり、ダム事業においても[[河川法]]第10条の特例として、二級河川であっても[[多目的ダム#特定多目的ダム|特定多目的ダム]]が施工されることとなった。


この豪雨災害を機に計画・施工されたダムとして[[尾原ダム]](斐伊川)、志津見ダム([[神戸川 (島根県)|神戸川]])、[[温井ダム]]([[温井ダム#地理|滝山川]])、[[灰塚ダム]](上下川)、[[島地川ダム]](島地川)がある。このうち志津見ダムが建設された神戸川は計画策定当時は島根県が管理する[[二級河川]]であり、本来なら[[多目的ダム#特定多目的ダム|特定多目的ダム]]が建設されない河川であるが豪雨を機に計画された斐伊川[[放水路]]が斐伊川・神戸川間を連結するため両水系を一体化した治水事業を行う必要が生じ、[[沖縄県]](後述)以外では唯一の例外として直轄ダムが計画された<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.334-335</ref><ref group="注">2006年8月1日、神戸川水系の全河川は斐伊川水系に編入され一級河川となり、以降神戸川は斐伊川に合流しないものの斐伊川の支流として扱われる。これにより二級河川・神戸川水系は法的に消滅した。</ref>。一方で中国地方は広島市を始めとする都市部での人口急増、また[[水島臨海工業地帯]]を筆頭に[[瀬戸内海]]沿岸で[[工業地帯]]が続々誕生したことで水道需要が逼迫、こうした[[利水]]の観点からも特定多目的ダムを利用した河川開発が行われた。広島市の水がめとして江の川本流に[[土師ダム|土師(はじ)ダム]]が建設され、[[中国山地]]を貫く[[トンネル]]で江の川から太田川に導水された水は[[高瀬堰]](太田川)を経由して広島市や[[呉市]]、さらに大きな河川が無く慢性的な[[水不足]]に悩まされる[[芸予諸島]]に送水された。また[[芦田川]]の[[八田原ダム]]と[[芦田川河口堰]]は[[福山市]]・福山臨海工業地帯、小瀬川の[[弥栄ダム]]は[[大竹市]]・[[岩国市]]の水がめとして機能している<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.344-345,348-357</ref>。
沖縄県については九州地方整備局の管轄外であり、建設省・国土交通省より権限委譲を受けた沖縄開発庁の管轄下でインフラ整備が実施されたため、ダムについても沖縄総合事務局の管轄となる。しかし河川管理は国土交通省の管轄事業であるため、国策として建設されるこれらのダムは国土交通省直轄ダムとして扱われており、[[内閣府]]が管理するわけではない。


管内で計画・施工中のダムは無く、このため国土交通省によるダム事業再検証の対象ダムも存在しない。しかしダム事業と移転住民の軋轢については[[苫田ダム]](吉井川)と灰塚ダムで特に見られた。両ダムとも水没対象となる自治体・住民が官民一体となって激しい反対運動を繰り広げ、特に苫田ダムは[[1953年]](昭和28年)に岡山県が吉井川総合開発事業として計画した吉岡ダム計画の後身として当初計画より上流の[[苫田郡]][[奥津町]](現在の苫田郡[[鏡野町]])に計画されたが、[[1957年]](昭和32年)に新聞報道でダム計画が知られると奥津町では激しい反対運動が勃発。[[1959年]](昭和34年)には奥津町が苫田ダム阻止特別委員会[[条例]]を制定して移転を余儀なくされる470戸504世帯の住民と共にダム建設絶対反対を表明、[[1994年]](平成6年)に条例が廃止され[[2001年]](平成13年)に最後の地権者が補償に合意するまで計画構想発表から44年の歳月を費やした<ref>[http://www.pref.okayama.jp/page/detail-4984.html 岡山県『苫田ダムのあらまし』]2012年8月28日閲覧</ref><ref>[http://www.cgr.mlit.go.jp/tomata/aboutdam3.html 国土交通省中国地方整備局苫田ダム管理所『苫田ダムを知る ダム建設の歴史』]2012年8月28日閲覧</ref>。また[[水源地域対策特別措置法]](水特法)の指定対象外である温井ダムでは、移転住民達が建設省や下流受益地の広島県、広島市に対して[[山県郡]][[加計町]](現在の山県郡[[安芸太田町]])当局と協力し対等な交渉を粘り強く行い、集団移転と地域活性化策の導入という要望を勝ち取った。この結果温井ダムは広島県の主要な観光地に成長し、加計町の観光客数はダム完成後の[[2002年]](平成14年)には前年比2.4倍、約50万人が訪問している<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=1991 『ダム便覧』温井ダム]2012年8月28日閲覧</ref><ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/TPage.cgi?id=233 『ダム便覧』文献にみる補償の精神【1】]2012年8月28日閲覧</ref>。
[[1963年]](昭和38年)[[アメリカ陸軍|アメリカ陸軍工兵隊]]が計画した沖縄北部地域の河川総合開発マスタープランや旧[[琉球政府]]建設局・琉球水道公社のダム計画をベースに、沖縄返還後[[1973年]](昭和48年)より施工された「沖縄北部[[河川総合開発事業]]」が沖縄の河川総合開発の根幹となった。こうして建設されたのが沖縄最大の'''福地ダム'''(福地川)を中心とした「'''沖縄北部五ダム'''」であり、福地ダムの他'''新川ダム'''(新川川)・'''安波ダム'''(安波川)・'''普久川ダム'''(普久川)・'''辺野喜ダム'''(辺野喜川)である。その後も河川総合開発事業は各河川で行われ、世界初の[[台形CSGダム]]施工例となった'''億首ダム'''(億首川)等三ダムが現在施工されている。


なお、中国地方の一級河川において[[天神川]]、[[高津川]]、旭川、高梁川の各水系には直轄ダムが建設されておらず、このうち高津川水系には本支流を含めダムが一つも建設されていない。これは流域の水需要が他水系に比べ河川水のほか[[地下水]]などでも賄えるため逼迫しておらず、河川総合開発の必要性に乏しいためであり国土交通省が策定した高津川水系河川整備計画においても治水事業は堤防整備と河道掘削で対処すると明記され、ダム計画は将来的にも考えられていない<ref>[http://www.cgr.mlit.go.jp/hamada/kasen/takatugawaseibikeikaku/sakutei/seibikeikaku/takatukawaseibikeikaku.pdf 国土交通省中国地方整備局浜田河川国道事務所『高津川水系河川整備計画』]2012年8月28日閲覧</ref>。残る水系のうち天神川水系を除く河川では流域の地方自治体により旭川・湯原(旭川)、[[千屋ダム|千屋]](高梁川)などの[[多目的ダム#補助多目的ダム|補助多目的ダム]]が建設されている。中国地方の直轄ダムにおける技術的特徴としては、島地川ダム施工におけるRCD (Roller Compacted Dam-Concrete) 工法の導入が挙げられる。この工法は[[セメント]]量を極力少なくした超固練りの[[コンクリート]]を、[[ブルドーザー]]や[[振動ローラ]]といった[[重機]]で締め固める工法であり、[[アメリカ陸軍工兵司令部]]や[[パキスタン]]のタルベラダム([[インダス川]])放流トンネルで試験的に導入されていたが島地川ダムにおいて世界で始めて本格的な施工法として採用した。事業費削減や工期短縮に有用であり、日本におけるダムの主流な施工法の一つになっている<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』p.112</ref><ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=2086 『ダム便覧』島地川ダム]2012年8月28日閲覧</ref>。また温井ダムは、ダムの高さにおいて西日本随一である<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/TableAllItiran.cgi?zi=jyuni&kei=(ALL)&jy=kou 『ダム便覧』順位表堤高順]2012年8月28日閲覧</ref><ref group="注">日本の全ダムでは黒部、[[高瀬ダム|高瀬]]、徳山、[[奈良俣ダム|奈良俣]]、奥只見に次ぎ、浦山・宮ヶ瀬と同率の6位の高さである。</ref>。
施工されたダムの内、"日本最南端の多目的ダム”である真栄利ダム(宮良川)と[[倉敷ダム]](与那原川。建設当時は[[瑞慶山ダム]])は完成後沖縄県へ管理が移管されている。[[公共事業]]見直しによる影響は、「座津武ダム」(座津武川)が中止になったのみである。


{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:small;"
{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!所在<br/>
!水系名
!水系<br />
!一次<br />支川名<br />(本川)
!二次<br />支川名
!河川<br />
!三次<br />支川名
!ダム<br />
!型式<br/>
!ダム名
!高<br />(m)
!{{Nowrap|さ}}<br />
!総貯水<br/>容量<br />(千m&sup3;)
!{{Nowrap|総貯水容量}}<br />
!着工<br />
!型式
!着手<br />(年)
!完成<br/>
!完成<br />(年)
!分類<br/>
![[水源地域対策特別措置法|水特法]]<br />
!備考
!備考<br />
|-
|-
|[[鳥取県|鳥取]]||[[日野川]]||印賀川||菅沢ダム||[[重力式コンクリートダム|重力]]||align="right"|73.5||align="right"|19,800||1962||1967||特定||||
|安波川
|安波川
|-
|-
|安波ダム
| align=right|86.0
| align=right|18,600
|[[重力式コンクリートダム|重力式]]
|1971
|1982
|-
|-
|-
|鳥取||[[千代川]]||袋川||殿ダム||[[ロックフィルダム|ロックフィル]]||align="right"|75.0||align="right"|12,400||1985||2011||特定||指定||
|安波川
|普久川
|-
|-
|普久川ダム
| align=right|41.5
| align=right|3,050
|重力式
|1971
|1982
|-
|-
|-
|鳥取||日野川||日野川||日野川堰||[[ラバーダム]]||align="right"|-||align="right"|-||-||1994||||||<ref name="hino">[http://www.cgr.mlit.go.jp/hinogawa/work/kanri.htm 国土交通省中国地方整備局日野川河川事務所『日野川河川事務所の仕事 - 河川管理』]2012年8月27日閲覧</ref>
|[[新川川]]
|新川川
|-
|-
|新川ダム
| align=right|44.5
| align=right|1,650
|重力式
|1974
|1976
|-
|- bgcolor="yellow"
|億首川
|億首川
|-
|-
|億首ダム
| align=right|39.0
| align=right|8,560
|[[台形CSGダム|台形CSG]]
|1978
|未定
|工事中
|- bgcolor="pink"
|比地川
|奥間川
|-
|-
|奥間ダム
| align=right|81.0
| align=right|3,560
|[[ロックフィルダム|ロックフィル]]
|1987
|未定
|見直し対象
|- bgcolor="yellow"
|大保川
|大保川
|-
|-
|大保ダム
| align=right|77.5
| align=right|20,050
|重力式
|1987
|2010
|工事中
|-
|-
|鳥取||日野川||法勝寺川||法勝寺川堰||ラバーダム||align="right"|-||align="right"|-||-||1986||||||<ref name="hino"/><ref>[http://www.jiti.co.jp/graph/kikou/0212yamamoto/0212yamamoto.htm 山本正司『"日野川"を地域住民に愛される川に』建設グラフ2002年12月号]2012年8月27日閲覧</ref>
|[[漢那福地川]]
|漢那福地川
|-
|-
|[[漢那ダム]]
| align=right|45.0
| align=right|8,200
|重力式
|1978
|1993
|-
|-
|-
|[[島根県|島根]]||[[斐伊川]]||斐伊川||[[尾原ダム]]||重力||align="right"|90.0||align="right"|60,800||1987||2012||特定||指定||<ref>[http://www.cgr.mlit.go.jp/izumokasen/obara/profile/circumstancesHistory.html 国土交通省中国地方整備局出雲河川事務所尾原ダム管理支所『尾原ダム 歴史』]2012年8月28日閲覧</ref>
|[[羽地大川]]
|羽地大川
|-
|-
|[[羽地ダム]]
| align=right|66.5
| align=right|19,800
|ロックフィル
|1976
|2004
|-
|-
|-
|島根||斐伊川||[[神戸川 (島根県)|神戸川]]||志津見ダム||重力||align="right"|81.0||align="right"|50,600||1983||2011||特定||指定||<ref>[http://www.cgr.mlit.go.jp/izumokasen/shitsumi/profile/circumstancesHistory.html 国土交通省中国地方整備局出雲河川事務所志津見ダム管理支所『志津見ダム 歴史』]2012年8月28日閲覧</ref>
|[[福地川]]
|福地川
|-
|-
|[[福地ダム]]
| align=right|91.7
| align=right|55,000
|ロックフィル
|1969
|1974
|-
|-
|-
|[[岡山県|岡山]]||[[吉井川]]||吉井川||坂根堰||[[堰]]||align="right"|4.9||align="right"|2,200||1966||1980||[[多目的ダム#兼用工作物|兼用]]||||<ref name="sakane"/>
|[[辺野喜川]]
|-
|辺野喜川
|岡山||吉井川||吉井川||[[苫田ダム]]||重力||align="right"|74.0||align="right"|84,100||1972||2004||特定||9条等指定||
|-
|
|-
|[[広島県|広島]]||[[芦田川]]||芦田川||[[芦田川河口堰]]||[[堰]]||align="right"|6.0||align="right"|5,460||1969||1981||特定||||
|[[辺野喜ダム]]
|-
| align=right|42.0
|広島||[[太田川]]||太田川||[[高瀬堰]]||堰||align="right"|5.5||align="right"|1,980||1970||1975||特定||||
| align=right|4,500
|-
|[[コンバインダム|複合式]]
|広島||太田川||[[温井ダム#地理|滝山川]]||[[温井ダム]]||[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]||align="right"|156.0||align="right"|82,000||1974||2001||特定||||[[ダム湖百選]]
|1975
|-
|1987
|広島||[[江の川]]||上下川||[[灰塚ダム]]||重力||align="right"|50.0||align="right"|52,100||1974||2006||特定||9条等指定||
|-
|-
|広島||江の川||江の川||[[土師ダム]]||重力||align="right"|50.0||align="right"|47,300||1966||1973||特定||||ダム湖百選
|-
|広島||芦田川||芦田川||[[八田原ダム]]||重力||align="right"|84.9||align="right"|60,000||1973||1997||特定||指定||
|-
|広島||[[小瀬川]]||小瀬川||[[弥栄ダム]]||重力||align="right"|120.0||align="right"|112,000||1971||1990||特定||指定||ダム湖百選
|-
|[[山口県|山口]]||[[佐波川]]||島地川||[[島地川ダム]]||重力||align="right"|89.0||align="right"|20,600||1972||1981||特定||||
|}
|}
<gallery>
file:Haneji Dam Okinawa.jpg|[[羽地ダム]]([[羽地大川]])
File:Fukuji Dam 1 Okinawa.jpg|[[福地ダム]]([[福地川]])
file:Kanna Main Dam.jpg|[[漢那ダム]]([[漢那福地川]])
</gallery>


==== 中国地方整備局の中止事業 ====
== 地方自治体に管理を移管したダム ==
[[ファイル:Haji-1980-r1.JPG|200px|thumb|[[広島市]]などの水がめの一つ・[[土師ダム]]([[江の川]]・[[広島県]])。中止された下土師ダム計画の事実上の後身である。]]
''[[都道府県営ダム]]の項目も参照のこと''
中国地方整備局管内における中止したダム事業は、旧建設省時代を含めると9ダム事業がある。

中国地方で国直轄のダム計画が最初に立てられた江の川では1947年に内閣経済安定本部が河川総合開発調査を実施し、江の川本流に3ダム、支流西城川に1ダムを建設する計画が1949年に立案された。このうち島根県[[邑智郡]]都賀行村(現在の邑智郡[[美郷町]]都賀行)に計画された治水と灌漑、出力11万9,000キロワットの水力発電を目的とする都賀行ダムは、総貯水容量が5億8,010万立方メートルと[[岐阜県]]の[[徳山ダム]]([[揖斐川]])に匹敵する巨大ダム計画だった。だが建設が行われると水没範囲は県境を越えて広島県三次市にまで達し、水没戸数1,614戸という[[沼田ダム計画]]([[利根川]])に匹敵する大規模な水没補償となる。このため経済性や地元への影響などが勘案され4ダム計画の調査は1952年を以って打ち切りとなり、全て白紙となった<ref name="gaiyo_93">『河川総合開発調査実績概要』第一巻 pp.93-95</ref>。しかし白紙となった事業のうち江の川本流の下土師ダム計画は後に復活し、土師ダムとして完成している。また、斐伊川水系総合開発の一環として斐伊川筋と支流の三刀屋(みとや)川に合計3ダムを建設する計画も立ち消えとなったが、尾原ダム計画は昭和47年7月豪雨により斐伊川・神戸川総合開発計画の主要事業として復活し、完成している<ref name="gaiyo_115">『河川総合開発調査実績概要』第四巻 p.115</ref>。

公共事業見直しに伴う中止事業としては、岡山三大河川の一つである高梁川の支流・[[小田川 (高梁川水系)|小田川]]に計画されていた柳井原堰がある。これは高梁川流域を襲った1967年の[[渇水]]を機に、[[倉敷市]]や[[玉野市]]などへの上水道と工業用水道供給を図ると同時に洪水流下の阻害要因となっている小田川の高梁川合流点を改修により下流へ付け替え、その新合流部に柳井原堰を建設して流域の治水と利水を図る高梁川総合開発事業の中心施設であり、完成すれば高梁川水系唯一の特定多目的ダムとなる予定だった<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.342-343</ref>。しかし水需要の変化により倉敷市など水道事業者が事業から撤退したため、治水整備の必要性はあるものの柳井原堰については2002年に中止することが決定した<ref>[http://www.cgr.mlit.go.jp/okakawa/kouhou/seibi/takahasi/files/plan/02_plan.pdf 国土交通省中国地方整備局『高梁川水系河川整備計画』第2章「高梁川水系の概要」]2012年8月27日閲覧</ref>。


一方、太田川本流に計画されていた吉和郷ダムは、[[1975年]](昭和50年)策定の太田川水系工事実施基本計画において温井ダムと共に太田川の治水・利水を担う役割を持っていたが、調査のみで立ち消えとなった。ところが2005年の[[平成17年台風第14号|台風14号]]で太田川水系が大きな被害を受けたのを機に治水計画の見直しが検討された。中国地方整備局の諮問機関である太田川河川整備懇談会では治水・利水の新指針となる太田川水系河川整備計画策定作業において、温井ダム以外は[[電力会社管理ダム|発電用ダム]]しかない太田川水系既設ダム群([[立岩ダム|立岩]]、[[立岩ダム|鱒溜]]、[[樽床ダム|樽床]]、[[王泊ダム|王泊]]、[[宇賀ダム|宇賀]])の運用改善検討に加え、太田川本流を始め滝山川、柴山川などの主要支流における治水目的を持つ新規のダム建設について可否を検討した。過去の豪雨における降雨特徴や流域における宅地の分布状況、環境や景観への影響などを参考に検討した結果、台風14号の主要な降雨地帯でもある太田川本流や柴山川、滝山川といった上流域北西部・南西部が建設に有利との見解をまとめた<ref>[http://www.cgr.mlit.go.jp/ootagawa/plan2/pdf/0703.pdf 第7回太田川河川整備懇談会『洪水調節施設の調査・検討について』国土交通省中国地方整備局太田川河川事務所]2012年8月27日閲覧。</ref>。建設が有利とされた太田川上流域にかつての吉和郷ダム計画地点があることから、吉和郷ダム計画復活を匂わせる新聞報道もなされた<ref name="yoshiwago">[[中国新聞]]2008年3月26日記事</ref>が、現状では計画の復活があるかは未定である。
建設省・国土交通省が建設したダムの中には、完成後'''所在する[[地方自治体]]に移管したダムがある'''。例外は'''小瀬川ダム'''([[小瀬川]])で、建設予定地が[[広島県]]と[[山口県]]の県境であるため、河川管理者である両県の利害が一致せず事業が滞ったため、建設省に事業を委託。施工を行ったという経緯がある。その他のダムについては戦後すぐに計画されたものが多く、元来自治体が計画していたものをその後[[国土総合開発法]]の施行によって[[河川総合開発事業|特定地域総合開発計画]]の対象地域となったことで、建設省が事業の重要性から建設したというものが大半を占める。


{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:small;"
{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!{{Nowrap|所在}}<br />
!水系名
!水系<br />
!一次<br />支川名<br />(本川)
!二次<br />支川名
!河川<br />
!三次<br />支川名
!ダム<br />
!{{Nowrap|型式}}<br />
!ダム名
!高<br />(m)
!高<br />
!総貯水<br/>容量<br />(千m&sup3;)
!総貯水容量<br />
!{{Nowrap|分類}}<br />
!型式
!着手<br />(年)
!水特法<br />
!完成<br />(年)
!{{Nowrap|備考}}<br />
!出典<br />
!移管先
|-
|-
|島根||斐伊川||斐伊川||旧尾原ダム||重力||align="right"|75.0<br/>84.0||align="right"|46,100<br/>73,200||||||上段はA案<br/>下段はB案||<ref name="gaiyo_115"/>
|[[岩木川]]
|岩木川
|-
|-
|目屋ダム
| align=right|58.0
| align=right|39,000
|[[重力式コンクリートダム|重力式]]
|1950
|1959
|[[青森県]]
|-
|-
|島根||斐伊川||三刀屋川||掛合ダム||-||align="right"|-||align="right"|-||||||||<ref name="gaiyo_115"/>
|[[名取川]]
|[[広瀬川 (宮城県)|広瀬川]]
|[[大倉川 (宮城県)|大倉川]]
|-
|[[大倉ダム]]
| align=right|82.0
| align=right|28,000
|[[マルチプルアーチダム|多連式アーチ]]
|1956
|1961
|[[宮城県]]
|-
|-
|島根||斐伊川||斐伊川||川手ダム||-||align="right"|-||align="right"|-||||||||<ref name="gaiyo_115"/>
|[[雄物川]]
|[[玉川 (秋田県)|玉川]]
|-
|-
|[[鎧畑ダム]]
| align=right|58.5
| align=right|51,000
|重力式
|1952
|1957
|[[秋田県]]
|-
|-
|島根||江の川||江の川||段原ダム||重力||align="right"|38.0||align="right"|15,000||||||||<ref name="gaiyo_93"/>
|雄物川
|皆瀬川
|-
|-
|皆瀬ダム
| align=right|66.5
| align=right|31,600
|[[ロックフィルダム|ロックフィル]]
|1957
|1963
|秋田県
|-
|-
|島根||江の川||江の川||都賀行ダム||重力||align="right"|79.0||align="right"|580,100||||||||<ref name="gaiyo_93"/>
|[[由良川]]
|由良川
|-
|-
|大野ダム
| align=right|61.4
| align=right|28,550
|重力式
|1953
|1961
|[[京都府]]
|-
|-
|岡山||[[高梁川]]||[[小田川 (高梁川水系)|小田川]]||柳井原堰||堰||align="right"|5.9||align="right"|4,800||特定||||||<ref>[http://damnet.or.jp/Dambinran/binran/Hozon/HzKietaFr_41.html 『ダム便覧』柳井原堰]2012年8月27日閲覧</ref>
|[[斐伊川]]
|斐伊川
|-
|-
|[[三成ダム]]
| align=right|36.0
| align=right|3,869
|[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]
|1950
|1953
|[[島根県]]
|-
|-
|広島||江の川||西城川||木屋原ダム||重力||align="right"|40.5||align="right"|23,263||||||||<ref name="gaiyo_93"/>
|[[小瀬川]]
|小瀬川
|-
|-
|[[小瀬川ダム]]
| align=right|49.0
| align=right|11,400
|重力式
|1956
|1964
|[[広島県]]・[[山口県]]
|-
|-
|広島||江の川||江の川||下土師ダム||重力||align="right"|45.0||align="right"|55,000||||||土師ダムの前身||<ref name="gaiyo_93"/>
|[[佐波川]]
|佐波川
|-
|-
|[[佐波川ダム]]
| align=right|54.0
| align=right|24,600
|重力式
|1952
|1955
|山口県
|-
|-
|広島||太田川||太田川||吉和郷ダム||-||align="right"|-||align="right"|-||||||||<ref name="yoshiwago"/>
|[[物部川]]
|物部川
|-
|-
|永瀬ダム
| align=right|87.0
| align=right|49,090
|重力式
|1950
|1956
|[[高知県]]
|-
|[[球磨川]]
|球磨川
|-
|-
|市房ダム
| align=right|78.5
| align=right|40,200
|重力式
|1953
|1959
|[[熊本県]]
|-
|[[比謝川]]
|与那原川
|-
|-
|[[倉敷ダム]]
| align=right|33.5
| align=right|7,100
|ロックフィル
|1979
|1994
|[[沖縄県]]
|-
|[[宮良川]]
|宮良川
|-
|-
|真栄里ダム
| align=right|27.0
| align=right|2,300
|[[アースダム|アース]]
|1972
|1982
|沖縄県
|}
|}


=== 四国地方整備局 ===
== 事業を中止したダム ==
[[ファイル:Odo-2323-r1.jpg|200px|thumb|四国地方整備局管内の直轄ダムでは総貯水容量が最大の大渡ダム([[仁淀川]]・[[高知県]])]]
''[[中止したダム事業]]の項目も参照のこと''
[[ファイル:Nagayasuguchi-2122-r1.jpg|200px|thumb|2000年以降の異常気象を機に[[徳島県]]から管理が移管された[[長安口ダム]]([[那賀川]])]]
[[四国地方整備局]]管内では管理中のダムが5基、施工・[[ダム再開発事業]]中のダムが4基、合計9基のダムが管理・施工されている。なお、管内の直轄ダムの[[ダム#諸元|型式]]は全て[[重力式コンクリートダム]]であり、[[地方整備局]]では唯一である。


[[四国地方]]における直轄の河川開発は、四国最大の河川である[[吉野川]]において開始された<ref group="注">四国では香川県による[[綾川]]([[長柄ダム (香川県)|長柄ダム]])と[[香東川]]([[内場ダム]])の河川総合開発事業が戦前より手掛けられている。</ref>。[[1949年]](昭和24年)に[[内閣]][[経済安定本部]]は日本の主要10[[水系]]において、大規模[[治水]]計画の策定を旧[[建設省]]に求めた。10水系に吉野川水系も対象として挙げられ、吉野川改訂改修計画が成立する。この時に吉野川水系でもダムによる治水計画が導入され、吉野川本流に現在「四国のいのち」と称される四国最大のダム・[[早明浦ダム]]が、支流の[[銅山川 (四国)|銅山川]]に[[柳瀬ダム]]が計画された。さらに翌[[1950年]](昭和25年)には、治水のみならず[[灌漑]]や[[水力発電]]といった吉野川水系の河川総合開発計画が立案され、経済安定本部、建設省、[[農林省]](現在の[[農林水産省]])、[[通商産業省]](現在の[[経済産業省]])、[[電源開発]]、[[四国電力]]および四国四県が参加する[[吉野川#吉野川総合開発計画|吉野川総合開発計画]]が開始された<ref name="gaiyo79-89">『河川総合開発調査実績概要』第二巻 pp.79-89</ref><ref name="yoshino">[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/TPage.cgi?id=197&p=3 『ダム便覧』ダムの書誌あれこれ(20)]2012年8月30日閲覧</ref>。
計画や施工を行っていたダム事業が中止になる例も多かった。大別すると戦後の[[河川総合開発事業|特定地域総合開発計画]]で計画されたダム事業の中止と、平成に入ってからの[[公共事業]]見直しに伴うダム事業の中止がある。


[[近代]]における吉野川水系の水利用については、[[1855年]](安政2年)に[[伊予国]][[宇摩郡]]の[[庄屋]]が慢性的な水不足を解消するため[[今治藩]]三島代官所に銅山川疏水を陳情したのが発端となり、[[1914年]](大正3年)の[[旱魃]]を機に[[法皇山脈]]を貫く[[トンネル]]で銅山川の水を宇摩地方(現在の[[四国中央市]])へ導水し、灌漑に利用する計画が具体化。[[1919年]](大正8年)に[[農商務省]]が銅山川疏水の調査を発表した。その後水力発電目的も加わったが下流部の[[水利権|慣行水利権]]を持つ[[徳島県]]が[[愛媛県]]への分水に猛反対し事業は停滞、[[1936年]](昭和11年)と[[1945年]](昭和20年)、[[1947年]](昭和22年)の三度にわたる愛媛・徳島両県の分水協定を経て銅山川疏水と水源である柳瀬ダムの建設が1948年より開始された。ダム事業は当初愛媛県が事業者であったが1947年の第三次分水協定においてダムの目的に治水が加わったことから、事業は愛媛県の委託という形で建設省が施工を行い、完成後も建設省が管理することになった。柳瀬ダムは[[1953年]](昭和28年)に完成し、四国における直轄ダム第一号となる。そして銅山川疏水も実現し、98年におよぶ悲願が達成された<ref name="dozan">[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/TPage.cgi?id=125 『ダム便覧』ダムの書誌あれこれ(10)]2012年8月30日閲覧</ref><ref>[http://sct.shikokuchuo.jp/~nod/sosui-rekisi.htm 四国中央市『銅山川疏水の歴史』]2012年8月30日閲覧</ref><ref>『河川開発』第4号 pp.3-4</ref>。
前者については、[[治水|計画高水流量]]を有効に制御するために[[テネシー川流域開発公社]](TVA)方式である多数のダムを本流・支流に建設する方針を採っていた。こうした中で複数の河川において複数のダム地点が選定され、計画のための調査が行われた。だが、大抵の場合貯水容量の点や水没物件のバランスが取れなかったり、あるいは地質的に不適当であると判断されて中止となっている。最終的には二、三箇所の地点に集約されて建設された。こうしたケースは[[利根川]]や[[吉野川]]、[[江の川]]などで見られたが、[[熊野川]]のように全ての計画が白紙となった例もある。


吉野川総合開発計画には愛媛県宇摩地方と同様に慢性的な水不足に悩む[[香川県]]への導水事業・[[香川用水]]計画も含まれていた。しかし慣行水利権を有し、かつ吉野川の水害に古くから悩まされる徳島県は過度の吉野川からの分水に猛反発し、計画の進捗が滞る。この間事業遅延を嫌った四国電力が計画から離脱し独自の河川開発を企図。吉野川総合開発の一翼を担う[[穴内川ダム]](穴内川)と[[大森川ダム]](大森川)を水力発電単独目的で着手したことで、経済安定本部が立案した当初計画は瓦解した。暫く停滞していた計画が再始動するのは[[高度経済成長]]期を迎え水道需要が急増した[[1960年]](昭和35年)、四国地方開発促進法が制定されてからである。早明浦ダムと[[池田ダム]](吉野川)を主軸とした治水・利水の総合開発が再検討されて[[1966年]](昭和41年)2月吉野川総合開発計画がようやく成立。さらに同年11月には[[水資源開発促進法]]に基づく指定河川となり[[吉野川#吉野川水系水資源開発基本計画|吉野川水系水資源開発基本計画]]が成立、早明浦・池田の両ダムと香川用水事業は水資源開発公団(現在の[[独立行政法人]][[水資源機構]])が担当することになり2ダムは建設省より事業が移管された。以後公団により吉野川水系の総合開発が進められ早明浦、池田の両ダムを始め[[新宮ダム]]と[[富郷ダム]](銅山川)、香川用水、吉野川北岸用水、高知分水などが完成する<ref name="gaiyo79-89"/><ref name="yoshino"/><ref>『水資源開発公団30年史』pp.254-270</ref>。何れも水資源機構が管理しており、吉野川水系における直轄ダムは柳瀬ダムが唯一である。
後者については、公共事業に対する国民の厳しい視線が注がれる中で今まで聖域に近かったダム事業にも見直しの手が政府によって進められた。この時期になるとダム事業は様々な理由によって長期化の度合いを深め、それに伴い事業費も急騰していった。こうしたダム事業に対して批判が集中、[[徳島県]]の'''細川内ダム'''事業が[[第2次橋本内閣]]の[[建設大臣]]・[[亀井静香]]によって[[1996年]](平成8年)に中止が決断されて以降建設省によるダム事業の総点検が実施され、[[小泉純一郎]]内閣による「[[聖域なき構造改革]]」・「[[骨太の方針]]」によって事業が滞っている多くの直轄ダム事業が中止となった。また、[[地方自治体]]の財政事情や強固な官民一体となった反対運動も背景にあり、[[北海道]]の'''赤岩ダム'''や[[群馬県]]の'''沼田ダム'''はその好例である。

{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:small;"
吉野川水系以外では愛媛県の[[肱川]]水系と[[重信川]]水系、高知県の[[仁淀川]]水系と渡川([[四万十川]])水系で直轄ダムが建設された。肱川では[[1959年]](昭和34年)に本流中流部に鹿野川ダムが治水と水力発電を目的に完成したが肱川流域の人口増加に伴い治水安全度の向上に加え、[[いよかん]]などの特産地である[[佐田岬半島]]や[[宇和島市]]を始めとした[[宇和海]]沿岸地域の慢性的な水不足解消を目的に肱川上流部に[[野村ダム]]を[[1982年]](昭和57年)に建設、ダム湖より[[用水路]]を通じて灌漑と上水道用水を供給した。また県都・[[松山市]]を流域に持つ重信川の支流・[[石手川]]に[[1972年]](昭和47年)[[石手川ダム]]が完成、松山市の重要な水がめとなっている<ref name="ehime">[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/TPage.cgi?id=306 『ダム便覧』ダムの書誌あれこれ(34)]2012年8月30日閲覧</ref>。一方多雨地帯である高知県では大雨や[[台風]]による水害の被害が著しいことから、治水重視のダム事業が展開された。仁淀川では本流に水系最大かつ直轄ダムでは最も総貯水容量が多い大渡ダムを[[1986年]](昭和61年)に完成させ、仁淀川の治水と水力発電に加え、県都・[[高知市]]の水がめとして運用されている。また四万十川は本流にダムを建設できる適地がないため、[[四万十市]]で合流する支流・中筋川流域の総合開発を行い[[1998年]](平成10年)に中筋川ダムが完成。中筋川・四万十川の治水のみならず四万十市や[[土佐清水市]]、[[宿毛市]]の水源として重要な役割を担っている<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/TPage.cgi?id=345 『ダム便覧』ダムの書誌あれこれ(38)]2012年8月30日閲覧</ref>。

現在施工中のダム事業は4基あり、うちダム再開発事業が2基ある。1950年の[[国土総合開発法]]に基づく[[那賀川]][[河川総合開発事業#特定地域総合開発計画|特定地域総合開発計画]]の中心事業として[[1955年]](昭和30年)に完成した[[長安口ダム]](那賀川)は徳島県が管理する[[多目的ダム]]であったが、2000年代に入り水害・[[渇水]]が那賀川水系で頻発したことから(後述)[[2007年]](平成19年)にダムは徳島県より国土交通省に移管され、現在はダム機能の強化を目的とした長安口ダム改造事業に着手している<ref>[http://www.skr.mlit.go.jp/nakagawa/ 国土交通省四国地方整備局那賀川河川事務所『長安口ダムの改造』]2012年8月29日閲覧</ref>。また1959年に完成した鹿野川ダムは、現在[[治水ダム]]として再開発事業を行っている。これは肱川が支流数475河川と日本では[[淀川]]、[[信濃川]]、[[利根川]]に次ぐ数を有し<ref>『河川便覧 2004』pp.90-95</ref>、かつ流域最大の都市・[[大洲市]]が元々天然の[[遊水池]]となっている場所を都市化しているため水害が絶えず、鹿野川・野村両ダムの完成後も治水計画を上回る水害が発生しているためである<ref name="ehime"/>。鹿野川ダムは完成後愛媛県に管理が移管されていたが、再開発事業実施に伴い[[2006年]](平成18年)に再び直轄管理に戻されている<ref>[http://www.skr.mlit.go.jp/yamatosa/gaiyou/kanogawa/pamphlet/01.html 国土交通省四国地方整備局山鳥坂ダム工事事務所『鹿野川ダムの概要』]2012年8月30日閲覧</ref>。これに関連し、鹿野川ダム直下で肱川に合流する河辺川に現在[[山鳥坂ダム|山鳥坂(やまとさか)ダム]]が施工中である。1986年の計画当時は[[多目的ダム#特定多目的ダム|特定多目的ダム]]であったが<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.372-373</ref>、現在は規模を縮小し治水ダムとして施工しているが環境破壊として[[市民団体]]の反対運動が強く、中筋川総合開発事業の一環である高知県の横瀬川ダム(横瀬川)と共に国土交通省によるダム事業再検証の対象となり、事実上凍結している<ref name="minaoshi"/>。ダム事業と地元との軋轢については宇摩地方の住民の悲願を叶えた柳瀬ダムで、補償交渉前に工事を開始した建設省に対し移転住民が反発、さらに当時の愛媛県土木部長が補償交渉の席上ダム湖が将来的にボートも浮かぶ観光地になることを話したところ、「故郷を失う我らの前で、ボートとは何だ」と住民たちの感情を逆撫でしたエピソードが残っている<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/TPage.cgi?id=246 『ダム便覧』文献にみる補償の精神【14】]2012年8月30日閲覧</ref>。

なお、管内の[[一級河川]]では[[物部川]]水系と[[土器川]]水系で直轄ダムが建設されていない。このうち物部川水系は1950年より物部川総合開発事業が開始され、最上流部に位置する水系最大のダム・永瀬ダム(物部川)を建設省が、下流の杉田・吉野ダムを高知県が施工し永瀬ダムは[[1957年]](昭和32年)に完成した。完成後ダムの管理は高知県に移管されている<ref name="nagase">[http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/1701042/rekishi.html 高知県中央東土木事務所永瀬ダム管理事務所『永瀬ダム建設の歴史』]2012年8月30日閲覧</ref>。土器川水系では支流の前の川に前の川ダムが計画されていたが、中止されている(後述)。

{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!所在<br/>
!事業者
!水系<br />
!所在地
!河川<br />
!水系
!ダム<br />
!一次<br />支川<br />(本川)
!二次<br />支川
!型式<br/>
!三次<br />支川
!{{Nowrap|高さ}}<br />
!{{Nowrap|総貯水容量}}<br />
!ダム
!着工<br />
!型式
!堤高<br/>(m)
!完成<br/>
!分類<br/>
!総貯水<br/>容量<br/>(千m&sup3;)
![[水源地域対策特別措置法|水特法]]<br />
!備考<br />
|-bgcolor="yellow"
|[[徳島県|徳島]]||[[那賀川]]||那賀川||[[長安口ダム]]||[[重力式コンクリートダム|重力]]||align="right"|85.5||align="right"|54,278||1950||1955||||||[[ダム再開発事業|再開発]]中
|-
|-
|[[愛媛県|愛媛]]||[[重信川]]||[[石手川]]||[[石手川ダム]]||重力||align="right"|87.0||align="right"|12,800||1966||1972||特定||||
| rowspan="2"|[[北海道開発局]]
|-bgcolor="yellow"
| rowspan="2"|[[北海道]]
|愛媛||[[肱川]]||肱川||鹿野川ダム||重力||align="right"|61.0||align="right"|48,200||1953||1959||特定||||再開発中
|[[鵡川]]
|鵡川
|-
|-
|赤岩ダム
|[[重力式コンクリートダム|重力式]]
| align=right|103.0
| align=right|350,000
|-
|-
|愛媛||肱川||肱川||[[野村ダム]]||重力||align="right"|60.0||align="right"|16,000||1971||1982||特定||指定||[[ダム湖百選]]
|[[石狩川]]
|石狩川
|-
|-
|[[石狩ダム計画|石狩ダム]]
|[[中空重力式コンクリートダム|中空重力式]]
| align=right|118.2
| align=right|147,000
|-
|-
|愛媛||[[吉野川]]||[[銅山川 (四国)|銅山川]]||[[柳瀬ダム]]||重力||align="right"|55.5||align="right"|32,200||1948||1953||||||
| rowspan="8"|東北[[地方整備局]]<br/>(東北地方建設局)
|-bgcolor="pink"
|[[青森県]]
|愛媛||肱川||河辺川||[[山鳥坂ダム]]||重力||align="right"|103.0||align="right"|24,900||1986||未定||[[治水ダム|治水]]||指定||事業見直し
|[[高瀬川]]
|高瀬川
|([[小川原湖]])
|-
|小川原湖総合開発<ref>高瀬川[[河口堰]]と高瀬川[[放水路]]河口堰を建設し小川原湖を[[多目的ダム]]化・淡水化する計画。</ref>
|[[可動堰]]
| align=right|2.9
| align=right|153,800
|-
|-
|[[高知県|高知]]||[[仁淀川]]||仁淀川||大渡ダム||重力||align="right"|96.0||align="right"|66,000||1966||1986||特定||||
| rowspan="2"|[[宮城県]]
|[[鳴瀬川]]
|鳴瀬川
|-
|-
|内野ダム
|ロックフィル
| align=right|65.0
| align=right|20,000
|-
|-
|高知||[[四万十川|渡川]]||中筋川||中筋川ダム||重力||align="right"|73.1||align="right"|12,600||1982||1998||特定||||
|鳴瀬川
|-bgcolor="pink"
|田川
|高知||渡川||横瀬川||横瀬川ダム||重力||align="right"|72.1||align="right"|7,300||1990||未定||特定||||事業見直し
|-
|
|}

|田川第二ダム
==== 四国地方整備局の中止事業 ====
|重力式
[[ファイル:Yoshinogawa Daijuzeki.jpg|200px|thumb|[[徳島市]]の[[住民投票]]を契機に可動堰化が中止された[[吉野川第十堰]]([[吉野川]]・[[徳島県]])]]
| align=right|43.0
四国地方整備局管内における中止したダム事業は、旧建設省時代を含めると11ダム事業に上る。大別すると吉野川総合開発計画の策定において計画され、中止もしくは立ち消えとなった事業と、[[1990年代]]以降の[[公共事業]]見直し政策において中止となった事業に分けられる。
| align=right|2,850

前者については、1949年の吉野川改訂改修計画において早明浦ダムが初めて計画された際に現在の[[早明浦ダム#さめうら湖|さめうら湖]]を二分割する形でダム計画が立案され、現在吉野川と[[瀬戸川]]が合流する直下に桃ヶ谷ダム(吉野川)を計画したが、早明浦ダム計画に統合された<ref name="kaitei">『吉野川改訂改修計画』p.3</ref>。その後吉野川総合開発計画において、吉野川水系のダム計画は吉野川本流に早明浦ダムと、[[名勝]]である[[小歩危]]出口付近に計画された[[小歩危ダム計画|小歩危ダム]]を軸として銅山川には現在の賢見温泉付近に[[新宮ダム#岩戸ダム計画|岩戸ダム]]を建設し、それらの水を池田ダムより香川県へ導水するというものであった。小歩危・岩戸の2ダムは何れも現在の早明浦ダムに匹敵する規模の貯水容量を有し、殊に小歩危ダムは原案の通り完成すれば小歩危、[[大歩危]]のみならず県境を越えて現在の高知県[[長岡郡]][[本山町]]中心部まで水没する長大な人造湖を形成する。その後事業者の建設省、経済安定本部、電源開発により様々な案が提出、検討されたがこの中には小歩危・岩戸両ダムの統合案として大佐古ダム計画という超巨大ダム計画も存在した。これは吉野川と[[祖谷川]]合流点付近に高さ146[[メートル]]のダムを建設するものだが、貯水容量は実に6億7,600万[[立方メートル]]と現在日本最大の人造湖を擁する[[岐阜県]]の[[徳山ダム]]([[揖斐川]])を凌駕する規模となる<ref name="gaiyo_83">『河川総合開発調査実績概要』第二巻 pp.87-89</ref>。しかし最終的には早明浦・池田の両ダムを軸にした総合開発計画に修正され、小歩危ダム計画は電源開発が水力発電専用に規模を大幅に縮小したものの大歩危・小歩危水没に対する反対が強く、[[1971年]](昭和46年)[[9月16日]]の第56回電源開発調整審議会において小歩危ダムを取水元とする吉野川第一・第二発電所計画が中止されたことで、ダム事業も中止された<ref>『電発30年史』p.541</ref>。また岩戸ダム計画は自然消滅したが、ダム上流部に新宮ダムが1975年完成している。

後者については那賀川本流上流部に計画された[[長安口ダム#細川内ダム|細川内(ほそごうち)ダム]]と吉野川本流下流部に計画された[[吉野川第十堰]]の[[堰#可動堰|可動堰]]化が特に知られている。細川内ダムは1972年に徳島県[[那賀郡]][[木頭村]](現在の那賀郡[[那賀町]])に計画された特定多目的ダムであるが、計画発表当初より木頭村が官民一体で反対運動を繰り広げ、特に[[1994年]](平成6年)より村長に就任した[[藤田恵]]は[[条例]]の制定などを通して激しいダム反対運動を指揮した。この結果1998年に[[第2次橋本内閣]]の[[建設大臣]]だった[[亀井静香]]が事業凍結の方針を示し、[[2000年]](平成12年)にはダム事業が中止された<ref>[http://www.skr.mlit.go.jp/nakagawa/ 国土交通省四国地方整備局那賀川河川事務所『那賀川水系治水略年表』]</ref><ref>[http://www.kitomura.jp/tusin_box/0708_77/tamu77.html 細川内ダム反対運動資料館]2012年8月29日閲覧</ref>。細川内ダムの中止はそれまで「聖域」とされたダム事業の在り方に対して一大転機をもたらし、以後ダム事業の中止が急増する。しかしダム中止後の那賀川流域では洪水・渇水被害が頻発<ref>[http://www.skr.mlit.go.jp/nakagawa/ 国土交通省四国地方整備局那賀川河川事務所『洪水被害』]2012年8月29日閲覧</ref>。特に渇水については細川内ダム中止後の2000年からほぼ毎年発生し、[[2005年]](平成17年)には工業用水・農業用水が完全に断水し取水制限も112日間におよぶなど流域に深刻な被害と経済損失をもたらした<ref>[http://www.skr.mlit.go.jp/nakagawa/ 国土交通省四国地方整備局那賀川河川事務所『渇水被害』]2012年8月29日閲覧</ref>。このことが長安口ダムを国土交通省に移管させた一因となっている。

吉野川第十堰については、[[江戸時代]]に建設された現在の[[堰#固定堰|固定堰]]が老朽化し、かつ[[1976年]](昭和51年)に施行された河川管理施設等構造令の整備基準に合致せず洪水流下の阻害要因となっていることから直下流に可動堰を建設して治水機能を強化する目的で、[[1988年]](昭和63年)より事業に着手した<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.362-363</ref>。しかし吉野川の[[環境破壊]]や税金の無駄遣いなどを理由に姫野雅義など[[市民団体]]が反対運動を繰り広げ、[[日本共産党]]が組織的に関与・支援するなど運動が盛り上がった<ref>[http://jcpt.jp/h_hp/html/zennei9907.html 『前衛』1999年7月号・塀本信之『建設省を追い詰めた市民の審判 巨大開発中止を迫る市民運動と日本共産党の選挙』]2012年8月29日閲覧</ref>。こうした反対運動は2000年に[[徳島市]]が堰建設の可否を問う[[住民投票]]実施に発展し、結果建設反対が10万人以上の票を集め大勢を占めたことで徳島市が反対姿勢に転換。[[2002年]](平成14年)には建設反対を公約とした[[大田正]]が[[徳島県知事]]に就任したことで国土交通省も事業の凍結を発表し、[[2010年]](平成22年)[[前原誠司]][[国土交通大臣]](当時)により中止が決定した<ref>[http://www.nacsj.or.jp/katsudo/yoshinogawa/ 日本自然保護協会『吉野川第十堰問題・河口干潟の保全』]2012年8月29日閲覧</ref><ref name="doboku">[http://www.nikkenren.com/archives/doboku/ce/kikanshi0010/tokusyu_05.htm 社団法人日本土木工業協会『建設業界』2000年10月号・高橋祥起『公共事業と住民投票』]2012年8月29日</ref>。住民自治と公共事業の在り方に一石を投じた事業であるが、住民投票で賛成派が棄権し、かつ徳島市以外の流域市町村では30万人以上の賛成署名が集まっているのに徳島市の住民投票だけで決定した、また[[朝日新聞]]など[[マスコミ]]の報道姿勢が反対派に肩入れしているなどの問題点が賛成派から指摘されている<ref name="doboku"/><ref>[http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdf/topics/tanis.htm 財団法人日本ダム協会『月刊ダム日本』1999年6月号・谷村喜代司『洪水に対して安全な河口堰をめざして』]2012年8月29日閲覧</ref>。

細川内ダム、吉野川第十堰以外では香川県を流れる土器川支流の前の川の計画されていた前の川ダムが中止されている。[[1990年]](平成2年)の土器川水系工事実施基本計画において計画が立案された特定多目的ダムであるが、財政的な問題があり2000年に事業が休止された。ところが慢性的な水不足に悩む香川県内の流域自治体から事業再開の要望が強く出され、再度検討されたが利水目的を実施する目処が立たず、[[2003年]](平成15年)に事業が中止された<ref>[http://www.mlit.go.jp/river/basic_info/jigyo_keikaku/gaiyou/seibi/pdf/dokigawa84-1.pdf 国土交通省四国地方整備局『土器川水系河川整備基本方針』]2012年8月29日閲覧</ref>。

{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!{{Nowrap|所在}}<br />
| rowspan="2"|[[秋田県]]
!水系<br />
|[[雄物川]]
!河川<br />
|役内川
!ダム<br />
|-
!{{Nowrap|型式}}<br />
|-
!高さ<br />
|川井ダム
!総貯水容量<br />
|重力式
!{{Nowrap|分類}}<br />
| align=right|52.0
!水特法<br />
| align=right|43,000
!{{Nowrap|備考}}<br />
!出典<br />
|-
|-
|徳島||吉野川||銅山川||[[新宮ダム#岩戸ダム計画|岩戸ダム]]||重力||align="right"|136.0||align="right"|289,000||||||||<ref name="gaiyo_83"/>
|雄物川
|皆瀬川
|成瀬川
|-
|肴沢ダム
|-
| align=right|-
| align=right|-
|-
|-
|徳島||吉野川||吉野川||大佐古ダム||重力||align="right"|146.0||align="right"|676,000||||||||<ref name="gaiyo_83"/>
|[[山形県]]
|[[最上川]]
|[[鮭川]]
|[[真室川]]
|-
|釜淵ダム
|重力式
| align=right|45.0
| align=right|25,430
|-
|-
|徳島||吉野川||銅山川||大野ダム||重力||align="right"|65.0||align="right"|41,500||||||||<ref name="gaiyo_83"/>
| rowspan="2"|[[福島県]]
|[[阿賀野川]]
|[[日橋川]]
|[[猪苗代湖]]
|-
|日橋川上流総合開発<ref>十六橋水門改築による猪苗代湖の[[治水ダム]]化。</ref>
|[[水門]]
| align=right|5.2
| align=right|540,000
|-
|-
|徳島||吉野川||吉野川||川崎ダム||重力||align="right"|29.6||align="right"|4,200||||||||<ref name="gaiyo_83"/>
|阿賀野川
|[[只見川]]
|[[伊南川]]
|-
|大桃ダム
|重力式
| align=right|74.0
| align=right|13,881
|-
|-
|徳島||吉野川||吉野川||[[小歩危ダム計画|小歩危ダム]]||重力||align="right"|126.0||align="right"|307,500||||||||<ref name="gaiyo_83"/>
| rowspan="17"|関東地方整備局<br/>(関東地方建設局)
|[[茨城県]]
|[[利根川]]
|利根川
|-
|-
|稲戸井調整池総合開発
|掘込式貯水池
| align=right|10.5
| align=right|21,400
|-
|-
|徳島||那賀川||那賀川||[[長安口ダム#細川内ダム|細川内ダム]]||重力||align="right"|102.0||align="right"|60,400||特定||||||<ref name="nenkan174">『ダム年鑑 1991』p.174-175</ref>
|[[栃木県]]
|利根川
|[[渡良瀬川]]
|-
|-
|[[渡良瀬遊水地|渡良瀬第二貯水池]]総合開発
|掘込式貯水池
| align=right|4.8
| align=right|10,500
|-
|-
|徳島||吉野川||吉野川||[[吉野川第十堰]]改造||[[堰]]||align="right"|6.2||align="right"|6,500||||||[[堰#可動堰|可動堰]]化||<ref name="nenkan174"/>
| rowspan="10"|[[群馬県]]
|利根川
|利根川
|-
|-
|[[沼田ダム計画|沼田ダム]]
|重力式
| align=right|125.0
| align=right|800,000
|-
|-
|[[香川県|香川]]||[[土器川]]||前の川||前の川ダム||重力||align="right"|58.0||align="right"|5,300||特定||||||<ref>『ダム年鑑 1996』pp.200-201</ref>
|利根川
|赤谷川
|-
|-
|[[川古ダム計画|川古ダム]]
|重力式
| align=right|160.0
| align=right|76,000
|-
|-
|高知||吉野川||吉野川||敷岩ダム||重力||align="right"|33.0||align="right"|36,500||||||||<ref name="gaiyo_83"/>
|利根川
|[[吾妻川]]
|[[白砂川]]
|-
|広地ダム
|-
| align=right|-
| align=right|-
|-
|-
|高知||吉野川||吉野川||永淵ダム||重力||align="right"|26.0||align="right"|6,600||||||||<ref name="gaiyo_83"/>
|利根川
|吾妻川
|温川
|-
|鳴瀬ダム
|-
| align=right|-
| align=right|-
|-
|-
|高知||吉野川||吉野川||桃ヶ谷ダム||-||align="right"|-||align="right"|-||||||[[早明浦ダム]]の前身||<ref name="kaitei"/>
|利根川
|}
|吾妻川

|[[四万川]]
=== 九州地方整備局 ===
|-
[[ファイル:Tsuruta-2861-r1.JPG|200px|thumb|九州地方整備局管内最大の直轄ダム・[[鶴田ダム]]([[川内川]]・[[鹿児島県]])。現在[[ダム再開発事業|再開発]]中。]]
|高沼ダム
[[File:Hachinosujyo.JPG|200px|thumb|日本の[[公共事業]]補償に大きな影響を与えたダム反対運動・[[下筌ダム#蜂の巣城紛争|蜂の巣城紛争]]の舞台、[[下筌ダム]](津江川・[[大分県]])右岸[[熊本県]]側にある蜂の巣城跡。]]
|重力式
[[九州地方整備局]]管内では既設ダム・堰16基、工事中・[[ダム再開発事業|再開発]]中ダム6基の合計22基を直轄管理・施工している。なお[[沖縄県]]は[[沖縄振興特別措置法]]に基づき国直轄河川事業は[[内閣府]][[沖縄総合事務局]]が担当しているため、九州地方整備局の管轄外である(後述)。
| align=right|75.0

| align=right|28,700
[[台風]]の常襲地帯である[[九州地方]]は、古くから[[加藤清正]]や[[成富茂安]]などによる[[治水]]事業が手掛けられており、流域の治水に寄与していた。だが[[1953年]](昭和28年)6月に九州北部を襲った[[梅雨前線]]豪雨・[[昭和28年西日本水害]]はそれら営々と積み重ねた治水事業をご破算にし、死者・行方不明者1,001名を出す戦後九州最悪の水害となった。この水害を契機に、旧建設省や九州の各県は[[河川総合開発事業]]を計画し、[[多目的ダム]]の建設に乗り出した。

九州最大の河川である[[筑後川]]水系では[[1949年]](昭和24年)に筑後川改訂改修計画が策定され、筑後川支流の[[玖珠川]]と津江川に治水ダムを建設する計画が立案された<ref>『筑後川五十年史』pp.226-227</ref>が、昭和28年西日本水害を受けて全面改訂され、[[1958年]](昭和32年)に[[筑後川#筑後川水系治水基本計画|筑後川水系治水基本計画]]を定め、大規模[[堤防]]建設・[[放水路]]整備などと共に多目的ダムによる治水計画が加わり、検討の結果筑後川本流に[[松原ダム]]と支流津江川に[[下筌ダム|下筌(しもうけ)ダム]]が計画され、[[1972年]](昭和47年)に完成した<ref>『筑後川五十年史』pp.197-213</ref>。だがこの時期は[[高度経済成長]]期に当たり、九州最大の都市・[[福岡市]]を中心とする[[福岡都市圏]]の人口増加や[[北九州工業地帯]]の拡充、さらに[[筑後平野]]の農地拡大による農業用水不足といった[[利水]]に対する問題が発生。これに対処すべく[[1964年]](昭和39年)筑後川水系は[[水資源開発促進法]]に基づく水資源開発水系に指定され、以降水資源開発公団(現在の[[独立行政法人]][[水資源機構]])が河川総合開発を主に担当し[[江川ダム|江川]](小石原川)、[[寺内ダム|寺内]](佐田川)、[[筑後大堰]](筑後川)、[[大山ダム|大山]]([[赤石川 (大分県)|赤石川]])といったダム・堰を施工・完成させた<ref>『水資源開発公団30年史』pp.272-292</ref>。一方建設省は公団事業とは別に筑後川と[[佐賀県]]を流れる[[嘉瀬川]]を連結する導水路・佐賀導水事業に[[1974年]](昭和49年)より着手した。これは筑後川、城原(じょうばる)川、巨勢川、嘉瀬川を[[水路]]でつないで[[内水氾濫]]防除を含む[[洪水調節]]と、流域市町村に対する[[上水道]]供給、さらに[[水質汚濁]]が進行した[[佐賀市]]内の河川へ河川浄化用水を供給するなどの目的を持った、河川の流量を[[用水路]]で調節する「流況調整河川事業」<ref group="注">流況調整河川には[[北千葉導水路]]や[[利根運河|野田導水路]](利根川・江戸川)があり、事業再検証中の[[霞ヶ浦導水事業]](利根川・那珂川)もこれに該当する。</ref>である。佐賀導水事業の中で、巨勢川や周辺の中小河川の洪水を貯留し、[[ポンプ]]で嘉瀬川へ排水する治水目的を有した巨勢川調整池が建設され、[[2009年]](平成21年)導水路と共に完成した<ref name="dosui">[http://www.qsr.mlit.go.jp/chikugo/torikumi/11-sagadou/dousui/02dosui_chisui.htm 国土交通省九州地方整備局筑後川河川事務所『佐賀導水路』巨勢川調整池]2012年9月4日閲覧</ref>。また[[日田市]]への上水道供給や筑後川の流量改善を図る目的で[[1977年]](昭和52年)より松原・下筌ダム再開発事業が行われ、[[1986年]](昭和61年)に完成している<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=2798 『ダム便覧』松原ダム(再)]2012年9月5日閲覧</ref>。

昭和28年西日本水害で大きな被害をもたらした筑後川以外の[[遠賀川]]、[[矢部川]]、[[山国川]]、嘉瀬川、[[六角川]]、[[菊池川]]水系といった[[一級河川]]では、上水道・[[工業用水道]]需要の増大に対処するため、利水目的の総合開発を治水事業と一体化して促進させる目的で建設省、[[農林省]](現在の[[農林水産省]])、[[通商産業省]](現在の[[経済産業省]])の[[地方支分部局]]、九州・山口経済連合会と地元経済団体、そして[[福岡県]]・佐賀県・[[熊本県]]・[[大分県]]が北部九州水資源開発協議会を1963年に結成。北部九州を流れる7水系の河川総合開発指針である北部九州水資源開発マスタープランを[[1969年]](昭和44年)に策定した。マスタープランで提示されたダム計画候補の中で、後に治水事業計画である工事実施基本計画にも明記され直轄事業として施工、完成したダム事業としては遠賀川河口堰(遠賀川)、[[耶馬溪ダム]](山移川)、[[嘉瀬川ダム]](嘉瀬川)、六角川河口堰(六角川)、[[竜門ダム]](迫間川)があり、[[平成大堰]](山国川)を含め北部九州の治水・利水に資している<ref name="50nenshi">『筑後川五十年史』pp.578-584</ref>。これ以外では[[鹿児島県]]最大の河川である[[川内川]]に[[1965年]](昭和40年)[[鶴田ダム]]が完成、九州最大の直轄ダムとして治水のほか多目的ダムに付随する[[水力発電]]所としては出力が九州では最大の川内川第一発電所(12万キロ[[ワット]])による水力発電が行われている。また[[緑川]]には本流に緑川ダム、[[松浦川]]には支流の[[厳木川|厳木(きゅうらぎ)川]]に厳木ダムがそれぞれ完成し、流域の治水と利水に貢献している。さらに[[塩害]]防除や河川流下能力の向上を図るため堰を新築・改修する事業なども行われ、瀬高堰・松原堰(矢部川)、嘉瀬川大堰(嘉瀬川)、松浦大堰(松浦川)、六間堰([[加勢川]])が建設または改築された<ref name="setaka">[http://www.qsr.mlit.go.jp/chikugo/siryo/04-doboku/yabe_tisui/setaka/index.html 国土交通省九州地方整備局筑後川河川事務所『矢部川の治水利水施設』瀬高堰]2012年9月4日閲覧</ref><ref name="matsubara">[http://www.qsr.mlit.go.jp/chikugo/siryo/04-doboku/yabe_tisui/matsubara/index.html 国土交通省九州地方整備局筑後川河川事務所『矢部川の治水利水施設』松原堰]2012年9月4日閲覧</ref><ref name="kasegawa">[http://www.qsr.mlit.go.jp/chikugo/torikumi/01-gaiyou/kase/index.html 国土交通省九州地方整備局筑後川河川事務所『嘉瀬川について』]2012年9月4日閲覧</ref><ref name="takeo">[http://www.qsr.mlit.go.jp/takeo/html/office_03_03.html 国土交通省九州地方整備局武雄河川事務所『沿革』]2012年9月4日閲覧</ref><ref name="kase">[http://www.qsr.mlit.go.jp/kumamoto/river/kaisyu/22kasegawa/3rokkennzeki/frame3.htm 国土交通省九州地方整備局熊本河川国道事務所『加勢川改修事業』六間堰の改築]2012年9月4日閲覧</ref>。

現在施工中のダムは6基ある。このうち鶴田ダム再開発事業は川内川流域に未曾有の水害をもたらした[[平成18年7月豪雨]]により鶴田ダムの治水機能が喪失し、水害の被害を受けた下流域住民からの強い要望を受けて実施される、治水容量増加を目的とした事業である<ref>[http://www.qsr.mlit.go.jp/sendai/tsuruta-damu/kouji.html 国土交通省九州地方整備局川内川河川事務所『鶴田ダム再開発事業』]2012年9月5日閲覧</ref>。[[川辺川ダム]]([[川辺川]])は[[1967年]](昭和42年)より多目的ダムとして計画されたが水没予定地の[[球磨郡]][[五木村]]・[[相良村]]で403[[戸]]・528[[世帯]]が移転対象となることで猛烈な反対運動が長期化。地元との補償交渉は[[1996年]](平成8年)に妥結するものの[[市民団体]]や[[球磨川]][[漁業協同組合]]が反対運動を継続、さらに灌漑事業者の農林水産省や電気事業者の[[電源開発]]が事業から離脱し[[治水ダム]]事業として縮小されたものの、[[2008年]](平成20年)以降[[蒲島郁夫]][[熊本県知事]]を始め[[人吉市]]・[[八代市]]・相良村がダム建設反対に方針を転換。翌2009年には[[鳩山由紀夫内閣]]が[[マニフェスト]]に基づき川辺川ダム事業の中止を発表するなど、事業は錯綜した。現在はダム事業中止を前提にして、ダム建設中止に強く反発する五木村に対する生活再建対策事業について検討を進めている<ref>[http://www.qsr.mlit.go.jp/kawabe/ 国土交通省九州地方整備局川辺川ダム砂防事務所『川辺川ダム事業の経緯』]2012年9月5日閲覧</ref>。残る4ダム([[城原川ダム|城原川]]・本明川・[[立野ダム|立野]]・[[大分川ダム|大分川]])は何れもダム事業再検証対象ダムとなったが、大分川ダム([[七瀬川 (大分県)|七瀬川]])は事業が再開している<ref name="minaoshi"/>。ダム事業と移転住民の軋轢については1958年から[[1971年]](昭和46年)まで13年間続いた[[下筌ダム#蜂の巣城紛争|蜂の巣城紛争]]が著名である。松原・下筌ダム建設に際して建設省が取った高圧的な姿勢に室原知幸ら移転住民が反発し、下筌ダム右岸に「蜂の巣城」という[[砦]]を築いて頑強に抵抗。流血事件や法廷闘争にまで発展したこの反対運動は[[公共事業]]と[[基本的人権]]([[生存権]])の整合性を世に問い、[[水源地域対策特別措置法]](水特法)を始めとするダム関連法規の改正など河川行政に多大な影響を与えた<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=2775 『ダム便覧』下筌ダム(元)]2012年9月5日閲覧</ref>。

なお、管内の一級河川において[[大野川]]、[[番匠川]]、[[五ヶ瀬川]]、[[小丸川]]、[[大淀川]]、[[肝属川]]の各水系には直轄ダムが建設されていない。何れも流域自治体により[[多目的ダム#補助多目的ダム|補助多目的ダム]]や[[治水ダム#補助治水ダム|補助治水ダム]]といった[[国庫]]補助を受けたダム事業が小丸川を除いて何れも支流で実施されている。ただし肝属川水系には支流串良川に[[高隈ダム]]が建設されているが、同ダムは南九州[[河川総合開発事業#特定地域総合開発計画|特定地域総合開発計画]]に基づき[[大隅半島]]にある[[笠野原台地]]に対する灌漑を目的として建設された農業用ダムであり、治水目的は有していない<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=2863 『ダム便覧』高隈ダム]2012年9月5日閲覧</ref><ref>『国土総合開発特定地域の栞』pp.61-64</ref>。

{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!所在<br/>
|利根川
!水系<br />
|[[烏川]]
!河川<br />
|-
!ダム<br />
|-
!型式<br/>
|本庄ダム
!{{Nowrap|高さ}}<br />
|-
!{{Nowrap|総貯水容量}}<br />
| align=right|-
!着工<br />
| align=right|-
!完成<br/>
!分類<br/>
![[水源地域対策特別措置法|水特法]]<br />
!備考<br />
|-
|-
|[[福岡県|福岡]]||[[遠賀川]]||遠賀川||遠賀川河口堰||[[堰]]||align="right"|6.5||align="right"|11,140||1969||1983||特定||||
|利根川
|烏川
|[[鏑川]]
|-
|山口ダム
|-
| align=right|-
| align=right|-
|-
|-
|福岡||[[矢部川]]||矢部川||瀬高堰||堰||align="right"|-||align="right"|-||-||1990||||||<ref name="setaka"/>
|利根川
|烏川
|鏑川
|南牧川
|跡倉ダム
|-
| align=right|-
| align=right|-
|-
|-
|福岡||[[山国川]]||山国川||[[平成大堰]]||堰||align="right"|3.2||align="right"|278||1983||1990||特定||||
|利根川
|烏川
|[[神流川 (利根川水系)|神流川]]
|-
|[[坂原ダム]]
|重力式
| align=right|101.0
| align=right|22,000
|-
|-
|福岡||矢部川||矢部川||松原堰||[[ラバーダム]]||align="right"|-||align="right"|-||-||1998||||||<ref name="matsubara"/>
|利根川
|烏川
|神流川
|-
|[[下久保ダム|神ヶ原ダム]]
|-
| align=right|-
| align=right|-
|-
|-
|[[佐賀県|佐賀]]||[[嘉瀬川]]||嘉瀬川||嘉瀬川大堰||堰||align="right"|-||align="right"|-||-||1992||||||<ref name="kasegawa"/>
|[[埼玉県]]
|[[荒川 (関東)|荒川]]
|荒川
|-
|-
|[[荒川調節池|荒川第二調節池]]総合開発
|掘込式貯水池
| align=right|12.8
| align=right|11,000
|-
|-
|佐賀||嘉瀬川||嘉瀬川||[[嘉瀬川ダム]]||[[重力式コンクリートダム|重力]]||align="right"|97.0||align="right"|71,000||1973||2012||特定||9条等指定||<ref>[http://www.qsr.mlit.go.jp/kasegawa/kasegawa/nenpiyou.html 国土交通省九州地方整備局筑後川河川事務所嘉瀬川ダム管理支所『嘉瀬川ダムへようこそ 事業年表』]2012年9月4日閲覧</ref>
| rowspan="2"|[[千葉県]]
|利根川
|[[江戸川]]
|-
|-
|江戸川総合開発<ref>[[行徳可動堰]]と[[江戸川水閘門]]の改築。</ref>
|可動堰
| align=right|-
| align=right|7,100
|-
|-
|佐賀||[[松浦川]]||[[厳木川]]||厳木ダム||重力||align="right"|117.0||align="right"|13,600||1973||1986||特定||||
|利根川
|長門川
|[[印旛沼]]
|-
|印旛沼総合開発<ref>印旛沼の湖底を掘り、貯水量を拡大する。</ref>
|掘込式貯水池
| align=right|6.8
| align=right|50,890
|-
|-
|佐賀||[[筑後川]]||巨勢川||巨勢川調整池||掘込式貯水池||align="right"|-||align="right"|2,200||1974||2009||||||佐賀導水事業<ref name="dosui"/>
| rowspan="2"|[[山梨県]]
|-bgcolor="pink"
|[[富士川]]
|佐賀||筑後川||城原川||[[城原川ダム]]||[[重力式コンクリートダム|重力]]||align="right"|61.0||align="right"|3,500||1979||未定||[[治水ダム|治水]]||||事業見直し
|塩川
|-
|-
|大渡ダム
|[[アーチ式コンクリートダム|アーチ式]]
| align=right|70.0
| align=right|8,400
|-
|-
|佐賀||松浦川||松浦川||松浦大堰||堰||align="right"|-||align="right"|-||-||1974||||||<ref name="takeo"/>
|富士川
|[[早川 (山梨県)|早川]]
|-
|-
|角瀬ダム
|重力式
| align=right|80.0
| align=right|47,600
|-
|-
|佐賀||[[六角川]]||六角川||六角川河口堰||堰||align="right"|11.5||align="right"|3,300||1968||1982||||||
| rowspan="4"|北陸地方整備局 <br/>(北陸地方建設局)
|-bgcolor="pink"
| rowspan="3"|[[新潟県]]
|[[長崎県|長崎]]||[[本明川]]||本明川||本明川ダム||[[台形CSGダム|台形CSG]]||align="right"|64.0||align="right"|8,600||1990||未定||特定||||事業見直し
|[[荒川 (羽越)|荒川]]
|-bgcolor="pink"
|荒川
|[[熊本県|熊本]]||[[球磨川]]||[[川辺川]]||[[川辺川ダム]]||[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]||align="right"|107.5||align="right"|133,000||1967||未定||治水||9条等指定||事業凍結
|-
|-bgcolor="pink"
|-
|熊本||[[白川 (熊本県)|白川]]||白川||[[立野ダム]]||重力||align="right"|90.0||align="right"|10,100||1979||未定||治水||||事業見直し
|荒川第一ダム
|重力式
| align=right|53.0
| align=right|48,500
|-
|-
|熊本||[[緑川]]||緑川||緑川ダム||重力||align="right"|76.5||align="right"|46,000||1964||1970||特定||||
|荒川
|荒川
|-
|-
|荒川第二ダム
|重力式
| align=right|28.0
| align=right|3,500
|-
|-
|熊本||[[菊池川]]||迫間川||[[竜門ダム]]||[[コンバインダム|複合]]||align="right"|99.5||align="right"|42,500||1970||2001||特定||9条等指定||
|[[信濃川]]
|清津川
|-
|-
|[[清津峡|清津川ダム]]
|重力式
| align=right|150.0
| align=right|170,000
|-
|-
|熊本||緑川||[[加勢川]]||六間堰||堰||align="right"|-||align="right"|-||1993||1999||||||<ref name="kase"/>
|[[長野県]]
|-bgcolor="yellow"
|信濃川
|[[大分県|大分]]||[[大分川]]||[[七瀬川 (大分県)|七瀬川]]||[[大分川ダム]]||[[ロックフィルダム|ロックフィル]]||align="right"|91.6||align="right"|24,000||1978||2017||特定||指定||工事中
|信濃川
|-
|-
|千曲川上流ダム
|重力式
| align=right|80.0
| align=right|75,000
|-
|-
|大分||筑後川||津江川||[[下筌ダム]]||アーチ||align="right"|98.0||align="right"|59,300||1958||1972||特定||||1986年[[ダム再開発事業|再開発]]
| rowspan="14"|中部地方整備局<br/>(中部地方建設局)
| rowspan="3"|[[愛知県]]
|[[豊川]]
|豊川
|-
|-
|寒狭川ダム
|-
| align=right|100.0
| align=right|187,000
|-
|-
|大分||筑後川||筑後川||[[松原ダム]]||重力||align="right"|83.0||align="right"|54,600||1958||1972||特定||||1984年再開発
|[[矢作川]]
|矢作川
|-
|-
|矢作川河口堰
|可動堰
| align=right|6.2
| align=right|20,000
|-
|-
|大分||山国川||山移川||[[耶馬溪ダム]]||重力||align="right"|62.0||align="right"|23,300||1970||1984||特定||指定||
|[[木曽川]]
|-bgcolor="yellow"
|木曽川
|[[鹿児島県|鹿児島]]||[[川内川]]||川内川||[[鶴田ダム]]||重力||align="right"|117.5||align="right"|123,000||1959||1965||特定||||再開発中<br/>[[ダム湖百選]]
|-
|
|}

|犬山ダム
==== 九州地方整備局の中止事業 ====
|重力式
[[File:Matsubara-2798-r1.JPG|200px|thumb|[[松原ダム]]([[筑後川]]・[[大分県]])<br/>下流に計画された久世畑ダムの事実上の後身である。]]
| align=right|35.0
九州地方整備局管内で中止されたダム事業としては、旧建設省時代を含めると11ダム事業がある。筑後川、緑川、大野川水系に中止事業が集中しているのが特徴である。
| align=right|35,150

九州最大の河川・筑後川水系では昭和28年西日本水害を機に筑後川改訂改修計画が全面変更になり、1958年に筑後川水系治水基本計画が策定された。これにより松原・下筌ダムが建設されたが、両ダム建設計画が決定するまで複数地点においてダム計画が立案されていた。これらの中で着手に至ろうとしていたダム計画に久世畑ダム計画(筑後川)がある。松原ダムよりも下流、現在の[[国道212号]]千丈橋付近に高さ79メートル、総貯水容量1億900万立方メートルのダムを建設する計画であり、筑後川上流のダム計画地点5箇所で真っ先に検討された地点であった。ところが水没戸数が573戸にも及び1953年10月には[[日田郡]][[大山村]](現在の日田市)が村民大会を開いてダム建設絶対反対を決議した。結果久世畑ダム計画は松原ダム計画へ変更となり、現在に至る<ref name="gaiyo101">『河川総合開発調査実績概要』第二巻 pp.101-106</ref><ref name="shimouke">[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/TPage.cgi?id=69 『ダム便覧』ダムの書誌あれこれ(3)]2012年9月7日閲覧</ref>。また下筌ダムの前身であった簗瀬ダム計画は、[[地質]]的な問題が解決できず調査自体が中断された<ref name="gaiyo3_103">『河川総合開発調査実績概要』第三巻 p.103</ref><ref name="shimouke"/>。さらに1969年の北部九州水資源開発マスタープランにおいて、筑後川本流の[[杖立温泉]]付近に杖立ダム、支流玖珠川最上流部に猪牟田(ししむた)ダムと[[天ヶ瀬温泉]]下流付近に玖珠川ダム、花月川流域に3ダムを建設する計画が立てられたが猪牟田ダム以外は立ち消えとなった<ref name="50nenshi"/>。猪牟田ダムは[[1973年]](昭和48年)より事業に着手したが、灌漑用水供給域である[[国東半島]]の灌漑計画が進捗せず、さらにダム予定地の地質問題が解決できなかったことで[[2000年]](平成12年)中止された。現在ダム予定地跡に[[石碑]]が建立されている<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.408-409</ref><ref>[http://hi.mymy.jp/chikugohi/shishimuta.html 古賀河川図書館『筑後川の碑』猪牟田ダム建設予定地の碑]2012年9月7日閲覧</ref>。このほか[[久留米市]]を流れる支流・高良川上流に高良川ダムの計画構想が[[1980年代]]初頭に持たれていたが、立ち消えとなっている<ref name="kouragawa">『河川開発』第59号 p.8</ref>。

緑川水系では高遊原(たかゆうばる)地下浸透ダム(加勢川)と七滝ダム(御船川)が中止されている。高遊原地下浸透ダムは直轄ダムでは唯一となる[[地下ダム]]計画で、加勢川の洪水調節と水源を全面的に[[地下水]]に頼る[[熊本市]]への上水道供給を目的とした事業である。[[上益城郡]][[益城町]]、[[阿蘇くまもと空港]]付近を流れる加勢川の支流・木山川と布田川に堰を設け、堰より導水した河水を透水性の高い[[溶岩]][[台地]]・高遊原に浸透させて地下ダムに貯水して治水・利水を図る計画だった。[[1989年]](平成元年)に事業は着手されたが、2000年に中止されている<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.392-393</ref><ref>[http://www.qsr.mlit.go.jp/kumamoto/about/enkaku.html 国土交通省九州地方整備局熊本河川国道事務所『事業概要』]2012年9月7日閲覧</ref>。七滝ダムは[[1988年]](昭和63年)御船川の水害を機に治水および熊本市などへの上水道供給を目的に計画されたが、水道事業者である熊本市などが需要性に乏しいとして事業から撤退。さらに緑川・御船川の治水も堤防整備や河床掘削で事業費を大幅に節減できることから[[2011年]](平成23年)九州地方整備局が「ダム建設の緊急性が薄い」として事業中止を打ち出し、国土交通省によるダム事業再検証対象ダムでは初の直轄ダム中止例となった<ref>朝日新聞2011年2月19日記事</ref>。

大野川水系では緒方川の知原ダムと平井川の矢田ダムが中止されている。知原ダムは[[1950年]](昭和25年)の[[国土総合開発法]]に基づく阿蘇特定地域総合開発計画において、大野川流域の治水と灌漑、水力発電を目的に[[直入郡]][[入田村]](現在の[[竹田市]])に計画された高さ79[[メートル]]、貯水容量9,200万[[立方メートル]]の大規模ダム計画であったが、立ち消えとなった<ref>『国土総合開発特定地域の栞』pp.59-61</ref><ref name="ogata">『河川総合開発調査実績概要』第三巻 pp.115-121</ref>。その後[[1961年]](昭和36年)に大野川流域を襲った水害、[[1964年]](昭和39年)の第二次大分[[新産業都市]]計画を契機に大野川水系の総合開発計画が再燃し、1972年より[[大野郡]][[大野町]]と[[朝地町]](何れも現在の[[豊後大野市]])を流れる平井川に矢田ダムが計画された<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.406-407</ref>。高さ56メートル、総貯水容量5,700万立方メートルのダムで完成すれば大野川水系最大規模のダムとなるが、公共事業見直し政策により2000年に中止された。ダム中止後は反対運動を進めた地元団体が中心となって[[地域活性化]]を進めている<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/TPage.cgi?id=164 『ダム便覧』ダムの書誌あれこれ(14)]2012年9月7日閲覧</ref>。

{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!{{Nowrap|所在}}<br />
| rowspan="3"|長野県
!水系<br />
|[[天竜川]]
!河川<br />
|[[三峰川]]
!ダム<br />
|-
!{{Nowrap|型式}}<br />
|-
!高さ<br />
|[[戸草ダム]]
!総貯水容量<br />
|重力式
!{{Nowrap|分類}}<br />
| align=right|140.0
!水特法<br />
| align=right|61,000
!{{Nowrap|備考}}<br />
!出典<br />
|-
|-
|福岡||筑後川||高良川||高良川ダム||ロックフィル||align="right"|65.0||align="right"|8,800||||||||<ref name="kouragawa"/>
|木曽川
|木曽川
|-
|-
|薮原ダム
|重力式
| align=right|50.0
| align=right|9,000
|-
|-
|熊本||緑川||加勢川||高遊原地下浸透ダム||[[地下ダム]]||align="right"|18.0||align="right"|1,400||特定||||||<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.392-393及び『河川開発』第72号 pp.20-21</ref>
|木曽川
|王滝川
|-
|-
|二子持ダム
|重力式
| align=right|75.0
| align=right|68,500
|-
|-
|熊本||筑後川||筑後川||杖立ダム||-||align="right"|-||align="right"|100,000||||||||<ref name="50nenshi"/>
| rowspan="8"|[[岐阜県]]
|木曽川
|[[飛騨川]]
|-
|-
|久田見ダム
|重力式
| align=right|60.0
| align=right|76,000
|-
|-
|熊本||緑川||御船川||七滝ダム||ロックフィル||align="right"|90.0||align="right"|17,500||特定||||||<ref>[http://damnet.or.jp/Dambinran/binran/Hozon/HzKietaFr_3103.html 『ダム便覧』七滝ダム]2012年9月7日閲覧</ref>
|木曽川
|飛騨川
|小坂川
|-
|落合ダム
|重力式
| align=right|70.0
| align=right|67,250
|-
|-
|熊本||筑後川||津江川||簗瀬ダム||重力||align="right"|51.8||align="right"|20,700||||||下筌ダムの前身||<ref name="gaiyo3_103"/>
|木曽川
|飛騨川
|[[馬瀬川]]
|和良川
|岩瀬ダム
|重力式
| align=right|50.0
| align=right|17,500
|-
|-
|大分||筑後川||[[玖珠川]]||玖珠川ダム||-||align="right"|-||align="right"|40,000||||||||<ref name="50nenshi"/>
|木曽川
|[[長良川]]
|[[板取川]]
|-
|洞戸ダム
|重力式
| align=right|60.0
| align=right|155,550
|-
|-
|大分||筑後川||筑後川||久世畑ダム||重力||align="right"|79.0||align="right"|109,000||||||松原ダムの前身||<ref name="gaiyo101"/>
|木曽川
|[[揖斐川]]
|-
|-
|[[東杉原ダム]]
|重力式
| align=right|72.0
| align=right|184,000
|-
|-
|大分||筑後川||玖珠川||猪牟田ダム||ロックフィル||align="right"|120.0||align="right"|38,500||特定||||||<ref>『ダム年鑑 1991』pp.194-195</ref>
|木曽川
|揖斐川
|[[根尾川]]
|-
|黒津ダム
|重力式
| align=right|84.0
| align=right|130,000
|-
|-
|大分||[[大野川]]||緒方川||知原ダム||重力||align="right"|79.0||align="right"|92,000||||||||<ref name="ogata"/>
|木曽川
|揖斐川
|根尾川
|根尾東谷川
|根尾ダム
|重力式
| align=right|45.0
| align=right|16,000
|-
|-
|大分||大野川||平井川||矢田ダム||重力||align="right"|56.0||align="right"|57,000||特定||||||<ref>『ダム年鑑 1991』pp.186-187</ref>
|木曽川
|揖斐川
|[[牧田川]]
|-
|一之瀬ダム
|重力式
| align=right|32.0
| align=right|6,710
|-
|-
|大分||筑後川||松木川||竜門ダム||重力||align="right"|31.8||align="right"|3,800||||||||<ref name="gaiyo3_103"/>
| rowspan="8"|近畿地方整備局<br/>(近畿地方建設局)
|}
| rowspan="5"|[[奈良県]]

|[[熊野川]]
=== 沖縄総合事務局 ===
|熊野川
[[File:Fukuji Dam 1 Okinawa.jpg|200px|thumb|沖縄県最大の直轄ダム・[[福地ダム]]([[福地川]])]]
|-
[[File:OkukubiDamConstruction4.jpg|200px|thumb|[[台形CSGダム]]としては世界初の施工例である億首ダム(億首川)]]
|-
''[[日本の多目的ダム一覧#沖縄県]]も参照のこと''
|鹿測ダム

|重力式
[[内閣府]][[沖縄総合事務局]]管内では既設ダム8基、施工中ダム1基の合計9基が直轄管理・施工されている。
| align=right|70.0

| align=right|47,000
[[沖縄県]]は[[九州地方整備局]]の管轄外であり、直轄ダムの施工と管理は沖縄総合事務局が行っている。[[1972年]](昭和47年)の[[沖縄返還]]により沖縄の[[施政権]]は[[琉球列島米国民政府]]より[[日本政府]]へと継承された。しかし日本本土に比べ沖縄県の[[インフラストラクチャー]]整備は遅れており、本土とは別に国の強力な支援による一体的な措置を講じる必要性が生じた。復帰前年([[1971年]])に現在の[[沖縄振興特別措置法]]の前身に当たる沖縄振興開発特別措置法が成立し、沖縄返還後の1972年5月15日には[[沖縄開発庁]]と[[地方支分部局]]である沖縄総合事務局が設置され、[[2001年]](平成13年)の[[省庁再編]]により現在の内閣府沖縄総合事務局となった<ref>[http://www.ogb.go.jp/soumu/soumu_shigoto.html 内閣府沖縄総合事務局『沖縄総合事務局について』]2012年9月11日閲覧</ref>。沖縄総合事務局は[[北海道開発局]]と同様に[[道路]]、河川、農地開発などの施策を一体的に実施する役割を持ち、国土交通省[[地方整備局]]の業務は沖縄総合事務局開発建設部が担当している<ref>[http://www.ogb.go.jp/soumu/soumu_sigoto_kaihatuno.html 内閣府沖縄総合事務局『開発建設部の仕事』]2012年9月11日閲覧</ref>。

沖縄県の河川は全て[[二級河川]]であり本来[[特定多目的ダム法]]の適用範囲外であるが、先の理由もあり沖縄振興特別措置法第107条(沖縄の河川に係る特例)を設けて対処した。すなわち[[河川法]]第10条の特例措置として二級河川であっても沖縄県では必要に応じて[[国土交通大臣]]が直轄で河川改修を実施できると定め、直轄ダムについては第107条第6・7項に準拠し河川法第10条や特定多目的ダム法の特例として二級河川であっても国土交通大臣が事業者である[[多目的ダム#特定多目的ダム|特定多目的ダム]]の施工・管理が可能であることが定められた<ref>[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H14/H14HO014.html 沖縄振興特別措置法]2012年9月11日閲覧</ref>。この法規定により沖縄県では沖縄総合事務局が直轄ダム事業の施工と管理を国土交通省から代行する形で実施しているが、直轄ダムの所有権者は国土交通大臣であり内閣府ではないため「内閣府直轄ダム」にはならない。

沖縄県には大河川が無く、[[台風]]常襲地帯であるため大雨が降れば本土に比べ[[洪水]]到達時間が早く[[水害]]の危険性が高い河川が多い。しかし少雨になれば元来水量が乏しいため容易に水不足に陥る<ref>[http://www.pref.okinawa.jp/kasen/con03/03dam.html 沖縄県『沖縄のダム』]2012年9月11日閲覧</ref>。沖縄県における[[河川総合開発事業]]は[[利水]]、特に[[上水道]]供給などの水資源開発を重視して行われたがその萌芽となったのは[[1963年]](昭和38年)に[[アメリカ陸軍工兵司令部]]が[[沖縄本島]]北部を流れる[[新川川|新川(あらかわ)川]]、安波(あは)川、普久(ふん)川の3河川にダムを建設するマスタープランである。また琉球水道公社は逼迫の度合いを強める沖縄本島の水需要に対処するため同じく県北部を流れる[[福地川]]に水道専用ダムの計画を[[1969年]](昭和44年)に立てた。こうしたダム計画は1971年より琉球列島米国民政府建設局による[[多目的ダム]]事業として統合され進められた<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.416-425</ref>。一方日本側は[[1970年]](昭和45年)より当時の[[建設省]]水資源開発調査団がダム事業についての調査を行い積極的な財政措置の必要性を報告、1972年の本土復帰後は[[名護市]]に沖縄総合事務局北部ダム事務所を設置してこれらの事業を継承し沖縄北部河川総合開発事業として本格的な施工を開始した<ref name="enkaku">[http://www.dc.ogb.go.jp/toukan/03damudata/3-3-7.htm 内閣府沖縄総合事務局北部ダム統合管理事務所『沖縄のダム事業の沿革』]2012年9月11日閲覧</ref>。

沖縄北部河川総合開発事業は[[福地ダム|福地]](福地川)、新川(新川川)、安波(安波川)、普久川(普久川)、辺野喜([[辺野喜川]])の5ダムを建設してダム湖間を[[導水路]]で連結して貯水を相互に融通することで沖縄本島の水需要に対処すると同時に治水安全度を高めることを目的とし、[[1990年]](平成2年)の福地[[ダム再開発事業]]完成により概ね完了した。しかしこの間にも給水制限延べ326日に及ぶ[[昭和56-57年沖縄渇水|沖縄県大渇水]]([[1981年]] - [[1982年]])を始め[[渇水]]が頻発。さらなる水資源開発の必要性が生じ新規の直轄ダム事業が計画され、[[漢那ダム|漢那]]([[漢那福地川]])、[[倉敷ダム|倉敷]](与那原川)、[[羽地ダム|羽地]]([[羽地大川]])、大保(大保川)の各ダムが建設された<ref name="enkaku"/>。完成後沖縄県に管理が移管された倉敷ダムを除く8ダムは[[1983年]](昭和58年)に発足した沖縄総合事務局北部ダム統合管理事務所による統合管理下にあり、効率的・一体的な管理が実施されている<ref>[http://www.dc.ogb.go.jp/toukan/01dam/1-0.htm 内閣府沖縄総合事務局北部ダム統合管理事務所]2012年9月11日閲覧</ref>。

現在施工中のダムとしては億首ダム(億首川)がある。沖縄県企業局が管理する水道用ダム・金武ダムの再開発事業としてダム直下に建設され、[[2013年]](平成25年)完成予定である<ref name="okukubi">[http://www.dc.ogb.go.jp/hokudamu/jigyou/kakudamu/okukubi/yotei/index.html 内閣府沖縄総合事務局北部ダム事務所『やんばるのダム』億首ダム 事業の今後]2012年9月11日閲覧</ref>。億首ダムは当初[[重力式コンクリートダム]]として計画されたが、事業コスト縮減と環境保護の観点から型式を変更し、世界で初めて[[台形CSGダム]]として施工が開始された。ただし完成については[[北海道]]の[[当別ダム]]([[当別川]])が先となる<ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=3147 『ダム便覧』億首ダム(再)]2012年9月11日閲覧</ref><ref>[http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=0171 『ダム便覧』当別ダム]2012年9月11日閲覧</ref>。なお、国土交通省によるダム事業再検証ダムは存在せず<ref name="minaoshi"/>、[[水源地域対策特別措置法]](水特法)に指定されたダムも存在しない。

{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!水系<br />
|熊野川
!河川<br />
|[[北山川]]
!ダム<br />
|-
!型式<br/>
|-
!{{Nowrap|高さ}}<br />
|[[前鬼口ダム]]
!{{Nowrap|総貯水容量}}<br />
|重力式
!着工<br />
| align=right|95.0
!完成<br/>
| align=right|29,500
!分類<br/>
![[水源地域対策特別措置法|水特法]]<br />
!備考<br />
|-
|-
|安波川||安波川||安波ダム||[[重力式コンクリートダム|重力]]||align="right"|86.0||align="right"|18,600||1972||1982||特定||||
|熊野川
|北山川
|-
|-
|北山ダム
|重力式
| align=right|65.0
| align=right|37,000
|-
|-
|[[新川川]]||新川川||新川ダム||重力||align="right"|44.5||align="right"|1,650||1972||1976||特定||||
|熊野川
|-bgcolor="yellow"
|北山川
|億首川||億首川||億首ダム||[[台形CSGダム|台形CSG]]||align="right"|39.0||align="right"|8,560||1978||2013||特定||||工事中<ref name="okukubi"/><br/>金武ダム[[ダム再開発事業|再開発]]
|-
|-
|大沼ダム
|重力式
| align=right|40.0
| align=right|-
|-
|-
|[[漢那福地川]]||漢那福地川||[[漢那ダム]]||重力||align="right"|45.0||align="right"|8,200||1978||1992||特定||||[[ダム湖百選]]
|熊野川
|北山川
|東ノ川
|-
|大瀬ダム
|重力式
| align=right|130.0
| align=right|91,500
|-
|-
|大保川||大保川||大保ダム||重力||align="right"|77.5||align="right"|20,050||1987||2011||特定||||
| rowspan="2"|[[和歌山県]]
|熊野川
|熊野川
|-
|-
|檜杖ダム
|重力式
| align=right|35.0
| align=right|70,000
|-
|-
|[[羽地大川]]||羽地大川||[[羽地ダム]]||[[ロックフィルダム|ロックフィル]]||align="right"|66.5||align="right"|19,800||1976||2004||特定||||
|[[紀の川]]
|紀伊丹生川
|-
|-
|紀伊丹生川ダム
|重力式
| align=right|145.0
| align=right|60,500
|-
|-
|[[福地川]]||福地川||[[福地ダム]]||ロックフィル||align="right"|91.7||align="right"|55,000||1972||1974||特定||||1990年再開発<br/>ダム湖百選
|[[大阪府]]
|[[淀川]]
|[[神崎川]]
|[[猪名川]]
|余野川
|[[余野川ダム]]
|重力式
| align=right|74.0
| align=right|17,500
|-
|-
|普久川||普久川||普久川ダム||重力||align="right"|41.5||align="right"|3,050||1972||1982||特定||||
| rowspan="8"|中国地方整備局<br/>(中国地方建設局)
| rowspan="4"|[[島根県]]
|[[斐伊川]]
|斐伊川
|-
|-
|川手ダム
|-
| align=right|-
| align=right|-
|-
|-
|[[辺野喜川]]||辺野喜川||辺野喜ダム||[[コンバインダム|複合]]||align="right"|42.0||align="right"|4,500||1975||1987||特定||||
|斐伊川
|}
|三刀屋川

|-
==== 沖縄総合事務局の中止事業 ====
|-
沖縄総合事務局管内で中止されたダム事業は3ダム存在する。
|掛合ダム

|-
最初に中止された座津武(ざつん)ダム(座津武川)は[[1992年]](平成4年)より計画されたが、[[2003年]](平成15年)に国土交通省が事業再評価を行い中止された<ref name="zatun">[http://damnet.or.jp/Dambinran/binran/Hozon/HzKietaFr_67.html 『ダム便覧』座津武ダム]2012年9月11日閲覧</ref>。比地ダム(比地川)と奥間ダム(奥間川)は沖縄本島北西部を流れる比地川水系と大保川水系に3箇所の多目的ダムを建設し、沖縄本島の水供給を補強する目的で計画された沖縄北西部河川総合開発事業において、比地川水系の治水と沖縄本島への利水供給を目的に[[1987年]](昭和62年)より計画された<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.432-437</ref>。しかし利水事業者である沖縄県企業局が事業から撤退、[[2010年]](平成22年)に両ダムは事業が中止された<ref>[[琉球新報]]2010年11月19日記事</ref>。ただし残る大保ダムについては両ダムが中止された翌年の[[2011年]](平成23年)に完成している。
| align=right|-

| align=right|-
{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!水系<br />
|[[江の川]]
!河川<br />
|江の川
!ダム<br />
|-
!{{Nowrap|型式}}<br />
|-
!高さ<br />
|都賀行ダム
!総貯水容量<br />
|重力式
!{{Nowrap|分類}}<br />
| align=right|79.0
!水特法<br />
| align=right|581,000
!{{Nowrap|備考}}<br />
!出典<br />
|-
|-
|比地川||奥間川||奥間ダム||ロックフィル||align="right"|65.0||align="right"|1,450||特定||||||<ref name="nenkan_40">『ダム年鑑 1991』pp.40-41</ref>
|江の川
|江の川
|-
|-
|段原ダム
|重力式
| align=right|38.0
| align=right|15,000
|-
|-
|座津武川||座津武川||座津武ダム||重力||align="right"|48.0||align="right"|3,150||特定||||||<ref name="zatun"/>
| rowspan="2"|[[岡山県]]
|[[吉井川]]
|吉井川
|-
|-
|吉岡ダム
|重力式
| align=right|28.0
| align=right|20,000
|-
|-
|比地川||比地川||比地ダム||ロックフィル||align="right"|66.5||align="right"|19,200||特定||||||<ref name="nenkan_40"/>
|[[高梁川]]
|}
|小田川

|-
== 管理移管ダム ==
|-
[[File:Ozegawa-2071-r1.JPG|200px|thumb|[[小瀬川ダム]]([[小瀬川]])<br/>[[広島県|広島]]・[[山口県|山口]]両県の対立を契機に[[建設省]]が受託施工を行った。]]
|柳井原堰
[[File:Tokuyama Dam under involved construction.jpg|200px|thumb|[[徳山ダム]]([[揖斐川]]・[[岐阜県]])<br/>[[1976年]](昭和51年)に建設省より[[水資源開発公団]]へ事業が移管された。日本最大の[[多目的ダム]]。]]
|可動堰
''[[都道府県営ダム]]・[[水資源機構]]の項目も参照のこと''
| align=right|5.9

| align=right|4,800
以下の表に示すダムは旧[[建設省]]がダム事業を計画、着手または完成させた後に他の事業者へ施工・管理を移管させたダムである。大別すると[[地方自治体]]に移管されたダムと旧水資源開発公団(現在の[[独立行政法人]][[水資源機構]])に移管されたダムがある。

地方自治体に移管されたダム事業のほとんどは、戦後計画された県単独の[[河川総合開発事業]]が[[1950年]](昭和25年)の[[国土総合開発法]]に基づいて計画された[[河川総合開発事業#特定地域総合開発計画|特定地域総合開発計画]]に組み込まれたことにより、その重要性から建設省直轄事業として施工されている。一例として[[米代川]]・[[雄物川]]水系が対象になった阿仁田沢特定地域総合開発計画において雄物川水系で計画・施工された[[鎧畑ダム]]([[玉川 (秋田県)|玉川]])と皆瀬ダム([[皆瀬川 (秋田県)|皆瀬川]])は完成後[[秋田県]]へ移管され、米代川の二次支流である粕毛川に計画された素波里(すばり)ダムは当初建設省が調査を進め、後に秋田県が事業を承継し完成させている<ref name="hojyo">『日本の多目的ダム 補助編 1990年版』pp.84-85,pp.92-95</ref>。また完成後に地方自治体へ移管させた理由として、[[高知県]]の永瀬ダム([[物部川]])は物部川水系が高知県のみを流域としているため、河川管理者である[[高知県知事]]に管理が継承された<ref name="nagase"/>。建設省が施工し完成後地方自治体に移管されたダムが属する水系には物部川のほか[[岩木川]]([[青森県]])、[[名取川]]([[宮城県]])、雄物川(秋田県)、[[由良川]]([[京都府]])、[[球磨川]]([[熊本県]])があるが何れも[[流域面積]]がほぼ一府県単独に限られており、皆瀬ダムと[[大倉ダム]]([[大倉川 (宮城県)|大倉川]])は[[特定多目的ダム法]]の指定を受けた[[多目的ダム#特定多目的ダム|特定多目的ダム]]として施工されているにも拘らず、完成後地方自治体に管理が移されている<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』p.124</ref>。こうした地方自治体へのダム事業移管は、[[1996年]](平成8年)に完成し[[沖縄県]]へ管理が移管された[[倉敷ダム]](与那原川)が最も新しい事例となっている<ref name="kurashiki">[http://www8.ocn.ne.jp/~kurasiki/outline/index.html 沖縄県ダム事務所・倉敷ダム管理所『倉敷ダム概要』]2012年9月12日閲覧</ref>。

なお、旧建設省が施工し管理が地方自治体に移管されたダム事業の例外として[[小瀬川ダム]]([[小瀬川]])がある。小瀬川水系は[[広島県]]と[[山口県]]の[[県境]]を流域としており、小瀬川本流自体が両県境となっている。ダム建設事業は山口県が当初単独で進め、後に広島県との共同事業として計画されたがダムの建設地点と目的の一つである[[工業用水道]]配分を巡り両県が対立。協議が難航したことから建設省に裁定を求め、1958年9月[[第2次岸内閣]]の[[建設大臣]]・[[遠藤三郎]]はダム地点と用水配分に関する裁定を下しさらに同年11月両県の委託を受けて建設省[[中国地方整備局|中国地方建設局]]がダムの施工を開始した<ref>『日本の多目的ダム 1963年版』pp.270-271</ref>。完成後は山口・広島両県が管理しているが複数の地方自治体が管理業務を行う多目的ダムは小瀬川ダムが唯一である。

一方水資源開発公団に移管されたダムは、何れも[[1962年]](昭和37年)に制定された[[水資源開発促進法]]に基づく水資源開発水系に指定された水系に存在する。大都市圏への[[上水道]]・工業用水道供給など利水需要を満たす上で重要なダム事業は、水資源開発基本計画(フルプラン)の策定や改定において計画施設に加えられる。1962年に[[利根川]]・[[淀川]]水系が水資源開発水系に指定された際に[[矢木沢ダム]](利根川)、[[下久保ダム]]([[神流川 (利根川水系)|神流川]])、[[高山ダム]]([[名張川]])が建設省から公団へ事業承継されたのを皮切りに、多くのダム事業が公団へ移管された。この中には日本最大の多目的ダムである[[徳山ダム]]([[揖斐川]])や「四国のいのち」とも称される[[早明浦ダム]]([[吉野川]])も含まれる<ref name="kodan">『水資源開発公団30年史』pp.392-411</ref>。こうした公団へのダム事業移管は[[1994年]](平成6年)の[[丹生ダム]]([[高時川]])が最も新しい事例である<ref name="niu">[http://www.water.go.jp/kansai/niu/html/hajime/pro02.html 独立行政法人水資源機構丹生ダム建設所『丹生ダムについて』]2012年9月12日閲覧</ref>。

{| class="sortable wikitable" style="width:100%; text-align:center; font-size:small;"
|-
|-
!所在<br/>
| rowspan="2"|[[広島県]]
!水系<br />
|江の川
!河川<br />
|馬洗川
!ダム<br />
|西城川
!型式<br/>
|-
!{{Nowrap|高さ}}<br />
|木屋原ダム
!{{Nowrap|総貯水容量}}<br />
|重力式
!着工<br />
| align=right|40.5
!完成<br/>
| align=right|23,263
!現管理<br/>
!移管年<br />
!備考<br />
|-bgcolor="yellow"
|[[青森県|青森]]||[[岩木川]]||岩木川||目屋ダム||[[重力式コンクリートダム|重力]]||align="right"|58.0||align="right"|33,900||1953||1959||青森県||1960||[[ダム再開発事業|再開発]]中<ref>『日本の多目的ダム 補助編 1990年版』pp.32-33</ref>
|-
|-
|[[宮城県|宮城]]||[[名取川]]||[[大倉川 (宮城県)|大倉川]]||[[大倉ダム]]||[[マルチプルアーチダム|多連式アーチ]]||align="right"|82.0||align="right"|28,000||1956||1961||宮城県||1962||<ref>『日本の多目的ダム 補助編 1990年版』pp.76-77</ref>
|[[太田川]]
|太田川
|-
|-
|吉和郷ダム
|-
| align=right|-
| align=right|-
|-
|-
|[[秋田県|秋田]]||[[米代川]]||粕毛川||素波里ダム||重力||align="right"|72.0||align="right"|42,500||1967||1970||秋田県||1967||<ref name="hojyo"/>
| rowspan="9"|四国地方整備局<br/>(四国地方建設局)
|[[香川県]]
|[[土器川]]
|前の川
|-
|-
|前の川ダム
|-
| align=right|-
| align=right|2,800
|-
|-
|秋田||[[雄物川]]||[[皆瀬川 (秋田県)|皆瀬川]]||皆瀬ダム||[[ロックフィルダム|ロックフィル]]||align="right"|66.5||align="right"|31,600||1958||1963||秋田県||1963||<ref name="hojyo"/>
| rowspan="6"|[[徳島県]]
|[[那賀川]]
|那賀川
|-
|-
|[[細川内ダム計画|細川内ダム]]
|重力式
| align=right|102.0
| align=right|60,400
|-
|-
|秋田||雄物川||[[玉川 (秋田県)|玉川]]||[[鎧畑ダム]]||重力||align="right"|58.5||align="right"|51,000||1952||1957||秋田県||1958||<ref name="hojyo"/>
|[[吉野川]]
|吉野川
|-
|-
|[[小歩危ダム計画|小歩危ダム]]
|重力式
| align=right|126.0
| align=right|307,500
|-
|-
|[[群馬県|群馬]]||[[利根川]]||[[渡良瀬川]]||[[草木ダム]]||重力||align="right"|140.0||align="right"|60,500||1965||1977||[[水資源機構]]||1965||[[ダム湖百選]]<ref name="kodan"/>
|吉野川
|吉野川
|-
|-
|大佐古ダム
|重力式
| align=right|146.0
| align=right|676,000
|-
|-
|群馬||利根川||[[神流川 (利根川水系)|神流川]]||[[下久保ダム]]||重力||align="right"|129.0||align="right"|130,000||1959||1968||水資源機構||1962||ダム湖百選<ref name="kodan"/>
|吉野川
|吉野川
|-
|-
|川崎ダム
|重力式
| align=right|29.6
| align=right|4,200
|-
|-
|群馬||利根川||利根川||[[矢木沢ダム]]||[[アーチ式コンクリートダム|アーチ]]||align="right"|131.0||align="right"|204,300||1959||1967||水資源機構||1962||ダム湖百選<ref name="kodan"/>
|吉野川
|[[銅山川 (四国)|銅山川]]
|-
|-
|[[岩戸ダム計画|岩戸ダム]]
|重力式
| align=right|136.0
| align=right|289,000
|-
|-
|[[埼玉県|埼玉]]||[[荒川 (関東)|荒川]]||浦山川||[[浦山ダム]]||重力||align="right"|156.0||align="right"|58,000||1972||1998||水資源機構||1976||<ref name="kodan"/>
|吉野川
|銅山川
|-
|-
|大野ダム
|重力式
| align=right|65.0
| align=right|41,500
|-
|-
|埼玉||荒川||中津川||[[滝沢ダム]]||重力||align="right"|132.0||align="right"|63,000||1969||2007||水資源機構||1976||<ref name="kodan"/>
| rowspan="2"|[[高知県]]
|吉野川
|吉野川
|-
|-
|桃ヶ谷ダム
|-
| align=right|-
| align=right|-
|-
|-
|[[岐阜県|岐阜]]||[[木曽川]]||[[阿木川]]||[[阿木川ダム]]||ロックフィル||align="right"|101.5||align="right"|48,000||1969||1990||水資源機構||1976||ダム湖百選<ref name="kodan"/>
|吉野川
|吉野川
|-
|-
|敷岩ダム
|重力式
| align=right|33.0
| align=right|36,500
|-
|-
|岐阜||木曽川||[[馬瀬川]]||[[岩屋ダム]]||ロックフィル||align="right"|127.5||align="right"|173,500||1967||1977||水資源機構||1969||<ref name="kodan"/>
| rowspan="11"|九州地方整備局<br/>(九州地方建設局)
|[[福岡県]]
|[[矢部川]]
|[[星野川]]
|-
|-
|真名子ダム
|-
| align=right|-
| align=right|28,000
|-
|-
|岐阜||木曽川||[[揖斐川]]||[[徳山ダム]]||ロックフィル||align="right"|161.0||align="right"|660,000||1971||2007||水資源機構||1976||<ref name="kodan"/>
| rowspan="7"|[[大分県]]
|-bgcolor="pink"
|[[筑後川]]
|[[滋賀県|滋賀]]||[[淀川]]||[[高時川]]||[[丹生ダム]]||ロックフィル||align="right"|145.0||align="right"|150,000||1980||未定||水資源機構||1994||事業見直し<ref name="niu"/>
|筑後川
|-
|-
|久世畑ダム
|重力式
| align=right|79.0
| align=right|109,000
|-
|-
|[[京都府|京都]]||[[由良川]]||由良川||[[大野ダム (京都府)|大野ダム]]||重力||align="right"|61.4||align="right"|28,550||1953||1961||京都府||1962||ダム湖百選<ref>『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.316-317</ref>
|筑後川
|[[玖珠川]]
|-
|-
|猪牟田ダム
|ロックフィル
| align=right|120.0
| align=right|38,500
|-
|-
|京都||淀川||[[名張川]]||[[高山ダム]]||[[重力式アーチダム|重力アーチ]]||align="right"|67.0||align="right"|56,800||1960||1969||水資源機構||1962||<ref name="kodan"/>
|筑後川
|玖珠川
|-
|-
|玖珠川ダム
|-
| align=right|-
| align=right|40,000
|-
|-
|[[島根県|島根]]||[[斐伊川]]||斐伊川||[[三成ダム]]||アーチ||align="right"|42.0||align="right"|3,438||1950||1953||島根県||1953||<ref>[http://www.pref.shimane.lg.jp/kigyo/denki/suiryoku/minari.html 島根県企業局『三成発電所』]2012年9月12日閲覧</ref>
|筑後川
|玖珠川
|松木川
|-
|竜門ダム
|重力式
| align=right|31.8
| align=right|3,800
|-
|-
|[[広島県|広島]]||[[小瀬川]]||小瀬川||[[小瀬川ダム]]||重力||align="right"|49.0||align="right"|11,400||1956||1964||広島県<br/>山口県||1964||受託施工<ref>『日本の多目的ダム 補助編 1990年版』pp.440-441</ref>
|[[大野川]]
|大野川
|-
|-
|大野川ダム
|-
| align=right|-
| align=right|-
|-
|-
|[[山口県|山口]]||[[佐波川]]||佐波川||[[佐波川ダム]]||重力||align="right"|54.0||align="right"|24,600||1952||1955||山口県||1955||受託施工<ref>『多目的ダム全集』pp.90-91</ref>
|大野川
|緒方川
|-
|-
|知原ダム
|重力式
| align=right|79.0
| align=right|92,000
|-
|-
|[[愛媛県|愛媛]]||[[吉野川]]||[[銅山川 (四国)|銅山川]]||[[富郷ダム]]||重力||align="right"|106.0||align="right"|52,000||1974||2000||水資源機構||1992||<ref name="dozan"/>
|大野川
|平井川
|-
|-
|矢田ダム
|重力式
| align=right|56.0
| align=right|57,000
|-
|-
|[[高知県|高知]]||吉野川||吉野川||[[早明浦ダム]]||重力||align="right"|106.0||align="right"|316,000||1963||1977||水資源機構||1967||ダム湖百選<ref name="kodan"/>
| rowspan="3"|[[熊本県]]
|筑後川
|筑後川
|-
|-
|簗瀬ダム
|重力式
| align=right|51.8
| align=right|20,700
|-
|-
|高知||[[物部川]]||物部川||永瀬ダム||重力||align="right"|87.0||align="right"|49,090||1949||1957||高知県||1957||<ref>『日本の多目的ダム 補助編 1990年版』pp.516-517</ref>
|筑後川
|筑後川
|-
|-
|杖立ダム
|-
| align=right|-
| align=right|100,000
|-
|-
|[[福岡県|福岡]]||[[矢部川]]||矢部川||[[日向神ダム]]||重力||align="right"|79.5||align="right"|27,900||1953||1961||福岡県||1950||<ref>『河川総合開発調査実績概要』第一巻pp.103-105</ref>
|[[緑川]]
|[[加勢川]]
|(地下)
|-
|高遊原地下浸透ダム
|[[ダム#地下ダム|地下ダム]]
| align=right|-
| align=right|-
|-
|-
|[[熊本県|熊本]]||[[球磨川]]||球磨川||市房ダム||重力||align="right"|78.5||align="right"|40,200||1953||1959||熊本県||1960||<ref>『日本の多目的ダム 補助編 1990年版』pp.596-597</ref>
|[[沖縄総合事務局]]
|-
|[[沖縄県]]
|[[宮崎県|宮崎]]||[[大淀川]]||[[岩瀬川]]||岩瀬ダム||重力||align="right"|55.5||align="right"|57,000||1953||1967||宮崎県||1954||<ref>『河川総合開発調査実績概要』第二巻pp,113-116</ref><ref>『河川開発』第9号pp.14-15</ref>
|座津武川
|-
|座津武川
|[[沖縄県|沖縄]]||[[比謝川]]||与那原川||[[倉敷ダム]]||ロックフィル||align="right"|33.5||align="right"|7,100||1979||1996||沖縄県||1996||ダム湖百選<ref name="kurashiki"/>
|-
|
|-
|沖縄||[[宮良川]]||宮良川||[[真栄里ダム]]||[[アースダム|アース]]||align="right"|27.0||align="right"|2,300||1972||1984||沖縄県||1984||<ref>[http://www.pref.okinawa.jp/kasen/con03/03_4_1.html 沖縄県『沖縄のダム』真栄里ダム]2012年9月12日閲覧</ref>
|座津武ダム
|重力式
| align=right|48.0
| align=right|3,150
|}
|}


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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=== 注釈 ===
<div class="references-small"><references group="注"/></div>
=== 出典 ===
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==関連項目==
== 参考文献 ==
*[[ダム]]
*[[日本のダム]]
*[[多目的ダム#特定多目的ダム|特定多目的ダム]]
*[[河川総合開発事業]]
*[[ダム再開発事業]]
*[[国土交通省]]
*[[地方整備局]]
*[[北海道開発局]]
*[[内閣府]]
*[[沖縄総合事務局]]
*[[治水]]
*[[ダムカード]](国土交通省直轄ダム、独立行政法人水資源機構で配布しているカード)

== 出典 ==
*[[建設省]]治水調査会『利根川改訂改修計画』、[[1949年]]
*[[建設省]]治水調査会『利根川改訂改修計画』、[[1949年]]
*建設省治水調査会『吉野川改訂改修計画』、1949年
*建設省治水調査会『吉野川改訂改修計画』、1949年
3,313行目: 1,228行目:
*[http://www.mlit.go.jp/tec/hyouka/public/h12kekka/2-3.pdf 中止事業一覧 国土交通省]
*[http://www.mlit.go.jp/tec/hyouka/public/h12kekka/2-3.pdf 中止事業一覧 国土交通省]
*[http://www.onitoge.org/ninew/hakubutsukan/1tendam.htm 赤岩ダム ニニウ博物館]
*[http://www.onitoge.org/ninew/hakubutsukan/1tendam.htm 赤岩ダム ニニウ博物館]

==関連項目==
*[[ダム]]
*[[日本のダム]]
*[[多目的ダム#特定多目的ダム|特定多目的ダム]]
*[[河川総合開発事業]]
*[[ダム再開発事業]]
*[[国土交通省]]
*[[地方整備局]]
*[[北海道開発局]]
*[[内閣府]]
*[[沖縄総合事務局]]
*[[治水]]
*[[ダムカード]](国土交通省直轄ダム、独立行政法人水資源機構で配布しているカード)


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[[Category:日本のダム]]
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2012年9月25日 (火) 10:35時点における版

完成すれば総貯水容量で日本最大の国土交通省直轄ダムとなる夕張シューパロダム北海道夕張川

国土交通省直轄ダム(こくどこうつうしょうちょっかつダム)は、日本のダムのうち国土交通省により施工、管理が行われているダムまたはである。主として河川法特定多目的ダム法に基づき、国土交通省の各地方整備局および北海道開発局内閣府沖縄総合事務局(委託管理。後述)が実際の施工・管理業務を担当する。

総論

国土交通省直轄ダム事業年表も参照

国土交通省が管理や施工を行うダム事業は「河川整備基本計画」又は「河川工事実施基本計画」に基づく「河川総合開発事業」として建設される。一部のダムを除き、通常は国土交通大臣によって計画から建設、そして管理まで一元的に行われる特定多目的ダムがほとんどであるが、直轄ダムの中には河川法第17条による「兼用工作物」として管理が複数の利水事業者と行われているダムもある(詳細は「多目的ダム」を参照)。近年では洪水調節のみを目的とした治水ダムも近年では事業計画がなされている。多目的・治水何れのダムについても、最大の目的は洪水調節、すなわち治水である。

通常一級河川の上流部は都道府県によって委託管理されている(これを指定区間と呼ぶ)。ただし直轄管理されているダム及びダムに伴って形成された貯水池(人造湖)、さらに上流・下流の一定区間に関しては国土交通大臣による直轄管理がなされる(これを特定水利と呼ぶ)。これは沖縄県の二級河川でも同様に扱われる。

国策として建設されるため水没住民に対する補償対策は特に重視され、1973年(昭和48年)の水源地域対策特別措置法の施行に伴い、特に大規模なダム事業に関してはほぼ例外なく法を適用し、水源地域住民への対応を行っている。さらに国土交通省は従来の閉鎖的管理からの転換を図り、直轄ダム・水資源機構管理ダムを地元の観光資源として積極的に一般に開放する方向へ転換を行った。この施策は1994年(平成6年)に「地域に開かれたダム」施策として実施され、ダムの周辺整備やPR施設の建設、町興しへの積極的参加や社会科見学の誘致等の基本計画を各ダムごとに提出させた。これにより宮ヶ瀬ダム中津川神奈川県)や御所ダム雫石川岩手県)のように年間100万人を超える観光客が訪問するダムも出てきている。一方で八ッ場ダム吾妻川群馬県)や川辺川ダム川辺川熊本県)のように地元との間に長年の軋轢(あつれき)を抱えたダムもあり、現在計画が進められているダムの大半は事業が長期化している。また第2次橋本内閣以降強まった公共事業見直しの風潮により、計画中であったダムの相当数が事業中止・凍結された。

なお、茨城県東京都山梨県香川県宮崎県には、国土交通省が管理・施工しているダムや堰は現在存在しない[1]。また、かつては国土交通省(建設省)が施工したダムの中には各地方自治体に管理を移管したダム、または地方自治体が管理していたダムが国土交通省直轄ダムとなったダムも存在する。2008年(平成20年)5月に福田内閣は都道府県内で完結する一級水系について原則地方自治体へ移管する方針を示したが、今後国土交通省直轄ダムの中にはこうした河川の管理移譲に伴い、都道府県営ダムに管理主体が変更される可能性がある。

2009年10月9日、前原誠司国土交通大臣は、建設中の国土交通省直轄ダム(水資源機構が事業主体となっているダムを含む)56事業のうち、改修事業を除く48事業について「2009年度は(ダム事業を“調査・設計”→“用地買収”→“生活再建工事”→“転流工工事”→“本体工事”という段階に区切った場合における)新たな段階に入らない」ことを表明[2]、ダム建設事業を全面的に見直す立場を示した。今後、事業を継続すべきか否かの妥当性について再検証が行われることとなり、12月に具体的な「凍結」ダム事業が発表された。対象となった直轄ダムはサンル・新桂沢・三笠ぽんべつ・平取・田川・成瀬・鳥海・八ッ場・万座・利賀・設楽新丸山足羽川大戸川・横瀬川・山鳥坂大分川城原川・本明川・立野・七滝・川辺川・奥間の23ダム事業である(導水事業などを除く)。

各論

一覧表解説

各論におけるダム一覧表の見方については、以下の通りである。ダムデータは財団法人日本ダム協会『ダム便覧』を基礎出典とし、適宜追記する。横線は検証可能な出典での数値提示が不能なものである。

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
着工
完成
分類
水特法
備考
A県 A川 A川 Aダム 重力 50.0 50,000 1960 1970
B県 B川 B川 Bダム ロックフィル 100.0 100,000 1990 2020 兼用 指定 工事中
C県 C川 C川 Cダム アーチ 150.0 200,000 2000 未定 特定 9条等指定 事業見直し
  • 所在 - ダムが所在する道府県。複数の所在地にまたがる場合はダム便覧に準じ、ダム左岸の所在地に属する。
  • 水系 - ダムが所在する水系沖縄県を除き通常は一級水系である。
  • 河川 - ダムが所在する河川
  • 型式 - ダムの型式。詳細は各型式の項目を参照。
  • 高さ - ダムの高さ。単位はメートル
  • 総貯水容量 - ダムが貯水できる全ての貯水容量。単位は1,000立方メートル。詳細はダム#諸元を参照
  • 着工 - ダム事業が開始される実施計画調査の着手年。
  • 完成 - ダムが完成し、運用を開始した年。「未定」は完成予定年度が定まっていない場合に記載する。
  • 分類 - 河川関連法規に基づくダムの分類。以下に分ける。
  1. 特定」 - 1957年施行の特定多目的ダム法に基づき国土交通大臣が一貫して施工・管理するダム。詳細は多目的ダム#特定多目的ダムを参照。
  2. 兼用」 - 1964年改定の河川法第17条における特例により、複数の事業者により施工・管理されるダム。詳細は多目的ダム#兼用工作物を参照。
  3. 治水」 - 目的が洪水調節専用の治水ダム。詳細は当該項目を参照。
  4. 空欄は特定多目的ダム法施行以前に完成、または同法に拠らない直轄河川総合開発事業に基づき施工されたダム。
  • 水特法 - 1973年施行の水源地域対策特別措置法(水特法)に指定されたダム。「9条等指定」は水没物件が多大で、通常より補償を厚くしたダム。詳細は当該項目を参照。
  • 備考 - 特記することを記す。
  1. 工事中」 - 現在工事中・ダム再開発事業中のダム。黄色欄で示す。
  2. 事業見直し」 - 国土交通省によるダム事業再検証の対象となっているダム。桃色欄で示す。
  3. ダム湖百選」 - 財団法人ダム水源地環境整備センターが2005年に選定したダム湖百選人造湖が選定されたダム。詳細は当該項目を参照。

北海道開発局

開発局管理ダムでは最も堤高が高い定山渓ダム小樽内川
北海道では初の直轄ダムなった桂沢ダム(幾春別川)。現在ダム再開発事業新桂沢ダム)が施工中である。

北海道開発局管内では直轄ダムが運用16、施工中5の計21ダムを管理・施工している。北海道開発局は国土交通省の地方支分部局として国土交通省の発足時に統合されたが、農林水産省の地方農政局機能も担当している[3]。このため土地改良法に基づく国営農業水利事業によって建設された大夕張ダムと川端ダム(夕張川)も直轄管理しているが、両ダムは農林水産省直轄ダムとしての扱いを受け、国土交通省直轄ダムには該当しない[4][5]

北海道は1950年(昭和25年)5月北海道開発法が施行され、同法に基づき北海道開発庁(1950年6月)と北海道開発局(1951年7月)が設立。以後数次にわたる北海道総合開発計画に沿って河川総合開発事業を展開していた[6]1952年(昭和27年)からの第一次北海道総合開発計画において道内最大の河川・石狩川水系の河川総合開発事業が初めて盛り込まれ、利水目的の事業として雨竜川の鷹泊ダムが1953年(昭和28年)に完成する[7]が、治水目的として計画されたのが三笠市を流れる幾春別(いくしゅんべつ)川の桂沢ダムと、空知川支流芦別川の芦別ダムである。電源開発などとの共同事業で計画された両ダムは、双方をトンネル導水路で連結して治水のほか上水道供給、灌漑水力発電を目的とし、1957年(昭和32年)に道内初の直轄ダムとして完成した[8]

以後石狩川水系の河川開発は石狩川改修全体計画(1953年)、石狩川水系工事実施基本計画(1965年)に基づいて進められ金山ダム(空知川)、大雪ダム(石狩川)、漁川ダム漁川)が建設されたほか、札幌冬季オリンピック開催を控え人口の増加が顕著となった札幌市の治水安全度と上水道供給向上を図るため豊平川流域の総合開発も計画され、豊平峡ダム(豊平川)が建設された。しかし1981年(昭和56年)の台風14号寒冷前線による豪雨は石狩川流域で過去最悪となる大洪水を引き起こし、治水計画は根本からの見直しが図られた。結果全ての主要支流においてダム計画が立案され、定山渓ダム小樽内川)、滝里ダム(空知川)、忠別ダム忠別川)、夕張シューパロダム(夕張川)、新桂沢ダム(幾春別川)、三笠ぽんべつダム(奔別川)が計画・施工されている[9]

石狩川以外では日本第4の大河である天塩川水系で本流に岩尾内ダムが1971年(昭和46年)完成。十勝川水系では電源開発による十勝糠平系電源一貫開発計画により糠平ダム(音更川)などの水力発電事業が先行していたが、1962年(昭和37年)の大水害を契機に十勝川水系の総合開発計画が実施され、本流に十勝ダム、支流札内川札内川ダムが完成した[10][11]。またオホーツク海に注ぐ常呂川では北見市などの治水安全度と上水道供給向上を目的に鹿ノ子ダム(常呂川)が、日高では沙流川流域に二風谷ダム(沙流川)、清流として知られる後志利別川には美利河ダムがそれぞれ完成している。留萌川水系では1988年(昭和63年)の洪水で留萌市全世帯の4分の1が浸水した大水害を契機にダム計画が進められ、支流のチバベリ川に留萌ダムが完成している[12]

現在施工中のダムとして石狩川水系では夕張シューパロ、新桂沢、三笠ぽんべつの各ダム、天塩川水系では支流名寄川の二次支流であるサンル川にサンルダム、沙流川では支流の額平川平取ダムがある。このうち夕張シューパロダムは既設大夕張ダムのダム再開発事業であるが、2014年(平成26年)に完成すれば貯水容量で日本最大の直轄ダムとなる。だが夕張シューパロダム以外のダムは国土交通省によるダム事業再検証の対象となり、事業は凍結状態である[13]。またダム事業に対する地元との摩擦については二風谷ダムにおいて萱野茂貝沢正が起こしたダム建設差し止め訴訟が知られる。ダム建設差し止め自体は却下されたがアイヌ民族の先住性が裁判で認められ、1997年(平成9年)には差別的法律であった北海道旧土人保護法の廃止とアイヌ文化振興法の制定につながった[14]

なお、北海道開発局が管轄する一級河川のうち渚滑川湧別川網走川釧路川鵡川尻別川の各水系には直轄ダムが建設されておらず、このうち渚滑川と釧路川は本支流の何れにもダムが全く建設されていない。また石狩川水系の主要支流では雨竜川流域には直轄ダムが建設されていない。

水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
着工
完成
分類
水特法
備考
石狩川 芦別川 芦別ダム 重力 22.8 1,598 1947 1957
石狩川 漁川 漁川ダム ロックフィル 45.5 15,300 1971 1980 特定
天塩川 天塩川 岩尾内ダム 重力 58.0 107,700 1963 1970 特定
石狩川 幾春別川 桂沢ダム 重力 63.6 92,700 1947 1957 再開発
石狩川 空知川 金山ダム 中空重力 57.3 150,450 1959 1967 特定 ダム湖百選
常呂川 常呂川 鹿ノ子ダム 重力 55.5 39,800 1972 1983 特定
十勝川 札内川 札内川ダム 重力 114.0 54,000 1981 1998 特定
天塩川 サンル川 サンルダム 台形CSG 46.0 57,200 1988 未定 特定 事業見直し
石狩川 小樽内川 定山渓ダム 重力 117.5 82,300 1974 1989 特定
石狩川 幾春別川 新桂沢ダム 重力 75.5 147,300 1985 未定 特定 桂沢ダム再開発
事業見直し
石狩川 石狩川 大雪ダム ロックフィル 86.5 66,000 1965 1975 特定
石狩川 空知川 滝里ダム 重力 50.0 108,000 1979 1999 特定 9条等指定
石狩川 忠別川 忠別ダム 複合 86.0 93,000 1977 2006 特定 指定
十勝川 十勝川 十勝ダム ロックフィル 84.3 112,000 1970 1984 特定
沙流川 沙流川 二風谷ダム 重力 32.0 31,500 1973 1997 特定 指定
沙流川 額平川 平取ダム 重力 56.5 45,800 1973 未定 特定 事業見直し
後志利別川 後志利別川 美利河ダム 複合 40.0 18,000 1975 1991 特定 指定
石狩川 豊平川 豊平峡ダム アーチ 102.5 47,100 1965 1972 特定 ダム湖百選
石狩川 奔別川 三笠ぽんべつダム 台形CSG 53.0 8,620 1985 未定 治水 事業見直し
石狩川 夕張川 夕張シューパロダム 重力 110.6 427,000 1991 2014 兼用 9条等指定 大夕張ダム再開発
工事中
留萌川 チバベリ川 留萌ダム ロックフィル 41.2 23,300 1984 2009 特定

北海道開発局の中止事業

鵡川の赤岩青巌峡(占冠村)。赤岩ダムが当地に計画されていたが中止されている。

北海道開発局において、中止となった直轄ダム事業としては鵡川本流に計画されていた赤岩ダムと、石狩川本流に計画されていた石狩ダムがある。

赤岩ダムについては1950年代、鵡川上流にある景勝地・赤岩青巌峡の一番瀬付近に高さ103メートルの重力式コンクリートダムを計画。治水と日高電源一貫開発計画に沿った形での水力発電目的を以って計画が行われていた。完成すれば総貯水容量が3億5,000万立方メートルに達し朱鞠内湖を越える大人造湖が出現するが、トマム・ニニウを含め占冠村の大部分が水没するため占冠村官民挙げて反対運動が巻き起こった。最終的に1961年(昭和36年)に開発局が計画を白紙撤回し、中止された[15]

一方石狩ダムは大雪ダムの前身として、北海道電力との共同事業として1960年代より層雲峡に計画されていた。高さ118.2メートル、総貯水容量1億4,200万立方メートルの中空重力式コンクリートダムとして計画され、完成すれば石狩川水系最大規模の多目的ダムであったが、その後の計画変更により現在の大雪ダム地点にダム計画が移転し、1975年(昭和50年)に現在の規模で完成している[16]

水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
分類
水特法
備考
出典
鵡川 鵡川 赤岩ダム 重力 103.0 350,000 [15]
石狩川 石狩川 石狩ダム 中空重力 118.2 147,000 大雪ダムの前身 [16]

東北地方整備局

東北地方整備局管理ダムでは最大の総貯水容量を有する玉川ダム玉川秋田県
日本のロックフィルダム施工第一号となった石淵ダム胆沢川)。2013年胆沢ダムが完成すると水没する。

東北地方整備局管内では既設ダム・堰23基、施工中ダム5基の合計28基を直轄管理・施工している。これは全ての地方整備局の中で最多である。また、総貯水容量が1億立方メートルを超える大人造湖を擁するダムが既設・施工併せて8基あり、これもまた地方整備局の中では随一である。ただし東北地方の直轄ダムにおいて、阿賀野川水系と荒川水系にあるダム(大川ダム横川ダム)については本流河口新潟県に位置するため、水系一貫管理の観点から北陸地方整備局の管理となっている。なお仙台市などの水源でもある釜房ダム(碁石川)の人造湖である釜房湖は人造湖としては唯一、湖沼水質保全特別措置法(湖沼法)に指定されており、厳重な水質管理が行われている[17]。事業については河川法第17条に基づく兼用工作物として鳴瀬川中流堰(鳴瀬川)が国土交通省と農林水産省の共同事業として建設されている[18]

東北地方は日本でも早期より多目的ダムによる河川総合開発事業が積極的に進められていた。青森県は多目的ダムとして日本最初の施工例となった沖浦ダム(浅瀬石川)や十和田湖の総合開発事業を1938年(昭和13年)より実施。河川総合開発の父である物部長穂の故郷・秋田県田沢湖玉川の総合開発を1939年(昭和14年)より実施するなど他の都道府県に先駆けて河川開発を進めていた。当時河川行政を管轄した内務省も1941年より国直轄の河川総合開発を計画し、北上川名取川が東北では対象とされ田瀬ダム猿ヶ石川)が直轄ダム日本第一号として施工を開始、さらに田瀬ダムなど5ダムを北上川本支流に建設する北上川五大ダム計画(田瀬、石淵湯田四十四田御所)がこの時成立した。また釜房ダムの計画も進められたが、太平洋戦争により事業は中断した[19]

戦後東北では1947年のカスリーン台風、翌1948年のアイオン台風で北上川や名取川、雄物川などが致命的な水害を引き起こし多数の死者を出した。治水対策が急務となった建設省は北上川と支流の江合川、および鳴瀬川を対象とした河川改訂改修計画を立案しダムによる治水を盛り込む。さらに戦後の食糧・電力不足にも対応するため1950年の国土総合開発法に基づく特定地域総合開発計画が実施され、東北では岩木川奥入瀬川を対象とした「十和田岩木川」、北上川・鳴瀬川を対象とした「北上」、名取川を対象とした「仙塩」、米代川・雄物川を対象とした「阿仁田沢」、最上川赤川を対象とした「最上」そして阿賀野川・只見川信濃川を対象とした「只見」と東北6県全てが特定地域の対象となった[20]。これに基づき北上川五大ダムなど多数の直轄ダムが建設され、一部は所在地方自治体へ管理を移管させた(後述)。さらに東北自動車道東北新幹線開通などによる人口の増加に伴う治水安全度の低下や水需要の増大、羽越豪雨などの深刻な水害を機に阿武隈川水系や最上川水系で直轄ダム事業が進められ、阿武隈川水系では七ヶ宿ダム白石川)、三春ダム(大滝根川)、摺上川ダム摺上川)が、最上川水系では白川ダム(置賜白川)、寒河江ダム寒河江川)、長井ダム置賜野川)が建設された。また、東北の直轄ダムで最も総貯水容量の多い玉川ダム(玉川)は事業の一環として玉川の酸性水を中和する施設を建設、ダム湖を利用して粒状石灰石と中和させることで長年流域住民を苦しめた玉川毒水を大きく改善させた[21][22]

直轄ダムで現在施工中のダムは5基あるが、ダム再開発事業として津軽ダム(岩木川)と胆沢ダム胆沢川)の2ダムがある。完成すれば直上流にある目屋ダム(岩木川)と石淵ダム(胆沢川)は水没する。既に浅瀬石川ダム(浅瀬石川)により沖浦ダムが、長井ダムにより管野ダム(置賜野川)が湖底に水没した。この他施工中のダムは田川ダム(田川)、鳥海ダム(子吉川)、成瀬ダム(成瀬川)があるが何れもダム事業再検討の対象となり、事実上凍結している[13]。ダム事業と住民の摩擦については住民軽視の補償交渉が後年批判の的となった石淵ダム補償問題のほか、胆沢ダムと津軽ダムでは石淵・目屋ダムで移転を余儀なくされた住民が、再び移転を余儀なくされる例も現れている[23][24]。また、度重なる大地震による施設被害も起こり、岩手・宮城内陸地震では石淵ダムの堤体が損傷[25]東日本大震災では沿岸を襲った大津波が河川を遡上したことで北上大堰(北上川)、阿武隈大堰(阿武隈川)、馬淵大堰(馬淵川)などが被害を受けている[26]

なお、東北の直轄ダムにおける技術的特徴として、石淵ダムはロックフィルダム施工の日本第一号であり[注 1]鳴子ダム(江合川)は日本人だけで手掛けられた最初のアーチ式コンクリートダムである[27]。また堰では鳴瀬堰(鳴瀬川)は大河川を堰き止めた最初のゴム引布製起伏堰(ラバーダム)であり[28]最上川さみだれ大堰(最上川)はゴム引布製起伏堰として日本最大級である[29]

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
着工
完成
分類
水特法
備考
青森 岩木川 浅瀬石川 浅瀬石川ダム 重力 91.0 53,100 1971 1988 特定 9条等指定 沖浦ダム再開発
青森 岩木川 岩木川 津軽ダム 重力 97.2 140,900 1988 2016 特定 9条等指定 目屋ダム再開発
工事中
青森 馬淵川 馬淵川 馬淵大堰 - - 1973 1980 [30][31]
岩手 北上川 胆沢川 胆沢ダム ロックフィル 132.0 143,000 1983 2013 特定 指定 石淵ダム再開発
工事中
岩手 北上川 胆沢川 石淵ダム ロックフィル 53.0 16,150 1945 1953 再開発中
岩手 北上川 雫石川 御所ダム 複合 52.5 65,000 1967 1981 特定 9条等指定 ダム湖百選
岩手 北上川 北上川 四十四田ダム 複合 50.0 47,100 1960 1968 特定
岩手 北上川 猿ヶ石川 田瀬ダム 重力 81.5 146,500 1938 1954 ダム湖百選
岩手 北上川 和賀川 湯田ダム 重力アーチ 89.5 114,610 1953 1964 特定 ダム湖百選
宮城 阿武隈川 阿武隈川 阿武隈大堰 - - 1973 1982 [32]
宮城 名取川 碁石川 釜房ダム 重力 45.5 45,300 1964 1970 特定 湖沼法指定
ダム湖百選
宮城 北上川 北上川 北上大堰 - - 1968 1979 [33]
宮城 阿武隈川 白石川 七ヶ宿ダム ロックフィル 90.0 109,000 1973 1991 特定 9条等指定 ダム湖百選
宮城 鳴瀬川 田川 田川ダム ロックフィル 85.0 14,500 1992 未定 特定 事業見直し
宮城 北上川 江合川 鳴子ダム アーチ 94.5 50,000 1951 1958
宮城 鳴瀬川 鳴瀬川 鳴瀬川中流堰 - - 1997 2001 兼用 [18]
宮城 鳴瀬川 鳴瀬川 鳴瀬堰 ラバーダム - - 1982 1991 [28]
秋田 雄物川 玉川 玉川ダム 重力 100.0 254,000 1973 1990 特定 指定 ダム湖百選
秋田 子吉川 子吉川 鳥海ダム 台形CSG 81.0 47,200 1993 未定 特定 事業見直し
秋田 雄物川 成瀬川 成瀬ダム ロックフィル 113.5 78,700 1983 未定 特定 指定 事業見直し
秋田 米代川 小又川 森吉山ダム ロックフィル 89.9 78,100 1973 2012 特定 9条等指定
山形 赤川 梵字川 月山ダム 重力 123.0 65,000 1976 2001 特定
山形 最上川 寒河江川 寒河江ダム ロックフィル 112.0 109,000 1972 1990 特定 指定 ダム湖百選
山形 最上川 置賜白川 白川ダム ロックフィル 66.0 50,000 1968 1981 特定
山形 最上川 置賜野川 長井ダム 重力 125.5 51,000 1979 2011 特定 管野ダム再開発
山形 最上川 最上川 最上川さみだれ大堰 ラバーダム - - 1989 1995 [29]
福島 阿武隈川 摺上川 摺上川ダム ロックフィル 105.0 153,000 1982 2006 特定 9条等指定
福島 阿武隈川 大滝根川 三春ダム 重力 65.0 42,800 1972 1997 特定 9条等指定

東北地方整備局の中止事業

事実上内野ダム計画の後身となった漆沢ダム(鳴瀬川)。宮城県が管理する補助多目的ダム1980年完成。

東北地方整備局管内における中止したダム事業は、旧建設省時代を含めると6事業がある。大別すると特定地域総合開発計画において計画され、諸事情で立ち消えになったダムと、1990年代以降の公共事業見直しの中で中止されたダムという二つの要因がある。

前者の例では、阿仁田沢特定地域総合開発計画における雄物川河川総合開発計画の中心事業として、鎧畑ダム、皆瀬ダムと共に「雄物川四大ダム」として計画された肴沢ダム(成瀬川)と川井ダム(役内川)がある。肴沢ダムは現在の秋田県雄勝郡東成瀬村肴沢、国道342号肴沢橋付近に建設が予定されていたが諸元は不明。川井ダムは現在の秋田県湯沢市川井、国道108号新川井橋付近に建設が予定されており、完成すれば鎧畑ダムとほぼ同等の規模を有するダムであった[34][35]。しかし両ダム共1960年代には計画が自然消滅し、その後の雄物川水系における直轄事業としてのダムは玉川ダムと、肴沢ダム地点よりも上流の成瀬ダムが新たに加わった。現在役内川にはダムは計画されていない。

また、北上特定地域総合開発計画の一環として鳴瀬川上流に計画されていた内野ダムは、筒砂子川との合流点直下流に建設が予定されていた[36]。しかし内野ダムは計画が立ち消えになり、暫くはダム計画も行われなかった。その後旧内野ダム予定地より上流に治水ダムを建設する計画が宮城県により立てられ、計画は治水目的に留まらず灌漑、上水道、工業用水道の供給、さらに水力発電目的も加わり国庫の補助を受けて建設される補助多目的ダムとして1980年に完成した。これが漆沢ダムであり、結果的に内野ダムの目的を引き継ぎかつ強化した形となっている[37]。一方鳴瀬川水系では後者の理由で中止したダム事業として、支流である田川に鳴瀬川総合開発事業の一環として計画された田川第二ダムがある。鳴瀬川総合開発事業は田川に田川第一ダムと田川第二ダムを建設して田川の治水と鳴瀬川流域の灌漑、および上水道・工業用水道供給を目的とした事業であり、1992年(平成4年)より事業に着手した。しかしその後の水需要の変化などで事業が縮小されて田川第二ダムは中止、第一ダムは田川ダムと名称を変更しさらに工業用水道供給目的を廃止。現在は隣接する二ッ石川流域よりバイパストンネルによる洪水導水路を田川ダムに連結、田川・二ッ石川流域の治水と灌漑・上水道供給目的を以って計画されているが、ダム事業再検討対象になっている[38][39][13]

また天然湖沼開発である小川原湖総合開発事業も後者の例である。同事業は小川原湖より流出する高瀬川と高瀬川放水路河口堰を建設して小川原湖をダム化し、淡水化することで治水と灌漑、むつ小川原開発地域への上水道と工業用水道供給を目的としていた[40]が、水需要の低下などにより中止された。

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
分類
水特法
備考
出典
青森 高瀬川 小川原湖 小川原湖総合開発 2.9 153,800 [41]
宮城 鳴瀬川 鳴瀬川 内野ダム ロックフィル 65.0 20,000 漆沢ダムの前身 [36]
宮城 鳴瀬川 田川 田川第二ダム 重力 43.0 2,850 特定 [42]
秋田 雄物川 役内川 川井ダム 重力 52.0 43,000 [35]
秋田 雄物川 成瀬川 肴沢ダム - - - [34]

関東地方整備局

関東地方整備局最大の直轄ダム・宮ヶ瀬ダム中津川神奈川県
八ッ場ダム吾妻川群馬県)の建設予定地(2006年撮影)。60年以上の紆余曲折を経て本体工事に着手しようとしている。

関東地方整備局管内では既設13基、施工中3基の合計16基のダムが運用・施工中である。

管内には日本最大の河川である利根川が流れている。有史以来洪水と改修を繰り返していた利根川水系において治水目的のダムが計画されたのは1926年、物部長穂による河水統制計画案を国策として採用した内務省内務技監青山士らが中心となって策定した鬼怒川改修計画における五十里(いかり)ダム(男鹿川)が最初である。1931年(昭和6年)に現在のダム地点より約2.5キロメートル上流地点[注 2]で工事が開始されたが劣悪な断層が多数露出して中断。太平洋戦争もあって事業は中断したまま戦後を迎えた[43][44]。1947年関東地方カスリーン台風が襲い利根川は埼玉県北埼玉郡大利根町(現在の加須市)で堤防を決壊させ、その濁流は東京都江戸川区にまで達し死者・行方不明者1,100名を数える大災害を招いた[45]。内閣経済安定本部の指示を受けた建設省は利根川改訂改修計画を1949年に策定し、ダムによる利根川の洪水調節を目論んだが1950年の国土総合開発法施行により灌漑と水力発電を含めた総合開発計画に拡充。1951年に利根特定地域総合開発計画を策定した。この時計画・施工されたのが先の五十里ダムの他藤原ダム(利根川)、相俣ダム(赤谷川)、薗原ダム片品川)、八ッ場ダム吾妻川)、川俣ダム(鬼怒川)、行徳可動堰江戸川)である[46]。また荒川の治水を主目的に二瀬ダム(荒川)が1961年(昭和36年)完成する。

その後利根川水系の河川開発は爆発的な人口増加を示す東京都など首都圏への上水道・工業用水道供給といった利水が主眼となり、利根川水系水資源開発基本計画が1962年策定された。この時建設省が計画していた矢木沢ダム(利根川)、下久保ダム神流川)、草木ダム渡良瀬川)などが水資源開発公団(現在の独立行政法人水資源機構)に事業移管された[47]。一方で千葉県茨城県南部の治水・利水を目的に川治ダム(鬼怒川)が建設されたほか、遊水池内を掘削して貯水池を建設し、平野部の治水と利水を図るため渡良瀬遊水地内に渡良瀬貯水池(谷中湖)、荒川第一調節池内に荒川調節池(彩湖)が建設されている[48][49]。また、日本有数の酸性河川だった吾妻川の中和を図るため実施された世界初の河川中和事業・吾妻川酸性水中和事業[50]の中心施設である品木ダム群馬県の事業として1965年(昭和40年)完成するが、1968年(昭和43年)に建設省に移管されている[51]

利根川水系以外での直轄ダム事業は横浜市川崎市横須賀市といった大都市を抱える神奈川県を流れる相模川水系で実施された。相模川水系では神奈川県により戦前から相模川河水統制事業が進められ、相模ダム(1947年)と城山ダム(1964年)が相模川本流に建設され県の水源となったが人口の増加は2ダムの供給量を凌駕。このため県西部の酒匂川水系も開発され三保ダム(河内川、1978年)が完成するが水需要に対する供給量は三保ダム完成を以ってしても不足していた。このため相模川支流の中津川に建設されたのが関東地方の直轄ダムとして最大規模を誇る宮ヶ瀬ダムである。宮ヶ瀬ダムは相模川の治水に加え相模・城山・三保の各ダムと共に神奈川県全域の水源として、さらに年間延べ訪問者数約157万人を超える神奈川県内有数の観光地として重要な位置を占めている[52][53]

現在施工中のダムは八ッ場ダムと湯西川ダム(湯西川)、および荒川上流ダム再編事業[注 3]の一環である新大洞ダム(大洞川)がある。八ッ場ダムは1952年に計画が立案され、当初は吾妻川の酸性水対策の目処が立たず、1967年(昭和42年)より本格的な計画が進められたが川原湯温泉水没を伴うため吾妻郡長野原町の猛烈な反対運動により計画が膠着。2001年(平成13年)に補償基準に調印し2015年(平成27年)完成予定で事業が進められたが鳩山由紀夫内閣の前原誠司国土交通大臣(当時)により中止方針が示され再度膠着した。前原の方針に神奈川県を除く関東一都五県の知事や地元長野原町、水没住民は挙って反発し以後迷走を続けたが、野田内閣においてダム事業再検証の結果事業継続が決定した。だが計画から60年以上経過しても完成しない日本の長期化ダム事業の代名詞的存在となっている[54][55][56][57][58][13]。八ッ場ダム以外にも地元との軋轢を生じたダムとして地元の了解無しに工事を強行して深刻な対立を招いた藤原ダム[59]老神温泉が一部水没することで『東の薗原、西の松原下筌』とまで形容されるほどの反対運動となった薗原ダムがある[60]。国土交通省によるダム事業再検証では八ッ場と新大洞ダム、吾妻川上流総合開発事業(後述)が対象となり、八ッ場は継続、吾妻川上流総合開発は中止となり新大洞は検討中となっている[13][注 4]

なお関東地方整備局が管轄する一級河川のうち久慈川那珂川多摩川鶴見川富士川の各水系には直轄ダムが建設されていない。特に鶴見川水系は都市河川でもあるためダムは本支流含め一つも建設されていない。久慈川、那珂川、富士川水系については支流に茨城県、栃木県、山梨県の各県が補助多目的ダムを建設している。

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
着工
完成
分類
水特法
備考
栃木 利根川 男鹿川 五十里ダム 重力 112.0 55,000 1941 1956
栃木 利根川 鬼怒川 川治ダム アーチ 140.0 83,000 1968 1983 特定 9条等指定
栃木 利根川 鬼怒川 川俣ダム アーチ 117.0 87,600 1957 1966 特定
栃木 利根川 湯西川 湯西川ダム 重力 119.0 75,000 1982 2012 特定 9条等指定 工事中
栃木 利根川 渡良瀬川 渡良瀬貯水池 掘込式貯水池 8.5 26,400 1973 2002 特定 [48]
群馬 利根川 赤谷川 相俣ダム 重力 67.0 25,000 1952 1959 ダム湖百選
群馬 利根川 湯川 品木ダム 重力 43.5 1,668 1961 1965
群馬 利根川 片品川 薗原ダム 重力 76.5 20,310 1958 1965
群馬 利根川 利根川 藤原ダム 重力 95.0 52,490 1951 1958
群馬 利根川 吾妻川 八ッ場ダム 重力 116.0 107,500 1967 2015 特定 9条等指定 工事中
埼玉 荒川 荒川 荒川調節池 掘込式貯水池 - 11,100 1977 1996 特定
埼玉 荒川 大洞川 新大洞ダム 重力 155.0 33,000 1995 未定 治水 事業見直し
埼玉 荒川 荒川 二瀬ダム 重力アーチ 95.0 26,900 1952 1961 特定
千葉 利根川 江戸川 行徳可動堰 - - 1950 1957 [61]
神奈川 相模川 中津川 宮ヶ瀬ダム 重力 156.0 193,000 1971 2000 特定 9条等指定 ダム湖百選
神奈川 相模川 中津川 宮ヶ瀬副ダム 重力 34.5 557 1971 2000 特定

関東地方整備局の中止事業

関東地方整備局管内で中止されたダム事業は、旧建設省時代を含めると16事業17ダムに上るが、そのほとんどは利根川・荒川水系で計画されたものである。

中止ダムのうち利根川本流の沼田ダム計画は利根川の治水、赤城山榛名山麓の大規模農地灌漑、東京都への水道供給そして出力130万キロワットの水力発電を目的とし、ダムにより誕生する人造湖は総貯水容量が8億立方メートルと仮に完成していれば日本最大の多目的ダムとなっていた[62]。しかしダムにより群馬県沼田市において2,200世帯が水没し移転を余儀なくされ、多大な犠牲を蒙る沼田市は市議会で建設反対決議を全会一致で可決。さらに神田坤六群馬県知事以下群馬県当局・群馬県議会も建設反対を表明し群馬県が官民一体で反対運動を繰り広げ、最終的に第1次田中角栄内閣建設大臣であった木村武雄1972年(昭和47年)に計画中止を表明するまで地元に大きな混乱をもたらした[63]。広地(白砂川)、鳴瀬(温川)、高沼(四万川)、本庄(烏川)、山口(鏑川)、跡倉(南牧川)の6ダムは利根川改訂改修計画や利根特定地域総合開発計画において利根川治水計画の一環で検討された[64][65]ものの立ち消えとなっており、このうち四万川には四万川ダム、烏川には倉渕ダムが後に完成または施工されている[注 5]。また利根川改訂改修計画で計画された坂原ダム(神流川)はその後神ヶ原ダム計画を経て下久保ダムとして完成している[66][64]

一方1990年代以降の公共事業見直しで中止になった事業も多い。関東地方整備局管内では既存の遊水池や天然湖沼などを利用し、ダム化する事業が多く計画されたが渡良瀬貯水池と荒川調節池を除き中止された。茨城県取手市の利根川にある稲戸井調節池内に貯水池を設ける稲戸井調整池総合開発事業、渡良瀬第二遊水地内に貯水池を設ける渡良瀬第二貯水池事業、さいたま市の荒川第二調節池に貯水池を設ける荒川第二調節池総合開発事業、印旛沼を掘削して貯水容量を増大させる印旛沼総合開発事業がこれに当たる[67]。また行徳可動堰と江戸川水閘門旧江戸川)直上流に新しい堰と水門を建設し江戸川の治水と利水を強化する江戸川総合開発事業[68]、相俣ダム上流に高さ160メートルと関東の直轄ダムでは最も高いダムを建設して利根川の治水と首都圏への利水強化を目的とした川古ダム計画も中止された[69]。さらに万座ダム(万座川)の新規建設と品木ダムの嵩上げ、中和処理施設改築を柱とする吾妻川上流総合開発事業は国土交通省のダム事業再検証対象となり、2012年に中止が決定されている[13][70]

利根川・荒川水系以外では山梨県南部を流れる富士川支流の早川に計画されていた角瀬ダムが1950年代に中止されている。完成すれば富士川水系最大規模の多目的ダムとなるが、計画を検討したところダムを建設するだけの費用対効果が得られないという結論に達し、事業は調査段階で中止となった[71]

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
分類
水特法
備考
出典
茨城 利根川 利根川 稲戸井調節池総合開発 掘込式貯水池 10.5 21,400 特定 [72]
栃木 利根川 渡良瀬川 渡良瀬第二貯水池 掘込式貯水池 4.8 10,500 特定 [73]
群馬 利根川 利根川 沼田ダム アーチ 125.0 800,000 [62]
群馬 利根川 赤谷川 川古ダム 重力 160.0 75,000 特定 [69]
群馬 利根川 湯川 品木ダム再開発 重力 59.5 3,893 治水 吾妻川上流総合開発 [70]
群馬 利根川 万座川 万座ダム 重力 90.0 8,900 治水 吾妻川上流総合開発 [70]
群馬 利根川 白砂川 広地ダム - - - [64]
群馬 利根川 温川 鳴瀬ダム - - - [64]
群馬 利根川 四万川 高沼ダム 重力 75.0 28,700 [65]
群馬 利根川 烏川 本庄ダム - - - [64]
群馬 利根川 鏑川 山口ダム - - - [64]
群馬 利根川 南牧川 跡倉ダム - - - [64]
群馬 利根川 神流川 坂原ダム 重力 101.0 22,000 下久保ダムの前身 [66]
群馬 利根川 神流川 神ヶ原ダム - - - 下久保ダムの前身 [64]
千葉 利根川 江戸川 江戸川総合開発 - 7,100 特定 [74]
千葉 利根川 印旛沼 印旛沼総合開発 掘込式貯水池 6.8 50,800 特定 [74]
埼玉 荒川 荒川 荒川第二調節池総合開発 掘込式貯水池 12.8 11,000 特定 [75]
山梨 富士川 早川 角瀬ダム 重力 80.0 47,600 [71]

北陸地方整備局

北陸地方整備局管内で最大の直轄ダム・手取川ダム手取川)。電源開発と共同管理。
関西電力出し平ダム連携排砂を行う宇奈月ダム黒部川富山県)。画面右側に排砂設備がある。

北陸地方整備局管内では、既設ダム・堰が11基、施工中ダム2基の計13基が存在する。日本最長の河川・信濃川を始め阿賀野川荒川の各水系を一貫管理する関係上、本来は東北地方整備局管内である山形県横川ダム(横川)、福島県大川ダム(阿賀野川)や中部地方整備局管内である長野県大町ダム高瀬川)は北陸地方整備局管理の直轄ダムである。反面北陸地方でも福井県を流域に持つ九頭竜川水系と北川水系は、近畿地方整備局の管轄となっている。事業形態としては河川法第17条における兼用工作物規定に基づき、管内最大規模の直轄ダムである手取川ダム手取川)は電源開発北陸電力石川県との共同事業で建設され(後述)現在は電源開発[注 6]との共同管理である[76]。また新潟県長岡市に建設された妙見堰(信濃川)は治水目的のほか国道17号バイパス越の大橋)としての渋滞緩和、東日本旅客鉄道(JR東日本)の小千谷・新小千谷発電所放流水均等化(逆調整)目的も有することから、旧建設省の河川管理部局と道路管理部局および東日本旅客鉄道の三者による共同事業として建設されている[77]

北陸地方を流域に持つ河川は融雪による豊富な水量、北アルプス三国山脈といった急峻な山岳地帯を流れるため急流かつ高落差であるという水力発電の好条件を備える河川が多く、大正時代から水力発電事業が各河川で盛んに実施された。だが水力発電に適した河川は大雨が降れば容易に洪水を引き起こし、信濃川の戌の満水横田切れなど流域に甚大な被害を与える水害を度々もたらしていた。こうした中で実施された国直轄の河川事業で早期に行われたものとして信濃川大河津分水事業が挙げられる。享保年間より構想された分水計画は1896年明治22年)7月22日の横田切れを機に急速に進められ、放水路である大河津分水(新信濃川)と信濃川の流量を調節する大河津洗堰1922年(大正11年)完成する。しかし1927年(昭和2年)の洪水で分水側の堰が破壊されたことから、1931年(昭和6年)大河津可動堰が完成し分水本来の目的が強化された[78]

戦後、国土総合開発法に基づく特定地域総合開発計画のうち、北陸地方の河川に関連するものとしては只見川を中心とした阿賀野川、信濃川水系が対象の只見特定地域総合開発計画[79]神通川常願寺川庄川水系を対象とした飛越特定地域総合開発計画[80]があるが[注 7]、何れも主目的は電力会社が事業主体の水力発電であり治水は常願寺川の砂防事業程度であった。活発な水力発電開発により黒部ダム黒部川)を筆頭に日本屈指の規模を持つダムが多く建設されたが、他地域で盛んに実施されていた河川総合開発事業に基づく治水が主目的の多目的ダム事業は一級河川では富山県が神通川水系の支流で実施した程度であった。しかし1967年(昭和42年)に新潟県下越地方・山形県置賜地方を襲った羽越豪雨は特に荒川流域に致命的な被害を与え[81][82][83]1969年(昭和44年)8月の前線による集中豪雨は信濃川・黒部川流域に大きな被害をもたらした[84]。これら水害を機に新たな河川整備が計画され、荒川では二級河川だった河川等級を1968年(昭和43年)に一級河川に昇格させ[85]大石(大石川)・横川ダムが、信濃川水系では関屋分水蒲原大堰(信濃川)などといった下流部治水事業に加え支流魚野川流域に三国川(さぐりがわ)ダム(三国川)と犀川流域に大町ダムが建設され、水力発電専用ダムしか存在しなかった黒部川水系にも宇奈月ダム(黒部川)が建設された。一方石川県最大の河川・手取川では手取川ダムを巡り旧建設省の治水事業、電源開発・北陸電力の水力発電事業、石川県による水道事業が競合していたが一本化され、河川法第17条に基づき四事業者の共同事業による手取川総合開発事業として1979年(昭和54年)完成した[86]

現在施工中の事業としては大河津可動堰の改築と利賀ダム(利賀川)がある。大河津分水と信濃川の水量を制御する大河津可動堰と大河津洗堰は完成から70年以上経過して老朽化が著しく、治水安全上施設を改良する必要性が生じた。このため2000年(平成12年)に大河津洗堰が改築され、続いて大河津可動堰の改築が実施された。何れも旧堰地点とは別に新堰を建設し、旧堰の機能を継承・向上させる目的であり新可動堰は2011年(平成23年)に本体が完成し通水が行われ、現在は2013年(平成25年)を目処とした旧可動堰の解体・撤去が行われている[78][87]。利賀ダムは庄川水系における初の特定多目的ダムとして計画されている[注 8]が、国土交通省によるダム事業再検討の対象となっている[13]。一方、北陸地方整備局におけるダム事業の技術的特色として宇奈月ダムは関西電力の出し平ダムと連携してダム管理上の宿敵である堆砂(たいしゃ)を海に流す連携排砂事業を実施している[88]。しかし宇奈月ダム完成前の1991年(平成3年)に出し平ダムが単独で実施した第1回排砂に対し、富山湾の漁業関係者の一部が排砂による漁業被害を理由に排砂の中止を求めて起こした黒部川ダム排砂被害訴訟が起こり[89]第一審富山地方裁判所判決では排砂とワカメ被害の因果関係を認め被告の関西電力に賠償を支払う判決が下されたが原告・被告双方が控訴[注 9]。最終的に「海中での被害立証は困難」とする名古屋高等裁判所金沢支部が和解を提案、2011年4月に両者の和解が成立した[90]。本訴訟に宇奈月ダムは直接の関係は無いが、連携排砂と環境保護の両立は先の見えない状況が続いている。

なお、北陸地方の一級河川では関川姫川、常願寺川、神通川、梯川の各水系で直轄ダムが建設されておらず、特に姫川水系には本支流の何れにもダムが建設されていない[注 10]。常願寺川は砂防事業が治水事業の根幹であり、支流を含め治水目的のダムは建設されていない。神通川・梯川水系は富山・石川・岐阜県により治水目的を有する補助多目的ダム補助治水ダムが建設されているが、関川水系の笹ヶ峰ダム(関川)は治水目的を持たない多目的ダムである。

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
着工
完成
分類
水特法
備考
山形 荒川 横川 横川ダム 重力 72.5 24,600 1987 2007 特定 指定
福島 阿賀野川 阿賀野川 大川ダム 重力 75.0 57,500 1971 1987 特定 指定
新潟 荒川 大石川 大石ダム 重力 87.0 22,800 1970 1978 特定
新潟 信濃川 信濃川 大河津洗堰 - - 1909 1922 2000年改築[78]
新潟 信濃川 大河津分水 大河津可動堰 - - 1927 1931 改築中[78]
新潟 信濃川 信濃川 蒲原大堰 - - 1978 1984 [91]
新潟 信濃川 三国川 三国川ダム ロックフィル 119.5 27,500 1975 1993 特定
新潟 信濃川 関屋分水 新潟大堰 - - 1964 1972 [92]
新潟 信濃川 信濃川 妙見堰 - - 1985 1990 兼用 [93][94]
富山 黒部川 黒部川 宇奈月ダム 重力 97.0 24,700 1974 2000 特定
富山 小矢部川 小矢部川 小矢部大堰 - - - 1982 [95]
富山 庄川 利賀川 利賀ダム 重力 112.0 31,100 1989 2022 特定 事業見直し
石川 手取川 手取川 手取川ダム ロックフィル 153.0 231,000 1970 1979 兼用 9条等指定
長野 信濃川 高瀬川 大町ダム 重力 107.0 33,900 1972 1985 特定

北陸地方整備局の中止事業

清津峡。清津川ダムが建設されていれば水没する運命であった。

北陸地方整備局管内で中止したダム事業は旧建設省時代を含めると4ダム事業があり、信濃川水系と阿賀野川水系で中止事業が存在する。

信濃川水系では1964年に構想が発表され1985年(昭和60年)に予備調査が開始された信濃川本流の千曲川上流ダム計画と、1974年(昭和49年)3月の信濃川水系工事実施基本計画で三国川、大町ダムと共に計画され1984年(昭和59年)に事業が着手された清津川ダム計画(清津川)がある。両ダムとも大規模な特定多目的ダムであり、仮に完成すれば千曲川上流ダムは長野県最大、清津川ダムは新潟県最大の多目的ダムとなる[96][97]。しかし千曲川上流ダムでは南佐久郡南牧村主要部と川上村で250戸が水没し、さらにJR小海線国道141号が水没するなど地域に大打撃を与えるとして両村が反対、参議院に請願書を提出するなど抵抗した[98]。また清津川ダムも南魚沼郡湯沢町などで110戸が水没、さらに上信越高原国立公園名勝・国の天然記念物に指定されている清津峡が水没することで強い反対が起こり、当時の中魚沼郡中里村(現在の十日町市)議会も反対に回るなど流域間で対立を招いた[99]。最終的に千曲川上流ダム・清津川ダムは両方共2002年(平成14年)に事業中止が決定する[97][99]。しかしダム建設に反対していた地元住民は中止後の生活再建に対し国のみならず、ダム事業に反対していた政党や市民団体、旧中里村が何ら手を差し伸べないことを批判している[100]。治水目的のダムは千曲川上流・清津川に限らず信濃川水系では田中康夫長野県知事(当時)による「脱ダム宣言」以降多くのダムが中止された。しかし平成16年7月新潟・福島豪雨(2004年)や平成23年7月新潟・福島豪雨(2011年)など信濃川水系は水害による被害を受け続けており、治水事業は途上である。また平成18年7月豪雨では大町ダムと犀川流域の発電用5ダム(奈川渡水殿稲核高瀬七倉)の連携洪水調節で、犀川の氾濫が抑制されている[101]

阿賀野川水系では只見川支流の伊南川に計画していた大桃ダムが中止されている。只見川流域唯一の治水目的を持つダムで、只見特定地域総合開発計画で計画された内川ダム計画[注 11]中止後の伊南川流域における水力発電目的を有していたが、計画自体が立ち消えとなった[102]。これにより奥只見ダム(只見川)を筆頭に多数のダムが建設されている只見川は、治水を目的とするダムが現在一つも存在しない。一方日橋川上流総合開発事業は、天然湖沼である猪苗代湖周辺地域の治水安全度向上を図るため、日橋川流出口にある十六橋水門を改築することで猪苗代湖に新規の治水容量を確保、同時に複数の事業者に分散している猪苗代湖の水利権を河川管理者である国が一括管理することを主目的とした事業であるが[103][104]、公共事業見直しにより中止されている。なお、猪苗代湖自体は日橋川上流総合開発中止後2005年(平成17年)より福島県が河川管理者として湖を管理し、現状の十六橋水門を利用した多目的ダムとして運用している[105][106]

所在地
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
分類
水特法
備考
出典
福島 阿賀野川 猪苗代湖 日橋川上流総合開発 5.7 3,800,000 [107][106]
福島 阿賀野川 伊南川 大桃ダム 重力 74.0 13,881 [102]
新潟 信濃川 清津川 清津川ダム 重力 150.0 170,000 特定 [96]
長野 信濃川 信濃川 千曲川上流ダム 重力 80.0 80,000 特定 [97]

中部地方整備局

中部地方整備局管理の直轄ダムでは総貯水容量が最大の矢作ダム矢作川愛知県
美和ダム三峰川長野県)の再開発事業で建設された堆砂防除用のバイパストンネル出口。

中部地方整備局管内では既設ダム・堰7基、工事中・再開発中ダム7基の14基を直轄管理・施工している。ただし、河川法第17条の兼用工作物として丸山ダム(木曽川)は関西電力[108]新豊根ダム(大入川)は電源開発[109]、櫛田川可動堰(櫛田川)は三重県との共同事業として建設されている[110]。また、中部地方を流れる河川のうち富士川水系関東地方整備局信濃川水系、神通川水系、庄川水系は北陸地方整備局が管理する河川である。

管内を流れる木曽川水系、大井川水系、天竜川水系、矢作川水系は北陸地方の河川と同様に水力発電に適した河川として、大正時代から福澤桃介松永安左エ門などにより大井ダム(木曽川)などの水力発電用ダムが建設され、治水は木曽三川(木曽川・長良川揖斐川)の分流工事など堤防整備を中心とした改修が行われていた。しかし戦後の水害頻発や食糧・電力不足を補う必要が生じたため多目的ダムによる河川開発が木曽川水系と天竜川水系で計画され、それぞれ木曽特定地域総合開発計画天竜東三河特定地域総合開発計画として1951年閣議決定されて本流・支流に多数の多目的ダムが計画された[111]。直轄ダムとしては木曽川水系において日本発送電が施工し関西電力に継承された丸山ダムが治水目的を加えた多目的ダムとして1955年(昭和30年)に完成。天竜川水系では特定多目的ダム法指定第一号の直轄ダムとして美和ダム三峰川)が1957年(昭和32年)に完成した[112]。その後1959年(昭和34年)9月の伊勢湾台風1961年(昭和36年)の昭和36年梅雨前線豪雨(三六災害)による管内河川の洪水被害を受け木曽川、矢作川、天竜川の各水系で多目的ダムが計画され、横山ダム(揖斐川)、矢作ダム(矢作川)、小渋ダム(小渋川)が建設された。

中部地方については名古屋市を中心とした中京圏の人口増加、古くから穀倉地帯である濃尾平野の農業生産力向上と知多半島渥美半島三方原台地牧之原台地など慢性的な水不足地域への水供給、さらに中京工業地帯の拡充による利水需要の増大が戦前・戦後を通じ表面化。愛知用水(1961年)や豊川用水(1963年)などの完成により水需要は改善したものの東名高速道路東海道新幹線の開通は人口の増加に拍車を掛け、水不足は容易に解決しなかった。このため1965年(昭和40年)に木曽川水系が水資源開発促進法の対象河川として水資源開発公団(現在の独立行政法人水資源機構)の開発河川に指定され、同法に基づく木曽川水系水資源開発基本計画により建設省が計画していた徳山ダム(揖斐川)、岩屋ダム馬瀬川)、阿木川ダム阿木川)は公団へ事業が移管された[113]

このほか中部電力による水力発電事業が先行していた大井川水系では島田市掛川市など大井川流域市町村への治水・利水を目的に流域唯一の多目的ダムとして長島ダム(大井川)が2001年(平成13年)に完成[114]。名古屋市を貫流する庄内川水系では下流域の都市化により堤防建設や川幅拡張が極めて困難な状況になったことからダムによる治水が計画され、支流の小里(おり)川に小里川ダム2003年(平成15年)完成している[115]。櫛田川では1969年(昭和44年)に三重県が従来建設していた農業用の固定堰を改築して治水目的を加えた櫛田川可動堰が完成[116]、さらに1991年(平成3年)には水系唯一の多目的ダムである蓮(はちす)ダムが支流の蓮川に完成。三重県中南部のみならず離島である神島の水需要に貢献している[117]

管内における施工中のダムは7基あるが、このうちダム再開発事業が4ダム存在する。天竜川水系の美和、小渋ダムは流域が南アルプスに属しているが南アルプスは脆弱な地質が原因で絶えず崩壊しており、崩壊による大量の土砂がダム湖に流入して深刻な堆砂を招いていた。このため堆砂を防除してダム機能を維持するためのバイパストンネル建設を軸にした再開発事業が現在進められている[118][119]。また天竜川最大にして日本屈指のダムである佐久間ダム(天竜川)は天竜川下流の治水強化とダム機能維持を目的として2004年(平成16年)より佐久間ダム再開発事業(天竜川ダム再編事業)が計画されており、完成すれば佐久間ダムは従来の水力発電目的単独から洪水調節目的が加わり多目的ダムとなる[120]。一方木曽川本流の丸山ダム再開発は1983年(昭和58年)の豪雨で木曽川が美濃加茂市で氾濫し、丸山ダムの治水機能向上が不可避となったことから日本国内では最大となる24.3メートルのダム嵩上げをして治水容量を旧ダムの3.5倍に拡張する新丸山ダムを建設する計画である[121]。新規ダム事業としては慢性的な水不足が頻発する豊橋市など愛知県東部の水がめおよび治水ダムがない豊川水系の治水を目的にした設楽ダム(豊川)、美和ダム上流に建設して三峰川の治水を強化する戸草ダム(三峰川)がある。しかし国土交通省によるダム事業再検討で新丸山、設楽、戸草の3ダム事業は見直し対象となり[13]検証中である。特に戸草ダムは2001年に田中康夫長野県知事(当時)が利水事業からの撤退を表明、2008年(平成20年)には国土交通省が事業中止を表明したものの伊那市など地元の反発により中止を撤回した経緯があるが[122]2012年(平成24年)7月に再検討の結果多目的ダムとしての戸草ダム事業は中止し、治水ダムとして再度計画を検討する方向性となった[123][124]

なお、管内の一級河川において狩野川安倍川菊川鈴鹿川雲出川宮川の各水系には直轄ダムが建設されておらず、このうち狩野川と安倍川には本支流を含めダムが全く建設されていない。ただし狩野川については狩野川台風による甚大な被害を契機に狩野川放水路が建設されている。雲出川と宮川については三重県により君ヶ野ダム(雲出川水系八手俣川)、宮川ダム(宮川)といった補助多目的ダムが完成。鈴鹿川には支流に利水専用ダム(加佐登調整池)が建設されている。

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
着工
完成
分類
水特法
備考
長野 天竜川 小渋川 小渋ダム アーチ 105.0 58,000 1961 1969 特定 再開発
長野 天竜川 三峰川 戸草ダム 重力 140.0 61,000 1984 未定 特定 事業見直し
長野 天竜川 三峰川 美和ダム 重力 69.1 34,300 1952 1959 特定 再開発中
ダム湖百選
岐阜 庄内川 小里川 小里川ダム 重力 114.0 15,100 1979 2003 特定
岐阜 木曽川 木曽川 新丸山ダム 重力 122.5 146,350 1980 未定 特定 指定 丸山ダム再開発
事業見直し
岐阜 木曽川 木曽川 丸山ダム 重力 98.2 79,520 1950 1955 兼用 再開発中
岐阜 木曽川 揖斐川 横山ダム 中空重力 80.8 40,000 1957 1964 特定 2010年再開発
静岡 天竜川 天竜川 佐久間ダム再開発 重力 155.5 343,000 2004 未定 ダム湖百選[注 12]
静岡 大井川 大井川 長島ダム 重力 109.0 78,000 1972 2001 特定 指定
愛知 豊川 豊川 設楽ダム 重力 129.0 98,000 1978 未定 特定 事業見直し
愛知 天竜川 大入川 新豊根ダム アーチ 116.5 53,500 1969 1972 兼用
愛知 矢作川 矢作川 矢作ダム アーチ 100.0 80,000 1962 1970 特定
三重 櫛田川 櫛田川 櫛田川可動堰 - - - 1969 兼用 [110][116]
三重 櫛田川 蓮川 蓮ダム 重力 78.0 32,600 1971 1991 特定 指定

中部地方整備局の中止事業

岩屋ダム馬瀬川水資源機構
1952年の計画は立ち消えとなり、中部電力による構想を経て1969年に計画が復活し1976年に完成する。

中部地方整備局管内における中止したダム事業は旧建設省時代を含め15ダムあるが、その大半は木曽川水系におけるものである。

木曽川水系では木曽特定地域総合開発計画において、木曽川の丸山ダムを始め多数の多目的ダムが計画されたが、木曽三川のほか流域面積では木曽川水系最大の支流である飛騨川流域において河川総合開発が計画されていた。当時飛騨川は中部電力による飛騨川流域一貫開発計画に基づく水力発電事業が積極的に実施されていたが、木曽特定地域総合開発計画により建設省が新たにダム計画を定めていた。飛騨川本流の久田見ダムをはじめ支流に大規模な多目的ダムを建設するほか、中部電力が施工していた朝日ダム(飛騨川)を丸山ダムと同様に多目的ダム化する計画も存在していた。また揖斐川流域(揖斐川、根尾川牧田川)にも横山ダム以外にダムを建設するほか、長良川支流の板取川にも大規模ダムを建設。さらに木曽川本流中流部の愛知県犬山市に犬山ダムを建設するのが当初の計画だった[125]

しかし計画は変更されて揖斐川・長良川流域のダム計画は横山ダムを除き中止され、飛騨川のダム計画も久田見、岩屋、岩瀬3ダムに縮小された。代わりに信濃川水系との導水計画が加わって木曽川最上流部に薮原ダムが計画され、信濃川水系奈良井川との間にトンネルを建設して導水する予定であった。だがこれらの計画も変更されほとんどのダム計画が立ち消えとなり、最終的に完成したのは丸山、横山および二子持ダム計画から治水目的を除き愛知用水の水源とした牧尾ダムの3ダムである[126]。なお中止したダム計画のうち幾つかは、その後別なダム事業として事実上の前身となる例があった。その例として薮原ダム地点に味噌川ダム、東杉原ダム地点に徳山ダムが建設され、岩屋ダムは1969年に旧計画を大幅に凌駕する大規模ダム計画として復活した。また根尾ダム地点付近には中部電力により1995年(平成7年)、奥美濃揚水発電所の下部調整池・上大須ダム(根尾東谷川)が建設されている[127]

一方1990年代の公共事業見直しにより中止した事業としては矢作川水系の2ダムがある。矢作川本流に1971年(昭和46年)より計画された矢作川河口堰は矢作川河口より1.7キロメートル上流に計画され、矢作川河口部の治水と衣浦臨海工業地域への工業用水道供給を目的としていたが、水道事業者である愛知県が水利権を返上して事業から撤退し事業継続の必要性が低下、2000年(平成12年)に事業が中止された[128][129]。また支流上村川に計画されていた上矢作ダムは東海豪雨による矢作川・上村川流域の被害が甚大であったものの、費用対効果と迅速な治水事業の進捗という観点で矢作ダムの有効活用と河川改修を重点に置くという矢作川水系河川整備基本方針の策定を受け、2009年(平成21年)に事業は見送りとなり鳩山由紀夫内閣前原誠司国土交通大臣によるダム事業見直しで中止が決定した[130]

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
分類
水特法
備考
出典
長野 木曽川 木曽川 薮原ダム 重力 50.0 9,000 味噌川ダムの前身 [126]
岐阜 木曽川 王滝川 二子持ダム 重力 75.0 68,500 牧尾ダムの前身 [125]
岐阜 矢作川 上村川 上矢作ダム ロックフィル 150.0 54,000 特定 [131]
岐阜 木曽川 飛騨川 朝日ダム再開発 重力 92.0 34,400 [125]
岐阜 木曽川 飛騨川 久田見ダム 重力 60.0 76,000 [125]
岐阜 木曽川 小坂川 落合ダム 重力 70.0 67,250 [125]
岐阜 木曽川 馬瀬川 岩屋ダム 重力 70.0 24,000 1969年計画復活 [125]
岐阜 木曽川 和良川 岩瀬ダム 重力 50.0 17,500 [125]
岐阜 木曽川 板取川 洞戸ダム 重力 60.0 155,500 [125]
岐阜 木曽川 揖斐川 東杉原ダム 重力 72.0 184,000 徳山ダムの前身 [125]
岐阜 木曽川 根尾川 黒津ダム 重力 84.0 130,000 [125]
岐阜 木曽川 根尾東谷川 根尾ダム 重力 45.0 16,000 [125]
岐阜 木曽川 牧田川 一之瀬ダム 重力 32.0 6,710 [125]
愛知 矢作川 矢作川 矢作川河口堰 6.2 20,000 [129]
愛知 木曽川 木曽川 犬山ダム 重力 35.0 35,150 [125]

近畿地方整備局

近畿地方整備局管内では最大規模の直轄ダム・九頭竜ダム九頭竜川福井県)。電源開発との共同事業。
大滝ダム紀の川奈良県
本格運用開始まで50年を費やした日本の長期化ダム事業の代表格。

近畿地方整備局管内では管理中ダム10基(取水ダム含む)、施工・ダム再開発事業中3基の計13基を管理・施工している。ただし河川法第17条の兼用工作物として管内最大の直轄ダムである九頭竜ダム九頭竜川)は電源開発[132]淀川大堰淀川)は水資源開発公団(現在の独立行政法人水資源機構)との共同事業として建設されている[133]

管内に大阪市京都市神戸市などの大都市と西日本最大の河川・淀川を擁する関係上、淀川水系の河川開発は最重要であった。古くは行基の頃より手掛けられた淀川の治水は1900年(明治33年)より実施された淀川改良工事で新淀川開削[134]のほか琵琶湖の水位を調整する南郷洗堰(淀川)が建設され、さらに琵琶湖河水統制事業が1943年(昭和18年)より実施されて治水のほか水力発電灌漑を目的に1952年(昭和27年)完成する[135]。ところが1953年(昭和28年)台風13号が淀川、由良川に過去最悪となる水害を起こし、根本的な河川改修が求められた。結果淀川水系改修基本計画が定められ淀川本流に天ヶ瀬ダムが建設されたほか瀬田川洗堰(淀川)の改築、木津川桂川といった大支流に多目的ダムを建設する計画が立案された。その後淀川水系の河川開発は大阪市など関西圏の人口増加や阪神工業地帯の拡充による水道需要の急増に伴い、水資源開発に重点が移ったことから1962年(昭和37年)に水資源開発促進法に拠る淀川水系水資源開発基本計画が策定され、旧建設省が計画していた高山ダム名張川)は水資源開発公団に事業を移管させた。以後、淀川水系の多目的ダム事業は水資源開発公団が主体で行い、青蓮寺(青蓮寺川)、室生宇陀川)、一庫一庫大路次川)、布目(布目川)、比奈知(名張川)、日吉(桂川)の各ダムが建設された。また1972年(昭和47年)琵琶湖総合開発特別措置法制定により建設省・水資源開発公団・滋賀県および琵琶湖沿岸市町村が一体的に参加した琵琶湖総合開発事業が実施され、琵琶湖の多目的ダム化が図られた[136]。これに関連し1971年(昭和46年)の淀川水系工事実施基本計画に伴い、琵琶湖に関連する河川での多目的ダム事業が計画され、丹生ダム高時川[注 13]大戸川ダム大戸川)が計画された[137]

淀川と同時期に総合開発が実施された河川としては紀の川がある。紀の川の水を奈良盆地へ導水する吉野川分水計画は奈良県300年来の悲願であったが、水利権を巡る下流の和歌山県との対立は激化し単独での事業遂行は不可能だった。戦後1949年(昭和24年)に農林省(現在の農林水産省)主導による十津川・紀の川総合開発計画で新宮川熊野川)の水を紀の川へ導水、さらに紀の川の水を奈良盆地に導水して奈良・和歌山両県の水需要を満たす計画が立案。同事業は1950年(昭和25年)の国土総合開発法に基づく吉野熊野特定地域総合開発計画に組み入れられ、新宮川・紀の川間導水の要である猿谷ダム(熊野川)を皮切りに農林省直轄ダムとして大迫(紀の川)、津風呂(津風呂川)、山田(野田原川)の各ダムが完成し奈良県の悲願である吉野川分水が達成された[138][139]。ところが1959年(昭和34年)の伊勢湾台風で紀の川流域は水害による大きな被害を受け、治水目的の多目的ダム建設が急務となり紀の川本流に大滝ダムが計画されることになる[140]

このほか九頭竜川水系は九頭竜ダムを核にした電源開発と北陸電力による奥越電源開発計画が競合していたが、伊勢湾台風や第二室戸台風による九頭竜川の洪水を機に建設省が九頭竜ダム計画に参入。電源開発との共同事業で1968年(昭和43年)に完成させるが[141]1965年(昭和40年)9月の台風24号に伴う奥越豪雨は笹生川ダム(真名川)の治水機能を喪失させ、当時の大野郡西谷村(現在の大野市)に壊滅的被害を与え村を消滅させるなど甚大な被害を与えた。このため支流真名川の総合開発も計画され1977年(昭和52年)真名川ダムが完成する[142]。その後九頭竜川中流部の治水・利水を目的に九頭竜川鳴鹿大堰(九頭竜川)が完成し、福井市などへの利水も強化された。こうした中発生した2004年(平成16年)の平成16年7月福井豪雨において、真名川流域では真名川ダムの洪水調節で下流域への洪水被害をほぼ皆無に抑えた反面、強固な反対運動で足羽川ダム事業が凍結していた足羽川流域では福井市内で堤防が決壊するなど死者を出す大きな被害を生じ、同じ降水量にも関わらず対照的な結果をもたらした[143][144]。福井豪雨以後ダム建設再開要望が福井市など流域市町村より高まり、穴あきダムとして足羽川支流の部子川に建設する新ダム計画となった。前原誠司国土交通大臣(当時)はダム事業再検証対象としたが、2012年(平成24年)にダムは事業継続となる[13][145]加古川水系は農林水産省による広域農業水利事業により鴨川ダム(鴨川)、呑吐(どんど)ダム志染川)など農林水産省直轄ダムが支流に建設されていたが、治水・利水を目的として水系初の直轄ダムである加古川大堰(加古川)が1988年(昭和63年)に完成した[146]

管内におけるダム事業と移転住民の摩擦では大滝ダムが特に知られる。1962年(昭和37年)より計画に着手したが吉野郡川上村で399487世帯が移転対象となり激しい反対運動が繰り広げられ、さらに試験的に貯水を行う試験湛水中に川上村白屋地区で地すべりが発生。対策工事などで本格的な運用を開始するまで50年を費やし、完成した日本のダムにおいて施工期間が最も長い日本の長期化ダム事業の代表格となった[147][148]。また建設省が施工し京都府に管理が移管された大野ダム(由良川)は蜷川虎三京都府知事(当時)の奔走により補償交渉が妥結するという状況であった[149]。一方で水没戸数が大野郡和泉村(現在の大野市)で529戸と大滝ダムを上回る規模の九頭竜ダムでは、施工を担当した電源開発が「補償交渉終了まで工事は実施しない」という方針を打ち出し、大滝ダムとは対照的にわずか2年で補償交渉を妥結に導いた。この原則は「九頭竜補償方式」と名づけられ以後電源開発によるダム事業の大原則となる[150]。そして2005年(平成17年)に国土交通省の諮問機関である淀川水系流域委員会が答申した計画5ダム(丹生、大戸川、余野川川上、天ヶ瀬ダム再開発)の事業中止答申は流域自治体に大きな影響を与え、国土交通省は一旦5事業を中止する意向を示したものの流域自治体が反発。その後嘉田由紀子滋賀県知事によるダム事業見直し政策などで状況は二転三転し淀川水系の河川開発は混乱を来たした[151]。現在5ダムのうち余野川が中止(後述)、丹生・大戸川・川上は国土交通省によるダム事業再検証の対象、天ヶ瀬ダム再開発事業のみ再検証対象外として事業が継続している[13]。また関西国際空港関連事業として大阪府が水利権を有していた紀の川大堰(紀の川)では、当時の橋下徹大阪府知事2009年(平成21年)に水利権を返上している[152][注 14]

なお、管内における一級河川のうち北川円山川揖保川大和川水系には直轄ダムが建設されていない。大和川を除く3水系は本流にダムが建設されていないが、支流に補助多目的ダムが福井県や兵庫県、奈良県により建設、施工されている。また淀川水系の主要な支流のうち、木津川本流にはダムが建設されていない。ダム管理上の新たな問題点として天ヶ瀬ダムでは自殺者が急増したことにより一時緊急的にダムの立入を禁止し、現在はダムの夜間訪問が禁止されている[153][154]。自殺防止対策として飛び降り防止柵や青色照明灯を導入するなどの対策により、2011年(平成23年)度における自殺者はゼロとなっている[155]

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
着工
完成
分類
水特法
備考
福井 九頭竜川 部子川 足羽川ダム 重力 96.0 28,700 1983 未定 治水 指定 工事中
福井 九頭竜川 九頭竜川 九頭竜ダム ロックフィル 128.0 353,000 1962 1968 兼用
福井 九頭竜川 九頭竜川 九頭竜川鳴鹿大堰 5.7 667 1989 2003 特定
福井 九頭竜川 真名川 真名川ダム アーチ 127.5 115,000 1965 1977 特定
滋賀 淀川 淀川 瀬田川洗堰 - 27,500,000 1900 1905 1961年改築[156]
貯水容量は琵琶湖
滋賀 淀川 大戸川 大戸川ダム 重力 67.5 21,900 1978 未定 治水 指定 事業見直し
京都 淀川 淀川 天ヶ瀬ダム アーチ 73.0 26,280 1955 1964 特定 再開発
大阪 淀川 淀川 淀川大堰 - - 1971 1984 兼用 [133]
兵庫 加古川 加古川 加古川大堰 6.0 1,960 1979 1988 特定
奈良 新宮川 池津川 池津川取水ダム 重力 16.8 - - 1956
奈良 紀の川 紀の川 大滝ダム 重力 100.0 84,000 1962 2012 特定 9条等指定
奈良 新宮川 熊野川 猿谷ダム 重力 74.0 23,300 1950 1957
和歌山 紀の川 紀の川 紀の川大堰 7.1 2,900 1978 2009 特定

近畿地方整備局の中止事業

近畿地方最大級のダム・池原ダム北山川電源開発)。
建設省による熊野川総合開発計画で計画された前鬼口ダムが前身である。

近畿地方整備局管内における中止したダム事業は、旧内務省・旧建設省時代を含め11事業に上る。

日本における最初期の直轄ダム事業として計画された猪名川ダム(猪名川)は太平洋戦争の激化により事業が中断され、戦後も再開されることはなかった[157]。猪名川流域における多目的ダム事業は1968年(昭和43年)の一庫ダム着工まで行われなかったが、猪名川支流の余野川に余野川ダムが1980年より計画された。これは猪名川流域の洪水調節と上水道供給に加え、深刻な水質汚濁が慢性的に続く猪名川の水質改善を目的にダムより河川維持放流を行い、下流に設けられる河川浄化施設と連携することで猪名川の水質を改善させる計画であった[158]。しかし2005年の淀川水系流域委員会答申で余野川ダムの中止が勧奨され、2008年には中止方針が決定された[159]

一方、吉野熊野特定地域総合開発計画の中で旧建設省は、新宮川水系において十津川・紀の川総合開発計画とは別個に熊野川総合開発計画を立案。本流筋に3箇所、支流北山川筋に4箇所の多目的ダムを建設し、治水、灌漑および水力発電を行う計画を検討した。ところが詳細な計画立案を行ったところ事業費約450億円(当時の額)に対し完成後の効果がわずかであり、費用対効果に著しく欠けることが判明。1953年9月に建設省は調査事務所を閉鎖して熊野川総合開発計画とそれに基づくダム計画は全て白紙となった[160]。しかし水力発電単独目的であれば採算性が取れることから電源開発が同計画を発電単独目的に修正した熊野川開発全体計画として1954年7月より事業に着手した[161]。現在新宮川水系にある風屋ダム(熊野川)、二津野ダム(熊野川)、池原ダム(北山川)、七色ダム(北山川)、小森ダム(北山川)、坂本ダム(東ノ川)は何れも熊野川総合開発計画に基づき計画されたダム群の後身である。

紀の川水系では和歌山県橋本市伊都郡九度山町を流れる支流の紀伊丹生川に建設が計画されていた紀伊丹生川ダムが中止されている。治水および大阪府、和歌山市などへの利水を目的に高さ145メートルの巨大ダムが1989年(平成元年)より計画されたが景勝地の玉川峡が水没することで反対運動が強く、その後水道事業者の大阪府、和歌山市などがダム事業から撤退し費用対効果で事業の継続が困難になったことから2002年(平成14年)に中止されている[162][163]

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
分類
水特法
備考
出典
福井 九頭竜川 足羽川 旧足羽川ダム 重力 77.0 60,000 特定 治水ダムへ変更 [164]
大阪 淀川 余野川 余野川ダム 重力 74.0 17,500 特定 [165]
兵庫 淀川 猪名川 猪名川ダム - - - [157]
奈良 新宮川 熊野川 風屋ダム 重力 130.0 172,000 発電専用ダムに変更 [166]
奈良 新宮川 熊野川 鹿測ダム 重力 70.0 47,000 二津野ダムの前身 [166]
奈良 新宮川 北山川 前鬼口ダム 重力 95.0 29,500 池原ダムの前身 [166]
奈良 新宮川 北山川 北山ダム 重力 65.0 37,000 七色ダムの前身 [166]
奈良 新宮川 北山川 大沼ダム 重力 40.0 - 小森ダムの前身 [166]
奈良 新宮川 東ノ川 大瀬ダム 重力 130.0 91,500 坂本ダムの前身 [166]
和歌山 紀の川 紀伊丹生川 紀伊丹生川ダム 重力 145.0 60,500 特定 [167]
和歌山 新宮川 熊野川 檜杖ダム 重力 30.0 70,000 [166]

中国地方整備局

ダムの高さでは西日本随一の規模を有する温井ダム滝山川広島県
世界初のRCD工法で建設された島地川ダム(島地川・山口県

中国地方整備局管内では既設ダム・堰16基を直轄管理している。ただし河川法第17条の兼用工作物規定に基づき、坂根堰(吉井川)は農林水産省、および水道事業者の代理人である岡山県との共同事業として建設されている[168]

中国地方の河川総合開発は日本全国に先駆け山口県が、青森県とほぼ同時に開始した。県東部を流れる錦川1940年(昭和15年)、日本最初の多目的ダムである向道ダムが本流上流部に建設され、続いて厚東川ダム厚東川)や木屋川ダム木屋川)が施工された。終戦後には岡山県も岡山三大河川の一つで県都・岡山市を貫流する旭川の総合開発に着手し、本流中流部に旭川ダムを建設した[169]1950年(昭和25年)の国土総合開発法施行による特定地域総合開発計画では大山出雲特定地域総合開発計画に基づき湯原ダム(旭川)が、錦川特定地域総合開発計画に基づき菅野ダム(錦川)が県営ダム事業として建設され[170]、続いて佐波川水系、高梁川水系などでも佐波川ダム(佐波川)や河本ダム(西川)といった多目的ダムが建設されるなど、中国地方における初期の河川開発は地方自治体が積極的に進めていた。

一方、国直轄の河川総合開発は1947年(昭和22年)に内閣経済安定本部が中国地方最大の河川である江の川を調査対象河川に指定して、治水灌漑水力発電を目的とした多目的ダム群を建設する江の川総合開発計画を1949年(昭和24年)に策定したのが最初である。しかしこの計画は1952年(昭和27年)を以って打ち切られ、以後は河川改修を軸とした計画に縮小された(後述)。国直轄ダム事業が開始されたのは鳥取県西部を流れる日野川の支流・印賀川に1964年(昭和39年)より着手した菅沢ダムが初であり、日野川の治水や米子市周辺地域の灌漑、上水道供給を目的として1968年(昭和43年)に完成した[171]。1964年の河川法改定で河川等級制度が導入され、中国地方では中国地方最大の都市・広島市を貫流する太田川水系が1965年(昭和40年)に一級河川の指定を受けたのを皮切りに、1968年の小瀬川水系まで13水系が一級河川の指定を受けた[172][注 15]。一級河川指定に伴い各水系では水系全体の治水・利水事業計画である工事実施基本計画が旧建設省により定められ、多目的ダム事業もこの中で計画されたが、計画が加速するのは1972年(昭和47年)7月に発生した梅雨前線による集中豪雨昭和47年7月豪雨による水害であった[173]。この豪雨は島根県斐伊川宍道湖の氾濫により松江市中心部が1週間にわたり浸水被害を受けたほか[174]広島県では江の川の氾濫で三次市、太田川の氾濫で県北西部が洪水被害を受ける[175]など中国地方の主要河川の多くが氾濫し流域に大きな被害を与えた。

この豪雨災害を機に計画・施工されたダムとして尾原ダム(斐伊川)、志津見ダム(神戸川)、温井ダム滝山川)、灰塚ダム(上下川)、島地川ダム(島地川)がある。このうち志津見ダムが建設された神戸川は計画策定当時は島根県が管理する二級河川であり、本来なら特定多目的ダムが建設されない河川であるが豪雨を機に計画された斐伊川放水路が斐伊川・神戸川間を連結するため両水系を一体化した治水事業を行う必要が生じ、沖縄県(後述)以外では唯一の例外として直轄ダムが計画された[176][注 16]。一方で中国地方は広島市を始めとする都市部での人口急増、また水島臨海工業地帯を筆頭に瀬戸内海沿岸で工業地帯が続々誕生したことで水道需要が逼迫、こうした利水の観点からも特定多目的ダムを利用した河川開発が行われた。広島市の水がめとして江の川本流に土師(はじ)ダムが建設され、中国山地を貫くトンネルで江の川から太田川に導水された水は高瀬堰(太田川)を経由して広島市や呉市、さらに大きな河川が無く慢性的な水不足に悩まされる芸予諸島に送水された。また芦田川八田原ダム芦田川河口堰福山市・福山臨海工業地帯、小瀬川の弥栄ダム大竹市岩国市の水がめとして機能している[177]

管内で計画・施工中のダムは無く、このため国土交通省によるダム事業再検証の対象ダムも存在しない。しかしダム事業と移転住民の軋轢については苫田ダム(吉井川)と灰塚ダムで特に見られた。両ダムとも水没対象となる自治体・住民が官民一体となって激しい反対運動を繰り広げ、特に苫田ダムは1953年(昭和28年)に岡山県が吉井川総合開発事業として計画した吉岡ダム計画の後身として当初計画より上流の苫田郡奥津町(現在の苫田郡鏡野町)に計画されたが、1957年(昭和32年)に新聞報道でダム計画が知られると奥津町では激しい反対運動が勃発。1959年(昭和34年)には奥津町が苫田ダム阻止特別委員会条例を制定して移転を余儀なくされる470戸504世帯の住民と共にダム建設絶対反対を表明、1994年(平成6年)に条例が廃止され2001年(平成13年)に最後の地権者が補償に合意するまで計画構想発表から44年の歳月を費やした[178][179]。また水源地域対策特別措置法(水特法)の指定対象外である温井ダムでは、移転住民達が建設省や下流受益地の広島県、広島市に対して山県郡加計町(現在の山県郡安芸太田町)当局と協力し対等な交渉を粘り強く行い、集団移転と地域活性化策の導入という要望を勝ち取った。この結果温井ダムは広島県の主要な観光地に成長し、加計町の観光客数はダム完成後の2002年(平成14年)には前年比2.4倍、約50万人が訪問している[180][181]

なお、中国地方の一級河川において天神川高津川、旭川、高梁川の各水系には直轄ダムが建設されておらず、このうち高津川水系には本支流を含めダムが一つも建設されていない。これは流域の水需要が他水系に比べ河川水のほか地下水などでも賄えるため逼迫しておらず、河川総合開発の必要性に乏しいためであり国土交通省が策定した高津川水系河川整備計画においても治水事業は堤防整備と河道掘削で対処すると明記され、ダム計画は将来的にも考えられていない[182]。残る水系のうち天神川水系を除く河川では流域の地方自治体により旭川・湯原(旭川)、千屋(高梁川)などの補助多目的ダムが建設されている。中国地方の直轄ダムにおける技術的特徴としては、島地川ダム施工におけるRCD (Roller Compacted Dam-Concrete) 工法の導入が挙げられる。この工法はセメント量を極力少なくした超固練りのコンクリートを、ブルドーザー振動ローラといった重機で締め固める工法であり、アメリカ陸軍工兵司令部パキスタンのタルベラダム(インダス川)放流トンネルで試験的に導入されていたが島地川ダムにおいて世界で始めて本格的な施工法として採用した。事業費削減や工期短縮に有用であり、日本におけるダムの主流な施工法の一つになっている[183][184]。また温井ダムは、ダムの高さにおいて西日本随一である[185][注 17]

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
着工
完成
分類
水特法
備考
鳥取 日野川 印賀川 菅沢ダム 重力 73.5 19,800 1962 1967 特定
鳥取 千代川 袋川 殿ダム ロックフィル 75.0 12,400 1985 2011 特定 指定
鳥取 日野川 日野川 日野川堰 ラバーダム - - - 1994 [186]
鳥取 日野川 法勝寺川 法勝寺川堰 ラバーダム - - - 1986 [186][187]
島根 斐伊川 斐伊川 尾原ダム 重力 90.0 60,800 1987 2012 特定 指定 [188]
島根 斐伊川 神戸川 志津見ダム 重力 81.0 50,600 1983 2011 特定 指定 [189]
岡山 吉井川 吉井川 坂根堰 4.9 2,200 1966 1980 兼用 [168]
岡山 吉井川 吉井川 苫田ダム 重力 74.0 84,100 1972 2004 特定 9条等指定
広島 芦田川 芦田川 芦田川河口堰 6.0 5,460 1969 1981 特定
広島 太田川 太田川 高瀬堰 5.5 1,980 1970 1975 特定
広島 太田川 滝山川 温井ダム アーチ 156.0 82,000 1974 2001 特定 ダム湖百選
広島 江の川 上下川 灰塚ダム 重力 50.0 52,100 1974 2006 特定 9条等指定
広島 江の川 江の川 土師ダム 重力 50.0 47,300 1966 1973 特定 ダム湖百選
広島 芦田川 芦田川 八田原ダム 重力 84.9 60,000 1973 1997 特定 指定
広島 小瀬川 小瀬川 弥栄ダム 重力 120.0 112,000 1971 1990 特定 指定 ダム湖百選
山口 佐波川 島地川 島地川ダム 重力 89.0 20,600 1972 1981 特定

中国地方整備局の中止事業

広島市などの水がめの一つ・土師ダム江の川広島県)。中止された下土師ダム計画の事実上の後身である。

中国地方整備局管内における中止したダム事業は、旧建設省時代を含めると9ダム事業がある。

中国地方で国直轄のダム計画が最初に立てられた江の川では1947年に内閣経済安定本部が河川総合開発調査を実施し、江の川本流に3ダム、支流西城川に1ダムを建設する計画が1949年に立案された。このうち島根県邑智郡都賀行村(現在の邑智郡美郷町都賀行)に計画された治水と灌漑、出力11万9,000キロワットの水力発電を目的とする都賀行ダムは、総貯水容量が5億8,010万立方メートルと岐阜県徳山ダム揖斐川)に匹敵する巨大ダム計画だった。だが建設が行われると水没範囲は県境を越えて広島県三次市にまで達し、水没戸数1,614戸という沼田ダム計画利根川)に匹敵する大規模な水没補償となる。このため経済性や地元への影響などが勘案され4ダム計画の調査は1952年を以って打ち切りとなり、全て白紙となった[190]。しかし白紙となった事業のうち江の川本流の下土師ダム計画は後に復活し、土師ダムとして完成している。また、斐伊川水系総合開発の一環として斐伊川筋と支流の三刀屋(みとや)川に合計3ダムを建設する計画も立ち消えとなったが、尾原ダム計画は昭和47年7月豪雨により斐伊川・神戸川総合開発計画の主要事業として復活し、完成している[191]

公共事業見直しに伴う中止事業としては、岡山三大河川の一つである高梁川の支流・小田川に計画されていた柳井原堰がある。これは高梁川流域を襲った1967年の渇水を機に、倉敷市玉野市などへの上水道と工業用水道供給を図ると同時に洪水流下の阻害要因となっている小田川の高梁川合流点を改修により下流へ付け替え、その新合流部に柳井原堰を建設して流域の治水と利水を図る高梁川総合開発事業の中心施設であり、完成すれば高梁川水系唯一の特定多目的ダムとなる予定だった[192]。しかし水需要の変化により倉敷市など水道事業者が事業から撤退したため、治水整備の必要性はあるものの柳井原堰については2002年に中止することが決定した[193]

一方、太田川本流に計画されていた吉和郷ダムは、1975年(昭和50年)策定の太田川水系工事実施基本計画において温井ダムと共に太田川の治水・利水を担う役割を持っていたが、調査のみで立ち消えとなった。ところが2005年の台風14号で太田川水系が大きな被害を受けたのを機に治水計画の見直しが検討された。中国地方整備局の諮問機関である太田川河川整備懇談会では治水・利水の新指針となる太田川水系河川整備計画策定作業において、温井ダム以外は発電用ダムしかない太田川水系既設ダム群(立岩鱒溜樽床王泊宇賀)の運用改善検討に加え、太田川本流を始め滝山川、柴山川などの主要支流における治水目的を持つ新規のダム建設について可否を検討した。過去の豪雨における降雨特徴や流域における宅地の分布状況、環境や景観への影響などを参考に検討した結果、台風14号の主要な降雨地帯でもある太田川本流や柴山川、滝山川といった上流域北西部・南西部が建設に有利との見解をまとめた[194]。建設が有利とされた太田川上流域にかつての吉和郷ダム計画地点があることから、吉和郷ダム計画復活を匂わせる新聞報道もなされた[195]が、現状では計画の復活があるかは未定である。

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
分類
水特法
備考
出典
島根 斐伊川 斐伊川 旧尾原ダム 重力 75.0
84.0
46,100
73,200
上段はA案
下段はB案
[191]
島根 斐伊川 三刀屋川 掛合ダム - - - [191]
島根 斐伊川 斐伊川 川手ダム - - - [191]
島根 江の川 江の川 段原ダム 重力 38.0 15,000 [190]
島根 江の川 江の川 都賀行ダム 重力 79.0 580,100 [190]
岡山 高梁川 小田川 柳井原堰 5.9 4,800 特定 [196]
広島 江の川 西城川 木屋原ダム 重力 40.5 23,263 [190]
広島 江の川 江の川 下土師ダム 重力 45.0 55,000 土師ダムの前身 [190]
広島 太田川 太田川 吉和郷ダム - - - [195]

四国地方整備局

四国地方整備局管内の直轄ダムでは総貯水容量が最大の大渡ダム(仁淀川高知県
2000年以降の異常気象を機に徳島県から管理が移管された長安口ダム那賀川

四国地方整備局管内では管理中のダムが5基、施工・ダム再開発事業中のダムが4基、合計9基のダムが管理・施工されている。なお、管内の直轄ダムの型式は全て重力式コンクリートダムであり、地方整備局では唯一である。

四国地方における直轄の河川開発は、四国最大の河川である吉野川において開始された[注 18]1949年(昭和24年)に内閣経済安定本部は日本の主要10水系において、大規模治水計画の策定を旧建設省に求めた。10水系に吉野川水系も対象として挙げられ、吉野川改訂改修計画が成立する。この時に吉野川水系でもダムによる治水計画が導入され、吉野川本流に現在「四国のいのち」と称される四国最大のダム・早明浦ダムが、支流の銅山川柳瀬ダムが計画された。さらに翌1950年(昭和25年)には、治水のみならず灌漑水力発電といった吉野川水系の河川総合開発計画が立案され、経済安定本部、建設省、農林省(現在の農林水産省)、通商産業省(現在の経済産業省)、電源開発四国電力および四国四県が参加する吉野川総合開発計画が開始された[197][198]

近代における吉野川水系の水利用については、1855年(安政2年)に伊予国宇摩郡庄屋が慢性的な水不足を解消するため今治藩三島代官所に銅山川疏水を陳情したのが発端となり、1914年(大正3年)の旱魃を機に法皇山脈を貫くトンネルで銅山川の水を宇摩地方(現在の四国中央市)へ導水し、灌漑に利用する計画が具体化。1919年(大正8年)に農商務省が銅山川疏水の調査を発表した。その後水力発電目的も加わったが下流部の慣行水利権を持つ徳島県愛媛県への分水に猛反対し事業は停滞、1936年(昭和11年)と1945年(昭和20年)、1947年(昭和22年)の三度にわたる愛媛・徳島両県の分水協定を経て銅山川疏水と水源である柳瀬ダムの建設が1948年より開始された。ダム事業は当初愛媛県が事業者であったが1947年の第三次分水協定においてダムの目的に治水が加わったことから、事業は愛媛県の委託という形で建設省が施工を行い、完成後も建設省が管理することになった。柳瀬ダムは1953年(昭和28年)に完成し、四国における直轄ダム第一号となる。そして銅山川疏水も実現し、98年におよぶ悲願が達成された[199][200][201]

吉野川総合開発計画には愛媛県宇摩地方と同様に慢性的な水不足に悩む香川県への導水事業・香川用水計画も含まれていた。しかし慣行水利権を有し、かつ吉野川の水害に古くから悩まされる徳島県は過度の吉野川からの分水に猛反発し、計画の進捗が滞る。この間事業遅延を嫌った四国電力が計画から離脱し独自の河川開発を企図。吉野川総合開発の一翼を担う穴内川ダム(穴内川)と大森川ダム(大森川)を水力発電単独目的で着手したことで、経済安定本部が立案した当初計画は瓦解した。暫く停滞していた計画が再始動するのは高度経済成長期を迎え水道需要が急増した1960年(昭和35年)、四国地方開発促進法が制定されてからである。早明浦ダムと池田ダム(吉野川)を主軸とした治水・利水の総合開発が再検討されて1966年(昭和41年)2月吉野川総合開発計画がようやく成立。さらに同年11月には水資源開発促進法に基づく指定河川となり吉野川水系水資源開発基本計画が成立、早明浦・池田の両ダムと香川用水事業は水資源開発公団(現在の独立行政法人水資源機構)が担当することになり2ダムは建設省より事業が移管された。以後公団により吉野川水系の総合開発が進められ早明浦、池田の両ダムを始め新宮ダム富郷ダム(銅山川)、香川用水、吉野川北岸用水、高知分水などが完成する[197][198][202]。何れも水資源機構が管理しており、吉野川水系における直轄ダムは柳瀬ダムが唯一である。

吉野川水系以外では愛媛県の肱川水系と重信川水系、高知県の仁淀川水系と渡川(四万十川)水系で直轄ダムが建設された。肱川では1959年(昭和34年)に本流中流部に鹿野川ダムが治水と水力発電を目的に完成したが肱川流域の人口増加に伴い治水安全度の向上に加え、いよかんなどの特産地である佐田岬半島宇和島市を始めとした宇和海沿岸地域の慢性的な水不足解消を目的に肱川上流部に野村ダム1982年(昭和57年)に建設、ダム湖より用水路を通じて灌漑と上水道用水を供給した。また県都・松山市を流域に持つ重信川の支流・石手川1972年(昭和47年)石手川ダムが完成、松山市の重要な水がめとなっている[203]。一方多雨地帯である高知県では大雨や台風による水害の被害が著しいことから、治水重視のダム事業が展開された。仁淀川では本流に水系最大かつ直轄ダムでは最も総貯水容量が多い大渡ダムを1986年(昭和61年)に完成させ、仁淀川の治水と水力発電に加え、県都・高知市の水がめとして運用されている。また四万十川は本流にダムを建設できる適地がないため、四万十市で合流する支流・中筋川流域の総合開発を行い1998年(平成10年)に中筋川ダムが完成。中筋川・四万十川の治水のみならず四万十市や土佐清水市宿毛市の水源として重要な役割を担っている[204]

現在施工中のダム事業は4基あり、うちダム再開発事業が2基ある。1950年の国土総合開発法に基づく那賀川特定地域総合開発計画の中心事業として1955年(昭和30年)に完成した長安口ダム(那賀川)は徳島県が管理する多目的ダムであったが、2000年代に入り水害・渇水が那賀川水系で頻発したことから(後述)2007年(平成19年)にダムは徳島県より国土交通省に移管され、現在はダム機能の強化を目的とした長安口ダム改造事業に着手している[205]。また1959年に完成した鹿野川ダムは、現在治水ダムとして再開発事業を行っている。これは肱川が支流数475河川と日本では淀川信濃川利根川に次ぐ数を有し[206]、かつ流域最大の都市・大洲市が元々天然の遊水池となっている場所を都市化しているため水害が絶えず、鹿野川・野村両ダムの完成後も治水計画を上回る水害が発生しているためである[203]。鹿野川ダムは完成後愛媛県に管理が移管されていたが、再開発事業実施に伴い2006年(平成18年)に再び直轄管理に戻されている[207]。これに関連し、鹿野川ダム直下で肱川に合流する河辺川に現在山鳥坂(やまとさか)ダムが施工中である。1986年の計画当時は特定多目的ダムであったが[208]、現在は規模を縮小し治水ダムとして施工しているが環境破壊として市民団体の反対運動が強く、中筋川総合開発事業の一環である高知県の横瀬川ダム(横瀬川)と共に国土交通省によるダム事業再検証の対象となり、事実上凍結している[13]。ダム事業と地元との軋轢については宇摩地方の住民の悲願を叶えた柳瀬ダムで、補償交渉前に工事を開始した建設省に対し移転住民が反発、さらに当時の愛媛県土木部長が補償交渉の席上ダム湖が将来的にボートも浮かぶ観光地になることを話したところ、「故郷を失う我らの前で、ボートとは何だ」と住民たちの感情を逆撫でしたエピソードが残っている[209]

なお、管内の一級河川では物部川水系と土器川水系で直轄ダムが建設されていない。このうち物部川水系は1950年より物部川総合開発事業が開始され、最上流部に位置する水系最大のダム・永瀬ダム(物部川)を建設省が、下流の杉田・吉野ダムを高知県が施工し永瀬ダムは1957年(昭和32年)に完成した。完成後ダムの管理は高知県に移管されている[210]。土器川水系では支流の前の川に前の川ダムが計画されていたが、中止されている(後述)。

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
着工
完成
分類
水特法
備考
徳島 那賀川 那賀川 長安口ダム 重力 85.5 54,278 1950 1955 再開発
愛媛 重信川 石手川 石手川ダム 重力 87.0 12,800 1966 1972 特定
愛媛 肱川 肱川 鹿野川ダム 重力 61.0 48,200 1953 1959 特定 再開発中
愛媛 肱川 肱川 野村ダム 重力 60.0 16,000 1971 1982 特定 指定 ダム湖百選
愛媛 吉野川 銅山川 柳瀬ダム 重力 55.5 32,200 1948 1953
愛媛 肱川 河辺川 山鳥坂ダム 重力 103.0 24,900 1986 未定 治水 指定 事業見直し
高知 仁淀川 仁淀川 大渡ダム 重力 96.0 66,000 1966 1986 特定
高知 渡川 中筋川 中筋川ダム 重力 73.1 12,600 1982 1998 特定
高知 渡川 横瀬川 横瀬川ダム 重力 72.1 7,300 1990 未定 特定 事業見直し

四国地方整備局の中止事業

徳島市住民投票を契機に可動堰化が中止された吉野川第十堰吉野川徳島県

四国地方整備局管内における中止したダム事業は、旧建設省時代を含めると11ダム事業に上る。大別すると吉野川総合開発計画の策定において計画され、中止もしくは立ち消えとなった事業と、1990年代以降の公共事業見直し政策において中止となった事業に分けられる。

前者については、1949年の吉野川改訂改修計画において早明浦ダムが初めて計画された際に現在のさめうら湖を二分割する形でダム計画が立案され、現在吉野川と瀬戸川が合流する直下に桃ヶ谷ダム(吉野川)を計画したが、早明浦ダム計画に統合された[211]。その後吉野川総合開発計画において、吉野川水系のダム計画は吉野川本流に早明浦ダムと、名勝である小歩危出口付近に計画された小歩危ダムを軸として銅山川には現在の賢見温泉付近に岩戸ダムを建設し、それらの水を池田ダムより香川県へ導水するというものであった。小歩危・岩戸の2ダムは何れも現在の早明浦ダムに匹敵する規模の貯水容量を有し、殊に小歩危ダムは原案の通り完成すれば小歩危、大歩危のみならず県境を越えて現在の高知県長岡郡本山町中心部まで水没する長大な人造湖を形成する。その後事業者の建設省、経済安定本部、電源開発により様々な案が提出、検討されたがこの中には小歩危・岩戸両ダムの統合案として大佐古ダム計画という超巨大ダム計画も存在した。これは吉野川と祖谷川合流点付近に高さ146メートルのダムを建設するものだが、貯水容量は実に6億7,600万立方メートルと現在日本最大の人造湖を擁する岐阜県徳山ダム揖斐川)を凌駕する規模となる[212]。しかし最終的には早明浦・池田の両ダムを軸にした総合開発計画に修正され、小歩危ダム計画は電源開発が水力発電専用に規模を大幅に縮小したものの大歩危・小歩危水没に対する反対が強く、1971年(昭和46年)9月16日の第56回電源開発調整審議会において小歩危ダムを取水元とする吉野川第一・第二発電所計画が中止されたことで、ダム事業も中止された[213]。また岩戸ダム計画は自然消滅したが、ダム上流部に新宮ダムが1975年完成している。

後者については那賀川本流上流部に計画された細川内(ほそごうち)ダムと吉野川本流下流部に計画された吉野川第十堰可動堰化が特に知られている。細川内ダムは1972年に徳島県那賀郡木頭村(現在の那賀郡那賀町)に計画された特定多目的ダムであるが、計画発表当初より木頭村が官民一体で反対運動を繰り広げ、特に1994年(平成6年)より村長に就任した藤田恵条例の制定などを通して激しいダム反対運動を指揮した。この結果1998年に第2次橋本内閣建設大臣だった亀井静香が事業凍結の方針を示し、2000年(平成12年)にはダム事業が中止された[214][215]。細川内ダムの中止はそれまで「聖域」とされたダム事業の在り方に対して一大転機をもたらし、以後ダム事業の中止が急増する。しかしダム中止後の那賀川流域では洪水・渇水被害が頻発[216]。特に渇水については細川内ダム中止後の2000年からほぼ毎年発生し、2005年(平成17年)には工業用水・農業用水が完全に断水し取水制限も112日間におよぶなど流域に深刻な被害と経済損失をもたらした[217]。このことが長安口ダムを国土交通省に移管させた一因となっている。

吉野川第十堰については、江戸時代に建設された現在の固定堰が老朽化し、かつ1976年(昭和51年)に施行された河川管理施設等構造令の整備基準に合致せず洪水流下の阻害要因となっていることから直下流に可動堰を建設して治水機能を強化する目的で、1988年(昭和63年)より事業に着手した[218]。しかし吉野川の環境破壊や税金の無駄遣いなどを理由に姫野雅義など市民団体が反対運動を繰り広げ、日本共産党が組織的に関与・支援するなど運動が盛り上がった[219]。こうした反対運動は2000年に徳島市が堰建設の可否を問う住民投票実施に発展し、結果建設反対が10万人以上の票を集め大勢を占めたことで徳島市が反対姿勢に転換。2002年(平成14年)には建設反対を公約とした大田正徳島県知事に就任したことで国土交通省も事業の凍結を発表し、2010年(平成22年)前原誠司国土交通大臣(当時)により中止が決定した[220][221]。住民自治と公共事業の在り方に一石を投じた事業であるが、住民投票で賛成派が棄権し、かつ徳島市以外の流域市町村では30万人以上の賛成署名が集まっているのに徳島市の住民投票だけで決定した、また朝日新聞などマスコミの報道姿勢が反対派に肩入れしているなどの問題点が賛成派から指摘されている[221][222]

細川内ダム、吉野川第十堰以外では香川県を流れる土器川支流の前の川の計画されていた前の川ダムが中止されている。1990年(平成2年)の土器川水系工事実施基本計画において計画が立案された特定多目的ダムであるが、財政的な問題があり2000年に事業が休止された。ところが慢性的な水不足に悩む香川県内の流域自治体から事業再開の要望が強く出され、再度検討されたが利水目的を実施する目処が立たず、2003年(平成15年)に事業が中止された[223]

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
分類
水特法
備考
出典
徳島 吉野川 銅山川 岩戸ダム 重力 136.0 289,000 [212]
徳島 吉野川 吉野川 大佐古ダム 重力 146.0 676,000 [212]
徳島 吉野川 銅山川 大野ダム 重力 65.0 41,500 [212]
徳島 吉野川 吉野川 川崎ダム 重力 29.6 4,200 [212]
徳島 吉野川 吉野川 小歩危ダム 重力 126.0 307,500 [212]
徳島 那賀川 那賀川 細川内ダム 重力 102.0 60,400 特定 [224]
徳島 吉野川 吉野川 吉野川第十堰改造 6.2 6,500 可動堰 [224]
香川 土器川 前の川 前の川ダム 重力 58.0 5,300 特定 [225]
高知 吉野川 吉野川 敷岩ダム 重力 33.0 36,500 [212]
高知 吉野川 吉野川 永淵ダム 重力 26.0 6,600 [212]
高知 吉野川 吉野川 桃ヶ谷ダム - - - 早明浦ダムの前身 [211]

九州地方整備局

九州地方整備局管内最大の直轄ダム・鶴田ダム川内川鹿児島県)。現在再開発中。
日本の公共事業補償に大きな影響を与えたダム反対運動・蜂の巣城紛争の舞台、下筌ダム(津江川・大分県)右岸熊本県側にある蜂の巣城跡。

九州地方整備局管内では既設ダム・堰16基、工事中・再開発中ダム6基の合計22基を直轄管理・施工している。なお沖縄県沖縄振興特別措置法に基づき国直轄河川事業は内閣府沖縄総合事務局が担当しているため、九州地方整備局の管轄外である(後述)。

台風の常襲地帯である九州地方は、古くから加藤清正成富茂安などによる治水事業が手掛けられており、流域の治水に寄与していた。だが1953年(昭和28年)6月に九州北部を襲った梅雨前線豪雨・昭和28年西日本水害はそれら営々と積み重ねた治水事業をご破算にし、死者・行方不明者1,001名を出す戦後九州最悪の水害となった。この水害を契機に、旧建設省や九州の各県は河川総合開発事業を計画し、多目的ダムの建設に乗り出した。

九州最大の河川である筑後川水系では1949年(昭和24年)に筑後川改訂改修計画が策定され、筑後川支流の玖珠川と津江川に治水ダムを建設する計画が立案された[226]が、昭和28年西日本水害を受けて全面改訂され、1958年(昭和32年)に筑後川水系治水基本計画を定め、大規模堤防建設・放水路整備などと共に多目的ダムによる治水計画が加わり、検討の結果筑後川本流に松原ダムと支流津江川に下筌(しもうけ)ダムが計画され、1972年(昭和47年)に完成した[227]。だがこの時期は高度経済成長期に当たり、九州最大の都市・福岡市を中心とする福岡都市圏の人口増加や北九州工業地帯の拡充、さらに筑後平野の農地拡大による農業用水不足といった利水に対する問題が発生。これに対処すべく1964年(昭和39年)筑後川水系は水資源開発促進法に基づく水資源開発水系に指定され、以降水資源開発公団(現在の独立行政法人水資源機構)が河川総合開発を主に担当し江川(小石原川)、寺内(佐田川)、筑後大堰(筑後川)、大山赤石川)といったダム・堰を施工・完成させた[228]。一方建設省は公団事業とは別に筑後川と佐賀県を流れる嘉瀬川を連結する導水路・佐賀導水事業に1974年(昭和49年)より着手した。これは筑後川、城原(じょうばる)川、巨勢川、嘉瀬川を水路でつないで内水氾濫防除を含む洪水調節と、流域市町村に対する上水道供給、さらに水質汚濁が進行した佐賀市内の河川へ河川浄化用水を供給するなどの目的を持った、河川の流量を用水路で調節する「流況調整河川事業」[注 19]である。佐賀導水事業の中で、巨勢川や周辺の中小河川の洪水を貯留し、ポンプで嘉瀬川へ排水する治水目的を有した巨勢川調整池が建設され、2009年(平成21年)導水路と共に完成した[229]。また日田市への上水道供給や筑後川の流量改善を図る目的で1977年(昭和52年)より松原・下筌ダム再開発事業が行われ、1986年(昭和61年)に完成している[230]

昭和28年西日本水害で大きな被害をもたらした筑後川以外の遠賀川矢部川山国川、嘉瀬川、六角川菊池川水系といった一級河川では、上水道・工業用水道需要の増大に対処するため、利水目的の総合開発を治水事業と一体化して促進させる目的で建設省、農林省(現在の農林水産省)、通商産業省(現在の経済産業省)の地方支分部局、九州・山口経済連合会と地元経済団体、そして福岡県・佐賀県・熊本県大分県が北部九州水資源開発協議会を1963年に結成。北部九州を流れる7水系の河川総合開発指針である北部九州水資源開発マスタープランを1969年(昭和44年)に策定した。マスタープランで提示されたダム計画候補の中で、後に治水事業計画である工事実施基本計画にも明記され直轄事業として施工、完成したダム事業としては遠賀川河口堰(遠賀川)、耶馬溪ダム(山移川)、嘉瀬川ダム(嘉瀬川)、六角川河口堰(六角川)、竜門ダム(迫間川)があり、平成大堰(山国川)を含め北部九州の治水・利水に資している[231]。これ以外では鹿児島県最大の河川である川内川1965年(昭和40年)鶴田ダムが完成、九州最大の直轄ダムとして治水のほか多目的ダムに付随する水力発電所としては出力が九州では最大の川内川第一発電所(12万キロワット)による水力発電が行われている。また緑川には本流に緑川ダム、松浦川には支流の厳木(きゅうらぎ)川に厳木ダムがそれぞれ完成し、流域の治水と利水に貢献している。さらに塩害防除や河川流下能力の向上を図るため堰を新築・改修する事業なども行われ、瀬高堰・松原堰(矢部川)、嘉瀬川大堰(嘉瀬川)、松浦大堰(松浦川)、六間堰(加勢川)が建設または改築された[232][233][234][235][236]

現在施工中のダムは6基ある。このうち鶴田ダム再開発事業は川内川流域に未曾有の水害をもたらした平成18年7月豪雨により鶴田ダムの治水機能が喪失し、水害の被害を受けた下流域住民からの強い要望を受けて実施される、治水容量増加を目的とした事業である[237]川辺川ダム川辺川)は1967年(昭和42年)より多目的ダムとして計画されたが水没予定地の球磨郡五木村相良村で403・528世帯が移転対象となることで猛烈な反対運動が長期化。地元との補償交渉は1996年(平成8年)に妥結するものの市民団体球磨川漁業協同組合が反対運動を継続、さらに灌漑事業者の農林水産省や電気事業者の電源開発が事業から離脱し治水ダム事業として縮小されたものの、2008年(平成20年)以降蒲島郁夫熊本県知事を始め人吉市八代市・相良村がダム建設反対に方針を転換。翌2009年には鳩山由紀夫内閣マニフェストに基づき川辺川ダム事業の中止を発表するなど、事業は錯綜した。現在はダム事業中止を前提にして、ダム建設中止に強く反発する五木村に対する生活再建対策事業について検討を進めている[238]。残る4ダム(城原川・本明川・立野大分川)は何れもダム事業再検証対象ダムとなったが、大分川ダム(七瀬川)は事業が再開している[13]。ダム事業と移転住民の軋轢については1958年から1971年(昭和46年)まで13年間続いた蜂の巣城紛争が著名である。松原・下筌ダム建設に際して建設省が取った高圧的な姿勢に室原知幸ら移転住民が反発し、下筌ダム右岸に「蜂の巣城」というを築いて頑強に抵抗。流血事件や法廷闘争にまで発展したこの反対運動は公共事業基本的人権生存権)の整合性を世に問い、水源地域対策特別措置法(水特法)を始めとするダム関連法規の改正など河川行政に多大な影響を与えた[239]

なお、管内の一級河川において大野川番匠川五ヶ瀬川小丸川大淀川肝属川の各水系には直轄ダムが建設されていない。何れも流域自治体により補助多目的ダム補助治水ダムといった国庫補助を受けたダム事業が小丸川を除いて何れも支流で実施されている。ただし肝属川水系には支流串良川に高隈ダムが建設されているが、同ダムは南九州特定地域総合開発計画に基づき大隅半島にある笠野原台地に対する灌漑を目的として建設された農業用ダムであり、治水目的は有していない[240][241]

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
着工
完成
分類
水特法
備考
福岡 遠賀川 遠賀川 遠賀川河口堰 6.5 11,140 1969 1983 特定
福岡 矢部川 矢部川 瀬高堰 - - - 1990 [232]
福岡 山国川 山国川 平成大堰 3.2 278 1983 1990 特定
福岡 矢部川 矢部川 松原堰 ラバーダム - - - 1998 [233]
佐賀 嘉瀬川 嘉瀬川 嘉瀬川大堰 - - - 1992 [234]
佐賀 嘉瀬川 嘉瀬川 嘉瀬川ダム 重力 97.0 71,000 1973 2012 特定 9条等指定 [242]
佐賀 松浦川 厳木川 厳木ダム 重力 117.0 13,600 1973 1986 特定
佐賀 筑後川 巨勢川 巨勢川調整池 掘込式貯水池 - 2,200 1974 2009 佐賀導水事業[229]
佐賀 筑後川 城原川 城原川ダム 重力 61.0 3,500 1979 未定 治水 事業見直し
佐賀 松浦川 松浦川 松浦大堰 - - - 1974 [235]
佐賀 六角川 六角川 六角川河口堰 11.5 3,300 1968 1982
長崎 本明川 本明川 本明川ダム 台形CSG 64.0 8,600 1990 未定 特定 事業見直し
熊本 球磨川 川辺川 川辺川ダム アーチ 107.5 133,000 1967 未定 治水 9条等指定 事業凍結
熊本 白川 白川 立野ダム 重力 90.0 10,100 1979 未定 治水 事業見直し
熊本 緑川 緑川 緑川ダム 重力 76.5 46,000 1964 1970 特定
熊本 菊池川 迫間川 竜門ダム 複合 99.5 42,500 1970 2001 特定 9条等指定
熊本 緑川 加勢川 六間堰 - - 1993 1999 [236]
大分 大分川 七瀬川 大分川ダム ロックフィル 91.6 24,000 1978 2017 特定 指定 工事中
大分 筑後川 津江川 下筌ダム アーチ 98.0 59,300 1958 1972 特定 1986年再開発
大分 筑後川 筑後川 松原ダム 重力 83.0 54,600 1958 1972 特定 1984年再開発
大分 山国川 山移川 耶馬溪ダム 重力 62.0 23,300 1970 1984 特定 指定
鹿児島 川内川 川内川 鶴田ダム 重力 117.5 123,000 1959 1965 特定 再開発中
ダム湖百選

九州地方整備局の中止事業

松原ダム筑後川大分県
下流に計画された久世畑ダムの事実上の後身である。

九州地方整備局管内で中止されたダム事業としては、旧建設省時代を含めると11ダム事業がある。筑後川、緑川、大野川水系に中止事業が集中しているのが特徴である。

九州最大の河川・筑後川水系では昭和28年西日本水害を機に筑後川改訂改修計画が全面変更になり、1958年に筑後川水系治水基本計画が策定された。これにより松原・下筌ダムが建設されたが、両ダム建設計画が決定するまで複数地点においてダム計画が立案されていた。これらの中で着手に至ろうとしていたダム計画に久世畑ダム計画(筑後川)がある。松原ダムよりも下流、現在の国道212号千丈橋付近に高さ79メートル、総貯水容量1億900万立方メートルのダムを建設する計画であり、筑後川上流のダム計画地点5箇所で真っ先に検討された地点であった。ところが水没戸数が573戸にも及び1953年10月には日田郡大山村(現在の日田市)が村民大会を開いてダム建設絶対反対を決議した。結果久世畑ダム計画は松原ダム計画へ変更となり、現在に至る[243][244]。また下筌ダムの前身であった簗瀬ダム計画は、地質的な問題が解決できず調査自体が中断された[245][244]。さらに1969年の北部九州水資源開発マスタープランにおいて、筑後川本流の杖立温泉付近に杖立ダム、支流玖珠川最上流部に猪牟田(ししむた)ダムと天ヶ瀬温泉下流付近に玖珠川ダム、花月川流域に3ダムを建設する計画が立てられたが猪牟田ダム以外は立ち消えとなった[231]。猪牟田ダムは1973年(昭和48年)より事業に着手したが、灌漑用水供給域である国東半島の灌漑計画が進捗せず、さらにダム予定地の地質問題が解決できなかったことで2000年(平成12年)中止された。現在ダム予定地跡に石碑が建立されている[246][247]。このほか久留米市を流れる支流・高良川上流に高良川ダムの計画構想が1980年代初頭に持たれていたが、立ち消えとなっている[248]

緑川水系では高遊原(たかゆうばる)地下浸透ダム(加勢川)と七滝ダム(御船川)が中止されている。高遊原地下浸透ダムは直轄ダムでは唯一となる地下ダム計画で、加勢川の洪水調節と水源を全面的に地下水に頼る熊本市への上水道供給を目的とした事業である。上益城郡益城町阿蘇くまもと空港付近を流れる加勢川の支流・木山川と布田川に堰を設け、堰より導水した河水を透水性の高い溶岩台地・高遊原に浸透させて地下ダムに貯水して治水・利水を図る計画だった。1989年(平成元年)に事業は着手されたが、2000年に中止されている[249][250]。七滝ダムは1988年(昭和63年)御船川の水害を機に治水および熊本市などへの上水道供給を目的に計画されたが、水道事業者である熊本市などが需要性に乏しいとして事業から撤退。さらに緑川・御船川の治水も堤防整備や河床掘削で事業費を大幅に節減できることから2011年(平成23年)九州地方整備局が「ダム建設の緊急性が薄い」として事業中止を打ち出し、国土交通省によるダム事業再検証対象ダムでは初の直轄ダム中止例となった[251]

大野川水系では緒方川の知原ダムと平井川の矢田ダムが中止されている。知原ダムは1950年(昭和25年)の国土総合開発法に基づく阿蘇特定地域総合開発計画において、大野川流域の治水と灌漑、水力発電を目的に直入郡入田村(現在の竹田市)に計画された高さ79メートル、貯水容量9,200万立方メートルの大規模ダム計画であったが、立ち消えとなった[252][253]。その後1961年(昭和36年)に大野川流域を襲った水害、1964年(昭和39年)の第二次大分新産業都市計画を契機に大野川水系の総合開発計画が再燃し、1972年より大野郡大野町朝地町(何れも現在の豊後大野市)を流れる平井川に矢田ダムが計画された[254]。高さ56メートル、総貯水容量5,700万立方メートルのダムで完成すれば大野川水系最大規模のダムとなるが、公共事業見直し政策により2000年に中止された。ダム中止後は反対運動を進めた地元団体が中心となって地域活性化を進めている[255]

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
分類
水特法
備考
出典
福岡 筑後川 高良川 高良川ダム ロックフィル 65.0 8,800 [248]
熊本 緑川 加勢川 高遊原地下浸透ダム 地下ダム 18.0 1,400 特定 [256]
熊本 筑後川 筑後川 杖立ダム - - 100,000 [231]
熊本 緑川 御船川 七滝ダム ロックフィル 90.0 17,500 特定 [257]
熊本 筑後川 津江川 簗瀬ダム 重力 51.8 20,700 下筌ダムの前身 [245]
大分 筑後川 玖珠川 玖珠川ダム - - 40,000 [231]
大分 筑後川 筑後川 久世畑ダム 重力 79.0 109,000 松原ダムの前身 [243]
大分 筑後川 玖珠川 猪牟田ダム ロックフィル 120.0 38,500 特定 [258]
大分 大野川 緒方川 知原ダム 重力 79.0 92,000 [253]
大分 大野川 平井川 矢田ダム 重力 56.0 57,000 特定 [259]
大分 筑後川 松木川 竜門ダム 重力 31.8 3,800 [245]

沖縄総合事務局

沖縄県最大の直轄ダム・福地ダム福地川
台形CSGダムとしては世界初の施工例である億首ダム(億首川)

日本の多目的ダム一覧#沖縄県も参照のこと

内閣府沖縄総合事務局管内では既設ダム8基、施工中ダム1基の合計9基が直轄管理・施工されている。

沖縄県九州地方整備局の管轄外であり、直轄ダムの施工と管理は沖縄総合事務局が行っている。1972年(昭和47年)の沖縄返還により沖縄の施政権琉球列島米国民政府より日本政府へと継承された。しかし日本本土に比べ沖縄県のインフラストラクチャー整備は遅れており、本土とは別に国の強力な支援による一体的な措置を講じる必要性が生じた。復帰前年(1971年)に現在の沖縄振興特別措置法の前身に当たる沖縄振興開発特別措置法が成立し、沖縄返還後の1972年5月15日には沖縄開発庁地方支分部局である沖縄総合事務局が設置され、2001年(平成13年)の省庁再編により現在の内閣府沖縄総合事務局となった[260]。沖縄総合事務局は北海道開発局と同様に道路、河川、農地開発などの施策を一体的に実施する役割を持ち、国土交通省地方整備局の業務は沖縄総合事務局開発建設部が担当している[261]

沖縄県の河川は全て二級河川であり本来特定多目的ダム法の適用範囲外であるが、先の理由もあり沖縄振興特別措置法第107条(沖縄の河川に係る特例)を設けて対処した。すなわち河川法第10条の特例措置として二級河川であっても沖縄県では必要に応じて国土交通大臣が直轄で河川改修を実施できると定め、直轄ダムについては第107条第6・7項に準拠し河川法第10条や特定多目的ダム法の特例として二級河川であっても国土交通大臣が事業者である特定多目的ダムの施工・管理が可能であることが定められた[262]。この法規定により沖縄県では沖縄総合事務局が直轄ダム事業の施工と管理を国土交通省から代行する形で実施しているが、直轄ダムの所有権者は国土交通大臣であり内閣府ではないため「内閣府直轄ダム」にはならない。

沖縄県には大河川が無く、台風常襲地帯であるため大雨が降れば本土に比べ洪水到達時間が早く水害の危険性が高い河川が多い。しかし少雨になれば元来水量が乏しいため容易に水不足に陥る[263]。沖縄県における河川総合開発事業利水、特に上水道供給などの水資源開発を重視して行われたがその萌芽となったのは1963年(昭和38年)にアメリカ陸軍工兵司令部沖縄本島北部を流れる新川(あらかわ)川、安波(あは)川、普久(ふん)川の3河川にダムを建設するマスタープランである。また琉球水道公社は逼迫の度合いを強める沖縄本島の水需要に対処するため同じく県北部を流れる福地川に水道専用ダムの計画を1969年(昭和44年)に立てた。こうしたダム計画は1971年より琉球列島米国民政府建設局による多目的ダム事業として統合され進められた[264]。一方日本側は1970年(昭和45年)より当時の建設省水資源開発調査団がダム事業についての調査を行い積極的な財政措置の必要性を報告、1972年の本土復帰後は名護市に沖縄総合事務局北部ダム事務所を設置してこれらの事業を継承し沖縄北部河川総合開発事業として本格的な施工を開始した[265]

沖縄北部河川総合開発事業は福地(福地川)、新川(新川川)、安波(安波川)、普久川(普久川)、辺野喜(辺野喜川)の5ダムを建設してダム湖間を導水路で連結して貯水を相互に融通することで沖縄本島の水需要に対処すると同時に治水安全度を高めることを目的とし、1990年(平成2年)の福地ダム再開発事業完成により概ね完了した。しかしこの間にも給水制限延べ326日に及ぶ沖縄県大渇水1981年 - 1982年)を始め渇水が頻発。さらなる水資源開発の必要性が生じ新規の直轄ダム事業が計画され、漢那漢那福地川)、倉敷(与那原川)、羽地羽地大川)、大保(大保川)の各ダムが建設された[265]。完成後沖縄県に管理が移管された倉敷ダムを除く8ダムは1983年(昭和58年)に発足した沖縄総合事務局北部ダム統合管理事務所による統合管理下にあり、効率的・一体的な管理が実施されている[266]

現在施工中のダムとしては億首ダム(億首川)がある。沖縄県企業局が管理する水道用ダム・金武ダムの再開発事業としてダム直下に建設され、2013年(平成25年)完成予定である[267]。億首ダムは当初重力式コンクリートダムとして計画されたが、事業コスト縮減と環境保護の観点から型式を変更し、世界で初めて台形CSGダムとして施工が開始された。ただし完成については北海道当別ダム当別川)が先となる[268][269]。なお、国土交通省によるダム事業再検証ダムは存在せず[13]水源地域対策特別措置法(水特法)に指定されたダムも存在しない。

水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
着工
完成
分類
水特法
備考
安波川 安波川 安波ダム 重力 86.0 18,600 1972 1982 特定
新川川 新川川 新川ダム 重力 44.5 1,650 1972 1976 特定
億首川 億首川 億首ダム 台形CSG 39.0 8,560 1978 2013 特定 工事中[267]
金武ダム再開発
漢那福地川 漢那福地川 漢那ダム 重力 45.0 8,200 1978 1992 特定 ダム湖百選
大保川 大保川 大保ダム 重力 77.5 20,050 1987 2011 特定
羽地大川 羽地大川 羽地ダム ロックフィル 66.5 19,800 1976 2004 特定
福地川 福地川 福地ダム ロックフィル 91.7 55,000 1972 1974 特定 1990年再開発
ダム湖百選
普久川 普久川 普久川ダム 重力 41.5 3,050 1972 1982 特定
辺野喜川 辺野喜川 辺野喜ダム 複合 42.0 4,500 1975 1987 特定

沖縄総合事務局の中止事業

沖縄総合事務局管内で中止されたダム事業は3ダム存在する。

最初に中止された座津武(ざつん)ダム(座津武川)は1992年(平成4年)より計画されたが、2003年(平成15年)に国土交通省が事業再評価を行い中止された[270]。比地ダム(比地川)と奥間ダム(奥間川)は沖縄本島北西部を流れる比地川水系と大保川水系に3箇所の多目的ダムを建設し、沖縄本島の水供給を補強する目的で計画された沖縄北西部河川総合開発事業において、比地川水系の治水と沖縄本島への利水供給を目的に1987年(昭和62年)より計画された[271]。しかし利水事業者である沖縄県企業局が事業から撤退、2010年(平成22年)に両ダムは事業が中止された[272]。ただし残る大保ダムについては両ダムが中止された翌年の2011年(平成23年)に完成している。

水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
分類
水特法
備考
出典
比地川 奥間川 奥間ダム ロックフィル 65.0 1,450 特定 [273]
座津武川 座津武川 座津武ダム 重力 48.0 3,150 特定 [270]
比地川 比地川 比地ダム ロックフィル 66.5 19,200 特定 [273]

管理移管ダム

小瀬川ダム小瀬川
広島山口両県の対立を契機に建設省が受託施工を行った。
徳山ダム揖斐川岐阜県
1976年(昭和51年)に建設省より水資源開発公団へ事業が移管された。日本最大の多目的ダム

都道府県営ダム水資源機構の項目も参照のこと

以下の表に示すダムは旧建設省がダム事業を計画、着手または完成させた後に他の事業者へ施工・管理を移管させたダムである。大別すると地方自治体に移管されたダムと旧水資源開発公団(現在の独立行政法人水資源機構)に移管されたダムがある。

地方自治体に移管されたダム事業のほとんどは、戦後計画された県単独の河川総合開発事業1950年(昭和25年)の国土総合開発法に基づいて計画された特定地域総合開発計画に組み込まれたことにより、その重要性から建設省直轄事業として施工されている。一例として米代川雄物川水系が対象になった阿仁田沢特定地域総合開発計画において雄物川水系で計画・施工された鎧畑ダム玉川)と皆瀬ダム(皆瀬川)は完成後秋田県へ移管され、米代川の二次支流である粕毛川に計画された素波里(すばり)ダムは当初建設省が調査を進め、後に秋田県が事業を承継し完成させている[274]。また完成後に地方自治体へ移管させた理由として、高知県の永瀬ダム(物部川)は物部川水系が高知県のみを流域としているため、河川管理者である高知県知事に管理が継承された[210]。建設省が施工し完成後地方自治体に移管されたダムが属する水系には物部川のほか岩木川青森県)、名取川宮城県)、雄物川(秋田県)、由良川京都府)、球磨川熊本県)があるが何れも流域面積がほぼ一府県単独に限られており、皆瀬ダムと大倉ダム大倉川)は特定多目的ダム法の指定を受けた特定多目的ダムとして施工されているにも拘らず、完成後地方自治体に管理が移されている[275]。こうした地方自治体へのダム事業移管は、1996年(平成8年)に完成し沖縄県へ管理が移管された倉敷ダム(与那原川)が最も新しい事例となっている[276]

なお、旧建設省が施工し管理が地方自治体に移管されたダム事業の例外として小瀬川ダム小瀬川)がある。小瀬川水系は広島県山口県県境を流域としており、小瀬川本流自体が両県境となっている。ダム建設事業は山口県が当初単独で進め、後に広島県との共同事業として計画されたがダムの建設地点と目的の一つである工業用水道配分を巡り両県が対立。協議が難航したことから建設省に裁定を求め、1958年9月第2次岸内閣建設大臣遠藤三郎はダム地点と用水配分に関する裁定を下しさらに同年11月両県の委託を受けて建設省中国地方建設局がダムの施工を開始した[277]。完成後は山口・広島両県が管理しているが複数の地方自治体が管理業務を行う多目的ダムは小瀬川ダムが唯一である。

一方水資源開発公団に移管されたダムは、何れも1962年(昭和37年)に制定された水資源開発促進法に基づく水資源開発水系に指定された水系に存在する。大都市圏への上水道・工業用水道供給など利水需要を満たす上で重要なダム事業は、水資源開発基本計画(フルプラン)の策定や改定において計画施設に加えられる。1962年に利根川淀川水系が水資源開発水系に指定された際に矢木沢ダム(利根川)、下久保ダム神流川)、高山ダム名張川)が建設省から公団へ事業承継されたのを皮切りに、多くのダム事業が公団へ移管された。この中には日本最大の多目的ダムである徳山ダム揖斐川)や「四国のいのち」とも称される早明浦ダム吉野川)も含まれる[278]。こうした公団へのダム事業移管は1994年(平成6年)の丹生ダム高時川)が最も新しい事例である[279]

所在
水系
河川
ダム
型式
高さ
総貯水容量
着工
完成
現管理
移管年
備考
青森 岩木川 岩木川 目屋ダム 重力 58.0 33,900 1953 1959 青森県 1960 再開発[280]
宮城 名取川 大倉川 大倉ダム 多連式アーチ 82.0 28,000 1956 1961 宮城県 1962 [281]
秋田 米代川 粕毛川 素波里ダム 重力 72.0 42,500 1967 1970 秋田県 1967 [274]
秋田 雄物川 皆瀬川 皆瀬ダム ロックフィル 66.5 31,600 1958 1963 秋田県 1963 [274]
秋田 雄物川 玉川 鎧畑ダム 重力 58.5 51,000 1952 1957 秋田県 1958 [274]
群馬 利根川 渡良瀬川 草木ダム 重力 140.0 60,500 1965 1977 水資源機構 1965 ダム湖百選[278]
群馬 利根川 神流川 下久保ダム 重力 129.0 130,000 1959 1968 水資源機構 1962 ダム湖百選[278]
群馬 利根川 利根川 矢木沢ダム アーチ 131.0 204,300 1959 1967 水資源機構 1962 ダム湖百選[278]
埼玉 荒川 浦山川 浦山ダム 重力 156.0 58,000 1972 1998 水資源機構 1976 [278]
埼玉 荒川 中津川 滝沢ダム 重力 132.0 63,000 1969 2007 水資源機構 1976 [278]
岐阜 木曽川 阿木川 阿木川ダム ロックフィル 101.5 48,000 1969 1990 水資源機構 1976 ダム湖百選[278]
岐阜 木曽川 馬瀬川 岩屋ダム ロックフィル 127.5 173,500 1967 1977 水資源機構 1969 [278]
岐阜 木曽川 揖斐川 徳山ダム ロックフィル 161.0 660,000 1971 2007 水資源機構 1976 [278]
滋賀 淀川 高時川 丹生ダム ロックフィル 145.0 150,000 1980 未定 水資源機構 1994 事業見直し[279]
京都 由良川 由良川 大野ダム 重力 61.4 28,550 1953 1961 京都府 1962 ダム湖百選[282]
京都 淀川 名張川 高山ダム 重力アーチ 67.0 56,800 1960 1969 水資源機構 1962 [278]
島根 斐伊川 斐伊川 三成ダム アーチ 42.0 3,438 1950 1953 島根県 1953 [283]
広島 小瀬川 小瀬川 小瀬川ダム 重力 49.0 11,400 1956 1964 広島県
山口県
1964 受託施工[284]
山口 佐波川 佐波川 佐波川ダム 重力 54.0 24,600 1952 1955 山口県 1955 受託施工[285]
愛媛 吉野川 銅山川 富郷ダム 重力 106.0 52,000 1974 2000 水資源機構 1992 [199]
高知 吉野川 吉野川 早明浦ダム 重力 106.0 316,000 1963 1977 水資源機構 1967 ダム湖百選[278]
高知 物部川 物部川 永瀬ダム 重力 87.0 49,090 1949 1957 高知県 1957 [286]
福岡 矢部川 矢部川 日向神ダム 重力 79.5 27,900 1953 1961 福岡県 1950 [287]
熊本 球磨川 球磨川 市房ダム 重力 78.5 40,200 1953 1959 熊本県 1960 [288]
宮崎 大淀川 岩瀬川 岩瀬ダム 重力 55.5 57,000 1953 1967 宮崎県 1954 [289][290]
沖縄 比謝川 与那原川 倉敷ダム ロックフィル 33.5 7,100 1979 1996 沖縄県 1996 ダム湖百選[276]
沖縄 宮良川 宮良川 真栄里ダム アース 27.0 2,300 1972 1984 沖縄県 1984 [291]

脚注

注釈

  1. ^ 完成例は岐阜県の小渕ダム久々利川)が最初である。
  2. ^ 現在、五十里湖に架かる海尻橋付近。
  3. ^ 新大洞ダム建設、二瀬ダム再開発、二瀬・滝沢浦山3ダムの貯水容量再配分の何れか、もしくは複数を組み合わせて荒川の治水安全度向上を図る事業。
  4. ^ このため新大洞ダムの諸元は現在未定となっている。表中の諸元は計画当初のものである。
  5. ^ 倉渕ダムは国土交通省のダム事業再検討対象となっている。
  6. ^ 電源開発はダム本体の維持修繕および水力発電に関連するダムの運用において、管理業務を担当している。
  7. ^ このほかに能登特定地域総合開発計画があるが、河北潟邑知潟の干拓と漁港や道路の整備が主目的である。
  8. ^ 県営の補助多目的ダムとしては和田川ダム和田川)、利賀川ダム(利賀川)、境川ダム(境川)が建設されている。
  9. ^ 魚類の影響が認められなかったことを不服として控訴している。
  10. ^ 本流に姫川第二ダム姫川第三ダムが建設されているが、高さが15メートル未満であることから河川法上のダムとはならず、堰の扱いである。
  11. ^ 東北電力が計画していた高さ119メートル、総貯水容量3億2,000万立方メートルの水力発電専用の巨大ダム計画。
  12. ^ ダムは1956年完成。再開発事業における諸元を掲載。現在のダム諸元とは異なる。
  13. ^ 計画当初は高時川ダムという名称であった。後に水資源機構へ事業移管。
  14. ^ なお、この問題に絡み知事が大阪府全職員に配信したメールに対し批判した職員が処分されている。
  15. ^ 13水系の詳細については一級水系の項目を参照。
  16. ^ 2006年8月1日、神戸川水系の全河川は斐伊川水系に編入され一級河川となり、以降神戸川は斐伊川に合流しないものの斐伊川の支流として扱われる。これにより二級河川・神戸川水系は法的に消滅した。
  17. ^ 日本の全ダムでは黒部、高瀬、徳山、奈良俣、奥只見に次ぎ、浦山・宮ヶ瀬と同率の6位の高さである。
  18. ^ 四国では香川県による綾川長柄ダム)と香東川内場ダム)の河川総合開発事業が戦前より手掛けられている。
  19. ^ 流況調整河川には北千葉導水路野田導水路(利根川・江戸川)があり、事業再検証中の霞ヶ浦導水事業(利根川・那珂川)もこれに該当する。

出典

  1. ^ 水資源機構管理ダムは除く。また香川県にはかつて土器川水系に前の川ダムというダムが計画されていたが中止されている。
  2. ^ 平成21年度におけるダム事業の進め方などに関する前原国土交通大臣のコメント” (PDF). 国土交通省. 2009年10月15日閲覧。
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  4. ^ 国土交通省北海道開発局札幌開発建設部 大夕張ダム管理所2012年8月15日閲覧
  5. ^ 国土交通省北海道開発局『北海道のダム事業』2012年8月15日閲覧
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  8. ^ 『石狩川 その治水と利水』p.105
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  15. ^ a b 『占冠村史』pp.279-285
  16. ^ a b 『ダム年鑑 1964』pp.36-37
  17. ^ 国立環境研究所『湖沼水質保全特別措置法に基づく指定地域』2012年8月22日閲覧
  18. ^ a b 国土交通省東北地方整備局北上川下流河川事務所『鳴瀬川中流堰』2012年8月15日閲覧
  19. ^ 『日本の多目的ダム 直轄編 1990年版』pp.60-61
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  21. ^ 国土交通省東北地方整備局玉川ダム管理所『中和処理施設の概要』2012年8月15日閲覧
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参考文献

関連項目