酸
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酸と塩基 |
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酸(さん、英: acid)とは、化学において、塩基と対になってはたらく物質のこと。
概要[編集]
一般的な使用例としては、酢酸(酢に3〜5%程度含有)、硫酸(自動車のバッテリーの電解液に使用)、酒石酸(ベーキングに使用する)などがある。これら3つの例が示すように、酸は溶液、液体、固体であることができる。さらに塩化水素などのように、気体の状態でも酸であることができる。
一般に、プロトン (H+) を与える、または電子対を伴いながら定義が考え直されてきたことで、何種類かの酸の定義が存在する。
酸としてはたらく性質を酸性(さんせい)という[1]。一般に酸の強さは酸性度定数 Ka またはその負の常用対数 pKa によって定量的に表される。
酸や塩基の定義は相対的な概念であるため、ある系で酸である物質が、別の系では塩基としてはたらくことも珍しくはない。例えば水は、アンモニアに対しては、プロトンを与えるブレンステッド酸として作用するが、塩化水素に対しては、プロトンを受け取るブレンステッド塩基として振る舞う。
酸解離定数の大きい酸を強酸、小さい酸を弱酸と呼ぶ。さらに、100%硫酸より酸性の強い酸性媒体のことを、特に超酸(超強酸)と呼ぶことがある。
「—酸」と呼ばれる化合物には、酸味を呈し、その水溶液のpHは7より小さいものが多い。酸化反応でできるものや、プロトンとのイオン結合でできるものがある。
また、酸は、硫酸など一部の例外を除き、酸化力は非常に弱い。酸は、酸化力が非常に強い物質と誤解されることもあるが、酸化(英: oxidation)は、酸素(英: oxygen)に由来する語であって、酸とは無関係である。これは、酸素が発見当初「酸を生む物」と誤解されたことによる。
酸の定義[編集]
以下に、それぞれの酸の定義を概略のみ述べる。
- アレニウス酸 (Arrhenius acid)
- アレニウスの定義による酸。水溶液中においてプロトン () を出す物質。下式において、塩化水素 (HCl) はアレニウス酸としてはたらいている。
- ブレンステッド酸 (Brønsted acid)
- ブレンステッド-ローリーの定義による酸。反応する相手「B」に対しプロトンを与える物質。下式の反応で「AH」、あるいは「A+H」がブレンステッド酸。
- ルイス酸 (Lewis acid)
- ルイスの定義による酸。電子対を受け取る物質。下式の反応で「A」がルイス酸。
酸の塩基度[編集]
酸の1分子中に含まれる水素原子のうち、金属原子で置き換えられる水素原子の数をその酸の塩基度といい、塩基度2以上の酸を多塩基酸と呼ぶ。
一塩基酸[編集]
一塩基酸は中和反応において、一分子につきひとつのプロトンを出す。
(例:HA=一塩基酸):
- Ka
多塩基酸[編集]
多塩基酸は中和反応でその塩基度の数だけプロトンを出すことができる。
(例:H2A=二塩基酸)
- Ka1
- Ka2
ここで一般的にKa1 > Ka2となる。
多塩基酸の濃度分率は一般にα
で求めることができる。
代表的な酸[編集]
- 無機酸
- スルホン酸
- カルボン酸
- ビニル性カルボン酸
- 核酸
脚注[編集]
- ^ “酸性(さんせい)の意味”. goo国語辞書. 2020年11月6日閲覧。