死刑
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死刑(しけい)は、刑罰の一種で、対象者(受刑者)の生命を奪う刑罰の総称である。生命刑(せいめいけい)、極刑(きょっけい)とも呼ばれる。
- 日本での死刑事情などについては、日本における死刑を参照。
- 死刑制度の廃止をめぐる問題に関しては死刑存廃問題を参照。
- 世界各国の死刑制度に関する詳細については、世界の死刑制度の現状を参照のこと。
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[編集] 概説
[編集] 歴史
死刑は、身体刑と並び、前近代(おおむね18世紀以前)には最もポピュラーな刑罰の一種であった。この時代、必ずしも重罪に適用される刑罰ではなく、比較的軽度の犯罪でも簡単に死刑が適用されることが少なくなかった。前近代の死刑は、多様な犯罪に適用される刑罰であったことから、単に「生命を奪う」というだけではなく身体刑の要素も含まれ複数の死刑方法が採用されていることが多く、苦痛が多い「重罪用の死刑」、苦痛が少ない「軽犯罪用の死刑」が使い分けられていた。
その理由として、当時は犯罪者を長期間収容する制度が存在しなかったことが挙げられる。結果として、再犯を防ぎ社会的な秩序を守るために死刑が適用されることが多かった。イギリスなどでは、オーストラリアへの流刑などが代替刑として存在した。この年代の死刑は、犯罪者を社会から抹消することだけではなく、犯罪抑制の観点から見せしめ・報復としての機能も重視されていた。そのため、特に重罪向けの死刑の場合は、「より残虐なもの」「より見栄えのするもの」であるよう工夫された。また秘匿して行うという発想はなく、しばしば祭りとして扱われた。世界中でさまざまな死刑が行われたが、主なものを例示すると「火あぶり(火刑)」「刺殺(磔)」「八つ裂き」「斬首」などがある。
近代に至って、西洋で生まれた人権という新しい概念が伝播し、民主・資本主義への移行に伴い統治機構の整備・改革が行われるにつれ、死刑の扱いは変更された。まず、啓蒙時代のカントやロックが刑罰を人権侵害に対する国家による報復であると位置付け、死刑はあくまで生命権を侵害したもの、懲役は自由権を侵害したものに科せられるべきと論じた。「重大犯罪に対する特別な刑罰」と位置づけられるようになり、比較的軽度の犯罪については新たに普及しはじめた自由刑に移行していった。同時に祭事性を否定する方向に向かい、非公開とされる傾向が強まった。また身体刑の要素が除去され刑罰内容が「生命を奪う」ことに純化され、方法は「強い苦痛を与える方法」を避けて「ギロチン」「絞首刑」「電気椅子」「毒物注射」「銃殺刑」などの比較的短時間にあまり苦痛を伴わずに死ぬような方法にとってかわられた。
現代の法体系においては、死刑は一番重い刑罰とされる(極刑とも呼ばれる)。非常に重いとされる罪・主に殺人罪に対して科されるのが一般的である。
[編集] 制度
死刑制度の是非については世界的に多くの議論があり、死刑制度を設けている国と設けていない国がある。また、法律上は死刑制度を設けていても実際には死刑を執行していない国もある。また、一般犯罪においては死刑を廃止し、国事犯(外患誘致やスパイ行為など)や軍事法廷(軍法会議)における脱走罪・敵前逃亡・利敵行為などに対してのみ死刑を残している国もある。
[編集] 根拠
[編集] 目的
一般予防説に従えば、「死刑は、犯罪者の生を奪うことにより、犯罪を予定する者に対して威嚇をなし、犯罪を予定する者に犯行を思い止まらせるようにするために存在する。」ということになる。
特別予防説に従えば、「死刑は、矯正不能な犯罪者を一般社会に復して再び害悪が生じることがないようにするために、犯罪者の排除を行う。」ということになる。
日本やアメリカなど、死刑対象が主に殺人以上の罪を犯した者の場合、死刑は他人の生命を奪った(他人の人権・生きる権利を剥奪した)罪に対して等しい責任(刑事責任)を取らせることということになる。
一般的な死刑賛成論者は予防論と応報刑論をあげるが、応報論の延長として敵討つまり、殺人犯に対する報復という発想もある。近代の死刑制度は、被害者のあだ討ちによる社会秩序の弊害を国家が代替することで無くす側面も存在する。国家の捜査能力が低い近代以前は、むしろ仇討ちを是認あるいは義務としていた社会もあり、それは被害者家族に犯罪者の処罰の責任を負わせて、以て捜査、処罰などの刑事制度の一部を構成させていたという側面もある。
殺人などの凶悪犯罪では、裁判官が量刑を決める際に応報は考慮されている。死刑反対派は、近代刑法はこのような応報刑を否認する事を基本原理としていると主張するが、懲役刑の刑期の長短などが実際には応報に基づいておこなれている。
日本では日本国憲法下で初めて死刑を合憲とした判決(死刑制度合憲判決事件、最高裁判所昭和23年3月12日大法廷判決)において、応報論ではなく威嚇効果と無力化効果(隔離効果)による予防説に基づいて合憲とされた。
[編集] 死刑が適用される犯罪例
歴史的には、イギリス等のように窃盗罪といった微罪、もしくは不倫した女性といった道徳に反する罪に対しても死刑が適用されたが、21世紀現在、死刑を存置する国家では概ね他人の生命を奪う犯罪のうち、特に凶悪な犯罪者に対し死刑が適用される傾向がある。ただし国によっては麻薬密売や児童人身売買といった生命を奪わない犯罪や戦時に軍隊からの脱走兵に対し適用される場合がある。
日本において死刑判決を宣告する際には、永山則夫連続射殺事件で最高裁(昭和58年7月8日判決)で示した死刑適用基準の判例を参考にしている場合が多い。そのため永山基準と呼ばれ、第1次上告審判決では基準として以下の9項目が提示されている。
- 犯罪の性質
- 犯行の動機
- 犯行態様、特に殺害方法の執拗性、残虐性
- 結果の重大性、特に殺害された被害者の数
- 遺族の被害感情
- 社会的影響
- 犯人の年齢
- 前科
- 犯行後の情状
以上の条件のうち、たとえば4項では「被害者2人までは有期、3人は無期、4人以上は死刑」といった基準があるようにいわれるが、過去には営利誘拐殺人で被害者1人でも死刑(例:吉展ちゃん誘拐殺人事件)になる一方で、被害者4人以上でも新宿西口バス放火事件(死者6人)や深川通り魔殺人事件(死者4人)では、心神耗弱は罰しないという刑法39条に拠って、加害者の犯行時は心神耗弱であったことが認められ、罪一等減じられ無期懲役判決が確定する場合もある。
また戦前に発生した最悪級の殺人事件であるが東京市電運転手連続殺傷事件(死者7人負傷者10人)でも加害者に対する朝鮮人差別が一因にあるとしたためか、無期懲役が判決されている。また、東京地下鉄サリン事件の実行犯である林郁夫は、自首が情状酌量の要素として認められたためか、無期懲役となっている(サリンを製造しただけでも死刑判決を受けているオウム真理教幹部もいる中で、実行犯としては唯一、死刑を免れている)。そのため犠牲者数だけで死刑が適用されるわけではなく、犯罪の性質も含めて判例に依拠しつつ判断しているといえる。そのため犠牲者1人であっても犯行態様が極めて残虐であり、共に同等の責任を負うべきであるとして共犯2人が死刑になる場合(例:福岡病院長殺人事件)もある。ただし、何が「残虐」で、何が「残虐」でないかは極めて主観的な問題であり、客観性に乏しく、個別の事件で基準の違いが大きすぎるため、公正さが欠けている部分がある。
[編集] 抑止効果
個別の刑罰の抑止効果は、死刑、終身刑およびほかの懲役刑も含めて、統計上効果が実証されていない。一般論として、死刑反対派は死刑による犯罪抑止効果の統計的証拠がないこと、死刑賛成派は死刑代替終身刑による威嚇効果が十分でないことを指摘する。抑止効果の分析方法には地域比較と歴史的比較がある。地域比較では国や州の制度の違いによって比較が行われる。
地域比較としては、アメリカの死刑制度の無い州に比べて死刑制度のある州の凶悪犯罪発生率は統計的に高い。反対派はこれは抑止効果の不在とし、賛成派はこれは高い犯罪率に対する州政府の対応の結果であると主張する。先進国で死刑を実施している国としては、日本、アメリカ、シンガポール、台湾などがあるが、アメリカでの犯罪率が高く他国は犯罪率が低いという事情もあり、国家や州の比較、すなわち地域比較そのものに意味がないとの意見もある。
時代的比較では、死刑が廃止された国での廃止前・廃止後を比較する試みがされる。しかし制度や社会環境の変化も伴うため、分析者によってさまざまな結論が導き出されている。ただし廃止後に劇的に犯罪が増加・凶悪化した典型的ケースはこれまでにはない。劇的に犯罪が減少した例もないが。
[編集] 威嚇効果
精神状態が健常な死刑囚に聞き取りを行った際に、ほとんどの者が死刑に多少なりとも恐怖を感じていると告白しているため、死刑囚個人に対しては威嚇効果がある。死刑という制度自体が犯罪の抑止効果があるかは前述でも述べられているが不明である。
東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の宮﨑勤死刑囚も恐怖を手紙で訴えている。滋賀県長浜市園児殺害事件の犯人である中国籍の女性も死刑を求刑され恐怖心から法廷で「助けてください」と発言した。
ただし、附属池田小事件を引き起こし死刑が執行された犯人のように動機が「死にたいから、死刑になるために事件を引き起こした」といった者や、ピアノ殺人事件のように、死にたいがために殺人を犯した者については、威嚇効果は全く無いと主張する者もいる。このような動機による殺人を拡大自殺と呼ばれる。ただし実際に過去にこのような犯行を犯したものは僅かであるが、いずれも死刑判決を確実にするために大量殺人を意図する場合が多い。また、2008年4月に鹿児島県で発生した自衛官によるタクシー運転手殺害事件では動機が「死刑になりたかったので、誰でもいいから殺害したかった」というものであり、少数であるが死刑の威嚇力を悪用する異常な動機も存在している。
またアメリカの殺人鬼アルバート・フィッシュは自身の死刑執行に対し「最高のスリル」と待望していたとの説があるが、彼のようなシリアルキラーは他人の生命ばかりか自身の生命の保持すら関心がないので、死刑になることを恐れないなど、自己保身のために犯行を躊躇することはない。死刑の威嚇効果が期待できないとの指摘もある。
[編集] 処刑方法
現在74カ国の死刑存置国で行われている、処刑方法は以下の通りである。
- 絞首刑 (エジプト、イラン、日本、韓国、ヨルダン、イラク、パキスタン、シンガポール他)
- 電気処刑 (米国アラバマ州、サウスカロライナ州、バージニア州、フロリダ州、ただし処刑対象者が薬殺刑を選択できる。電気処刑による死刑執行は米国ネブラスカ州で最後に行われていたが、2008年2月に同州最高裁判所が憲法違反判決を出した)
- 致死薬注射 (中国、台湾、グアテマラ、タイ、米国の上記以外の州)
- 銃殺刑 (ベラルーシ、中国、北朝鮮、ソマリア、台湾、ウズベキスタン、ベトナム他)
- 斬首刑 (サウジアラビア、イラク)
- 石打ち刑 (アフガニスタン、イラン)
- 公開処刑は、中国、イラン、北朝鮮、サウジアラビアなどで行われる。
- 刑罰の一覧を参照。
[編集] 死刑に関する議論
死刑および死刑制度については、人権や冤罪の可能性、倫理的問題、またその有効性、妥当性、国家としての人類の尊厳など多くの観点から、全世界的な議論がなされている(詳細は死刑存廃問題を参照のこと)。議論には死刑廃止論と死刑賛成論の両論が存在する。人権擁護団体などは「死刑廃止は世界的徴候」と主張することが多いので、賛成論を、一度廃止すれば「復活」はないという意味で在置論と呼ぶ。もちろん死刑の廃止と復活は、世界中で史上何度も行われてきたので正確な表現ではない。また、ロシア当局によるチェチェン独立は指導者の「殺害」などがあり、死刑制度の有無や執行の有無が、その国家の人権意識の高さと直接の関係はない。
地理的には、ヨーロッパ、そして南米の6カ国を除いて廃止。ヨーロッパ諸国においてはベラルーシ以外死刑を行っている国は無く(ロシアにおいては制度は存在するが執行は十年以上停止状態であるといわれる。チェチェンを参考のこと。)。これは死刑制度がヨーロッパ連合が定めた欧州人権条約第3条に違反するとしているためである。またリヒテンシュタインでは1987年に死刑が廃止されたが、最後の処刑が行われたのが1785年の事であり事実上2世紀も前に廃止されていた。またベルギーも1996年に死刑が廃止されたが最後に執行されたのは1950年であった。このように、死刑執行が事実上行われなくなって、長年経過した後に死刑制度も正式に廃止される場合が多い。
欧州議会の欧州審議会議員会議は2001年6月25日に日本およびアメリカ合衆国に対して死刑囚の待遇改善および適用改善を要求する1253決議を可決した。この決議によれば日本は死刑の密行主義と過酷な拘禁状態が指摘され、アメリカは死刑適用に対する人種的経済的差別と、少年犯罪者および精神障害者に対する死刑執行が行われているとして、両国の行刑制度を非難するものであった。
通常犯罪における死刑が廃止されても、国家反逆罪ないし戦争犯罪によって死刑が行われる場合がある。例えばノルウェーのヴィドクン・クヴィスリングは1945年5月9日、連合国軍に逮捕され国民連合の指導者と共に大逆罪で裁判にかけられ、銃殺刑に処せられた。ノルウェーでは、この裁判のためだけに特別に銃殺刑を復活(通常犯罪の死刑は1905年に廃止されてはいたが)しており、そのためこの裁判の公正さに関しては今なお批判の声が挙がっている。また同様にイスラエルもナチスによるホロコーストに関与したアドルフ・アイヒマンを処刑するため、死刑制度がないにもかかわらず死刑を宣告し執行した。
中東とアフリカとアジアにおいては総じて死刑制度が維持されている。冷戦時代は総じて民主国家が廃止、独裁国家が維持していたが、現在では冷戦崩壊後の民主化と大量虐殺の反省により東欧と南米が廃止、アジアおよび中東とアフリカの一部が民主化後も維持している状態である。またイスラム教徒が多数を占める国では、イスラーム法を名目とした死刑制度が維持されているが、トルコのようにヨーロッパ連合への加盟を目指すために廃止した国や、ブルネイのように1957年以降死刑執行が行われていないため事実上廃止の状態の国もある。
[編集] 死刑執行が多い国
アムネスティ・インターナショナルの報告によると、2004年の中国、イラン、ベトナム、アメリカを合わせた執行数は、世界で全執行数の97%を占める。先進国以外では2004年に全世界で執行された死刑囚の数の90%以上が中国で、3400人について執行された。中国では死刑方法は公開銃殺刑が主だったが薬殺も導入されつつある。
第2位はイランで159人である。イランや他のイスラーム国家の場合は、イスラム教の戒律を名目として離教や同性愛や不倫にも死刑が適用される。またレイプ被害者の女性が強姦の事実を認めた後、イスラーム法で定められた4人の証人による立証をしそこなったため死刑になる事例も存在する。加害者は死刑ではなく鞭打ち刑で済むこともある。
死刑の方法に関しても、イスラーム法に依拠した投石や生き埋めなどの死刑方法は、他国から残虐であると非難されている。
これに対しイスラーム国家の擁護者からの反論として、不倫、同性愛は汚らわしい性的倒錯であり、死刑になって当然であるという意見、投石や生き埋めなどの刑罰は慈悲深く慈愛遍きアッラーフのお定めになった神法であるという意見、離教は真実の教えイスラームを受け入れた後そこから離れた許されざる犯罪であるという意見などが出されている。(イランやサウジアラビアの場合は、死刑以外の刑でも常習窃盗犯には断手などの身体刑、障害の残る暴行においては手術によって同じ障害を与えるなどの徹底した応服主義に則っているので死刑以外の刑の非難も多い)。
ちなみにレイプ被害者が死刑にされたという事例は、イランで2004年8月14日に死刑判決が下り翌朝執行された16歳の少女である。この少女は13歳の頃に少年と2人きりでいたという理由で鞭打ち刑を受けた経験がある少女で、51歳の既婚の男性からレイプされそのことを黙っていたことによる罪で逮捕され、近所住民から彼女は不道徳であるという訴えを加え、裁判でレイプされたことを実証出来なかった上に着ていたベールを裁判中に投げた結果、死刑判決が下ることとなった。裁判では見た目から彼女の年齢を22歳ということにさせられ、また死刑執行の際に家族に死刑執行することを伝えなかった。また、この加害者の男性は95回の鞭打ち刑で済んだ。この内容を2006年になりBBCが伝えた。
米国では59件の執行があり、先進国中最大の執行数を記録している。執行方法は薬殺で、ネブラスカ州のみ電気椅子で死刑が行われる。人口比率で最大なのはシンガポール。人口が400万あまりの小さい都市国家で、2001年に70件死刑執行された。日本では、2006年において4人が、2007年8月23日に3人が執行された。
シンガポールは麻薬に対し極端に厳しく、量の多少にかかわらず麻薬を所持していた者、密輸しようとした者等は(外国人であっても)殆どの場合で死刑に処される。死刑判決についてシンガポールと麻薬所持が露見した者が籍を置く国との間で外交問題になることがある。
多くの国では未成年者を処刑することを禁止しているが、犯行時18歳未満であった者を処刑した国が、1990年以降に8ヶ国存在した。このうち、米国は1990年以降、犯行時に16歳だった者を含む19人を処刑し、世界一の執行数を記録している。最近、これは最高裁で違憲とされた。日本では、近年殺人に関して刑罰を厳しくしようとする意見が大勢を占め、犯罪抑止の観点からシンガポールの麻薬犯並みの厳罰にすべきという意見も出てきている。
[編集] 犯罪組織対策
一部の国、特にコロンビア、イタリア、メキシコ、ロシア、日本などでは犯罪組織が非常に強い影響力を持っており、政府関係者や司法関係者の暗殺等、テロ行為を実行することがある。これに対して、死刑制度が無いのは治安維持の観点から大きな問題と指摘されている。 シンガポールやアラブ諸国のように死刑適用が極めて厳しい国では大規模な犯罪組織は存在せず、特に世界中の麻薬組織は麻薬犯罪に死刑が適用されるシンガポールや、一部のアラブ諸国での活動を避けており、死刑が犯罪組織に対しては治安向上の効果があることを示す良き例であると指摘されている。
[編集] 2006年に死刑執行の多かった国
- 中華人民共和国 (公式発表では1,010人、一説には7,500から8,000人という未確認情報もある)[1]
- イラン (177人)
- パキスタン (82人)
- イラク (少なくとも65人)
- スーダン (少なくとも65人)
- アメリカ合衆国 (53人)
- (参考)日本 (4人)
[編集] 中国の状況
[編集] 概況
執行方法は公開銃殺刑が基本であるが薬殺刑も一部で導入されつつある[2]。中国の場合は、賄賂授受・麻薬密売・売春及び性犯罪など被害者が死亡しない犯罪などでも死刑判決が下されたこともある。また死刑を犯罪撲滅に対する最大の効果があると司法当局が確信しているため、死刑の適用が多用されている。例えば2001年に中国国内で犯罪に対する『厳打』キャンペーンが行われ、暴力による刑事事件だけでなく「株式相場の混乱」といった経済事件まで死刑判決が下され、合せて2960人に死刑判決が下され4月から7月までに1781人に対し死刑が執行された。このように中央からのキャンペーンで地方が暴走することもあり、例えば四川省の検察当局は「迅速な逮捕、迅速な裁判、迅速な結果」の結果、6日間に19000人以上が逮捕され、裁判所も証拠調べを充分に行わずに裁判を行った。そのため結果的に誤判が大量に発生したと見られ冤罪による死刑も多く行われたと言われている。また、このようなノルマを課した犯罪撲滅キャンペーンの結果、現場レベルでは自白を引き出すために暴力的な尋問と拷問が行われ、結果として重大な人権侵害が行われているとの指摘もなされている。
中華人民共和国の刑罰体系では一部の犯罪に関して下された死刑に執行猶予が付せられる規定(中華人民共和国刑法43条[3])がある(とはいえ、この執行猶予はいわゆる再教育を目指すものである。実際に反革命行為に対する死刑宣告を受けたものを死刑の重圧をかけて『労働改造』する目的があると言われている。著名な執行猶予付き死刑を宣告されたものに江青がいる)。2007年には賄賂を受け取った高官が死刑に処され、麻薬を中国から持ち出そうとした日本人2名に死刑判決が下されている。なお、過去にイギリスやポルトガルの植民地であった香港(1993年廃止)とマカオには現在でも死刑制度が無い。なお、中国政府は北京オリンピックを控え国際世論、特に死刑制度を廃止している欧州諸国からの批判をかわす為、2007年以降は公開処刑は行わないことを発表した。またフランスのサルコジ大統領が2007年11月に中国訪問した際に胡錦濤国家主席に対し「完全な廃止は求めないが、執行停止に向けた動きを強めてほしい」とに注文した事に対し、「死刑適用のケースを減らしたい」と回答したが具体的な数字についてはふれていない[4]。
また司法制度改革として、従来死刑執行命令を出す権限を持っていた地方の高級法院(日本では高等裁判所に相当)を取り上げ、中央の最高法院(最高裁判所)で死刑判決が妥当に出されたかかどうか「審査」したうえで、死刑執行を決めるとしている。なお、中国の刑事裁判は二審制であり、死刑判決を下すのも執行命令を出すのも司法官僚である。
問題点として、中国において三権分立が成り立っておらず、法治主義ではなく役人等の意向が強く反映されている人治主義である点が指摘されている。そのため、死刑を宣告するにしても司法機関において近代的刑事訴訟手続が要求する法手続きが充分整備されていないとの指摘がある。 また死刑囚からの組織的な臓器移植が行われている。これは死刑の執行をされた囚人から臓器提供がされていると他国で批判された問題に対して中国政府高官が認めている。この死刑囚からの臓器移植は中国においては「罪を犯した事に対するせめてもの罪滅ぼし」との儒教的思想による発想からきていると言われているが、行刑関係者が医療関係者から死刑囚の臓器提供の見返りに金銭を受け取っている事も明らかになっている。例えば台北時報2001年8月3日付けの記事によれば、江西省南昌で5月に処刑された男性の遺体が、腎臓移植のために死刑判決を出し死刑執行命令を出した地元裁判所によって地元の病院に販売され、遺族は裁判所から彼の遺骨を返す通知すら受けていないという。このように裁判所によって「移植ありき」の死刑執行の疑いがあり、移植患者にとって都合が良い(休みが取れる旧正月など)時期に大量に処刑されていると批判されている。そのため、2006年には臓器売買禁止法を施行した。だが、未だに臓器売買が行われていることがBBCの取材により明らかになっている。
新疆ウイグル自治区では政治的理由で死刑判決が中国国内で唯一行われている。2001年10月に新疆ウイグル自治区ホタンで公判大会で少数民族の人物が「武器窃盗」および「国家破壊活動」で有罪となり死刑宣告された直後に「自動的」に処刑された。そのためウイグル人の東トルキスタン分離主義者ないしテロリストを区別せずに処刑していると言われ、特に「アメリカ同時多発テロ」以降、イスラム教徒による政治活動も「テロリズム」として処罰していると言われている。また正式な死刑ではないが、主にチベットや東トルキスタン、また民主化活動家や法輪功信者に対して行われる拷問による獄死や、農民運動活動家に対する虐待死が起こっている。これらは、地方政府の役人が中央政府の方針を無視し、自己保身のために地元警察を使って自分達にとって不都合な者を殺害しているからだと言われている。当然これらの行為は裁判を経ていないため違法であるが、実態は不明である。その為、公表されている数字よりも死刑執行者ははるかに多いとする指摘もある。また、死刑執行数が多すぎるため、かえって社会に動揺が広がっているとの指摘がある。[5]
香港の富豪が誘拐され身代金を奪取された事件では、死刑制度のない香港ではなく広東省の刑事当局に告訴したため、富豪の生命が奪われたわけではないが犯行グループが死刑になった。また日本で起きた福岡一家4人殺害事件の被疑者3名のうち2名が中国へ逃亡し裁判にかけられた際には、主犯は死刑になったが、従犯に対しては、主犯の潜伏先を自白した「捜査協力」と「自首」を認定し無期懲役に減刑された。従犯とはいえ、4人もの殺害実行に直接関与したにもかかわらず司法取引的な減刑を行なったことは、中国の刑事裁判の量刑の相場から著しく外れるものであるとして、日本側の一部や、中国国内の司法関係者から指摘された。この事件のように心神耗弱や情状酌量すべき事情が無いにも拘らず直接関与した者が死刑にならなかったのは中国国内では前例が少ない。そのため明確な判断基準が無く政治的・恣意的判決が日常的に行われている可能性が強いとの指摘もある。
[編集] アメリカの状況
アメリカでは州法によって規定が違うため、死刑が続いている州と、死刑を廃止している州に分かれる。なお連邦では死刑制度を存置している。凶悪犯罪の少ない、裕福なニューイングランド諸州や裕福ではないが治安が安定している北部内陸州において死刑が行われず、貧しい南部諸州では死刑執行数が多い傾向にある。全米では被告人に対する死刑の宣告ならびに死刑執行は減少傾向にあるが、州によっては死刑執行の盛んな州もある。また、未成年に対する殺害を伴わない性犯罪の再犯者への死刑が適用される州法がサウスカロライナ州、フロリダ州、ルイジアナ州、モンタナ州、オクラホマ州の5州で最近成立したが、殺人を犯していない性犯罪者に対する死刑適用は過酷であり、憲法違反であると法学者から強く批判されている。
近年の犯罪捜査でDNA検査が導入され、過去に有罪で死刑判決を受けた死刑囚の冤罪が明らかになり、再審で無罪になるケースが多いという。1973年から2001年までにアメリカ国内では96名の死刑囚が釈放されているが、特にフロリダ州では21名も釈放されており、フロリダでは5名の死刑執行が行われる間に2名が無罪放免になったという。
2007年12月13日に、ニュージャージー州議会が死刑廃止法案を可決し、アメリカ連邦裁判所が1976年に死刑は合憲との判断を下して以降で初めて死刑を廃止した州(実質的には1976年以降停止されていた)になった。同州には死刑囚8名がいたが全員が「仮釈放のない終身刑」に減刑された。その死刑囚の一人は性犯罪の公表を定めた「メーガン法」制定のきっかけとなった女児殺害犯人も含まれているという。[6]
死刑の適用に際して経済的人種的差別が存在しているとの指摘もある。これは、優秀で報酬の高い弁護士を雇用できるほどの経済力を持つ者が司法取引等で減刑される一方で、比較的貧困層の多いアフリカ系アメリカ市民に対する死刑の適用が人口比と比べて多いとの指摘がある。
[編集] 連邦による死刑執行
1995年に発生したオクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件(168人殺害)で11の連邦法違反で有罪になったアメリカ人テロリストのティモシー・マクベイに対する薬殺刑による死刑執行が2001年6月11日にインディアナ州テレ・ホート連邦刑務所で行われた。この連邦政府による死刑執行は38年ぶりのことであった。当時のCNNの世論調査によれば8割以上のアメリカ市民が彼の死刑執行に賛成したが、問題になったのが彼の死刑執行の瞬間を全米に散らばっている被害者の遺族800人に見せるため生中継(暗号送信のため関係者以外は見れないよう配慮されていた)したことであった。これは処刑の立会いに全員が参加出来ないためにとられた措置であったが、このことについては論議になったという。
[編集] 死刑を廃止している州及び地区
アラスカ州、ハワイ州、アイオワ州、メイン州、マサチューセッツ州、ミシガン州、ロードアイランド州、ミネソタ州、ノースダコタ州、ヴァーモント州、ウェストバージニア州、ウィスコンシン州、ニュージャージー州、コロンビア特別区(ワシントンD.C.)、プエルトリコ、グアム、北マリアナ諸島、米領ヴァージン諸島、米領サモア
[編集] 死刑が執行されていない州
ニューヨーク州、カンザス州の裁判所は2004年に死刑を違憲とした。ニューハンプシャー州、サウスダコタ州では1976年以来死刑が執行されていない。2007年1月、ノース・カロライナ州では死刑制度を実質的に停止せざるをえない状況に追い込まれた。
- 2006年4月、内科医ロベルト・ビルブロなど5人の医師が、医師免許を管轄する権限を持つノース・カロライナ州メディカル・ボード(医療監察委員会)に投書し、「医師が死刑執行に関わるのは『命を救う』という本来の責務に悖る。倫理の観点から医学界として立場を明確にしなければならない」と「死刑執行に関わる医師の役割」についてボードが立場を明確にすることを求めた。2007年1月、ボードは、既にアメリカ医師会が倫理規定で「医師は死刑執行に関わるべきでない」と決めたことを指摘して「反倫理行為は罰する」と立場を明確にし、全員一致で「医師が死刑執行に関わる行為は倫理の観点から許されない。今後、関わった医師は免許取消など処罰対象とする」と結論した。ノース・カロライナ州は州法で「死刑執行に医師を立ち会わせなければならない」と規定しているが、ボードが方針を決定した後、立ち会う医師がいなくなった(州矯正局職員である医師も立ち会いを拒否)。このような経緯で、ノース・カロライナ州は死刑執行停止に追い込まれた(出典:医学書院『週刊医学界新聞第2736号(2007年6月18日)』)。
[編集] 死刑の執行について再検討が行われる州
イリノイ州において、当時のライアン知事の決断で2004年に州内の確定死刑囚全員が仮釈放無しの終身刑に減刑された。これは2001年1月に死刑執行直前であった死刑囚の冤罪が明らかになり、ライアン知事は「死刑を宣告されたすべての者が本当に罪を犯したと確信できるまで」の措置として死刑執行の停止とともに、死刑制度調査委員会を設置した。2002年4月に委員会が出した報告書は「無実の人間が処刑されないよう保証できる制度の確立はありえない」という結論であった。そのため退任間際の知事は前述のように死刑囚の一括減刑という措置をとった。
これは、確定死刑囚の冤罪が大量に判明したため、司法制度に対する不信が背景にある。その上メリーランド州など全米のいくつかの州で死刑制度の廃止が検討されているという。
[編集] 死刑が適用される州
テキサス州が死刑制度が最も盛んな州として知られている。死刑が復活した1977年以降に全米で執行された死刑囚のうち3分の1はテキサス州によって執行されている。現在では合衆国連邦裁判所で憲法違反判決が出され禁止された18歳以下の少年犯罪者に対する死刑執行も行われていた。
連邦および全米18州で精神遅滞者に対する死刑を禁止(日本の刑法39条に相当)しているが、テキサス州では禁止されていなかった。そのためテキサス州議会が精神遅滞者に対する死刑を禁止する法案を2001年に可決したが州知事によって拒否権が発動したため、施行されなかった。
- 死刑囚の例:ケルシー・パターソン
[編集] 参考文献
- 重松一義『死刑制度必要論』(信山社)
- 植松正著・日髙義博補訂『新刑法教室I総論』(成文堂)
- 板倉宏『「人権」を問う』(音羽出版)
- 植松正「死刑廃止論の感傷を嫌う」法律のひろば43巻8号〔1990年〕
- 井上薫『死刑の理由』(新潮文庫) 永山事件以、死刑確定した43件の犯罪事実と量刑理由について記されたもの。
- 竹内靖雄『法と正義の経済学』(新潮社)
- 日垣隆『そして殺人者は野に放たれる』(新潮社)
- 亀井静香『死刑廃止論』(花伝社)
- 藤本哲也 『刑事政策概論』 (青林書院)
[編集] 注釈及び引用
- ^ name=Amnesty2006figs
- ^ <死刑>人道的な配慮、「銃殺」から「薬物注射」に全面切り替えへ 2008年3月2日付配信 Record China
- ^ 藤本哲也 『刑事政策概論』 青林書院 131頁
- ^ 朝日新聞 2007年11月27日
- ^ 朝日新聞2007年2月25日
- ^ 朝日新聞2007年12月15日
[編集] 関連項目
- 死刑存廃問題
- 法務死
- 殺人罪
- 殺人
- 戦争
- 正当防衛
- 日本における死刑 - 死罪 (律令法)
- 生き返った死刑囚
- 終身刑
- 無期刑
- シティズ・フォー・ライフの日 - 世界500都市以上で行われる死刑制度廃止運動
- 私は貝になりたい
[編集] 外部リンク
- 最高裁判所ホームページ
- In Favor of Capital Punishment - Quotes supporting Capital Punishment
- Death Penalty Quotes
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