終身刑
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終身刑(しゅうしんけい)とは、刑の満期が存在せず、受刑者が死亡するまで刑の執行が続く刑罰である。無期刑と呼称されることもある。刑種には、懲役と禁錮がある。
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[編集] 概説
終身刑には、仮釈放("parole")の可能性のあるタイプと仮釈放の可能性のないタイプがある。ただし、日本においては、仮釈放のないタイプのみが終身刑と呼称されることが多い。
[編集] 仮釈放の可能性のある終身刑
終生という刑期の途中で、仮釈放による社会復帰の可能性があるものをいう。相対的終身刑(相対的無期刑)と呼ぶこともあり、ヨーロッパにおいては、多くの国でこれが最高刑となっている。日本の無期懲役に相当し、日本の刑法では、死刑に次いで重い刑罰とされている。
各国の終身刑の最低服役年数については、日本・ベルギー・ニュージーランド・イタリアが10年、オーストリア・フィンランドが12年、ドイツが15年、カナダが15年(原則)および25年(特別の場合)、ギリシャが16年、フランス・オランダ・メキシコが20年、ポーランド・ロシア・台湾が25年となっているが、これはあくまで仮釈放の申請が可能になる年数という意味にとどまり、仮釈放の実際の運用は国によって違いがある。また、イギリスのように判決宣告の際に裁判官が最低服役年数を定める国もある。
一方、服役期間の上限が設けられている場合もある。ペルーの法律では長期刑は最高で16年までとなっているため、300件の殺人を自供し、53件までの死体の埋めた場所を告白したペドロ・ロペスなどは終身刑を宣告されたにも関わらず、釈放されている。
日本の例を見てみると、法制上は10年を経過すれば仮釈放の申請が可能になるが、実際には、最近では基本的に最低20年以上が経過しなければ仮釈放が認められない運用がされており、2005年の仮釈放者の平均在所年数は約27年となっている[1]。また、フランスも、法制上は20年を経過すれば仮釈放の申請が可能になるが、仮釈放者の平均在所年数はそれより長く、約27年となっている[2]。但しこの数字はあくまで仮釈放が許された者の平均の数字であって、その裏には仮釈放を許されないまま刑務所で死を迎える者(獄死者)の方が圧倒的な多数である。98年以降の無期懲役刑を受けての獄死者の人数は120人で仮釈放された延べ人数の104人を上回っている。
なお、相対的終身刑は、仮釈放を許されても、刑自体は終了せず、終生または一定期間、保護観察などに付せられる形態を取っている場合が多く、日本においても恩赦などの措置がない限り、原則として、終生保護観察という形で刑の執行が続くこととなっている。
[編集] 仮釈放の可能性のない終身刑
仮釈放による社会復帰の可能性がなく、終生に渡って身体の自由を拘束されるものをいう。絶対的終身刑(絶対的無期刑)と呼ぶこともあり、アメリカ(一部の州を除く)やオーストラリア(同)、イギリス、中国などでこれが存置されている。
また、韓国では、最高刑を死刑制から絶対的終身刑制に変更する議論が活発に行われている[3]。
[編集] 日本における絶対的終身刑の論議
「日本における死刑」も参照
日本においても、死刑廃止論に関連して、死刑の代替刑として絶対的終身刑の導入が議論されているが、死刑存置派の一部から「人を一生牢獄につなぐ刑(絶対的終身刑)は死刑よりも残虐な刑である」といった意見[1]や刑務所の秩序維持や収容費用といった面からその現実性を疑問視する意見[2]もあり、また国民の多数は死刑を支持しているため、絶対的終身刑の支持を得るには至っていない。
逆に、「日本の無期懲役は仮釈放されることが大半である。つまり、無期懲役といっても社会復帰が可能であり、この二つ(無期懲役と死刑)の量刑の間に差がありすぎるので絶対的終身刑を導入するべきだ。」という意見[3]が少数ながらある。
なお、この制度(絶対的終身刑)を置いている国は世界でも少数にとどまっている(2002年4月11日森山真弓法務大臣国会答弁[4]、2006年10月20日長勢甚遠法務大臣国会答弁[5])。なお、裁判員制度が2009年5月に導入されることから、死刑存置派の森喜朗を最高顧問に置き、それに死刑廃止派の議員から構成される「量刑制度を考える超党派の会」が結成され、死刑制度を維持したうえで絶対的終身刑を創設する刑法改正案を提出する動きもある。
[編集] 各国の終身刑の概略
[編集] アメリカの場合
死刑の有無にかかわらず終身刑は存在する。ただし、"Life Sentence"と"Life Sentence without possibility of parole"で呼び分けられ、後者の場合は恩赦がない限り社会復帰の可能性はない。死刑制度を廃止した州は第一級殺人には基本的に仮釈放の可能性のない禁錮刑が言い渡される。死刑制度を存置している州と死刑廃止の州の両方で殺人などを犯し後者の州で逮捕された場合でも前者の州での裁判および死刑を免れることは連邦制度上できない。あくまでも死刑制度のない州で死刑を免れることができるというだけである。
なお、アメリカにおいては、法制度上、50年を超えるような非常に長期の有期刑、例えば懲役80年といった刑が言い渡される場合もあるが、この場合においても、服役態度を考慮して刑期を軽減する善時制度や仮釈放の制度が存在しているため、実質的な相対的終身刑であり、恩赦によってしか社会復帰が不可能な絶対的終身刑とは異なる。ただし、例えば懲役200年といった寿命を遥かに上回る刑期の場合は、実質的な絶対的終身刑となる(例外もある)。
[編集] 中国の場合
中国(香港、マカオを除く)においては、1997年の刑法改正によって、殺人などの凶悪犯罪で無期懲役の判決を受けた場合は、仮釈放を認めないとする規定が設けられたことにより、絶対的終身刑(絶対的無期刑)が存在している。ただし、恩赦による減刑の可能性は残されている。
[編集] イギリスの場合
イギリスにおいては、裁判官が個別に最低服役期間(Tariff)を定める形を取っており、終身刑受刑者の最低服役期間の平均は約15年であるが、犯罪によっては、25年や30年といった通常より長い最低服役期間を定められることもあり、非常に重大な犯罪に対しては、例外的に終生の服役を定めることもできることから、絶対的終身刑も存在している。終生の服役を定められている者は、2002年時点では25人(終身刑受刑者全体の約0.5%)であるが、2003年に最低服役期間に関する指針が設定されて以降、増加している。なお、終生の服役を定められた場合であっても、恩赦の可能性は残されている。
[編集] デンマークの終身刑
デンマークにおいては仮釈放の制度はないが、恩赦が柔軟に運用されており、終身刑の受刑者は、12年経過後、恩赦に関する審査を受ける権利が与えられ、恩赦を受けた者は5年間の保護観察つきで社会に復帰することができる。平均服役期間は16年となっているが、重大な犯罪の場合は服役が長期に及ぶことも多く、たとえば、警官4人を殺害した元受刑者は33年の服役を経て恩赦を許されている。
[編集] 終身刑と無期刑
終身刑とは、刑期が終生に渡るものをいい、その刑期の途中での仮釈放の可能性がなく一生を必ず刑務所で過ごさなければならない刑のみを終身刑と呼ぶわけではないが、日本では仮釈放の可能性のない終身刑(絶対的終身刑)のみが終身刑と認識されることが多く、このため、「無期懲役は期間の定めのない懲役であり、終身刑とは別のものである」といった誤解が生じている。しかし、無期懲役の「無期」とは「期間を決めない」という意味ではなく、「満期が存在しない」という意味であり、満期が来ることがない以上、刑の執行は終生に渡って続くため、言葉の本来の意味としては、両者は同じである[6][7]。
同じ刑罰であっても、アジア圏のそれは「無期懲役」と訳されることが多く、欧米のそれは英語の life などに相当する語句が用いられているため「終身刑」と訳されることが多いことも、誤解や混乱を招いている一因である。
なお、期間を決めず刑種のみを指定する刑罰は絶対的不定期刑と呼ばれ、罪刑法定主義の考え方では許されないものとされている。
[編集] 脚注
- ^ 朝日新聞2008年6月5日掲載の保岡興治元法務大臣の発言。他にも、たとえば、朝日新聞2008年6月8日の『耕論』の中で元刑務官で作家の阪本敏夫が「(終身刑の受刑者は)保釈の希望もなく死を待つだけの存在。彼らの処遇は死刑囚並に難しく、刑務官の増員がなければ対応は困難」と主張し、終身刑は精神面からも対応困難な受刑者を増やすだけとしている。
- ^ 前述の坂本の記事によれば、国家が負担する受刑者一人当たりの年間予算は50万円であり、高齢化すれば嵩んでくる終身刑受刑者の医療費も、また死後の埋葬料も全額国家負担の必要が生じるなどに関して、具体的な議論が必要であるとしている。
- ^ 前述朝日記事の平沢勝栄の発言より

