死刑囚

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死刑囚(しけいしゅう)とは、死刑判決が確定した囚人に対する人間である。死刑が執行されるまでその身柄は行刑施設に拘束される。また死刑は自らの生命と引換に罪を償う生命刑とされることから、執行されるとその称は「元死刑囚」となる[1]刑事施設法などの日本の法令では死刑確定者と呼ばれる。

21世紀初頭現在、国連総会で採択された自由権規約第2選択議定書(死刑廃止議定書)の影響もあり、死刑廃止国も多いため死刑囚が現在も存在する国は限られてきている。

日本における死刑囚[編集]

日本の法律、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律平成17年5月25日法律第50号)等の法令では、死刑囚のことを死刑確定者と称する。

死刑執行手続き[編集]

日本における死刑囚に対する刑の執行は法務大臣命令によらなければならない(刑事訴訟法第475条第1項)。法律上、特別な理由のない限り、死刑判決が確定してから6か月以内に死刑が執行されなければならない(同法同条第2項)。ただし実際には、一種の努力目標とされており、判例で6か月以内の執行は法的拘束力のない訓示規定とされている。また「当該命令から5日以内に執行する(476条)」と規定している。1960年以降に確定後6か月以内に執行された例はない。

死刑執行の法手続きは、法務省内部で「第四審」と揶揄される程慎重に行われる。この段階で闘病中や精神障害、妊娠中、心神喪失状態になっているなど刑の執行を停止しなければならない場合や、非常上告の有無、再審請求中、恩赦に相当するかどうかを慎重に確認されなければならないとされているため、死刑執行に障害があると判断されれば、執行は後回しになる。また刑事訴訟法475条2項但し書に「上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であつた者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。」という規定がある。

共犯者(逃亡中の場合もあり)の刑が確定していない場合[2]や、冤罪もしくは事実認定の誤りを訴えて再審請求している場合には、この6か月の期間は進行しない[3]とされている。そのため死刑執行までの期間は自動的に進行するものではなく、個々の死刑囚の事情が関与しているといえる。

また、法務大臣の死刑執行命令(実際には法務大臣がサインするのは死刑事件審査結果(執行相当)[4]、執行命令書の捺印は事務方)から5日以内に執行する規定であるが、実際には「死刑執行のために上申した検事長、検事正が処刑命令を受け取った日から5日以内」と現場では解釈されている[5]。これは死刑執行命令書を受け取ったとしても刑務所側の都合で「5日以内」に準備できない場合や、一度に同じ拘置所で複数の死刑執行命令書を受け取っても実行が難しい[6]のが理由である。

死刑判決を受けた者の「刑の執行」は、死刑そのもので、執行に至るまでの身柄拘束は刑の執行ではないとして、その間は、通常刑務所ではなく拘置所に置かれる。またマスコミでは、死刑確定者を「死刑囚」と呼んでいるが、既に執行された場合や、獄中で死亡した場合、もしくは再審による無罪確定等で死刑が取消になった場合は「元死刑囚」と呼んでいる。

死刑囚の収容状況[編集]

下記の表は2014年現在の、各刑事施設に収容されている死刑囚の表である。死刑囚は矯正局管区別に収容されることになっている為、たとえば東京都内の事件で死刑が確定した場合、東京矯正管区東京拘置所に収容されることになっている。なお、東京拘置所に収容されている死刑囚だけで日本国内のおよそ半分に相当する。また四国高松矯正管区)に死刑執行設備がある刑事施設がないため、四国域内の事件で死刑が確定した場合には大阪拘置所で収容されることになっている[7]

管区 死刑囚収容施設名 収容者総数
札幌矯正管区 札幌刑務所(拘置は札幌拘置支所 2
仙台矯正管区 宮城刑務所(拘置は仙台拘置支所 4
東京矯正管区 東京拘置所 68
東京矯正管区 八王子医療刑務所  1 
名古屋矯正管区 名古屋拘置所 12
大阪矯正管区
高松矯正管区
大阪拘置所 20
広島矯正管区 広島拘置所 6
福岡矯正管区 福岡拘置所 19
全国合計 132

死刑囚の確定と執行の推移[編集]

死刑囚の一覧[編集]

死刑執行順による死刑囚の一覧ついては、日本における死刑執行者の一覧」を参照

死刑判決確定順による死刑囚の一覧ついては、日本における死刑囚の一覧」を参照

収監中の確定死刑囚については、日本における収監中の死刑囚の一覧」を参照

病死もしくは恩赦減刑になった死刑囚については、日本において獄死もしくは恩赦された死刑囚の一覧」を参照

再審で無罪になった死刑囚[編集]

事件名(仮名もしくは本名[8] 事件発生年月日 逮捕年月日 死刑判決確定日 再審無罪判決日 拘置期間
免田事件(免田栄) 1948/12/29 1949/1/13 1951/12/25 1983/7/15 34年6か月
財田川事件(谷口繁義) 1950/2/28 1950/4/1 1957/1/22 1984/3/12 33年11か月
島田事件(A) 1954/3/10 1954/5/24 1960/12/15 1989/1/31 34年8か月
松山事件(斎藤幸夫) 1955/10/18 1955/12/2 1960/11/1 1984/7/11 28年7か月

世界の死刑囚[編集]

アメリカ合衆国における死刑囚[編集]

アメリカ合衆国はいわゆる民主主義国家では世界最大の死刑判決と執行の多い国である。そのため世界最多の未執行死刑囚のいる国である。一時期死刑制度が廃止になっていた時期もあるが、1976年以降復活しており、2013年現在、連邦軍隊と32州が法律上死刑制度を採用している。1977年から2012年まで全米で1320人に執行され[9]、2013年4月1日時点で未執行の死刑囚が3108人いる[9]。平均収監年数は15年。なお、欧州諸国はベラルーシを除き死刑は廃止されている(ただし、ラトビアでは戦時における死刑がまだ廃止されていない)。

アジアで収監されている日本人死刑囚[編集]

中華人民共和国成立後に、同国で初めて処刑された刑事犯として毛沢東を暗殺を企てたとされる山口隆一の例[10]がある。山口は北京市1951年8月にイタリア人とともに処刑されたが、物的証拠といえば廃品同様の骨董品だった迫撃砲と放物線らしきものが書かれた天安門のスケッチであり、実際に暗殺計画があったかが疑問とされている(詳細は毛沢東暗殺陰謀事件を参照)。

中華人民共和国では人命が損なわれない犯罪に対しても死刑を幅広く規定しているが、麻薬犯罪に覚醒剤50グラム以上の密輸に対し「懲役15年もしくは無期懲役ないしは死刑」と規定している。2008年7月1日当時、日本人4人の死刑囚がいた[11]。いずれも、中国から日本に覚醒剤を持ち込むための「運び屋」であったとみられているが、中国当局に検挙され、裁判で執行猶予のない死刑が確定している。これは中国では日本における死刑存置論者が死刑存続の理由としている「犯罪抑止力」を全ての犯罪に適用している為である。中国当局は2010年4月に日本人死刑囚の死刑執行を行ったが、日本において人命の奪われていない犯罪に対する刑罰としては厳しすぎるといった指摘や、そもそも中国の司法制度に数多くの不透明があるという指摘もある(詳細は2010年中国における日本人死刑執行問題を参照)。

フィリピンでは、1994年に麻薬密輸を企てたとして日本人が拘束され、死刑判決が出されている[12]。その後フィリピンでは死刑制度が廃止されたため、死刑から無期懲役に減刑されたが同国の刑務所の収監費用は囚人負担であるほか、本人は麻薬だと知らずに友人から渡されたと冤罪を主張している。なお、彼は獄中で結婚し子供をもうけたほか、2010年に国外退去処分となり妻子とともに帰国した。

脚注[編集]

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  1. ^ 再審で無罪になった場合や、恩赦で減刑もしくは獄死した場合にも用いられる。
  2. ^ 死刑囚を共犯者の裁判証人尋問するためである。福岡連続強盗殺人事件で後の古谷惣吉連続殺人事件犯人が、すでに死刑が執行された共犯者に罪を押し付け、自分の罪を軽くし、それ以降、慣例になっている。
  3. ^ 実際には再審請求中であっても長崎雨宿り殺人事件など、死刑執行が行われた場合も少なくない
  4. ^ 死刑執行:決裁は2ルート 手続きの詳細判明
  5. ^ 佐久間哲、「死刑に処す-現代死刑囚ファイル-」、自由国民社、2005年 222頁
  6. ^ 日本では一日に一箇所で執行できるのが2人ないし3人が限界
  7. ^ 佐久間哲、「死刑に処す-現代死刑囚ファイル-」、自由国民社2005年より、著名な事例として財田川事件香川県)の元死刑囚がいる
  8. ^ ウィキペディアの項目に実名記載があるもののみ記載
  9. ^ a b Death Penalty Information Center>Facts about The Death Penalty
  10. ^ 「明治・大正・昭和・平成 事件・犯罪大事典」、東京法経学院出版2002年、795頁
  11. ^ 朝日新聞2008年7月1日朝刊
  12. ^ 懲役のない刑務所 ~フィリピンの日本人死刑囚~

参考文献[編集]

関連項目[編集]