軍法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

軍法(ぐんぽう、英語:military law)とは軍隊の構成員に対して適用される特別な法体系であり、成文法慣習法により構成されているが、によってその内容は大きく異なる。

概説[編集]

軍法とは一般的に多くの国で特別法として立法機関である議会によって制定された軍隊の法体系である。軍隊に属する軍人軍属及び捕虜が犯す軍事犯罪について処罰するために軍刑法とも呼ばれ、これを用いた特別裁判は軍法会議と呼ばれる。ちなみに軍隊が主宰する裁判は軍事裁判と呼ばれるが、これには軍法会議だけでなく通常の司法権が不在の占領地における軍隊の特別裁判も含める。軍法の適用範囲は国によって異なるが、主に軍人、軍属、捕虜であり、その軍事犯罪の定義は国によって異なるが、一般的に無断の任務放棄、敵前逃亡、命令違反、敵前での許すべからざる行為、利敵行為などが挙げられる。軍法会議では殺人、強盗、強姦なども犯罪であるが、これを軍事犯罪とするかどうかは一様ではない。

軍法会議[編集]

軍人が犯罪行為を行った場合、刑法ではなく軍刑法によって裁かれる。この時に行われる裁判は軍法会議と呼ばれる軍隊による特別裁判が開かれる。

平時は軍法会議の前に査問委員会を開く場合もあり、査問委員会で軍法違反に該当しないと判断された場合は軍法会議は開かれない、刑法でいう不起訴処分のような形になる場合もある。

違反が軽微である場合は司令官決裁という手続きによって減給や奉仕命令などを受ける場合もある。 これは違法行為に対する刑罰ではなく内部規則による処罰と言える。

  • 戦争映画などで軽微な違反をした者が便所掃除一週間などの罰を受けるのは軍法会議による刑罰ではなく司令官決裁である。
  • えひめ丸事故ではグリーンビルのスコット・ワドル艦長が司令官決裁で減給処分になっただけで軍法会議は開かれていない。

現在のアメリカ軍では全軍共通の統一軍事裁判法( Uniform Code of Military Justice)によって裁かれる。

軍法による刑罰[編集]

  • 戦時においては、懲罰部隊へ配属するという刑罰が適用される場合もある。これは前線で戦死するぐらいなら軍刑務所へ収監された方がマシだと考える兵士が続出しないようにするための措置と考えることも出来る。また、戦時には軍法違反者が続出するため、刑務所へ収監出来ないほどの人数が出てしまうためとも言える。
  • 軍法には通常の刑罰とは異なる独自の罰が規定されており、懲役の場合も軍刑務所へ収監され、死刑の場合は銃殺刑となるのが一般的である。
  • 軍法による罰は刑法の罰よりも厳罰であることが通例で、通常犯罪に対する死刑制度が廃止されている国でも軍法には銃殺刑が規定されている場合がある。

軍法による権限[編集]

部隊指揮官は軍法によって与えられる権限によって部下に対して命令や処罰を行うことが出来る。指揮官の権限は任務を遂行するための命令でなければならず、部隊を私用することは認められておらず、指揮権の範囲は限定的なものである。命令に対しては「命令者だけが全責任を負い、実行者は一切責任を負わない」という特殊な責任分担も発生する。部隊指揮官は軍法会議を招集することが可能である。

その他[編集]

  • 現在の日本に軍法は存在しないため、自衛隊員は通常の刑法の適用を受ける。
  • 軍法とは別に軍律という占領地に対する規則も存在する。
  • 日本書紀』の時点で、軍事倫理に関する内容の記述があり、近代軍法の主要な倫理とも重なる。実在するかは別として、神功皇后が斧鉞(刑罰の道具)を手に三軍に令した際の言葉[1]概念的には合致する[要出典]

脚注[編集]

  1. ^ 『日本書紀』「士気を励ます鐘鼓の音が乱れ、軍旗が乱れる時には、軍卒が整わず、財を貪り、物を欲しいと思ったり、私事に未練があると、きっと敵に捕まるだろう。敵が少なくとも侮ってはならぬ。敵が多くとも挫けてはならぬ。暴力で婦女を犯すのを許してはならぬ自ら降参する者を殺してはならぬ。戦いに勝てば必ず賞がある。逃げ走る者は処罰される」。

関連項目[編集]