国際連合加盟国
国際連合加盟国(こくさいれんごうかめいこく)は、国際連合(国連)の加盟国。原則として主権国家で、国際連合総会決議での加盟の承認を要する[1]。1945年の国連設立時の原加盟国は51か国、2020年現在の加盟国は193か国[2]。なお加盟国の他に国際連合総会オブザーバーなどがある。
概要
国際連合の加盟対象は、国際連合憲章第2章第3条[3]によって「国際連合憲章に掲げる義務を受託し、且つ、国際連合の機構によってこの義務を履行する能力及び意思があると認められる原加盟国(国際連合発足時の加盟国)以外のすべての平和愛好国」とされている。この規定により、国際連合に加盟できるのは主権国家のみである。ただし例外として、国連設立当初からの加盟国(国連原加盟国)であるインド・フィリピン・ベラルーシ・ウクライナ・シリアの5か国は加盟時点では独立した国家ではなかった。
加盟資格を有する国が国際連合加盟国となるには、国際連合憲章第2章第4条の規定に従い、国連安保理事会の勧告に基いて開かれた国連総会の決定(国際連合総会決議)で加盟の承認を得る必要がある。そのため、主権を有する事実上の独立国であっても、国際的に認知されていなかったり、特定の加盟国からの反対があると加盟することができない(国家承認を得た国連非加盟の国と地域の一覧)。
現加盟国
以下表中、五十音順。1945年設立当初の51か国のうち現在に至るまで存続している国および継承国が存在している国(英国領インド→インド、ソビエト連邦→ロシア連邦)49か国は太字であらわした。残る2か国はチェコスロバキア[原加盟国:2]とユーゴスラビア[原加盟国:8]である。中国の代表権も1971年10月25日に中華民国から中華人民共和国に入れ替わっているが、どちらの政府もその前後に存在している(後述)。
過去の加盟国
1. ^ 中華民国は、国際連合の設立当初からの原加盟国であった。しかし国共内戦により、中国国民党率いる中華民国政府は台湾に逃れ、中国大陸(本土)の大部分を制圧した中国共産党が1949年10月1日 中華人民共和国の建国を宣言した。この両政府間の紛争(台湾問題)の中、中国大陸の広大な地域を実効支配する中華人民共和国側は国際連合における中国の代表権の獲得を図ったが、中華民国が国際連合の代表権と安全保障理事会常任理事国の座を維持し続けた。1971年10月25日、国際連合総会で中華人民共和国を中国の唯一の正統な政府とし、「蒋介石の代表(中華民国)」を追放するとした2758号決議が採択され、中華民国が国連と国連機関から脱退し、代わりに中華人民共和国が安全保障理事会の常任理事国をも含む代表権を獲得した。1990年代以降、中華民国(台湾)が「中国」としてではなく、人口2300万人の「台湾」として国際連合へ加盟しようとさまざまな提案が試みられているが、いずれも委員会を通過するまでには至っていない。現在、14の加盟国とローマ教皇庁(バチカン市国)が中華民国との外交関係を維持している。
2. ^ チェコスロバキアは国連設立当初からの原加盟国であった。1992年12月10日、チェコスロバキアは1992年12月31日をもって解散し、チェコとスロバキアとして改めて加入することを国際連合事務総長に通知した。両国は1993年1月8日安全保障理事会の推薦をもらって同年1月19日に同時に加盟した。
3. ^ ドイツ民主共和国(東ドイツ)と ドイツ連邦共和国(西ドイツ)は1973年9月18日、共に加盟した。両国は1990年10月3日、東ドイツが西ドイツに吸収される形で再統合されたので、ドイツは1973年9月18日から加盟していると見なされている。
4. ^ タンガニーカは1961年12月14日に、 ザンジバル王国は1963年12月16日に国際連合に加盟した。タンガニーカが タンガニーカ共和国、ザンジバル王国が ザンジバル人民共和国となった後、両国は1964年4月26日に合併してタンガニーカ・ザンジバル連合共和国となり、さらに1964年11月1日に タンザニア連合共和国に改称し、そのときから一つの国として加盟している。
5. ^ エジプト王国と シリアは共に1945年10月24日の国連設立当初からの加盟国であった。両国は1958年2月21日に連合を組み アラブ連合共和国となり、1961年10月13日までは一つの国として加盟していた。その後、シリアがエジプトから独立し別々の加盟国となった。エジプトは1971年9月2日までアラブ連合共和国という名前で国際連合に加盟していたが、その後エジプト・アラブ共和国と改称した。
6. ^ ソビエト社会主義共和国連邦は1945年10月24日の国連設立当初からの加盟国であった。1991年12月24日、独立国家共同体の11か国の支持を受けて、ボリス・エリツィンロシア大統領が国際連合事務総長に ロシア連邦がソ連消滅後、安全保障理事会をはじめとする各国際機関の地位を引き継ぐと通知した。残りの旧ソ連の共和国は現在全て国際連合に加盟している。:
- ベラルーシとウクライナは既に1945年10月24日からそれぞれ 白ロシアSSR、 ウクライナSSRとして国際連合設立以来の加盟国であり、ソ連崩壊後は独立した ベラルーシと ウクライナがそれぞれ地位を引き継いだ。
- エストニア、 ラトビア、 リトアニアは1991年9月17日加盟。
- アルメニア、 アゼルバイジャン、 カザフスタン、 キルギスタン、 モルドバ共和国、 タジキスタン、 トルクメニスタン、 ウズベキスタンは1992年3月2日加盟。
- グルジア(当時、現 ジョージア)は1992年7月31日加盟。
7. ^ イエメン(北イエメン)は1947年9月30日に加盟した。加盟時は イエメン王国であったが、その後 イエメン・アラブ共和国に体制が変わった。 南イエメン人民共和国(南イエメン)は1967年12月14日に加盟した。その後イエメン人民民主共和国に名称を変更した。両国は1990年5月22日に統一され、それ以降はイエメンという一つの国として加盟している。
8. ^ ユーゴスラビアは1945年10月24日の国連設立当初からの加盟国であった。当初はユーゴスラビア民主連邦として、後にユーゴスラビア社会主義連邦共和国として加盟した。1992年ユーゴスラビア解散のあとは、2000年11月1日まで新たに作られた ユーゴスラビア連邦共和国として加盟していた。しかし、国際連合は新しいユーゴスラビアが以前のユーゴスラビアを継承する国だと承認しなかったため、新規加盟とされている。かつてユーゴスラビア連邦を構成していた国々は現在全て国際連合に加盟している。
- スロベニアは総会決議A/RES/46/236によって1992年5月22日に加盟した。
- ボスニア・ヘルツェゴビナは総会決議A/RES/46/237によって1992年5月22日に加盟した。
- クロアチアは総会決議A/RES/46/238によって1992年5月22日に加盟した。
- マケドニアは総会決議A/RES/47/225によって1993年4月8日に加盟した。しかし、国名についてギリシャと係争していたため「旧ユーゴスラビア・マケドニア共和国」の名前で加盟していた。2019年に国名を「北マケドニア共和国」に変更した。詳しくはマケドニア共和国#国名を参照。
- 残るセルビア共和国とモンテネグロ共和国はユーゴスラビア連邦共和国を作った。2001年11月1日、総会決議A/RES/55/12によって再加盟しているがユーゴスラビア社会主義連邦共和国を継承したとは認められなかった。2003年2月4日にセルビア・モンテネグロに改称。2006年5月21日、モンテネグロは独立の是非を問う国民投票をする。その結果を受けて2006年6月3日独立を宣言した。国際連合憲章第40条に基づき、セルビア・モンテネグロの席はセルビアが引き継ぎ、モンテネグロは総会決議A/RES/60/264によって2006年6月28日に加盟した。
国際連合総会オブザーバー
ローマ教皇庁(バチカン)、パレスチナが国連非加盟のオブザーバー国として国際連合に参加している。数年間、スイスもオブザーバー国として参加していたが国民投票により2002年9月10日に正式に加盟国となった。
またヨーロッパ連合・赤十字国際委員会・マルタ騎士団のような、国際機関や非政府組織、正式承認されていないが主権を有する実体もオブザーバーになっている。
国連非加盟、非オブザーバー
西サハラにあるサハラ・アラブ民主共和国は、国際連合が独立の是非を問う住民投票を実施しようとしているが遊牧民が多く有権者の認定が難しいために無期延期となっている。だが約80の国から承認されてアフリカ連合には加盟している。西サハラの一部を実効支配しているが、大部分は、モロッコによって軍事占領下に置かれているためにアルジェリアのティンドーフ難民キャンプに亡命政府の本部がおかれている。
クック諸島とニウエは、自由連合国として自治を行っているが、外交および防衛はニュージーランドに代表権があるために国際連合に加盟していない。
命名規則など
- 1. ^ ベラルーシは1945年10月24日の国連設立当初は「白ロシア・ソビエト社会主義共和国」という名前で加盟していた。しかし、1991年9月19日に「ベラルーシ」に改名すると国際連合に通知した。
- 2. ^ ブルネイは「ブルネイ・ダルサラーム」という名前で加盟している。
- 3. ^ コンゴ民主共和国は1997年5月17日「ザイール」から改名した。
- 4. ^ コンゴ共和国は「コンゴ」という名前で加盟している。
- 5. ^ キプロスはキプロス共和国と北キプロス・トルコ共和国が実効支配している地域も含んだ島全域(ただしイギリスの海外領土アクロティリおよびデケリアは除く)を代表して加盟している。
- 6. ^ インドネシアは1965年1月20日、マレーシアが安全保障理事会の非常任理事国に選ばれたことを理由に脱退。1966年9月19日に復帰することを表明し、1966年9月28日国際連合に復帰した。
- 7. ^ イランは「イラン・イスラム共和国」という名前で加盟している。
- 8. ^ ラオスは、「ラオス人民民主共和国」という名前で加盟している。
- 9. ^ リビアは、2004年頃から2011年頃までは「大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国」という名前で加盟していた。しかし、同年に起こったクーデターに伴う政変により現在は通称の「リビア」という名前で加盟している。
- 10. ^ 北マケドニアは、加盟当時は暫定的に「マケドニア・旧ユーゴスラビア共和国」という名前で加盟していたが、国名問題の合意により「北マケドニア」の名前での加盟となった(詳しくは、北マケドニア#国名を参照)。
- 11. ^ マレーシアは、1957年9月17日加盟当初は「マラヤ連邦」という名前であったが、1963年9月16日、シンガポール、北ボルネオ、サラワクが連邦に加盟し「マレーシア」と改名した。シンガポールは1965年8月9日独立し、1965年9月21日に国際連合へ加盟した。
- 12. ^ ミクロネシアは、「ミクロネシア連邦」という名前で加盟している。
- 13. ^ モルドバは、「モルドバ共和国」という名前で加盟している。
- 14. ^ ミャンマーは、1948年4月19日加盟当初は「ビルマ」という名前で加盟していた。
- 15. ^ オランダは、「オランダ王国」という名前で加盟している。
- 16. ^ ロシアは、「ロシア連邦」という名前で加盟している。
- 17. ^ シリアは、「シリア・アラブ共和国」という名前で加盟している。
- 18. ^ タンザニアは、「タンザニア連合共和国」という名前で加盟している。
- 19. ^ ウクライナは、1945年10月24日の国連設立当初は「ウクライナ・ソビエト社会主義共和国」という名前で加盟していた。
- 20. ^ イギリスは、「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」という名前で加盟している。
- 21. ^ アメリカは、「アメリカ合衆国」という名前で加盟している。
- 22. ^ ベネズエラは、「ベネズエラ・ボリバル共和国」という名前で加盟している。
- 23. ^ ベトナムは、「ベト・ナム」という名前で加盟している。
脚注
関連項目
外部リンク
- Member States(英語:国際連合公式サイト)
- 台湾の国連加盟
- 国際連合加盟国一覧|国連広報センター