赤十字国際委員会

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赤十字国際委員会
赤十字国際委員会旗
略称 ICRC
設立年 1863年
種類 人道機関
本部 スイスの旗 スイスジュネーヴ
ウェブサイト http://www.icrc.org/
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赤十字・赤新月旗
ノーベル賞受賞者 ノーベル賞
受賞年:1917年
受賞部門:ノーベル平和賞
受賞理由:
ノーベル賞受賞者 ノーベル賞
受賞年:1944年
受賞部門:ノーベル平和賞
受賞理由:
ノーベル賞受賞者 ノーベル賞
受賞年:1963年
受賞部門:ノーベル平和賞
受賞理由:

赤十字国際委員会(せきじゅうじこくさいいいんかい、: International Committee of the Red Cross: Comité international de la Croix-Rouge、略称: ICRC)は、戦争時における中立人道的活動を行う国際機関(スイス法人)である。1863年に創設され、本部はスイスジュネーヴ(19,Avenue de la Paix, CH-1202, Geneva, Switzerland)にある。国際赤十字・赤新月運動の基本原則「人道公平中立独立奉仕・単一・世界性」にもとづき、2009年現在約12,000人の職員がおよそ80カ国で活動している。

設立経緯と沿革[編集]

1859年ソルフェリーノの戦い (Battle of Solferino) の後の悲惨な光景を目の当たりにしたスイス人実業家のアンリ・デュナン (Henry Dunant) は、その体験を元に『ソルフェリーノの思い出』を著し、戦争の犠牲者に対する支援を改善するために2つの提案を行った。

  1. 戦場での負傷者と病人を敵か味方か区別することなく救護するため、救護団体を平時から各国に組織すること
  2. 戦場下の救護員や負傷者を保護することに関して国際的な条約を結んでおくなど、各国の同意を得ること

この2つの提案を実現するために、1863年に「5人委員会」 (Committee of the Five) がジュネーヴに設立され、これが後に「赤十字国際委員会」となった。デュナンの提案により、各国に赤十字社・赤新月社が設立され、2009年現在、世界中で185社以上の赤十字社・赤新月社が活動している。またデュナンの提案は、1949年のジュネーヴ諸条約の起草の基礎にもなった。

ICRCは設立以来145年にわたり、ジュネーヴ諸条約のもとで、捕虜、傷病者、文民そして紛争の犠牲者の生命と尊厳を保護・支援しながら、国際人道法および人道の原則の普及と促進に努めている。第一次世界大戦第二次世界大戦では戦争捕虜や被災者救援のために大きな貢献をし、1917年1944年ノーベル平和賞を受賞した。また創設100周年に当たる1963年にも国際赤十字・赤新月社連盟とともに3度目のノーベル平和賞受賞を果たした。1990年には国連総会決議によって総会オブザーバーの地位も付与されている。

活動目的と任務[編集]

ICRCの主な活動目的は、武力紛争における犠牲者の保護・救援、そして国際人道法の普及である。

主要な任務[編集]

  • 国際赤十字・赤新月運動の基本原則(人道・公平・中立・独立・奉仕・単一・世界性)の維持と普及
  • 国際赤十字・赤新月運動規約の条件を満たす赤十字・赤新月社の承認、他国の赤十字・赤新月社への通告
  • ジュネーヴ諸条約によって付託される任務の遂行、武力紛争に適用可能な国際人道法の履行を確保するための実施・推進
  • 戦争や国内的騒擾の際の人道的な活動を行う中立機関として尽力する
  • ジュネーヴ諸条約に基づく中央安否調査局の活動の確保
  • 医療要員の訓練、医療機材の準備に貢献する
  • 赤十字・赤新月国際会議によって付託された任務の遂行

武力紛争において行われる具体的な活動[編集]

  • 捕虜や文民抑留者の支援
    • 捕虜や文民抑留者、政治犯などが収容される拘禁施設の訪問
    • 適正な待遇への働きかけ
    • 救援物資の送達
    • 安否調査
    • 家族との通信(赤十字通信などを活用した離散家族の連絡回復事業など)
  • 本国送還への協力 など
  • 紛争犠牲者の救援
    • 武力紛争などの犠牲者に対する保護(軍人、文民の傷病者、難民、国内避難民など)
    • 食糧や生活物資などの救助
    • 医療への援助
    • 義肢の作成と提供
    • 病院などに対する医療器具や医薬品などの供与
    • 再開支援 など
  • 国際人道法の発展・普及

赤十字国際委員会(ICRC)はこうした通常任務の他にも、状況や必要に応じて積極的かつ迅速な人道活動を行っている。たとえば、1996年ペルー日本大使公邸人質事件では、大使館内にいる人々の健康管理や家族との通信に携わった。

組織[編集]

ICRCの意思決定機関は総会 (Assembly) であり、15名から25名までの委員 (Members) によって構成される。委員はスイス国民から選出され、4年ごとに改選される。主要機関としては、総会の他に執行理事会 (Assembly Council) と事務局 (Directorate) がある。

2012年7月から、総裁 (President) はペーター・マウラーである[1]。2000年から2012年までの総裁は、ヤコブ・ケレンベルガー (Jakob Kellenbergerである。

財政[編集]

ICRCの主な財源は、各国政府や各国赤十字社・赤新月社からの自発的な拠出金、公的・私的な寄付金である。


国際赤十字・赤新月運動[編集]

国際赤十字・赤新月運動(「赤十字運動」)は、ICRC、国際赤十字・赤新月社連盟 (IFRC)、各国の赤十字・赤新月社の3組織で構成されている。各組織は財政・政策の面で独立しており、ICRCは紛争、IFRCは自然災害、赤十字・赤新月社は主に国内で活動を展開し、それぞれの基本的な任務は異なっている。

赤十字運動の最高決定機関は赤十字・赤新月国際会議と呼ばれ、この国際会議は原則として4年ごとに開催される。国際会議には、ジュネーヴ諸条約締約国政府の代表、ICRCの代表、IFRCの代表、各国赤十字・赤新月社の代表が参加する。

赤十字運動の各組織は独立しているが、活動上は連携しており、ICRCは各国赤十字社と連携して任務にあたっている。例えば日本赤十字社は、紛争地におけるICRCの支援活動に日本人職員(主に医療スタッフ)を派遣している。また追跡事業では、世界を網羅するICRCのネットワークに加え、各国に根を張る赤十字・赤新月社のネットワークも活用されている。

赤十字国際委員会駐日事務所[編集]

赤十字国際委員会駐日事務所(英:ICRC mission of Tokyo office)は、2009年2月に正式開所。汐留の「イタリア街」に開所。初代所長はヴィンセント・ニコ。2011年4月に虎ノ門に移転。

ICRC駐日事務所開設の経緯[編集]

ICRCが初めて日本に事務所を設けたのは、1942年、場所は横浜であったとされる。この時は一定期間のみの事務所設置であったが、第二次世界大戦中の日本において、多くの捕虜を訪問し、赤十字通信を通じて家族の再会を実現させている。また、広島の被爆者に手を差し伸べ、人々の支援と保護に尽力し、在日朝鮮人帰還事業(1959-68年)の際にも日本に駐在した歴史がある。

当時の日本は国際社会から支援を受ける側であったが、戦後60年経った現在では、支援を行う側に身を置いている。このため、ICRC駐日事務所の任務も支援を受ける側だった頃とは180度異なり、国際社会における日本の地位に見合った貢献を政府に促し、協力することを目指している。

今回の駐日事務所開設に至った背景には、2004年にジュネーヴ条約の追加議定書を日本政府が採択し、日本国内における国際人道法への関心が高まったことがある。さらにアジアは紛争や国内騒乱が多発している地域でもあり、人道活動の需要を見越してアジアに拠点を増やす必要性があることも、駐日事務所開設の背景にある。国際舞台におけるアジアの影響力や存在感がますます強まることが予想され、今後アジアでは積極的に人道活動に携わる国が増えるとの見通しから、2005年7月には中国に地域代表部が設立、マレーシアのクアラルンプール地域代表部やフィリピン代表部の機能も強化されてきている。

こうした国際的な流れの中、日本にも駐日事務所を開設し、日本におけるICRCの認知度を高め、国際人道法の普及を促すことが重要となった。2008年2月にICRC総裁のヤコブ・ケレンベルガー (Jakob Kellenberger氏が来日した際には、日本が今後ICRCにとって戦略的パートナーになることが宣言され、日本のさらなる貢献が期待されている。現在、ICRCの日本人の国際要員(delegates)の積極採用など、日本において人的貢献も呼びかけている。

駐日事務所の主な活動目的[編集]

人道法の普及やICRCの活動紹介など国内の認知度向上ための活動を行う。また、日本政府をはじめ日本赤十字社や大学・研究所など、人道分野に関与するさまざまな組織や個人に対して、ICRCの支援・保護活動におけるノウハウやサービスを提供する。
  • 外務省、防衛省との関係強化とICRCの活動への理解の促進
  • 日本人の国際要員(delegate)の増員
  • 政府に対する戦争の手段や兵器の軽減の呼びかけ、国内法整備の促進

オスロにおけるクラスター弾禁止条約署名の際には、総裁ケレンベルガー (Jakob Kellenbergerが公式コメントを発表している。今後は、署名国(日本も含む)に対して、批准キットやモデル法を提示し、国内法整備の手助けをする旨の表明がなされている。

財政[編集]

ICRCの財政は各国政府からの"自発的な"拠出金から成り立っているため、駐日事務所も募金活動や資金集めの任務は帯びていない。各国の拠出金は国連の分担金のように負担額が定められているわけではなく、拠出もあくまで自発的なものであり、各国の善意に委ねられている。

地域代表部との関係[編集]

アジア太平洋地域には複数国を管轄する地域代表部が5箇所、駐在国のみカバーする代表部が8箇所、また現地事務所が5箇所(mission:2 office:3)ある。(2012年12月現在)

駐日事務所は2012年7月より、英称がICRC Tokyo officeよりICRC mission of Tokyo office へ格上げされると同時にジュネーブ本部直轄となり活動を拡大している。(日本語ではどちらも駐日事務所としている) 以前はクアラルンプール地域代表部の管轄下にあった。現在は、北京地域代表部が東アジア全体の地域代表となっている。

ICRCの拠点の総数は、オフィスが暫定的であったり、またオフィスがない国にもICRC義肢センターなどを設けていたりするため、情勢次第で随時変動する。

脚注[編集]

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  1. ^ [1]

外部リンク[編集]