川上弘美
川上 弘美 (かわかみ ひろみ) | |
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誕生 |
山田 弘美(やまだ ひろみ) 1958年4月1日(66歳) 日本・東京都 |
職業 | 小説家 |
言語 | 日本語 |
国籍 | 日本 |
教育 | 学士(理学) |
最終学歴 | お茶の水女子大学理学部生物学科 |
活動期間 | 1994年 - |
ジャンル | 小説・随筆 |
代表作 |
『蛇を踏む』(1996年) 『溺レる』(1999年) 『センセイの鞄』(2001年) 『真鶴』(2006年) 『水声』(2014年) |
主な受賞歴 |
パスカル短篇文学新人賞(1994年) 芥川龍之介賞(1996年) 紫式部文学賞(1999年) ドゥマゴ文学賞(1999年) 伊藤整文学賞(2000年) 女流文学賞(2000年) 谷崎潤一郎賞(2001年) 芸術選奨(2007年) 読売文学賞(2015年) 泉鏡花文学賞(2016年) 紫綬褒章(2019年) |
デビュー作 | 『神様』(1994年) |
配偶者 | 離婚 |
子供 | あり |
影響を受けたもの
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ウィキポータル 文学 |
川上 弘美(かわかみ ひろみ、旧姓:山田、1958年4月1日 - )は、日本の小説家。東京都生まれ。大学在学中よりSF雑誌に短編を寄稿、編集にもたずさわる。高校の生物科教員などを経て、1994年、短編「神様」でパスカル短篇文学新人賞を受賞。1996年「蛇を踏む」で芥川賞受賞。
幻想的な世界と日常が織り交ざった描写を得意とする。作品のおりなす世界観は「空気感」と呼ばれ、内田百閒の影響を受けた独特のものである。その他の主な作品に『溺レる』、『センセイの鞄』、『真鶴』、『水声』など。
俳人でもあり、小澤實主宰の『澤』に投句しているほか、長嶋有らとともに句誌『恒信風』で句作活動をしている。
経歴
東京都に生まれる。父親は東京大学教授(生物学)の山田晃弘[1]。3歳のときに杉並区に移る[2]。5歳から7歳までを父親の赴任先であるアメリカ合衆国で過ごす。公立小学校3年生のときに1学期間を休む病気にかかり、このときに家で児童文学を読み始めたことから読書家になる[要出典]。5年生のときに雙葉小学校の編入試験を受け入学[3]。雙葉中学校・高等学校を卒業後、お茶の水女子大学理学部生物学科に入学し、SF研究会に所属、のちの漫画家湯田伸子がメンバーにいた。
1980年、大学在学中に山野浩一発行・山田和子編集のニュー・ウェーブSF雑誌『季刊NW-SF』第15号にて、「小川項」名義の短編「累累」を掲載。次号第16号で旧姓「山田弘美」名義の短編「双翅目」を発表、また「女は自ら女を語る」という座談会にも編集者として加わっていた。
1980年に大学を卒業し、NW-SF社で働くが1982年『季刊NW-SF』が第18号で休刊。そのため、同年に田園調布雙葉中学校・高等学校で生物の教員となる。1986年までの4年間を勤め、退職。結婚・出産ののち主婦を経て、1994年に「神様」でパソコン通信を利用したASAHIネット主催の第1回パスカル短篇文学新人賞を受賞。この回の選考委員は、井上ひさし、小林恭二、筒井康隆。なお、2009年に離婚している。
次いで1995年に「婆」が第113回芥川龍之介賞候補作品となり、翌1996年に「蛇を踏む」で第115回芥川龍之介賞を受賞。1999年、『神様』で第9回紫式部文学賞、第9回Bunkamuraドゥマゴ文学賞(審査員久世光彦)。2000年、『溺レる』で第11回伊藤整文学賞、第39回女流文学賞を受賞。
2001年に第37回谷崎潤一郎賞を受賞した『センセイの鞄』では、中年女性と初老の男性との淡い恋愛を描きベストセラーとなった。同作品はWOWOWのオリジナルドラマ制作プロジェクト「ドラマW」により、久世光彦監督の演出、小泉今日子・柄本明の共演でテレビドラマ化されている[1]。2007年、『真鶴(まなづる)』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。
2013年発表の2012年マン・アジア文学賞(Man Asian Literary Prize)において『センセイの鞄』の英訳(The Briefcase)が、ノーベル文学賞受賞者のオルハン・パムクのSilent Houseなど4作品と共に最終候補に残ったが、受賞は逃した。[4][5]
2007年の第137回芥川賞選考会から、選考委員として参加。2015年現在は谷崎潤一郎賞と三島由紀夫賞の選考委員も務めている。
2015年、「水声」で第66回読売文学賞を受賞。2016年、「大きな鳥にさらわれないよう」で第44回泉鏡花文学賞を受賞。
作品
小説・物語
単行本
- 『物語が、始まる』中央公論社、1996年(中公文庫、穂村弘解説、1999年)
- 『蛇を踏む』文藝春秋、1996年(文春文庫、松浦寿輝解説、1999年)
- 『いとしい』幻冬舎、1997年(幻冬舎文庫、宮田毬栄解説、2000年) - 書き下ろし
- 『神様』中央公論社、1998年(中公文庫、佐野洋子解説、2001年)
- 『溺レる』文藝春秋、1999年(文春文庫、種村季弘解説、2002年)
- 『おめでとう』新潮社、2000年(新潮文庫、池田澄子解説、2003年)文春文庫
- 『椰子・椰子』 (山口マオ絵)小学館、1998年(新潮文庫、南伸坊解説、2001年) - 文庫版には書き下ろし作品「ぺたぺたさん」収録
- 『センセイの鞄』平凡社、2001年(文春文庫、木田元解説、2004年)(新潮文庫、斎藤美奈子解説、2007年)
- 『パレード』(吉富貴子絵)平凡社、2002年(新潮文庫、鶴見俊輔解説、2007年) - 『センセイの鞄』の番外編
- 『龍宮』文藝春秋、2002年(文春文庫、川村二郎解説、2005年)
- 『光ってみえるもの、あれは』中央公論新社、2003年(中公文庫、2006年)
- 『ニシノユキヒコの恋と冒険』新潮社、2003年(新潮文庫、藤野千夜解説、2006年)
- 『古道具 中野商店』新潮社、2005年(新潮文庫、2008年)
- 『夜の公園』中央公論新社、2006年(中公文庫、2009年)
- 『ざらざら』マガジンハウス、2006年(新潮文庫、吉元由美解説、2011年)
- 『ハヅキさんのこと』講談社、2006年(講談社文庫、2009年)
- 『真鶴』文藝春秋、2006年(文春文庫、2009年)
- 『風花』集英社、2008年(集英社文庫、小池真理子解説、2011年)
- 『どこから行っても遠い町』新潮社、2008年(新潮文庫、松家仁之解説、2011年)
- 『これでよろしくて?』中央公論新社、2009年
- 『パスタマシーンの幽霊』マガジンハウス、2010年(新潮文庫、高山なおみ解説、2013年)
- 句集『機嫌のいい犬』集英社、2010年
- 『天頂より少し下って』小学館、2011年(小学館文庫、平松洋子解説、2014年)
- 『神様 2011』講談社、2011年
- 『七夜物語』朝日新聞出版、2012年(朝日文庫にて上・中・下、村田沙耶香解説、2015年)
- 『なめらかで熱くて甘苦しくて』新潮社、2013年(新潮文庫、辻原登解説、2015年)
- 『猫を拾いに』マガジンハウス、2013年(新潮文庫、壇蜜解説、2018年)
- 『水声』文藝春秋、2014年
- 『大きな鳥にさらわれないよう』講談社、2016年(講談社文庫、岸本佐知子解説、2019年)
- 『このあたりの人たち』スイッチ・パブリッシング、2016年(文春文庫、古川日出男解説、2019年)
- 『ぼくの死体をよろしくたのむ』小学館、2017年
- 『森へ行きましょう』日本経済新聞出版社、2017年(文春文庫、皆川明解説、2020年)
- 『某』幻冬舎 2019年
- 『三度目の恋』中央公論新社、2020年
選集収録
- 「横倒し厳禁」 『LOVERS』 安達千夏ほか共著、祥伝社、2001年6月(祥伝社文庫、2003年9月)
- 「一実ちゃんのこと」『Teen Age』 角田光代ほか共著、双葉社、2004年11月 - 初出『小説推理』2001年6月号、双葉社
- 「ミナミさん」『人魚の鱗 Short Fantasy Stories ファンタジーの宝箱 vol.1』 産経新聞文化部編、全日出版、2004年9月
- 「天頂より少し下って」『恋愛小説』 新潮社、2005年1月(新潮文庫、2007年2月) - 初刊はサントリーウイスキーのおまけ『新潮ハーフブック』新潮社、2004年11月
- 「夜のドライブ」『あなたと、どこかへ。 eight short stories』 吉田修一ほか共著 文藝春秋、2005年5月 - 初出は日産TEANAスペシャル・サイト
- 「不本意だけど」『空を飛ぶ恋 ケータイがつなぐ28の物語』 新潮社編、新潮文庫、2006年6月
評論・随筆
単行本(評論・随筆)
- 『あるようなないような』 中央公論新社、1999年11月(中公文庫、2002年10月)
- 『なんとなくな日々』 岩波書店、2001年3月
- 『ゆっくりさよならをとなえる』 新潮社、2001年11月(新潮文庫、2004年12月)
- 『此処 彼処(ここ かしこ)』 日本経済新聞社、2005年10月(新潮文庫、2009年9月)
- 『晴れたり曇ったり』 講談社、2013年7月
- 『わたしの好きな季語』NHK出版、2020年11月
選集収録(評論・随筆)
- 「へへん。」『花祭りとバーミヤンの大仏 ベスト・エッセイ2003』 日本文藝家協会編、光村図書出版、2003年
- 「うしろ頭」『母のキャラメル』 日本エッセイスト・クラブ編、文春文庫、2004年
- 「町内十番以内」『犬のため息 ベスト・エッセイ2004』 日本文藝家協会編、光村図書出版、2004年
- 「茗荷谷の鳥おじさん」『成り行きにまかせて ベスト・エッセイ2005』 日本文藝家協会編、光村図書出版、2005年
- 「ふいうち」『意地悪な人 ベスト・エッセイ2006』 日本文藝家協会編、光村図書出版、2006年
日記
- 『東京日記 卵一個ぶんのお祝い。』 (門馬則雄絵) 平凡社、2005年9月
- 『東京日記2 ほかに踊りを知らない。』 (門馬則雄絵) 平凡社、2007年11月
- 『東京日記3 ナマズの幸運。』 (門馬則雄絵) 平凡社、2011年1月
- 『東京日記4 不良になりました。』 (門馬則雄絵) 平凡社、2014年2月
- 『東京日記5 赤いゾンビ、青いゾンビ。』 (門馬則雄絵) 平凡社、2017年4月
- 『東京日記6 さよなら、ながいくん。 』 (門馬則雄絵) 平凡社、2021年3月
- 『東京日記7 館内すべてお雛さま。 』 (門馬則雄絵) 平凡社、2023年3月
対談
- 「面白さをきわめたい」『筒井康隆かく語りき』筒井康隆著、文芸社、1997年 - 筒井康隆との対談
- 「昆虫のお話」『経験を盗め』糸井重里著、中央公論新社、2002年 - 矢島稔、糸井重里との対談
- 『武田百合子』 KAWADE夢ムック 2004年 - 村松友視との対談
- 「心の行方――科学的見方と宗教の人間観」『山折哲雄こころ塾』山折哲雄述、読売新聞大阪本社編、東方出版、2004年 - 山折哲雄との対談
- 「憧れの寿司屋の暖簾をくぐる幸福」『畏敬の食』小泉武夫著、講談社、2006年 - 小泉武夫との対談
- 「恋愛小説家の仕事」『田辺聖子全集 別巻 1』 田辺聖子ほか共著、2006年
文庫解説・書評
- 『暗闇のスキャナー』サンリオSF文庫(フィリップ・K・ディック著)1980年7月 - 山田弘美名義
- 『パプリカ』 中公文庫 (筒井康隆著) 1997年4月
- 『すいかの匂い』 新潮文庫 (江國香織著) 2000年7月
- 『謎の母』 新潮文庫 (久世光彦著) 2001年7月
- 『百鬼園随筆』 新潮文庫 (内田百閒著) 2002年5月
- 『ターン』 新潮文庫 (北村薫著) 2007年7月
- 『偶然の祝福』 角川文庫 (小川洋子著) 2004年1月
- 『パレード』 幻冬舎文庫 (吉田修一著) 2004年4月
- 『花芯』 講談社文庫 (瀬戸内寂聴著) 2005年2月
- 『大好きな本 川上弘美書評集』朝日新聞社、2007年9月 - 朝日新聞、読売新聞での書評他を収録
翻訳
- 伊勢物語(池澤夏樹=個人編集『日本文学全集03』河出書房新社、2016年)
作品提供
映画
- ニシノユキヒコの恋と冒険(井口奈己監督)2014年2月
テレビドラマ
- センセイの鞄 (WOWOW放送・製作・発売、ビクターエンタテインメント販売、久世光彦監督) 2003年2月
関連資料
- 後藤繁雄『彼女たちは小説を書く』 メタローグ、2001年
- 土田知則・青柳悦子『文学理論のプラクティス 』新曜社、2001年
- 『ユリイカ 2003年9月臨時増刊号 総特集 川上弘美読本』 青土社、2003年
- 河出書房新社『文藝』 2003年秋季号 特集・川上弘美
- 加藤典洋『小説の未来』 朝日新聞社、2004年
- 『IN・POCKET 2004年9月号 特集 綾辻行人、川上弘美、村上春樹』 講談社、2004年
- 菅聡子編『女性作家《現在》』 至文堂、国文学解釈と鑑賞別冊、2004年
- 原善編『川上弘美』 鼎書房、 2005年
- 「川上弘美研究序論」、2011年
脚注
出典
- ^ 日本経済新聞2023年4月12日朝刊44面「リケジョの先輩」加藤美砂子
- ^ インタビュー 作家 川上弘美さん東京弁護士会
- ^ 新中学生へのメッセージ 川上 弘美さん | 朝日小学生新聞 特別増刊号 WILLナビNext(首都圏版)
- ^ Alison Flood (January 9, 2013). “Man Asian literary prize shortlist stages Booker re-match”. The Guardian. September 4, 2014閲覧。
- ^ Joyce Lau (January 10, 2013). “The Last Man Asian Literary Prize”. The New York Times. September 4, 2014閲覧。
- ^ 【紫綬褒章】作家の川上弘美さん「違う世界見える瞬間書きたい」 - 産経新聞ニュース - 2019年4月20日 2019年4月20日閲覧
外部リンク
「ほぼ日」上のページ
- 婦人公論 井戸端会議 2001年
- 男女が同居するということ。 2003年
- 川上弘美さんと相づちを打ち合う。 2003年
- 本を書くということは。 2005年