鯨神

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鯨神』(くじらがみ)は、宇能鴻一郎小説1961年7月に文藝春秋の雑誌「文学界」に掲載。同年第46回芥川賞受賞。翌1962年大映で映画化された。

あらすじ[編集]

概要[編集]

宇能は前年『光の飢え』が芥川賞候補となったが次点に終わり、本作で受賞の栄誉となった。選評では井上靖が「野性的なエネルギーに満ちた」作品と激賞し、他の選考委員も賛意もしくは中立意見だった中、佐藤春夫のみが「古拙な趣きは認められずただ荒っぽいだけ」と反対意見を述べた[1]。翌1962年に文芸春秋社より単行本化され、1981年中央公論社より文庫本化された。表題作の他、「地獄銛」「光の飢え」「西洋祈りの女」の4編を収録。

1971年にさいとう・たかをにより漫画化された。

映画[編集]

鯨神
監督 田中徳三
脚本 新藤兼人
製作 永田雅一
出演者 本郷功次郎
勝新太郎
藤村志保
江波杏子
志村喬
音楽 伊福部昭
撮影 小林節雄(本編)
的場徹(特撮)
製作会社 大映東京撮影所
配給 大映
公開 日本の旗 日本 1962年7月15日
上映時間 100分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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鯨神』(くじらがみ)は、大映が製作・配給し、1962年(昭和37年)7月15日に公開された日本の映画特撮映画大映東京撮影所作品。100分、モノクロ大映スコープ

あらすじ(映画)[編集]

明治時代初期、九州沿岸には、代々悪魔の鯨と恐れられる巨大な鯨が現れ、その凶暴な性格によりすでに何十人もの漁師が命を落としていた。村人が鯨神と恐れるその鯨に父と兄を殺された若き漁師・シャキ(本郷功次郎)は、鯨神への復讐を誓う。村の鯨名主(志村喬)は、鯨を倒した者に娘・トヨ(江波杏子)と屋敷を与えるという。そんな時、村に流しの鯨漁師・紀州(勝新太郎)が現れる。紀州はシャキと反目し、彼に恋焦がれる貧家の娘・エイ(藤村志保)を犯すが、シャキは鯨神を倒すことのみに執念を燃やし、トヨやエイの愛を受け入れることはなかった。そして、再び現れた鯨神に対し、紀州は無謀にもその背に取り憑く。村人たちの執念の銛が無数に鯨神へ打ち込まれ、怒り狂った鯨神とシャキの最後の戦いが始まる。やがて、瀕死となりながらも勝利したシャキは、自分自身が鯨神と化していくのを感じるのだった[2][3]

概要(概要)[編集]

同作の芥川賞受賞後、大映はすぐさま映画化権を獲得した。その際、宇能は大映から100万円の原作料を提示されたという。社会派の作品が多い新藤兼人の脚本を、『悪名』などで大映時代劇の屋台骨を担った田中徳三が監督し、東宝怪獣映画などで有名な伊福部昭が音楽を担当した。

特殊撮影[編集]

特殊撮影はクレジット上は小松原力となっているが、実質的には的場徹が取り仕切った[4]。当時、大映は京都撮影所に特撮プールを持っていたため、特撮は主に京都で撮影した。鯨神の造形は大橋史典が行い、全長30メートルにも及ぶ実物大のスケールモデルと、5.5メートルのモデルを800万円の巨費を投じて作成したが、造形は素晴らしかったもののほとんど動かせず、結局は高山良策がミニチュアを作成し、ほとんどはそれで撮影したという[5][6][7]。結果として、実物大モデルは俳優との絡みのシーンに、5.5メートルのモデルは潜水シーンのみに利用された。それ以外にも、鯨神登場の前兆となる海鳥の群舞をアニメーションで表現するなど、大映らしい特殊撮影が効果を上げている[6][8][注釈 1]

本郷功次郎と勝新太郎が鯨神の背に乗っているスチールは、アニメ合成を担当したうしおそうじによる切り貼りであった[6][7]

映像ソフト化[編集]

  • 1984年に大映ビデオよりビデオソフトとして発売された。
  • 2006年にDVDソフト化され、2014年に廉価版DVDが発売された。
  • 2014年から発売された『隔週刊 大映特撮映画DVDコレクション』(デアゴスティーニ・ジャパン)での発売が予定されていたが、2016年のシリーズ延長時にラインナップから外された[9]

同時上映[編集]

悲恋の若武者
脚本 - 相良準吉田哲郎 / 監督 - 西山正輝 / 主演 - 橋幸夫
橋の同名の曲を映画化した歌謡映画である。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 遠景の海鳥をアニメーションで表現する手法は、うしおそうじが『青い山脈』でも用いていたものである[6]

出典[編集]

  1. ^ 『文藝春秋』 昭和37年3月号[要ページ番号]
  2. ^ 『大特撮・日本特撮映画史』(1985年朝日ソノラマ社)p.350
  3. ^ 『大映特撮コレクション・大魔神』(1984年徳間書店)p.67
  4. ^ 『大特撮・日本特撮映画史』(1985年朝日ソノラマ社)p.238
  5. ^ 『大映特撮コレクション・大魔神』(1984年徳間書店)p.75 的場徹インタビューより
  6. ^ a b c d 但馬オサム 「ピー・プロワークス3 アニメ合成」『別冊映画秘宝電人ザボーガー』&ピー・プロ特撮大図鑑』 洋泉社〈洋泉社MOOK〉、2011年11月14日、85頁。ISBN 978-4-86248-805-3
  7. ^ a b 但馬オサム「うしおそうじ&ピープロダクション年表」、『別冊映画秘宝 特撮秘宝』vol.3、洋泉社2016年3月13日、 pp.102-109、 ISBN 978-4-8003-0865-8
  8. ^ 『大映特撮コレクション・大魔神』(1984年徳間書店)p.30-31
  9. ^ HOME > 大映特撮DVDコレクション > 新着情報一覧” (2016年3月1日). 2016年6月19日閲覧。

関連項目[編集]